(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6036183
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】色見台
(51)【国際特許分類】
H01L 33/48 20100101AFI20161121BHJP
F21V 33/00 20060101ALI20161121BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20161121BHJP
【FI】
H01L33/48
F21V33/00 100
F21S2/00 311
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-241715(P2012-241715)
(22)【出願日】2012年11月1日
(65)【公開番号】特開2014-93344(P2014-93344A)
(43)【公開日】2014年5月19日
【審査請求日】2015年9月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】特許業務法人 インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100083839
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 泰男
(74)【代理人】
【識別番号】100120189
【弁理士】
【氏名又は名称】奥 和幸
(72)【発明者】
【氏名】井戸 祥人
(72)【発明者】
【氏名】杉山 徹
【審査官】
吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−001155(JP,A)
【文献】
特開2007−122950(JP,A)
【文献】
特開2007−178424(JP,A)
【文献】
特開2007−299590(JP,A)
【文献】
特開2011−181739(JP,A)
【文献】
特開2007−059260(JP,A)
【文献】
特開2010−027449(JP,A)
【文献】
特開2007−059758(JP,A)
【文献】
特開2012−119270(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0221330(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00−33/64
F21S 2/00
F21V 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
LED照明装置と、色評価の対象となる印刷物が置かれる台と、を備え、前記LED照明装置により前記台に置かれた印刷物が照らされる色見台において、
前記LED照明装置は、昼白色ランプと電球色ランプとの組合せに対して、少なくとも一つの単色LEDを組合せて構成され、
前記昼白色ランプは、青色LEDと、当該青色LEDにより励起される黄色発光蛍光体とを有し、前記電球色ランプは、青色LEDと、当該青色LEDにより励起される橙色発光蛍光体を有し、
前記LED照明装置は、前記昼白色ランプの励起波長ピークが445nmから455nmの範囲にあり、前記昼白色ランプの蛍光体発光波長ピークが550nmから560nmにあり、前記電球色ランプの励起波長ピークが450nmから460nmの範囲にあり、前記電球色ランプの蛍光体発光波長ピークが595nmから605nmにある組合せに対して、ピーク波長が500nmから510nmの青緑色LEDと、ピーク波長が465nmから475nmの青色LEDと、ピーク波長が655nmから665nmの赤色LEDとの少なくとも何れか一つの単色LEDを組合せて構成されることを特徴とする色見台。
【請求項2】
LED照明装置と、色評価の対象となる印刷物が置かれる台と、を備え、前記LED照明装置により前記台に置かれた印刷物が照らされる色見台において、
前記LED照明装置は、昼白色ランプと電球色ランプとの組合せに対して、少なくとも一つの単色LEDを組合せて構成され、
前記昼白色ランプは、青色LEDと、当該青色LEDにより励起される黄色発光蛍光体とを有し、前記電球色ランプは、青色LEDと、当該青色LEDにより励起される橙色発光蛍光体を有し、
前記LED照明装置は、前記昼白色ランプの励起波長ピークが445nmから455nmの範囲にあり、前記昼白色ランプの蛍光体発光波長ピークが550nmから560nmにあり、前記電球色ランプの励起波長ピークが450nmから460nmの範囲にあり、前記電球色ランプの蛍光体発光波長ピークが595nmから605nmにある組合せに対して、ピーク波長が500nmから510nmの青緑色LEDと、ピーク波長が465nmから475nmの青色LEDと、ピーク波長が655nmから665nmの赤色LEDとを組合せて構成されることを特徴とする色見台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED照明装置と、色評価の対象となる印刷物が置かれる台と、を備え、前記LED照明装置により前記台に置かれた印刷物が照らされる色見台の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、印刷現場などで色見台に置かれた印刷物の色を評価するために当該印刷物を照らす照明には、放電で発生した紫外線を蛍光体に当てて可視光線として発光させる白色蛍光灯タイプが用いられている。この蛍光灯(以下、「色評価用蛍光灯」という)は基準光と色のズレを数値として表した演色評価数(平均演色評価数(Ra)および特殊演色評価数(Ri))が高く、色ズレが少ない。
【0003】
