(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電極活物質(A)もしくは導電助剤である炭素材料(B)の少なくとも一方と、下記単量体を共重合してなる共重合体中のスルホ基あるいはリン酸基の少なくとも一部を塩基性化合物で中和してなる両性樹脂型分散剤(C)と、水性液状媒体(D)とを含有する、二次電池電極形成用組成物であって、両性樹脂型分散剤(C)の酸価が、20mgKOH/g以上600mgKOH/g以下であり、両性樹脂型分散剤(C)の固形分20%水溶液における粘度が、5〜100,000mPa・sである二次電池電極形成用組成物。
芳香環を有するエチレン性不飽和単量体(c1):5〜70重量%
スルホ基あるいはリン酸基を有するエチレン性不飽和単量体(c2):10〜70重量%
アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体(c3):1〜80重量%
前記(c1)〜(c3)以外のその他の単量体(c4):0〜79重量%
(但し、前記(c1)〜(c4)の合計を100重量%とする)
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
二次電池用の電極は、種々の方法で得ることができる。
例えば、金属箔等の集電体の表面に、
(1)活物質と液状媒体とを含有するインキ状組成物(以下、合材インキという)や、
(2)活物質と導電助剤と液状媒体とを含有する合材インキや、
(3)活物質とバインダーと液状媒体とを含有する合材インキや、
(4)活物質と導電助剤とバインダーと液状媒体とを含有する合材インキを、
用いて合材層を形成し、電極を得ることができる。
【0016】
あるいは、金属箔の集電体の表面に、導電助剤と液状媒体とを含有する下地層形成用組成物を用い、下地層を形成し、該下地層上に、上記の合材インキ(1)〜(4)やその他の合材インキ用いて合材層を形成し、電極を得ることもできる。
【0017】
いずれの場合であっても、活物質や導電助剤の分散状態が電池性能を左右することは背景技術の項で詳述した。
両性樹脂型分散剤(C)は、活物質の凝集を緩和したり、導電助剤である炭素材料に対しても分散剤として機能したりする。
従って、本発明の二次電池電極形成用組成物は、活物質を必須とする合材インキとしても、活物質を必須とはしない下地層形成用組成物としても活用できる。
そこで、まず本発明における両性樹脂型分散剤(C)について説明する。
本発明における両性樹脂型分散剤(C)は、芳香族を有するエチレン性不飽和単量体(c1)と、スルホ基あるいはリン酸基を有するエチレン性不飽和単量体(c2)と、アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体(c3)と、を必須成分とする共重合体中のスルホ基あるいはリン酸基の少なくとも一部を塩基性化合物で中和したものである。
【0018】
まず、芳香環を有するエチレン性不飽和単量体(c1)について説明する。
本発明で使用する芳香環を有するエチレン性不飽和単量体(c1)としては、スチレン、α−メチルスチレンもしくはベンジル(メタ)アクリレートを例示することが出来る。
【0019】
つぎに、スルホ基、リン酸基を有するエチレン性不飽和化合物(c2)について説明する。スルホ基、リン酸基や、これらのアルカリ金属塩若しくはアルカリ土類金属塩又はアンモニウム塩を有する単量体を使用できる。
【0020】
スルホ基を有する単量体としては、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、(メタ)アクリロイルオキシエチルスルホン酸、イソプレンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アリルオキシベンゼンスルホン酸等が挙げられる。
【0021】
リン酸基を有する単量体としては、モノ(2−アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、モノ(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、ジフェニル(2−アクリロイルオキシエチル)ホスフェート、ジフェニル(2−メタクリロイルオキシエチル)ホスフェート、フェニル(2−アクリロイルオキシエチル)ホスフェート、アシッド・ホスホオキシエチルメタクリレート、メタクロイル・オキシエチルアシッドホスフェート・モノエタノールアミン塩、3−クロロ−2−アシッド・ホスホオキシプロピルメタクリレート、アシッド・ホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノメタクリレート、アシッド・ホスホオキシポリオキシプロピレングリコールメタクリレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルアシッドホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシ−3−ヒドロキシプロピルアシッドホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシ−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルアシッドホスフェート、アリルアルコールアシッドホスフェート等が挙げられる。
【0022】
つぎに、アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体(c3)について説明する。
本発明で使用するアミノ基を有するエチレン性不飽和単量体(c3)は、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、メチルエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノスチレン、ジエチルアミノスチレン、ビニルピリジン等が挙げられる。
【0023】
つぎに、前記(c1)〜(c3)以外のその他の単量体(c4)について説明する。
(メタ)アクリレート系化合物としては、アルキル系(メタ)アクリレート、アルキレングリコール系(メタ)アクリレートがある。
【0024】
