(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御回路は、前記補正ビットに応じた初期値の前記第1信号及び前記第2信号を生成し、前記第1の容量素子及び前記第2の容量素子と前記比較回路の間のノードに第1端子が接続されたスイッチを制御して前記第1の容量素子及び前記第2の容量素子の電荷を初期設定することを特徴とする請求項1に記載のアナログ−デジタル変換回路。
前記補正回路は、前記合計値から初期値を減算した結果の値のうち、下位(N1+N2A)ビットを除く上位側のビットに基づいて、前記減算した結果の値の下位(N1+N2A)ビットを補正して前記デジタル出力信号を生成することを特徴とする請求項2に記載のアナログ−デジタル変換回路。
前記第1の容量素子の容量値と前記第2の容量素子の容量値の比は、前記デジタル出力信号のビット数(N1+N2A)と前記第1信号のビット数(N1)の差の値(N2A)と、補正用のビット数(K)に応じた比に設定されたことを特徴とする請求項1〜3のうちの何れか一項に記載のアナログ−デジタル変換回路。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、一実施形態を説明する。
図1に示すように、逐次比較型アナログ−デジタル変換回路(以下、単にA/D変換回路という。)10は、アナログ入力信号VINをデジタル出力信号DOに変換する。
【0009】
A/D変換回路10は、サンプル−ホールド回路11、比較回路12、SARロジック回路(逐次比較制御回路)13、デジタル−アナログ変換器(「DAC」と表記。以下、D/A変換器という。)14,15、キャパシタ16,17、スイッチ18を有している。
【0010】
サンプル−ホールド回路11は、例えばスイッチとキャパシタを含む。サンプル−ホールド回路11は、アナログ入力信号VINをサンプリングし、そのサンプリング値を保持する。サンプル−ホールド回路11により保持されたサンプリング値は、比較回路12の第1端子に供給される。なお、サンプル−ホールド回路11におけるサンプリング値は、アナログ入力信号VINを保持したものである。このため、比較回路12に供給されるサンプリング値をアナログ入力信号VINとして説明する。
【0011】
比較回路12は、第1端子に供給される比較基準信号Vrefと、第2端子に供給されるアナログ入力信号VINを比較し、比較結果に応じた比較信号Scを出力する。例えば、比較回路は、比較基準信号Vrefよりもアナログ入力信号VINが高いときに第1レベル(Hレベル)の比較信号Scを出力し、比較基準信号Vrefよりもアナログ入力信号VINが低いときに第2レベル(Lレベル)の比較信号Scを出力する。
【0012】
SARロジック回路13は、第1のD/A変換器14に対する第1の制御信号DUと、第2のD/A変換器15に対する第2の制御信号DLを生成する。第1の制御信号DUは第1の信号の一例、第2の制御信号DLは第2の信号の一例である。そして、SARロジック回路13は、比較回路12における比較結果つまり比較信号Scに基づいて、第1のD/A変換器14に対する第1の制御信号DUと、第2のD/A変換器15に対する第2の制御信号DLの値を順次設定する。
【0013】
第1のD/A変換器14は、例えば、抵抗ラダーを含む複数ビットのD/A変換器である。第1のD/A変換器14は、複数ビットの第1の制御信号DUに応じた電圧値の信号Vaを出力する。
【0014】
第2のD/A変換器15は、例えば、抵抗ラダーを含む複数ビットのD/A変換器である。第2のD/A変換器15は、複数ビットの第2の制御信号DLに応じた電圧値の信号Vbを出力する。第1のD/A変換器14と第2のD/A変換器15のビット数は、デジタル出力信号DOのビット数と補正用ビットのビット数に応じて設定されている。
【0015】
例えば、デジタル出力信号DOのビット数を「Nx」とする。そして、デジタル出力信号DOの上位側の複数ビットのビット数を「N1」、下位側の複数ビットのビット数を「N2A」とする。したがって、デジタル出力信号DOのビット数Nxは、上位側のビット数N1と下位側のビット数N2Aの合計値(Nx=N1+N2A)である。そして、補正用ビットのビット数を「K」とする。第1のD/A変換器14のビット数(第1の制御信号DUのビット数)は、上位側のビット数「N1」と等しく設定されている。第2のD/A変換器15のビット数(第2の制御信号DLのビット数)は、下位側のビット数「N2A」と補正用ビットのビット数「K」の合計値(=N2A+K)と等しく設定されている。以下の説明において、第1のD/A変換器14のビット数を「N1」、第2のD/A変換器15のビット数を「N2B」(=N2A+K)として説明する。
【0016】
以下の説明において、第1のD/A変換器14を上位DAC、第2のD/A変換器15を下位DACという場合がある。また、第1のD/A変換器14の第1の制御信号DUを上位DACコード、第2のD/A変換器15の第2の制御信号DLを下位DACコードという場合がある。
【0017】
第1のD/A変換器14は、ビット数N1に応じた2^N1個の抵抗を含む抵抗ラダーを有する。記号「^」は累乗演算子を示す。第1のD/A変換器14は、高電位側の基準電圧VRHと低電位側の基準電圧VRLの間の電位差を分圧した分圧電圧を生成し、第1の制御信号DUに応じて選択した分圧電圧の信号Vaを出力する。同様に、第2のD/A変換器15は、ビット数N2Bに応じた2^N2B個の抵抗を含む抵抗ラダーを有する。第2のD/A変換器15は、高電位側の基準電圧VRHと低電位側の基準電圧VRLの間の電位差を分圧した分圧電圧を生成し、第2の制御信号DLに応じて選択した分圧電圧の信号Vbを出力する。基準電圧VRH,VRLは、アナログ入力信号VINの全入力電圧範囲(FSR:Full Scale Range)に応じて設定される。
