(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記切換えバルブは、前記第2位置に付勢する付勢部材を有し、前記電動オイルポンプからの油圧を前記付勢部材の付勢力に対向して入力した際に前記第1位置に切換えられ、
前記検知された油温が前記所定油温よりも高い場合に前記電動オイルポンプを駆動するように指令する制御部を備えた、
ことを特徴とする請求項3記載の車両用伝動装置。
前記油圧制御装置は、前記機械式オイルポンプからの油の流れを絞って流量を小さくする小流量状態と、前記小流量状態よりも前記機械式オイルポンプからの油の流量を大きくする大流量状態と、に切換える流量切換え部を有し、前記流量切換え部は、少なくとも油温が前記所定油温よりも低い場合に前記大流量状態に切換えられる、
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか記載の車両用伝動装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば車両用伝動装置において、内燃エンジンの駆動力による発進時に係合制御されることで車輪に駆動力を伝達するクラッチを備えたものにあって、特に登坂路などでトルク伝達しつつ車速が小さい状態などでは、当該クラッチが長時間に亘ってスリップ制御されることがあり、そのような場合には潤滑油の流量を大きくしてクラッチを充分に潤滑・冷却する必要がある。
【0005】
一方、電動オイルポンプで高い油圧を出力するためには、その電動モータを大型化したり電動オイルポンプ自体を大きくしたりする必要があり、電動オイルポンプのコストアップになるため、変速機構などでクラッチやブレーキを係合するための高い油圧を発生させる場合は機械式オイルポンプを用いることが一般的である。
【0006】
しかし、高い油圧を発生し得る機械式オイルポンプで、潤滑油の流量を大きくしようとすると、内燃エンジンで走行中に常時連動して駆動される機械式オイルポンプを無駄に大型化する必要があり、回転抵抗が大きくなって、車両用伝動装置の効率向上が図れず、燃費向上の妨げになる虞がある。
【0007】
そこで、クラッチの潤滑油の流量を確保するため、低い油圧で大きい流量を発生し得る電動オイルポンプを設け、電動オイルポンプで潤滑油の供給を行って、上述のようにスリップ制御中のクラッチを潤滑・冷却することが考えられる。
【0008】
しかしながら、車両は寒冷地などでも使用されるので油温が低くなることがあり、油温の低下で油の粘性が高くなることを考慮すると、電動オイルポンプの低油温時における潤滑油圧(潤滑油量)の確保のために、設計上、電動オイルポンプの最低限の発生油圧を高く設定する必要があり、結局は電動オイルポンプを大型化しなくてはならないという問題があった。
【0009】
そこで本発明は、摩擦係合要素のスリップ係合中にあっても潤滑油の流量を確保するものでありながら、機械式オイルポンプ及び電動オイルポンプをコンパクト化し、もって燃費向上を図ることが可能な車両用伝動装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る車両用伝動装置(1)は(例えば
図1乃至
図6参照)、車両を駆動する駆動源(例えば2,3)により駆動される機械式オイルポンプ(21)と、
電動により駆動される電動オイルポンプ(22)と、
前記駆動源(例えば2)から車輪(9)までの動力伝達経路上に配設された摩擦係合要素(SSC)と、
前記摩擦係合要素(SSC)に潤滑油を供給する潤滑
回路(53)と、
前記摩擦係合要素(SSC)の油圧サーボに油を供給する係合回路(44)と、
油温(T)を検知する油温検知部(32)と、
少なくとも前記摩擦係合要素(SSC)のスリップ係合中にあって、前記検知された油温(T)が所定油温(TA)よりも高い場合に前記電動オイルポンプ(22)からの油
のみを前記潤滑
回路(53)に供給
すると共に前記機械式オイルポンプ(21)からの油のみを前記係合回路(44)に供給し、前記検知された油温(T)が前記所定油温(TA)よりも低い場合に前記機械式オイルポンプ(21)からの油
のみを前記潤滑
回路(53)
と前記係合回路とに供給する油圧制御装置(40)と、を備えたことを特徴とする。
また、本発明に係る車両用伝動装置(1)は(例えば図1乃至図6参照)、
前記油圧制御装置(40)は、
前記電動オイルポンプ(22)と前記潤滑回路(53)とを連通する第1油路(例えば図2のa1,a3,a5,a7,i1,h2,h3)と、
前記機械式オイルポンプ(21)と前記潤滑回路(53)とを連通する第2油路(例えば図2のb1,c2,c3,c5,d1,d4,d6,j1,h2,h3)と、
前記機械式オイルポンプ(21)と前記係合回路(44)とを連通する第3油路(例えば図2のb1,c2,c3,c6,c7)と、
前記第1油路と、前記第2油路及び第3油路と、を連通する第4油路(例えば図2のa2,c1)と、
前記第4油路に介在し、前記電動オイルポンプ(22)の油圧が前記機械式オイルポンプ(21)の油圧よりも高い場合に開き、低い場合に閉じるチェックバルブ(68)と、を有することを特徴とする。
【0011】
本発明に係る車両用伝動装置(1)は(例えば
図2、
図4乃至
図6参照)、前記油圧制御装置(40)は、前記電動オイルポンプ(22)からの油を前記潤滑
回路(53)に供給する第1位置(下位置)と、前記機械式オイルポンプ(21)からの油を前記潤滑
回路(53)に供給する第2位置(上位置)と、に切換えられる切換えバルブ(47,147)を有することを特徴とする。
【0012】
本発明に係る車両用伝動装置(1)は(例えば
図1及び
図2参照)、前記切換えバルブ(47)は、前記第2位置(上位置)に付勢する付勢部材(47s)を有し、前記電動オイルポンプ(22)からの油圧を前記付勢部材(47s)の付勢力に対向して入力した際に前記第1位置(下位置)に切換えられ、
前記検知された油温(T)が前記所定油温(TA)よりも高い場合に前記電動オイルポンプ(22)を駆動するように指令する制御部(31)を備えたことを特徴とする。
【0013】
本発明に係る車両用伝動装置(1)は(例えば
図2、
図4乃至
図6参照)、前記油圧制御装置(40)は、前記機械式オイルポンプ(21)からの油の流れを絞って流量を小さくする小流量状態と、前記小流量状態よりも前記機械式オイルポンプ(21)からの油の流量を大きくする大流量状態と、に切換える流量切換え部(149,249,349)を有し、前記流量切換え部は、少なくとも油温(T)が前記所定油温(TA)よりも低い場合に前記大流量状態に切換えられることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る車両用伝動装置(1)は(例えば