更に具体的に例示すると、アルキル系(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜22のアルキル(メタ)アクリレートがあり、極性の調節を目的とする場合には好ましくは炭素数2〜10、さらに好ましくは炭素数2〜8のアルキル基を有するアルキル基含有アクリレートまたは対応するメタクリレートが挙げられる。
【0025】
また、アルキレングリコール系(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等、末端に水酸基を有し、ポリオキシアルキレン鎖を有するモノアクリレートまたは対応するモノメタアクリレート等、
メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート等、末端にアルコキシ基を有し、ポリオキシアルキレン鎖を有するモノアクリレートまたは対応するモノメタアクリレート等、
フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート等、末端にフェノキシまたはアリールオキシ基を有するポリオキシアルキレン系アクリレートまたは対応するメタアクリレートがある。
【0026】
上記以外の水酸基含有不飽和化合物としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシビニルベンゼンなどが挙がられる。
【0027】
窒素含有不飽和化合物としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル−(メタ)アクリルアミド等のモノアルキロール(メタ)アクリルアミド、
N,N−ジ(メチロール)アクリルアミド、N−メチロール−N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(メトキシメチル)アクリルアミド等のジアルキロール(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド系不飽和化合物を例示できる。
【0028】
更にその他の不飽和化合物としては、パーフルオロメチルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロエチルメチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロヘキシルエチル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜20のパーフルオロアルキル基を有するパーフルオロアルキルアルキル(メタ)アクリレート類;
パーフルオロブチルエチレン、パーフルオロヘキシルエチレン、パーフルオロオクチルエチレン、パーフルオロデシルエチレン等のパーフルオロアルキル、アルキレン類等のパーフルオロアルキル基含有ビニルモノマー、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシラノール基含有ビニル化合物及びその誘導体などを挙げることができ、これらの群から複数用いることができる。
【0029】
脂肪酸ビニル化合物としては、酢酸ビニル、酪酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ヘキサン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリル酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等が挙げられる。
【0030】
アルキルビニルエーテル化合物としては、ブチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等が挙げられる。
【0031】
α−オレフィン化合物としては、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン等が挙げられる。
【0032】
ビニル化合物としては、酢酸アリル、アリルアルコール、アリルベンゼン、シアン化アリル等のアリル化合物、シアン化ビニル、ビニルシクロヘキサン、ビニルメチルケトン、スチレン、α-メチルスチレン、2-メチルスチレン、クロロスチレン、などが挙げられる。
【0033】
エチニル化合物としては、アセチレン、エチニルベンゼン、エチニルトルエン、1−エチニル−1−シクロヘキサノール等が挙げられる。これらは単独もしくは2種類以上を併用して使用することもできる。
【0034】
本発明で用いられる両性樹脂型分散剤(C)中の共重合体を構成する単量体の比率は、単量体(c1)〜(c4)の合計を100重量%とした場合に、
芳香
環を有するエチレン性不飽和単量体(c1)が5〜70重量%、
スルホ基あるいはリン酸基を有するエチレン性不飽和単量体(c2)が10〜70重量%、
アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体(c3)が1〜80重量%、
前記(c1)〜(c3)以外のその他の単量体(c4)が0〜79重量%である。
好ましくは、(c1):20〜70重量%、(c2):15〜60重量%、(c3):1〜70重量%、(c4):0〜50重量%である。
【0035】
芳香環を有するエチレン性不飽和単量体(c1)由来の芳香環、及びアミノ基を有するエチレン性不飽和単量体(c3)由来のアミノ基が、後述する活物質(A)や導電助剤(B)への主たる吸着部位となると推測している。
【0036】
スルホ基およびリン酸基を有するエチレン性不飽和単量体(c2)は、共重合体の中和物を水性液状媒体に溶
解させる機能を担う。
そして、活物質(A)や導電助剤(B)に、芳香族やアミノ基を介してコポリマーが吸着し、中和され、イオン化されたスルホ基あるいはリン酸基の電荷反発により、活物質(A)や導電助剤(B)の水性液状媒体中における分散状態を安定に保つことができるようになったものと考察される。
【0037】
上記単量体(c1)〜(c4)を共重合してなるコポリマーの分子量は特に制限はないが、両性樹脂型分散剤(C)の固形分20%水溶液における粘度が、好ましくは5〜100,000mPa・sであり、さらに好ましくは10〜50,000mPa・sである。所定範囲の粘度より低く、両性樹脂型分散剤(C)の分子量が小さすぎる場合、あるいは所定範囲の粘度より高く、両性樹脂型分散剤(C)の分子量が大きすぎる場合には、電極活物質(A)もしくは導電助剤である炭素材料(B)の分散不良を引き起こす可能性がある。
尚、本発明における粘度とは、B型粘度計を用いて25℃の条件下で測定した値である。
【0038】
