特許第6036150号(P6036150)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6036150
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】可逆式圧延装置および可逆式圧延方法
(51)【国際特許分類】
   B21B 39/14 20060101AFI20161121BHJP
   B21B 37/68 20060101ALI20161121BHJP
   B21B 1/32 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   B21B39/14 D
   B21B37/68 B
   B21B1/32
【請求項の数】2
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2012-228932(P2012-228932)
(22)【出願日】2012年10月16日
(65)【公開番号】特開2014-79777(P2014-79777A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2015年8月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】西村 映彦
【審査官】 長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−247692(JP,A)
【文献】 特開平05−084506(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 39/00−41/12
B21B 37/00−37/78
B21B 1/00−11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被圧延材の搬送経路の上流側から下流側に向かう順方向の圧延と、前記順方向とは逆方向の圧延とを前記被圧延材に対して行う圧延機と、
前記圧延機に対する相対的な前記被圧延材の幅方向の位置を調整するサイドガイド装置と、
前記被圧延材の長手方向端部を検出する材端検出部と、
圧延パス毎に前記被圧延材の圧延後の平面形状を算出し、前記平面形状の算出結果をもとに前記サイドガイド装置の開度変更量を算出する計算機と、
圧延パス毎に、前記サイドガイド装置の開度変更の要否を判断し、開度変更が必要であると判断した場合、前記長手方向端部の検出位置を基準にして前記被圧延材の最大幅部が変更対象の前記サイドガイド装置まで移動するタイミングに前記開度変更量まで現開度を変更し終えるように変更対象の前記サイドガイド装置を制御する制御部と、
を備え
前記計算機は、前記長手方向端部の検出結果と前記平面形状の算出結果とをもとに、前記被圧延材の最大幅部が変更対象の前記サイドガイド装置に到達するまでに要する前記被圧延材の移動量を算出し、
前記制御部は、圧延パス毎に、前記移動量の算出値を用いて変更対象の前記サイドガイド装置の開度の変更タイミングを設定し、前記変更タイミングに達する前の期間、変更対象の前記サイドガイド装置の現開度を維持させ、前記変更タイミングに達した際に変更対象の前記サイドガイド装置の現開度を前記開度変更量まで変更開始させることを特徴とする可逆式圧延装置。
【請求項2】
被圧延材の搬送経路の上流側から下流側に向かう順方向の圧延と、前記順方向とは逆方向の圧延とを行う圧延機による前記被圧延材の圧延後の平面形状を圧延パス毎に算出する平面形状算出ステップと、
前記圧延機に対する相対的な前記被圧延材の幅方向の位置を調整するサイドガイド装置の開度変更量を、前記平面形状の算出結果をもとに算出する開度変更量算出ステップと、
圧延パス毎に前記サイドガイド装置の開度変更の要否を判断する要否判断ステップと、
圧延パス毎に、前記被圧延材の長手方向端部の検出結果と前記平面形状の算出結果とをもとに、前記被圧延材の最大幅部が変更対象の前記サイドガイド装置に到達するまでに要する前記被圧延材の移動量を算出し、前記移動量の算出値を用いて変更対象の前記サイドガイド装置の開度の変更タイミングを設定する設定ステップと、
前記変更タイミングに達したか否かを判断し、前記変更タイミングに達する前の期間、変更対象の前記サイドガイド装置の現開度を維持するタイミング判断ステップと、
前記要否判断ステップによって開度変更が必要であると判断された場合、圧延パス毎に、前記被圧延材の長手方向端部の検出位置を基準にして前記被圧延材の最大幅部が変更対象の前記サイドガイド装置まで移動するタイミングに前記開度変更量まで現開度を変更し終える開度変更ステップと、
を含み、前記開度変更ステップは、前記変更タイミングに達した際に変更対象の前記サイドガイド装置の現開度を前記開度変更量まで変更し始めることを特徴とする可逆式圧延方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被圧延材に対して順方向の圧延と逆方向の圧延とを行う可逆式圧延装置および可逆式圧延方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、鉄鋼材等の被圧延材に対して、その搬送経路の上流側から下流側に向かう順方向の圧延と、この順方向とは逆方向の圧延とを交互に繰り返す可逆式圧延装置が知られている。また、可逆式圧延装置によって被圧延材を順方向または逆方向に圧延する際、可逆式圧延装置の圧延ロールが被圧延材を噛み込む前に、サイドガイド装置を用いて、被圧延材の幅方向(以下、材幅方向という)の中心と圧延ロールの幅方向の中心(以下、通り芯という)との位置ずれを小さくするように被圧延材の位置が調整される。
【0003】
サイドガイド装置による被圧延材の位置調整では、一般に、圧延前の被圧延材の材幅に対応してサイドガイド装置の開度を調整し、サイドガイド装置内に進入した被圧延材の側端面とサイドガイド装置のガイド部とを適宜接触させることによって、圧延ロールの通り芯側へ被圧延材を案内している。なお、可逆式圧延装置においては、圧延ロールを挟んで被圧延材の搬送方向の両側にサイドガイド装置が配置され、これら両側のサイドガイド装置の各々によって被圧延材の位置が調整される。
【0004】
一方、上述したサイドガイド装置に関する従来技術として、例えば、搬送される被圧延材の斜行状態に対応してサイドガイド装置のロールセンタを修正するものがある(特許文献1参照)。また、圧延前の被圧延材が圧延機に対して所定量斜めになるように、サイドガイド装置によって被圧延材の斜め位置を設定するものもある(特許文献2参照)。さらには、被圧延材の寸法およびローラーテーブル上の位置に応じて複数種類の転回シーケンスの中から選択した転回シーケンスに基づき、サイドガイド装置の位置を制御するものもある(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−154534号公報
【特許文献2】特開昭58−53305号公報
【特許文献3】特公昭52−15257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、可逆式圧延装置によって被圧延材を順方向および逆方向に順次圧延する場合、順方向または逆方向の1回分の圧延処理(以下、圧延パスという)毎に、被圧延材の形状は、その材厚を減少させるとともに材幅および材長(被圧延材の長手方向の長さ)を増加させるように変化する。また、可逆式圧延装置によって圧延パスを重ねる毎に、被圧延材の材幅の増量および最大値が変化し、さらに、この被圧延材における最大幅の位置が可逆式圧延装置に対して相対的に変化する。
【0007】
これらに起因して、上述した従来技術では、サイドガイド装置内に進入する被圧延材の材幅に対してサイドガイド装置の開度が不足する可能性があり、サイドガイド装置の開度不足が生じた場合、被圧延材の幅広部分(例えば被圧延材の端部等)とサイドガイド装置のガイド部とが意図せず衝突してしまう。この結果、被圧延材の形状不良が生じるという問題がある。この被圧延材の形状不良は、被圧延材を製品化(例えば矩形状化)するために被圧延材から切り落とさねばならない不要部分の材量の増大に繋がり、これに起因して、圧延製品の歩留まりの悪化を招来する。一方、このようなサイドガイド装置の開度不足を防止するために、従来技術では、圧延パス毎に作業者によってサイドガイド装置の開度を手動調整する必要がなり、この結果、サイドガイド装置の開度調整に多大な手間がかかるという問題もある。