【0018】
第1のD/A変換器14の出力端子は第1のキャパシタ16の第1端子に接続され、第1のキャパシタ16の第2端子は比較回路12の第2端子に接続されている。同様に、第2のD/A変換器15の出力端子は第2のキャパシタ17の第1端子に接続され、第2のキャパシタ17の第2端子は比較回路12の第2端子に接続されている。つまり、第1のD/A変換器14の出力端子及び第2のD/A変換器15の出力端子は、第1のキャパシタ16及び第2のキャパシタ17により比較回路12の第2端子と容量結合されている。
【0019】
第1のキャパシタ16の比較回路12側の第2端子には、該キャパシタ16の容量値C1と第1のD/A変換器14の出力信号Vaの電圧値に応じた電圧の第1の基準信号Vr1が生じる。また、第2のキャパシタ17の比較回路12側の第2端子には、該キャパシタ17の容量値C2と第2のD/A変換器15の出力信号Vbの電圧値に応じた電圧の第2の基準信号Vr2が生じる。したがって、比較回路12の第2端子には、第1の基準信号Vr1と第2の基準信号Vr2を合成した比較基準信号Vrefが供給される。第1の基準信号Vr1は第1基準信号の一例、第2の基準信号Vr2は第2基準信号の一例である。
【0020】
第1のキャパシタ16の容量値C1と第2のキャパシタ17の容量値C2は、デジタル出力信号DOのビット数「Nx」と補正用ビットのビット数「K」に応じて設定されている。詳述すると、第1のキャパシタ16の容量値C1は、デジタル出力信号DOの下位側のデジタル信号のビット数「N2A」(=Nx−N1)に応じて設定される。詳しくは、第1のキャパシタ16の容量値C1は、単位容量値Cに、2^N2Aを乗じた結果の値(=C*2^N2A)に設定されている。第2のキャパシタ17の容量値C2は、補正用ビットのビット数「K」に応じて設定される。詳しくは、第2のキャパシタ17の容量値C2は、単位容量値Cに、2^Kを乗じた結果の値(=C*2^K)に設定されている。記号「*」は乗算を示す。即ち、第1のキャパシタ16の容量値C1と第2のキャパシタ17の容量値C2は、デジタル出力信号DOの下位のビット数N2Aと補正用ビットのビット数Kを指数とする2の累乗の比で設定される。
【0021】
上記のキャパシタ16,17の容量値C1,C2の設定は、基準信号Vr1,Vr2における1LSBの変化量を互いに等しくする。1LSBの変化量は、デジタル出力信号DOの最下位ビット(LSB:Least Significant Bit)を変化させるために必要なアナログ入力信号VINの変化量である。1LSBに相当する信号量(例えば、電圧値)を、単に1LSBとして説明する。
【0022】
例えば、第1のD/A変換器14のビット数を「2」(N1=2)、第2のD/A変換器15のビット数を「3」(N2B=3,N2A=2,K=1)とする。そして、デジタル出力信号DOのビット数を「4」(Nx=4)とする。この場合、アナログ入力信号VINのFSRは16LSB(=2^4)である。第1のD/A変換器14は、直列に接続された2^2個の抵抗素子を含む。第2のD/A変換器15は、直列に接続された2^3個の抵抗素子を含む。第1のD/A変換器14と第1のキャパシタ16は、デジタル出力信号DOのビット数「4」に応じて、0LSB〜16LSBの範囲(0,4,8,12LSB)の第1の基準信号Vr1を生成するように設定される。第2のD/A変換器15と第2のキャパシタ17は、ビット数「3」に応じて、8LSBの範囲(0LSB〜7LSB)の第2の基準信号Vr2を生成するように設定される。
【0023】
即ち、第1のD/A変換器14と第1の容量素子16は、Nxビットのデジタル出力信号DOにおける上位N1ビットに応じて重み付けされた第1の基準信号Vr1を生成するように設定されている。第2のD/A変換器15と第2の容量素子17は、Nxビットのデジタル出力信号DOにおける下位N2Aビットに応じて重み付けされた第2の基準信号Vr2を生成するように設定されている。また、第2のD/A変換器15と第2の容量素子17は、N1ビットの第1の制御信号DUの最小ビットの変化に応じた第1の基準信号Vr1の変化量より大きな範囲で第2の基準信号Vr2を変更する設定されている。
【0024】
例えば、第1のD/A変換器14は、ビット数「2」に応じて、直列に接続された4個(=2^2)の抵抗素子を含む。第2のD/A変換器15は、ビット数「3」に応じて、直列に接続された8個(=2^3)の抵抗素子を含む。第1のD/A変換器14と第2のD/A変換器15に基準電圧VRH、VRLを供給する。そして、第1のD/A変換器14に含まれる抵抗素子の抵抗値と、第2のD/A変換器15に含まれる抵抗素子の抵抗値を互いに等しくする。このことは、第1のD/A変換器14と第2のD/A変換器15のそれぞれに含まれる抵抗素子の形成を容易にする。
【0025】