上記コポリマーは、スルホ基あるいはリン酸基を有するエチレン性不飽和単量体(c2)を共重合してなるが、コポリマーにおけるスルホ基あるいはリン酸基を有するエチレン性不飽和単量体の構成比率を酸価で表すと下記のようであることが好ましい。即ち、使用するコポリマーの酸価が、20mgKOH/g以上600mgKOH/g以下の範囲であることが好ましく、更には、酸価が30mgKOH/g以上500mgKOH/g以下の範囲であることが好ましい。
本発明で使用するコポリマーの酸価が上記した範囲よりも低いと分散体の分散安定性が低下し、粘度が増加する傾向がある。また、本発明で使用するコポリマーの酸価が上記した範囲より高いと、顔料表面に対するコポリマーの付着力が低下し、分散体の保存安定性が低下する傾向がある。
【0039】
なお、酸価は、JIS K 0070の電位差滴定法に準拠して測定した酸価(mgKOH/g)を固形分換算した値である。
【0040】
両性樹脂型分散剤(C)は、種々の製造方法で得ることができる。
例えば、上記単量体(c1)〜(c4)を、水と共沸し得る有機溶剤中で重合する。その後、水に代表される水性液状媒体と中和剤(塩基性化合物)とを加えて酸性官能基の少なくとも一部を中和し、共沸可能な溶剤を留去し、両性樹脂型分散剤(C)の水溶
液を得ることができる。
重合時の有機溶剤としては、水と共沸するものであれば良いが、コポリマーに対し溶解性の高いものが良く、好ましくはエタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールがあり、さらに好ましくは1−ブタノールがある。
【0041】
あるいは、親水性有機溶剤中で共重合し、水とアミンを加えて中和し水性化し、親水性有機溶剤は留去せず、親水性有機溶剤と水とを含む水性液状媒体に、両性樹脂型分散剤(C)が溶
解した液を得ることができる。
この場合、用いられる親水性有機溶剤としては、コポリマーに対し溶解性の高いものが良く、好ましくはグリコールエーテル類、ジオール類、さらに好ましくは(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル、炭素数3〜6のアルカンジオール類が良い。
【0042】
コポリマーの中和に使用される中和剤としては、下記のものが挙げられる。
例えば、アンモニア水、ジメチルアミノエタノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の各種有機アミン、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物等の無機アルカリ剤等を使用することができる。上記したようなコポリマーは、水性液媒体中に
、溶解される。
【0043】
<合材インキ>
前記したように、本発明の二次電池電極形成用組成物は、合材インキとしても使用できるし、下地層形成用組成物としても使用できる。
そこで、本発明の二次電池電極形成用組成物の好適な態様の1つである活物質を必須とする合材インキについて説明する。合材インキは、正極合材インキまたは負極合材インキがあり、既に説明したように、それぞれ下記(1)〜(4)に示すような種々の態様がある。
(1)活物質(A)と両性樹脂型分散剤(C)と水性液状媒体(D)とを含有する合材インキ。
(2)前記(1)に導電助剤(B)をさらに含有する合材インキ。
(3)前記(1)にバインダーをさらに含有する合材インキ。
(4)前記(1)に導電助剤(B)とバインダーとをさらに含有する合材インキ。
【0044】
リチウムイオン二次電池用の正極活物質としては、特に限定はされないが、リチウムイオンをドーピングまたはインターカレーション可能な金属酸化物、金属硫化物等の金属化合物、および導電性高分子等を使用することができる。
例えば、Fe、Co、Ni、Mn等の遷移金属の酸化物、リチウムとの複合酸化物、遷移金属硫化物等の無機化合物等が挙げられる。具体的には、MnO、V
2O
5、V
6O
13、TiO
2等の遷移金属酸化物粉末、層状構造のニッケル酸リチウム、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケルとコバルトとマンガンの三成分とリチウムとの複合酸化物である三元系活物質、スピネル構造のマンガン酸リチウムなどのリチウムと遷移金属との複合酸化物粉末、オリビン構造のリン酸化合物であるリン酸鉄リチウム系材料、TiS
2、FeSなどの遷移金属硫化物粉末等が挙げられる。
また、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン等の導電性高分子を使用することもできる。また、上記の無機化合物や有機化合物を混合して用いてもよい。
【0045】
リチウムイオン二次電池用の負極活物質としては、リチウムイオンをドーピングまたはインターカレーション可能なものであれば特に限定されない。例えば、金属Li、その合金であるスズ合金、シリコン合金、鉛合金等の合金系、Li
XFe
2O
3、Li
XFe
3O
4、Li
XWO
2、チタン酸リチウム、バナジウム酸リチウム、ケイ素酸リチウム等の金属酸化物系、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレン等の導電性高分子系、ソフトカーボンやハードカーボンといった、アモルファス系炭素質材料や、高黒鉛化炭素材料等の人造黒鉛、あるいは天然黒鉛等の炭素質粉末、カーボンブラック、メソフェーズカーボンブラック、樹脂焼成炭素材料、気層成長炭素繊維、炭素繊維などの炭素系材料が挙げられる。これら負極活物質は、1種または複数を組み合わせて使用することも出来る。
【0046】
また、アルカリ二次電池用の正極活物質や負極活物質としては、従来から公知のものを適宜選択することができる。
【0047】
これら活物質(A)の大きさは、0.05〜100μmの範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは、0.1〜50μmの範囲内である。そして、合材インキ中の活物質(A)の分散粒径は、0.5〜20μmであることが好ましい。ここでいう分散粒径とは、体積粒度分布において、粒子径の細かいものからその粒子の体積割合を積算していったときに、50%となるところの粒子径(D50)であり、一般的な粒度分布計、例えば、動的光散乱方式の粒度分布計(日機装社製「マイクロトラックUPA」)等で測定される。
【0048】
次に、導電助剤である炭素材料(B)について説明する。
