特許第6036286号(P6036286)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6036286
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】ラジアルタービン及び過給機
(51)【国際特許分類】
   F01D 5/04 20060101AFI20161121BHJP
   F01D 1/06 20060101ALI20161121BHJP
   F02B 39/00 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   F01D5/04
   F01D1/06
   F02B39/00 Q
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-284859(P2012-284859)
(22)【出願日】2012年12月27日
(65)【公開番号】特開2014-126018(P2014-126018A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2015年10月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 渉
【審査官】 佐藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−109801(JP,A)
【文献】 特開平09−280001(JP,A)
【文献】 実開昭58−092421(JP,U)
【文献】 特開2004−092498(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 1/06
F01D 5/04、14
F01D 11/00
F02B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスの圧力エネルギーを利用して回転力を発生させるラジアルタービンにおいて、
内側にシュラウド面を有したタービンハウジングと、
前記タービンハウジング内に回転可能に設けられ、ハブ面が軸方向の一方側から径方向外側へ延びかつ前記ハブ面と背面との間に最大径面が形成されたタービンディスク、及び前記タービンディスクの前記ハブ面に周方向に沿って形成されかつ先端縁が前記タービンハウジングの前記シュラウド面に沿うように延びた複数のタービンブレードを備えたタービンインペラと、を具備し
前記タービンディスクの前記最大径面の半径が前記タービンブレードの前縁の回転半径よりも短く設定され、前記タービンブレードの前縁のハブ端の軸方向位置が前記タービンディスクの前記最大径面と前記タービンブレードの基端縁の境界部の軸方向位置よりも前記軸方向の一方側に位置しているか又は前記境界部の軸方向位置と同じ位置に位置しており
前記タービンブレードの前記基端縁における前記境界部よりも径方向外側に位置する部分の回転軌跡と前記タービンディスクの前記最大径面とによって前記タービンディスクの前記背面側に連通した環状の嵌合空間が区画形成され、前記タービンディスクの背面側に設けられた静止部の少なくとも一部分が前記嵌合空間に嵌合するようになっているラジアルタービン。
【請求項2】
前記タービンブレードの前記基端縁における前記境界部よりも径方向外側に位置する部分が径方向に対して前記軸方向の一方側に傾斜している請求項1に記載のラジアルタービン。
【請求項3】
エンジンからの排気ガスの圧力エネルギーを利用して、前記エンジン側に供給される空気を過給する過給機において、
請求項1又は請求項に記載のラジアルタービンを具備した過給機。
【請求項4】
ハブ面と背面との間に最大径面が形成されたタービンディスクと、
前記タービンディスクの前記ハブ面に形成されたタービンブレードと、
前記タービンディスクの前記背面の側に設けられた静止部と、を有するラジアルタービンであって、
前記最大径面の半径は前記タービンブレードの前縁の回転半径よりも短く、前記タービンブレードの基端縁と前記タービンディスクの前記最大径面の境界部と前記タービンブレードの前縁のハブ端との間の前記タービンブレードの部分の回転軌跡と、前記最大径面とによって形成された嵌合空間に、前記静止部の少なくとも一部分が嵌合している、ラジアルタービン。
【請求項5】
