(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の制動制御装置を実現する最良の形態を、図面に示す実施の形態1に基づいて説明する。
まず、実施の形態1の制動制御装置の構成を説明する。
実施の形態1の制動制御装置の構成を、「全体システム構成」「回生制動装置」「制御システム」「VDCブレーキ液圧制御ユニット構成」に分けて説明する。
【0010】
[全体システム構成]
図1は、実施の形態1の制動制御装置を適用した前輪駆動による電動車両の構成を示す。以下、
図1に基づき、この制動制御装置の全体構成を説明する。
【0011】
実施の形態1の制動制御装置の制動トルク発生系は、液圧制動装置1と、回生制動装置50と、を備えている。
液圧制動装置1は、マスタシリンダ液圧発生装置10と、既存のVDCシステム(VDCは、「Vehicle Dynamics Control」の略)であるVDCブレーキ液圧制御ユニット2と、左前輪ホイールシリンダ4FLと、右前輪ホイールシリンダ4FRと、左後輪ホイールシリンダ4RLと、右後輪ホイールシリンダ4RRとを備えている。
【0012】
マスタシリンダ液圧発生装置10は、ドライバによる制動操作に応じて摩擦制動トルクを発生させるために前後輪(左前輪FLW、右前輪FRW、左後輪RLW、右後輪RRW)の各輪に付与するマスタシリンダ液圧を発生する。このマスタシリンダ液圧発生装置10は、ブレーキペダル15と、電動ブースタ12と、マスタシリンダ13と、リザーバ14と、を有する。つまり、ブレーキペダル15に加えられたドライバのブレーキ踏力を、電動ブースタ12により倍力し、マスタシリンダ13のプライマリピストンとセカンダリピストンによりマスタシリンダ液圧(プライマリ液圧とセカンダリ液圧)を作り出す。
【0013】
マスタシリンダ液圧発生装置10は、プライマリ液圧管61とセカンダリ液圧管62とにより接続されている。そして、両液圧管61,62は、各ホイールシリンダ4FL,4FR,4RL,4RRに対して、左前輪液圧管63と右前輪液圧管64と左後輪液圧管65と右後輪液圧管66とにより接続されている。詳細には、
図3に示すように、プライマリ液圧管61は、左前輪液圧管63と右後輪液圧管66とに接続されている。また、セカンダリ液圧管62は、右前輪液圧管64と左後輪液圧管65とに接続されている。
【0014】
各ホイールシリンダ4FL,4FR,4RL,4RRは、前後各輪FLW,FRW,RLW,RRWのブレーキディスクに設定され、VDCブレーキ液圧制御ユニット2からの液圧が加えられる。そして、VDCブレーキ液圧制御ユニット2は、各ホイールシリンダ4FL,4FR,4RL,4RRへの液圧印加時、ブレーキパッドによりブレーキディスクを挟圧することにより、前後輪に摩擦制動トルクを付与する。
そして、両液圧管61,62と各ホイールシリンダ4FL〜4RRに至る各液圧管61〜64の途中には、VDCブレーキ液圧制御ユニット2が設けられている。
【0015】
VDCブレーキ液圧制御ユニット2は、高速でのコーナ進入や急激なハンドル操作などによって車両姿勢が乱れた際、横滑りを防ぎ、優れた走行安定性を担保する車両挙動制御(=VDC制御)を行う。
このVDCブレーキ液圧制御ユニット2は、VDCモータ21により駆動する液圧ポンプ22,22を有し、ホイールシリンダ液圧PW/CYLの増圧・保持・減圧を制御する。また、VDCブレーキ液圧制御ユニット2は、制動時に各輪FLW,FRW,RLW,RRWにスリップが生じた場合は、各ホイールシリンダ4FL,4FR,4RL,4RRの液圧を減圧してロックを抑制する、いわゆるABS(Antilock Brake System)制御も実行可能である。
【0016】
[回生制動装置]
図1に戻り、走行用電動モータ5は、左右前輪(駆動輪)FLW,FRWの走行用駆動源として設けられ、駆動モータ機能と発電ジェネレータ機能を持つ。この走行用電動モータ5は、力行時、バッテリ電力を吸込み消費しながらのモータ駆動により、左右前輪(駆動輪)FLW,FRWへ駆動力を伝達する。そして、回生時、左右前輪の回転駆動に負荷を与えることで電気エネルギに変換し、発電分をバッテリ30へ充電する。つまり、左右前輪(駆動輪)FLW,FRWの回転駆動に与える負荷が、回生制動トルクとなる。
したがって、この走行用電動モータ5およびその回生制動トルクを制御する
図2に示すモータコントローラ103により回生制動装置50が構成されている。なお、走行用電動モータ5は、モータコントローラ103からの制御指令に基づいて、インバータ104により作り出された三相交流を印加することにより制御される。
【0017】
[制御システム]
実施の形態1の制動制御装置の制動トルク制御系は、