【0008】
なお、上述した問題点は、被圧延材の材厚の増加に伴って顕著になる。すなわち、スラブ材等の比較的厚みの大きい被圧延材を順方向および逆方向に順次圧延する場合に、上述した問題点は顕在化する。
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、被圧延材を順方向および逆方向に順次圧延する際、圧延パス毎に被圧延材の材幅に対応してサイドガイド装置の開度を適正且つ容易に制御でき、これによって、被圧延材とサイドガイド装置との意図せぬ衝突を回避して被圧延材の形状不良の発生を抑制できる可逆式圧延装置および可逆式圧延方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる可逆式圧延装置は、被圧延材の搬送経路の上流側から下流側に向かう順方向の圧延と、前記順方向とは逆方向の圧延とを前記被圧延材に対して行う圧延機と、前記圧延機に対する相対的な前記被圧延材の幅方向の位置を調整するサイドガイド装置と、前記被圧延材の長手方向端部を検出する材端検出部と、圧延パス毎に前記被圧延材の圧延後の平面形状を算出し、前記平面形状の算出結果をもとに前記サイドガイド装置の開度変更量を算出する計算機と、圧延パス毎に、前記長手方向端部の検出位置を基準にして前記被圧延材の最大幅部が前記サイドガイド装置まで移動するタイミングに前記開度変更量まで現開度を変更し終えるように前記サイドガイド装置を制御する制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかる可逆式圧延装置は、上記の発明において、前記制御部は、圧延パス毎に前記サイドガイド装置の開度変更の要否を判断し、開度変更が必要であると判断した場合、変更対象の前記サイドガイド装置の現開度を前記開度変更量まで変更させることを特徴とする。
【0012】
また、本発明にかかる可逆式圧延装置は、上記の発明において、前記計算機は、前記長手方向端部の検出結果と前記平面形状の算出結果とをもとに、前記被圧延材の最大幅部が変更対象の前記サイドガイド装置に到達するまでに要する前記被圧延材の移動量を算出し、前記制御部は、圧延パス毎に、前記移動量の算出値を用いて前記変更対象のサイドガイド装置の開度の変更タイミングを設定し、前記変更タイミングに達する前の期間、変更対象の前記サイドガイド装置の現開度を維持させ、前記変更タイミングに達した際に変更対象の前記サイドガイド装置の現開度を前記開度変更量まで変更させることを特徴とする。
【0013】
また、本発明にかかる可逆式圧延方法は、被圧延材の搬送経路の上流側から下流側に向かう順方向の圧延と、前記順方向とは逆方向の圧延とを行う圧延機による前記被圧延材の圧延後の平面形状を圧延パス毎に算出する平面形状算出ステップと、前記圧延機に対する相対的な前記被圧延材の幅方向の位置を調整するサイドガイド装置の開度変更量を、前記平面形状の算出結果をもとに算出する開度変更量算出ステップと、圧延パス毎に、前記被圧延材の長手方向端部の検出位置を基準にして前記被圧延材の最大幅部が前記サイドガイド装置まで移動するタイミングに前記開度変更量まで現開度を変更し終える開度変更ステップと、を含むことを特徴とする。
【0014】
また、本発明にかかる可逆式圧延方法は、上記の発明において、圧延パス毎に前記サイドガイド装置の開度変更の要否を判断する要否判断ステップをさらに含み、前記開度変更ステップは、開度変更が必要であると判断した場合、変更対象の前記サイドガイド装置の現開度を前記開度変更量まで変更することを特徴とする。
【0015】
また、本発明にかかる可逆式圧延方法は、上記の発明において、圧延パス毎に、前記被圧延材の長手方向端部の検出結果と前記平面形状の算出結果とをもとに、前記被圧延材の最大幅部が変更対象の前記サイドガイド装置に到達するまでに要する前記被圧延材の移動量を算出し、前記移動量の算出値を用いて変更対象の前記サイドガイド装置の開度の変更タイミングを設定する設定ステップと、前記変更タイミングに達したか否かを判断し、前記変更タイミングに達する前の期間、変更対象の前記サイドガイド装置の現開度を維持するタイミング判断ステップと、をさらに含み、前記開度変更ステップは、前記変更タイミングに達した際に変更対象の前記サイドガイド装置の現開度を前記開度変更量まで変更することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、被圧延材を順方向および逆方向に順次圧延する際、圧延パス毎に被圧延材の材幅に対応してサイドガイド装置の開度を適正且つ容易に制御でき、これによって、被圧延材とサイドガイド装置との意図せぬ衝突を回避して被圧延材の形状不良の発生を抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の実施の形態にかかる可逆式圧延装置の一構成例を示すブロック図である。
図2図2は、被圧延材の圧延後の平面形状の一例を示す模式図である。
図3図3は、本発明の実施の形態にかかる可逆式圧延方法の一例を示すフローチャートである。
図4図4は、1パス目の順方向の圧延時におけるサイドガイド装置の開度制御を説明するための模式図である。
図5図5は、2パス目の逆方向の圧延時におけるサイドガイド装置の開度制御を説明するための模式図である。
図6図6は、3パス目の順方向の圧延時におけるサイドガイド装置の開度制御を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、添付図面を参照して、本発明にかかる可逆式圧延装置および可逆式圧延方法の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本実施の形態により、本発明が限定されるものではない。
【0019】
(実施の形態)
まず、本発明の実施の形態にかかる可逆式圧延装置の構成について説明する。図1は、本発明の実施の形態にかかる可逆式圧延装置の一構成例を示すブロック図である。なお、図1には、被圧延材を圧延する熱間圧延ラインのうちの可逆式圧延装置を設置した部分が模式的に図示されている。図1に示すように、本実施の形態にかかる可逆式圧延装置1は、圧延対象である被圧延材15を搬送する搬送装置2と、被圧延材15を圧延する圧延機3と、被圧延材15の幅方向の位置を調整するサイドガイド装置4,5と、被圧延材15の長手方向の端部を検出する材端検出部6,7とを備える。また、可逆式圧延装置1は、材幅方向の位置調整に関する各種演算処理を行う計算機8と、材幅方向の位置調整に必要な情報等を記憶する記憶部9と、可逆式圧延装置1の各構成部を制御する制御部10とを備える。
【0020】
搬送装置2は、複数の搬送ローラおよびその駆動部等を用いて構成され、被圧延材15の搬送経路を形成する。搬送装置2は、この搬送経路に沿って、図1の太線矢印に示されるような順方向または逆方向に被圧延材15を搬送する。ここで、本実施の形態において、搬送経路の上流側は、可逆式圧延装置1に連続する熱間圧延ライン全体の搬送経路の材搬入端側と定義し、搬送経路の下流側は、この搬送経路の材搬出端側と定義する。すなわち、図1において、圧延機3の上流側は図面に向かって左側であり、圧延機3の下流側は図面に向かって右側である。また、順方向は、搬送装置2による搬送経路の上流側から下流側に向かう方向と定義する。逆方向は、この順方向とは逆の方向、すなわち、搬送装置2による搬送経路の下流側から上流側に向かう方向と定義する。これらの定義は、図1以降の図面についても同様である。
【0021】
