【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、光透過性基材及びハードコート層を有し、上記ハードコート層は、イソシアヌル骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート、官能基数が3つ以上、かつ、分子内にOH基を有する構造を有する化合物、及び、ブロッキング防止剤を含有するハードコート層用組成物の硬化物からな
り、上記ブロッキング防止剤は、平均一次粒径が100〜600nmであることを特徴とするハードコートフィルムである。
上記イソシアヌル骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートは、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体でイソシアヌル骨格を形成したイソシアヌレートの3箇所の末端イソシアネートに、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートを反応させたウレタンアクリレートであることが好ましい。
上記官能基数が3つ以上、かつ、分子内にOH基を有する構造を有する化合物は、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートであることが好ましい。
ハードコート層用組成物は、更に、官能基数が6以下のウレタン(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。
上記ハードコート層用組成物は、更に、(メタ)アクリルポリマーを含有することが好ましい。
上記ハードコート層用組成物は、更に、レベリング剤を含有することが好ましい。
本発明はまた、偏光素子を備えてなる偏光板であって、上記偏光素子の表面に上述のハードコートフィルムを備えることを特徴とする偏光板でもある。
本発明はまた、上記最表面に上述のハードコートフィルム、又は、上述の偏光板を備えることを特徴とする画像表示装置でもある。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0009】
本発明は、光透過性基材及びハードコート層を有し、上記ハードコート層は、イソシアヌル骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートを含有するハードコート層用組成物の硬化物からなることを特徴とするハードコートフィルムである。このため、本発明のハードコートフィルムは、高い硬度と優れた復元性を有する。この「高い硬度」とは、具体的には、JIS K5600−5−4(1999)で規定される鉛筆硬度試験で「3H」以上のことである。
【0010】
本発明のハードコートフィルムは、光透過性基材及びハードコート層を有する。
上記ハードコート層は、イソシアヌル骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートを含有するハードコート層用組成物の硬化物からなる。
ここで、本明細書では、(メタ)アクリレートは、「アクリレート」及び「メタクリレート」を表す。
上記ハードコート層を形成する樹脂成分として、イソシアヌル骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートを適用することにより、ハードコート層に高い硬度と優れた復元性とを付与することができる。
上記イソシアヌル骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートとしては、ジイソシアネートからなるイソシアヌレートの末端のイソシアネート基に、多官能モノマーを反応させたウレタン(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0011】
上記多官能モノマーとしては、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DPPA)、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0012】
上記イソシアヌル骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートは、官能基数が9以上であることが好ましい。上記官能基数が9未満であると、充分な硬度が得られないおそれがある。
上記官能基数は、12以上であることがより好ましく、15であることが更に好ましい。
【0013】
上記イソシアヌル骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートは、重量平均分子量が1500〜3000であることが好ましい。
1500未満であると、充分な硬度が得られないおそれがある。3000を超えると、ハードコート層用組成物の粘度が上昇して塗工が困難となったり、ハードコート層の硬化反応に阻害が生じ充分な硬度が得られないおそれがある。