図2に示す統合コントローラ100と、ブレーキコントローラ101と、モータコントローラ103と、を備えている。
統合コントローラ100は、EVシステムの起動および停止制御や、駆動力演算およびモータ出力指令、減速力演算、モータ・ブレーキ出力指令、EVシステム診断およびフェールセーフ機能などを果たす。
また、統合コントローラ100は、回生協調ブレーキ制御時等において、ドライバ要求制動トルクを目標制動トルクとしてブレーキコントローラ101とモータコントローラ103を統合して制御する。この統合コントローラ100には、バッテリコントローラ102からのバッテリ充電容量情報、車輪速センサ92からの車速情報、ブレーキスイッチ93からの制動操作情報、ペダルストロークセンサ94からのブレーキペダル15のペダルストローク情報、マスタシリンダ液圧センサ16からのマスタシリンダ液圧情報、などが入力される。なお、車輪速センサ92としては、極低車速域までの車速検出が可能な車輪速回転数センサが用いられる。そして、車輪速回転数を時間微分演算処理することで、実減速度を求める。
【0018】
ブレーキコントローラ101は、統合コントローラ100からの信号とVDCブレーキ液圧制御ユニット2のマスタシリンダ液圧センサ16からの圧力情報を入力する。そして、所定の制御則にしたがって、VDCブレーキ液圧制御ユニット2のVDCモータ21(
図3参照)と、ソレノイドバルブ類25,26,27a〜27d,28a〜28d(
図3参照)と、に対し駆動指令を出力するとともに、統合コントローラ100に対し、回生協調制動トルクの目標値を出力する。
【0019】
モータコントローラ103は、駆動輪である左右前輪FLW,FRWに連結された(
図1参照)走行用電動モータ5にインバータ104を介して接続される。そして、ブレーキ制御時、統合コントローラ100から回生分指令を入力すると、走行用電動モータ5により発生する回生制動トルクを入力された回生分指令に応じて制御する。このモータコントローラ103は、走行時、走行状態や車両状態に応じて走行用電動モータ5により発生するモータトルクやモータ回転数を制御する機能も併せ持つ。
【0020】
なお、バッテリ30には、DC/DCジャンクションボックス105を介してインバータ104および充電器106が接続されている。また、充電器106には、充電ポート106aが接続されている。
【0021】
センサ群90には、前述したマスタシリンダ液圧センサ16、車輪速センサ92、ブレーキスイッチ93、ペダルストロークセンサ94の他、アクセルペダルスイッチ95、ヨーレイト/横/前後Gセンサ96、舵角センサ97などが設けられている。なお、各コントローラ100〜103は、CAN通信線100cにより相互に通信可能に接続されている。また、図ではセンサ群90は、統合コントローラ100に直接接続されているように図示しているが、センサ群90の各センサは、CAN通信線100cおよび各コントローラ101〜103を介して統合コントローラ100に接続されているものも含まれる。
【0022】
[VDCブレーキ液圧制御ユニット構成]
図3は、VDCブレーキ液圧制御ユニット2を示すブレーキ液圧回路図である。
VDCブレーキ液圧制御ユニット2は、ブレーキコントローラ101(
図2参照)からの指令に基づいてホイールシリンダ液圧PW/CYLの制御を行う。このVDCブレーキ液圧制御ユニット2は、VDCモータ21と、VDCモータ21により駆動する液圧ポンプ22,22と、低圧リザーバ23,23と、マスタシリンダ液圧センサ16と、を有する。
【0023】
また、このVDCブレーキ液圧制御ユニット2は、ホイールシリンダ液圧PW/CYLを増減圧するための複数のソレノイドバルブを備えている。すなわち、VDCブレーキ液圧制御ユニット2は、第1M/Cカットソレノイドバルブ25と、第2M/Cカットソレノイドバルブ26と、ソレノイドインバルブ27a,27b,27c,27dと、ソレノイドアウトバルブ28a,28b,28c,28dと、を備えている。
【0024】
第1M/Cカットソレノイドバルブ25および第2M/Cカットソレノイドバルブ26は、駆動時に閉弁される常開の電磁弁である。両カットソレノイドバルブ25,26は、VDCモータ21によるポンプ駆動時、プライマリ液圧管61およびセカンダリ液圧管62を遮断し、ホイールシリンダ液圧PW/CYL(下流圧)とマスタシリンダ液圧PM/CYL(上流圧)の差圧(=ポンプアップ液圧)を制御する。なお、両ソレノイドカットバルブ25,26は、一方弁25b,26bが並設され、閉弁時に、マスタシリンダ13から各ホイールシリンダ4FL,4FR,4RL,4RR側へのブレーキ液の供給が許容される。さらに、両ソレノイドカットバルブ25,26は、閉弁時に、各ホイールシリンダ4FL,4FR,4RL,4RRからマスタシリンダ13へブレーキ液が戻るのを許容するチェックバルブ25a,26aが内蔵されている。