前記静止部は、嵌合突起を有する遮熱板であり、前記嵌合突起が前記嵌合空間に嵌合している、請求項4に記載のラジアルタービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガス等のガスの圧力エネルギーを利用して回転力を発生させるラジアルタービン等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から車両用過給機等に用いられるラジアルタービンについて種々の開発がなされており、従来のラジアルタービンの構成について図5及び図6を参照して説明すると、次のようになる。なお、図面中において、「F」は、前方向、「R」は、後方向をそれぞれ指してある。
【0003】
図5(a)(b)に示すように、従来の一般的なラジアルタービン101は、タービンハウジング103を具備しており、このタービンハウジング103は、内側に、シュラウド面103sを有している。また、タービンハウジング103内には、タービンインペラ105がその軸心C周りに回転可能に設けられており、このタービンインペラ105は、タービンディスク107を備えており、このタービンディスク107のハブ面107hは、前側(タービンインペラ105の軸方向の一方側)から径方向外側へ延びている。更に、タービンディスク107のハブ面107hには、複数(1つのみ図示)のタービンブレード109が周方向に等間隔に一体形成されており、各タービンブレード109の先端縁(外縁)109tは、タービンハウジング103のシュラウド面103sに沿うように延びている。
【0004】
タービンハウジング103の内部におけるタービンインペラ105の入口側には、渦巻き状のタービンスクロール流路111が形成されており、このタービンスクロール流路111は、ガスを取入れ可能である。また、タービンハウジング103におけるタービンインペラ105の出口側には、排気ガスを排出するためのガス排出口113が形成されている。ここで、タービンスクロール流路111に取入れたガスをタービンインペラ105の入口側から出口側へ流通させることにより、ガスの圧力エネルギーを利用して回転力(回転トルク)を発生させるようになっている。
【0005】
タービンインペラ105の加速応答性の向上の要請に伴い、タービンインペラ105の慣性モーメントを低減できる、図6(a)(b)に示すような所謂スカロップ型のラジアルタービン115も開発されている。スカロップ型のラジアルタービン115にあっては、タービンディスク107の外縁側における周方向に各隣接するタービンブレード109の間には、扇状の切欠(スカロップ)117が形成されている。これにより、タービンディスク107の一部を削り取って、一般的なラジアルタービン101に比してタービンインペラ105の軽量化を図り、タービンインペラ105の慣性モーメントを低減することができる。なお、従来のスカロップ型のラジアルタービン115における複数の構成要素のうち、従来の一般的なラジアルタービン101における構成要素と対応するものについては、図中に同一番号を付して説明を省略している。
【0006】
本発明に関連する先行技術として特許文献1から特許文献3に示すものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−201802号公報
【特許文献2】特開2011−99366号公報
【特許文献3】特開平8−326501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、従来のスカロップ型のラジアルタービン115においては、前述のように、タービンインペラ105の慣性モーメントを低減して、タービンインペラ105の加速応答性を向上させることができるものの、タービンディスク107の外縁側に複数の切欠117が形成されることによって、複数の切欠117の開口面積に応じた分だけリークパスが広がる。そのため、図6(a)において点線矢印で示すように、タービンディスク107の背面107d側からタービンブレード109の負圧面109n側に流れ込む二次流れ(漏れ流れ)が増えて、ラジアルタービン115のタービン効率が低下するという問題がある。
【0009】
つまり、従来のラジアルタービン101,115においては、タービン効率の低下を抑えつつ、タービンインペラ105の慣性モーメントを低減して、タービンインペラ105の加速応答性を向上させることが困難であるという問題がある。
【0010】