なお、図1に示すように、搬送装置2に対して3軸(x軸、y軸、z軸)の直交座標系を設定した場合、搬送装置2による被圧延材15の搬送方向がx軸方向と平行であれば、被圧延材15の材幅方向はy軸方向と平行であり、被圧延材15の厚み方向(以下、材厚方向という)はz軸方向と平行である。また、図1には特に図示しないが、搬送装置2の搬送経路において、可逆式圧延装置1の上流側には、被圧延材15を加熱する加熱炉、被圧延材15の材幅を調整する幅圧下装置等の設備が配置される。一方、可逆式圧延装置1の下流側には、被圧延材を強制冷却する加速冷却装置、被圧延材や被強制冷却材を室温近辺にまで自然冷却するための冷却床(クーリングベッド)等の各種設備を適宜配置することができる。なお、可逆式圧延装置1が粗圧延装置として用いられる場合、可逆式圧延装置1の下流側には、被圧延材15を仕上圧延する仕上圧延装置が配置され、さらに、被圧延材15が薄鋼板や鋼帯等のようにコイル状に巻き取られるものである場合、仕上圧延後の被圧延材15をコイル状に巻き取る巻取装置等の設備が配置される。
【0022】
圧延機3は、圧延ロールおよびその駆動部等を用いて構成される。圧延機3は、その圧延ロールの幅方向と被圧延材15の材幅方向(y軸方向)とが略平行になるように、搬送経路上に配置される。すなわち、圧延機3による被圧延材15の圧延方向は、材幅方向に対して略垂直であり、図1の太線矢印に示される順方向と逆方向とに分けられる。圧延機3は、被圧延材15に対して順方向の圧延と逆方向との圧延とを行う可逆圧延機能を有する。
【0023】
また、圧延機3には、荷重計3aとパルスジェネレータ3bとが設置される。荷重計3aは、圧延機3の圧延ロールによって被圧延材15を圧下した際に被圧延材15から圧延ロールに作用する圧延荷重を計測する。パルスジェネレータ3bは、圧延機3の圧延ロールの回転量を示すパルス信号を出力する。
【0024】
2つのサイドガイド装置4,5は、圧延機3を挟んで搬送装置2による搬送経路の上流側と下流側とに配置され、圧延機3に対する相対的な被圧延材15の材幅方向の位置を調整する。具体的には、図1に示すように、サイドガイド装置4は、圧延機3に比して搬送経路の上流側に配置され、サイドガイド装置5は、圧延機3に比して搬送経路の下流側に配置される。
【0025】
サイドガイド装置4は、一対のガイド部4a,4bとガイド部4a,4bの各駆動部4c,4dとを備える。ガイド部4a,4bの各々は、搬送装置2の幅方向端側から搬送経路中心側に向けて縮小するテーパ形状をなし、その平坦面を互いに材幅方向に対向させるように配置される。また、ガイド部4a,4bは、圧延機3に対する搬送方向(x軸方向)の相対位置が一定になるように配置される。駆動部4c,4dは、駆動軸を介してガイド部4a,4bを材幅方向に各々移動させる。この場合、駆動部4c,4dは、圧延機3の通り芯を中心にしてガイド部4a,4bを略対称に位置させるように動作する。このような構成を有するサイドガイド装置4は、駆動部4c,4dの作用により、被圧延材15の材幅に比してガイド部4a,4bの開口幅を若干大きくするように、ガイド部4a,4bの開度を調整する。なお、ガイド部4a,4bの開口幅は、図1に示すように材幅方向に対向するガイド部4a,4bの平坦面(対向端面)の離間距離に相当する。サイドガイド装置4は、このようなガイド部4a,4bの対向端面間に被圧延材15を受け入れる。ついで、サイドガイド装置4は、受け入れた被圧延材15の側端面とガイド部4a,4bの対向端面とを適宜接触させることによって、被圧延材15を圧延機3の通り芯側へ案内する。この結果、被圧延材15は、その材幅方向の中心と圧延機3の通り芯との位置ずれを解消するように位置調整される。
【0026】
サイドガイド装置5は、一対のガイド部5a,5bとガイド部5a,5bの各駆動部5c,5dとを備える。ガイド部5a,5bの各々は、上述したガイド部4a,4bと同様に、テーパ形状をなして、その平坦面を互いに材幅方向に対向させるように配置される。また、ガイド部5a,5bは、圧延機3に対する搬送方向(x軸方向)の相対位置が一定になるように配置される。駆動部5c,5dは、駆動軸を介してガイド部5a,5bを材幅方向に各々移動させる。この場合、駆動部5c,5dは、圧延機3の通り芯を中心にしてガイド部5a,5bを略対称に位置させるように動作する。このような構成を有するサイドガイド装置5は、駆動部5c,5dの作用により、被圧延材15の材幅に比してガイド部5a,5bの開口幅を若干大きくするように、ガイド部5a,5bの開度を調整する。なお、ガイド部5a,5bの開口幅は、図1に示すように材幅方向に対向するガイド部5a,5bの平坦面(対向端面)の離間距離に相当する。サイドガイド装置5は、このようなガイド部5a,5bの対向端面間に被圧延材15を受け入れる。ついで、サイドガイド装置5は、受け入れた被圧延材15の側端面とガイド部5a,5bの対向端面とを適宜接触させることによって、被圧延材15を圧延機3の通り芯側へ案内する。この結果、被圧延材15は、その材幅方向の中心と圧延機3の通り芯との位置ずれを解消するように位置調整される。
【0027】
材端検出部6,7は、HMD(Hot Metal Detector)等、物体の有無や通過を非接触で検出する検出機構を用いて実現される。材端検出部6は、サイドガイド装置4に比して搬送経路の上流側に配置され、材端検出部7は、サイドガイド装置5に比して搬送経路の下流側に配置される。この配置において、材端検出部6,7とガイド部4a,4b,5a,5bとの各相対位置は、搬送方向(x軸方向)について固定される。材端検出部6は、圧延機3の上流側に位置する被圧延材15の長手方向端部を検出する。一方、材端検出部7は、圧延機3の下流側に位置する被圧延材15の長手方向端部を検出する。
【0028】
計算機8は、被圧延材15の圧延処理または材幅方向の位置調整処理に用いられる各種情報を算出する。具体的には、計算機8は、プロセスコンピュータ11から取得した被圧延材15の諸元をもとに、被圧延材15の圧延スケジュールを算出する。また、計算機8は、算出した圧延スケジュールと荷重計3aから取得した圧延荷重の実績値とをもとに、圧延スケジュールを適宜補正し、その都度、圧延スケジュールを更新する。一方、計算機8は、被圧延材15の圧延パス毎に、所定の平面形状モデル式または近似式等を用いて、材厚方向(z軸方向)から見た被圧延材15の圧延後の平面形状を算出する。この平面形状の算出処理は、圧延後の被圧延材15の最大材幅、基準材幅、長手方向端部からの最大材幅の位置、および材長等の予測値が得られるものであればよい。計算機8は、この被圧延材15の平面形状の算出結果をもとに、サイドガイド装置4,5の各開度変更量を算出する。また、計算機8は、材端検出部6,7による被圧延材15の長手方向端部の検出結果と平面形状の算出結果とをもとに、被圧延材15のうちの最大材幅の部分(以下、最大幅部という)がサイドガイド装置4,5(詳細にはガイド部4a,4b,5a,5b)に到達するまでに要する被圧延材15の移動量を適宜算出する。
【0029】
なお、上述した被圧延材15の諸元は、要求された鉄鋼製品を製造(圧延)するために必要な情報であり、例えば、被圧延材15の組成、鋼種等の金属種類、強度、材幅、材厚、材長、重量、圧延完了後の被圧延材15の目標寸法(材幅、材厚、材長)等が挙げられる。
【0030】
記憶部9は、EEPROMまたはハードディスク等の再書き込み可能な不揮発性の記憶媒体を用いて実現される。記憶部9は、計算機8による被圧延材15の圧延スケジュールの算出結果をスケジュール情報9aとして記憶し、計算機8による被圧延材15の平面形状の算出結果を形状情報9bとして記憶する。また、記憶部9は、制御部10によって記憶指示された情報を記憶し、読み出し指示された記憶情報を計算機8または制御部10に適宜送信する。
【0031】
制御部10は、可逆式圧延装置1の機能を実現するためのプログラム等を記憶するメモリおよびこのメモリ内のプログラムを実行するCPU等を用いて実現される。制御部10は、搬送装置2、圧延機3、サイドガイド装置4,5、計算機8、および記憶部9の各動作を制御し、且つ、これら各構成部との電気信号の入出力を制御する。特に、制御部10は、圧延パス毎に、材端検出部6,7による被圧延材15の長手方向端部の検出位置を基準にして被圧延材15の最大幅部がサイドガイド装置4,5まで移動するタイミングに、上述した開度変更量まで現開度を変更し終えるようにサイドガイド装置4,5を制御する。この場合、制御部10は、圧延パス毎にサイドガイド装置4,5の開度変更の要否を判断し、開度変更が必要であると判断した変更対象のサイドガイド装置(サイドガイド装置4,5の少なくとも一方)の現開度を計算機8による開度変更量まで変更させる。また、制御部10は、被圧延材15の圧延パス毎に、計算機8による移動量の算出値を用いて、上述した変更対象のサイドガイド装置の開度の変更タイミングを設定する。制御部10は、設定した変更タイミングに達する前の期間、この変更対象のサイドガイド装置の現開度を維持させ、設定した変更タイミングに達した際に、この変更対象のサイドガイド装置の現開度を計算機8による開度変更量まで変更させる。
