【課題を解決するための手段】
【0020】
上記の課題を解決するために、
本発明の着色シートの第1の態様は、
透明樹脂基材の一方の面の一部に着色パターン層Aが
、他方の面の一部に着色パターン層Bがそれぞれ設けられ、
前記着色パターン層Aと前記着色パターン層Bとは互いに重ならない領域を少なくとも有し、かつ、前記着色パターン層Bの
表面は、前記透明樹脂基材の表面に対して所定角度の斜
面もしく
は曲面の一部
をなしており、前記着色パターン層Bの表面の形状に追従するように反射層が設けられ、さらに前記着色パターン層Bの設けられた側の透明樹脂基材上の少なくとも前記着色パターン層Aが設けられた領域に対応する領域に反射層が設けられた着色シートであって、前記反射層は、隙間なく敷き詰められた状態の金属薄膜細片を含むインキ層であることを特徴とするものである。
以下、前記反射層を「高輝度インキ反射層」と呼び、前記反射層の形成に用いるインキを「高輝度インキ」と呼ぶこととする。
【0021】
上記第1の態様の着色シートによれば、
透明樹脂基材の一方の面の一部に着色パターン層Aが設けられ、前記透明樹脂基材の他方の面の一部に着色パターン層Bが設けられ、且つ、前記透明樹脂基材の他方の面並びに前記着色パターン層Bに追従するように高輝度インキ反射層が設けられた着色シートにおいて、前記着色パターン層Bの前記透明樹脂基材と接していない面は、前記透明樹脂基材の他方の面に対して所定角度の斜面、もしくは、曲面の一部からなる形状をなしていることを特徴とする着色シートを提供することができ、あたかも一つのパターンとして形成されたものと観察される着色パターンが、実際には、視認性の異なる2種類の着色パターンから構成されていることで、安価で、偽造防止性が高く、真正性の判定が容易な、着色シートを提供することができる。
【0022】
特に、前記着色パターン層Aが、例えば「ある文字情報等」である「パターンa」を構成し、前記着色パターン層Bが、「『パターンa』とは異なる文字情報等」である「パターンb」を構成しているものとしたときに、前記着色シートを前記透明樹脂基材側の真正面(その前記透明樹脂基材の他方の面に対して垂直上方から観察するという意味。)から観察した際には、前記着色パターン層A及び、前記着色パターン層Bが、同一の「色」を呈して、「パターンa」と「パターンb」との区別がなくなり、その「パターンa」と「パターンb」とが、「合成されたパターン」、すなわち、「一つのパターンc」(合成された一つの文字情報等)として視認され、且つ、前記着色シートを前記透明樹脂基材側の予め定まった角度で斜め上方から観察した際には、前記着色パターン層Aと、前記着色パターン層Bが、互いに異なる「色」を呈して、「パターンa」と「パターンb」との区別が現れ、その「パターンa」と「パターンb」とが別々の文字情報等、すなわち、「ある文字情報等」と、「異なる文字情報等(『ある文字情報』とは別の文字情報等を意味する。)」として観察されることを特徴とする着色シートを提供することができる。
【0023】
このことは、一見して「一つのパターンc」、すなわち、一つの「色」で表現された「一つの文字情報等」を提示していると観察されるパターンが、所定の観察角度において、「パターンa」と「パターンb」という、異なる「色」を呈する「二つに分割された、それぞれの文字情報等」として観察されることを意味する。
【0024】
本発明の着色シートの第2の態様は、
前記透明樹脂基材のヘーズが、10%以下であることを特徴とするものである。
【0025】
上記第2の態様の着色シートによれば、
前記透明樹脂基材のヘーズが、10%以下であることを特徴とする第1の態様の着色シートを提供することができ、着色パターン層Bの視認性をより明確なものとして、その偽造防止性をさらに高めた、着色シートを提供することができる。
【0026】
本発明の着色シートの第3の態様は、
前記透明樹脂基材の屈折率と、前記着色パターン層Bの屈折率が同一、もしくは、その屈折率差が0.1以下であることを特徴とするものである。
【0027】
上記第3の態様の着色シートによれば、
前記透明樹脂基材の屈折率と、前記着色パターン層Bの屈折率が同一、もしくは、その屈折率差が0.1以下であることを特徴とする第1の態様または第2の態様の着色シートを提供することができ、透明樹脂基材と着色パターン層Bの界面における反射光を消失させる効果をより明確なものとして、その偽造防止性をさらに高めた、着色シートを提供することができる。
【0028】
本発明の第4の態様である着色ラベルは、
第1〜第3の態様の着色シートの前記高輝度インキ反射層の上に、粘着剤層が設けられていることを特徴とするものである。
【0029】
上記の態様の着色ラベルによれば、
第1〜第3の態様の着色シートの前記高輝度インキ反射層の上に、粘着剤層が設けられていることを特徴とする着色ラベルを提供することができ、被貼着体への適用を容易とし、且つ、高輝度インキ反射層と粘着剤層の粘着力を大きくした、着色ラベルを提供することができる。
【0030】
本発明の第5の態様である着色転写シートは、
第1〜第3の態様の着色シートの前記高輝度インキ反射層の上に、接着剤層が設けられ、且つ、前記透明樹脂基材と前記着色パターン層Aを覆うように転写用基材が剥離可能に設けられていることを特徴とするものである。
【0031】
上記の態様の着色転写シートによれば、