そこで、本発明は、前述の問題を解決することができる、新規な構成のラジアルタービン等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様は、図4(a)(b)に示すように、ガスの圧力エネルギーを利用して回転力を発生させるラジアルタービンにおいて、内側にシュラウド面(内壁面)を有したタービンハウジングと、前記タービンハウジング内に回転可能に設けられ、ハブ面が軸方向の一方側から径方向外側へ延びかつ前記ハブ面と背面との間に最大径面(最大径を有する周面)が形成されたタービンディスク、及び前記タービンディスクの前記ハブ面に周方向に沿って形成されかつ先端縁が前記タービンハウジングの前記シュラウド面に沿うように延びた複数のタービンブレードを備えたタービンインペラと、を具備し前記タービンディスクの前記最大径面の半径が前記タービンブレードの前縁(入口縁)の回転半径よりも短く設定され、前記タービンブレードの前縁のハブ端(基端)の軸方向位置(前記軸方向の位置)が前記タービンディスクの前記最大径面と前記タービンブレードの基端縁の境界部の軸方向位置よりも前記軸方向の一方側に位置しているか又は前記境界部の軸方向位置と同じ位置に位置しており、前記タービンブレードの前記基端縁における前記境界部よりも径方向外側(前記タービンディスクの前記最大径面よりも径方向外側)に位置する部分の回転軌跡と前記タービンディスクの前記最大径面とによって前記タービンディスクの前記背面側に連通した環状の嵌合空間が区画形成(区画)され、前記タービンディスクの背面側に設けられた静止部の少なくとも一部分が前記嵌合空間に嵌合するようになっていることである。なお、図面中において、「F」は、前方向、「R」は、後方向をそれぞれ指してある。
【0012】
ここで、本願の明細書及び特許請求の範囲において、「軸方向」とは、タービンインペラの軸方向のことをいい、「設けられ」とは、直接的に設けられたことの他に、別部材を介して間接的に設けられたことを含む意である。また、「内側にシュラウド壁を有し」とは、タービンハウジングの内側にシュラウド壁を有する場合の他に、タービンハウジング内に設けられた別部材の内側にシュラウド壁を有する場合を含む意である。更に、「上流」とは、ガスの主流の流れ方向から見て上流のことをいい、「下流」とは、ガスの主流の流れ方向から見て下流のことをいい、「静止部」は、タービンハウジングと異なる別部材からなるものであってもよく又はタービンハウジングの一部であっても構わない。
【0013】
第1の態様によるとガスを前記タービンインペラの入口側から出口側へ流通させることにより、ガスの圧力エネルギーを利用して回転力(回転トルク)を発生させることができる(第1の態様による通常の作用)。
【0014】
第1の態様による通常の作用の他に、前記タービンディスクの前記最大径面の半径が前記タービンブレードの前記前縁の回転半径よりも短く設定されているため、前記タービンディスクの一部を削り取って、従来の一般的なラジアルタービン101(図5(a)(b)参照)に比して前記タービンディスクの軽量化を図ることができる。また、前記タービンブレードの前縁のハブ端(基端)の軸方向位置(前記軸方向の位置)が前記タービンディスクの前記最大径面と前記タービンブレードの基端縁の境界部の軸方向位置よりも前記軸方向の一方側に位置しているか又は前記境界部の軸方向位置と同じ位置に位置しているため、前記タービンブレードの一部を削り取って、従来の一般的なラジアルタービン101に比して前記タービンブレードの軽量化を図ると共に、前記タービンディスクの前記最大径面付近の遠心応力を低減することができる。
【0015】
前記タービンブレードの前記基端縁における前記境界部よりも径方向外側に位置する部分の回転軌跡と前記タービンディスクの前記最大径面とによって環状の前記嵌合空間が区画形成され、前記静止部の少なくとも一部分が前記嵌合空間に嵌合するようになっているため、前記タービンディスクの背面側から前記タービンブレードの負圧面側に流れ込む二次流れ(漏れ流れ)を低減することができる(第1の態様による特有の作用)。
【0016】
本発明の第2の態様は、エンジンからの排気ガスの圧力エネルギーを利用して、前記エンジン側に供給される空気を過給する過給機において第1の態様からなるタービンを具備したことである。
【0017】