【0032】
プロセスコンピュータ11は、熱間圧延ラインによって製造される鉄鋼製品の製造条件等を管理、設定するものである。例えば、プロセスコンピュータ11は、鉄鋼製品のオーダー情報を受け付け、受け付けたオーダー情報をもとに被圧延材毎の製造条件等を設定する。プロセスコンピュータ11は、可逆式圧延装置1に対して被圧延材15が搬入される都度、この被圧延材15を用いた鉄鋼製品の製造条件等を熱間圧延ラインに対して設定するとともに、この被圧延材15の諸元を計算機8に提供する。
【0033】
つぎに、被圧延材15の圧延後の平面形状について説明する。図2は、被圧延材の圧延後の平面形状の一例を示す模式図である。なお、図2に示す平面形状は、被圧延材15の材厚方向(図1のz軸方向)から見た平面形状、すなわち、材厚方向視の平面形状である。以下、被圧延材15の平面形状は、材厚方向視の平面形状である。
【0034】
本実施の形態において、被圧延材15は、上述した圧延機3によって順方向または逆方向に圧延された結果、図2に示すような平面形状をなすものに加工される。詳細には、図2に示すように、被圧延材15の圧延後の平面形状は、その長手方向の両端部、すなわち先端部15aおよび尾端部15bとその近傍とを除き、略矩形状をなす。先端部15aは、被圧延材15の長手方向の両端部のうち、上述した順方向の先頭側の端部である。先端部15aは、例えば、その材幅方向の両端部が被圧延材15の長手方向に突起した形状(以下、フィッシュテール形状という)をなす。尾端部15bは、被圧延材15の長手方向の両端部のうち、順方向の後方側の端部である。尾端部15bは、その材幅が先端部15aと異なるものの、先端部15aと略同様のフィッシュテール形状をなす。
【0035】
また、上述した平面形状をなす被圧延材15は、その長手方向に沿って材幅分布を有する。すなわち、図2に示すように、被圧延材15の材幅は、尾端部15bから順方向に向かって徐々に増加し、最大幅部15dにおいて、最大材幅Wmaxとなる。また、被圧延材15の材幅は、最大幅部15dから順方向に向かって徐々に減少し、最大幅部15dの順方向側近傍において基準材幅Wcとなる。この最大幅部15dの順方向側近傍から、被圧延材15の長手方向の中央部15cを経て先端部15a近傍に至るまでの領域において、被圧延材15の材幅は、略一定(=基準材幅Wc)である。この先端部15a近傍から先端部15aに向かって、被圧延材15の材幅は徐々に減少する。なお、上述した基準材幅Wcは、サイドガイド装置4,5による被圧延材15の材幅方向の位置調整における基準となる材幅である。
【0036】
図2に示すような被圧延材15の平面形状は、可逆式圧延装置1によって圧延される前の未圧延の被圧延材15を予め所定の形状に加工することによって形成されやすい。例えば、被圧延材15をその材幅方向の両端部において肉厚にした形状(以下、ドッグボーン形状という)に加工すれば、平面形状が矩形状である場合に比して被圧延材15を図2に示す平面形状に圧延しやすい。
【0037】
ここで、被圧延材15の圧延によって最大幅部15dが一旦形成された場合、この被圧延材15に対して順方向の圧延と逆方向の圧延とを交互に繰り返したとしても、被圧延材15の長手方向における最大幅部15dの相対位置は略変わらない。例えば、本実施の形態において、最大幅部15dは、図2に示すように、中央部15cに比して尾端部15b側、すなわち、被圧延材15の長手方向の後半部に存在する。この場合、最大幅部15dは、圧延機3またはサイドガイド装置4,5(図1参照)に対して被圧延材15が順方向に進入する際に、その進入方向の後半部に位置する。一方、圧延機3またはサイドガイド装置4,5に対して被圧延材15が逆方向に進入する際に、最大幅部15dは、その進入方向の前半部に位置する。
【0038】
なお、図2に示す被圧延材15の平面形状において、最大材幅Wmax、基準材幅Wc、尾端部15bから最大幅部15dまでの材長L1、先端部15aから最大幅部15dまでの材長L2、および被圧延材15の長手方向の全材長(L1+L2)は、上述した計算機8による平面形状の計算結果として算出される。
【0039】
つぎに、本発明の実施の形態にかかる可逆式圧延方法について説明する。図3は、本発明の実施の形態にかかる可逆式圧延方法の一例を示すフローチャートである。本実施の形態にかかる可逆式圧延方法において、上述した可逆式圧延装置1(図1参照)は、未圧延の被圧延材15を上流側から受け入れる都度、図3に示すステップS101〜S108の処理フローを圧延パス毎に繰り返して、被圧延材15の材幅方向の位置を調整しつつ、被圧延材15に対し、必要回数(パス数)分の順方向の圧延と逆方向の圧延とを行う。
【0040】
すなわち、図3に示すように、可逆式圧延装置1は、まず、被圧延材15の圧延スケジュールを設定する(ステップS101)。ステップS101において、計算機8は、プロセスコンピュータ11から被圧延材15の諸元情報を取得し、この諸元情報をもとに、被圧延材15の圧延スケジュールを算出する。
【0041】
具体的には、計算機8は、被圧延材15の諸元情報と圧延機3の設備仕様とに基づいて、被圧延材15に対する圧延機3の圧延パス毎の圧下量を算出する。ついで、計算機8は、得られた圧下量をもとに、被圧延材15の圧延パス毎の目標材幅、目標材厚、および予測圧延荷重を算出する。また、計算機8は、各圧延パスの目標材幅に所定値を加算して、サイドガイド装置4,5の圧延パス毎の各開度を算出する。計算機8は、被圧延材15を所望の材厚まで圧延するために必要な圧延パス数分、上述した各算出処理を実行する。なお、計算機8は、圧延機3の上流側に位置するサイドガイド装置4の1パス目の開度として、未圧延の被圧延材15の材幅に所定値を加算したものを算出する。計算機8は、このようにして得られた1パス目から最終パスまでの各圧延パスの圧下量、目標材幅、目標材厚、予測圧延荷重、サイドガイド装置4,5の各開度(以下、圧延パス毎のパラメータと適宜略す)を纏めて、被圧延材15に対する可逆圧延の圧延スケジュールとする。このような圧延スケジュールは、スケジュール情報9aとして記憶部9に保存される。これによって、圧延スケジュールは可逆式圧延装置1に設定される。
【0042】
また、計算機8は、被圧延材15が順方向または逆方向に圧延される都度、この被圧延材15の圧延荷重の実績値を荷重計3aから取得する。計算機8は、得られた圧延荷重の実績値と算出後の圧延スケジュール内の予測圧延荷重との誤差をもとに、圧延スケジュールと圧延実績との誤差を学習して、この誤差を補正するように圧延スケジュールを算出し直す。計算機8は、このように再計算によって得られた圧延スケジュールを、この被圧延材15の補正後の圧延スケジュールとする。この補正後の圧延スケジュールは、スケジュール情報9aとして上書きされ、この結果、被圧延材15の圧延スケジュールは、補正後のものに更新される。
【0043】
一方、制御部10は、このステップS101において、記憶部9内のスケジュール情報9aから被圧延材15の圧延スケジュールを読み出す。ついで、制御部10は、この圧延スケジュール内に含まれるサイドガイド装置4,5の各開度の設定値がサイドガイド装置4,5の実際の各開度となるように、ガイド部4a,4bの駆動部4c,4dとガイド部5a,5bの駆動部5c,5dとを制御する。このような開度制御に並行して、制御部10は、この圧延スケジュールの圧延パス毎のパラメータに則した順方向または逆方向の圧延を被圧延材15に対して行うように、搬送装置2および圧延機3を制御する。
【0044】