図1参照)、入力軸(5a)に入力された回転を変速して車輪(9)に出力し得る変速機構(5)を備え、
前記駆動源は、内燃エンジン(2)と回転電機(3)とからなり、
前記摩擦係合要素は、前記内燃エンジン(2)と前記変速機構(5)の入力軸(5a)との間に介在されたクラッチ(SSC)からなることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る車両用伝動装置(1)は(例えば
図1参照)、前記機械式オイルポンプ(21)に連動される連動軸(11)と、
前記連動軸(11)と前記内燃エンジン(2)の出力軸(2a)との間に介在される第1ワンウェイクラッチ(F1)と、
前記連動軸(11)と前記回転電機(3)の回転出力部材(4)との間に介在される第2ワンウェイクラッチ(F2)と、を備え、
前記機械式オイルポンプ(21)は、前記内燃エンジン(2)と前記回転電機(3)との出力回転が大きい方に連動して駆動されることを特徴とする。
【0016】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これは、発明の理解を容易にするための便宜的なものであり、特許請求の範囲の構成に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0017】
請求項1
,2に係る本発明によると、油圧制御装置が、少なくとも摩擦係合要素のスリップ係合中にあって、検知された油温が所定油温よりも高い場合に電動オイルポンプからの油を摩擦係合要素の潤滑
回路に供給し、検知された油温が所定油温よりも低い場合に機械式オイルポンプからの油を摩擦係合要素の潤滑
回路に供給するので、つまり、油温が低くて油の粘性が高く、油圧制御装置における油の漏れ量が少なくて機械式オイルポンプが排出する油の流量で摩擦係合要素を充分に潤滑できる際には、機械式オイルポンプで摩擦係合要素への潤滑油の供給を行い、油温が高くて油の粘性が低く、油圧制御装置における油の漏れ量が多いが油圧が小さくて足り、電動オイルポンプが排出する油の流量で摩擦係合要素を充分に潤滑できる際には、電動オイルポンプで摩擦係合要素への潤滑油の供給を行うことができる。これにより、機械式オイルポンプの流量を多くするために大型化することや電動オイルポンプの油圧を高くするために大型化することの防止を図ることができ、機械式オイルポンプや電動オイルポンプのコンパクト化により回転抵抗を小さくすることができて、車両の燃費向上を図ることができる。
【0018】
請求項
3に係る本発明によると、油圧制御装置が、電動オイルポンプからの油を潤滑
回路に供給する第1位置と、機械式オイルポンプからの油を潤滑
回路に供給する第2位置と、に切換えられる切換えバルブを有しているので、油温に応じて選択的に電動オイルポンプ又は機械式オイルポンプの油を摩擦係合要素へ供給することを可能とすることができる。
【0019】
請求項
4に係る本発明によると、切換えバルブは、第2位置に付勢する付勢部材を有すると共に、電動オイルポンプからの油圧を付勢部材の付勢力に対向して入力した際に第1位置に切換えられるように構成されており、制御部が、油温が所定油温よりも高い場合に電動オイルポンプを駆動するように指令するので、制御部が電動オイルポンプの駆動を指令するだけで、自動的に切換えバルブが第1位置に切換えられて、電動オイルポンプの油を摩擦係合要素へ供給するようにすることができる。
【0020】
請求項
5に係る本発明によると、油圧制御装置が、機械式オイルポンプからの油の流れを絞って流量を小さくする小流量状態と、小流量状態よりも機械式オイルポンプからの油の流量を大きくする大流量状態と、に切換える流量切換え部を有しており、流量切換え部が少なくとも油温が所定油温よりも低い場合に大流量状態に切換えられるので、油温が所定油温よりも低い場合には、機械式オイルポンプの油を大流量で摩擦係合要素へ供給するようにすることができる。また、油温が所定油温よりも高い場合にあって、電動オイルポンプの油を摩擦係合要素へ供給しない際には、機械式オイルポンプの油を小流量で摩擦係合要素へ供給するようにすることができる。これにより、摩擦係合要素へ常時大流量で油を供給することを不要とし、特に摩擦係合要素の解放中や係合完了後に無駄な油を当該摩擦係合要素に供給して、ポンプロスの増大を招いたり、摩擦係合要素における引き摺りロスの増大を招いたりすることを防止でき、車両の燃費向上を図ることができる。
【0021】
請求項
6に係る本発明によると、摩擦係合要素が、内燃エンジンと変速機構の入力軸との間に介在されたクラッチからなるので、特に登坂路などで内燃エンジンにより車両を発進させる際に、当該クラッチの潤滑油を多量に必要とするが、油温によって選択的に機械式オイルポンプ又は電動オイルポンプによる潤滑油の供給を切換えることで、コンパクト化された機械式オイルポンプ又は電動オイルポンプで充分に潤滑油の供給量を確保することができる。
【0022】
請求項
7に係る本発明によると、機械式オイルポンプが、第1ワンウェイクラッチ又は第2ワンウェイクラッチの係合により、内燃エンジンと回転電機との出力回転が大きい方に連動して駆動されるので、特に内燃エンジンが停止しているEV走行時にあって油温が所定油温よりも低い場合であっても、回転電機で機械式オイルポンプを駆動して、クラッチに対する潤滑油の供給量を充分に確保することができる。これにより、例えばEV走行状態からクラッチをスリップ係合して内燃エンジンの回転数を上昇して該内燃エンジンを始動するような制御も可能とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<第1の実施の形態>
以下、本発明に係る第1の実施の形態を
図1乃至
図3に沿って説明する。まず、
図1に沿って、本発明を適用し得るハイブリッド車両100の駆動系の概略構成について説明する。
【0025】
図1に示すように、ハイブリッド車両100は、例えばFF(フロントエンジン・フロントドライブ)タイプの車両であり、駆動源として、内燃エンジン2の他に、回転電機(モータ・ジェネレータ)3を有している。このハイブリッド車両100のパワートレーンを構成するハイブリッド駆動装置(車両用伝動装置)1は、ステータ3a及びロータ3bを有する上記モータ・ジェネレータ(以下、単に「モータ」という)3と、内燃エンジン2と車輪9との間の動力伝達経路上に設けられる変速機構5と、該変速機構5と内燃エンジン2との間に配置され、内燃エンジン2の出力軸(クランク軸)2aと変速機構5の入力軸5aとの間の動力伝達を断接するクラッチ(摩擦係合要素)SSCと、を備えており、該クラッチSSCは、上記入力軸5aに駆動連結されて出力側回転部材となると共に上記ロータ3bに駆動連結されて上記モータ3の回転出力部材となるクラッチドラム4を有して構成されている。なお、図示を省略したが、通常、内燃エンジン2とクラッチSSCとの間には、内燃エンジン2の脈動を吸収しつつその回転を伝達するダンパ装置等が備えられている。