第2の態様によると、第1の態様による作用と同様の作用を奏する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、前記タービンディスク及び前記タービンブレードの軽量化、換言すれば、前記タービンインペラの軽量化を図ることができるため、前記タービンインペラの慣性モーメントを低減して、前記タービンインペラの加速応答性を向上させることができる。また、前記タービンディスクの背面側から前記タービンブレードの負圧面側に流れ込む二次流れを低減できるため、前記ラジアルタービンのタービン効率の低下を抑えることができる。つまり、前記ラジアルタービンのタービン効率の低下を抑えつつ、前記タービンインペラの慣性モーメントを低減して、前記タービンインペラの加速応答性を向上させることができる。
【0019】
更に、前記タービンディスクの前記最大径面付近の遠心応力を低減できるため、前記タービンディスクにクラック等が発生し難くなって、前記ラジアルタービンの耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の実施形態に係るラジアルタービンの要部を示す断面図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る車両用過給機の正断面図である。
図3図3は、発明品、従来品1、及び従来品2について空力性能試験の結果を示す図である。
図4図4(a)は、発明例に係るラジアルタービンの要部を示す断面図、図4(b)は、発明例に係るラジアルタービンにおけるタービンインペラを先端側から見た図である。
図5図5(a)は、従来の一般的なラジアルタービンの要部を示す断面図、図5(b)は、従来の一般的なラジアルタービンにおけるタービンインペラを先端側から見た図である。
図6図6(a)は、従来のスカロップ型のラジアルタービンの要部を示す断面図、図6(b)は、従来のスカロップ型のラジアルタービンにおけるタービンインペラを先端側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態について図1及び図2を参照して説明する。なお、図面中、「F」は、前方向を指し、「R」は、後方向を指してある。
【0022】
図2に示すように、本発明の実施形態に係る車両用過給機1は、エンジン(図示省略)からの排気ガス(ガスの一例)の圧力エネルギーを利用して、エンジンに供給される空気を過給(圧縮)するものである。そして、車両用過給機1の具体的な構成等は、以下のようになる。
【0023】
車両用過給機1は、ベアリングハウジング3を具備しており、ベアリングハウジング3内には、一対のラジアルベアリング5及び一対のスラストベアリング7が設けられている。また、複数のベアリング5,7には、前後方向へ延びたロータ軸(タービン軸)9が回転可能に設けられており、換言すれば、ベアリングハウジング3には、ロータ軸9が複数のベアリング5,7を介して回転可能に設けられている。
【0024】
ベアリングハウジング3の前側には、排気ガスの圧力エネルギーを利用して回転力(回転トルク)を発生させるラジアルタービン11が配設されており、このラジアルタービン11の具体的な構成は、次のようになる。
【0025】
図1及び図2に示すように、ベアリングハウジング3の前側には、タービンハウジング13が設けられており、このタービンハウジング13は、内側に、シュラウド面(内壁面)13sを有している。また、タービンハウジング13内には、タービンインペラ15がその軸心C周りに回転可能に設けられている。そして、タービンインペラ15は、ロータ軸9の前端部に一体的に連結されたタービンディスク17を備えており、このタービンディスク17のハブ面17hは、前側(タービンインペラ15の軸方向の一方側)から径方向外側へ延びてあって、タービンディスク17のハブ面17hと背面17dとの間には、最大径面(最大径の外周面)17gが形成されている。更に、タービンディスク17のハブ面17hには、複数のタービンブレード19が周方向に等間隔に一体形成されており、各タービンブレード19の先端縁(外縁)19tは、タービンハウジング13のシュラウド面13sに沿うように延びている。
【0026】
図2に示すように、タービンハウジング13の適宜位置には、排気ガスを取入れるためのガス取入口21が形成されており、このガス取入口21は、エンジンの排気マニホールド(図示省略)に接続可能である。また、タービンハウジング13の内部におけるタービンインペラ15の入口側には、渦巻き状のタービンスクロール流路23が形成されており、このタービンスクロール流路23は、ガス取入口21に連通してあって、排気ガスを取入れ可能である。更に、タービンハウジング13におけるタービンインペラ15の出口側(タービンハウジング13の前側)には、排気ガスを排出するガス排出口25が形成されており、このガス排出口25は、接続管(図示省略)を介して排気ガス浄化装置(図示省略)に接続可能である。
