(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
処理槽内に被処理物を収容して、蒸気や熱水により加熱殺菌後、冷却水により冷却する殺菌装置が知られている。この種の殺菌装置では、殺菌工程後の冷却工程の開始時に、蒸気が充満した処理槽内に冷却水が供給されることになる。
【0003】
ところが、蒸気が充満した処理槽内に冷却水を供給すると、処理槽内の蒸気が凝縮して、処理槽内の圧力が急激に低下する。蒸気凝縮による圧力低下分を補うように処理槽内に加圧空気を導入するにしても、加圧空気の導入が追い付かず、処理槽内の圧力が急激に低下するおそれがある。その場合、被処理物の破損(たとえばレトルトパウチの破袋)を起こすおそれもある。
【0004】
そこで、下記特許文献1に開示されるように、処理槽内を空気で加圧することなく100%蒸気により被処理物を加熱殺菌する殺菌装置において、処理槽内下部に予め冷却水を貯留しておき、殺菌工程中、蒸気により被処理物を加熱すると共に、前記貯留した冷却水も殺菌温度まで加熱しておくことが提案されている。この場合、冷却工程では、その加熱された冷却水を被処理物に散水すると共に、処理槽内に冷却水を徐々に導入して、冷却水の温度を徐々に下げることで、被処理物の冷却が図られる。
【0005】
また、下記特許文献2に開示されるように、蒸気により被処理物を加熱殺菌後、処理槽内に冷却水を導入してそれを加熱することで熱水を作り(温水準備工程)、その熱水を被処理物に噴射する冷却工程では、1秒以下の短時間噴射とそれより長い噴射休止とを繰り返しながら被処理物の冷却を図ることが提案されている。この場合、冷却水の短時間噴射と噴射休止とを繰り返す間、処理槽内へは冷却水は供給されない(特許文献2の
図2)。その後、被処理物の冷却が進むと、処理槽内に冷却水を供給することで冷却水の温度を低下させ、被処理物のさらなる冷却が図られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の発明の場合、100%蒸気で殺菌するのに処理槽内には予め冷却水を貯留しておく必要があり、またその貯留水は循環されないので温度ムラを生じやすく、その後の冷却工程において好ましくない。
【0008】
また、特許文献1に記載の発明の場合、100%蒸気により殺菌が行われた後、冷却工程における処理槽内への給水流量は一定である。そのため、冷却工程の開始直後において、処理槽内の蒸気の凝縮が大きく、処理槽内の圧力が急激に低下するおそれがある。あるいは、これを防止しようとして、給水流量を少なくすれば、その後の冷却工程に時間を要することになる。
【0009】
一方、特許文献2に記載の発明の場合、冷却水の短時間噴射と噴射休止とを繰り返す間は、処理槽内へは新たに冷却水が供給されないので不都合はないが、その後に処理槽内へ冷却水を給水し始めると、その給水流量が一定であるため、やはり前記特許文献1に記載の発明と同様の不都合を生じる。また、そもそも、特許文献2に記載の発明の場合、処理槽内に水を貯留せずに蒸気で殺菌後、温水準備工程において処理槽内に冷却水がいきなり供給され、しかもその給水流量が一定であるため、処理槽内の蒸気凝縮による圧力急減が避けられない。
【0010】
なお、特許文献2には、殺菌工程を熱水で行うことができる旨の記載はあるが、熱水で殺菌を行った場合にまで、温水準備工程や冷却工程(冷却水の短時間噴射と噴射休止との繰り返し)を同様に行うものではない。そもそも殺菌工程において処理槽内に熱水があるとすれば、その後の温水準備工程などをどのように行うか不明となるからである。
【0011】
さらに、いずれの特許文献に記載の発明でも、殺菌工程後の冷却工程において、処理槽内に冷却水を供給して冷却水の温度を徐々に下げるが、処理槽内に冷却水を供給するばかりでは、やがて被処理物が冷却水に水没して流れるおそれがある。
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、冷却工程における処理槽内の圧力の急減を防止して、被処理物の保護を図ることができる殺菌装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、処理槽内に収容した被処理物へ向けて熱
水を噴出して被処理物を加熱する殺菌工程後、前記処理槽内に冷却水を導入して被処理物を冷却する冷却工程を行う殺菌装置であって