本発明における導電助剤である炭素材料(B)としては、導電性を有する炭素材料であれば特に限定されるものではないが、グラファイト、カーボンブラック、導電性炭素繊維(カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンファイバー)、フラーレン等を単独で、もしくは2種類以上併せて使用することができる。導電性、入手の容易さ、およびコスト面から、カーボンブラックの使用が好ましい。
【0049】
カーボンブラックとしては、気体もしくは液体の原料を反応炉中で連続的に熱分解し製造するファーネスブラック、特にエチレン重油を原料としたケッチェンブラック、原料ガスを燃焼させて、その炎をチャンネル鋼底面にあて急冷し析出させたチャンネルブラック、ガスを原料とし燃焼と熱分解を周期的に繰り返すことにより得られるサーマルブラック、特にアセチレンガスを原料とするアセチレンブラックなどの各種のものを単独で、もしくは2種類以上併せて使用することができる。また、通常行われている酸化処理されたカーボンブラックや、中空カーボン等も使用できる。
【0050】
カーボンの酸化処理は、カーボンを空気中で高温処理したり、硝酸や二酸化窒素、オゾン等で二次的に処理したりすることより、例えばフェノール基、キノン基、カルボキシル基、カルボニル基の様な酸素含有極性官能基をカーボン表面に直接導入(共有結合)する処理であり、カーボンの分散性を向上させるために一般的に行われている。しかしながら、官能基の導入量が多くなる程カーボンの導電性が低下することが一般的であるため、酸化処理をしていないカーボンの使用が好ましい。
【0051】
用いるカーボンブラックの比表面積は、値が大きいほど、カーボンブラック粒子どうしの接触点が増えるため、電極の内部抵抗を下げるのに有利となる。具体的には、窒素の吸着量から求められる比表面積(BET)で、20m
2/g以上、1500m
2/g以下、好ましくは50m
2/g以上、1500m
2/g以下、更に好ましくは100m
2/g以上、1500m
2/g以下のものを使用することが望ましい。比表面積が20m
2/gを下回るカーボンブラックを用いると、十分な導電性を得ることが難しくなる場合があり、1500m
2/gを超えるカーボンブラックは、市販材料での入手が困難となる場合がある。
【0052】
また、用いるカーボンブラックの粒径は、一次粒子径で0.005〜1μmが好ましく、特に、0.01〜0.2μmが好ましい。ただし、ここでいう一次粒子径とは、電子顕微鏡などで測定された粒子径を平均したものである。
【0053】
導電助剤である炭素材料(B)の合材インキ中の分散粒径は、0.03μm以上、5μm以下に微細化することが望ましい。導電助剤としての炭素材料の分散粒径が0.03μm未満の組成物は、その作製が難しい場合がある。又、導電助剤としての炭素材料の分散粒径が2μmを超える組成物を用いた場合には、合材塗膜の材料分布のバラつき、電極の抵抗分布のバラつき等の不具合が生じる場合がある。
ここでいう分散粒径とは、体積粒度分布において、粒子径の細かいものからその粒子の体積割合を積算していったときに、50%となるところの粒子径(D50)であり、一般的な粒度分布計、例えば、動的光散乱方式の粒度分布計(日機装社製「マイクロトラックUPA」)等で測定される。
【0054】
市販のカーボンブラックとしては、例えば、トーカブラック#4300、#4400、#4500、#5500等(東海カーボン社製、ファーネスブラック)、プリンテックスL等(デグサ社製、ファーネスブラック)、Raven7000、5750、5250、5000ULTRAIII、5000ULTRA等、Conductex SC ULTRA、Conductex 975ULTRA等、PUER BLACK100、115、205等(コロンビヤン社製、ファーネスブラック)、#2350、#2400B、#2600B、#30050B、#3030B、#3230B、#3350B、#3400B、#5400B等(三菱化学社製、ファーネスブラック)、MONARCH1400、1300、900、VulcanXC−72R、BlackPearls2000等(キャボット社製、ファーネスブラック)、Ensaco250G、Ensaco260G、Ensaco350G、SuperP−Li(TIMCAL社製)、ケッチェンブラックEC−300J、EC−600JD(アクゾ社製)、デンカブラック、デンカブラックHS−100、FX−35(電気化学工業社製、アセチレンブラック)等、グラファイトとしては例えば人造黒鉛や燐片状黒鉛、塊状黒鉛、土状黒鉛などの天然黒鉛が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0055】
導電性炭素繊維としては石油由来の原料から焼成して得られるものが良いが、植物由来の原料からも焼成して得られるものも用いることができる。例えば石油由来の原料で製造される昭和電工社製のVGCFなどを挙げることができる。
【0056】
つぎに、水性液状媒体(D)について説明する。
本発明に使用する水性液状媒体(D)としては、水を使用することが好ましいが、必要に応じて、例えば、集電体への塗工性向上のために、水と相溶する液状媒体を使用しても良い。
水と相溶する液状媒体としては、アルコール類、グリコール類、セロソルブ類、アミノアルコール類、アミン類、ケトン類、カルボン酸アミド類、リン酸アミド類、スルホキシド類、カルボン酸エステル類、リン酸エステル類、エーテル類、ニトリル類等が挙げられ、水と相溶する範囲で使用しても良い。
【0057】
合材インキは、バインダーをさらに含有することもできる。
本発明の中のバインダーとは、導電助剤やその他活物質などの粒子を結着させるために使用されるものであり、それら粒子を溶媒中へ分散させる効果は小さいものである。
【0058】
バインダーとしては、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、カルボキシメチルセルロース等のセルロース樹脂、スチレン−ブタジエンゴムやフッ素ゴム等の合成ゴム、ポリアニリンやポリアセチレン等の導電性樹脂等、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、及びテトラフルオロエチレン等のフッ素原子を含む高分子化合物が挙げられる。又、これらの樹脂の変性物、混合物、又は共重合体でも良い。これらバインダーは、1種または複数を組み合わせて使用することも出来る。