このような第1のD/A変換器14及び第2のD/A変換器15の場合、第2の制御信号DLの最下位ビットの変更(例えば「0」→「1」)に対する出力信号Vbの変化量は、第1の制御信号DUの最下位ビットの変更に対する出力信号Vaの変化量の1/2である。このため、第1のD/A変換器14に接続された第1のキャパシタ16の容量値C1を、基準とする容量値Cの2^2倍、第2のD/A変換器15に接続された第2のキャパシタ17の容量値C2を、基準とする容量値Cの2^1倍とする。これにより、上位DACである第1のD/A変換器14の出力信号Vaにより、16LSBの範囲(0,4,8,12LSB)の第1の基準信号Vr1を生成する。同様に、下位側のDACである第2のD/A変換器15の出力信号Vbにより、8LSBの範囲(0〜7LSB)の第2の基準信号Vr2を生成する。
【0026】
比較回路12とキャパシタ16,17の間のノード19にはスイッチ18の第1端子が接続され、スイッチ18の第2端子は低電位電源電圧VSSが供給される配線に接続されている。低電位電源電圧VSSは例えば0[V]である。低電位電源電圧VSSは基準電圧の一例である。スイッチ18は、SARロジック回路13により生成される制御信号C0に応答してオンオフする。ノード19は、オンしたスイッチ18により、低電位電源電圧VSSと等しい電位となる。つまり、オンしたスイッチ18は、ノード19を所定電位(低電位電源電圧VSSレベル)にリセットする。キャパシタ16,17とスイッチ18は信号生成回路の一例である。
【0027】
SARロジック回路13は、制御回路21と補正回路22を有している。
制御回路21は、第1のD/A変換器14に対する第1の制御信号DUと、第2のD/A変換器15に対する第2の制御信号DLを生成する。また、制御回路21は、スイッチ18に対する制御信号C0を生成する。
【0028】
制御回路21は、第1のD/A変換器14(上位DAC)に対する第1の制御信号DUに初期値を設定し、第2のD/A変換器15(下位DAC)に対する第2の制御信号DLに初期値を設定する。そして、制御回路21は、初期値を設定した状態から、第1のD/A変換器14(上位DAC)における2進探索を行い、第1のD/A変換器14に対する第1の制御信号DUの各ビット値を順次設定する。次いで、制御回路21は、第1のD/A変換器14に対する2進探索結果を設定した状態で、第2のD/A変換器15における2進探索を行い、第2のD/A変換器15に対する第2の制御信号DLの各ビット値を順次設定する。
【0029】
また、制御回路21は、D/A変換器14,15及びキャパシタ16,17を初期化する。この初期化処理において、制御回路21は、制御信号DU,DLに初期値を設定し、スイッチ18をオンする。例えば、第1の制御信号DUに対する初期値I1は「0」である。第2の制御信号DLに対する初期値I2は「2^(N2B−1)−2^(Nx−N1−1)」である。この初期値において、「Nx−N1」はデジタル出力信号DOの下位のビット数N2Aと等しい。従って、初期値I2は、「2^(N2B−1)−2^(N2A−1)」と表される。そして、「2^(N2B^1)」は、第2の制御信号DLに応じた第2の基準信号Vr2の変更可能な範囲の1/2である。また、「2^(N2A−1)」は、デジタル出力信号DOの下位のビット数N2Aに応じた範囲であり、上位側の第1の基準信号Vr1の1ステップの変化量の1/2に等しい。従って、初期値は、第2の基準信号Vr2の変更可能な範囲と、第1の基準信号Vr1の1ステップの変化量の差の1/2と等しい。
【0030】
D/A変換器14,15は、初期値の制御信号DU,DLに応じた信号Va,Vbを出力する。オンしたスイッチ18は、ノード19、即ちキャパシタ16,17の比較回路12側の電極を低電位電源電圧VSSレベルにリセットする。低電位電源電圧VSSは例えば0[V]である。従って、キャパシタ16,17には、初期値の制御信号DU,DLと、それぞれの容量値C1,C2に応じた電荷が蓄積される。これらの初期値に応じた電荷は、キャパシタ16,17において、信号Va,Vbに対し、基準信号Vr1,Vr2、即ち比較基準信号Vrefを所定方向(例えば、負電圧側)にオフセットする。つまり、制御回路21は、D/A変換器14,15及びキャパシタ16,17の初期化により、制御信号DU,DLに対してオフセットした比較基準信号Vrefを生成する。
【0031】
補正回路22は、逐次比較によって設定された第1の制御信号DUと第2の制御信号DLに基づいて、デジタル出力信号DOを生成する。第1の制御信号DUのビット数は「N1」であり、第2の制御信号DLのビット数は「N2B」(=N2A+K)である。そして、デジタル出力信号DOのビット数は「Nx」(=N1+N2A)である。このため、補正回路22は、(Nx+K)ビットの信号(第1の制御信号DU及び第2の制御信号DL)を補正して(Nx)ビットのデジタル出力信号DOを生成する。
【0032】
制御信号DU,DLに対する補正は、例えば下記の式のように表される。制御信号DU,DLの値を同じ符号DU,DLを用い、第2の制御信号DL(下位DACコード)の初期値I2(=2^(N2B−1)−2^(Nx−N1−1))とすると、デジタル出力信号DOは、
DO=DU×2^(Nx−N1)+DL−I2
となる。なお、べき指数(Nx−N1)は、デジタル出力信号DOの下位のビット数N2Aと等しい。
【0033】
次に、A/D変換回路10における変換処理を説明する。なお、SARロジック回路13は制御回路21と補正回路22を含む。このため、制御回路21と補正回路22における処理を、SARロジック回路13における処理として説明する。
【0034】