、被処理物が収容される前記処理槽と、この処理槽内へ給水可能で且つその給水流量を変更可能な給水手段と、前記処理槽内からの排水手段と、前記処理槽内に加圧空気を導入する加圧手段と、前記処理槽内からの排気手段と、被処理物を水没させない水位まで前記給水手段により前記処理槽内に貯留した水を、前記処理槽の底部から前記処理槽内の被処理物へ噴出させて戻す循環手段と、殺菌工程において前記循環手段による循環水を加熱する加熱手段とを備え、殺菌工程および冷却工程では、前記処理槽内を処理槽内温度相当の飽和蒸気圧力よりも高圧に維持するように、前記加圧手段および前記排気手段を制御し、前記給水手段は、小流量給水とこれより流量の多い大流量給水との二段階で流量を調整可能とされ、冷却工程では、前記循環手段により前記処理槽内の水を循環させながら、前記処理槽内に上限水位まで前記給水手段により給水後、前記排水手段により所定時間排水することを繰り返すと共に、冷却工程開始後設定時間経過前は、前記給水手段による前記処理槽内への給水は小流量給水により行う一方、設定時間経過後は大流量給水により行うことを特徴とする殺菌装置である。
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、冷却工程における処理槽内への冷却水の導入量について、設定条件を満たす前の方が、設定条件を満たした後よりも抑えられる。設定条件を満たすまでの間、処理槽内への冷却水の導入量を抑えることで、冷却工程の開始直後における蒸気の凝縮量を抑えることができる。これにより、処理槽内の圧力の急減を防止して、被処理物の破損を防止することができる。
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、殺菌工程では、処理槽内の底部に貯留した水を循環手段により被処理物へ噴出させて戻すことにより循環させると共に、その循環水を加熱手段により加熱する。その後、その熱水は冷却工程において冷却水として使用され、冷却工程において徐々に水を入れ替えて水温を低下させることで、被処理物の冷却が図られる。殺菌工程における熱水をそのまま冷却工程における冷却水として使用し始めることで、工程移行時の温度差を低減し、処理槽内の蒸気の急激な凝縮を防止することができる。また、冷却工程では、単に処理槽内に冷却水を追加するのではなく、適宜排水して処理槽内の水を徐々に入れ替えるので、被処理物を水没させることなく、処理槽内の水温を徐々に低下させることができる。さらに、冷却工程開始直後における処理槽内への給水流量を少なくすることで、処理槽内の蒸気の急激な凝縮を防止することができる。このようにして、処理槽内の圧力低下速度を小さくすることで、処理槽内への加圧空気の導入が遅れることはなく、処理槽内を所望の圧力に維持することができ、被処理物の破損を防止することができる。
【0018】
請求項1に記載の発明によれば、上限水位までの給水と、
所定時間の排水とを繰り返すことで、簡易に、処理槽内の水を徐々に入れ替えることができる。また、冷却工程開始後、設定時間経過前は、処理槽内への給水を小流量で行うことで、処理槽内の蒸気の急激な凝縮を防止して、処理槽内の圧力の急減を防止することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、冷却工程における処理槽内の圧力の急減を防止して、被処理物の保護を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の殺菌装置1の一実施例を示す概略図であり、一部を断面にして示している。本実施例の殺菌装置1は、被処理物2を加熱殺菌後に冷却する装置である。被処理物2は、特に問わないが、典型的にはレトルト食品である。
【0022】
本実施例の殺菌装置1は、被処理物2が収容される処理槽3と、この処理槽3内への給水手段4と、処理槽3内からの排水手段5と、処理槽3内に加圧空気を導入する加圧手段6と、処理槽3内からの排気手段7と、処理槽3内の貯留水の循環手段8と、その循環水を加熱する加熱手段9と、これら各手段4〜9を制御する制御手段(図示省略)とを備える。
【0023】
処理槽3は、被処理物2を収容する中空容器である。処理槽3は、その形状を特に問わないが、本実施例では水平に配置された円筒材を備え、この円筒材は、一方の開口部が閉塞されており、他方の開口部が扉で開閉可能とされている。従って、扉を開けることで、処理槽3に対し被処理物2を出し入れすることができ、扉を閉じることで、処理槽3の開口部を気密に閉じることができる。
【0024】
処理槽3には、処理槽3内の温度を検出する温度センサ10が設けられると共に、処理槽3内の水位を検出する水位検出器(図示省略)が設けられている。
【0025】