第1〜第3の態様の着色シートの前記高輝度インキ反射層の上に、接着剤層が設けられ、且つ、前記透明樹脂基材と前記着色パターン層Aを覆うように転写用基材が剥離可能に設けられていることを特徴とする着色転写シートを提供することができ、偽造防止性を付与する対象物へ容易に適用でき、高輝度インキ反射層と粘着剤層の粘着力をも大きくして、適用後は、もはや剥がすことを物理的に難しくして、その偽造防止性を高めることが可能な、着色転写シートを提供することができる。
【0032】
本発明の着色シート等は、透明樹脂基材の一方の面の一部に、着色パターン層Aが形成されており、その着色パターン層Aが表している「パターン」(パターンaと称している。)が、「同色(一つの色)」の「パターン」(パターンa)として、視認される。
【0033】
さらに、本発明の着色シート等には、透明樹脂基材の他方の面の一部に、着色パターン層Bが設けられており、且つ、その着色パターン層Bの透明樹脂基材と接していない面が、斜面、もしくは、球面形状となっており、その着色パターン層Bが表している「パターン」(パターンbと称している。)が、「同色(一つの色)」の「パターン」(パターンb)として、視認される。
【0034】
そして、着色パターン層Aの形成領域である「パターンa」と、着色パターン層Bの形成領域である「パターンb」とが、特定の観察角度範囲において、「一つの色を有する一つのパターン」(パターンcと称している。)を構成するように形成されているため、この「色」の同一性により、本発明の着色シート等には、その範囲において、あたかも一つの「パターンc」が形成されているように観察される。
【0035】
そもそも、「色」とは、「物体」からの反射光を、色相(色合い)、彩度(鮮やかさ)、明度(明るさ)の3つの要素で視認し、認識される「情報」である。(3要素は、「色の三属性」とも呼ばれる。)
そして、慣用的に用いられる「色調」という語は、色の配合、色の濃淡や強弱などのぐあいを意味し、上記と同様に、「色相」、「彩度」及び「明度」を複合した概念であるが、本明細書では、この3要素からなるものを「色」という語で統一する。
【0036】
従って、ここでいう「二つ以上の物体が同色である」とは、それらの「物体」が、「同一の色を呈する」ことであって、それらが、「同一の色相」、「同一の彩度」及び「同一の明るさ」を有していることを意味し、それらを視認したときに、それらが「同じ色」と認識されることをいう。
【0037】
すなわち、着色パターン層Aや、着色パターン層Bは、透明性を有する樹脂に、染料や顔料を分散し、且つ、溶解したものを用いるが、染料や顔料の種類、その分散性、溶解性、顔料粒子の大きさや、形状、その表面状態、その他の添加剤、そして、形成方法や、形成時の乾燥条件、硬化条件、さらには、その厚さや、界面の状態により、色相、彩度、明度が決まり、そして「色」が定まることとなる。
【0038】
さらに、本発明の着色シート等の着色パターン層Bの形成厚さには、傾斜、もしくは、所定の曲率半径によって定まる変化があるため(着色パターン層Bの一方の面が透明樹脂基材と接し、他方の面が斜面となっているため、その厚さは、徐々に、薄いほうから厚い方へと単調増加していることをいう。もしくは、着色パターン層Bの一方の面が透明樹脂基材と接し、他方の面が球面形状となっているため、その厚さは、徐々に、球面形状の周辺にあたる薄い方の領域から、球面形状の中心の厚い方の領域へと所定の曲率で増加していることをいう。)、着色パターン層Bを形成する際に一つの組成のインキのみを用いたときには、着色パターン層Bの形成領域内において、若干の「色」の違いが視認される可能性がある。
【0039】
その着色パターン層Bの傾斜角度(透明樹脂基材の「他方の面」と「斜面」とがなす角度である。)は、本発明の着色シート等を観察する点(観察者の目の位置。)から通常30cm程度の距離だけ離してその真正性を判断することを考慮して、5度〜40度とすることができる。その中でも、10度〜30度とすることが好適である。
【0040】
真正性の判断時に、例えば、30cmの距離だけ離して本発明の着色シート等を観察する際に、「着色パターン層Bの斜面によって反射される光」は本来秘匿されていなければならないが、傾斜角度が5度未満であると、「着色パターン層Bの斜面によって反射される光」の反射角度が、透明樹脂基材の「他方の面」に対して垂直方向に戻ってくる光(観察方向に向かう光。)に対して、10度未満となり、それらの二つの光を同時に視認してしまうこととなり、「着色パターン層Bの斜面によって反射される光」の秘匿性が著しく低下する。
【0041】
また、傾斜角度を40度超とすると、その反射光と垂直方向に戻ってくる光との間の角度が80度を超えることとなり、真正性を判断する際の視認がしづらくなると同時に、その判定の再現性、すなわち、判定の信頼性が低下する。
【0042】
従って、秘匿性と判定の信頼性をより高いものとするために、着色パターン層Bの傾斜角度を、5度〜40度とし、さらには、10度〜30度とする。
【0043】
