(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1又は2記載の焼結原料の事前処理方法において、前記粉砕処理前の前記焼結原料A群の水分量を5質量%以上10質量%以下にすることを特徴とする焼結原料の事前処理方法。
請求項1〜3のいずれか1項に記載の焼結原料の事前処理方法において、前記粉砕処理後の粉砕物を前記撹拌機で前記撹拌処理することを条件として、該撹拌処理の際の前記撹拌機の撹拌羽根の周速を2m/秒以上にすることを特徴とする焼結原料の事前処理方法。
請求項1〜4のいずれか1項に記載の焼結原料の事前処理方法において、前記粉砕処理後の粉砕物と、鉄鉱石として500μmアンダーが50質量%未満又は10μmアンダーが5質量%超の粒度の粉鉱石を用いる焼結原料B群とを合流させることを特徴とする焼結原料の事前処理方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
まず、本発明に想到した経緯について説明する。
はじめに、粉鉱石(鉄鉱石)のうち、難造粒性を示す微粉原料の造粒性について説明する。
篩目10μmアンダーの粒子(微粒子)が5質量%以下と極めて少なく、500μmアンダーの粒子が50質量%以上と非常に多い微粉原料(鉄鉱石)が、通常の鉄鉱石と異なる点は、10μmアンダーの微粒子が極めて少ない点であり、例えば、鉄鉱石の粉砕処理と水による比重選鉱処理を繰り返すことで、この特徴が得られることがわかった。なお、500μmアンダーの粒子の質量%の測定に際しては、微粉原料(2kg)を、150℃で1時間乾燥した後、0.5mmの篩目(JIS Z8801−1「試験用ふるい−第1部:金属製網ふるい」に拠る)で分級し、篩下の質量%を求めた。また、10μmアンダーの微粒子の質量%の測定に際しては、上記乾燥後の微粉原料を対象に、レーザー回折散乱法の測定機器(日機装株式会社製 MICROTRAC(登録商標) MT3300型、測定範囲:0.02〜1400μm)を用いた。
【0019】
ここで、鉄鉱石として少なくとも1種又は複数種の粉鉱石(微粉原料の場合を含む)を含むものが焼結原料であり、この焼結原料に、副原料(成分調整用原料)や凝結材(例えば、コークス粉や石炭粉等)が含まれるか否かは任意であり、本実施の形態での焼結原料とは、生石灰や消石灰(バインダー)を含まないものをさす。なお、焼結原料に副原料や凝結材が含まれる場合、焼結原料中の副原料と凝結材の合計量が質量比で30質量%以下程度(焼結原料中の鉄鉱石量:例えば、焼結原料の70〜100質量%程度)となるように、鉄鉱石に副原料と凝結材を添加する場合があるが、焼結原料の造粒性や造粒物の強度は、これらの添加量では改善しにくい。
【0020】
上記した粒度構成、即ち10μmオーバーかつ500μmアンダー程度に概ね揃った微粉原料を造粒すると、隣接する原料粒子の間に空間が形成される。
しかし、上記したように、微粉原料中には、この空間を充填する10μmアンダーの微粒子が極めて少ないため、微粉原料は空間を内包したまま造粒され、造粒物の強度が極めて低くなる。このため、たとえセルロース等の粘着質のバインダーを用いて微粉原料を造粒し、隣接する微粉原料の粒子同士を粘着できたとしても、造粒物内部には空間が残留するため、造粒物の強度を向上しにくい。
更に一般に、粉鉱石は水を用いて造粒するが、結晶水を4質量%以上含む高結晶水鉱石を、微粉原料に30質量%以上60質量%以下含める場合、高結晶水鉱石の気孔に水が吸収され、造粒物強度が経時劣化(低下)する問題もある。
上記状況において、上記した微粉原料の造粒に用いるバインダーには、10μmアンダーの微粒子を供給でき、上記した空間を充填できるものが好ましいことに想到した。
【0021】
なお、固形バインダーには、ベントナイトや炭酸カルシウム等があるが、通常の撹拌(混練)処理程度では、上記した微粉原料へ固形バインダーを均一分散させるのが難しいことが判明した。