なお、図示例の場合、被処理物2は、トレー11に並べられ、そのようなトレー11が上下に積み重ねられて処理槽3内に収容されている。トレー11は、上方へ開口した浅い矩形状の容器であり、少なくとも底面に多数の開口が形成されると共に、上下のトレー11は、側面において隙間をあけて積み重ねられる。但し、被処理物2は、処理槽3内の棚に載せたり、ワゴンに載せたりして、処理槽3内に収容されてもよい。
【0026】
給水手段4は、給水路12を介して処理槽3内へ水を供給する。給水手段4は、処理槽3内への給水流量を変更可能に構成されている。本実施例では、給水路12は、給水ポンプ13より下流(処理槽3側)において二股に分岐された後、再び合流して処理槽3に接続されている。これにより、給水路12の一部は、第一給水路12aと第二給水路12bとが並列に配置されて構成されることになる。
【0027】
第一給水路12aには第一給水弁14が設けられ、第二給水路12bには第二給水弁15が設けられる。給水ポンプ13を作動させた状態で、一方または双方の給水弁14,15を開けることで、給水源からの水を処理槽3内へ供給することができる。この際、第一給水弁14と第二給水弁15との内、いずれを開けるかにより、または一方のみを開けるか双方を開けるかにより、処理槽3内への給水流量を二段階で調整可能とされている。
【0028】
具体的には、本実施例の給水手段4は、小流量給水とこれより流量の多い大流量給水との二段階で給水流量を変更可能とされており、第二給水弁15を閉鎖した状態で第一給水弁14のみを開放すれば小流量給水、第一給水弁14を閉鎖した状態で第二給水弁15のみを開放すれば大流量給水で、処理槽3内へ給水できる。但し、処理槽3内への大流量給水は、第一給水弁14を閉鎖した状態で第二給水弁15のみを開放するのではなく、第一給水弁14と第二給水弁15との双方を開放することで行ってもよい。一方、第一給水弁14と第二給水弁15との双方を閉鎖すれば、処理槽3内への給水を停止できる。
【0029】
詳細は後述するが、殺菌装置1の運転開始に伴い、処理槽3内には給水手段4により水が供給され、設定水位まで水が貯留される。その設定水位は、処理槽3内のいずれの被処理物2も水没させない水位である。具体的には、処理槽3内の最下部に配置された被処理物2よりも下方において設定水位が定められ、設定水位まで水を貯留しても、処理槽3内のいずれの被処理物2も貯留水に浸漬されない。
【0030】
排水手段5は、排水路16を介して処理槽3内から水を排出する。排水路16は、処理槽3の底部に接続され、排水弁17が設けられている。排水弁17を開くことで、処理槽3内の水を外部へ排出することができる。
【0031】
加圧手段6は、加圧路18を介して処理槽3内へ加圧空気(言い換えれば圧縮空気)を供給する。加圧路18に設けた加圧弁19を開くことで、加圧空気源からの加圧空気を処理槽3内に供給して、大気圧を超える圧力に処理槽3内を加圧することができる。
【0032】
排気手段7は、大気圧を超える圧力下の処理槽3内から排気路20を介して気体を排出する。排気路20は、処理槽3の上部に接続され、処理槽3の側から順に、排気弁21と逆止弁22とが設けられている。処理槽3内が大気圧を超える圧力にある状態で、排気弁21を開くと、処理槽3内の気体は排気路20を介して外部へ排出され、処理槽3内の圧力を下げることができる。
【0033】
循環手段8は、処理槽3内の貯留水を、処理槽3の底部から抜き出し、循環路23を介して処理槽3内の被処理物2へ噴出させて戻すことで、処理槽3内の水を循環する。循環路23には循環ポンプ24が設けられており、この循環ポンプ24を作動させることで、処理槽3内の水を循環させることができる。循環路23からの水は、処理槽3内へ戻される際、ノズル25により被処理物2へ噴出して戻される。このノズル25は、処理槽3内の側部および/または上部に設けられている。なお、図示例の場合、給水路12と循環路23とは、処理槽3の底部の側で共通の管路とされている。
【0034】
加熱手段9は、循環手段8による循環水を加熱する。加熱手段9は、その構成を特に問わないが、本実施例では、循環水への給蒸手段とされている。具体的には、本実施例では、循環ポンプ24より下流において、循環路23には給蒸路26が接続されており、循環路23と給蒸路26との接続部には、循環水への蒸気の混合器27が設けられている。また、給蒸路26には給蒸弁28が設けられている。従って、給蒸弁28を開けることで、循環路23内の循環水に蒸気を吹き込んで、循環水を加熱することができる。処理槽3に設けた温度センサ10の検出温度に基づき給蒸弁28の開度を調整することで、処理槽3内の温度を所望に調整することができる。