もしくは、着色パターン層Bの球面形状の上に、その球面形状に追従するように高輝度インキ反射層を形成すると、あたかも、そこに、その高輝度インキ反射層による凹面鏡が置かれたような状態となり、その凹面鏡に入射する平行光は、その曲率半径をR(mm)とし、着色パターン層Bの屈折率nが1.5であった場合には、着色パターン層Bの球面形状の底の位置から、光軸方向に対して、R/(2×1.5)(mm)の距離だけ離れた位置に、その平行光が集光する。従って、この集光点に観察者の目を置くと、その凹面鏡からの光を全て受け、着色パターン層Bが明るく輝いて見えることとなる。
【0044】
従って、屈折率が1.5の着色パターン層Bに形成する球面形状の曲率半径は、本発明の着色シート等を観察する点(観察者の目の位置。)から通常300mm程度(200mm〜400mmの範囲内)の距離だけ離してその真正性を判定することを考慮して、600mm〜1200mmとすることができる。(着色パターン層Bの屈折率をnとすると、球面形状の曲率半径は、200×2n〜400×2n(mm)とすることを意味する。もちろん、300×2n±10%と設定して、真正性を判定する者が、その観察点を着色シート等から約300mmの位置に置き、その着色シート等を前後に少し移動させるだけで、容易にその集光する点を見つけることができるようにすることも好適である。)
真正性判定時には、300mmの距離だけ離して本発明の着色シート等を観察することになるが、その際に、「着色パターン層Bの『球面形状』によって反射され、集光点に集光される光」は、曲率半径が600mm未満であると、集光点が着色シート等から約200mmのところとなり、その点から再び光が広がるため、通常の観察点である着色シート等から300mmの位置においては、視認し得る可能性が小さくなる。また、曲率半径が1200mm超であると、集光点が着色シート等から約400mmのところとなり、通常の観察点においては、着色パターン層Bの球面形状によって反射された光が、十分に集光されておらず、やはり、視認し得る可能性が小さくなる。
【0045】
さらに、秘匿されている「着色パターン層Bの球面形状によって集光される光」を、その真正性判定時に確実に視認できるようにするためには、その着色パターン層Bの球面形状は、所定の曲率半径を持つ幾何学的に精密な、いわゆる理想的な単一の球面となっていることが最も望ましく、少なくとも略球面(その球面を拡大すると微小な段差や凹凸が存在するが、その段差や凹凸が微小であって、且つ、光吸収現象や光回折現象を生じず、目視観察レベルでは、連続するなだらかな面であって、あたかも精密な球面であると視認されることを意味する。)とする必要がある。
【0046】
すなわち、その面が精密な球面であれば、その球面上に高輝度インキ反射層を設けた時に、理想的な凹面鏡となってその集光性が高くなり、また、球面収差や歪曲収差等による不必要な集光点の分散を防止することができる。但し、色収差は必ず発生するため、着色パターン層Bの「色」を基準としてその「色」の波長に適合する球面を設計する。
【0047】
このようにすることにより、集光される光の集光点の位置のブレ幅を非常に小さいものとすることができ、そのような光が存在することを知らない第三者に発見される可能性をより小さいものとすることができる。
【0048】
以下、着色パターン層Bの前記透明樹脂基材と接していない面が、前記透明樹脂基材の他方の面に対して所定角度の斜面をなしている場合を主として詳述する。
【0049】
さらに、秘匿されている「着色パターン層Bの斜面によって反射される光」を、その真正性判定時に確実に視認できるようにするためには、その着色パターン層Bの斜面は平面であることが最も望ましく、少なくとも略平面とする必要がある。すなわち、その斜面が平面であれば、反射する光の反射角度のブレ幅を非常に狭いものとすることができ、そのような光が存在することを知らない第三者に発見される可能性を極限まで小さいものとすることができる。また、その斜面が略平面であったとしても、不要な回折現象を生じない程度に凹凸が小さいものであるか、または、凹凸面が単調に変化するような面であれば、上記と同様に反射する光のブレ幅を比較的狭いものとすることができる。また、着色パターン層Bが離散的に形成されたものである場合には、それぞれの形成部分におけるそれぞれの傾斜角度は同一であることが望ましく、異なるとしても、その差が5度未満、さらには、1度未満であることがより望ましい。
【0050】
但し、着色パターン層Bの形成領域「パターンb」が、比較的大きな領域、例えば、縦5mm×横5mmの正方形の領域であった場合、この領域に傾斜角度30度の一つの斜面を形成するには、一つの端の厚さを0.03mmとした場合には、他端の厚さを(0.03mm+2.8mm)の厚さとする必要があり、このような厚さの着色層を形成することは凹版印刷方式や成形方式等により可能であるものの、その形成精度を高く維持することは困難である。
【0051】
そこで、この縦5mm×横5mmの領域を縦50μm×横50μmの領域に分割し、その小さな個々の領域に対して、それぞれ傾斜角度30度の斜面を形成することで、その形成精度を高くすることも好適である。
【0052】
こうすることにより、縦50μm×横50μmの領域の一端の着色層の厚さを10μmとした場合には、他端の着色層の厚さを38μmとすることで、30度の傾斜角度の斜面を再現性よく形成することが可能となる。
【0053】
さらには、縦5mm×横5mmの領域を、縦50μm×横50μmの領域に分割した後、その飛び飛びの位置のみに着色層を形成したり、直径50μmの網点領域の集合体とすることもその形成を容易とし、好適である。