これは、上記したように、微粉原料の粒径が10μmオーバーかつ500μmアンダー程度の大きさに概ね揃っており、一般には広範囲な粒度分布を持つことで撹拌による原料の混合が進むため、粒子が微粒化せず溶解もしないベントナイトや炭酸カルシウム等を添加しても分散が進まないものと考えられ、この観点からも、別の手段で10μmアンダーの微粒子を添加することが好ましいと考えられた。
以上のことから、本発明者らは、鉄鉱石として、500μmアンダーが50質量%以上かつ10μmアンダーが5質量%以下の粒度である微粉原料を用いた焼結原料A群を造粒するに際し、撹拌や造粒を容易化するバインダーとして、生石灰と消石灰に想到した。
【0022】
次に、生石灰と消石灰による造粒メカニズムについて説明する。
生石灰は、撹拌や造粒中に水と接触することで一部が吸湿し消化(消石灰化)して微粒化し、水と共に微粉原料に均一に混ざり易くなると考えられる。なお、生石灰としては、CaOが例えば84質量%以上のものが多用されている。
ここで、生成した消石灰の一部については、水に溶解することでも、微粉原料に均一に混ざり易くなる。
なお、微粉原料に、生石灰の代わりに、又は生石灰と共に、消石灰を添加する場合も同様であり、一部の消石灰が水に溶解して、微粉原料中に均一に混ざり易くなる。
【0023】
生石灰の消化で生成する消石灰や、水の蒸発等によって再晶出する消石灰は、粒径が10μmアンダーの微粒子であり、更にはサブミクロンオーダーの微粒子も多く含まれており、固体架橋によって上記微粉原料の造粒性向上や造粒物の強度向上に大きく寄与する。
従って、極力多くの生石灰を消化させること、生成する消石灰の粒径を小さくすること、極力多くの消石灰を造粒水に溶解すること、等で、造粒に寄与する消石灰を多量に生成させて、生成する消石灰を微粉原料全体に分散させ(マクロに分散させ)、各微粉原料の粒子表面に極力付着させる(ミクロに分散させる)こと、が重要となる。
上記したことから、難造粒性の微粉原料と、その他の原料(例えば、造粒が容易な易造粒性原料)を混合する場合は、難造粒性の微粉原料に対して、粒径を小さくする処理を施した生石灰や消石灰の添加や、その添加量を多くすること等も重要となる。
【0024】
なお、炭酸カルシウム(分子式:CaCO
3)は、生石灰と同様にCaOを含み、そのCaO含有率が56質量%程度のものであり、石灰石あるいは単に石灰と称される場合がある。しかし、炭酸カルシウムは、化学的に安定な物質であって、吸湿による消化や水への溶解は起こりにくい。
従って、上記した生石灰や消石灰に、炭酸カルシウムは含まれない。
ここで、添加するバインダーの種類が造粒物の造粒性に及ぼす影響について、
図1を参照しながら説明する。
【0025】
なお、試験は、結晶水を4質量%以上含む高結晶水鉱石を0又は0を超え10質量%以下配合した500μmアンダーが50質量%以上かつ10μmアンダーが5質量%以下の粒度である難造粒性の微粉原料(焼結原料A群)に、バインダー(炭酸カルシウム、生石灰、消石灰)を外掛けで(乾燥状態の焼結原料である微粉原料100質量%に対して)2質量%添加し、これを万能ミキサー(自転する撹拌羽根の軸を公転させる竪型ミキサー)で撹拌した後、ドラムミキサーで造粒処理した。ここでは、バインダー添加の評価基準として、バインダーを添加していない難造粒性の微粉原料(原料)のみのものについても、万能ミキサーで撹拌した後、ドラムミキサーで造粒処理した。
詳細条件は、水分:9〜12質量%の範囲で一定(微粉原料と水の合計質量を100質量%とした場合の水分の質量%、以下同様)、撹拌(混練):周速2.2m/秒、処理時間90秒、造粒:周速1.0m/秒、処理時間60秒、である。なお、周速は、万能ミキサー(撹拌機)とドラムミキサー(造粒機)において、回転するもの(羽根、ドラム等)で、一番速い部分の速度を意味する。
【0026】