【0026】
上記変速機構5は、複数の摩擦係合要素(クラッチやブレーキ)の係合状態に基づき伝達経路を変更し、例えば前進6速段及び後進段を達成し得る変速機構からなる。また、変速機構5の出力部材であるカウンタギヤ5bは、カウンタシャフト6のカウンタ入力ギヤ6aに噛合し、カウンタシャフト6のカウンタ出力ギヤ6bは、ディファレンシャル装置7の入力ギヤ7aに噛合している。従って、変速機構5の出力回転は、ディファレンシャル装置7及び左右ドライブシャフト8l,8rを介して左右車輪9,9に出力される。
【0027】
なお、変速機構5としては、例えば前進3〜5速段や前進7速段以上を達成する有段変速機構であってもよく、また、ベルト式無段変速機、トロイダル式無段変速機、リングコーン式無段変速機などの無段変速機構であってもよく、つまりどのような変速機構であっても本発明を適用し得る。
【0028】
以上のようなハイブリッド駆動装置1は、内燃エンジン2側から車輪9側に向かって、クラッチSSC及びモータ3、変速機構5、カウンタシャフト6、ディファレンシャル装置7、左右ドライブシャフト8l,8r等が順次配置されており、内燃エンジン2及びモータ3の両方を駆動させて車両を走行させる場合には、制御部(ECU)31によって油圧制御装置40を制御してクラッチSSCを係合させ、モータ3の駆動力だけで走行するEV走行時には、クラッチSSCを解放して、内燃エンジン2と車輪9との伝達経路を切り離すようになっている。なお、ハイブリッド駆動装置1には、油温を検知する油温センサ(油温検知部)32が設けられており、制御部31に信号を出力し得るように接続されている。
【0029】
また、ハイブリッド駆動装置1には、油圧制御装置40において用いる油圧(元圧)を発生するための機械式オイルポンプ21と電動オイルポンプ22とが備えられている。機械式オイルポンプ21は、そのドライブギヤが駆動連結された駆動軸13がチェーン12を介して連動軸11に連動するように駆動連結されており、該連動軸11と内燃エンジン2の出力軸2aとの間には該内燃エンジン2の回転速度が該連動軸11の回転速度以下で空転する第1ワンウェイクラッチF1が介在され、また、該連動軸11と上記クラッチドラム(回転出力部材)4(つまりモータ3のロータ3b)との間には該モータ3の回転速度が該連動軸11の回転速度以下で空転する第2ワンウェイクラッチF2が介在されている。つまり、機械式オイルポンプ21は、内燃エンジン2とモータ3とが回転している際、その回転速度が高い方に連動して回転駆動される。一方の電動オイルポンプ22は、機械式オイルポンプ21とは無関係に独立して不図示の電動モータで電動駆動し得るように構成されており、制御部31からの電子指令に基づき、駆動・停止制御される。
【0030】
ついで、第1の実施の形態に係る油圧制御装置40について
図2に沿って説明する。上述のように電動で駆動・停止自在に制御される電動オイルポンプ22は、油路a1,a2,a3,a4,a5に、該電動オイルポンプ22の規格(設計)に応じた油圧P
EOPで流量Q
EOPを発生させ、特に油路a5からは、詳しくは後述する潤滑供給切換え部70
1の油路a6,a7にも油圧P
EOPを供給する。また、上記機械式オイルポンプ21が停止している又は低回転状態であって(つまり内燃エンジン2及びモータ3が停止している又は低回転状態であって)、電動オイルポンプ22の油圧P
EOPが機械式オイルポンプ21の油圧P
MOPよりも大きい場合は、チェックボール68が開いて、該油圧P
EOPが油路c1,c2,c3,c4,c5,c6,c7,c8,c9に供給され、詳しくは後述するプライマリレギュレータバルブ41によりライン圧P
Lに調圧される。
【0031】
なお、油路a1〜a7までの油圧P
EOPが所定圧よりも高くなった場合は、プレッシャリリーフバルブ48のスプリング48sが油圧P
EOPに打ち負けてスプール48pが油路a4から退避して該油路a4を開放し、油路a1〜a7の油圧P
EOPが所定圧になるように調圧して、各部の油圧が高くなり過ぎることを防止して、油圧制御装置40の保護が図られている。
【0032】
一方、上述のように内燃エンジン2又はモータ3で駆動される機械式オイルポンプ21は、油路b1に、該機械式オイルポンプ21の規格(設計)に応じた油圧P
MOPで流量Q
MOPを発生させ、チェックボール69を開いて該油圧P
MOPを油路c1〜c9に供給して、詳しくは後述するプライマリレギュレータバルブ41によりライン圧P
Lに調圧される。なお、機械式オイルポンプ21が発生する油圧P
MOPは、設計上、電動オイルポンプ22が発生する油圧P
EOPよりも大きく、機械式オイルポンプ21と電動オイルポンプ22とが同時に駆動される場合は、チェックボール68が閉じて、機械式オイルポンプ21の油圧P
MOPが、プライマリレギュレータバルブ41によりライン圧P
Lに調圧されることになる。
【0033】
プライマリレギュレータバルブ41は、スプール41pと、該スプール41pを一方側に付勢するスプリング41sと、調圧ポート41aと、ドレーンポート41bと、排出ポート41cとを有して構成されている。該プライマリレギュレータバルブ41のスプール41pは、例えば図示を省略したリニアソレノイドバルブからスロットル開度等に応じて出力される制御圧(不図示)と、スプリング41sの付勢力と、油路c4を介してフィードバックされるフィードバック圧とに応じて、調圧ポート41aと、ドレーンポート41b又は排出ポート41cとの連通量(開口量)が調整され、それによって調圧ポート41aに繋がる油路c1〜c9の油圧をライン圧P
Lとして調圧する。
【0034】
このようにプライマリレギュレータバルブ41により調圧されたライン圧P
Lは、油路c7を介してクラッチSSCの係合回路44に供給され、制御部31により電子制御されるソレノイドバルブ等によって調圧制御されて、その油圧サーボに供給されることで、クラッチSSCの解放、スリップ係合、完全係合の状態に自在に制御される。また、ライン圧P
Lは、油路c8を介して変速制御回路45にも供給され、制御部31により電子制御されるソレノイドバルブ等によって、各クラッチやブレーキの油圧サーボに供給される係合圧として調圧制御されて、各変速段の形成、掴み換え変速等が自在に制御される。そして、ライン圧P
Lは、油路c9を介してモジュレータバルブ(MOD)43にも供給され、当該ライン圧P
Lを一定圧以下に抑えたモジュレータ圧P
MODとして油路f1に出力する。
【0035】
一方、プライマリレギュレータバルブ41の排出ポート41cから排出された油圧は、油路d1,d2,d3,d4に供給され、特に油路d4からは、詳しくは後述する潤滑供給切換え部70