近年、水銀利用製品の規制や国の施策により蛍光灯からLED(発光ダイオード)を用いたLED照明装置へ切り替わろうとしている。しかし、印刷現場で印刷物の色を見るのに耐えうるような演色評価数が高いLED照明装置は少ない。
【0004】
一方、特許文献1には、青色発光LED素子と、赤色発光LED素子と、前記青色発光LED素子によって励起される蛍光体であって、前記青色発光LED素子が発光する青色の波長帯域と前記赤色発光LED素子が発光する赤色の波長帯域との間の波長帯域の発光強度を補う発光スペクトルを発光する蛍光体とを備えることで色再現性が良く且つ発光効率も高い白色発光可能なLEDランプが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−57376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、色見台において印刷物の色を評価するためには、演色性が高く、且つ自然光のように可視光線の範囲内で全体的になだらかな分光強度分布特性を持つLED照明装置が低コストで実現できることが望まれるが、特許文献1等の従来技術においてはそのようなLED照明装置は知られていなかった。
【0007】
そこで、本発明は、上記点等を鑑みてなされたものであり、演色性が高く、且つ可視光線の範囲内で全体的になだらかな波長分布特性を持つLED照明装置を備える色見台を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、LED照明装置と、色評価の対象となる印刷物が置かれる台と、を備え、前記LED照明装置により前記台に置かれた印刷物が照らされる色見台において、前記LED照明装置は、昼白色ランプと電球色ランプとの組合せに対して、少なくとも一つの単色LEDを組合せて構成され、前記昼白色ランプは、青色LEDと、当該青色LEDにより励起される黄色発光蛍光体とを有し、前記電球色ランプは、青色LEDと、当該青色LEDにより励起される橙色発光蛍光体を有し
、前記LED照明装置は、前記昼白色ランプの励起波長ピークが445nmから455nmの範囲にあり、前記昼白色ランプの蛍光体発光波長ピークが550nmから560nmにあり、前記電球色ランプの励起波長ピークが450nmから460nmの範囲にあり、前記電球色ランプの蛍光体発光波長ピークが595nmから605nmにある組合せに対して、ピーク波長が500nmから510nmの青緑色LEDと、ピーク波長が465nmから475nmの青色LEDと、ピーク波長が655nmから665nmの赤色LEDとの少なくとも何れか一つの単色LEDを組合せて構成されることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、
LED照明装置と、色評価の対象となる印刷物が置かれる台と、を備え、前記LED照明装置により前記台に置かれた印刷物が照らされる色見台において、前記LED照明装置は、昼白色ランプと電球色ランプとの組合せに対して、少なくとも一つの単色LEDを組合せて構成され、前記昼白色ランプは、青色LEDと、当該青色LEDにより励起される黄色発光蛍光体とを有し、前記電球色ランプは、青色LEDと、当該青色LEDにより励起される橙色発光蛍光体を有し、前記LED照明装置は、前記昼白色ランプの励起波長ピークが445nmから455nmの範囲にあり、前記昼白色ランプの蛍光体発光波長ピークが550nmから560nmにあり、前記電球色ランプの励起波長ピークが450nmから460nmの範囲にあり、前記電球色ランプの蛍光体発光波長ピークが595nmから605nmにある組合せに対して、ピーク波長が500nmから510nmの青緑色LEDと、ピーク波長が465nmから475nmの青色LEDと、ピーク波長が655nmから665nmの赤色LEDとを組合せて構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、蛍光体を励起させ発光させるタイプの昼白色ランプと電球色ランプとを組合せて、足りない波長を素子単体を発光させるタイプの単色LEDで限定的に補うように構成したので、印刷物を評価する上で、演色性が高く、且つ可視光線の範囲内で全体的になだらかな波長分布特性を持つLED照明装置を備える色見台を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】(A)は、昼白色LEDと電球色LEDとの組合せに対して青緑色LED、青色LED、及び赤色LEDを組み合わせて構成されたLED照明装置の構成例を示す図であり、(B)は、LED基板11上におけるLEDの配置パターンの一例を示す図である。
【
図3】(A)は、昼白色LED、電球色LED、青緑色LED、青色LED、及び赤色LEDそれぞれの相対分光強度分布特性を示す図であり、(B)は、LED1灯、LED5灯、及び色評価用蛍光灯それぞれの相対分光強度分布特性を示す図であり、(C)に演色評価数を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態に係る色見台の概要構成例について説明する。
【0014】
図1は、色見台の概要構成例を示す図である。
図1に示すように、本実施形態に係る色見台1は、LED基板11と、色評価の対象となる印刷物(例えば画像の印刷物)が置かれる台12と、を備えて構成される。LED基板11は、前面が開口された筐体(ボックス)内の上部に設置され、LED基板11には、電源から電力が供給される。一方、台12は、当該筐体内の下部に設置される。
【0015】