上記重量平均分子量は、1800〜2500であることがより好ましい。
なお、上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によりポリスチレン換算で求めた値である。
【0014】
上記イソシアヌル骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)の三量体もしくはイソホロンジイソシアネート(IPDI)の三量体が好ましく、中でも、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)の三量体でイソシアヌル骨格を形成したイソシアヌレートの3箇所の末端イソシアネートに、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DPPA)を反応させたウレタンアクリレートが好ましい。このようなウレタンアクリレートは、官能基数が多く、分子量にある程度の大きさがあり、更に骨格にイソシアヌル骨格を有するため、高い硬度を実現し得るとともに、ウレタンアクリレートの特徴としての弾性を有し、例えば、ハードコートフィルムの鉛筆硬度試験による表面の凹みの回復といった復元性も実現し得る。
【0015】
上記イソシアヌル骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートの含有量は、ハードコート層用組成物のバインダー樹脂成分中、固形分で30〜50質量%であることが好ましい。30質量%未満であると、充分な硬度や復元性が得られないおそれがある。50質量%を超えると、ハードコートフィルムのカールやダメージ(熱ジワ)が発生しやすくなるおそれがある。上記含有量は、35〜50質量%であることがより好ましい。
なお、上記ハードコートフィルムのカールとは、ハードコート層形成時の紫外線硬化反応によって硬化収縮が起こり、塗膜が収縮する為に、塗膜(ハードコート層)と基材との間に応力差が生じて塗膜側にフィルムがカールする現象をいう。
【0016】
上記ハードコート層を形成するためのハードコート層用組成物は、更に、硬さを維持したまま、ブロッキング防止性を付与する為に、官能基数が3つ以上、かつ、分子内にOH基を有する構造を有する化合物を組成物中に含有することが好ましい。特にペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。ハードコート層用組成物中には、通常、ブロッキング防止性を付与する材料(ブロッキング防止剤)を添加するが、その効果をより発現させる為に、ブロッキング防止剤を塗膜の表面へ集中させることが好ましい。官能基数が3つ以上、かつ、分子内にOH基を有する構造を有する化合物がハードコート層用組成物中に存在すると、ブロッキング防止剤が塗膜全体に分散せずに、表面に集まりやすくなり、ブロッキング防止性を発現しやすく、かつ硬さを維持することができる。
すなわち、上記官能基数が3つ以上、かつ、分子内にOH基を有する構造を有する化合物、好ましくは、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートを含有することにより、ハードコートフィルム同士が貼り付くといったブロッキングを防止することができる。
【0017】
上記ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートの含有量は、ハードコート層用組成物のバインダー樹脂成分中、固形分で15〜35質量%であることが好ましい。15質量%未満であると、ブロッキングが発生するおそれがある。35質量%を超えると、充分な硬度が得られないおそれがある。上記含有量は、20〜35質量%であることがより好ましい。
【0018】
上記ハードコート層を形成するためのハードコート層用組成物は、更に、官能基数が6以下のウレタン(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。
上述したイソシアヌル骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートに加え、官能基数が比較的少ないウレタン(メタ)アクリレートを併用することにより、高い鉛筆硬度を維持しながら、かつ、ハードコートフィルムのカールを防止することができる。
上記官能基数が6以下のウレタン(メタ)アクリレートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)及び/又はイソホロンジイソシアネート(IPDI)からなるウレタン(メタ)アクリレートであって、官能基数2〜3の多官能アクリレートモノマーを付加させたものであることが好ましい。
【0019】
上記官能基数が6以下のウレタン(メタ)アクリレートの含有量は、ハードコート層用組成物のバインダー樹脂成分中、固形分で15〜35質量%であることが好ましい。15質量%未満であると、ハードコートフィルムのカールが発生するおそれがある。35質量%を超えると、充分な硬度が得られないおそれがある。