1の油路d5,d6にも供給され、セカンダリレギュレータバルブ42によりセカンダリ圧P
SECに調圧される。
【0036】
セカンダリレギュレータバルブ42は、上記プライマリレギュレータバルブ41と略々同様に構成され、スプール42pと、該スプール42pを一方側に付勢するスプリング42sと、調圧ポート42aと、ドレーンポート42bと、排出ポート42cとを有して構成されている。該セカンダリレギュレータバルブ42のスプール42pは、例えば図示を省略したリニアソレノイドバルブからスロットル開度等に応じて出力される制御圧(不図示)と、スプリング42sの付勢力と、油路d2を介してフィードバックされるフィードバック圧とに応じて、調圧ポート42aと、ドレーンポート42b又は排出ポート42cとの連通量(開口量)が調整され、それによって調圧ポート42aに繋がる油路d1〜d6の油圧をセカンダリ圧P
SECとして調圧する。
【0037】
なお、セカンダリレギュレータバルブ42の排出ポート42cから排出された油圧は、油路e1を介してオイルクーラ50に供給され、さらにオイルクーラ50で冷却された油は、オリフィス61が介在する油路e2を介して変速機構5の歯車機構(GEAR)等を潤滑する変速機構潤滑回路(GEAR LUBE)51に供給される。
【0038】
続いて、第1の実施の形態に係る潤滑供給切換え部70
1について詳細に説明する。本潤滑供給切換え部70
1は、クラッチSSC(特にその摩擦板)に潤滑油を供給するクラッチSSC潤滑回路(潤滑油路)(SSC LUBE)53に供給する潤滑油の流量を切換える機能を有し、大まかに、上記セカンダリ圧P
SECに基づく潤滑油(基本的には機械式オイルポンプ21からの油)の流量を切換える流量切換え部49と、機械式オイルポンプ21と電動オイルポンプ22とのどちらの油を選択的にクラッチSSC潤滑回路53に供給するかを切換えるオイルポンプ切換え部としてのオイルポンプ切換えバルブ(切換えバルブ)47と、を備えて構成されている。
【0039】
また、流量切換え部49は、本第1の実施の形態では、信号圧P
S1をオン・オフして出力・非出力に切換えるソレノイドバルブS1と、セカンダリ圧P
SECに基づく潤滑油の流量を、小流量状態とそれよりも大きくする大流量状態とに切換える流量切換えバルブ46と、を有して構成されている。
【0040】
詳細には、流量切換えバルブ46は、スプール46pと、該スプール46pを一方側に付勢するスプリング46sと、入力ポート46aと、出力ポート46bと、入力ポート46cと、出力ポート46dと、遮断ポート46eと、入力ポート46fと、出力ポート46gと、入力ポート46hと、遮断ポート46iと、出力ポート46jと、を有して構成されており、スプリング46sの付勢力でスプール46pが付勢された図中上位置にあると、入力ポート46cと出力ポート46d、入力ポート46fと遮断ポート46e、入力ポート46hと遮断ポート46iがそれぞれ連通し、油路g1から信号圧P
S1が入力されてスプール46pが図中下位置にあると、入力ポート46cと遮断ポート46e、入力ポート46fと出力ポート46g、入力ポート46hと出力ポート46jがそれぞれ連通する。
【0041】
また、流量切換えバルブ46の入力ポート46aと出力ポート46bとは、スプール46pの位置に拘らず、常時連通状態となるように構成されており、油路f1から入力ポート46aに入力されたモジュレータ圧P
MODは、出力ポート46bからオリフィス62が介在する油路f2を介してモータ潤滑回路(M/G LUBE)52に常時供給される。なお、モータ3の潤滑部位が2箇所に分かれている場合であって、特にクラッチSSCのスリップ中とそれ以外の状態とで2箇所の潤滑部位に対する潤滑油供給を選択的に切換える場合は、当該流量切換えバルブ46に出力ポートを増設して、モジュレータ圧P
MODの供給先を切換えるように構成することもできる。
【0042】
例えばクラッチSSCが解放中や係合完了後であると、制御部31がクラッチSSCの潤滑流量が小流量となるように判断するので、ソレノイドバルブS1がオフされる。これにより、上記流量切換えバルブ46のスプール46pは図中上位置に切換えられ、上述のように、入力ポート46fと遮断ポート46e、入力ポート46hと遮断ポート46iがそれぞれ連通することで、つまり入力ポート46f及び入力ポート46hの油圧は遮断される。そして、油路d5からセカンダリ圧P
SECに基づき、機械式オイルポンプ21又は電動オイルポンプ22(つまり駆動している方のオイルポンプ)からの潤滑油がオリフィス63によって小さく絞られた小流量状態で入力ポート46cに入力され、その小流量の潤滑油が油路h1,h3を介してクラッチSSC潤滑回路53に供給される。
【0043】
一方、例えばクラッチSSCがスリップ係合中であると、制御部31がクラッチSSCの潤滑流量が上記小流量状態よりも大きい大流量となるように判断するので、ソレノイドバルブS1がオンされる。これにより、上記流量切換えバルブ46のスプール46pは図中下位置に切換えられ、入力ポート46cと遮断ポート46eとが連通することで、つまり入力ポート46cの油圧は遮断される。また、電動オイルポンプ22が駆動されている場合は、油路a7から油圧P
EOPで上記小流量状態よりも大きい大流量である流量Q
EOPが入力ポート46fに入力され、出力ポート46gから油路i1を介して後述するオイルポンプ切換えバルブ47の入力ポート47aに出力される。さらに、機械式オイルポンプ21が駆動されている場合は、油路a7からセカンダリ圧P
SECで上記小流量状態よりも大きい大流量である流量Q
EOPが入力ポート46hに入力され、出力ポート46jから油路j1を介して後述するオイルポンプ切換えバルブ47の入力ポート47dに出力される。
【0044】
オイルポンプ切換えバルブ47は、スプール47pと、該スプール47pを一方側に付勢するスプリング(付勢部材)47sと、入力ポート47aと、遮断ポート47bと、出力ポート47cと、入力ポート47dと、遮断ポート47eと、を有して構成されており、スプリング47sの付勢力でスプール47pが付勢された図中上位置(第2位置)にあると、入力ポート47aと遮断ポート47b、入力ポート47dと出力ポート47cがそれぞれ連通し、油路a6から電動オイルポンプ22の油圧P
EOPが入力されてスプール47pが図中下位置(第1位置)にあると、入力ポート47aと出力ポート47c、入力ポート47dと遮断ポート47eがそれぞれ連通する。
【0045】
ここで、油温に応じた機械式オイルポンプ21による潤滑油の流量Q
MOPと電動オイルポンプ22による潤滑油の流量Q
EOPとの関係について
図3に沿って説明する。