(概略)初期化ステップT0において、D/A変換器14,15及びキャパシタ16,17を初期化する。次いで、比較ステップにおいて、2進探索により、第1のD/A変換器14の第1の制御信号DUのビット値を設定する。次いで、比較ステップにおいて、2進探索により、第2のD/A変換器15の第2の制御信号DLのビット値を設定する。つまり、(N1+N2B)回の比較ステップT1〜T(N1+N2B)を行い、第1のD/A変換器14の第1の制御信号DUのビット値と、第2のD/A変換器15の第2の制御信号DLのビット値を順次設定する。そして、比較完了ステップTeにおいて、下位DACコードの最下位ビットを設定する。そして、出力ステップToにおいて、第1の制御信号DUと第2の制御信号DLに基づいてデジタル出力信号DOを生成する。
【0035】
図10に示すように、先ず、初期化ステップT0において、下位DACコード(第2の制御信号DL)に初期値I2(=2^(N2B−1)−2^(Nx−N1−1))を設定し、上位DACコード(第1の制御信号DU)に初期値I1(=0)を設定する。そして、
図1に示すスイッチ18をオンし、スイッチ18をオフする。
【0036】
1回目の比較(比較ステップT1)において、上位DACコードを設定し、比較回路12で判定する。例えば、上位DACコードに「2^(N1−1)」を設定、つまり上位DACコード(第1の制御信号DU)の最上位ビットを「1」に設定する。この設定に応じた比較基準信号Vrefが比較回路12に供給される。そして、比較回路12で、アナログ入力信号VINと比較基準信号Vrefと比較し、アナログ入力信号VINと比較基準信号Vrefの大小を判定する。そして判定結果に応じた比較信号Scが比較回路12から出力される。
【0037】
2回目の比較(比較ステップT2)において、前回の比較結果に応じて上位DACコードを設定し、比較回路12で判定する。例えば、前回の比較結果(比較信号Sc)が”H”の場合、上位DACコードを、前回の上位DACコード+「2^(N1−2)」に設定し、前回の比較結果が”L”の場合、上位DACコードを、前回の上位DACコード−「2^(N1−2)」に設定する。そして、比較回路12で、アナログ入力信号VINと比較基準信号Vrefと比較し、アナログ入力信号VINと比較基準信号Vrefの大小を判定する。
【0038】
3回目の比較(比較ステップT3)において、前回の比較結果に応じて上位DACコードを設定し、比較回路12で判定する。例えば、前回の比較結果が”H”の場合、上位DACコードを、前回の上位DACコード+「2^(N1−3)」に設定し、前回の比較結果が”L”の場合、上位DACコードを、前回の上位DACコード−「2^(N1−3)」に設定する。そして、比較回路12で、アナログ入力信号VINと比較基準信号Vrefと比較し、アナログ入力信号VINと比較基準信号Vrefの大小を判定する。
【0039】
次に、
図11に示すように、(N1)回目の比較((比較ステップTN)において、前回の比較結果に応じて上位DACコードを設定し、比較回路12で判定する。なお、4回目の比較から(N1−1)回目の比較は、3回目の比較と同様であるため、図面及び説明を省略する。(N1)回目の比較において、前回の比較結果が”H”の場合、上位DACコードを、前回の上位DACコード+1に設定し、前回の比較結果が”L”の場合、上位DACコードを、前回の上位DACコード−1に設定する。そして、比較回路12で、アナログ入力信号VINと比較基準信号Vrefと比較し、アナログ入力信号VINと比較基準信号Vrefの大小を判定する。
【0040】
(N1+1)回目の比較(比較ステップTN+1)において、下位DACコードを設定し、前回の比較結果に応じて上位DACコードを設定し、比較回路12で判定する。例えば、下位DACコードに「2^(N2B−1)」を設定、つまり、下位DACコード(制御信号DL)の最上位ビットのみを「1」に設定する。そして、前回の比較結果が”L”の場合、上位DACコードを、前回の上位DACコード−1に設定する。そして、比較回路12で、アナログ入力信号VINと比較基準信号Vrefと比較し、アナログ入力信号VINと比較基準信号Vrefの大小を判定する。
【0041】
(N1+2)回目の比較(比較ステップTN1+2)において、前回の比較結果に応じて下位DACコードを設定し、比較回路12で判定する。例えば、前回の比較結果が”H”の場合、下位DACコードを、前回の下位DACコード+「2^(N2B−2)」に設定し、前回の比較結果が”L”の場合、下位DACコードを、前回の下位DACコード−「2^(N2B−2)」に設定する。そして、比較回路12で、アナログ入力信号VINと比較基準信号Vrefと比較し、アナログ入力信号VINと比較基準信号Vrefの大小を判定する。
【0042】
(N1+3)回目の比較(比較ステップTN1+3)において、前回の比較結果に応じて下位DACコードを設定し、比較回路12で判定する。例えば、前回の比較結果が”H”の場合、下位DACコードを、前回の下位DACコード+「2^(N2B−3)」に設定し、前回の比較結果が”L”の場合、下位DACコードを、前回の下位DACコード−「2^(N2B−3)」に設定する。そして、比較回路12で、アナログ入力信号VINと比較基準信号Vrefと比較し、アナログ入力信号VINと比較基準信号Vrefの大小を判定する。
【0043】
次に、