【0020】
上記ハードコート層用組成物は、また、上述した樹脂成分の他に、(メタ)アクリルポリマーを含有することが好ましい。上記(メタ)アクリルポリマーを含有することにより、ハードコートフィルムのカールやダメージ(熱ジワ)を防止することができる。
上記ダメージ(熱ジワ)とは、ハードコート層形成時の紫外線硬化反応による発熱や、該発熱により急激に加熱され、紫外線照射が一気に終了することにより急激に冷却されることによって、硬化収縮とあいまってハードコート層と基材とが流れ方向にスジ状に波打つ現象をいう。
【0021】
上記(メタ)アクリルポリマーは、重量平均分子量が1万〜3万であることが好ましい。上記重量平均分子量が1万未満であると、充分なカール防止性が得られないおそれがある。3万を超えると、塗膜密着性が低下したり、ハードコート層用組成物の粘度が上昇して塗工面が悪化するおそれがある。上記重量平均分子量は、下限が1万であることがより好ましく、上限が2万であることがより好ましい。
上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)の方法により得られる値である。
【0022】
上記(メタ)アクリルポリマーは、アクリル二重結合当量が200〜300であることが好ましい。上記アクリル二重結合当量が200未満であると、合成することも難しく、また、ガラス転移温度が低下してしまうおそれがある。300を超えると、二重結合が少なく、硬化させて得られるハードコート層の硬度や耐擦傷性が低下するおそれがある。
上記アクリル二重結合当量は、下限が210であることがより好ましく、上限が270であることがより好ましい。
上記アクリル二重結合当量は、配合したモノマーから算出される二重結合量と重量平均分子量により求めた値である。
【0023】
上記(メタ)アクリルポリマーは、上記重量平均分子量と上記アクリル二重結合当量との比(重量平均分子量/アクリル二重結合当量)が50〜80であることが好ましい。
上記比が50未満であると、硬度、耐擦傷性が悪化するおそれがある。80を超えると、密着性が悪化するおそれがある。
上記比は、下限が50であることがより好ましく、上限が70であることがより好ましい。
【0024】
上記(メタ)アクリルポリマーは、ガラス転移温度(Tg)が40〜100℃であることが好ましい。ガラス転移温度が40℃未満であると、硬度、耐擦傷性が不充分となるおそれがある。100℃を超えると、ハードコート層用組成物の粘度が上昇したり、上記組成物がゲル化したりするおそれがある。上記ガラス転移温度の下限は、50℃であることがより好ましく、上限は70℃であることがより好ましい。
上記ガラス転移温度は、ポリマーを構成するモノマーのTgから計算する方法により得られる値である。
【0025】
上記(メタ)アクリルポリマーは、酸価が1mgKOH/g以下であることが好ましい。
上記酸価が、1mgKOH/gを超えると、所望の硬度を有するハードコート層を得ることができないおそれがある。また、ブロッキング防止性が劣る可能性がある。
上記酸価は、0.8mgKOH/g以下であることがより好ましい。
【0026】
上記(メタ)アクリルポリマーは、ハードコート層用組成物のバインダー樹脂中、固形分で5〜20質量%含有されることが好ましい。5質量%未満であると、カール防止性を発現できず、かつダメージ(熱ジワ)が発生するおそれがある。20質量%を超えると、ハードコート層の硬度が低下するおそれがある。上記(メタ)アクリルポリマーの含有量は10〜20質量%であることがより好ましい。
【0027】
上記ハードコート層用組成物は、更に、レベリング剤を含有することが好ましい。
レベリング剤を含有することにより、ハードコート層の平面性を良好にすることができる。
また、ブロッキング防止剤と組み合わせて使用した場合、ブロッキング防止性をより向上させることができる。
上記レベリング剤としては、例えば、フッ素系レベリング剤、シリコーン系レベリング剤、アクリル系レベリング剤等の公知のものを挙げることができる。なかでも、少ない添加量でのインキの安定性、塗工面の安定性を確保できる点で、フッ素系レベリング剤が好ましい。
【0028】
上記レベリング剤の含有量は、ハードコート層用組成物の樹脂固形分100質量部に対して0.1〜1質量部であることが好ましい。0.1質量部未満であると、塗膜の平面性が悪くなり、ヘイズのある塗膜やムラが生じやすく、ブロッキング防止性が十分に発揮されないおそれがある。1質量部を超えると、ハードコート層用組成物の分散性やポットライフが悪くなりやすく、ブロッキング防止剤の凝集や塗膜への悪影響でハードコート層のヘイズが高くなるおそれがある。
【0029】
上記ハードコート層用組成物はまた、ブロッキング防止剤を含有していてもよい。
上記ブロッキング防止剤としては、反応基を持たない、平均一次粒径が100〜600nmのシリカ又はスチレン等の粒子を挙げることができる。
上記平均一次粒径が100nm未満であると、ブロッキング防止性が発揮されないおそれがある。600nmを超えると、ヘイズが高くなるおそれがある。上記平均一次粒径は、100〜350nmであることがより好ましい。