LED基板11には、複数のLED(発光ダイオード素子)が配置されており、これら複数のLEDによりLED照明装置が構成され、当該LED照明装置により台12に置かれた印刷物が光で照らされる。このLED照明装置は、LEDドライバ回路を備え、昼白色ランプと電球色ランプとの組合せに対して、少なくとも一つの単色LEDを組合せて構成される。昼白色ランプ(以下、「昼白色LED」という)は、青色LEDと、当該青色LEDにより励起される黄色発光蛍光体とを有する。例えば、昼白色LEDは、青色LEDがカップ状の台座に配置され、当該台座内側(青色LEDが配置される側)に黄色発光蛍光体が塗布されて形成されている。昼白色LEDのピーク波長は、445nmから455nmの範囲にあるように構成される。電球色ランプ(以下、「電球色LED」という)は、青色LEDと、当該青色LEDにより励起される橙色発光蛍光体とを有する。例えば、電球色LEDは、青色LEDがカップ状の台座に配置され、当該台座内側(赤色LEDが配置される側)に橙色発光蛍光体が塗布されて形成されている。電球色LEDのピーク波長は、595nmから605nmの範囲にあるように構成される。
【0016】
昼白色LEDと電球色LEDは、いずれも、蛍光体を励起させ発光させるタイプのランプであり、素子単体を発光させるタイプの単色LEDに比べて、なだらかな分光強度分布特性を持つ。昼白色LEDと電球色LEDとの何れか一方だけでは、可視光線の範囲内のより広い波長範囲で全体的になだらかな分光強度分布特性を持たせることが困難なため、双方を組み合わせることで、可視光線の範囲内のより広い波長範囲で全体的になだらかな分光強度分布特性を持たせる(滑らかに全体の分光強度を持ち上げる)ように構成した。しかし、このように昼白色LEDと電球色LEDとを組合せても、強度が足りない波長の部分(分光強度分布上、谷となってしまう部分)がどうしても出てきてしまうので、その部分は単色LEDにより補うように構成した。
【0017】
昼白色LEDと電球色LEDとの組合せに対して組み合わせる単色LEDとしては、例えば、ピーク波長が500nmから510nmの青緑色LEDと、ピーク波長が465nmから475nmの青色LEDと、ピーク波長が655nmから665nmの赤色LEDとの少なくとも何れか一つが挙げられる。色見台1において印刷物の色を評価する上で最も効果の高い構成は、昼白色LEDと電球色LEDとの組合せに対して、上記で挙げた全ての単色LED、つまり、青緑色LED、青色LED、及び赤色LEDを組み合わせる構成である。なお、例えば、印刷物の種類等によって、上記で挙げた全ての単色LEDのうち、適用する1以上の単色LEDを決めるようにしてもよい。
【0018】
図2(A)は、昼白色LEDと電球色LEDとの組合せに対して青緑色LED、青色LED、及び赤色LEDを組み合わせて構成されたLED照明装置の構成例を示す図であり、
図2(B)は、LED基板11上におけるLEDの配置パターンの一例を示す図である。
図2(B)に示す例では、各LEDの個数は、演色性が最大となり、色温度が色評価用蛍光灯と同じ5000Kとなるように決定している。
図2(B)に示すように、昼白色LEDと電球色LEDとの組合せにおいて、昼白色LEDと電球色LEDとは同数でなくともよい。また、青緑色LED、青色LED、及び赤色LEDの数も同数でなくともよい。LED基板11上のLEDの配置パターンは、照度や色度のムラができるだけ小さくなるように調整されている。
【0019】
図3(A)は、昼白色LED、電球色LED、青緑色LED、青色LED、及び赤色LEDそれぞれの相対分光強度分布特性を示す図であり、
図3(B)は、LED1灯、LED5灯、及び色評価用蛍光灯それぞれの相対分光強度分布特性を示す図である。
図3(A)に示す例では、昼白色LEDの励起波長ピークが445nmから455nmの範囲にあり、昼白色LEDの蛍光体発光波長ピークが550nmから560nmにあり、電球色LEDの励起波長ピークが450nmから460nmの範囲にあり、電球色LEDの蛍光体発光波長ピークが595nmから605nmにある。
図3(B)に示すLED1灯とは、
図3(A)に示す分光強度分布特性を持つ昼白色LEDを指す。また、
図3(B)に示すLED5灯とは、
図3(A)に示す分光強度分布特性を持つ昼白色LED、電球色LED、青緑色LED、青色LED、及び赤色LEDの組合せを指す。また、色評価用蛍光灯は、従来から使用されていたものであるので、その分光強度分布特性を比較のために示している。
図3(B)より、本実施形態に係る5灯では、1灯でみられた480nm付近の谷が埋まり、なおかつ、650nm付近の強度も強くなり、色評価用蛍光灯の分光強度分布に近付いていることがわかる。また、700nm以上の長波長では、依然両者の差がみられるが、この波長域の色の見えに対する影響は非常に小さいため問題はない。
次に、
図3(C)に演色評価数を示す。
図3(C)に示すように、5灯の平均演色評価数Raは「91」であり、1灯の平均演色評価数Ra「78」と比較して大幅に改善している。数値を個別に比較すると、R1(紫)、R5(シアン)、R8(紫)、R9(赤)、R15(日本人の肌の色)が大きく改善しているのがわかる。R1、R5、R8は480nm付近の谷が埋まったことによって、R9、R15は600nmより長波長が強くなったことによって改善したと考えられる。
【0020】
以上説明したように、上記実施形態に係るLED照明装置によれば、蛍光体を励起させ発光させるタイプの昼白色ランプと電球色ランプとの組合せて、足りない波長を素子単体を発
光させるタイプの単色LEDで限定的に補うように構成したので、印刷物を評価する上で、演色性が高く、且つ可視光線の範囲内で全体的になだらかな波長分布特性を持つLED照明装置を実現でき、そのようなLED照明装置を備える色見台を提供することができる。また、本実施形態で使用される昼白色LEDは、一般的に市販されている白色LED照明を適用することができるので、演色性が高く、且つ可視光線の範囲内で全体的になだらかな波長分布特性を持つLED照明装置を、より低コストで実現することができる。
【符号の説明】
【0021】
1 色見台
11 LED基板
12 台