【0054】
そして、この着色パターン層Aや、着色パターン層Bの裏面(背後という意味を含む。)に、高輝度インキ反射層を設けて光を反射させたときには、上記した傾向がさらに顕著に現れ、また、参照する光の波長分布や、強度分布によって、上記反射光の3要素が変化し、結果として、視認される「色」が異なるものとなってしまう可能性がある。
【0055】
従って、本発明における「同一の色」を実現するためには、本発明の着色シート等を参照する際の、着色シート等の中を透過または反射する光の挙動を踏まえ、調整して、最終的に、特定の範囲で観察される「色」を同一とする必要がある。
【0056】
すなわち、その着色パターン層Aにおいて視認される「色」を、その垂直上方で観察する際には、単純に着色パターン層Aの最上面で反射される光だけでなく、着色パターン層Aと透明樹脂基材を透過し、高輝度インキ反射層で垂直方向に反射され、再び、透明樹脂基材と着色パターン層Aを透過して戻る光(戻り光ともいう。)を考慮に入れる必要がある。
【0057】
また、着色パターン層Bにおいて視認される「色」を、その垂直上方で観察する際には、着色パターン層Bと透明樹脂基材との界面で単純に反射される光だけでなく、透明樹脂基材の透明性や、着色パターン層Bの厚さとその変化の度合いを考慮する必要がある。
【0058】
さらに、その着色パターン層Bにおいて視認される「色」を、その斜面の反射方向で観察する際には、透明樹脂基材と着色パターン層Bを透過し、高輝度インキ反射層で正反射して、再び、着色パターン層Bと透明樹脂基材を透過する光を考慮に入れる必要がある。(ここで、正反射とは、ある反射面に対して、光の入射角度と出射角度が等しい反射をいう。)
ここで、着色パターン層Aや着色パターン層Bの「色」は、当然に、その表面での反射光だけでなく、着色パターン層Aや着色パターン層Bの層内まで侵入し、層内にある着色顔料などによって反射される光を含むが、説明の簡略化のため、以下の説明においては、「着色パターン層Aの表面での反射、または、着色パターン層Bの表面での反射」という表現に統一する。
【0059】
いずれにしても、本発明の着色シート等においては、その垂直上方の所定の位置から観察する際に、着色パターン層Aと、着色パターン層Bの「色」が「同一の色」を呈することが必須であり、且つ、その斜面の反射方向での観察において、着色パターン層Aと、着色パターン層Bの「色」が異なる「色」を呈することが求められる。
【0060】
もちろん、その斜面の反射方向での観察において、着色パターン層Aと、着色パターン層Bの「色」が明確に異なる「色」を呈するようにしたり(「色差」が大きいことを意味する。)、さらには、そのような差が発現する観察角度(判定可能な角度範囲という意味。)を非常に狭いものとすることが真正性判定の信頼性、すなわち、偽造防止性を向上させるため、特に好ましい。
【0061】
ここでいう「色差」とは、例えば、L*a*b*色度図(LAB表色系)における△E{=(△a
2+△b
2+△L
2)
1/2)}で表される「色差」であって、「同色」とは、この「色差」が、0.5以下となることを意味する。
【0062】
国際照明委員会(CIE)が提唱する表色系には、その他、RGB系、XYZ系(Yxy系)、UVW系(Luv系)等があるが、これらは相関しており、容易に換算が可能であって、その換算値を用いることもできる。
【0063】
そして、「色」の変化は、この△Eが0.5を超えると「差があるもの」として認識され(SLIGHT:差がわずかに感じられる。)、1.5を超えると明確にその「違い」を視認できる(NOTICEABLE:差がかなり感じられる。)。
【0064】
そもそも、本発明の着色シート等を観察する一般的環境は、上記した種々の用途において、その着色シート等を適用した物品等を使用する環境であって、身に着けたり、持ち運びする場合には、屋外環境であったり、外出先のデパートやショッピングモール等の室内環境となり、家庭内に据え置くものに適用した場合には、その家庭内環境となる。
【0065】
屋外環境においては、太陽光線や、その太陽光線が建物等で反射した光が入射光となり、室内環境においては、デパート等や、ショッピングモール等、さらには、一般家庭内の照明である蛍光灯等が光源となって、その蛍光灯等が発する光が入射光となるため、その角度は、複数、且つ、様々であり、それら多数の入射光によって、正反射光が発現する。
【0066】
従って、着色パターン層Bの「パターンb」の領域は、非常に限られた所定の角度方向(高輝度インキ反射層の正反射角度方向。)にたまたま照明光源が存在していた場合を除き、一つの「色」を常に呈することとなる。しかも、そのような偶然によって、所定の角度に照明光源が存在したとしても、その一つや二つの照明光源からの照明光の量は、室内全体の照明光源による照明光の量と比較すると無視できる。
【0067】
これは、所定の角度が非常に狭く設定してあり、しかも、観察者と着色シート等を結ぶ線から左右に外れるものは対象外となるため、着色パターン層Bの「色」に影響を及ぼすと考えられる角度範囲は、非常に狭い範囲に限定されるためである。(例えば、着色シート等を中心とするドーム状の半円球の曲面を想定したとき、その曲面上の中で、該当する範囲が、その曲面の面積全体に比較し、1/100未満となるという意味である。)