なお、上記平均一次粒径はメチルイソブチルケトン5重量%分散液の状態でレーザー回折散乱法粒度分布測定装置により測定して得られる値である。
【0030】
上記ブロッキング防止剤の含有量は、ハードコート層用組成物の樹脂固形分100質量部に対して0.5〜3質量部であることが好ましい。0.5質量部未満であると、ブロッキング防止性が発揮されないおそれがある。3質量部を超えると、分散性が著しく悪化し、凝集・ゲル化の原因となり、結果としてハードコートフィルム表面の外観上の欠点やヘイズの上昇につながるおそれがある。
【0031】
上記ハードコート層用組成物は、更に、光重合開始剤を含有することが好ましい。
上記光重合開始剤としては、公知のものであれば特に限定されず、例えば、アセトフェノン類(例えば、商品名イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製の1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、商品名イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製の2−メチル−1〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モリフォリノプロパン−1−オン)、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタセロン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等を挙げることができる。なかでも、アセトフェノン類であることが好ましい。
【0032】
上記光重合開始剤の含有量は、ハードコート層用組成物中の樹脂固形分100質量部に対して、1〜7質量部であることが好ましい。1質量部未満であると、光重合開始剤の量が不足し、硬化不足となるおそれがある。7質量部を超えると、光重合開始剤が過剰となり、過剰であることによる光重合反応の違いが生じ、かえって硬度不足を引き起こす、溶け残りによる欠点が生じる、といったおそれがある。
上記光重合開始剤の含有量は、上記樹脂固形分100質量部に対して2〜5質量部であることがより好ましい。
【0033】
上記ハードコート層用組成物は、上述した成分以外に、必要に応じて他の成分を更に含んでいてもよい。
上記他の成分としては、熱重合開始剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、架橋剤、硬化剤、重合促進剤、粘度調整剤、帯電防止剤、酸化防止剤、防汚剤、スリップ剤、屈折率調整剤、分散剤等を挙げることができる。これらは公知のものを使用することができる。
【0034】
上記ハードコート層用組成物は、上述のイソシアヌル骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、官能基数6以下のウレタン(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルポリマー、及び、レベリング剤、ブロッキング剤、光重合開始剤、並びに、他の成分を溶媒中に混合分散させて調製することができる。
上記混合分散は、ペイントシェーカー、ビーズミル、ニーダー等の公知の装置を使用して行うとよい。
【0035】
上記溶媒としては、アルコール(例、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール、ベンジルアルコール、PGME、エチレングリコール)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ヘプタノン、ジイソブチルケトン、ジエチルケトン)、脂肪族炭化水素(例、ヘキサン、シクロヘキサン)、ハロゲン化炭化水素(例、メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素)、芳香族炭化水素(例、ベンゼン、トルエン、キシレン)、アミド(例、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン)、エーテル(例、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン)、エーテルアルコール(例、1−メトキシ−2−プロパノール)等を挙げることができる。
なかでも、上記溶媒としては、上述した樹脂成分及び他の添加剤を溶解又は分散させ、上記ハードコート層用組成物を好適に塗工できる点で、メチルイソブチルケトン、及び/又は、メチルエチルケトンが好ましい。ことに、光透過性基材にトリアセチルセルロースを使用する場合においては、光透過性基材への浸透性があることにより上述した樹脂成分と光透過性基材との密着性を上げられる、かつ干渉縞を防止できる点からメチルエチルケトンを含むことがより好ましい。
【0036】