また、評価は、以下の手順で行った。
まず、上記した造粒処理した微粉原料(2kg)を、150℃で1時間乾燥した後、0.5mmの篩目(JIS Z8801−1「試験用ふるい−第1部:金属製網ふるい」に拠る)で分級し、0.5mmアンダーの割合を粉率と定義した。なお、粉率は、バインダーを添加していない微粉原料のみの粉率を「1.0」として、それぞれ算出した。
図1から、微粉原料に対して炭酸カルシウムを添加した場合、造粒性の改善が小さい(粉率:0.70)のに対し、微粉原料に対して生石灰や消石灰を添加した場合は、造粒性が著しく改善(生石灰:0.41、消石灰:0.43)することを、本発明者らは初めて発見した。
これは、生石灰が水と接触することにより微粒化し、更に生成した消石灰(添加した消石灰)の一部が水に溶解することで、微粉原料に均一に混ざり易くなり、固体架橋によって微粉原料の造粒性向上や造粒物の強度向上に大きく寄与したためと考えられる。
【0027】
上記粉率は平均値であり、いずれのバインダーを用いた場合も、粉率値は5%程度のばらつきをもった。
一方、上記試験に用いた微粉原料として、結晶水を4質量%以上含む高結晶水鉱石を30〜60質量%配合したものを用いた場合、粉率が全体的に悪化(増加)し、特に、バインダーとして炭酸カルシウムを用いた場合は、概ね2〜3割程度のばらつきを示すのに対し、バインダーとして生石灰や消石灰を用いた場合は、炭酸カルシウムの粉率値のばらつきよりも小さな1割程度であった。これは、造粒時や造粒後に気孔に水が吸収され得る高結晶水鉱石を用いたとしても、バインダーとして炭酸カルシウムを用いると上記した固体架橋が安定せず、一方、生石灰や消石灰を用いると上記した固体架橋が安定するものと推定され、吸湿による消化や水への溶解が起きると、気孔への吸水が起こっても固体架橋が比較的安定しているものと推定された。
【0028】
以上のことから、本発明者らは、難造粒性を有する微粉原料の造粒性を向上できる焼結原料の事前処理方法に想到した。
即ち、鉄鉱石として500μmアンダーが50質量%以上かつ10μmアンダーが5質量%以下の粒度の粉鉱石である微粉原料を用いる焼結原料A群(難造粒性微粉原料)に、生石灰及び消石灰のいずれか1又は2からなるバインダーを、生石灰換算で焼結原料A群の質量の0.5質量%以上6質量%以下の量添加し、粉砕機で粉砕処理した後に撹拌機で撹拌処理してドラム式造粒機で造粒処理、又は、粉砕機で粉砕処理した後にドラム式造粒機(ドラム型造粒機)で造粒処理する方法である。
以下、詳しく説明する。
【0029】
上記した生石灰は、石灰石などの主成分である炭酸カルシウムを1100℃程度に加熱し、二酸化炭素を放出させる熱分解により製造し、その後、破砕による細粒化処理を行って、所定の粒度としている。
しかし、生石灰の粒度を小さくするに際しては、上記したように、細粒化処理を行う必要があり、製造コストの上昇を招くことから、粉率を抑制できる範囲内で、生石灰の粒度を比較的粗粒の状態、例えば、250μmアンダーを0質量%又は0質量%を超え50質量%未満(更には、40質量%以下)とするのがよい。これにより、生石灰の細粒化処理を省略できるため、製造コストの低減が図れて経済的である。
また、難造粒性微粉原料と、これ以外の易造粒性原料の粒度の関係を、表1に示す。
【0031】
上記した難造粒性微粉原料、即ち500μmアンダー(−500μm)が50質量%以上かつ10μmアンダー(−10μm)が5質量%以下の粒度を有する原料は、表1中の「A」に該当する。
一方、粉鉱石(鉄鉱石)から、上記した難造粒性微粉原料を除いた焼結原料である易造粒性原料(焼結原料B群)は、表1中の「B1」、「B2」、及び「B3」に該当する。この易造粒性原料は、500μmアンダーが50質量%未満又は10μmアンダーが5質量%超の粒度の粒度を有する原料であり、具体的には、500μmアンダーが50質量%未満かつ10μmアンダーが5質量%以下の粒度を有する原料は、表1中の「B1」に、500μmアンダーが50質量%以上かつ10μmアンダーが5質量%超の粒度を有する原料は、表1中の「B2」に、500μmアンダーが50質量%未満かつ10μmアンダーが5質量%超の粒度を有する原料は、表1中の「B3」に、それぞれ該当する。