従って、観察者は、照明光源を着色パターン層Bの「色」に影響を及ぼす角度範囲内にのみに配置するような方法(その光源以外の周辺の光源を遮蔽するという意味。これが真正性判定方法の一例である。)をとらない限り、着色パターン層Bの「色」の変化に気づくことはない。
【0068】
このように、「パターンb」が非常に限られた光学的な環境条件以外で「一定」の色を呈することは、この「色」を基準として、その限られた光学的な環境条件における僅かに色が変化する瞬間を「対比する」ことを可能にしており、この「対比」により、確実な真正性判定を実現している。
【0069】
さらに、着色パターン層A及び着色パターン層Bを、比較的隠ぺい性が高いもの、例えば、可視光透過率にして10%〜30%(層内を往復して戻る光は1%〜9%になる。)とし、斜面での正反射光を僅かなものとすると、着色シート等を一瞥したのみでは、上記した「視認性の差」を「認識し難いもの」とすることができ、この僅かな「視認性の差」が存在することを知り得る者(正当な権利を有する者を意味する。)のみが、その「差」を探し出すようにして判読し、真正性を判定することができるようにすることも好適である。
【0070】
また、「パターンa」を、垂直上方から観察した場合には、その背後にある高輝度インキ反射層からの均一な反射光を受けて、その領域の隅々まで一様な明るさを付加された、同一の「色」として観察される。
【0071】
この反射光の強度は均一であり、そして、その反射角度は、垂直方向となる。
【0072】
そして、「パターンb」を垂直上方から観察した場合には、着色パターン層Bの下の「斜面」及び、その面に追従して形成されている高輝度インキ反射層からの「正反射光」は観察者の方には戻ってこないため、背後からの明るさは付加されない。
【0073】
従って、このような「パターンa」と「パターンb」を同一の「色」とするためには、少なくとも、着色パターン層Bの「明度」を着色パターン層Aよりも上げるか、または、着色パターン層Aの厚さを着色パターン層Bの厚さより厚くして、光の透過性を下げる必要がある。
【0074】
このような調整により、所望の条件下において、「パターンa」と「パターンb」の「色」を同一とする。(ここでいう「色が同一」とは、それらの戻り光を色差計等により光学的に測定した場合に、「同一の色」となることを意味することは言うまでもない。)
例えば、観察者に対して、「パターンb」から戻ってくる光と、「パターンa」から戻ってくる光との比が、(1.5)対(1)のときには、着色パターン層Bと着色パターン層Aに、同一の透明樹脂、同一の染料または顔料を用い、その厚さの比を(1.5)対(1)とする等の調整を行う。
【0075】
もしくは、着色パターン層Bに、透明性を維持しながら透過する光を散乱させる効果を有する、シリコン樹脂等の透明な微粒子を添加することも、その調整が容易であるため好適である。
【0076】
また、着色パターン層Aの透明性を高いものとすると、高輝度インキ反射層から強い光が反射してくるため、着色シート等の全体領域が明るくなって、着色パターン層Aの「パターンa」の領域と、その領域の周辺領域とのコントラスト(明るさの差)が小さくなり、あたかも「パターンa」が消失したように視認されるため、このように「消失」する部分を混入させることも、その偽造防止性を高めるためには好適である。
【0077】
また、着色パターン層Aと着色パターン層Bを、いずれも透明性の高いものとすると、「パターンa」においては、高輝度インキ反射層からの反射光が、正反射光として強く反射し、明るい「色」を有する領域となり、「パターンb」に用いられる着色パターン層Bの「明るさ」を上げることによって、その「視認性の差」を僅かなものとすることとなるが、この現象は、高輝度インキ反射層そのものの光の反射率が高い場合(照明光となる可視光線の反射率が70%以上の場合。)に顕著に表れる。
【0078】
逆に、着色パターン層Aと着色パターン層Bを隠ぺい性の高いものとしたときには、高輝度インキ反射層そのものの光の反射率が低い場合(照明光となる可視光線の反射率が30%以下の場合。)にさらに顕著に表れることとなる。
【0079】
以上のように、着色パターン層Aの上下の面、及び、着色パターン層Bの下の面、の形成形状は、透過乃至は反射する光に対して、散乱性を持たず、「平坦な面」(「鏡面」に近いものを意味する。)とする必要があり、ステンレススクリーン印刷方式、凹版方式、レジスト処理方式、さらには、着色層転写方式を用い、インキとしては、透明な樹脂に、その樹脂に溶解性の高い染料を混入させるか、もしくは、透明な樹脂に、粒径の小さい顔料を混入させ、その顔料が二次凝集しないように、ボールミルや、ニーダー等を用いて、顔料を樹脂中に十分に分散させたものを用いることが好ましい。
【0080】
また、オフセット印刷方式や、グラビア印刷方式、シルクスクリーン方式を用いる場合には、形成時のインキの粘度調整、及び、乾燥条件の管理により、上記のような「平坦な面」を実現する必要がある。
【0081】
着色パターン層Aの厚さは、2.0μm〜20μmであり、その平坦性は、表面粗さRaで表して、可視光の波長以下、すなわち、0.1μm〜0.5μmとする。
【0082】
2.0μm未満では、安定した「色」を呈することができず、20μmを超えると、その段差が視認できるようになるため不都合である。
【0083】