図12に示すように、(N1+N2A)回目の比較(比較ステップTN1+N2A)において、前回の比較結果に応じて下位DACコードを設定し、比較回路12で判定する。なお、(N1+4)回目の比較から(N1+N2A−1)回目の比較は、(N+3)回目の比較と同様であるため、図面及び説明を省略する。(N1+N2A)回目の比較において、前回の比較結果が”H”の場合、下位DACコードを、前回の下位DACコード+「2^(N2B−N2A)」に設定し、前回の比較結果が”L”の場合、下位DACコードを、前回の下位DACコード−「2^(N2B−N2A)」に設定する。そして、比較回路12で、アナログ入力信号VINと比較基準信号Vrefと比較し、アナログ入力信号VINと比較基準信号Vrefの大小を判定する。
【0044】
(N1+N2A+1)回目の比較から(N1+N2B−1)回目の比較は、(N1+N2A)回目の比較と同様であるため、図面及び説明を省略する。
(N1+N2B)回目の比較(比較ステップTN1+N2B)において、前回の比較結果に応じて下位DACコードを設定し、比較回路12で判定する。例えば、前回の比較結果が”H”の場合、下位DACコードを、前回の下位DACコード+1に設定し、前回の比較結果が”L”の場合、下位DACコードを、前回の下位DACコード−1に設定する。そして、比較回路12で、アナログ入力信号VINと比較基準信号Vrefと比較し、アナログ入力信号VINと比較基準信号Vrefの大小を判定する。
【0045】
次に、比較結果ステップTeにおいて、前回の比較結果に応じて下位DACコードを設定する。例えば、前回の比較結果が”L”の場合、下位DACコードを、前回の下位DACコード−1に設定する。
【0046】
そして、出力ステップToにおいて、上位DACコードと下位DACコードを補正してデジタル出力信号DOを生成する。例えば、上位DACコード×2^(Nx−N1)+下位DACコード−2^(N2B−1)−2^(Nx−N1−1)によりデジタル出力信号DOを生成する。
【0047】
次に、
図3及び
図4に従ってA/D変換回路10の詳細を説明する。なお、説明を判りやすくするため、4ビットのデジタル出力信号DOを生成するA/D変換回路10について説明する。なお、4ビット(Nx=4)のデジタル出力信号DOにおいて、上位側のデジタル信号のビット数N1を「2」、下位側のデジタル信号のビット数N2Aを「2」とする。そして、補正ビットのビット数Kを「1」とする。
【0048】
図3に示すように、第1のD/A変換器14は、2ビット(N1=2)の第1の制御信号DUに応じた信号Vaを出力する。第2のD/A変換器15は、3ビット(N2B=N2A+K=2+1=3)の第2の制御信号DLに応じた信号Vbを出力する。
【0049】
制御回路21は、カウンタ31、デコーダ32、設定レジスタ33,34を有している。
カウンタ31は、クロック信号CLKをカウントし、所定ビット(例えば3ビット)の入力信号IN2〜IN0を生成する。入力信号IN2〜IN0のビット数は、第1のD/A変換器14及び第2のD/A変換器15のビット数に応じて設定される。逐次比較型のA/D変換回路10は、初期化ステップと、第1のD/A変換器14のビット数「2」と第2のD/A変換器15のビット数「3」の合計値に応じた数「5」(=2+3)の比較ステップを行い、第1の制御信号DUと第2の制御信号DLに基づいてデジタル出力信号DOを生成する。したがって、入力信号IN2〜IN0は、デジタル出力信号DOを生成するために必要なステップの数に応じて設定される。
【0050】
デコーダ32は、入力信号IN2〜IN0をデコードして制御信号C0〜C6を生成する。入力信号IN2〜IN0と制御信号C0〜C6の対応関係を
図5に示す。
スイッチ18は、Hレベル(論理値「1」)の制御信号C0に応答してオンし、Lレベル(論理値「0」)の制御信号C0に応答してオフする。サンプル−ホールド回路11は例えば、Hレベルの制御信号C0に応答してアナログ入力信号VINをサンプリングし、Lレベルの制御信号C0に応答してホールドする。
【0051】
第1の設定レジスタ33は、第1のD/A変換器14に対する第1の制御信号DUを生成する。第2の設定レジスタ34は、第2のD/A変換器15に対する第2の制御信号DLを生成する。第1の制御信号DUは2ビット(=N1=2)の信号であり、最上位ビット(msb)を制御信号DU1、第2ビット(2sb)を制御信号DU0とする。同様に、第2の制御信号DLは3ビット(=N2A+K=2+1)の信号であり、最上位ビット(msb)を制御信号DL2、第2ビット(2sb)を制御信号DL1、第3ビット(3sb)を制御信号DL0とする。
【0052】
設定レジスタ33は、2ビットの第1の制御信号DU(DU1,DU0)に対応する2つのフリップフロップ回路(以下、FF回路)41,42を有している。FF回路41は、リセット端子Rに制御信号C0が供給され、セット端子Sに制御信号C1が供給され、データ端子Dに比較信号Scが供給され、クロック端子CKに制御信号C2が供給される。FF回路41は、出力端子Oから制御信号DU1を出力する。FF回路42は、リセット端子Rに制御信号C0が供給され、セット端子Sに制御信号C2が供給され、データ端子Dに比較信号Scが供給され、クロック端子CKに制御信号C3が供給される。FF回路42は、出力端子Oから制御信号DU0を出力する。
【0053】
設定レジスタ34は3ビットの第2の制御信号DL(DL2〜DL0)に対応する3つのフリップフロップ回路(以下、FF回路)43〜45と論理和回路(オア回路)51を有している。FF回路43は、リセット端子Rに制御信号C0が供給され、セット端子Sに制御信号C3が供給され、データ端子Dに比較信号Scが供給され、クロック端子CKに制御信号C4が供給される。FF回路43は、出力端子Oから制御信号DL2を出力する。