【0035】
制御手段は、温度センサ10や水位検出器の検出信号や経過時間などに基づき、前記各手段4〜9を制御する制御器(図示省略)である。具体的には、給水ポンプ13、第一給水弁14、第二給水弁15、排水弁17、加圧弁19、排気弁21、循環ポンプ24、給蒸弁28の他、温度センサ10および水位検出器などは、制御器に接続されている。
【0036】
制御器は、以下に述べるように、所定の手順(プログラム)に従い、処理槽3内の被処理物2の加熱殺菌と、その後の冷却を行う。典型的には、給水工程、移行工程、殺菌工程、冷却工程および排水工程を順次に実行する。以下、各工程について説明する。なお、殺菌装置1の運転に先立ち、処理槽3内には被処理物2が収容され、処理槽3の扉は閉じられる。その状態では、排気弁21は開かれ、その他の弁は閉じられており、各ポンプは停止している。
【0037】
(1)給水工程
給水工程では、処理槽3内の被処理物2を浸漬しない設定水位まで、給水手段4により処理槽3内に水を供給して、処理槽3内に水を貯留する。この際、大流量給水で、処理槽3内に給水することができる。具体的には、給水ポンプ13を作動させた状態で、第一給水弁14と第二給水弁15との内、第二給水弁15のみを開けるか、双方の給水弁14,15を開けばよい。この際、排水弁17および加圧弁19は閉じられており、排気弁21は開かれている。処理槽3内に設定水位まで水が貯留されたことを水位検出器により検知すると、給水弁15(,14)を閉じると共に給水ポンプ13を停止させて、給水工程を終了する。
【0038】
(2)移行工程
移行工程では、循環手段8により処理槽3内の水を循環させながら、その循環水を加熱手段9により加熱して、処理槽3内の温度を殺菌温度(たとえば120℃)まで上昇させる。具体的には、循環ポンプ24を作動させることで、処理槽3内底部からの水を、循環路23を介して処理槽3内へ戻すことで、処理槽3の水を循環させる。また、給蒸弁28を開けて、混合器27において循環水に蒸気を吹き込むことで、循環水を加熱する。
【0039】
このようにして、処理槽3内の温度を徐々に上昇させるが、それに伴い被処理物2が加熱により膨張して包装(レトルトパウチなど)が破裂するおそれがある。そこで、これを防止するために、加圧手段6により処理槽3内は徐々に加圧され、大気圧を超える圧力(処理槽内温度相当の飽和蒸気圧力よりもやや高圧)とされる。具体的には、加圧弁19と排気弁21とを制御することにより、処理槽3内の温度に応じた加圧がなされる。以後、循環手段8による水の循環と、加圧手段6による処理槽3内の加圧とは、冷却工程の終了まで引き続きなされる。
【0040】
(3)殺菌工程
殺菌工程では、処理槽3内の温度を殺菌温度に保持して、被処理物2を加熱して殺菌する。具体的には、循環ポンプ24により処理槽3内の水を循環させつつ、温度センサ10の検出温度を殺菌温度に維持するように、給蒸弁28の開度を調整する。処理槽3内が殺菌温度以上で殺菌時間経過すると、給蒸弁28を閉じて循環水の加熱を停止して、殺菌工程を終了する。
【0041】
(4)冷却工程
冷却工程では、循環手段8により処理槽3内の水を循環させながら、給水手段4および排水手段5により処理槽3内の水を徐々に入れ替えることで、循環水の温度を徐々に低下させ、これにより処理槽3内の被処理物2の冷却を図る。具体的には、循環ポンプ24を作動させて処理槽3内の水を循環させた状態で、次のようにして処理槽3内の水を徐々に入れ替える。
【0042】
つまり、冷却工程では、処理槽3内に上限水位まで給水手段4により給水する一方、その上限水位より低い下限水位まで排水手段5により排水することを繰り返す。これにより、処理槽3内の比較的高温の水が、給水手段4により新たに処理槽3内へ供給される比較的低温の水と徐々に入れ替えられて、処理槽3内の水温の低下が図られる。なお、上限水位および下限水位は水位検出器により検知され、上限水位においても、処理槽3内の最下部の被処理物2は、貯留水に浸漬されない。また、上限水位または下限水位のいずれかを、前記給水工程における前記設定水位と一致させることができる。
【0043】
ところで、冷却工程の開始直後には、その直前の殺菌工程により処理槽3内に蒸気が充満している。その状態で、処理槽3内に給水手段4により比較的低温(典型的には常温)の冷却水を供給すると、蒸気の凝縮により、処理槽3内の圧力が急激に低下し、被処理物2の破損(レトルトパウチの破袋)を生じるおそれがある。圧力低下が生じるとそれを補うように加圧空気を導入する制御はなされているが、冷却工程の開始直後には蒸気の凝縮が多く、処理槽3内への加圧空気の供給が追い付かないおそれがある。