【0025】
ソレノイドインバルブ27a,27b,27c,27dは、駆動時に閉弁する常開の電磁弁であり、閉弁することにより各ホイールシリンダ4FL,4FR,4RL,4RRのホイールシリンダ液圧PW/CYLを保持する。
【0026】
ソレノイドアウトバルブ28a,28b,28c,28dは、駆動時に開弁する常閉の電磁弁であり、開弁することにより各ホイールシリンダ4FL,4FR,4RL,4RRのホイールシリンダ液圧PW/CYLを低圧リザーバ23に逃がして減圧する。
【0027】
このように、ソレノイドインバルブ27a〜27dおよびソレノイドアウトバルブ28a〜28dの開閉状態をそれぞれ独立制御することにより、各ホイールシリンダ4FL,4FR,4RL,4RRへのホイールシリンダ液圧PW/CYLを各輪独立で制御する。これにより、VDCブレーキ液圧制御ユニット2は、いわゆる、VDC制御、TCS制御、ABS制御、回生協調ブレーキ制御、前後輪制動トルク配分制御、等を行う。
【0028】
図3は、各ホイールシリンダ4FL,4FR,4RL,4RRの増圧時の状態を示しており、各バルブ25,26,27a〜27d,28a〜28dは、非作動状態となっている。この増圧時には、マスタシリンダ液圧PM/CYLおよび/またはポンプ圧を、各ホイールシリンダ4FL,4FR,4RL,4RRに供給し、増圧することができる。なお、ポンプ圧による増圧を行なう場合には、両カットソレノイドバルブ25,26を閉弁させる。
【0029】
また、各ホイールシリンダ4FL,4FR,4RL,4RRにおいてホイールシリンダ液圧PW/CYLを保持する場合は、保持する各ホイールシリンダ4FL,4FR,4RL,4RRに接続されたソレノイドインバルブ27a〜27dに通電して閉弁させる。この場合、ホイールシリンダ液圧PW/CYLが、閉弁状態のソレノイドインバルブ27a〜27dおよびソレノイドアウトバルブ28a〜28dの間に閉じこめられ、ホイールシリンダ液圧PW/CYLが保持される。
【0030】
また、各ホイールシリンダ4FL,4FR,4RL,4RRにおいてホイールシリンダ液圧PW/CYLを減圧する場合は、減圧する各ホイールシリンダ4FL,4FR,4RL,4RRに接続されたソレノイドインバルブ27a〜27dに通電して閉弁させるとともに、ソレノイドアウトバルブ28a〜28dに通電して開弁させる。この場合、ホイールシリンダ液圧PW/CYLは、閉弁状態のソレノイドインバルブ27a〜27dによりマスタシリンダ13側と遮断され、かつ、開弁状態のソレノイドアウトバルブ28a〜28dを介して低圧リザーバ23側に連通されて、減圧される。
【0031】
以上の、増圧、保持、減圧を各輪にて、独立して制御することにより、前述のように各ホイールシリンダ4FL,4FR,4RL,4RRへのホイールシリンダ液圧PW/CYLを各輪独立で制御することができる。
【0032】
また、低圧リザーバ23は、ピストン23pに、ブレーキ液の貯留量が所定値未満である場合にチェックボール23aを押上可能なプッシュロッド23bが設けられている。
【0033】
[回生協調制動制御]
図4は、実施の形態1のブレーキ制御装置における統合コントローラ100、ブレーキコントローラ101、モータコントローラ103にて実行される回生協調制動制御の処理の流れを示す。この処理は、制動操作の開始をブレーキスイッチ93から入力すると開始される。
【0034】
ステップS1では、ペダルストロークセンサ94からのストローク信号およびマスタシリンダ液圧センサ16からのマスタシリンダ液圧PM/CYLを読み込み、これに基づいてドライバ要求制動トルク相当の目標制動トルクを求める。
ステップS2では、バッテリコントローラ102からのバッテリ電圧およびバッテリ温度に基づくバッテリ充電容量(バッテリSOC(「State Of Charge」の略))などのバッテリ情報や、車輪速センサ92からの車速情報に基づいて、回生制動可能か否か判定する。そして、ステップS2において回生制動可能と判定した場合は、ステップS3に進んで回生協調制動制御を実施する。ステップS2において回生制動不可能と判定した場合は、ステップS4に進んで回生協調制動制御を非実施とする。
ここで、回生制動不可能な場合は、例えば、バッテリSOCが上限値を越えている満充電状態である場合や、バッテリ温度があらかじめ設定された上限温度よりも高い場合や、車速が設定車速域よりも低いあるいは高い場合などである。
【0035】
ステップS3における回生協調制動制御では、車速などに基づいて目標回生制動トルクを演算した後、目標制動トルクと目標回生制動トルクとの差分を摩擦制動トルクにより発生させるようにVDCブレーキ液圧制御ユニット2を制御する。
【0036】
