【実施例】
【0016】
以下、図面を用いて実施例により本発明を具体的に説明する。
【0017】
(1)車両天井構造の構成
本実施例に係る車両天井構造1は、
図1に示すように、端末側3aでカーテンシールドエアバッグ2を覆う天井内装材3を備えている。このカーテンシールドエアバッグ2は、車両のルーフサイド部4に沿って折り畳まれて格納され、衝突時にサイドウィンドウ5を覆うように展開する。
【0018】
上記天井内装材3は、
図2に示すように、繊維層等からなる基材7と、この基材7の表面に積層され意匠面(即ち、車室内側面)となるニット等からなる表皮8と、を備えている。この天井内装材3の端末側3aに形成された一対の取付孔9a、9bを介して金属製のブラケット10にアシストグリップ11が取り付けられている。このブラケット10は、天井内装材3の車室外側に配設される金属製の車体パネル12に固定されている。なお、
図2中における符号6はゴム製のウェザストリップを示す。
【0019】
上記アシストグリップ11は、
図2に示すように、樹脂製で長尺状のグリップ本体14と、このグリップ本体14の両端部を軸支する支持軸15aを有する樹脂製の一対のベース部材15と、を備えている。これら各ベース部材15には、ブラケット10に形成された取付孔10aに係止する金属製のクリップ16を介して樹脂製で筒状の取付部17a、17bが取り付けられている。この取付部17a、17bは、天井内装材3の車室内側面の取付孔9a、9bの外周側に当接している。
【0020】
上記天井内装材3の車室外側面には、
図2及び
図3に示すように、アシストグリップ11の一対の取付部17a、17bの外周側のそれぞれに一対の環状溝20a、20bが形成されている。これら各環状溝20a、20bは、取付部17a、17bを囲むように連続する閉ループ状に形成されている。また、各環状溝20a、20bは、その溝幅が約1.0mmとされ、その溝深さが約0.5mmとされている。
【0021】
また、上記天井内装材3の車室外側面には、
図3に示すように、一対の環状溝20a、20bを連結する第1連結溝21a及び第2連結溝21bが形成されている。この第1連結溝21aは、一対の環状溝20a、20bのそれぞれの天井内装材3の端末側3aの部位を連結している(
図4参照)。また、第2連結溝21bは、一対の環状溝20a、20bを第1連結溝21aより天井内装材3の内方側で連結している(
図4参照)。また、各連結溝21a、21bは、車両前後方向に連続して延びている。また、各連結溝21a、21bは、その溝幅が約1.0mmとされ、その溝深さが約0.5mmとされている。さらに、第2連結溝21bの長手方向の両端側は、一対の取付孔9a、9bに接続されている。
【0022】
(2)車両天井構造の作用
次に、上記構成の車両天井構造1の作用について説明する。カーテンシールドエアバッグ2の展開時に天井内装材3の端末側3aが車室内側に開くときに、天井内装材3は、第1連結溝21a(
図3参照)を起点として折れ曲がり一対の環状溝20a、20bに沿って連動して折れ曲がり始める(
図2中の破線参照)。そして、天井内装材3の端末側3aが車室内側に更に開くと、天井内装材3が第2連結溝21b(
図3参照)に沿って折れ曲がるとともに取付部17a、17bの外周縁と干渉することで、天井内装材3の環状溝20a、20bの内側部位が車室外側に向かって筒状に折れ曲がり取付孔9a、9bが拡径される(
図2中の一点鎖線参照)。その後、天井内装材3の筒状の折れ曲がり部位が取付部17a、17bを滑って、天井内装材3がアシストグリップ11の取付部17a、17bから抜け出ることとなる(
図2中の二点鎖線参照)。
【0023】
一方、カーテンシールドエアバッグ2の非展開時においては、アシストグリップ11の格納状態(
図4(a)参照)及びアシストグリップ11の使用状態(
図4(b)参照)であっても、車室内側から天井内装材3の車室内側面に環状溝20a、20b及び連結溝21a、21bは見えない。
【0024】
(3)実施例の効果
以上より、本実施例の車両天井構造1によると、天井内装材3の車室外側面には、アシストグリップ11の取付部17a、17bの外周側に取付部17a、17bを囲む環状溝20a、20bが形成されているので、カーテンシールドエアバッグ2の展開時に天井内装材3の端末側3aが車室内側に開くときに、天井内装材3が環状溝20a、20bに沿って折れ曲がり、天井内装材3の環状溝20a、20bの内側部位が車室外側に向かって筒状に折れ曲がる。これにより、取付孔9a、9bが安定的に拡径して天井内装材3がアシストグリップ11の取付部17a、17bから円滑に抜ける。その結果、アシストグリップ11に過度の応力が集中することを防止することができる。また、車室内側から天井内装材3の車室内側面に環状溝20a、20b及び連結溝21a、21bが見えないため、天井内装材3のアシストグリップ11回りの見栄えを向上させることができる。