また、平坦性については、Raが0.5μmを超えると光の散乱性が高くなり、その界面での光の反射が多くなって、その界面の視認性と、着色パターン層Bの界面の視認性との間に、大きな差を生じることとなるため不都合である。平坦性は、もちろん、0.1μm未満とすることが好ましいが、印刷方式や、レジスト処理方式等において形成する場合には、物理的な困難性を伴うものとなる。
【0084】
着色パターン層Bの厚さは、着色パターン層Aの厚さに対応して決められるが、少なくとも、一方の面が「斜面」となるのに十分な厚さが必要であり、着色パターン層Bの断面形状を台形で例えた場合には、まず、その土台となる部分の厚さは2.0μm〜10μmとする。
【0085】
そして、土台の上にある直角三角形の部分(台形は、土台となる長方形の上に直角三角形が乗せられている形状といえる。)は、「斜面」の傾斜角度によってその形状が決まることとなる。
【0086】
着色パターン層Bの形成領域である「パターンb」の領域の大きさが、例えば、100μm×100μmであった場合には、傾斜角度が5度のときは、その直角三角形の形状は、一方の端を0μmとし、他方の端を8.7μmとすることになる。また、傾斜角度が40度のときは、一方の端を0μmとし、他方の端を62.8μmとすることになる。
【0087】
このとき、100μm×100μmの領域を10μm×10μmに細分化し、個々の10μm×10μmの小さな領域のそれぞれに小さな直角三角形を乗せるという意味で一方の端に0μm、他方の端に6.3μmの上乗せをすることでも傾斜角度40度の斜面を得ることができる。
【0088】
そして、その斜面の平坦性は、0.1μm〜1.0μmとする。
【0089】
(もしくは、土台の上にある球面形状部分は、「球面形状」の曲率半径及び光軸の角度によってその形状が決まり、その球面形状の平滑性〔「実際の球面形状の、理想的な球面形状からのずれ」を、「実際の平面の、理想平面からのずれ」と同様に扱うという意味で「平滑性」という言葉を用いる。〕は、0.1μm〜1.0μmとする。)
その土台となる部分の厚さは、2.0μm以上とし、その段差を目立たなくするため、10μm以下とする。平坦性については、その面が、着色パターン層Bの下となって目立たなくなるため、着色パターン層Aよりやや粗いものであっても、その視認性には影響しない。
【0090】
但し、着色パターン層Bの断面形状を台形とすることは、着色層の厚いところと薄いところ、上記のサイズが100μm×100μmで、傾斜角度が5度の例では、土台2.0μm上に、一方の端に0μm、そして、他方の端に8.7μmの上乗せを行うため、その厚さは、薄いところで2.0μm、厚いところで10.7μmとなる。
【0091】
従って、着色パターン層Bを一つの組成のインキで形成すると、一方の端と他方の端とで大きな「色」の差が生じてしまう。そこで、100μm×100μmの領域を傾斜方向に10分割し、厚さが大きくなるにつれて、その顔料または染料濃度を徐々に薄めていく手法を用いる。
【0092】
また、上記したように、100μm×100μmの領域を10μm×10μmに細分化して斜面を形成する場合には、一つ一つの小さな領域内では、薄い方から厚い方へと「色」が徐々に変化しているものの、100μm×100μmの領域全体でみれば、均一な「色」を呈するようにすることができる。
【0093】
すなわち、100μm×100μmの一方の端の10μm×10μmの「色」(領域内は「色」が変化している。)と、他方の端の10μm×10μmの「色」(この領域も領域内で「色」が変化している。)とが、その内側における「色」の変化状況が同一であり、結果として、この二つの領域の「色」は全く同一ということができる。そして、この分割が微細であるため、観察者にとって、「パターンb」の全体が一つの「色」を呈すると認識できるものである。(もしくは、直径10mmの底面の領域を、直径方向に50μm毎の同心円で分割し、その小さな個々のドーナツ状の領域の最外周にあたる領域の着色層の厚さを10μmとした場合に、個々のドーナツ状の領域の中心にあたる領域に、23.9μmの厚さの着色層を設けることで球面形状を形成する代わりに、フレネルレンズの原理を用いて、各々のドーナツ領域の球面形状側の厚さ変化のみを再現した層を、土台上に形成することで、いわゆるレンズ効果を維持しながら、各々のドーナツ状の領域に形成する着色層の厚さを[10μm+〔0μm〜0.1μm〕)] 〔変化する部分の厚さは、0μm〜0.1μmの範囲内となる。〕の範囲に圧縮し、各々の着色層に用いるインキ組成を同一としても、着色パターン層Bの中で不要な「色」のムラを発生させず、均一な「色」を呈するものとすることも好適である。)
「パターンa」や、「パターンb」、そして、それらが一つとなった「パターンc」としては、文字、図形、記号、及びそれらの組み合わせを用いることができる。
【0094】
特に、ブランドや、メーカー等が使用している「ロゴ」のように、互いに離間している(接していないという意味。)、複数の文字から構成されるものが好適であって、文字毎に、着色パターン層Aと着色パターン層Bとを交互に変化させても良いし、複数の文字の「一文字」のみを着色パターン層Bとし、残りの文字を全て着色パターン層Aとするものであっても良い。
【0095】