【0054】
制御信号C0,C4はオア回路51に供給される。オア回路51の出力端子はFF回路44のセット端子Sに接続されている。FF回路44は、リセット端子Rに制御信号C3が供給され、データ端子Dに比較信号Scが供給され、クロック端子CKに制御信号C5が供給される。FF回路44は、出力端子Oから制御信号DL1を出力する。FF回路45は、リセット端子Rに制御信号C0が供給され、セット端子Sに制御信号C5が供給され、データ端子Dに比較信号Scが供給され、クロック端子CKに制御信号C6が供給される。FF回路45は、出力端子Oから制御信号DL0を出力する。
【0055】
図5に示すように、制御信号C0〜C6のうちの1つの制御信号は、入力信号IN2〜IN0、つまり
図3に示すカウンタ31のカウント値、即ちクロック信号CLKのパルスに従って順次Hレベル(論理値「1」)となる。
【0056】
設定レジスタ33,34のFF回路41〜43,45は、リセット端子Rに供給されるHレベルの制御信号C0に応答して制御信号DU1,DU0,DL2,DL0をリセット、つまりLレベルの制御信号DU1,DU0,DL2,DL0を出力する。
【0057】
オア回路51は、Hレベルの制御信号C0とLレベルの制御信号C4に応答してHレベルの信号を出力する。オア回路51の出力信号はFF回路44のセット端子Sに供給される。このとき、FF回路44のリセット端子RにはLレベルの制御信号C3が供給される。したがって、FF回路44は制御信号DL1をセット、つまりHレベルの制御信号DL1を出力する。
【0058】
このように、制御信号C0がHレベル(制御信号C1〜C6はLレベル)のとき、設定レジスタ33は、「00」の制御信号DUを出力し、設定レジスタ34は「010」の制御信号DLを出力する。制御信号C0がHレベルのときをリセットサイクルとする。そして、リセットサイクルのときに設定レジスタ33,34から出力される制御信号DU,DLを初期値とする。
図3に示す実施形態において、初期値は「2」である。なお、初期値は、デジタル出力信号DOのビット数Nxと補正用ビットのビット数Kに応じて設定される。
【0059】
FF回路41は、Hレベルの制御信号C1に応答して制御信号DU1をセットする。そして、FF回路41は、入力端子Dに供給される比較信号ScをHレベルの制御信号C2に応答してラッチし、ラッチしたレベルと等しい制御信号DU1を出力する。FF回路42は、Hレベルの制御信号C2に応答して制御信号DU0をセットする。そして、FF回路42は、入力端子Dに供給される比較信号ScをHレベルの制御信号C3に応答してラッチし、ラッチしたレベルと等しい制御信号DU0を出力する。
【0060】
FF回路43は、Hレベルの制御信号C3に応答して制御信号DL2をセットする。そして、FF回路43は、入力端子Dに供給される比較信号ScをHレベルの制御信号C4に応答してラッチし、ラッチしたレベルと等しい制御信号DL2を出力する。FF回路44は、Hレベルの制御信号C3に応答して制御信号DL1をリセットし、Hレベルの制御信号C4に応答して制御信号DL1をセットする。そして、FF回路44は、入力端子Dに供給される比較信号ScをHレベルの制御信号C5に応答してラッチし、ラッチしたレベルと等しい制御信号DL1を出力する。FF回路45は、Hレベルの制御信号C5に応答して制御信号DL0をセットする。そして、FF回路45は、入力端子Dに供給される比較信号ScをHレベルの制御信号C6に応答してラッチし、ラッチしたレベルと等しい制御信号DL0を出力する。
【0061】
図4に示すように、補正回路22は、加算回路61、減算回路62、処理回路63を有している。
加算回路61は、半加算器71,72を有している。半加算器71の入力端子Aには制御信号DU0が供給され、入力端子Bには制御信号DL2が供給される。半加算器71のキャリー端子Cは半加算器72の入力端子Bに接続されている。半加算器71は、制御信号DU0に制御信号DL2を加算し、加算結果に応じた信号A2を端子Sから出力するとともに桁上がり信号(キャリー信号)を端子Cから出力する。半加算器72の入力端子Aには制御信号DU1が供給される。半加算器72は、制御信号DU1に半加算器71のキャリー信号を加算し、加算結果に応じた信号A3を端子Sから出力するとともに信号A4を端子Cから出力する。加算回路61は、制御信号DL0,DL1のレベル(論理値)と等しいレベル(論理値)の信号A0,A1を出力する。
【0062】
減算回路62は、半減算器81〜84を有している。半減算器81の入力端子Aには信号A1(制御信号DL1)が供給される。半減算器81の入力端子Bは例えば抵抗によってプルアップされて論理値「1」の信号が供給される。半減算器81の端子Boは半減算器82の入力端子Bに接続されている。半減算器81は、信号A1から論理値「1」を減算し、減算結果に応じた信号B1を端子Dから出力するとともに桁下がり信号(ボロー信号)を端子Boから出力する。半減算器82の入力端子Aには信号A2が供給される。半減算器82の端子Boは半減算器83の入力端子Bに接続されている。半減算器82は、信号A2から半減算器81のボロー信号を減算し、減算結果に応じた信号B2を端子Dから出力するとともにボロー信号を端子Boから出力する。半減算器83の入力端子Aには信号A3が供給される。半減算器83の端子Boは半減算器84の入力端子Bに接続されている。半減算器83は、信号A3から半減算器82のボロー信号を減算し、減算結果に応じた信号B3を端子Dから出力するとともにボロー信号を端子Boから出力する。半減算器84の入力端子Aには信号A4が供給される。半減算器84は、信号A4から半減算器83のボロー信号を減算し、減算結果に応じた信号B4を端子Dから出力するとともに信号B5を端子Boから出力する。減算回路62は、信号A0(制御信号DL0)のレベルと等しいレベルの信号B0を出力する。