[交互開弁処理]
回生協調制動制御時には、ホイールシリンダ液圧PW/CYLの上昇を制限するために、常閉のソレノイドアウトバルブ28a〜28dを開弁させてマスタシリンダ13からのブレーキ液を低圧リザーバ23へ送り込む。
これにより、ブレーキ液が各ホイールシリンダ4FL,4FR,4RL,4RRに流れ込んで摩擦制動トルクが発生するのが制限される。
【0037】
このソレノイドアウトバルブ28a〜28dの開弁制御について、
図5のフローチャートに基づいて説明する。
このようなソレノイドアウトバルブ28a〜28dの開弁制御は、回生協調制動制御の実施時において、ドライバがブレーキペダル15を踏み込んでいる途中に実施する。すなわち、ドライバがブレーキペダル15を踏み込んで、マスタシリンダ13からブレーキ液が各ホイールシリンダ4FL,4FR,4RL,4RRに向けて流れ込む際に実施する。よって、ブレーキペダル15の踏込量が一定となって、上記ブレーキ液の流れが生じない場合には、実施されない。
【0038】
まず、ステップS101では、ペダルストロークセンサ94の検出に基づいてブレーキペダルのストローク速度(制動操作速度)Vstを読み込んで、次のステップS102に進む。なお、本制御は上記のようにブレーキペダル15の踏込途中に実施されるものであり、このステップS101では、ストローク速度Vstは、0よりも大きな正の値であることが前提である。
ステップS102では、ヨーレイト/横/前後Gセンサ96の検出に基づいて車両前後加速度Gを読み込み、次のステップS103に進む。
【0039】
ステップS103では、ブレーキペダル15のストローク速度Vstが、予め設定されたゆっくり踏み判定閾値k0よりも小さなゆっくり踏みか否かを判定し、ゆっくり踏みの場合はステップS103に進み、ゆっくり踏みでない場合はステップS112に進む。
このステップS112では、通常のアウトバルブ開弁制御を実施する。すなわち、アウトバルブ通常制御では、ソレノイドアウトバルブ28a〜28dを全て開弁させる。また、回生協調制動制御では、回生制動は、制動操作開始時点から所定時間の経過などの終了条件が成立したら終了し、摩擦制動とのすり替えを実施する。よって、この通常のアウトバルブ開弁制御では、所定時間の経過などの終了条件の成立による回生制動の終了に応じてソレノイドアウトバルブ28a〜28dを閉弁させる。
【0040】
ステップS103にてゆっくり踏みと判定されて進むステップS104〜ステップS110では、交互開弁処理を実行する。
ここで、
図6によりゆっくり踏みについて説明する。
図6は横軸が時間を示し、縦軸がブレーキペダル15のストローク量あるいは車両前後加速度Gを示している。このように、交互開弁処理は、ブレーキペダル15の踏込時の単位時間あたりのストローク量あるいは車両前後Gが設定値未満であって、目標制動トルクが最大回生制動トルク未満の場合に実施する。そして、このゆっくり踏みを実施する領域を規定する時間t0は、ソレノイドアウトバルブ28a〜28dの開弁状態を継続した場合に、熱制限によって制限される後述の上限時間Tlimに相当する。
したがって、ステップS103の「ゆっくり踏み判定閾値k0」は、
図6の「交互開弁処理を実施するエリア」と「交互開弁処理を実施しないエリア」とを判別する値である。
【0041】
次に、ステップS104以降で実施する交互開弁処理について説明する。
この交互開弁処理では、第1配管系統に設けられた前輪側のソレノイドアウトバルブ28c,28bを開弁させる第1開弁処理と、第2配管系統に設けられた後輪側のソレノイドアウトバルブ28a,28dを開弁させる第2開弁処理と、を交互に実行する。
本実施の形態1では、第1配管系統は、左右前輪FLW,FRWのホイールシリンダ4FL,4FRに接続された左前輪液圧管63と右前輪液圧管64とにより構成している。一方、第2配管系統は、左右後輪RLW,RRWのホイールシリンダ4RL,4RRに接続された左後輪液圧管65と右後輪液圧管66とにより構成している。
【0042】
ステップS104にて実行する第1開弁処理では、第1配管系統である左前輪液圧管63と右前輪液圧管64とに設けられたソレノイドアウトバルブ28c,28bを開弁し、後輪側のソレノイドアウトバルブ28a,28dは閉弁状態に維持する。
一方、ステップS108にて実行する第2開弁処理では、第2配管系統である左後輪液圧管65と右後輪液圧管66とに設けられたソレノイドアウトバルブ28a,28dを開弁し、前輪側のソレノイドアウトバルブ28c,28bは閉弁させる。
【0043】
ここで、第1開弁処理および第2開弁処理の実行時間は、予め設定されている。すなわち、第1開弁処理の1回目の実行時間をT1
1、2回目の実行時間をT1
2、n回目の実行時間をT1