【0027】
図1及び図2に示すように、タービンハウジング13内におけるタービンディスク17の背面17d側には、環状の遮熱板27がベアリングハウジング3の前側面を覆うように配設されており、この遮熱板27の外周縁部は、タービンハウジング13とベアリングハウジング3によって挟持されている。
【0028】
図2に示すように、ベアリングハウジング3の後側には、遠心力を利用して空気を圧縮するコンプレッサ29が配設されており、このコンプレッサ29の具体的な構成は、次のようになる。
【0029】
ベアリングハウジング3の後側には、コンプレッサハウジング31が設けられており、このコンプレッサハウジング31は、内側に、シュラウド面(内壁面)31sを有している。また、コンプレッサハウジング31内には、コンプレッサインペラ33が回転可能に設けられている。そして、コンプレッサインペラ33は、ロータ軸9の後端部に一体的に連結されたコンプレッサディスク35を備えており、このコンプレッサディスク35のハブ面35hは、後側から径方向外側へ延びている。更に、コンプレッサディスク35のハブ面35hには、複数のコンプレッサブレード37が周方向に等間隔に一体形成されており、各コンプレッサブレード37の先端縁(外縁)37tは、コンプレッサハウジング31のシュラウド面31sに沿うように延びている。
【0030】
コンプレッサハウジング31におけるコンプレッサインペラ33の入口側(コンプレッサハウジング31の後側部)には、空気を取入れるための空気取入口39が形成されており、この空気取入口39は、空気を浄化するエアクリーナ(図示省略)に接続可能である。また、ベアリングハウジング3とコンプレッサハウジング31との間におけるコンプレッサインペラ33の出口側には、圧縮された空気を昇圧する環状のディフューザ流路41が形成されている。更に、コンプレッサハウジング31の内部には、渦巻き状のコンプレッサスクロール流路43が形成されており、このコンプレッサスクロール流路43は、ディフューザ流路41に連通してある。そして、コンプレッサハウジング31の適宜位置には、圧縮された空気を排出するための空気排出口45が形成されており、この空気排出口45は、コンプレッサスクロール流路43に連通してあって、エンジンの吸気マニホールド(図示省略)に接続可能である。
【0031】
続いて、本発明の実施形態に係るラジアルタービン11の特徴部分について説明する。
【0032】
図1に示すように、タービンディスク17の最大径面17gの半径R1は、タービンブレード19の前縁(入口縁)19aの回転半径R2よりも短く設定されている。また、タービンブレード19の前縁19aのハブ端(基端)19ahの軸方向位置(タービンインペラ15の軸方向の位置)は、タービンディスク17の最大径面17gとタービンブレード19の基端縁19bの境界部BDの軸方向位置よりも前側(タービンインペラ15の軸向一方側)に位置している。換言すれば、タービンブレード19の基端縁19bにおける境界部BDよりも径方向外側(タービンディスク17の最大径面17gよりも径方向外側)に位置する部分19beは、径方向に対して前側に傾斜している。なお、タービンブレード19の前縁19aのハブ端19ahの軸方向位置が境界部BDの軸方向位置よりも前側に位置する代わりに、境界部BDの軸方向位置と同じ位置に位置してあっても構わない。
【0033】
タービンブレード19の基端縁19bにおける境界部BDよりも径方向外側に位置する部分19beの回転軌跡と、タービンディスク17の最大径面17gとによって、環状の嵌合空間ASが区画形成(区画)されており、この嵌合空間ASは、タービンディスク17の背面17d側に連通してある。また、タービンディスク17の背面17d側に設けられた静止部としての遮熱板27には、嵌合空間ASに嵌合可能な環状の嵌合突起27pが形成されており、遮熱板27の嵌合突起27pの断面は、嵌合空間ASの断面と整合する形状を呈している。
【0034】
続いて、本発明の実施形態の作用及び効果について説明する。
【0035】