図3に示すように、電動オイルポンプ22は、油温Tが低くなるほど、油の粘性が高くなり、かつ電動モータ(不図示)の駆動力が略々一定であって油の粘性によって電動オイルポンプ22の回転力が鈍くなるため、油圧P
EOPも小さくなるので、該電動オイルポンプ22から供給可能な潤滑油の流量Q
EOPは、油温Tが低いと小さく、油温Tが高くなるにつれて大きくなる。
【0046】
一方、機械式オイルポンプ21は、油温Tが低くて油の粘性が高くても、内燃エンジン2やモータ3の車両を駆動するための駆動力の方が圧倒的に大きいため、該機械式オイルポンプ21が排出する油圧はあまり低下しない。そして、機械式オイルポンプ21が排出した油圧は、上述のようにプライマリレギュレータバルブ41でライン圧P
Lに調圧されて、SSC係合回路44や変速制御回路45等にも供給されるため、油の粘性が高くなると、それらSSC係合回路44や変速制御回路45等における油の漏れ量が少なくなり、結果的に、セカンダリレギュレータバルブ42で調圧されたセカンダリ圧P
SECに基づき供給される潤滑油の流量Q
MOPは、上記漏れ量が少ない分、油温Tが低いほど大きくなり、油温Tが高くなると(上記漏れ量が多くなるため)小さくなる。
【0047】
そのため、
図3に示すように、所定油温TAよりも油温Tが低い場合は機械式オイルポンプ21による流量Q
MOPの方が大きく、所定油温TAよりも油温が高い場合は電動オイルポンプ22による流量Q
EOPの方が大きくなる。このような特性を生かして、電動オイルポンプ22の規格を設計し、つまり機械式オイルポンプ21の流量Q
MOPがクラッチSSCのスリップ係合中に必要となる必要流量Qnよりも低くなる前に、電動オイルポンプ22の流量Q
EOPが必要流量Qnよりも上回るように該電動オイルポンプ22を最低限の大きさに設計しておく。
【0048】
そして、制御部31は、油温センサ32により検知される油温Tが所定油温TAよりも低いか高いかを判定し、低い場合は、機械式オイルポンプ21による潤滑油の供給を判断し、つまりクラッチSSCの解放中に内燃エンジン2を始動して機械式オイルポンプ21を駆動した後に、クラッチSSCのスリップ係合を開始するように制御する。また、油温Tが所定油温TAよりも高い場合は、クラッチSSCの解放中に電動オイルポンプ22の駆動を指令した後、クラッチSSCのスリップ係合を開始するように制御する。
【0049】
即ち、油温Tが所定油温TAよりも低い場合は、内燃エンジン2の始動によって機械式オイルポンプ21が駆動され、クラッチSSCの解放中は、ソレノイドバルブS1をオフして、
図2に示すように、上記流量切換えバルブ46のスプール46pを図中上位置に切換え、上記のようにオリフィス63が介在した油路d5から入力ポート46c、出力ポート46d、油路h1,h3を介してクラッチSSC潤滑回路53に小流量で潤滑油を供給し、該クラッチSSCを小流量で潤滑・冷却して、クラッチSSCの引き摺りロスを低減する。
【0050】
その後、制御部31がクラッチSSCの係合を判断すると(つまりEV走行から内燃エンジン2の駆動力を用いたハイブリッド走行への移行を判断すると)、ソレノイドバルブS1をオンして、上記流量切換えバルブ46のスプール46pを図中下位置に切換え、上記オリフィスが介在しない油路d6からセカンダリ圧P
SECに基づく機械式オイルポンプ21の流量Q
MOPを、入力ポート46h、出力ポート46j、油路j1を介してオイルポンプ切換えバルブ47の入力ポート47dに入力し、ここでは該オイルポンプ切換えバルブ47に電動オイルポンプ22の油圧P
EOPが入力されずにスプール47pが図中上位置であるので、該入力ポート47d、出力ポート47c、油路h2,h3を介してクラッチSSC潤滑回路53に大流量の流量Q
MOPで潤滑油を供給し、該クラッチSSCを必要流量Qnよりも大きい大流量で潤滑・冷却する。
【0051】
なお、その後、クラッチSSCが完全係合状態となると、制御部31は、再度ソレノイドバルブS1をオフして、上述のようにクラッチSSC潤滑回路53に小流量で潤滑油を供給し、クラッチSSCの引き摺りロスを低減する。
【0052】
一方、油温Tが所定油温TAよりも高い場合にあって、制御部31がクラッチSSCの係合を判断すると(つまりEV走行から内燃エンジン2の駆動力を用いたハイブリッド走行への移行を判断すると)、ソレノイドバルブS1をオンして、上記流量切換えバルブ46のスプール46pを図中下位置に切換え、上記油路d7から電動オイルポンプ22の流量Q
EOPを、入力ポート46f、出力ポート46g、油路i1を介してオイルポンプ切換えバルブ47の入力ポート47aに入力し、ここでは該オイルポンプ切換えバルブ47に油路a6を介して電動オイルポンプ22の油圧P
EOPが入力されてスプール47pが図中下位置となるので、該入力ポート47a、出力ポート47c、油路h2,h3を介してクラッチSSC潤滑回路53に大流量の流量Q
EOPで潤滑油を供給し、該クラッチSSCを必要流量Qnよりも大きい大流量で潤滑・冷却する。
【0053】
なお、この場合は、クラッチSSCの係合によりモータ3の回転で内燃エンジン2の回転数を上昇してから該内燃エンジン2の点火が開始されるように制御されても構わない。
【0054】
なお、EV走行中などで機械式オイルポンプ21が駆動されている状態にあって、クラッチSSCをスリップ係合する際には、基本的に機械式オイルポンプ21の油圧が電動オイルポンプ22の油圧よりも高いので、チェックボール68は遮断され、機械式オイルポンプ21の油圧に基づきライン圧P
Lやセカンダリ圧P
SECが生成され、油路d6から入力ポート46h、出力ポート46j、油路j1を介してオイルポンプ切換えバルブ47の入力ポート47dに機械式オイルポンプ21からの流量Q
MOPが入力されるが、該オイルポンプ切換えバルブ47が図中下位置にあって、入力ポート47dを遮断ポート47eに連通させるため、機械式オイルポンプ21からの流量Q
MOPは、クラッチSSC潤滑回路53に流れることはない。
【0055】
また、EV走行中などにあって、機械式オイルポンプ21の回転が小さく、電動オイルポンプ22の油圧が機械式オイルポンプ21の油圧よりも高い状態では、電動オイルポンプ22の油圧に基づきライン圧P
Lやセカンダリ圧P
SECが生成されることになる。従って、この状態でクラッチSSC潤滑回路53に小流量で潤滑油を流す場合は、電動オイルポンプ22の発生する油圧に基づく潤滑油が供給されることになる。
【0056】
なお、電動オイルポンプ22による大流量で潤滑・冷却しつつクラッチSSCが完全係合状態となると、内燃エンジン2が駆動されることになるので、機械式オイルポンプ21が駆動され、そして、制御部31は再度ソレノイドバルブS1をオフして、上述のようにクラッチSSC潤滑回路53に機械式オイルポンプ21の発生する油圧に基づき小流量で潤滑油を供給する。