nとし、第2開弁処理の1回目の実行時間をT2
1、2回目の実行時間をT2
2、n回目の実行時間をT2
nとした場合、各実行時間は下記の式(1)の関係となる。
T1
1>T2
1>T1
2>T2
2・・>T1
n>T2
n ・・・(1)
つまり、各開弁処理時間は、実行回数を重ねる度に短くなるよう設定されている。
【0044】
ここで、各開弁時間Tnおよび後述のステップS106、S109にて用いる上限時間Tlimについて、
図7により説明する。
上述のように、ソレノイドアウトバルブ28a〜28dの1回の開弁時間(作動時間)Tnは、残熱の影響を考慮して、交互開弁処理の開弁回数が増すほど、開弁時間(作動時間)T1
n,T2
nを短く設定する。そして、これら開弁時間を積算した積算時間Ttolが、上限時間Tlimを越えないようにする。
【0045】
そこで、ステップS104の第1開弁処理およびステップS108の第2開弁処理と同時に、下記の式(2)に示すように開弁時間の積算を行う。
Ttol=T1
1+T2
1+T1
2+T2
2・・+T1
n+T2
n ・・・(2)
さらに、本実施の形態1では、ステップS104の第1開弁処理とステップS108の第2開弁処理との切り換え時期には、両開弁処理を時間的に重ならせて、全てのソレノイドバルブ28a〜28dが同時に開弁されるラップ時間tLを形成するラップ処理を実行している(
図9のtL1〜tL3参照)。したがって、ステップS104の第1開弁処理とステップS108の第2開弁処理とでは、1回目の第1開弁処理以外では、実行中の開弁処理の終了制御も同時に行っている。すなわち、ステップS108の第2開弁処理では、第2開弁処理を開始して、ラップ時間tLが経過した後に、実行中の第1開弁処理を終了させる処理を行う。また、ステップS104の第1開弁処理においても、第1開弁処理の2回目以降の実施の際には、第1開弁処理を開始して、ラップ時間tLが経過した後に、実行中の第2開弁処理を終了させる処理を行う。
【0046】
ステップS104〜ステップS110において以上のような交互開弁処理を実行すべく、ステップS104の第1開弁処理の実行後に進むステップS105では、ストローク速度Vstを読み込む。
そして、次のステップS106では、交互開弁処理を継続する条件を満たしているか否か判定する。すなわち、ステップS106では、積算時間Ttolが予め設定された上限時間Tlim未満であるか、ストローク速度Vstがゆっくり踏み判定閾値k0未満であるか、のいずれとも満足するか否かにより継続条件を満たすか否か判定する。継続条件を満足する場合はステップS107に進み、継続条件を満足しない場合は、ステップS112に進んで、通常のアウトバルブ開弁制御に進む。
【0047】
ここで、上限時間Tlimについて
図8に基づいて説明する。
ソレノイドアウトバルブ28a〜28dの開弁時間は、ドライバがブレーキペダル15を踏んでいる時間内に限られる。このとき、ブレーキペダル15のストローク量が一定ストローク量となるのに要する踏込時間を
図8(a)に示すTt2とすると、車両前後方向加速度Gが一定となるのに要する時間Tt1は、Tt1>Tt2の関係となる。
この関係を最大回生制動トルク相当に当て嵌めた場合に、上限時間Tlimは、ブレーキペダル15のストローク量が最大回生制動トルク相当のストローク量となるのに要する踏込時間であるTt2よりも小さな時間に設定している。すなわち、Tt1>Tt2>Tlimとなるように設定されている。ちなみに、本実施の形態1では、開弁時間Tnを、
図7に示すように設定していること、ならびに交互開弁処理を実行することにより、開弁の積算時間Ttolが上限時間Tlim未満では、ソレノイドバルブ28a〜28dの発熱量が、許容最高温度に達しないようになっている。
【0048】
ステップS106においてYES判定にて進むステップS107では、最新のブレーキペダル15のストローク速度Vstを読み込んだ後、ステップS108に進んで、前述の第2開弁処理を実行し、ステップS109に進む。
【0049】
ステップS109では、ステップS108による第2開弁処理の実行時間T2
nを積算した積算時間Ttolが上限時間Tlim未満であるか、あるいは、ストローク速度Vstがゆっくり踏み判定閾値k0未満であるか判定し、そのいずれも満足する場合ステップS110に進む。一方、そのいずれでも無い場合は、ステップS112に進んで、通常のアウトバルブ開弁制御に進む。
【0050】
ステップS110では、ストローク速度Vst=0であるか否か判定し、Vst=0の場合はステップS111に進んで全ソレノイドアウトバルブ28a〜28dを閉弁させ、ストローク速度Vst≠0の場合は、ステップS103からの交互開弁処理を続行する。
【0051】
(実施の形態1の作用)