【0044】
そこで、本実施例では、給水手段4による処理槽3内への給水について、冷却工程開始後設定時間経過前には小流量給水で行い、設定時間経過後には大流量給水で行う。具体的には、処理槽3内へ給水する際、冷却工程開始後設定時間経過前には、第一給水弁14と第二給水弁15との内、第一給水弁14のみを開いて比較的小流量で給水し、設定時間経過後には、第二給水弁15のみを開くか、双方の給水弁14,15を開いて比較的大流量で給水する。
【0045】
これにより、冷却工程開始直後における処理槽3内の蒸気の凝縮を抑制し、処理槽3内への加圧空気の導入が遅れるのを防止することができる。よって、処理槽3内を所望の圧力に維持して、被処理物2の破損を防止することができる。そして、冷却工程開始後、設定時間経過する頃には、処理槽3内の蒸気が加圧手段6による空気に置き換わっており、その後は大流量給水により給水しても処理槽3内の圧力を低下させることはない。
【0046】
冷却工程の開始から所定時間経過するか、処理槽3内の温度(または冷却水の温度)が所定温度よりも下がってから所定時間経過すると、循環手段8による循環や給水手段4による給水を停止して、冷却工程を終了する。
【0047】
(5)排水工程
排水工程では、排水手段5により処理槽3内から排水する。具体的には、排水弁17を開くことで、外部へ水を排出する。加圧手段6により処理槽3内を加圧したままで排水手段5により排水すれば、処理槽3内からの排水を迅速に行うことができる。その後、加圧弁19を閉じる一方、排気弁21を開いて、処理槽3内を大気圧まで戻した後、処理槽3の扉を開けて、処理槽3内から被処理物2を取り出すことができる。
【0048】
本実施例の殺菌装置1によれば、殺菌工程で使用した熱水を、そのまま冷却工程において冷却水として使用し始めることになる。これにより、工程移行時の温度差を低減し、処理槽3内の蒸気の急激な凝縮を防止することができる。また、冷却工程において、処理槽3内の水は、給水手段4による新たな水と徐々に入れ替えられるが、冷却工程開始後設定時間経過するまでは、処理槽3内への給水流量を抑えることで、処理槽3内の水温が急激に低下するのを防止し、処理槽3内の蒸気の急激な凝縮を防止することができる。このようにして、処理槽3内の圧力低下速度を小さくすることで、処理槽3内への加圧空気の導入が遅れることはなく、処理槽3内を所望の圧力に維持することができ、被処理物2の破損を防止することができる。
【0049】
本発明の殺菌装置1は、前記実施例の構成に限らず、適宜変更可能である。特に、被処理物2を加熱殺菌後に冷却する殺菌装置1において、冷却工程開始後、設定条件を満たすまで、処理槽3内への冷却水の導入量を、それ以降よりも抑えるのであれば、その他の構成は適宜に変更可能である。たとえば、前記実施例では、熱水により被処理物2を加熱殺菌したが、蒸気により被処理物2を加熱殺菌してもよい。
【0050】
また、前記実施例では、冷却工程の開始から設定時間経過する前後で、処理槽3内への給水流量を変えたが、給水流量を変えるタイミングは、適宜に変更可能である。たとえば、処理槽3内の温度または処理槽3内の冷却水の温度が設定温度まで下がるまでは小流量で給水するようにしてもよい。
【0051】
また、前記実施例では、給水流量は、小流量給水と大流量給水との二段階で切り替えたが、三段階以上で切り替えてもよいし、給水流量を徐々に増すように連続的に変更してもよい。たとえば、給水ポンプ13をインバータ制御したり、給水弁14(15)の開度を徐々に開けたりして、処理槽3内への給水流量を徐々に増すようにしてもよい。この場合、第一給水路12aと第二給水路12bとを並列に設ける必要はなく、いずれか一方のみで足りる。
【0052】
また、前記実施例では、加熱手段9は、循環路23において循環水に蒸気を吹き込んだが、処理槽3内底部において貯留水に蒸気を吹き込んでもよい。あるいは、循環路23に熱交換器を設け、その熱交換器において、循環水を蒸気で間接的に加熱してもよい。
【0053】
さらに、前記実施例では、冷却工程において、上限水位までの給水と、下限水位までの排水とを繰り返すことで、処理槽3内の水を徐々に入れ替えて水温の低下を図ったが、上限水位までの給水後、所定時間排水することを繰り返してもよい。あるいは、処理槽3内への給水を継続した状態で、目標水位を維持するように排水手段5による排水量を調整するように制御してもよい。この際、目標水位を維持するように、排水手段5による排水量だけでなく、給水手段4による給水量の制御を行ってもよい。