【0057】
以上説明した本ハイブリッド駆動装置1によると、油圧制御装置40が、クラッチSSCのスリップ係合中にあって、検知された油温Tが所定油温TAよりも高い場合に電動オイルポンプ22からの油をクラッチSSC潤滑回路53に供給し、検知された油温Tが所定油温TAよりも低い場合に機械式オイルポンプ21からの油をクラッチSSC潤滑回路53に供給するので、つまり、油温Tが低くて油の粘性が高く、油圧制御装置40のSSC係合回路44や変速制御回路45等における油の漏れ量が少なくて機械式オイルポンプ21が排出する油の流量Q
MOPでクラッチSSCを充分に潤滑できる際には、機械式オイルポンプ21でクラッチSSCへの潤滑油の供給を行い、油温Tが高くて油の粘性が低く、油圧制御装置40における油の漏れ量が多いが油圧が小さくて足り、電動オイルポンプ22が排出する油の流量でクラッチSSCを充分に潤滑できる際には、電動オイルポンプ22でクラッチSSCへの潤滑油の供給を行うことができる。これにより、機械式オイルポンプ21の流量を多くするために大型化することや電動オイルポンプ22の油圧を高くするために大型化することの防止を図ることができ、機械式オイルポンプ21や電動オイルポンプ22のコンパクト化により回転抵抗を小さくすることができて、ハイブリッド車両100の燃費向上を図ることができる。
【0058】
また、油圧制御装置40が、電動オイルポンプ22からの油をクラッチSSC潤滑回路53に供給する図中下位置と、機械式オイルポンプ21からの油をクラッチSSC潤滑回路53に供給する図中上位置と、に切換えられるオイルポンプ切換えバルブ47を有しているので、油温Tに応じて選択的に電動オイルポンプ22又は機械式オイルポンプ21の油をクラッチSSCへ供給することを可能とすることができる。
【0059】
さらに、オイルポンプ切換えバルブ47は、図中上位置に付勢するスプリング47sを有すると共に、電動オイルポンプ22からの油圧P
EOPをスプリング47sの付勢力に対向して入力した際に図中下位置に切換えられるように構成されており、制御部31が、油温Tが所定油温TAよりも高い場合に電動オイルポンプ22を駆動するように指令するので、制御部31が電動オイルポンプ22の駆動を指令するだけで、自動的にオイルポンプ切換えバルブ47が図中下位置に切換えられて、電動オイルポンプ22の油をクラッチSSCへ供給するようにすることができる。
【0060】
また、内燃エンジン2と変速機構5の入力軸5aとの間に介在されたクラッチSSCを潤滑するので、特に登坂路などで内燃エンジン2によりハイブリッド車両100を発進させる際に、当該クラッチSSCの潤滑油を多量に必要とするが、油温Tによって選択的に機械式オイルポンプ21又は電動オイルポンプ22による潤滑油の供給を切換えることで、コンパクト化された機械式オイルポンプ21又は電動オイルポンプ22で充分に潤滑油の供給量を確保することができる。
【0061】
そして、機械式オイルポンプ21が、第1ワンウェイクラッチF1又は第2ワンウェイクラッチF2の係合により、内燃エンジン2とモータ3との出力回転が大きい方に連動して駆動されるので、特に内燃エンジン2が停止しているEV走行時にあって油温Tが所定油温TAよりも低い場合であっても、モータ3で機械式オイルポンプ21を駆動して、クラッチSSCに対する潤滑油の供給量を充分に確保することができる。これにより、例えばEV走行状態からクラッチSSCをスリップ係合して内燃エンジン2の回転数を上昇して該内燃エンジン2を始動するような制御も可能とすることができる。
【0062】
<第2の実施の形態>
ついで、上記第1の実施の形態を一部変更した第2の実施の形態について
図2を参照しつつ
図4に沿って説明する。なお、本第2の実施の形態は、上記
図2によって説明した第1の実施の形態における潤滑供給切換え部70
1を、
図4に示す潤滑供給切換え部70
2に変更したものであり、その他の部分は、第1の実施の形態と同様であるものとして説明する。
【0063】
図4に示すように、第2の実施の形態に係る潤滑供給切換え部70
2は、第1の実施の形態の潤滑供給切換え部70
1と同様に、クラッチSSCに潤滑油を供給するクラッチSSC潤滑回路53に供給する潤滑油の流量を切換える機能を有し、大まかに、上記油路d4から供給されるセカンダリ圧P
SECに基づく潤滑油の流量を大流量状態と小流量状態とに切換える流量切換え部149と、機械式オイルポンプ21と電動オイルポンプ22とのどちらの油を選択的にクラッチSSC潤滑回路53に供給するかを切換えるオイルポンプ切換え部としてのオイルポンプ切換えバルブ(切換えバルブ)147と、を備えて構成されている。
【0064】
流量切換え部149は、本第2の実施の形態では、オリフィス63が介在され、小流量を油路d8(後述するオイルポンプ切換えバルブ147の入力ポート147f)に供給する油路d5と、信号圧P
S1をオン・オフして出力・非出力に切換えるソレノイドバルブS1と、オリフィスが介在されていない油路d6,d7の間に介在し、セカンダリ圧P
SECに基づく大流量を油路d8(後述するオイルポンプ切換えバルブ147の入力ポート147f)に供給する状態と遮断する状態とに切換えられる流量切換えバルブ146と、を有して構成されている。
【0065】
詳細には、流量切換えバルブ146は、スプール146pと、該スプール146pを一方側に付勢するスプリング146sと、入力ポート146aと、遮断ポート146bと、出力ポート146cと、を有して構成されており、スプリング146sの付勢力でスプール146pが付勢された図中上位置にあると、入力ポート146aと遮断ポート146bとが連通し、油路g1から信号圧P
S1が入力されてスプール146pが図中下位置にあると、入力ポート146aと出力ポート146cとが連通する。
【0066】
一方、オイルポンプ切換え部としては、大まかに、信号圧P
S2をオン・オフして出力・非出力に切換えるソレノイドバルブS2と、オイルポンプ切換えバルブ147とを有して構成されている。
【0067】
オイルポンプ切換えバルブ147は、スプール147pと、該スプール147pを一方側に付勢するスプリング147sと、入力ポート147aと、出力ポート147bと、入力ポート147cと、遮断ポート147dと、出力ポート147eと、入力ポート147fと、遮断ポート147gと、を有して構成されている。スプール147pには、イグニッションがオンされて、機械式オイルポンプ21又は電動オイルポンプ22が駆動されている状態では、常にモジュレータ圧P
MODが入力され、スプール147pが図中下位置にあり、油路k1からソレノイドバルブS2の信号圧P
S2が入力されてスプリング147sの付勢力と相俟ってモジュレータ圧P
MODに打勝つと、スプール147pが図中上位置に切換えられる。なお、ソレノイドバルブS2の元圧には、モジュレータ圧P