【0059】
さらに、合材インキには、成膜助剤、消泡剤、レベリング剤、防腐剤、pH調整剤、粘性調整剤などを必要に応じて配合できる。
【0060】
塗工方法によるが、固形分30〜90重量%の範囲で、合材インキの粘度は、100mPa・s以上、30,000mPa・s以下とするのが好ましい。
塗工可能な粘度範囲内において、活物質(A)はできるだけ多く含まれることが好ましく、例えば、合材インキ固形分に占める活物質(A)の割合は、80重量%以上、99重量%以下が好ましい。
また、合材インキ固形分に占める両性樹脂型分散剤(C)の割合は、0.1〜15重量%であることが好ましい。
導電助剤(B)を含む場合、合材インキ固形分に占める導電助剤(B)の割合は、0.1〜15重量%であることが好ましい。
バインダーを含む場合、合材インキ固形分に占めるバインダーの割合は、0.1〜15重量%であることが好ましい。
【0061】
このような合材インキは、種々の方法で得ることができる。
活物質(A)と導電助剤(B)と両性樹脂型分散剤(C)とバインダーと水性液状媒体(D)とを含有する、(4)の合材インキの場合を例にとって説明する。
例えば、
(4−1) 活物質(A)と両性樹脂型分散剤(C)と水性液状媒体(D)とを含有する活物質の水性分散体を得、該水性分散体に導電助剤(B)とバインダーとを加え、合材インキを得ることができる。
導電助剤(B)とバインダーは、同時に加えることもできるし、導電助剤(B)を加えた後、バインダーを加えてもよいし、その逆であってもよい。
(4−2) 導電助剤(B)と両性樹脂型分散剤(C)と水性液状媒体(D)と含有する導電助剤の水性分散体を得、該水性分散体に活物質(A)とバインダーとを加え、合材インキを得ることができる。
活物質(A)とバインダー同時に加えることもできるし、活物質(A)を加えた後、バインダーを加えてもよいし、その逆であってもよい。
(4−3) 活物質(A)と両性樹脂型分散剤(C)とバインダーと水性液状媒体(D)と含有する活物質の水性分散体を得、該水性分散体に導電助剤(B)を加え、合材インキを得ることができる。
(4−4) 導電助剤(B)と両性樹脂型分散剤(C)バインダーと水性液状媒体(D)と含有する導電助剤の水性分散体を得、該水性分散体に活物質(A)を加え、合材インキを得ることができる。
(4−5) 活物質(A)と導電助剤(B)と両性樹脂型分散剤(C)とバインダーと水性液状媒体(D)をほとんど同時に混合し、合材インキを得ることができる。
【0062】
(分散機・混合機)
合材インキを得る際に用いられる装置としては、顔料分散等に通常用いられている分散機、混合機が使用できる。
例えば、ディスパー、ホモミキサー、若しくはプラネタリーミキサー等のミキサー類;エム・テクニック社製「クレアミックス」、若しくはPRIMIX社「フィルミックス」等のホモジナイザー類;ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)、ボールミル、サンドミル(シンマルエンタープライゼス社製「ダイノミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ社製「DCPミル」等)、若しくはコボールミル等のメディア型分散機;湿式ジェットミル(ジーナス社製「ジーナスPY」、スギノマシン社製「スターバースト」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」等)、エム・テクニック社製「クレアSS−5」、若しくは奈良機械社製「MICROS」等のメディアレス分散機;または、その他ロールミル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、分散機としては、分散機からの金属混入防止処理を施したものを用いることが好ましい。
【0063】
例えば、メディア型分散機を使用する場合は、アジテーター及びベッセルがセラミック製又は樹脂製の分散機を使用する方法や、金属製アジテーター及びベッセル表面をタングステンカーバイド溶射や樹脂コーティング等の処理をした分散機を用いることが好ましい。そして、メディアとしては、ガラスビーズ、または、ジルコニアビーズ、若しくはアルミナビーズ等のセラミックビーズを用いることが好ましい。また、ロールミルを使用する場合についても、セラミック製ロールを用いることが好ましい。分散装置は、1種のみを使用しても良いし、複数種の装置を組み合わせて使用しても良い。また、強い衝撃で粒子が割れたり、潰れたりしやすい正または負極活物質の場合は、メディア型分散機よりは、ロールミルやホモジナイザー等のメディアレス分散機が好ましい。
【0064】
<下地層形成用組成物>
前記したように、本発明の二次電池電極形成用組成物は、合材インキとしても使用できる他、下地層形成用組成物としても使用できる。
下地層形成用組成物は、導電助剤(B)と両性樹脂型分散剤(C)と水性液状媒体(D)とを含有する。さらにバインダーを含有することもできる。各成分については、合材インキの場合と同様である。
電極下地層に用いる組成物の総固形分に占める導電助剤としての炭素材料(B)の割合は、5重量%以上、95重量%以下が好ましく、10重量%以上、90重量%以下が更に好ましい。導電助剤である炭素材料(B)が少ないと、下地層の導電性が保てない場合があり、一方、導電助剤である炭素材料(B)が多すぎると、塗膜の耐性が低下する場合がある。また、電極下地層インキの適正粘度は、電極下地層インキの塗工方法によるが、一般には、10mPa・s以上、30,000mPa・s以下とするのが好ましい。
【0065】
<電極>
本発明の二次電池電極形成用組成物のうち合材インキを、集電体上に塗工・乾燥し、合材層を形成し、二次電池用電極を得ることができる。
あるいは、本発明の二次電池電極形成用組成物のうち下地層形成用組成物を、集電体上に下地層を形成し、該下地層上に、合材層を設け、二次電池用電極を得ることもできる。下地層上に設ける合材層は、上記した本発明の合材インキ(1)〜(4)を用いて形成してもよいし、他の合材インキを用いて形成することもできる。
【0066】
(集電体)
電極に使用する集電体の材質や形状は特に限定されず、各種二次電池にあったものを適宜選択することができる。
例えば、集電体の材質としては、アルミニウム、銅、ニッケル、チタン、又はステンレス等の金属や合金が挙げられる。リチウムイオン電池の場合、特に正極材料としてはアルミニウムが、負極材料としては銅が、それぞれ好ましい。