以上のように、造粒処理する焼結原料は、表1のように分類できる。
【0032】
なお、上記した「B1」、「B2」、「B3」の分類は、粒度分布を調べた鉄鉱石銘柄で決定でき、これらの配合後でも、粒度分布に基づいて決定できる。更に、篩処理や粉砕処理によっても粒度が調整できるため、上記した「A」、「B1」、「B2」、「B3」の分類に決定できる。この篩処理と粉砕処理のいずれか一方(単独)又は双方の処理方法は、粒度が安定するため、造粒状況が安定して好ましい。
【0033】
次に、難造粒性微粉原料の粒度構成を、上記した範囲に規定した理由について、
図2(A)、(B)を参照しながら説明する。
試験は、結晶水を4質量%以上含む高結晶水鉱石を30〜60質量%配合した原料に生石灰(粒度:250μmアンダーが50質量%未満)を、外掛けで2質量%添加し、これを前記した万能ミキサーで撹拌した後、ドラムミキサーで造粒して行った。この原料には、
図2(A)の場合、原料中の10μmアンダーの質量割合を5質量%に固定し、500μmアンダーの質量割合を、20質量%、50質量%、75質量%に変更した原料を、
図2(B)の場合、原料中の500μmアンダーの質量割合を50質量%に固定し、10μmアンダーの質量割合を、2.5質量%、5質量%、8質量%に変更した原料を、それぞれ使用した。
なお、水分、撹拌、及び造粒の各条件は、前記した詳細条件と同一である。
【0034】
また、評価についても、前記した0.5mmアンダーの割合を粉率と定義して行った。なお、粉率は、
図2(A)の場合、原料中の10μmアンダーの質量割合を5質量%に固定し、500μmアンダーの質量割合を50質量%にした造粒物の粉率を、また
図2(B)の場合、原料中の500μmアンダーの質量割合を50質量%に固定し、10μmアンダーの質量割合を5質量%にした造粒物の粉率を、それぞれ「1.0」として算出した。
図2(A)に示すように、原料中の10μmアンダーの質量割合を5質量%に固定した場合、500μmアンダーの質量割合が50質量%以上になることで、造粒物の粉率が急激に上昇する傾向が得られた。
また、
図2(B)に示すように、原料中の500μmアンダーの質量割合を50質量%に固定した場合、10μmアンダーの質量割合が5質量%以下になることで、造粒物の粉率が急激に上昇する傾向が得られた。
【0035】
以上のことから、本発明は、造粒物の粉率が高くなる難造粒性を示す微粉原料の粒度として、500μmアンダーが50質量%(更には60質量%)以上かつ10μmアンダーが5質量%(更には4質量%)以下を規定した。なお、500μmアンダーの上限値を規定していないのは100質量%でもよく、また10μmアンダーの下限値を規定していないのは0質量%でもよいためである。
以上から、500μmアンダーが50質量%以上かつ10μmアンダーが5質量%以下の粒度の微粉原料であれば、造粒物の粉率が極めて上昇(悪化)することがわかる。また、これに対し、500μmアンダーが50質量%未満又は10μmアンダーが5質量%超の粒度の粉鉱石であれば、粉率が一定レベル下がる(改善する)ことがわかる。
【0036】
続いて、難造粒性微粉原料と生石灰に対する粉砕処理が、焼結生産性に及ぼす影響について、
図3を参照しながら説明する。
各種試験は、結晶水を4質量%以上含む高結晶水鉱石を30〜60質量%配合した難造粒性微粉原料(500μmアンダーが50質量%以上かつ10μmアンダーが5質量%以下)に、生石灰を外掛けで2質量%添加し、難造粒性微粉原料の水分が7質量%となるように加水して、撹拌機で2分間撹拌処理した後、この撹拌物をドラムミキサー(ドラム式造粒機)に装入して、100回転させて造粒処理することを、基本条件とした。