【0025】
また、本実施例では、天井内装材3の車室外側面には、アシストグリップ11に設けられた一対の取付部17a、17bのそれぞれの外周側に配設される一対の環状溝20a、20bを連結する連結溝21a、21bが形成されているので、天井内装材3が連結溝21a、21bに沿って折れ曲がることで天井内装材3が一対の環状溝20a、20bに沿って連動して折れ曲がる。
【0026】
また、本実施例では、一対の環状溝20a、20bのそれぞれの天井内装材3の端末側3aの部位を連結する第1連結溝21aを有しているので、天井内装材3が第1連結溝21aを起点として折れ曲がり易く、天井内装材3が一対の環状溝20a、20bに沿って更に確実に連動して折れ曲がる。よって、一対の取付孔9a、9bが更に安定的に拡径して天井内装材3がアシストグリップ11の一対の取付部17a、17bから更に円滑に抜ける。
【0027】
さらに、本実施例では、第1連結溝21aと、一対の環状溝20a、20bを第1連結溝21aより天井内装材の内方側を連結する第2連結溝21bと、を有しているので、天井内装材3が第1連結溝21aに加えて第2連結溝21bで折り曲げられる。よって、エアバッグ展開時に、第1連結溝21aで受けきれなかった折り曲げ応力を第2連結溝21bによって補助的に受けることができる。
【0028】
尚、本発明においては、上記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。すなわち、上記実施例では、取付部17a、17bを囲むように連続する閉ループ状の環状溝20a、20bを例示したが、これに限定されず、例えば、
図5(a)に示すように、取付部17a、17bを囲むように一部が破断した環状溝20a’、20b’を採用してもよい。この場合、環状溝20a’、20b’の破断部位が天井内装材3の端末側3aと反対側に設けられることが好ましい。
【0029】
また、上記実施例では、連続して延びる第2連結溝21bを例示したが、これに限定されず、例えば、
図5(b)に示すように、一部が破断した第2連結溝21b’を採用してもよい。
【0030】
また、上記実施例では、第1及び第2連結溝21a、21bを備える形態を例示したが、これに限定されず、例えば、
図5(c)に示すように、第1連結溝21aのみを備える形態としたり、3本以上の連結溝を備える形態としたりしてもよい。また、
参考例として、図5(d)に示すように、連結溝を備えずに環状溝20a、20bのみを備える形態
を挙げることができる。
【0031】
また、上記実施例では、ブラケット10を介して車体パネル12にアシストグリップ11を取り付けるようにしたが、これに限定されず、例えば、車体パネル12に直接的にアシストグリップ11を取り付けるようにしてもよい。
【0032】
また、上記実施例では、天井内装材3の車室内側面にアシストグリップ11の取付部17a、17bを当接させるようにしたが、これに限定されず、例えば、天井内装材3の車室内側面にアシストグリップ11の取付部17a、17bを対向させるようにしてもよい。
【0033】
また、上記実施例では、グリップ本体14を回転して使用状態とする回転式のアシストグリップ11を例示したが、これに限定されず、例えば、グリップ本体を引き出して使用状態とする引出式のアシストグリップを採用してもよい。
【0034】
さらに、上記実施例では、複数のアシストグリップ11を備える天井内装材3を例示したが、これに限定されず、例えば、少なくとも1つのアシストグリップを備える天井内装材であればよい。
【0035】
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述および図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲または精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料および実施例を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【0036】
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。