上述したステップS101が行われた後、可逆式圧延装置1は、圧延機3による順方向または逆方向の圧延後の被圧延材15の平面形状を算出する(ステップS102)。ステップS102において、計算機8は、所定の平面形状モデル式(例えば特開2005−14055号公報に記載の平面形状モデル式)または近似式等を用い、圧延後の被圧延材15の材厚方向視の平面形状(図2参照)を算出する。計算機8は、この平面形状の算出結果として、被圧延材15の平面形状における最大材幅Wmax、基準材幅Wc、尾端部15bから最大幅部15dまでの材長L1、先端部15aから最大幅部15dまでの材長L2、および被圧延材15の全材長(L1+L2)を算出する。また、計算機8は、現圧延パスにおける被圧延材15の圧延荷重の実績値を荷重計3aから取得し、この圧延荷重の実績値と上述した圧延スケジュールの予測圧延荷重との誤差をもとに、最大材幅Wmax、基準材幅Wc、材長L1、材長L2、および全材長(L1+L2)を適宜補正する。このような平面形状の算出結果または補正結果は、形状情報9bとして記憶部9に保存される。
【0045】
つぎに、可逆式圧延装置1は、ステップS102による被圧延材15の平面形状の算出結果をもとに、サイドガイド装置4,5の各開度変更量を算出する(ステップS103)。ステップS103において、計算機8は、形状情報9b内の被圧延材15の最大材幅Wmaxと基準材幅Wcとを記憶部9から読み出す。なお、この基準材幅Wcは、上述した圧延スケジュール内の現圧延パスの目標材幅と略同等である。計算機8は、この最大材幅Wmaxから基準材幅Wcを減算することによって、サイドガイド装置4,5の各開度変更量を算出する。
【0046】
続いて、可逆式圧延装置1は、各サイドガイド装置4,5の開度変更の要否を判断する(ステップS104)。ステップS104において、制御部10は、被圧延材15の材幅に対する現開度の余裕の有無と、開度変更の駆動制御に要する被圧延材15の搬送距離の有無との双方の観点から、サイドガイド装置4,5の各々について、開度変更の要否を判断する。
【0047】
詳細には、計算機8は、制御部10から各サイドガイド装置4,5の現開度の情報を取得し、この取得した情報をもとに、現開度に対応するサイドガイド装置4のガイド部4a,4bの開口幅と、サイドガイド装置5のガイド部5a,5bの開口幅とを算出する。また、計算機8は、記憶部9内の形状情報9bから、現圧延パスにおける被圧延材15の圧延後の基準材幅Wcを取得する。ついで、計算機8は、ガイド部4a,4bの開口幅からこの基準材幅Wcを減算して、現圧延パスにおけるガイド部4a,4bと被圧延材15との材幅方向の間隙量を算出する。計算機8は、この算出した間隙量をサイドガイド装置4の開度差に換算する。これと同様に、計算機8は、ガイド部5a,5bの開口幅からこの基準材幅Wcを減算して、現圧延パスにおけるガイド部5a,5bと被圧延材15との材幅方向の間隙量を算出し、この算出した間隙量をサイドガイド装置5の開度差に換算する。制御部10は、このように算出されたサイドガイド装置4,5の各開度差を計算機8から取得し、得られた各開度差とステップS103による開度変更量とを比較する。制御部10は、この開度変更量の比較結果を各サイドガイド装置4,5の開度変更の要否判断処理に用いる。
【0048】
また、このステップS104において、計算機8は、材端検出部6,7による被圧延材15の長手方向端部の検出結果を制御部10から取得し、現圧延パスにおける被圧延材15の圧延後の平面形状の算出結果を記憶部9内の形状情報9bから取得する。計算機8は、取得した長手方向端部の検出結果と、この平面形状の算出結果のうちの材長L1,L2ともとに、サイドガイド装置4,5のガイド部4a,4b,5a,5bに対する被圧延材15の最大幅部15dの相対位置を各々算出する。なお、図2に示したように、材長L1は、被圧延材15の最大幅部15dから尾端部15bまでの長さであり、材長L2は、被圧延材15の最大幅部15dから先端部15aまでの長さである。制御部10は、この計算機8による最大幅部15dの相対位置の算出結果をもとに、開度変更の動作制御に要する被圧延材15の移動量分以上に離間した位置に最大幅部15dが位置しているか否かをサイドガイド装置4,5の各々について判断する。制御部10は、この最大幅部15dとサイドガイド装置4,5との相対的な位置の判断結果を各サイドガイド装置4,5の開度変更の要否判断処理に用いる。
【0049】
ここで、このステップS104における制御部10の比較判断処理の結果、ステップS103による開度変更量が計算機8によるサイドガイド装置4の開度差の算出値を超過し、且つ、開度変更の動作制御に要する被圧延材15の移動量分以上にガイド部4a,4bから離間した位置に最大幅部15dが位置する場合のみ、制御部10は、サイドガイド装置4の現開度を変更する必要があると判断する。すなわち、制御部10は、上記のサイドガイド装置4に関する条件以外の場合、サイドガイド装置4の開度変更は不要であると判断する。これと同様に、ステップS103による開度変更量が計算機8によるサイドガイド装置4の開度差の算出値を超過し、且つ、開度変更の動作制御に要する被圧延材15の移動量分以上にガイド部5a,5bから離間した位置に最大幅部15dが位置する場合のみ、制御部10は、サイドガイド装置5の現開度を変更する必要があると判断する。すなわち、制御部10は、上記のサイドガイド装置5に関する条件以外の場合、サイドガイド装置5の開度変更は不要であると判断する。制御部10は、上述したようにサイドガイド装置4,5の各々について開度変更の要否を判断し、サイドガイド装置4,5のうちの開度変更が必要であると判断した少なくとも一方を開度の変更対象とする。
【0050】
上述したステップS104において開度変更が必要であると判断された場合(ステップS104,Yes)、可逆式圧延装置1は、サイドガイド装置4,5のうちの変更対象のサイドガイド装置の開度変更量およびその変更タイミングを設定する(ステップS105)。ステップS105において、制御部10は、上述したステップS103による開度変更量の算出値を、変更対象のサイドガイド装置の開度変更量として設定する。一方、サイドガイド装置4,5のうちの何れか一つが開度の変更対象外である場合、制御部10は、この変更対象外のサイドガイド装置の現開度を変更せず維持する。この場合、制御部10は、例えば、変更対象外のサイドガイド装置の開度変更量を零値に設定する。
【0051】
また、ステップS105において、計算機8は、材端検出部6,7による被圧延材15の長手方向端部の検出結果とステップS102による平面形状の算出結果ともとに、被圧延材15の最大幅部15dが変更対象のサイドガイド装置に到達するまでに要する被圧延材15の移動量を算出する。具体的には、計算機8は、この平面形状の算出結果のうちの材長L1,L2と長手方向端部の検出結果とをもとに、変更対象のサイドガイド装置のガイド部(ガイド部4a,4bおよびガイド部5a,5bの少なくとも一方)に対する被圧延材15の最大幅部15dの相対位置を算出する。なお、図2に示したように、材長L1は、被圧延材15の最大幅部15dから尾端部15bまでの長さであり、材長L2は、被圧延材15の最大幅部15dから先端部15aまでの長さである。計算機8は、この算出した最大幅部15dの相対位置に基づき、変更対象のガイド部と材端検出部6,7との離間距離を加味して、最大幅部15dが変更対象のガイド部に到達するまでに要する被圧延材15の移動量を算出する。制御部10は、この被圧延材15の移動量の算出値を用いて、変更対象のサイドガイド装置の開度の変更タイミングを設定する。このように設定される変更タイミングは、被圧延材15の長手方向端部の検出位置を基準にして被圧延材15の最大幅部15dが変更対象のサイドガイド装置まで移動するタイミングに、この変更対象のサイドガイド装置の現開度を、上述した開度変更量の設定値まで変更完了し得るタイミングである。例えば、制御部10は、この移動量の算出値から変更対象のサイドガイド装置の開度の変更動作に要する被圧延材15の移動量を減算し、得られた移動量(減算結果)分、被圧延材15が移動するタイミングを変更タイミングとする。
【0052】
