(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6036263
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】スラブ支持用定盤
(51)【国際特許分類】
B23Q 3/02 20060101AFI20161121BHJP
B23Q 3/06 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
B23Q3/02 A
B23Q3/06 304H
【請求項の数】5
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-278315(P2012-278315)
(22)【出願日】2012年12月20日
(65)【公開番号】特開2014-121744(P2014-121744A)
(43)【公開日】2014年7月3日
【審査請求日】2015年8月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085523
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 文夫
(74)【代理人】
【識別番号】100078101
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 達雄
(74)【代理人】
【識別番号】100154461
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 由布
(72)【発明者】
【氏名】坂井 勝
(72)【発明者】
【氏名】友成 貴
【審査官】
村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−315538(JP,A)
【文献】
特開2004−017224(JP,A)
【文献】
特開平05−208416(JP,A)
【文献】
米国特許第05318005(US,A)
【文献】
特開昭64−045561(JP,A)
【文献】
特開平10−202456(JP,A)
【文献】
実開平04−029335(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0202784(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/02
B23Q 3/06
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラブの表面切削装置におけるスラブ支持用定盤であって、
スラブの下面を支持する支持ビームを、所定間隔で複数本配置し、当該支持ビームの間に、スラブを幅方向にクランプするためのクランプ用シリンダが水平に配置されるとともに、スラブの幅方向の一方の端面には固定板が設けられ、当該クランプ用シリンダはスラブの幅方向に延びるシリンダロッドを備え、当該シリンダロッドの先端には、スラブを前記固定板に密着させてクランプするためのクランプ板が、前記支持ビーム上面よりも上方に立ち上がって固定され、前記支持ビームの間に、その一端が水平軸によってベースに固定され、他端が昇降用シリンダにより昇降自在とされ、個別に昇降されてスラブの下面を支持する昇降部材を複数配置し、これらの複数の昇降部材のうち前記固定板側の1つの昇降部材の水平軸の位置を、その他の昇降部材の水平軸の位置の反対側としたことを特徴とするスラブ支持用定盤。
【請求項2】
前記支持ビームはスラブの幅方向に延びる部材であり、前記昇降部材はスラブの幅方向に延びる板状体であることを特徴とする請求項1記載のスラブ支持用定盤。
【請求項3】
前記昇降部材は、スラブの幅方向に複数個設けられていることを特徴とする請求項1記載のスラブ支持用定盤。
【請求項4】
前記昇降用シリンダは圧力スイッチを備え、昇降部材を所定の接触圧でスラブの下面に接触されるものであることを特徴とする請求項1記載のスラブ支持用定盤。
【請求項5】
上位コンピュータから伝送されるスラブのサイズにより、作動させる昇降用シリンダを決定することを特徴とする請求項1記載のスラブ支持用定盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスラブの表面切削装置において、切削対象となるスラブを安定に支持することができるスラブ支持用定盤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
連続鋳造されたスラブは、その表面に酸化スケール等の異物が付着しているため、スラブの表面切削装置により表面層の切削が行われる。例えば特許文献1に示されるように、スラブの表面切削はスラブ支持用定盤の上にスラブを載せてクランプし、スラブの上面に切削刃物を走行させて行われるのが一般的である。
【0003】
しかし、表面切削装置に搬入されるスラブは鋳造されたままの状態、あるいは圧延されたままの状態であるため、大きな反りや凹凸があるのが普通であり、必ずしも平板状ではない。このためスラブを左右方向のクランプのみで固定して切削作業を行うと、スラブが共振することがあり、切削面の品質に悪影響を及ぼすことがある。
【0004】
そこで従来はスラブの下面にくさびを打ち込み、そりや凹凸によって発生した床面とスラブとの隙間を埋めることによってスラブを固定し、切削中に発生する共振を抑制していた。しかしこのくさび打ち作業は機内においてハンマーとくさびを用いて行うため、被災リスクが高い作業であった。またこの作業が終了するまで切削を開始できないため、表面切削装置の稼働率の低下を余儀なくされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−17224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、スラブに大きな反りや凹凸がある場合にも、くさび打ち作業を行うことなくスラブを安定的に支持することができるスラブ支持用定盤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するためになされた本発明は、スラブの表面切削装置におけるスラブ支持用定盤であって、スラブの下面を支持する支持ビームを、所定間隔で複数本配置し、当該支持ビームの間に、スラブを幅方向にクランプするためのクランプ用シリンダが水平に配置