次に、実施の形態1の制動制御装置および比較例の動作例を
図9のタイムチャートに基づいて説明する。
このタイムチャートは、t1の時点でドライバが制動操作を開始した場合の動作例を示している。このときの制動操作は、本願明細書で言う「ゆっくり踏み」、すなわち、ブレーキペダル15のストローク速度Vstがゆっくり踏み判定閾値k0以下のゆっくりとした踏み込みであって、目標制動トルクが最大回生制動トルクに満たない操作である。また、この制動操作では、その後、t8の時点でブレーキペダル15の踏込量が一定となっている。
【0052】
このような制動操作では、回生制動可能な状況であれば、回生協調制動制御を実施し、図示の例では、最大回生制動トルクに満たない操作であることから、目標制動トルクは、その全てを回生制動トルクにより発生させている。
【0053】
「ゆっくり踏み」による制動操作を行った場合、
図5のフローチャートのS103においてYES判定され、交互開弁処理が開始されて、ステップS104の第1開弁処理が実行される。これにより、第1配管系統としての左前輪液圧管63および右前輪液圧管64に設けられたソレノイドアウトバルブ28b,28cが、t3の時点まで開弁される。これにより、制動操作に応じ、マスタシリンダ13からプライマリ液圧管61およびセカンダリ液圧管62を経て、各ホイールシリンダ4FL,4FR,4RL,4RRに供給されるブレーキ液は、低圧リザーバ23,23へ逃がされる。よって、ホイールシリンダ液圧PW/CYLの発生は0に制限される。
【0054】
その後、t2の時点から、第2開弁処理が実行されて、第2配管系統としての左後輪液圧管65および右後輪液圧管66に設けられたソレノイドアウトバルブ28a,28dが、t5の時点まで開弁される(ステップS108)。これにより、マスタシリンダ13からプライマリ液圧管61およびセカンダリ液圧管62に供給されるブレーキ液は、第1開弁処理と同様に低圧リザーバ23,23へ逃がされ、ホイールシリンダ液圧PW/CYLの発生は0に制限される。
【0055】
また、第2開弁処理を開始するt2の時点は、第1開弁処理を終了するt3の時点よりも前に設定されている。これにより、第1配管系統のソレノイドアウトバルブ28b,28cおよび第2配管系統のソレノイドアウトバルブ28a,28dが同時に開弁する時間帯であるラップ時間tL1が設定されている。
このラップ時間tL1の設定により、両配管61,62が低圧リザーバ23へ連通された状態を途切れることなく維持でき、低圧リザーバ23,23への流量を一定に保ち、液圧変動によるペダルフィーリング悪化を防止できる。
【0056】
そして、第2開弁処理を終了してソレノイドアウトバルブ28a,28dを閉じるt5の時点よりも前のt4の時点から、2回目の第1開弁処理が開始される。この2回目の第1開弁処理は、2回目の第2開弁処理が開始されるt6の時点よりも後の、t7の時点で終了される。
【0057】
その後、2回目の第2開弁処理が終了したt9の時点で、交互開弁処理を終了している。すなわち、t9の時点で、ステップS109によりNO判定され、S112の通常のアウトバルブ開弁制御に基づいて、ソレノイドアウトバルブ28a〜28dを閉弁することになる。
また、このt9の時点では、ブレーキペダル15の踏込量が一定となり、開弁条件が不成立となり、ステップS110にてNO判定され、ソレノイドアウトバルブ28a〜28dが閉弁される。なお、ブレーキペダル15の踏込量が一定であるため、マスタシリンダ13からホイールシリンダ4(FL,FR,RL,RR)へのブレーキ液の流量が無く、ソレノイドアウトバルブ28a〜28dを閉弁してもホイールシリンダ液圧PW/CYLは発生しない。
【0058】
このように、回生協調制動制御時に、回生制動トルクを発生させるのに伴い液圧制動装置1による摩擦制動トルクの発生を制限するが、この際の制動操作が「ゆっくり踏み」の場合、ソレノイドアウトバルブ28a〜28dの開弁は、交互開弁処理により行う。これにより、交互開弁処理を実行するt1〜t9までの時点において、第1配管系統のソレノイドアウトバルブ28b,28cは、t3〜t4の時点の間およびt7の時点以降、閉弁状態となってソレノイドの駆動が停止される。このため、ソレノイドアウトバルブ28b,28cを、t1〜t9の時点まで開弁し続けている場合よりも、ソレノイドアウトバルブ28b,28cの発熱を抑えることができる。
【0059】
同様に、第2配管系統のソレノイドアウトバルブ28a,28dは、交互開弁処理を実行するt1〜t9までの時点において、t1〜t2およびt5〜t6の間、閉弁状態となりソレノイドの駆動が停止される。このため、ソレノイドアウトバルブ28a,28dも、t1〜t9の間開弁し続けている場合よりも、発熱を抑えることができる。
【0060】
次に、実施の形態1の効果を説明する。