【0063】
処理回路63は、反転回路(インバータ回路)91、論理積回路(アンド回路)92,93、排他的論理和回路(EXOR回路)94〜96、論理和回路(オア回路)97を有している。インバータ回路91は、信号B5のレベルを論理反転した反転信号B5xを出力する。この反転信号B5xは、アンド回路92,93に供給される。アンド回路92は、反転信号B5xと信号B4を論理積演算し、演算結果に応じた信号を出力する。アンド回路92は、反転信号B5xと信号B0を論理積演算し、演算結果に応じた信号を出力する。EXOR回路94は、信号B4と信号B3を排他的論理和演算し、演算結果に応じた出力信号D3を出力する。EXOR回路95は、信号B4と信号B2を排他的論理和演算し、演算結果に応じた出力信号D2を出力する。EXOR回路96は、信号B4と信号B1を排他的論理和演算し、演算結果に応じた出力信号D1を出力する。オア回路97は、アンド回路92の出力信号とアンド回路93の出力信号を論理和演算し、演算結果に応じた出力信号D0を出力する。
【0064】
図6に示すように、補正回路22は、第1の制御信号DU(DU1,DU0)と第2の制御信号DL(DL2〜DL0)に基づいて、5ビットの信号A4〜A0を生成する。さらに、補正回路22は、信号A4〜A0に基づいて6ビットの信号B5〜B0を生成する。そして、補正回路22は、信号B5〜B0に基づいて4ビットのデジタル出力信号D3〜D0を生成する。このとき、補正回路22は、上位2ビットの信号B5,B4に基づいて下位4ビットの信号B3〜B0を補正してデジタル出力信号D3〜D0を生成する。
【0065】
詳述すると、補正回路22は、N1ビットの第1の制御信号DU(DU1,DU0)に、2^N2A(=2^(Nx−N1))を乗算した結果の値に第2の制御信号DL(DL2〜DL0)を加算した合計値(5ビットの信号A4〜A0)を得る。次いで、補正回路22は、合計値(信号A4〜A0)から初期値「2」を減算した値(6ビットの信号B5〜B0)を得る。そして、補正回路22は、上位2ビットの信号B5,B4が「00」の場合に下位4ビットの信号B3〜B0のレベルと等しいレベルのデジタル出力信号D3〜D0を生成する。
【0066】
一方、上位2ビットの信号B5,B4が「01」又は「11」の場合、下位4ビットの信号B3〜B0がデジタル出力信号D3〜D0の範囲外、即ちオーバーフロー状態であることを示す。このため、補正回路22は、オーバーフロー処理を行う。上位2ビットの信号B5,B4が「01」の場合、補正回路22は、信号B5,B4に基づいて下位4ビットの信号B3〜B0を補正し、「1111」のデジタル出力信号D3〜D0を生成する。また、上位2ビットの信号B5,B4が「11」の場合、補正回路22は、信号B5,B4に基づいて下位4ビットの信号B3〜B0を補正し、「0000」のデジタル出力信号D3〜D0を生成する。
【0067】
図2は、各比較ステップにおける制御回路21の動作と、比較回路12に供給される比較基準信号Vref、冗長性の関係を示す。なお、
図2において、上位DACコードは、第1のD/A変換器14に供給する第1の制御信号DUのコードを示し、下位DACコードは、第2のD/A変換器15に供給する第2の制御信号DLのコードを示す。また、比較基準信号Vrefは、比較回路12に供給される比較基準信号Vrefの電圧を示す。
【0068】
先ず、1回目の比較において、制御回路21は、上位DACコードを「2」、下位DACコードを「2」とする。このとき、比較基準信号Vrefは8LSBとなる。このときの冗長性は±2LSBである。
【0069】
次に、2回目の比較において、制御回路21は、前回の比較結果が”H”の場合、上位DACコードを前回の値に対して「+1」した値とし、前回の比較結果が”L”の場合、上位DACコードを前回の値に対して「−1」した値とする。また、制御回路21は、下位DACコードを「2」とする。従って、比較基準信号Vrefは、前回の比較結果が”H”の場合、前回の値に対して+4LSB、つまり「12」LSBとなり、前回の比較結果が”L”の場合、前回の値に対して−4LSB、つまり「4」LSBとなる。このときの冗長性は±2LSBである。
【0070】
3回目の比較において、制御回路21は、前回の比較結果が”H”の場合、上位DACコードをそのまま、つまり前回の値と等しい値とし、前回の比較結果が”L”の場合、上位DACコードを前回の値に対して「−1」した値とする。このとき、制御回路21は、下位DACコードを「4」とする。従って、比較基準信号Vrefは、前回の比較結果が”H”の場合、前回の値に対して+2LSBとなり、前回の比較結果が”L”の場合、前回の値に対して−2LSBとなる。
【0071】
次に、4回目の比較において、制御回路21は、上位DACコードをそのまま、つまり前回の値と等しい値とする。制御回路21は、前回の比較結果が”H”の場合、下位DACコードを前回の値に対して「+2」した値とし、前回の比較結果が”L”の場合、下位DACコードを前回の値に対して「−2」した値とする。従って、比較基準信号Vrefは、前回の比較結果が”H”の場合、前回の値に対して+2LSBとなり、前回の比較結果が”L”の場合、前回の値に対して−2LSBとなる。