上記ハードコート層用組成物は、総固形分が30〜45%であることが好ましい。30%より低いと、残留溶剤が残ったり、白化が生じるおそれがある。45%を超えると、ハードコート層用組成物の粘度が高くなり、塗工性が低下して表面にムラやスジが出たり、干渉縞が発生するおそれがある。上記固形分は、35〜45%であることがより好ましい。
【0037】
上記ハードコート層は、上記ハードコート層用組成物の硬化物からなる。すなわち、上記ハードコート層は、上記ハードコート層用組成物を、後述する光透過性基材上に塗布して塗膜を形成し、必要に応じて乾燥させた後、上記塗膜を硬化させることにより形成することができる。
【0038】
上記塗布して塗膜を形成する方法としては、例えば、スリット法、グラビア法、スピンコート法、ディップ法、スプレー法、ダイコート法、バーコート法、ロールコーター法、メニスカスコーター法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、ビードコーター法等の公知の各種方法を挙げることができる。
【0039】
硬化後の塗布量は、5〜15g/m
2であることが好ましい。5g/m
2未満であると、所望の硬度が得られないおそれがある。15g/m
2を超えると、カールやダメージ(熱ジワ)の防止が不充分となるおそれがある。上記塗布量は、6〜10g/m
2であることがより好ましい。
【0040】
上記乾燥の方法としては、特に限定されないが、一般的に30〜120℃で3〜120秒間乾燥を行うとよい。
【0041】
上記塗膜を硬化させる方法としては、上記組成物の内容等に応じて公知の方法を適宜選択すれば良い。例えば、上記組成物が紫外線硬化型のものであれば、塗膜に紫外線を照射することにより硬化させれば良い。
上記紫外線を照射する場合は、紫外線照射量が80mJ/cm
2以上であることが好ましく、100mJ/cm
2以上であることがより好ましく、130mJ/cm
2以上であることが更に好ましい。
【0042】
上記ハードコート層は、層厚みが5〜15μmであることが好ましい。
5μm未満であると、所望の硬度が得られないおそれがある。15μmを超えると、カールやダメージ(熱ジワ)の防止が不充分となるおそれがある。上記ハードコート層の層厚みは、下限が5μmであることがより好ましく、上限が10μmであることがより好ましい。
上記層厚みは、ハードコート層の断面を、電子顕微鏡(SEM、TEM、STEM)で観察することにより測定して得られた値である。
【0043】
本発明のハードコートフィルムは、光透過性基材を有する。
上記光透過性基材は、平滑性、耐熱性を備え、機械的強度に優れたものが好ましい。
上記光透過性基材を形成する材料の具体例としては、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、ポリエーテルケトン、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、又は、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂が挙げられ、好ましくはポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、トリアセチルセルロースが挙げられる。
【0044】
上記光透過性基材としては、また、脂環構造を有した非晶質オレフィンポリマー(Cyclo−Olefin−Polymer:COP)フィルムも使用することができる。これは、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素系重合体樹脂等が用いられている基材であり、例えば、日本ゼオン社製のゼオネックスやゼオノア(ノルボルネン系樹脂)、住友ベークライト社製スミライトFS−1700、JSR社製アートン(変性ノルボルネン系樹脂)、三井化学社製アペル(環状オレフィン共重合体)、Ticona社製のTopas(環状オレフィン共重合体)、日立化成工業社製オプトレッツOZ−1000シリーズ(脂環式アクリル樹脂)等が挙げられる。また、トリアセチルセルロースの代替基材として旭化成ケミカルズ社製のFVシリーズ(低複屈折率、低光弾性率フィルム)も好ましい。
【0045】
上記光透過性基材として、上記熱可塑性樹脂を柔軟性に富んだフィルム状体として使用することが好ましいが、硬化性が要求される使用態様に応じて、これら熱可塑性樹脂の板を使用することも可能であり、又は、ガラス板の板状体のものを使用してもよい。
【0046】
上記光透過性基材の厚さとしては、20〜300μmであることが好ましく、より好ましくは上限が200μmである。光透過性基材が板状体の場合にはこれらの厚さを超える厚さであってもよい。
また、上記光透過性基材は、その上に防眩層を形成するのに際して、接着性向上のために、コロナ放電処理、酸化処理等の物理的な処理のほか、アンカー剤もしくはプライマーと呼ばれる塗料の塗布を予め行ってもよい。
【0047】
本発明のハードコートフィルムは、硬度が、JIS K5600−5−4(1999)による鉛筆硬度試験(荷重4.9N)において、3H以上であることが好ましく、4H以上であることがより好ましい。