実施の形態1の制動制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
1)実施の形態1の制動制御装置は、
車両の駆動輪としての左右前輪FLW,FRWに加える回生制動トルクを制御する回生制動装置50と、
車両におけるドライバの制動操作に伴って形成されたマスタシリンダ液圧PM/CYLをホイールシリンダ4(FL,FR,RL,RR)へ第1配管系統(左前輪液圧管63および右前輪液圧管64)および第2配管系統(左後輪液圧管65および右後輪液圧管66)の2系統で供給して摩擦制動トルクを発生させる液圧制動装置1と、
各配管系統に設けられ、開弁作動時にマスタシリンダ13からホイールシリンダ4(FL,FR,RL,RR)へ供給されるブレーキ液を低圧リザーバ23,23へ抜いてホイールシリンダ4(FL,FR,RL,RR)にて発生する摩擦制動トルクの上昇を制限可能とするソレノイドアウトバルブ28a〜28dを備えたVDCブレーキ液圧制御ユニット2と、
制動操作時に、回生制動装置50により回生制動トルクを発生させる一方で、VDCブレーキ液圧制御ユニット2の少なくともソレノイドアウトバルブ28a〜28dの開閉を制御して摩擦制動トルクを制御する回生協調制動制御を行う制動トルク制御部としての統合コントローラ100と、
制動トルク制御部としての統合コントローラ100に含まれ、回生協調制動制御においてソレノイドアウトバルブ28a〜28dを開弁させる際に、マスタシリンダ13からのブレーキ液を第1配管系統(左前輪液圧管63および右前輪液圧管64)に設けられた(第1の)ソレノイドアウトバルブ28b,28cを開弁させて低圧リザーバ23へ排出する第1開弁処理と、マスタシリンダ13からのブレーキ液を第2配管系統(左後輪液圧管65および右後輪液圧管66)の(第2の)ソレノイドアウトバルブ28a,28dを開いて低圧リザーバ23へ排出する第2開弁処理と、を交互に繰り返す交互開弁処理を行うアウトバルブ制御部(
図9のフローチャートの処理を実行する部分)と、
を備えていることを特徴とする。
したがって、交互開弁処理を行った場合、第1配管系統のソレノイドアウトバルブ28b,28cを開いているときに、第2配管系統のソレノイドアウトバルブ28a,28dは閉じられる。したがって、本実施の形態1では、全てのソレノイドアウトバルブ28a〜28dを同時に開いた場合と比較して、ソレノイドアウトバルブ28a〜28dの閉弁中の温度上昇を抑制でき、トータルでのソレノイドアウトバルブ28a〜28dの開放時間が延長できる。
よって、回生制動トルクを最大回生制動トルクへ上昇させるまでの間に、ソレノイドアウトバルブ28a〜28dの温度上昇により開放継続できなくなることを抑制できる。
これにより、ソレノイドアウトバルブ28a〜28dの温度上昇を原因とした回生制動トルクの発生制限を行うことが抑制され、その分、回生効率の向上を図ることができる。
【0061】
2)実施の形態1の制動制御装置は、
アウトバルブ制御部(
図9のフローチャートの処理を実行する部分)は、交互開弁処理における第1開弁処理と第2開弁処理との切り換え時に、第1・第2両開弁処理を重ならせて全ソレノイドアウトバルブ28a〜28dが同時に開弁するラップ時間帯(tL1〜tLn)を形成するラップ処理を行うことを特徴とする。
このラップ時間tLnの設定により、両配管61,62が低圧リザーバ23へ連通された状態を途切れることなく維持でき、低圧リザーバ23への流量を一定に保持できる。このため、本実施の形態1では、例えば、同時に切り換えを行った場合などにおいて一時的に上記連通状態が途切れ、流量変化が生じた場合と比較して、液圧変動によるペダルフィーリング悪化を防止できる。
【0062】
3)実施の形態1の制動制御装置は、
アウトバルブ制御部(
図9のフローチャートの処理を実行する部分)は、各開弁処理の実行時間を積算する積算部(S104,S108)と、この積算部の積算時間Ttolが、制動操作量と車両前後加速度との少なくとも一方(
図8のTt1,Tt2の少なくとも一方)に基づいてソレノイドアウトバルブ28a〜28dの発熱量を設定範囲に抑えるよう設定された上限時間Tlimに達する前に交互開弁処理を終了する終了時間設定部(S106,S109)と、を備えていることを特徴とする。
このように、第1開弁処理と第2開弁処理とによる開弁時間の積算を行うことにより、ソレノイドアウトバルブ28a〜28dに対する熱影響時間を確実に把握することができる。そして、積算時間Ttolが、設定された上限時間Tlimを越える前に交互開弁処理を終了することにより、ソレノイドアウトバルブ28a〜28dへの熱影響を抑制することができる。