されるとともに、スラブの幅方向の一方の端面には固定板が設けられ、当該クランプ用シリンダはスラブの幅方向に延びるシリンダロッドを備え、当該シリンダロッドの先端には、スラブを
前記固定板に密着させてクランプするためのクランプ板が、前記支持ビーム上面よりも上方に立ち上がって固定され、前記支持ビームの間に、その一端が水平軸によってベースに固定され、他端が昇降用シリンダにより昇降自在とされ、個別に昇降されてスラブの下面を支持する昇降部材を複数配置し、
これらの複数の昇降部材のうち前記固定板側の1つの昇降部材の水平軸の位置を、その他の昇降部材の水平軸の位置の反対側としたことを特徴とするものである。
【0008】
なお請求項2のように、前記支持ビームはスラブの
幅方向に延びる部材であり、前記昇降部材はスラブの幅方向に延びる板状体であることが好ましく、請求項3のように、前記昇降部材はスラブの幅方向に複数個設けられていることが好ましい。また請求項4のように、前記昇降用シリンダは圧力スイッチを備え、昇降部材を所定の接触圧でスラブの下面に接触されるものであることが好ましく、さらに請求項5のように、上位コンピュータから伝送されるスラブのサイズにより、作動させる昇降用シリンダを決定することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明のスラブ支持用定盤は、スラブの下面を支持する支持ビームの間に、昇降用シリンダによって個別に昇降されてスラブの下面を支持する昇降部材を多数配置した構造であるから、スラブに大きな反りや凹凸がある場合にも、多数の昇降部材によってスラブの下面を自動的に、確実かつ安定に支持することができる。このため従来のような危険なくさび打ち作業をなくすことができ、安全性の向上を図ることができる。また従来はくさび打ち作業に15分程度の作業時間を要していたが、本発明によれば1秒程度の非常に短い時間でスラブを安定支持することができるので、表面切削装置の稼働率を向上させることができる。
【0010】
なお、請求項4のように圧力スイッチによりスラブの下面への接触圧を設定しておけば、昇降部材に無理な力が作用することがない。また請求項5のように上位コンピュータから伝送されるスラブのサイズにより、作動させる昇降用シリンダを決定するようにすれば、動力の無駄を省くことができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の好ましい実施形態を示す。
図1、
図2に示すように、本実施形態のスラブ支持用定盤は、スラブSの幅方向に延びる細長い支持ビーム1を、スラブSの長手方向に所定間隔で複数本配置したものである。これらの支持ビーム1の上面は水平面を構成し、スラブSをその上に支持することができる。
【0013】
本実施形態ではこれらの支持ビーム1の間に、スラブSを巾方向にクランプするためのクランプ用シリンダ2が水平に配置されている。これらのクランプ用シリンダ2はスラブSの幅方向に延びるシリンダロッド3を備えており、その先端に支持ビーム1の上面よりも上方に立ち上がるクランプ板4が固定されている。これらのクランプ板4はスラブSの幅方向の端面に接してスラブSを
図1の図面上の上方に引き寄せ、固定板5に密着させてクランプする役割を持つ。
【0014】
これらの支持ビーム1の隣接位置には、
図2、
図3に示される昇降部材6が配置されている。昇降部材6はスラブSの幅方向に延びる板状体であり、スラブSの幅方向に複数個設けられている。本実施形態では幅方向に4個、長手方向に5列の全体で20個の昇降部材6が設けられている。しかしその個数は適宜設定することができる。
【0015】
図3に示すように各昇降部材6はその一端が水平軸7によってベースに支持され、他端が昇降用シリンダ8により昇降自在とされている。このため各昇降部材6は端部を昇降させることができる。なお、本実施形態では、昇降用シリンダ8及びクランプ用シリンダ2は何れも油圧シリンダである。
【0016】
昇降用シリンダ8には圧力スイッチ(図示せず)が設けられており、各昇降部材6を所定の接触圧でスラブSの下面に接触させる。このためスラブSの下面に反りや凹凸がある場合にも、各昇降部材6はそれぞれ個別に上昇し、スラブSの下面に所定の接触圧で接した位置で停止する。この結果、支持ビーム1上に置かれたスラブSの下面全体を、確実に支持することができる。ただし必ずしも圧力スイッチを用いる必要はなく、全ての昇降用シリンダ8に一定の元圧を加えるようにしてもよい。
【0017】
図3に示すように、本実施形態では前記した固定板5側の昇降部材6のみ
の水平軸7の位置が他の3つの昇降部材6と反対側となっている。これによってスラブSの幅が狭い場合にも、スラブSの下面を確実に支持することができる。このように本実施形態では昇降部材6を水平軸7を中心として回転させる構造としたが、昇降用シリンダ8の先端に昇降部材6を直接取付け、上下方向に昇降させるようにしても差支えない。
【0018】
なお、スラブSのサイズは様々であるが、工程を管理している上位コンピュータには全てのスラブのサイズが入力されている。このため、上位コンピュータから伝送されるスラブSのサイズにより、作動させる昇降用シリンダ8を決定するようにすれば、スラブSの下面に位置する昇降部材6のみを作動させることができ、動力の無駄を省くことができる利点がある。
【0019】
このようにして本発明のスラブ支持用定盤の上にスラブSを固定したうえ、その表面をフライスカッターにより切削する作業が行われるが、スラブSの下面は多数の昇降部材6により支持されているためがたつきが生じることはなく、共振やそれに伴う切削面の品質低下を防止することができる。また、昇降部材6の昇降は瞬時に行なうことができるので、従来のくさび打ち作業に要していた時間の無駄をなくすことができる。
【符号の説明】
【0020】
S スラブ
1 支持ビーム
2 クランプ用シリンダ
3 ロッド
4 クランプ板
5 固定板
6 昇降部材
7 水平軸
8 昇降用シリンダ