又、形状としては、一般的には平板上の箔が用いられるが、表面を粗面化したものや、穴あき箔状のもの、及びメッシュ状の集電体も使用できる。
【0067】
集電体上に合材インキや下地層形成用組成物を塗工する方法としては、特に制限はなく公知の方法を用いることができる。
具体的には、ダイコーティング法、ディップコーティング法、ロールコーティング法、ドクターコーティング法、ナイフコーティング法、スプレーコティング法、グラビアコーティング法、スクリーン印刷法または静電塗装法等が挙げる事ができ、乾燥方法としては放置乾燥、送風乾燥機、温風乾燥機、赤外線加熱機、遠赤外線加熱機などが使用できるが、特にこれらに限定されるものではない。
又、塗布後に平版プレスやカレンダーロール等による圧延処理を行っても良い。電極合材層の厚みは、一般的には1μm以上、500μm以下であり、好ましくは10μm以上、300μm以下である。また、下地層を具備する場合には下地層と合材層との厚みの合計は、一般的には1μm以上、500μm以下であり、好ましくは10μm以上、300μm以下である。
【0068】
<二次電池>
正極もしくは負極の少なくとも一方に上記の電極を用い、二次電池を得ることができる。
二次電池としては、リチウムイオン二次電池の他、ナトリウムイオン二次電池、マグネシウム二次電池、アルカリ二次電池、鉛蓄電池、ナトリウム硫黄二次電池、リチウム空気二次電池等が挙げられ、それぞれの二次電池で従来から知られている、電解液やセパレーター等を適宜用いることができる。
【0069】
(電解液)
リチウムイオン二次電池の場合を例にとって説明する。電解液としては、リチウムを含んだ電解質を非水系の溶剤に溶解したものを用いる。
電解質としては、LiBF
4、LiClO
4、LiPF
6、LiAsF
6、LiSbF
6、LiCF
3SO
3、Li(CF
3SO
2)
2N、LiC
4F
9SO
3、Li(CF
3SO
2)
3C、LiI、LiBr、LiCl、LiAlCl、LiHF
2、LiSCN、又はLiBPh
4等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0070】
非水系の溶剤としては特に限定はされないが、例えば、
エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、及びジエチルカーボネート等のカーボネート類;
γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、及びγ−オクタノイックラクトン等のラクトン類;
テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、1,2−メトキシエタン、1,2−エトキシエタン、及び
1,2−ジブトキシエタン等のグライム類;
メチルフォルメート、メチルアセテート、及びメチルプロピオネート等のエステル類;
ジメチルスルホキシド、及びスルホラン等のスルホキシド類;並びに、
アセトニトリル等のニトリル類等が挙げられる。又これらの溶剤は、それぞれ単独で使用しても良いが、2種以上を混合して使用しても良い。
【0071】
さらに上記電解液を、ポリマーマトリクスに保持しゲル状とした高分子電解質とすることもできる。ポリマーマトリクスとしては、ポリアルキレンオキシドセグメントを有するアクリレート系樹脂、ポリアルキレンオキシドセグメントを有するポリホスファゼン系樹脂、及びポリアルキレンオキシドセグメントを有するポリシロキサン等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0072】
(セパレーター)
セパレーターとしては、例えば、ポリエチレン不織布、ポリプロピレン不織布、ポリアミド不織布及びそれらに親水性処理を施したものが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0073】
(電池構造・構成)
本発明の組成物を用いたリチウムイオン二次電池の構造については特に限定されないが、通常、正極及び負極と、必要に応じて設けられるセパレーターとから構成され、ペーパー型、円筒型、ボタン型、積層型等、使用する目的に応じた種々の形状とすることができる。
【実施例】
【0074】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。尚、実施例および比較例における「部」は「重量部」を表す。
【0075】
(合成例1)
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、n−ブタノール200.0部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を110℃に加熱して、スチレン100.0部、2−アクリルアミド−2−メチルプロピルスルホン酸60.0部、ジメチルアミノエチルメタクリレート40.0部、およびV−601(和光純薬製)12.0部の混合物を2時間かけて滴下し、重合反応を行った。滴下終了後、さらに110℃で3時間反応させた後、V−601(和光純薬製)0.6部を添加し、さらに110℃で1時間反応を続けて、共重合体(1)溶液を得た。また、共重合体(1)の酸価は73.4(mgKOH/g)であった。
さらに、室温まで冷却した後、ジメチルアミノエタノール23.3部添加し中和した。これは、スルホン酸を100%中和する量である。さらに、水を400部添加して水性化した後、100℃まで加熱し、ブタノールを水と共沸させてブタノールを留去した。
水で希釈し、不揮発分20%の両性樹脂型分散剤(1)の水溶
液を得た。また、不揮発分20%の両性樹脂型分散剤(1)の水溶液の粘度は、40mPa・sであった。
【0076】
(合成例2〜22)
表1に示す配合組成で、合成例1と同様の方法で合成し、合成例2〜22の分散剤を得た。
【0077】
【表1】
St:スチレン
BzMA:ベンジルメタクリレート
ATBS:2−アクリルアミド−2−メチルプロピルスルホン酸
NaSS:4−スチレンスルホン酸ナトリウム
2−SEMA:2−スルホエチルメタクリレート
P−1M:2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート(共栄社化学社製)
DM:ジメチルアミノエチルメタクリレート
BMA:ブチルメタクリレート
DMAE:ジメチルアミノエタノール
【0078】
[実施例1]