【0037】
ここで、
図3の「粉砕なし」とは、難造粒性微粉原料と生石灰を共に粉砕処理することなく(そのままの状態で)、上記した基本条件で造粒物を製造した結果である。
また、
図3の「原料のみ粉砕」とは、難造粒性微粉原料のみをボールミル(粉砕機)を用いて5分間粉砕処理した粉砕物と、粉砕処理していない生石灰とを使用し、上記した基本条件で造粒物を製造した結果である。
そして、
図3の「生石灰のみ粉砕」とは、粉砕処理していない難造粒性微粉原料と、ボールミルを用いて5分間粉砕処理した生石灰とを使用し、上記した基本条件で造粒物を製造した結果である。
更に、
図3の「原料、生石灰個別粉砕」とは、それぞれ個別にボールミルを用いて5分間粉砕処理した難造粒性微粉原料と生石灰を使用し、上記した基本条件で造粒物を製造した結果である。
なお、粉砕処理後(粉砕直後)の粉砕物の各温度は、いずれも常温(25℃)であった。
【0038】
一方、
図3の「原料+生石灰混合粉砕」は、造粒を強化する目的で行った結果であり、詳細には、難造粒性微粉原料に、生石灰を外掛けで2質量%添加し、難造粒性微粉原料の水分が3.5質量%となるように加水した混合物を、ボールミルを用いて5分間粉砕処理した後、この粉砕処理した粉砕物をアイリッヒミキサ(撹拌機)で撹拌処理した。なお、この撹拌処理は、水分が7質量%になるように加水した難造粒性微粉原料を、撹拌羽根の周速を1m/秒として2分間行った。
そして、上記した撹拌処理した撹拌物をドラムミキサーに装入し、100回転させて造粒処理した。
なお、粉砕処理後(粉砕直後)の粉砕物の温度は、常温(25℃)であった。
【0039】
上記した各種試験により得られた造粒物を焼結機に装入して焼成し、焼結生産性を調査した。なお、
図3の縦軸の生産性指数とは、各種試験で得られた造粒物について、焼成速度(kg/時間)と歩留(質量%)の積(焼結生産性)を求め、「原料、生石灰個別粉砕」で得られた焼結生産性を「1」として算出した値である(以下、同様)。
図3から、難造粒性微粉原料と生石灰の事前粉砕を行わない場合(「粉砕なし」)や、難造粒性微粉原料のみを粉砕した場合(「原料のみ粉砕」)は、焼結生産性が低位であった。
これに対し、生石灰のみを粉砕した場合(「生石灰のみ粉砕」)は、難造粒性微粉原料と生石灰を個別に事前粉砕した場合(「原料、生石灰個別粉砕」)と同程度の焼結生産性を示した。
【0040】
つまり、難造粒性微粉原料のみを粉砕しても、微粒子の生成は僅かであり、焼結生産性の改善効果も小さいと考えられる。
一方、生石灰を粉砕することで、生石灰の消化と分散性が改善されるため、「粉砕なし」と比較すれば、焼結生産性が改善されると考えられる。このため、「原料、生石灰個別粉砕」も、生石灰の粉砕作用により、焼結生産性は「生石灰のみ粉砕」と同程度になると考えられる。
これに対し、難造粒性微粉原料と生石灰を混合して粉砕した場合(「原料+生石灰混合粉砕」)は、「原料、生石灰個別粉砕」と比較して、焼結生産性の明確な改善が認められた。この要因としては、生石灰の細粒化による消化促進に加え、粉砕時の強撹拌作用による生石灰の溶解や分散促進の作用などが考えられる。
【0041】
なお、上記した試験では、難造粒性微粉原料の全てを、生石灰と共に粉砕処理した後、撹拌機で撹拌処理してドラム式造粒機で造粒処理した。しかし、前記した易造粒性原料(生石灰:外掛けで2質量%(同じ割合)添加)を、a)上記した粉砕処理した粉砕物と共に撹拌機に追加供給して(粉砕物と合流させて)撹拌処理し、更にドラム式造粒機で造粒処理しても、また、b)上記した粉砕処理後に撹拌機で撹拌処理した撹拌物と共にドラム式造粒機に追加供給して(撹拌物と合流させて)造粒処理しても、上記試験と同様の効果が得られた。