これは、「視認性」の差が、「一文字」の中の一部のみで発生し(着色パターン層A)、他の部分は変化しないもの(着色パターン層B)とした場合には、真正性を判定する者が、その「変化」を判定する際に、「偽造防止のために意図して設けられたもの」か、「単なる印刷ムラ」なのかを判別することが困難なものとなるためであり、「一文字」全体が、「一様に変化」するか、「一様に変化しない」かを判定させることにより、判定の信頼性を確保するためである。
【0096】
また、着色パターン層A(「パターンa」)と、着色パターン層B(「パターンb」)とを接して形成し、それを合体したものを「パターンc」とすると、「パターンc」内に、その境界線が発生して、その境界線上で二つの領域を見比べることを可能とし、その二つの領域に何らかの差があることを容易に気付かせる要因となる。
【0097】
しかも、その境界線領域において、着色パターン層Aと着色パターン層Bとが、部分的に重なった場合には、その境界線領域が別の「色」を呈し、判定の信頼性を大幅に低下させることとなる。
【0098】
さらに、着色パターン層A(「パターンa」)と、着色パターン層B(「パターンb」)の占める領域の大きさは、上記した「ロゴ」等の大きさ(例えば、ロゴを表す線の線幅が2mm。)であれば十分であるが、上記したそれぞれの層の効果を十分に引き出すためには、少なくとも、100μm以上の線幅を有することが必要である。
【0099】
この線幅は、例えば、「文字を表す画線の内の一つの画線の幅」を意味し、これが、100μm未満であると、高輝度インキ反射層からの反射光に埋もれて、その「色」の変化を判読し難くなる。
【0100】
透明樹脂基材としては、各種の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、もしくは電離放射線硬化性樹脂を適宜な手段によってフィルム状、または、シート状にしたものを用いることができる。
【0101】
透明樹脂基材の一方の面、及び他方の面にそれぞれ、着色パターン層A及び、着色パターン層Bを上記したように形成し、さらに、その着色パターン層B上と、その着色パターン層Bを形成しておらず透明樹脂基材が露出している領域上に、それらの面形状に追従するように、高輝度インキ反射層を形成する。
【0102】
高輝度インキ反射層には、適宜な剥離性を有する基材表面上に金属薄膜を湿式法や乾式法で形成した後に、その金属薄膜をロール巻き上げ方式その他の適宜な剥離手段を用いて、その基材表面から剥離しつつ、その金属薄膜を適宜な大きさ及び形状になるように破断する方法で形成した金属薄膜細片を、所定の樹脂材料及び溶剤等に分散させた高輝度インキを用いることができる。
【0103】
この高輝度インキを形成する際には、その金属薄膜細片が高輝度インキ反射層内で凝集せず、高輝度インキ反射層面内に略平行な方向に延びるように、その面内方向に力がかかる多段オフセット印刷方式や、グラビアリバースコーティング方式等の印刷方式を用いて形成する。
【0104】
もちろん、一旦、表面平滑性を有する基材へ高輝度インキ反射層を所定の厚さで形成し、その表面をロールカレンダー処理して、インキ層内の金属薄膜細片を基材面に略平行に並ぶようにするか、もしくは、この工程を繰り返して高輝度インキ反射層を多層構成として、一層毎の平行化処理効果をより高いものとした後、転写方式にて、その着色パターン層B上と、その着色パターン層Bを形成しておらず透明樹脂基材が露出している領域上に、それらの面形状に追従するように、高輝度インキ反射層を転写形成することも、その高輝度インキ反射層の反射性を高め、いわゆる「金属蒸着反射層」に匹敵する金属光沢を得ることができ好適である。
【0105】
さらに、金属薄膜細片の表面を、有機脂肪酸、メチルシリルイソシアネート又はセルロース誘導体で処理して、高輝度インキ中への分散性を向上させて、高輝度インキ反射層の金属光沢を高輝度とすることも好適である。
【0106】
また、この高輝度インキ反射層を形成した際に、着色パターン層Bの端部に存在する「段差」(10μm厚さで形成すると、10μmの段差となる。)が、高輝度インキ反射層の付着ムラ等により、その光反射性にムラを生じて(その段差が目立って)、着色パターン層Aの段差に対して、「明らかな差(視認性の差)」を生じてしまうことを解消するため、「パターンb」領域の端部(境界領域)の5μm〜20μmに「階調(グラデーション)」を設け、且つ、同様の「階調」を「パターンa」の端部にも設ける等の工夫を施すことは、偽造防止性を高くするためにも好適である。この「諧調」領域は、上記の「斜面」を形成する領域とは考えず、「斜面」を取り囲む、「周辺領域」と位置づけるものとする。
【0107】
その「階調」を施す方法としては、その厚さを10μm、5μm、及び1μmと徐々に小さくするか、もしくは、その領域を厚さ1μmの適宜な大きさの網点領域として、その段差の視認性を抑制する方法が好適である。もしくは、第1ステップとして、着色パターン層Bを設けていない領域のみに高輝度インキ反射層を、着色パターン層Bの最も厚い部分の厚さで設け、第2ステップとして、同じ厚さで着色パターン層B上に高輝度インキ反射層を設けることで、上記した段差を解消することも好適である。
【0108】