上述したステップS105の実行後、可逆式圧延装置1は、変更対象のサイドガイド装置の開度の変更タイミングに達したか否かを判断する(ステップS106)。ステップS106において、制御部10は、搬送装置2からの受信信号をもとに、搬送装置2による被圧延材15の順方向または逆方向への移動量(搬送量)を取得する。また、制御部10は、パルスジェネレータ3bからパルス信号を受信し、この受信したパルス信号をもとに、圧延機3の圧延ロール回転量を算出し、この算出した圧延ロール回転量をもとに、圧延時における被圧延材15の順方向または逆方向への移動量を取得する。制御部10は、このような被圧延材15の搬送装置2による移動量と圧延機3による移動量との合計値から、被圧延材15の長手方向端部および最大幅部15d間の材長(すなわち材長L1または材長L2)を減算する。これによって、順方向または逆方向の最大幅部15dの移動量が算出される。制御部10は、このようにして得られた最大幅部15dの移動量と、上述したステップS105による移動量の算出値とを比較する。制御部10は、最大幅部15dの移動量がステップS105による移動量の算出値未満である場合、未だ変更タイミングではないと判断し(ステップS106,No)、このステップS106を繰り返し実行する。制御部10は、このステップS106を繰り返し実行する期間、すなわち、開度の変更タイミングに達する前の期間、現開度を維持するように変更対象のサイドガイド装置を制御する。
【0053】
一方、ステップS106において、最大幅部15dの移動量がステップS105による移動量の算出値以上である場合、制御部10は、変更対象のサイドガイド装置の開度の変更タイミングであると判断する(ステップS106,Yes)。この場合、可逆式圧延装置1は、変更対象のサイドガイド装置の開度を変更する(ステップS107)。
【0054】
ステップS107において、制御部10は、ステップS105による開度変更量の設定値まで現開度を変更するように変更対象のサイドガイド装置を制御する。例えば、サイドガイド装置4が開度の変更対象である場合、制御部10は、駆動部4c,4dを制御して、ガイド部4a,4bの開度をこの開度変更量の設定値分、変更する。サイドガイド装置5が開度の変更対象である場合、制御部10は、駆動部5c,5dを制御して、ガイド部5a,5bの開度をこの開度変更量の設定値まで、変更する。この開度制御において、制御部10は、被圧延材15の最大幅部15dが変更対象のサイドガイド装置に到達するタイミングに開度変更量の設定値まで現開度を変更し終えるように、この変更対象のサイドガイド装置を駆動制御する。
【0055】
その後、可逆式圧延装置1は、被圧延材15に対する必要圧延パス分の圧延処理が完了したか否かを判断する(ステップS108)。ステップS108において、制御部10は、荷重計3aからの受信信号と材端検出部6,7からの受信信号とをもとに、圧延機3による被圧延材15の順方向および逆方向の両圧延の進行状況を把握する。例えば、制御部10は、上流側の材端検出部6から長手方向端部の検出信号を受信し、ついで、荷重計3aから圧延荷重の計測信号を受信し、1パス分の圧延荷重の計測信号を受信し終えた後、下流側の材端検出部7から長手方向端部の検出信号を受信した場合、被圧延材15に対する1パス分の順方向の圧延が完了したと判断する。また、制御部10は、下流側の材端検出部7から長手方向端部の検出信号を受信し、ついで、荷重計3aから圧延荷重の計測信号を受信し、1パス分の圧延荷重の計測信号を受信し終えた後、上流側の材端検出部6から長手方向端部の検出信号を受信した場合、被圧延材15に対する1パス分の逆方向の圧延が完了したと判断する。制御部10は、これら各信号の受信に基づいて、被圧延材15に対する圧延パス数をカウントし、常時、現圧延パス数を把握する。また、制御部10は、記憶部9内のスケジュール情報9aから、最新の圧延スケジュールを読み出し、この読み出した圧延スケジュールを参照して、現圧延パス数が何パス目であるかを確認する。制御部10は、現圧延パスが圧延スケジュール内の最終圧延パスである場合、被圧延材15に対する必要圧延パス数分の圧延処理が完了したと判断し(ステップS108,Yes)、本処理を終了する。
【0056】
一方、現圧延パスが圧延スケジュール内の最終圧延パスではない場合、制御部10は、被圧延材15に対する必要圧延パス数分の圧延処理は未だ完了していないと判断し(ステップS108,No)、上述したステップS101に戻り、このステップS101以降の処理ステップを繰り返し実行する。すなわち、可逆式圧延装置1は、被圧延材15に対して設定した圧延スケジュール内の圧延パス毎に、上述したステップS101〜S108の各処理ステップを適宜繰り返し実行する。
【0057】
他方、上述したステップS104においてサイドガイド装置4,5の開度変更が不要であると判断された場合(ステップS104,No)、可逆式圧延装置1は、ステップS105〜S107をスキップしてステップS108に進み、このステップS108以降の処理ステップを繰り返し実行する。
【0058】
つぎに、被圧延材15に対して1パス目に順方向の圧延を行い、その後、最終圧延パスまで逆方向の圧延と順方向の圧延とを被圧延材15に対して順次繰り返す場合を例示して、本発明によるサイドガイド装置4,5の開度制御を具体的に説明する。図4は、1パス目の順方向の圧延時におけるサイドガイド装置の開度制御を説明するための模式図である。図5は、2パス目の逆方向の圧延時におけるサイドガイド装置の開度制御を説明するための模式図である。図6は、3パス目の順方向の圧延時におけるサイドガイド装置の開度制御を説明するための模式図である。
【0059】
図4に示すように、被圧延材15は、例えば上述したドッグボーン形状に予め形成され、その後、搬送装置2によって上流側からサイドガイド装置4に向けて順方向に搬送される。この被圧延材15の搬送において、材端検出部6は、被圧延材15の長手方向端部を順次検出する。サイドガイド装置4は、材端検出部6による長手方向端部の検出後、被圧延材15がガイド部4a,4b間に進入するまでに、駆動部4c,4dの作用によってガイド部4a,4bの開口幅を調整する。これによって、1パス目のサイドガイド装置4の開度A1は、この被圧延材15の最大材幅に比して所定量大きい開口幅に相当する値に制御される。このように開度A1に調整されたサイドガイド装置4は、被圧延材15とガイド部4a,4bとを意図せず衝突させることなく、ガイド部4a,4bの間に被圧延材15を受け入れる。ガイド部4a,4bは、その対向端面に被圧延材15の側端面を適宜接触させて、被圧延材15の材幅方向の位置を調整する。
【0060】
被圧延材15は、ガイド部4a,4bの作用によって圧延機3の通り芯側へ案内されつつ、搬送装置2によって順方向に搬送され、ついで、圧延機3の圧延ロール(図示せず)によって噛み込まれる。圧延機3は、上述した圧延スケジュール(図3のステップS101参照)内の1パス目の圧延条件に従って、被圧延材15を順方向に圧延する。被圧延材15は、この1パス目の圧延によって、その材厚を減少させつつ長手方向および材幅方向に延伸して、図2に示したように、その長手方向に材幅分布を有するフィッシュテール形状に加工される。このような圧延後の被圧延材15の平面形状および搬送経路上における位置に基づいて、サイドガイド装置5は、開度の変更対象に設定される。
【0061】
サイドガイド装置5は、1パス目の圧延後の被圧延材15がガイド部5a,5b間に進入するまでに、駆動部5c,5dの作用によってガイド部5a,5bの開口幅を調整する。これによって、1パス目の圧延におけるサイドガイド装置5の初期の開度B1は、この1パス目の圧延後の被圧延材15の基準材幅Wcに比して所定量大きい開口幅に相当する値に制御される。
【0062】