導電助剤である炭素材料としてアセチレンブラック(デンカブラックHS−100)10部、合成例(1)に記載の両性樹脂型分散剤(1)の水溶
液を10部(固形分として2部)、水80部をミキサーに入れて混合し、更にサンドミルに入れて分散を行い、二次電池電極用炭素材料分散体(1)を得た。
【0079】
[実施例2]
導電助剤である炭素材料としてアセチレンブラック(デンカブラックHS−100)10部、合成例(2)に記載の分散剤10部、水80部をニーダーに入れて分散を行い、二次電池電極用炭素材料分散体(2)を得た。
【0080】
[実施例3〜17]、[比較例1〜9]
表2に示す導電助剤である炭素材料、分散剤を使用して、二次電池電極用炭素材料分散体(1)と同様の方法で、実施例3〜17の二次電池電極用炭素材料分散体(3)〜(17)と、比較例1〜9の二次電池電極用炭素材料分散体(18)〜(26)とを得、以下の方法にて、炭素材料分散体としての分散度を求めた。
【0081】
(二次電池電極用炭素材料分散体及び合材インキの分散度の判定)
二次電池電極用炭素材料分散体及び合材インキの分散度は、グラインドゲージによる判定(JISK5600−2−5に準ず)より求めた。
評価結果を炭素材料分散体の場合の結果を表2に示す。表中の数字は粗大粒子の大きさを示し、数値が小さいほど分散性に優れ、均一な二次電池電極用炭素材料分散体であることを示している。
【0082】
【表2】
【0083】
表2に示すように、実施例1〜17の本発明の二次電池電極用炭素材料分散体を用いた場合、導電助剤である炭素材料(B)の分散性に優れ、均一な二次電池電極用炭素材料分散体であることが明らかとなった。両性樹脂型分散剤(C)を使用することにより、導電助剤の種類、混錬方法が異なっても、分散性に優れた均一な二次電池電極用炭素材料分散体を得ることが分かる。
【0084】
<正極合材インキ>、<正極>、<コイン型電池>
[実施例18]
実施例1で調製した二次電池電極用炭素材料分散体(1)50部(アセチレンブラック固形分量として5部)に対して、正極活物質としてLiFePO
4 45部、バインダー(ポリテトラフルオロエチレン30−J:三井・デュポンフロロケミカル社製、60%水系分散体)8.3部、水50部を混合して、正極用の二次電池電極用合材インキを作製した。合材インキの分散度を、前述の炭素材料分散体の分散度の場合と同様にして求めた。
そして、この正極用の二次電池電極用合材インキを、集電体となる厚さ20μmのアルミ箔上にドクターブレードを用いて塗布した後、減圧加熱乾燥して電極の厚みが100μmとなるよう調整した。
さらに、ロールプレスによる圧延処理を行い、厚みが85μmとなる正極を作製し、柔軟性と密着性を以下の方法にて評価した。
【0085】
次に、得られた正極を、直径16mmに打ち抜き作用極と、金属リチウム箔対極と、作用極及び対極の間に挿入されるセパレーター(多孔質ポリプロピレンフィルム)と、電解液(エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを1:1(体積比)の割合で混合した混合溶媒にLiPF
6を1Mの濃度で溶解させた非水系電解液)とからなるコイン型電池を作製した。コイン型電池はアルゴンガス置換したグロ−ブボックス内で行い、コイン型電池作製後、所定の電池特性評価を行った。
【0086】
(電極の柔軟性)
上記で作製した電極を短冊状にして集電体側を直径3mmの金属棒に接するように巻きつけ、巻きつけ時に起こる電極表面のひび割れを、目視観察により判定した。ひび割れが起こらないものほど、柔軟性が良い。
○:「ひび割れなし(実用上問題のないレベル)」
○△:「ごくまれにひび割れが見られる(問題があるが、使用可能レベル)」
△:「部分的にひび割れが見られる」
×:「全体的にひび割れが見られる」
【0087】
(電極の密着性)
上記で作製した電極に、ナイフを用いて電極表面から集電体に達する深さまでの切込みを2mm間隔で縦横それぞれ6本の碁盤目の切込みを入れた。この切り込みに粘着テープを貼り付けて直ちに引き剥がし、活物質の脱落の程度を目視判定で判定した。評価基準を下記に示す。
○:「剥離なし(実用上問題のないレベル)」
○△:「わずかに剥離(問題はあるが使用可能レベル)」
△:「半分程度剥離」
×:「ほとんどの部分で剥離」
【0088】
(充放電保存特性)
得られたコイン型電池について、充放電装置(北斗電工社製SM−8)を用い、充放電測定を行った。
使用する活物質がLiFePO
4の場合は、充電電流1.2mAにて充電終止電圧4.2Vまで定電流充電を続けた。電池の電圧が4.2Vに達した後、放電電流1.2mAで放電終止電圧2.0Vに達するまで定電流放電を行った。これらの充電・放電サイクルを1サイクルとして5サイクルの充電・放電を繰り返し、5サイクル目の放電容量を初回放電容量とした。(初回放電容量を維持率100%とする)。
【0089】
次に、5サイクル目までと同様に充電を行った後、60℃恒温槽にて100時間保存後に、放電電流1.2mAで放電終止電圧2.0Vに達するまで定電流放電を行い、変化率を算出した(100%に近いほど良好)。
○:「変化率が95%以上。特に優れている。」
○△:「変化率が90%以上、95%未満。全く問題なし。」
△:「変化率が85%以上、90%未満。問題はあるが使用可能なレベル。」
×:「変化率が85%未満。実用上問題あり、使用不可。」
【0090】
また、使用する活物質が、LiCoO
2の場合は、充電電流1.2mA、充電終止電圧4.3V、放電電流1.2 mA,放電終止電圧2.8Vとした以外は、LiFePO
4の場合と同様に充放電保存特性を測定出来る。
さらに、負極電極用の活物質として人造黒鉛を使用する場合(後述)は、充電電流1.5 mA、充電終止電圧0.1V、放電電流1.5mA,放電終止電圧2.0Vとした以外は、LiFePO
4の場合と同様に充放電保存特性を測定出来る。
【0091】
[実施例19〜28、30〜35]、[比較例10〜18]
表3に示すように二次電池電極用炭素材料分散体を用いた以外は実施例18と同様にして、正極二次電池電極用合材インキ、および正極を得、同様に評価した。
【0092】
[実施例29]、[比較例19〜22]
正極活物質としてLiFePO
4 45部、バインダー(ポリテトラフルオロエチレン30−J:三井・デュポンフロロケミカル社製、60%水系分散体)8.3部、水50部を用い、二次電池電極用炭素材料分散体を用いない代わりに表3に示す導電助剤や分散剤とを用いた以外は実施例18と同様にして、正極二次電池電極用合材インキ、および正極を得、同様に評価した。