【0048】
本発明のハードコートフィルムは、全光線透過率が90%以上であることが好ましい。90%未満であると、ディスプレイ表面に装着した場合において、色再現性や視認性を損なうおそれがある他、所望のコントラストが得られないおそれがある。上記全光線透過率は、91%以上であることがより好ましい。
上記全光線透過率は、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所社製、製品番号;HM−150)を用いてJIS K−7361に準拠した方法により測定することができる。
【0049】
また、本発明のハードコートフィルムは、ヘイズが1%以下であることが好ましい。1%を超えると、所望の光学特性が得られず、本発明のハードコートフィルムを画像表示表面に設置した際の視認性が低下する。
上記ヘイズは、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所社製、製品番号;HM−150)を用いてJIS K−7136に準拠した方法により測定することができる。
【0050】
本発明のハードコートフィルムは、上述の光透過性基材上に、上述したハードコート層用組成物を用いてハードコート層を形成することにより製造することができる。
【0051】
上記ハードコート層用組成物を構成する材料や、ハードコート層を形成する方法としては、上述したハードコート層の形成において説明したものと同様の材料や方法が挙げられる。
【0052】
本発明のハードコートフィルムは、上述のように、特定の樹脂成分を含有するハードコート層用組成物を用いて形成されたハードコート層を有する。そのため、本発明のハードコートフィルムは、高い硬度及び優れた復元性を有する。
また、本発明のハードコートフィルムは、上述した樹脂成分のみならず、上述の他の樹脂成分や添加剤を含有したハードコート層用組成物の硬化物からなるハードコート層を有することにより、上述した高い硬度と優れた復元性とを有するだけでなく、カールやダメージの防止や、ブロッキング防止、光学特性に優れたハードコートフィルムとすることができる。
【0053】
また、偏光素子を備えてなる偏光板であって、上記偏光素子の表面に、光透過性基材を貼り合わせる等して本発明のハードコートフィルムを備えることを特徴とする偏光板も本発明の一つである。
【0054】
上記偏光素子としては特に限定されず、例えば、ヨウ素等により染色し、延伸したポリビニルアルコールフィルム、ポリビニルホルマールフィルム、ポリビニルアセタールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体系ケン化フィルム等を使用することができる。上記偏光素子と本発明のハードコートフィルムとのラミネート処理においては、光透過性基材にケン化処理を行うことが好ましい。ケン化処理によって、接着性が良好になり帯電防止効果も得ることができる。
【0055】
本発明はまた、最表面に上記ハードコートフィルム又は上記偏光板を備えてなる画像表示装置でもある。上記画像表示装置は、LCD、PDP、FED、ELD(有機EL、無機EL)、CRT、タッチパネル、タブレットPC、電子ペーパー等であってもよい。
【0056】
上記の代表的な例であるLCDは、透過性表示体と、上記透過性表示体を背面から照射する光源装置とを備えてなるものである。本発明の画像表示装置がLCDである場合、この透過性表示体の表面に、本発明のハードコートフィルム又は本発明の偏光板が形成されてなるものである。
【0057】
本発明が上記ハードコートフィルムを有する液晶表示装置の場合、光源装置の光源はハードコートフィルムの下側(基材側)から照射される。なお、STN型の液晶表示装置には、液晶表示素子と偏光板との間に、位相差板が挿入されてよい。この液晶表示装置の各層間には必要に応じて接着剤層が設けられてよい。
【0058】
上記PDPは、表面ガラス基板と当該表面ガラス基板に対向して間に放電ガスが封入されて配置された背面ガラス基板とを備えてなるものである。本発明の画像表示装置がPDPである場合、上記表面ガラス基板の表面、又はその前面板(ガラス基板又はフィルム基板)に上述したハードコートフィルムを備えるものでもある。
【0059】
本発明はまた、電圧をかけると発光する硫化亜鉛、ジアミン類物質等の発光体をガラス基板に蒸着し、基板にかける電圧を制御して表示を行うELD装置、又は、電気信号を光に変換し、人間の目に見える像を発生させるCRTなどの画像表示装置であってもよい。この場合、上記のような各画像表示装置の最表面又はその前面板の表面に上述したハードコートフィルムを備えるものである。
【0060】
本発明のハードコートフィルムは、いずれの場合も、LCD、PDP、FED、ELD(有機EL、無機EL)、CRT、タッチパネル、タブレットPC、電子ペーパー等のディスプレイ表示に使用することができる。特に、CRT、液晶パネル、PDP、ELD等の高精細画像用ディスプレイの表面に好適に使用することができる。