MODが用いられるが、これに限らず、ライン圧P
L等であってもよく、スプリング147sの付勢力と相俟ってモジュレータ圧P
MODに打勝つことができる圧力であればよい。
【0068】
オイルポンプ切換えバルブ147は、スプリング147sの付勢力でスプール147pが付勢された図中上位置にあると、入力ポート147aと出力ポート147b、入力ポート147cと遮断ポート147d、入力ポート147fと出力ポート147e、がそれぞれ連通し、スプール147pが図中下位置にあると、入力ポート147aと出力ポート147b、入力ポート147cと出力ポート147e、入力ポート147fと遮断ポート147g、がそれぞれ連通する。
【0069】
なお、オイルポンプ切換えバルブ147の入力ポート147aと出力ポート147bとは、スプール147pの位置に拘らず、常時連通状態となるように構成されており、油路f1から入力ポート147aに入力されたモジュレータ圧P
MODは、出力ポート147bからオリフィス62が介在する油路f2を介してモータ潤滑回路52に常時供給される。
【0070】
以上のような第2の実施の形態に係る潤滑供給切換え部70
2においては、例えばクラッチSSCが解放中や係合完了後であったり、油温Tが所定油温TAよりも高い状態であったりすると、制御部31が流量切換え部149で小流量となるように判断するので、ソレノイドバルブS1がオフされる。これにより、上記流量切換えバルブ146のスプール146pは図中上位置に切換えられ、上述のように、入力ポート146aと遮断ポート146bとが連通することで、つまり入力ポート146aの油圧は遮断される。そして、油路d5からセカンダリ圧P
SECに基づき、機械式オイルポンプ21又は電動オイルポンプ22(つまり駆動している方のオイルポンプ)からの潤滑油がオリフィス63によって小さく絞られた小流量状態で油路d8に供給され、オイルポンプ切換えバルブ147の入力ポート147fに出力される。
【0071】
ここで、例えばクラッチSSCが解放中や係合完了後であると、制御部31がクラッチSSCの潤滑流量が小流量状態となうように判断するので、ソレノイドバルブS2がオンされ、オイルポンプ切換えバルブ147が図中上位置に切換えられる。これにより、油路d4,d5,d8からセカンダリ圧P
SECに基づき、機械式オイルポンプ21又は電動オイルポンプ22(つまり駆動している方のオイルポンプ)からの潤滑油がオリフィス63によって小さく絞られた小流量状態で入力ポート147fに入力され、その小流量の潤滑油が出力ポート147e、油路h4を介してクラッチSSC潤滑回路53に供給される。
【0072】
また、例えば油温Tが所定油温より高い状態で、かつクラッチSSCがスリップ係合中であると、制御部31がクラッチSSCの潤滑流量が上記小流量状態よりも大きい大流量となるように判断し、かつ電動オイルポンプ22の油の供給を判断するので、ソレノイドバルブS1がオフされ、かつソレノイドバルブS2がオフされる。これにより、上記オイルポンプ切換えバルブ147のスプール147pは図中下位置に切換えられ、入力ポート147fと遮断ポート147gとが連通することで、つまり入力ポート147fの油圧は遮断される。また、油温Tに基づき制御部31が電動オイルポンプ22を駆動するので、油路a7から油圧P
EOPで上記小流量状態よりも大きい大流量である流量Q
EOPが入力ポート147cに入力され、出力ポート147eから油路h4を介してクラッチSSC潤滑回路53に供給される。
【0073】
一方、例えば油温Tが所定油温より低い状態で、かつクラッチSSCがスリップ係合中であると、制御部31がクラッチSSCの潤滑流量が上記小流量状態よりも大きい大流量となるように判断し、かつ機械式オイルポンプ21の油の供給を判断するので、ソレノイドバルブS1がオンされ、かつソレノイドバルブS2もオンされる。これにより、上記流量切換えバルブ146のスプール146pは図中下位置に切換えられ、上述のように、入力ポート146aと出力ポート146cとが連通することで、つまり入力ポート146aの油圧が油路d8に供給される。そして、油路d8からセカンダリ圧P
SECに基づき、機械式オイルポンプ21からの潤滑油がオイルポンプ切換えバルブ147の入力ポート147fに出力される。
【0074】
そして、上記オイルポンプ切換えバルブ147のスプール147pは図中上位置に切換えられ、入力ポート147fと出力ポート147eとが連通することで、油路d8からセカンダリ圧P
SECで上記小流量状態よりも大きい大流量である流量Q
MOPが入力ポート147cに入力され、出力ポート147eから油路h4を介してクラッチSSC潤滑回路53に供給される。
【0075】
このようにクラッチSSCがスリップ係合中であって、油温Tが所定油温TAよりも低い場合は、ソレノイドバルブS1,S2がオンされて、機械式オイルポンプ21による大流量の流量Q
MOPがクラッチSSC潤滑回路53に供給され、油温Tが所定油温TAよりも高い場合は、ソレノイドバルブS1,S2がオフされて、電動オイルポンプ22による大流量の流量Q
EOPがクラッチSSC潤滑回路53に供給される。
【0076】
なお、機械式オイルポンプ21又は電動オイルポンプ22による大流量で潤滑・冷却しつつクラッチSSCが完全係合状態となると、内燃エンジン2が駆動されることになるので、機械式オイルポンプ21が駆動され、そして、制御部31は再度ソレノイドバルブS1,S2をオフして、上述のようにクラッチSSC潤滑回路53に機械式オイルポンプ21の発生する油圧に基づき小流量で潤滑油を供給する。
【0077】
以上説明したように本第2の実施の形態に係るハイブリッド駆動装置1によると、油圧制御装置40が、機械式オイルポンプ21からの油の流れを絞って流量を小さくする小流量状態と、小流量状態よりも機械式オイルポンプ21からの油の流量を大きくする大流量状態と、に切換える流量切換え部149を有しており、流量切換え部149が少なくとも油温Tが所定油温TAよりも低い場合に大流量状態に切換えられるので、油温Tが所定油温TAよりも低い場合には、機械式オイルポンプ21の油を大流量でクラッチSSCへ供給するようにすることができる。また、油温Tが所定油温TAよりも高い場合にあって、電動オイルポンプ22の油をクラッチSSCへ供給しない際には(つまりクラッチSSCの解放中や係合完了後には)、機械式オイルポンプ21の油を小流量でクラッチSSCへ供給するようにすることができる。これにより、クラッチSSCへ常時大流量で油を供給することを不要とし、特にクラッチSSCの解放中や係合完了後に無駄な油を当該クラッチSSCに供給して、ポンプロスの増大を招いたり、クラッチSSCにおける引き摺りロスの増大を招いたりすることを防止でき、ハイブリッド車両100の燃費向上を図ることができる。