加えて、交互開弁制御は、ブレーキペダル15の踏込量が増加中に実行される。したがって、制動操作量と車両前後加速度Gとのいずれかに基づいて、ソレノイドアウトバルブ28a〜28dの必要最大開弁時間を推定可能である。そして、この必要最大開弁時間と発熱量との関係に基づいて、上限時間Tlimを最適に設定することが可能となる。
【0063】
具体的には、本実施の形態1では、制動操作量(ペダルストローク)に基づいて、ソレノイドアウトバルブ28a〜28dの開弁が必要な目標制動トルクである最大回生制動トルクに達する時間Tt2を求める。そして、この時間Tt2により、摩擦制動トルクの発生を抑制するのに必要な最大時間を求めることができる。上限時間Tlimは、この時間Tt2よりも短い時間に設定することにより適正に設定することができる。
また、車両前後加速度Gに基づいて、最大回生制動トルクに達する時間Tt1を求めることができる。上限時間Tlimは、この時間Tt1よりも短い時間に設定することにより、適正に設定することができる。
すなわち、本実施の形態1では、交互開弁処理を実施すること、ならびに、開弁時間Tnを、
図7に示すように、開弁の度に少しずつ短く設定することにより、ゆっくり踏みの場合でも、最大回生制動トルクに達するまでの開弁が可能となった。そこで、上限時間Tlimを、このように最大回生制動トルクに基づいて、簡便に設定可能となった。
【0064】
さらに、本実施の形態1では、上記両時間Tt1,Tt2を求め、上限時間Tlimを、両時間Tt1,Tt2未満とした。
これにより、両時間Tt1,Tt2のいずれか一方のみに基づいて上限時間Tlimを設定する場合よりも、より精度の高い上限時間Tlimの設定が可能であり、上限時間Tlimの誤設定のリスクを軽減できる。
【0065】
4)実施の形態1の制動制御装置は、
アウトバルブ制御部(
図9のフローチャートの処理を実行する部分)は、制動操作速度であるストローク速度Vstが設定値(ゆっくり踏み判定閾値k0)以下の場合に、交互開弁処理を実行する実行判定部(ステップS103)を備えていることを特徴とする。
ブレーキペダル15のストローク速度Vstが設定値(ゆっくり踏み判定閾値k0)以下の場合、VDCブレーキ液圧制御ユニット2による減圧作動時間(ソレノイドアウトバルブ28a〜28dの開弁時間)が相対的に長くなる。したがって、このような状況に交互開弁処理を行うことにより、ソレノイドアウトバルブ28a〜28dのトータルの開放時間を確実に延長することができ、その分、上記1)のように、回生効率の向上を図ることが可能となる。
【0066】
以上、本発明の制動制御装置を実施の形態に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0067】
例えば、実施の形態では、本発明の制動制御装置を、前輪駆動の電動車両へ適用した例を示した。しかし、本発明の制動制御装置は、回生協調制動制御を行う車両であれば、後輪駆動、全輪駆動の電動車両あるいはハイブリット車両や燃料電池車に適用することもできる。
さらに、実施の形態では、回生協調制動制御の際に、液圧制動装置による摩擦制動トルクを制御するのにあたり、ソレノイドアウトバルブを開弁してホイールシリンダ液圧を0に制限する例を示した。しかしながら、ソレノイドアウトバルブを開弁するものであれば、ホイールシリンダ液圧は0よりも大きな液圧に制御するようにしてもよい。
また、実施の形態では、交互開弁処理時に、第1開弁処理と第2開弁処理との切り換え時に、両処理を重ならせるラップ処理を行う例を示したが、このラップ処理を実施しなくてもよい。すなわち、ラップ処理を実行しない場合でも、所期の目的であるソレノイドアウトバルブの開放時間の延長を図ることが可能である。
また、実施の形態では、終了時間設定部は、上限時間を、制動操作量(ストローク量)と車両前後加速度との両方に基づいて設定する例を示したが、制動操作量(ストローク量)と車両前後加速度との少なくとも一方に基づいて設定することは可能である。
また、実施の形態では、交互開弁処理の実行判定として、「ゆっくり踏み」を判定するのにあたり、制動操作速度であるストローク速度がゆっくり踏み判定閾値未満であるか否かにより判定するものを示したが、これに限定されない。要は、目標制動トルクが最大回生制動トルクに満たない制動操作を検出することができればよく、例えば、車両前後加速度が判定値未満であるか否かにより判定してもよいし、あるいは、目標制動トルクやその変化量が判定値未満であるか否かにより判定するようにしてもよい。
また、交互開弁処理における開弁時間は、実施の形態1では、(1)式のように設定したが、これに限定されない。例えば、下記(3)式としてもよい。
T1
1=T2
1>T1
2=T2
2・・>T1
n=T2
n ・・・(3)
あるいは、開弁時間は、一定としても、所期の効果は得ることはできる。