この要因としては、追加供給する易造粒性原料に、難造粒性微粉原料と比較して500μmオーバーの粒子が多く含まれ、擬似粒子の核となる粒子が増えたことや、また、難造粒性微粉原料と比較して10μmアンダーの粒子が多く含まれるため、擬似粒子製造の際の核粒子への微粉の付着を抑制できたことなどが考えられる。
【0042】
ここで、追加供給する易造粒性原料は、ドラム式造粒機に供給する全原料(難造粒性微粉原料と易造粒性原料の合計量)の0又は0を超え90質量%未満程度にすると、本発明の効果が顕著に得られる。
これは、易造粒性原料が90質量%以上(難造粒性微粉原料が10質量%以下)の場合でも、本発明の効果は認められるものの、造粒性の良い易造粒性原料の比率が高くなるため、改善代が小さいことによる。
なお、以上に示した試験においては、生石灰の代わりに、又は生石灰と共に、消石灰を添加した場合でも、同様の効果が確認された。この添加する生石灰や消石灰は、従来から用いられている割合(即ち、生石灰換算で乾燥状態の焼結原料A群の質量の0.5質量%以上6質量%以下の量)で、効果を奏する。
【0043】
また、ここでは、上記した粉砕処理に使用する粉砕機に、ボールミルを使用した場合について説明したが、粉砕処理できる構成であれば、これに限定されるものではなく、例えば、ロッドミル、ローラー式粉砕機、ハンマークラッシャー等でも、同様の効果が得られる。なお、粉砕機には、例えば、上記したボールミルやロッドミルのように、撹拌機能を有するものもあるため、この場合は、必要に応じて、撹拌機能を有する粉砕機で粉砕処理と撹拌処理を行った処理物を、別途撹拌機で撹拌処理する(撹拌機を介する)ことなく、造粒機で造粒処理することもできる。
ここで、粉砕処理の時間は、粉砕処理したことによる効果が得られたこと(例えば、
図3に示すような生産性指数の向上効果)をもとに、適宜設定できるが、例えば、ボールミル、ロッドミル、及びハンマークラッシャーで30秒以上、ローラー式粉砕機で1パス以上、処理するのがよい。
【0044】
次に、難造粒性微粉原料と生石灰を混合粉砕する際(粉砕処理直後)の粉砕物の温度と、粉砕処理前の難造粒性微粉原料の水分量(原料水分)が、焼結生産性に及ぼす影響について、
図4を参照しながら説明する。
試験は、前記した
図3と同様、結晶水を4質量%以上含む高結晶水鉱石を30〜60質量%配合した難造粒性微粉原料(500μmアンダーが50質量%以上かつ10μmアンダーが5質量%以下)に、生石灰を外掛けで2質量%添加し、難造粒性微粉原料の水分が3〜10質量%となるように加水し、これをボールミルを用いて粉砕処理した。そして、この粉砕物を、アイリッヒミキサ(撹拌羽根の周速:1m/秒)で2分間撹拌処理した後、この撹拌物をドラムミキサーに装入して、100回転させて造粒処理した。なお、粉砕物の温度は、ボールミルによる粉砕時間やボールミルの回転数の変更により調整し(生石灰の発熱もある)、また、難造粒性微粉原料の水分量は、粉砕機の入り側の難造粒性微粉原料の水分割合(難造粒性微粉原料と水の合計質量を100質量%とした場合の水分の質量%)の変更により調整した。
【0045】
なお、
図4の縦軸の生産性指数とは、各条件で得られた造粒物について、焼成速度(kg/時間)と歩留(質量%)の積(焼結生産性)を求め、
図3に記載の「原料、生石灰個別粉砕」で得られた焼結生産性を「1」として算出した値である。
図4から、粉砕処理前の難造粒性微粉原料の水分量の変更に関係なく、難造粒性微粉原料の粉砕処理後の温度が、常温である25℃から40℃、50℃、更に80℃へと上昇するに伴い、焼結生産性の改善が確認された。特に、常温から40℃へと上昇させた場合の効果が顕著であった。
この要因としては、粉砕時(粉砕中)の温度上昇により、消化し溶解した生石灰(消石灰)が微細に析出して分散することが考えられる。
なお、粉砕処理後の温度を80℃とした場合は、水分の蒸発が著しくなり、焼結生産性は低下した。
【0046】