また、観察者が、「パターンa」領域の色と、「パターンb」領域の色を視認する場合、単純には、「着色パターン層Aで反射する光」と、「一旦、透明樹脂基材を通過し、着色パターン層Bで反射して、再び、透明樹脂基材を通過して戻ってくる光」とを比較するため(特に、着色パターン層Aと、着色パターン層Bの隠ぺい性が高い場合に顕著となる。)、その色差を小さくするために、透明樹脂基材の透明性は高いことが望ましく、その透明性を示す指標である、「ヘーズ」として10%以下とする。さらには、「ヘーズ」を1%以下とすることがより好適である。
【0109】
この「ヘーズ」が10%を超えると、着色パターン層Bの視認性が低下するとともに、「色」を判定する際に、「色」の3要素とは異なる要素である、「色のにごり」が発生し、「パターンa」と「パターンb」の「色」を同一とすることが困難となる。
【0110】
「ヘーズ」を、10%以下に抑えるためには、
透明樹脂基材として、上記した樹脂の中から「ヘーズ」が10%以下の透明な樹脂を用い、その樹脂に相溶する染料を1%〜10%添加したものを用いるか、「ヘーズ」が2%以下の透明な樹脂を用い、その樹脂に分散性の良い微粒子有機顔料もしくは、微粒子無機顔料を、1%〜5%添加したものを用いる。
【0111】
また、着色パターン層Bは、透明樹脂基材上の一部に形成されているが、その透明樹脂基材と着色パターン層Bとで形成されている「界面」を、着色シート等に入射した「光」が通過(透過)する際に、その「光」が、不要な反射を受けないことが望ましい。
【0112】
特に、着色パターン層Bが透明な場合には、その「界面」を、着色シート等に入射した「光」が比較的多く通過(透過)するため、その通過する「光」が、不要な反射を受けないことが重要となる。これは、この界面において着色シート等に入射した「光」が比較的多く反射されることで、着色パターン層B内に到達する光が減少するだけでなく、着色パターン層Bを通過して、斜面で反射した反射光が再び着色パターン層Bを通過して透明樹脂基材側に戻ってくる光をも遮断してしまうことで(この界面で反射してしまい、界面を透過しないことを意味する。)、真正性判定の確実性を低下させることとなるからである。そのために、透明樹脂基材の屈折率と、着色パターン層Bの屈折率を同一、もしくは、その屈折率差を0.1以下とする。
【0113】
その屈折率差が「0」の場合には、その「界面」そのものが存在しないように「光」が透過し、また、屈折率差が存在したとしても、その屈折率差が「0.1以下」の場合には、その「光」に対する不要な反射を十分に抑制することができ、その偽造防止性をさらに高めることができる。
【0114】
また、上記した、高輝度インキ反射層の上に、溶剤系もしくは水系の粘着剤を設けることにより、着色ラベルとする。
【0115】
このことにより、種々の用途における、被貼着体への適用を容易とすることができる。
【0116】
高輝度インキ反射層の下にある着色パターン層Bへの影響を抑制するためには、水系の粘着剤を用いることが好ましい。
【0117】
さらに、上記した着色シートの高輝度インキ反射層の上に、溶剤系もしくは水系の接着剤層を設け、さらに、着色パターン層Aの領域においては着色パターン層Aを覆い、且つ、着色パターン層Aを設けていない領域においては、透明樹脂基材が露出している領域を覆う、転写用基材を設けて、着色転写シートとする。
【0118】
このとき、転写用基材は、透明樹脂基材や着色パターン層Aとの剥離が容易なものを用いる。
【0119】
このことにより、偽造防止性を付与する対象物へ容易に適用でき、且つ、適用後、転写用基材を剥離すると、残った層が非常に薄いため、もはや、その残った層を剥がすことを物理的に難しくでき、偽造防止性の高いものとすることができる。
【0120】
このときの各層の形成順序は、例えば、転写用基材の上に、着色パターン層Aを設け、その着色パターン層Aを覆うようにして、透明樹脂基材を設け、その上に、着色パターン層Bを設け、それらを覆うように高輝度インキ反射層を設けた後に、その高輝度インキ反射層上に接着剤層を設ける順序とすることができる。
【0121】
この場合には、転写用基材の上に、転写用基材との剥離性を有する「剥離層」を追加しても好適である。
【0122】
また、この順序で設けた場合には、着色パターン層Aが、透明樹脂基材の中に埋め込まれているため、偽造防止性を付与する対象物へ転写後、転写用基材を剥がした状態で、その剥がした面が面一(着色パターン層Aが飛び出していないという意味。)であるため、偽造防止性にさらに優れるものとなる。
【0123】
本発明の着色シート等を、蛍光灯下で観察したところ、「斜面の正反射光の進行方向」ではない方向においては、着色パターン層Aの領域である「パターンa」も、着色パターン層Bの領域である「パターンb」も、同一の「色」に見え、一つの「色」からなる「一つのパターンc」として認識できた。
【0124】
さらに、この着色シート等に対して、照明光源を一つとし、その照明光源、着色シート等、及び、観察位置の空間配置を変化させ、照明光源からの照明光が着色パターン層Bの斜面で正反射して出てくる方向に観察位置がくるように動かしたところ、その配置にぴったりと合致したところで、「パターンb」のみ「色」に変化が生じ、容易且つ確実に、真正性を確認することができた。
【0125】
また、本発明の着色ラベルを適宜な被貼着体へ貼り付けた状態で、同様の効果を確認することができた。
【0126】
さらに、本発明の着色転写シートを用いて、適宜な対象物へ転写した状態でも、同様の効果を確認できた。