ガス取入口21からタービンスクロール流路23に取入れた排気ガスをタービンインペラ15の入口側から出口側へ流通させることにより、排気ガスの圧力エネルギーを利用して回転力(回転トルク)を発生させて、ロータ軸9及びコンプレッサインペラ33をタービンインペラ15と一体的に回転させることができる。これにより、空気取入口39から取入れた空気を圧縮して、ディフューザ流路41及びコンプレッサスクロール流路43を経由して空気排出口45から排出することができ、エンジンに供給される空気を過給することができる(車両用過給機1の通常の作用)。
【0036】
車両用過給機1の通常の作用の他に、タービンディスク17の最大径面17gの半径R1がタービンブレード19の前縁19aの回転半径R2よりも短く設定されているため、タービンディスク17の一部を削り取って、従来の一般的なラジアルタービン101(図5(a)(b)参照)に比してタービンディスク17の軽量化を図ることができる。また、タービンブレード19の前縁19aのハブ端19ahの軸方向位置がタービンディスク17の最大径面17gとタービンブレード19の基端縁19bの境界部BDの軸方向位置よりも前側に位置しているか又は境界部BDの軸方向位置と同じ位置に位置しているため、タービンブレード19の一部を削り取って、従来の一般的なラジアルタービン101に比してタービンブレード19の軽量化を図ると共に、タービンディスク17の最大径面17g付近の遠心応力を低減することができる。
【0037】
タービンブレード19の基端縁19bにおける境界部BDよりも径方向外側に位置する部分19beの回転軌跡とタービンディスク17の最大径面17gとによって環状の嵌合空間ASが区画形成され、遮熱板27の嵌合突起27pが嵌合空間ASに嵌合するようになっているため、タービンディスク17の背面17d側からタービンブレード19の負圧面19n側に流れ込む二次流れ(漏れ流れ)を低減することができる(車両用過給機1におけるラジアルタービン11の特有の作用)。
【0038】
従って、本発明の実施形態によれば、タービンディスク17及びタービンブレード19の軽量化、換言すれば、タービンインペラ15の軽量化を図ることができるため、タービンインペラ15の慣性モーメントを低減して、タービンインペラ15の加速応答性を向上させることができる。また、タービンディスク17の背面17d側からタービンブレード19の負圧面19n側に流れ込む二次流れを低減できるため、ラジアルタービン11のタービン効率の低下を抑えることができる(後述の実施例参照)。つまり、ラジアルタービン11のタービン効率の低下を抑えつつ、タービンインペラ15の慣性モーメントを低減して、タービンインペラ15の加速応答性を向上させることができる。
【0039】
更に、タービンディスク17の最大径面17g付近の遠心応力を低減できるため、タービンディスク17にクラック等が発生し難くなって、ラジアルタービン11の耐久性、換言すれば、車両用過給機1の耐久性を向上させることができる。
【0040】
なお、本発明は、前述の実施形態の説明に限るものでなく、例えば車両用過給機1のラジアルタービン11に適用した技術的思想を車両用過給機1のラジアルタービン11以外のラジアルタービンに適用する等、その他、種々の態様で実施可能である。また、本発明に包含される権利範囲は、これらの実施形態に限定されないものである。
【実施例】
【0041】
本発明の実施例について図3を参照して説明する。
【0042】
発明例に係るラジアルタービン(図4(a)(b)参照)を発明品、従来の一般的なラジアルタービン101(図5(a)(b)参照)を従来品1、従来のスカロップ型のラジアルタービン115(図6(a)(b)参照)を従来品2としてそれぞれ試作し、発明品、従来品1、及び従来品2について実際の運転条件を模擬して空力性能試験を行い、その結果をまとめると、図3に示すようになる。即ち、空力性能試験の結果によると、従来品2は従来品1に比してタービン効率が大きく低下したのに対して、発明品はタービン効率の低下が抑えることができることが判明した。
【符号の説明】
【0043】
1 車両用過給機
3 ベアリングハウジング
9 ロータ軸
11 ラジアルタービン
13 タービンハウジング
13s シュラウド面
15 タービンインペラ
17 タービンディスク
17d 背面
17g 最大径面
17h ハブ面
19 タービンブレード
19a 前縁
19ah 前縁のハブ端
19b 基端縁
19n 負圧面
21 ガス取入口
23 タービンスクロール流路
25 ガス排出口
27 遮熱板
27p 嵌合突起
AS 環状空間
29 コンプレッサ
31 コンプレッサインペラ
31 コンプレッサハウジング
図1
図2
図3
図4
図5
図6