ここで、図4に示すように、材端検出部6の検出位置とサイドガイド装置5のガイド部5a,5bとの間の距離L10は、材端検出部6およびサイドガイド装置5の配置によって決まる一定値である。被圧延材15は、搬送装置2および圧延機3の各作用によって、順方向に順次移動する。この被圧延材15の移動に伴って、被圧延材15の予測最大幅部は、材端検出部6の検出位置近傍から順方向に向けて移動する。なお、ここでいう予測最大幅部は、未圧延の被圧延材15に対して1パス目の圧延が行われた際に最大幅部15dとなることが予測される被圧延材15の一部分である。このような予測最大幅部の被圧延材15における相対位置は、図1に示した計算機8による被圧延材15の平面形状の算出結果に基づいて予測可能である。被圧延材15の予測最大幅部は、上述したように材端検出部6の検出位置近傍から順方向に向けて移動し、圧延機3による1パス目の圧延によって被圧延材15の最大幅部15dとなる。続いて、この最大幅部15dは、被圧延材15に対する1パス目の圧延に伴い順方向に移動し、図4に示すように、位置P1に到達する。この位置P1は、ガイド部5a,5bの圧延機3側端の位置P2に比して、サイドガイド装置5の開度変更の動作制御に要する被圧延材15の移動量分、上流側の位置である。サイドガイド装置5は、上述したように被圧延材15の予測最大幅部が圧延後の最大幅部15dとなりつつ材端検出部6の検出位置近傍から位置P1まで移動する期間、現在の開度B1を維持する。この期間、サイドガイド装置5は、1パス目の圧延後の被圧延材15のうちの先端部15aから中央部15c近傍までの領域(基準材幅Wc以下の領域)とガイド部5a,5bとを意図せず衝突させることなく、ガイド部5a,5bの間に被圧延材15を受け入れる。ついで、サイドガイド装置5は、最大幅部15dが位置P1に到達するタイミング、すなわち、上述した変更タイミングに、この開度B1を変更し始め、最大幅部15dが位置P2に到達するタイミングに、開度B1から開度B2まで開度変更を完了する。開度B2は、上述した開度変更量の算出値分(図3に示すステップS103参照)、開度B1を広げたものである。このように開度B2に調整されたサイドガイド装置5は、1パス目の圧延後の被圧延材15(特に最大幅部15d)とガイド部5a,5bとを意図せず衝突させることなく、ガイド部5a,5bの間に1パス目の圧延後の被圧延材15をその全材長に亘って受け入れる。ガイド部5a,5bは、その対向端面に1パス目の圧延後の被圧延材15の側端面を適宜接触させて、この被圧延材15の材幅方向の位置を調整する。この1パス目の圧延後の被圧延材15は、尾端部15bが圧延機3から抜け出し、且つ、先端部15aが材端検出部7によって検出されるまで順方向に移動する。
【0063】
なお、上述したサイドガイド装置5の開度の変更完了までの期間、被圧延材15は、図4に示すように、材端検出部6の検出位置を基準にして、距離L10から材長L1(図2参照)を減算した距離分、移動している。この被圧延材15の移動量は、サイドガイド装置5の開度変更の動作制御に要する被圧延材15の移動量に比して、十分大きい。
【0064】
上述した1パス目の圧延完了後、被圧延材15に対して2パス目の圧延が行われる。この2パス目の圧延では、図5に示すように、被圧延材15は、その最大幅部15dをサイドガイド装置5のガイド部5a,5b間に位置させた状態から、搬送装置2によって逆方向に搬送される。すなわち、サイドガイド装置5の現在の開度B2は、被圧延材15の最大材幅Wmaxに比して大きいものであり、且つ、被圧延材15の材幅方向の位置調整に好適なものである。さらには、ガイド部5a,5bの間に、1パス目の圧延完了後の被圧延材15が位置する。この場合、サイドガイド装置5は、開度の変更対象外に設定され、駆動部5c,5dの作用によって現在の開度B2を維持する。
【0065】
被圧延材15は、ガイド部5a,5bの作用によって圧延機3の通り芯側へ案内されつつ、搬送装置2によって逆方向に搬送され、ついで、圧延機3の圧延ロールによって噛み込まれる。圧延機3は、上述した圧延スケジュール内の2パス目の圧延条件に従って、被圧延材15を逆方向に圧延する。被圧延材15は、この2パス目の圧延によって、その材厚を更に減少させつつ長手方向および材幅方向に更に延伸して、その長手方向に材幅分布を有するフィッシュテール形状に加工される。このような圧延後の被圧延材15の平面形状および搬送経路上における位置に基づいて、サイドガイド装置4は、開度の変更対象に設定される。この時点において、サイドガイド装置4は、上述した1パス目の圧延の際に調整された開度A1を現開度としている。
【0066】
ここで、図5に示すように、材端検出部7の検出位置とサイドガイド装置4のガイド部4a,4bとの間の距離L11は、材端検出部7およびサイドガイド装置4の配置によって決まる一定値である。被圧延材15は、搬送装置2および圧延機3の各作用によって、逆方向に順次移動する。この被圧延材15の移動に伴って、被圧延材15の最大幅部15dは、ガイド部5a,5b間の位置から逆方向に向けて移動し、図5に示すように、位置P11まで移動する。この位置P11は、ガイド部4a,4bの圧延機3側端の位置P12に比して、サイドガイド装置4の開度変更の動作制御に要する被圧延材15の移動量分、下流側の位置である。サイドガイド装置4は、被圧延材15の最大幅部15dがガイド部5a,5b間の位置から位置P11まで移動する期間、現在の開度A1を維持する。ついで、サイドガイド装置4は、最大幅部15dが位置P11に到達するタイミング、すなわち、上述した変更タイミングに、駆動部4c,4dの作用によって、この開度A1を変更し始め、最大幅部15dが位置P12に到達するタイミングに、開度A1から開度A2まで開度変更を完了する。開度A2は、上述した開度変更量の算出値分、開度A1を広げたものである。このように開度A2に調整されたサイドガイド装置4は、2パス目の圧延後の被圧延材15(特に最大幅部15d)とガイド部4a,4bとを意図せず衝突させることなく、ガイド部4a,4bの間に2パス目の圧延後の被圧延材15をその全材長に亘って受け入れる。ガイド部4a,4bは、その対向端面に、2パス目の圧延後の被圧延材15の側端面を適宜接触させて、この被圧延材15の材幅方向の位置を調整する。この2パス目の圧延後の被圧延材15は、先端部15aが圧延機3から抜け出し、且つ、尾端部15bが材端検出部6によって検出される位置P13まで逆方向に移動する。
【0067】
なお、上述したサイドガイド装置4の開度の変更完了までの期間、被圧延材15は、図5に示すように、材端検出部7の検出位置を基準にして、距離L11から材長L2(図2参照)を減算した距離分、移動している。この被圧延材15の移動量は、サイドガイド装置4の開度変更の動作制御に要する被圧延材15の移動量に比して、十分大きい。
【0068】
上述した2パス目の圧延完了後、被圧延材15に対して3パス目の圧延が行われる。この3パス目の圧延では、図6に示すように、被圧延材15は、その最大幅部15dを材端検出部6の検出位置の近傍に位置させた状態から、搬送装置2によって順方向に搬送される。この時点において、サイドガイド装置4の現在の開度A2は、被圧延材15の最大材幅Wmaxに比して大きいものであり、且つ、被圧延材15の材幅方向の位置調整に好適なものである。さらには、ガイド部4a,4bの間に、2パス目の圧延完了後の被圧延材15が位置する。この場合、サイドガイド装置4は、開度の変更対象外に設定され、駆動部4c,4dの作用によって現在の開度A2を維持する。
【0069】
被圧延材15は、ガイド部4a,4bの作用によって圧延機3の通り芯側へ案内されつつ、搬送装置2によって順方向に搬送され、ついで、圧延機3の圧延ロールによって噛み込まれる。圧延機3は、上述した圧延スケジュール内の3パス目の圧延条件に従って、被圧延材15を順方向に圧延する。被圧延材15は、この3パス目の圧延によって、その材厚を更に減少させつつ長手方向および材幅方向に更に延伸して、その長手方向に材幅分布を有するフィッシュテール形状に加工される。このような圧延後の被圧延材15の平面形状および搬送経路上における位置に基づいて、サイドガイド装置5は、開度の変更対象に設定される。この時点において、サイドガイド装置5は、上述した2パス目の圧延の際に調整された開度B2を現開度としている。
【0070】