また、難造粒性微粉原料の粉砕処理後の温度の変更に関係なく、粉砕処理前の難造粒性微粉原料の水分が3質量%(△印)の場合に対して、5質量%(□印)、更には10質量%(○印)へと増加させることで、焼結生産性が改善された。特に、難造粒性微粉原料の水分量を3質量%から5質量%へと上昇させた場合に、効果の上昇率は大きくなったが、10質量%超では効果の更なる上昇がみられなくなった。
この要因としては、水分の増加により、生石灰の溶解や析出媒体が増えることとなり、分散性が改善されることが考えられる。
なお、難造粒性微粉原料の水分量が3質量%まで低下することは、天候にもよるが、希な事象である。
【0047】
以上のことから、粉砕処理後の粉砕物の温度を40℃以上80℃以下(更には、下限を45℃、上限を75℃)にすることが好ましい。
また、粉砕処理前の焼結原料A群の水分量は、5質量%以上10質量%以下(更には、下限を6質量%、上限を9質量%)にすることが好ましい。なお、撹拌処理や造粒処理で添加する水分量は、生石灰の消化(消石灰化)や消石灰を溶解する効果が得られる量で良く、従来から撹拌や造粒で用いられる水分量(例えば、撹拌処理や造粒処理する焼結原料と水の合計質量を100質量%とした場合の4〜12質量%)で、効果が得られる。
以上に示した試験においては、生石灰の代わりに、又は生石灰と共に、消石灰を添加した場合でも、同様の効果が確認された。この添加する生石灰や消石灰は、従来から用いられている割合(即ち、生石灰換算で乾燥状態の焼結原料A群の質量の0.5質量%以上6質量%以下の量)で、効果を奏する。
【0048】
続いて、生石灰の添加割合と粉砕方法と撹拌機の撹拌羽根の周速(撹拌速度)が、焼結生産性に及ぼす影響について、
図5を参照しながら説明する。
試験に用いた原料は、前記した
図3と同様、結晶水を4質量%以上含む高結晶水鉱石を30〜60質量%配合した難造粒性微粉原料(500μmアンダーが50質量%以上かつ10μmアンダーが5質量%以下)である。
この原料に生石灰をそれぞれ、外掛けで0.5質量%、1.0質量%、2.0質量%、6.0質量%添加し、これをボールミルを用いて5分間粉砕処理した。なお、粉砕処理前の原料水分は3質量%であったため、6質量%に加水し、粉砕処理後の粉砕物の温度を40℃とした。
【0049】
そして、この粉砕物を、高速撹拌ミキサーで混合撹拌した。なお、撹拌時における撹拌羽根の周速(撹拌速度)は、1m/秒(△印)、2m/秒(□印)、3m/秒(○印)にそれぞれ調整して撹拌処理した。また、撹拌時の水分量は、撹拌処理する原料と水分との合計量に対して、7質量%となるように調整した。
この撹拌処理した撹拌物を、更にドラムミキサーへ投入し、4分間造粒処理した。
一方、比較例(×印)として、上記した粒度構成の難造粒性微粉原料と生石灰をそれぞれ個別に粉砕処理し、この粉砕処理した難造粒性微粉原料に、粉砕処理した生石灰を上記した4条件の量添加し、これを高速撹拌ミキサーで混合撹拌(周速:1m/秒)した後、ドラムミキサーで4分間造粒処理した造粒物を用いた。
評価は、上記した方法で得られた造粒物を、焼結機に充填し焼成して、焼成速度(kg/時間)と歩留(質量%)の積で、焼結生産性(kg/時間)を評価し、上記した比較例の焼結生産性を「1.0」として、各条件の焼結生産性を比較評価した。
【0050】
図5から、撹拌速度の変更に関係なく、難造粒性微粉原料と生石灰を混合して粉砕処理した場合(△印、□印、○印)は、ベース条件の個別粉砕した場合(×印)よりも、生石灰の添加割合が0.5質量%から6質量%の範囲で、焼結生産性が改善されることが確認された(全ての条件で、焼結生産性が1超)。
更に、撹拌速度の影響については、撹拌羽根の周速が1m/秒(△印)に対して、2m/秒(□印)にした方が改善効果が大きく、更に3m/秒(○印)では、改善効果が飽和する傾向が確認された。
以上の結果から、焼結原料A群に添加するバインダーを、生石灰換算で焼結原料A群の質量の0.5質量%以上6質量%以下の量添加することを規定した。