【0078】
<第3の実施の形態>
ついで、上記第2の実施の形態を一部変更した第3の実施の形態について
図5に沿って説明する。なお、本第3の実施の形態は、上記
図4によって説明した第2の実施の形態における潤滑供給切換え部70
2の流量切換え部149を、
図5に示す潤滑供給切換え部70
3の流量切換えバルブ(流量切換え部)249だけに変更したものであり、その他の部分は、第1及び第2の実施の形態と同様であるものとして説明する。
【0079】
即ち、上記第2の実施の形態においては、流量切換え部149は、オリフィス63が介在する油路d5と、油路d6,d7の連通・遮断を切換える流量切換えバルブ146とで構成したものであったが、本第3の実施の形態においては、温度で形状が変化する形状記憶機能を有する流量切換えバルブ249で構成したものである。
【0080】
流量切換えバルブ249は、内部に温度によって伸縮する形状記憶型スプールを有しており、油温Tが所定油温TAよりも低くなると当該形状記憶型スプールが縮んで出力ポート249aを全開に開き、油路d4の機械式オイルポンプ21に基づくセカンダリ圧P
SECを略々そのまま大流量で油路d8に供給し、油温Tが所定油温TAよりも高くなると当該形状記憶型スプールが伸びて出力ポート249aを絞り、油路d4の機械式オイルポンプ21に基づくセカンダリ圧P
SECを絞って小流量で油路d8に供給する。このように油温Tによって自動的に流量を大流量と小流量とに切換えるので、複雑な切換えバルブやオン・オフ式の信号ソレノイドバルブを不要とすることができる。
【0081】
なお、本第3の実施の形態では、油温Tが低い間は、流量切換えバルブ249から機械式オイルポンプ21の油圧P
MOPに基づき大流量が供給されるので、クラッチSSCに対する小流量の供給ができないが、所定油温TAが暖機運転後に到達する油温であることで、通常温度では、電動オイルポンプ22による大流量と、機械式オイルポンプ21による小流量と、の切換えが可能となるので、特に問題はない。
【0082】
なお、これ以外の構成、作用、効果は、第2の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0083】
<第4の実施の形態>
ついで、上記第3の実施の形態を一部変更した第4の実施の形態について
図6に沿って説明する。なお、本第4の実施の形態は、上記
図5によって説明した第3の実施の形態における潤滑供給切換え部70
3の流量切換えバルブ249を、
図6に示す潤滑供給切換え部70
4の流量切換えバルブ(流量切換え部)349に変更したものであり、その他の部分は、第1乃至第3の実施の形態と同様であるものとして説明する。
【0084】
即ち、上記第3の実施の形態においては、流量切換えバルブ249が内部に温度によって伸縮する形状記憶型スプールを有するバルブであったが、本第4の実施の形態においては、温度で形状が変化する形状記憶機能を有するスプリング349
S1を用いて、スプリング249
S2に対向作用させることでスプール349pを切換える流量切換えバルブ349で構成したものである。
【0085】
流量切換えバルブ349は、温度によって伸縮する形状記憶型のスプリング349
S1を有しており、油温Tが所定油温TAよりも低くなると当該スプリング349
S1が縮んでスプリング349
S2より付勢され、スプール349pを図中上位置に切換え、入力ポート349aと出力ポート349bとを略々全開に連通し、油路d4の機械式オイルポンプ21に基づくセカンダリ圧P
SECを略々そのまま大流量で油路d8に供給する。
【0086】
一方、油温Tが所定油温TAよりも高くなると形状記憶型のスプリング349
S1が伸びて、スプール349pを図中下位置に押圧していき、入力ポート349aと排出ポート349cとの連通量を大きくしていくため、入力ポート349aから出力ポート349bに供給される流量を排出ポート349cから排出して減じ、つまり、油路d4の機械式オイルポンプ21に基づくセカンダリ圧P
SECを絞った形の小流量で油路d8に供給する。このように油温Tによって自動的に流量を大流量と小流量とに切換えるので、複雑な切換えバルブやオン・オフ式の信号ソレノイドバルブを不要とすることができる。
【0087】
なお、本第4の実施の形態でも、上記第3の実施の形態と同様に、油温Tが低い間は、流量切換えバルブ249から機械式オイルポンプ21の油圧P
MOPに基づき大流量が供給されるので、クラッチSSCに対する小流量の供給ができないが、所定油温TAが暖機運転後に到達する油温であることで、通常温度では、電動オイルポンプ22による大流量と、機械式オイルポンプ21による小流量と、の切換えが可能となるので、特に問題はない。
【0088】
また、本第4の実施の形態においては、スプリング349
S1を温度で形状が変化する形状記憶機能を有するものとして説明したが、スプリング349
S2の伸縮方向を逆にして温度で形状が変化する形状記憶機能を有するものとしてもよく、また、スプリング349
S1とスプリング349
S2との両方とも形状記憶機能を有するものとしてもよい。
【0089】
なお、これ以外の構成、作用、効果は、第2及び第3の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0090】
なお、以上説明した第1乃至第4の実施の形態においては、内燃エンジン2と変速機構5の入力軸5aとの間に介在するクラッチSSCを潤滑するものを一例として説明したが、特にスリップ時に大流量の潤滑を必要とし、それ以外に小流量の潤滑で足りるクラッチやブレーキ(摩擦係合要素)であれば、どのようなものにも適用することができる。一例としては、例えば変速機構5で前進1速段を形成するクラッチやブレーキなどが考えられる。
【0091】
また、以上説明した第1乃至第4の実施の形態においては、車両がハイブリッド車両100であるものを説明したが、これに限らず、例えば内燃エンジンだけを駆動源としてアイドルストップを行うような車両であっても、本発明を適用し得る。この場合、車両用伝動装置は単なる自動変速機であり、潤滑される摩擦係合要素は、トルクコンバータの代わりに配設される発進クラッチであってもよい。発進クラッチとしては、勿論シングル式クラッチでもデュアル式クラッチであっても構わない。
【0092】
また、以上説明した第1乃至第4の実施の形態においては、油温を油温センサ32で検知するものとして説明したが、例えば変速機構5における入力トルクと出力トルクとの差分から粘性抵抗を推定して油温を検知するようにしてもよい。なお、油の粘性抵抗が所定の粘性抵抗よりも高いか低いかで機械式オイルポンプと電動オイルポンプとの供給を切換えるものも、油温を検知して所定油温よりも高いか低いか判定するものと同義である。