【0093】
<リチウム二次電池用負極の作製>
[実施例36]
実施例1で調製した二次電池電極用炭素材料分散体(1)10部(アセチレンブラック固形分量として1部)に対して、負極活物質として人造黒鉛96部、バインダー(ポリテトラフルオロエチレン30−J:三井・デュポンフロロケミカル社製、60%水系分散体)5部、水90部を混合して、負極用の二次電池電極用合材インキを作製した。
この負極合材インキを集電体となる厚さ20μmの銅箔上にドクターブレードを用いて塗布した後、減圧加熱乾燥して電極の厚みが100μmとなるよう調整した。ロールプレスによる圧延処理を行い、厚みが85μmとなる負極を作製し、正極の場合と同様に評価した。なお、充放電保持特性は、負極を作用極、金属リチウム箔を対極とした評価用コイン型電池を用いて、評価した。
【0094】
[実施例37〜40、比較例23〜25]
表3に示すように二次電池電極用炭素材料分散体を用いた以外は実施例36と同様にして、負極二次電池電極用合材インキ、および負極を得、同様に評価した。
【0095】
[実施例41]、[比較例26、27]
負極活物質として人造黒鉛96部、バインダー(ポリテトラフルオロエチレン30−J:三井・デュポンフロロケミカル社製、60%水系分散体)5部、水90部を用い、二次電池電極用炭素材料分散体を用いない代わりに表3に示す導電助剤や分散剤とを用いた以外は実施例36と同様にして、負極二次電池電極用合材インキ、および負極を得、同様に評価した。
【0096】
【表3】
【0097】
【表3】
【0098】
表3に示すように、本発明の二次電池電極用合材インキを用いた場合、導電助剤である炭素材料または活物質が合材インキ中で均一に分散されているため、電極の柔軟性、密着性のバランスが取れ、電池特性においても、60℃、100時間後の放電容量低下が抑制されている。
このことについては、導電助剤である炭素材料または活物質が、合材インキ中での分散制御が不十分な場合、電極とした時の均一な導電ネットワークが形成されないために、電極中で部分的凝集に起因する抵抗分布が生じてしまい、電池として使用した際の電流集中が起こるために劣化促進を引き起こしているのではないかと考察している。
また、導電助剤である炭素材料または活物質の分散制御が不十分な場合、電極の柔軟性、密着性も不十分な傾向が見られている。特に導電助剤である炭素材料の分散制御が不十分な場合、その傾向は顕著である。
そのため、本発明の二次電池電極用合材インキを使用した場合においては、導電助剤である炭素材料または活物質が合材インキ中で均一に分散されているため、改善が可能になったと考えられる。
【0099】
[実施例42]
正極活物質としてLiFePO
4 45部、バインダー(ポリテトラフルオロエチレン30−J:三井・デュポンフロロケミカル社製、60%水系分散体)5部、水50部を用い、合成例(1)に記載の両性樹脂型分散剤(1)の水溶
液を10部(固形分として2部)用いた以外は実施例18と同様にして、二次電池正極用合材インキ、および正極を得、同様に評価した。
【0100】
[実施例43、44、比較例28、29]
表4に示す分散剤、またはヒドロキシエチルセルロース2部を用いた以外は実施例42と同様にして、二次電池正極用合材インキ、および正極を得、同様に評価した。
【0101】
[実施例45]
負極活物質として人造黒鉛94部、バインダー(ポリテトラフルオロエチレン30−J:三井・デュポンフロロケミカル社製、60%水系分散体)7部、水90部を用い、合成例(1)に記載の両性樹脂型分散剤(1)の水溶
液を10部(固形分として2部)用いた以外は実施例36と同様にして、二次電池負極用合材インキ、および負極を得、同様に評価した。
[実施例46、47、比較例30、31]
表4に示す分散剤、またはヒドロキシエチルセルロース2部を用いた以外は実施例45と同様にして、二次電池負極用合材インキ、および負極を得、同様に評価した。
【0102】
[実施例48]
導電助剤である炭素材料としてアセチレンブラック(デンカブラックHS−100)10部、合成例(1)に記載の両性樹脂型分散剤(1)の水溶
液を5部(固形分として1部)、バインダー(ポリテトラフルオロエチレン30−J:三井・デュポンフロロケミカル社製、60%水系分散体)4部、水81部をミキサーに入れて混合し、
更にサンドミルに入れて分散を行い、二次電池電極用下地層形成用組成物を得、グラインドゲージにて分散度を測定した。
そして、この下地層形成用組成物を、集電体となる厚さ20μmのアルミ箔上にドクターブレードを用いて塗布した後、加熱乾燥し、厚みが8μmとなるように下地層を形成した。
次いで、前記下地層上に実施例35の二次電池正極用合材インキを塗布した後、減圧加熱乾燥して、以下実施例18と同様にして正極を得、同様に評価した。
[実施例49、比較例32]
表4に示す分散剤、またはヒドロキシエチルセルロース1部を用いた以外は実施例48と同様にして、二次電池電極用下地層形成用組成物を得、同様に評価した。
次いで、前記下地層上に表4に示す二次電池正極用合材インキを塗布した後、減圧加熱乾燥して、以下実施例18と同様にして正極を得、同様に評価した。
【0103】
表4に示すように、本発明の二次電池電極形成用組成物を用いた場合、導電助剤の存在がなくても合材インキ中での分散制御が十分行われた結果、電極とした時の均一な導電ネットワークが形成されているために、電極の柔軟性、密着性のバランスが取れ、電池特性においても、60℃、100時間後の放電容量低下が抑制されたと考えている。また、導電助剤の使用がないため、合材インキ中に含まれる活物質の割合を高めることが出来、電池容量の向上へもつながるものと思われる。
さらに、本発明の二次電池電極形成用組成物を下地層へ用いた場合、下地層を使用しない実施例35、および比較例11の評価結果と比較して、さらに良好となっていることが分かる。このことは、本発明の二次電池電極形成用組成物が、集電体と合材層との密着部分をより均一、かつ強固にしたためと考えられる。しかしながら、比較例32では、下地層用の二次電池電極形成用組成物の分散状態が不十分であり、電極とした場合においても、実施例49の評価結果と比較して劣る結果であった。このことは、集電体と合材層との密着状態がかえって不十分な状態となってしまったため、下地層を使用しない場合よりも電極として不均一な状態になってしまったためと考えられる。
【0104】
【表4】