【0051】
また、粉砕処理後の粉砕物を、撹拌機を用いて撹拌処理するに際しては、撹拌機の撹拌羽根の周速を2m/秒(更には、3m/秒)以上にすることが好ましい。
なお、撹拌機は、撹拌羽根の周速を2m/秒以上にできるものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、前記した万能ミキサー等を使用できる。ここで、撹拌羽根の周速の上限値は、上記した記載から特に限定していないが、世の中で一般的に使用されている撹拌機を考慮すれば、例えば、35m/秒程度である。また、撹拌羽根の直径は、実験室で使用するものも含めて、0.1〜1.5m程度である。なお、撹拌羽根の直径とは、回転時の撹拌羽根の外径を意味し、例えば、回転軸の周囲周方向に複数の羽根が設けられている場合は、回転軸を挟んでその両側に設けられた羽根の先端間の距離を意味する。
【0052】
次に、難造粒性微粉原料と易造粒性原料との混合時期について説明する。
試験には、500μmアンダーが50質量%以上かつ10μmアンダーが5質量%以下の難造粒性微粉原料70質量%と、500μmアンダーが50質量%未満又は10μmアンダーが5質量%超の易造粒性原料30質量%を用いた。
ここで、試験条件1として、難造粒性微粉原料、易造粒性原料、及び生石灰の全てを、ボールミルで粉砕処理した後、高速撹拌ミキサーで撹拌処理して、更にドラムミキサーで造粒処理した。また、試験条件2として、難造粒性微粉原料に生石灰を添加し、ボールミルで粉砕処理した後、この粉砕物に易造粒性原料を加えて高速撹拌ミキサーで撹拌処理し、更にドラムミキサーで造粒処理した。
【0053】
なお、生石灰の添加量は、難造粒性微粉原料と易造粒性原料の合計量に対して、外掛けで2.0質量%とした。
また、ボールミルでの粉砕処理は、処理時間を5分間とした。このとき、粉砕処理前の原料の水分量を3質量%から6質量%へと加水し、粉砕処理後の原料温度を40℃とした。
そして、高速撹拌ミキサーでの撹拌処理は、撹拌時における撹拌羽根の周速を2m/秒とした。このとき、撹拌処理物の水分量は、撹拌処理する原料と水分量との合計量に対して7質量%となるように調整した。
更に、ドラムミキサーでの造粒処理は、処理時間を4分間とした。
評価は、上記した方法で得られた造粒物を、焼結機に充填し焼成して、焼成速度(kg/時間)と歩留(質量%)の積で焼結生産性(kg/時間)を算出して行った。
【0054】
難造粒性微粉原料のみに生石灰を加え、その粉砕処理後に易造粒性原料を加えて処理した場合は、難造粒性微粉原料と生石灰と易造粒性原料の全量を粉砕処理した場合と比較して、約5%の焼結生産性の改善効果が確認された。これは、難造粒性微粉原料のみに生石灰を加えて粉砕処理することで、難造粒性微粉原料の周囲に、選択的に生石灰が配置されることによる造粒強化効果や、粉砕負荷を低減することにより生石灰の粉砕性が向上する効果と考えられる。
従って、難造粒性微粉原料と生石灰や消石灰とを混合し粉砕処理した後に、これに易造粒性原料を加えて撹拌処理し、更に造粒処理することが好ましいが、難造粒性微粉原料と生石灰や消石灰とを混合し粉砕処理して撹拌処理した後、これに易造粒性原料を加えて造粒処理することもできる。
【0055】
上記した方法で得られた造粒物を、焼結機のパレットに装入することで、焼結鉱を製造できる。
以上のことから、本発明の焼結原料の事前処理方法を使用することで、焼結原料の造粒性を向上させて、焼結鉱の生産性を維持、更には向上しつつ、難造粒性を有する微粉原料を使用できることを確認できた。
【0056】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組合せて本発明の焼結原料の事前処理方法を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。