ここで、被圧延材15は、搬送装置2および圧延機3の各作用によって、順方向に順次移動する。この被圧延材15の移動に伴って、被圧延材15の最大幅部15dは、ガイド部4a,4bの間を通過して順方向に移動し、図6に示すように、位置P1まで移動する。この位置P1は、上述した位置P12に比して、サイドガイド装置4の開度変更の動作制御に要する被圧延材15の移動量分、下流側の位置である。サイドガイド装置5は、被圧延材15の最大幅部15dが材端検出部6の検出位置近傍から位置P1まで移動する期間、現在の開度B2を維持する。ついで、サイドガイド装置5は、最大幅部15dが位置P1に到達するタイミング(変更タイミング)に、駆動部5c,5dの作用によって、この開度B2を変更し始め、最大幅部15dが位置P2に到達するタイミングに、開度B2から開度B3まで開度変更を完了する。開度B3は、上述した開度変更量の算出値分、開度B2を広げたものである。このように開度B3に調整されたサイドガイド装置5は、3パス目の圧延後の被圧延材15(特に最大幅部15d)とガイド部5a,5bとを意図せず衝突させることなく、ガイド部5a,5bの間に3パス目の圧延後の被圧延材15をその全材長に亘って受け入れる。ガイド部5a,5bは、その対向端面に、3パス目の圧延後の被圧延材15の側端面を適宜接触させて、この被圧延材15の材幅方向の位置を調整する。この3パス目の圧延後の被圧延材15は、尾端部15bが圧延機3から抜け出し、且つ、先端部15aが材端検出部7によって検出されるまで順方向に移動する。
【0071】
なお、上述したサイドガイド装置5の開度の変更完了までの期間、被圧延材15は、図6に示すように、材端検出部6の検出位置を基準にして、距離L10から材長L1を減算した距離分、移動している。この被圧延材15の移動量は、サイドガイド装置5の開度変更の動作制御に要する被圧延材15の移動量に比して、十分大きい。
【0072】
上述した3パス目の圧延が完了した後、圧延スケジュールに設定された最終圧延パスまで、圧延機3による逆方向の圧延と順方向の圧延とが被圧延材15に対して適宜交互に繰り返される。これに並行して、サイドガイド装置4,5の開度が、圧延パス毎の被圧延材15の材幅等に対応して適宜変更される。このようなサイドガイド装置4,5の開度変更は、被圧延材15に対して逆方向の圧延が行われる場合、図5に示した2パス目の圧延と同様に行えばよく、被圧延材15に対して順方向の圧延が行われる場合、図6に示した3パス目の圧延と同様に行えばよい。なお、何れの圧延パスにおいても、サイドガイド装置4,5の開度変更は、図1に示した計算機8による演算処理結果に基づき、制御部10によって制御される。
【0073】
以上、説明したように、本発明の実施の形態では、順方向または逆方向に圧延方向を順次変更して圧延される被圧延材の圧延後の平面形状を圧延パス毎に算出し、この平面形状の算出結果をもとに、サイドガイド装置の開度変更量を算出し、この被圧延材の長手方向端部の検出位置を基準にして被圧延材の最大幅部がサイドガイド装置に到達するタイミングに、この算出した開度変更量までサイドガイド装置の現開度を変更し終えるように構成し、この開度変更後のサイドガイド装置によって、圧延機に対する相対的な被圧延材の幅方向の位置を調整している。
【0074】
このため、圧延パスを重ねる毎に被圧延材の圧延後の材幅(特に最大材幅)とサイドガイド装置に対する被圧延材の最大幅部の相対位置とが変化しても、被圧延材の圧延パス毎の材幅および最大材幅の増量に対応してサイドガイド装置の開度を容易に適正値に制御できるとともに、圧延パス毎の被圧延材の最大幅部とサイドガイド装置との相対位置関係に対応してサイドガイドの開度の変更タイミングを適切に設定できる。これによって、たとえ厚鋼板等の比較的材厚の大きい被圧延材であっても、被圧延材(特に、最大幅部を含む被圧延材の材幅方向端部)とサイドガイド装置との意図せぬ衝突を圧延パス毎に回避して、凹み不良や曲げ不良等の被圧延材の形状不良の発生を抑制できる。これとともに、各圧延パスにおいてサイドガイド装置のガイド部間に被圧延材を詰まらせることなく、このサイドガイド装置によって位置調整された被圧延材に対して、所望の圧延パス数分、順方向の圧延と逆方向の圧延とを順次円滑に行うことができる。以上の結果、最終圧延パス後の被圧延材の平面形状を予測に近いものにして、製品化のための被圧延材の切り落とし量を低減できることから、圧延製品の歩留まりを向上することができる。
【0075】
また、本発明の実施の形態では、圧延パス毎にサイドガイド装置の開度変更の要否を判断し、開度変更が必要であると判断した変更対象のサイドガイド装置の現開度を、上述した開度変更量まで変更するように構成している。このため、圧延パス毎に、開度変更を要する変更対象のサイドガイド装置のみに対し、被圧延材の平面形状に応じた開度の変更を必要なタイミングに制御できる。これによって、開度変更の必要がない変更対象外のサイドガイド装置の開度を無駄に変更してしまう事態を防止でき、この結果、圧延パス毎のサイドガイド装置の開度変更に消費される電力を低減できる。
【0076】
なお、上述した実施の形態では、HMD等の非接触型の材端検出部6,7によって被圧延材の長手方向端部を検出していたが、これに限らず、圧延機3の荷重計3aを材端検出部として用いてもよい。この場合、荷重計3aによる被圧延材15の圧延荷重の検出位置を基準にして、この圧延荷重の検出位置から変更対象のサイドガイド装置のガイド部まで被圧延材15の最大幅部15dが移動するタイミングに、この変更対象のガイド部の開度を上述した開度変更量に変更し終えればよい。
【0077】
また、上述した実施の形態では、被圧延材15の移動量を用いて開度の変更タイミングをとっていたが、これに限らず、被圧延材15の移動量と被圧延材の移動速度(搬送速度または圧延速度)との除算処理によって、被圧延材15の移動時間を算出し、この移動時間を用いて開度の変更タイミングをとってもよい。
【0078】
さらに、上述した実施の形態では、図2に示したように被圧延材15の後半部分に最大幅部15dが形成される場合を例示したが、これに限らず、被圧延材15の前半部分または中央部分等、後半部分以外に最大幅部15dが形成された被圧延材15に対しても本発明は適用可能である。すなわち、本発明において、被圧延材15における最大幅部15dの位置は特に問われない。
【0079】
また、上述した実施の形態では、圧延後の被圧延材15の少なくとも一部分がサイドガイド装置のガイド部間に位置する場合を例示したが、これに限らず、各圧延パスの圧延後の被圧延材15をサイドガイド装置のガイド部間の外部まで搬送してもよい。このような事態は、圧延後の被圧延材15の温度調整等、最終圧延パスに至る前の被圧延材15に対して必要な各種処理を行う場合に生じる。この場合、サイドガイド装置4,5の双方を適宜、開度の変更対象とすればよい。
【0080】
さらに、上述した実施の形態では、サイドガイド装置4,5の開度を増加変更していたが、これに限らず、被圧延材15の材幅に対応して、または被圧延材15の圧延完了をトリガーにして、サイドガイドの開度を減少変更してもよい。
【0081】
また、上述した実施の形態では、圧延機3を挟んで2つのサイドガイド装置4,5を配置していたが、これに限らず、圧延機3を挟んで上流側および下流側の各々にサイドガイド装置が少なくとも1つ配置されればよく、サイドガイド装置の配置数は、合計3つ以上であってもよい。
【0082】
さらに、上述した実施の形態では、熱間圧延ラインに可逆式圧延装置1が配置された場合を例示したが、これに限らず、本発明にかかる可逆式圧延装置1は、冷間圧延ライン等、他の圧延ラインに適用可能である。また、可逆式圧延装置1は、適用の圧延ラインにおいて、粗圧延を行ってもよいし、仕上圧延を行ってもよい。
【0083】
また、上述した実施の形態により本発明が限定されるものではなく、上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。例えば、被圧延材15は、鉄鋼材であってもよいし、銅またはアルミニウム等の鉄鋼材以外の金属材であってもよい。その他、上述した実施の形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例および運用技術等は全て本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0084】
1 可逆式圧延装置
2 搬送装置
3 圧延機
3a 荷重計
3b パルスジェネレータ
4,5 サイドガイド装置
4a,4b,5a,5b ガイド部
4c,4d,5c,5d 駆動部
6,7 材端検出部
8 計算機
9 記憶部
9a スケジュール情報
9b 形状情報
10 制御部
11 プロセスコンピュータ
15 被圧延材
15a 先端部
15b 尾端部
15c 中央部
15d 最大幅部
P1,P2,P11,P12,P13 位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6