【0072】
そして、5回目の比較において、制御回路21は、上位DACコードをそのまま、つまり前回の値と等しい値とする。制御回路21は、前回の比較結果が”H”の場合、下位DACコードを前回の値に対して「+1」した値とし、前回の比較結果が”L”の場合、下位DACコードを前回の値に対して「−1」した値とする。従って、比較基準信号Vrefは、前回の比較結果が”H”の場合、前回の値に対して+1LSBとなり、前回の比較結果が”L”の場合、前回の値に対して−1LSBとなる。
【0073】
図7は、初期化ステップと比較ステップにおける制御信号DU,DL、及びデジタル出力信号DOを示す。
図7において、比較ステップT1〜T5及び比較結果ステップTeにおいて、実線の矢印は判定結果が”H”の場合の変更を示し、破線の矢印は判定結果が”L”の場合の変更を示す。
【0074】
図8(a)は、アナログ入力信号VINと比較基準信号Vrefの比較結果に対する比較基準信号Vref(比較電圧)の変化を示す。
図8(b)は、比較信号Sc(比較結果)に対する上位DACコード(第1の制御信号DU)及び下位DACコード(第2の制御信号DL)の変化を示す。
【0075】
制御回路21は、第2のD/A変換器15(下位DAC)に対する第2の制御信号DLを初期値に設定した状態で、第1のD/A変換器14(上位DAC)における2進探索を行い、第1のD/A変換器14に対する第1の制御信号DUの各ビット値を順次設定する。次いで、制御回路21は、第1のD/A変換器14に対する2進探索結果を設定した状態で、第2のD/A変換器15における2進探索を行い、第2のD/A変換器15に対する第2の制御信号DLの各ビット値を順次設定する。
【0076】
詳述すると、先ず、
図8(b)に示すように、1回目の比較(比較ステップT1)において、上位DACの制御信号DU1を「1」に、上位DACの制御信号DU0を「0」に設定する。この設定に従って、
図8(a)に示すように、8LSBの比較基準信号Vrefが生成される。この比較基準信号Vrefとアナログ入力信号VINが比較され、Lレベルの比較信号Scが比較回路12から出力される。
【0077】
次に、
図8(b)に示すように、2回目の比較(比較ステップT2)において、1回目の比較結果、つまりLレベルの比較信号Scに基づいて、上位DACの制御信号DU1を「0」に、上位DACの制御信号DU0を「1」に設定する。この設定に従って、
図8(a)に示すように、4LSBの比較基準信号Vrefが生成される。この比較基準信号Vrefとアナログ入力信号VINが比較され、Hレベルの比較信号Scが比較回路12から出力される。
【0078】
次に、
図8(b)に示すように、3回目の比較(比較ステップT3)において、2回目の比較結果、つまりHレベルの比較信号Scに基づいて、上位DACの制御信号DU1及び制御信号DU0をそのままとする。さらに、下位DACの制御信号DL2を「1」に、下位DACの制御信号DL1を「0」に設定する。この設定に従って、
図8(a)に示すように、6LSBの比較基準信号Vrefが生成される。この比較基準信号Vrefとアナログ入力信号VINが比較され、Hレベルの比較信号Scが比較回路12から出力される。
【0079】
次に、
図8(b)に示すように、4回目の比較(比較ステップT4)において、3回目の比較結果、つまりHレベルの比較信号Scに基づいて、下位DACの制御信号DL2を「1」に、下位DACの制御信号DL1を「1」に設定する。この設定に従って、
図8(a)に示すように、8LSBの比較基準信号Vrefが生成される。この比較基準信号Vrefとアナログ入力信号VINが比較され、Lレベルの比較信号Scが比較回路12から出力される。
【0080】
次に、
図8(b)に示すように、5回目の比較(比較ステップT5)において、4回目の比較結果、つまりLレベルの比較信号Scに基づいて、下位DACの制御信号DL1を「0」に、下位DACの制御信号DL0を「1」に設定する。この設定に従って、
図8(a)に示すように、7LSBの比較基準信号Vrefが生成される。この比較基準信号Vrefとアナログ入力信号VINが比較され、Hレベルの比較信号Scが比較回路12から出力される。
【0081】
次に、
図8(b)に示すように、比較完了ステップTeにおいて、5回目の比較結果、つまりHレベルの比較信号Scに基づいて、下位DACの制御信号DL0を「1」に設定する。
【0082】
上記のように、比較ステップT1〜T5及び比較完了ステップTeにおいて、第1の制御信号DUのビット値「01」と、第2の制御信号DLのビット値「101」が決定される。
【0083】
第1の制御信号DUと第2の制御信号DLを補正してデジタル出力信号DOが生成される。第1のD/A変換器14(上位DAC)において、「01」の第1の制御信号DUは、4LSBのアナログ値に対応する。また、第2のD/A変換器15(下位DAC)において、「101」の第2の制御信号DLは5LSBのアナログ値に対応する。そして、初期状態において、第2の制御信号DLは2LSBに設定されている。従って、デジタル出力信号DOは、第1の制御信号DUの値に2^N2Aを乗算した結果に第2の制御信号DLの値を加算し、その加算結果から初期値を減算することにより得られる。つまり、デジタル出力信号DOは、7LSB(=4LSB+5LSB−2LSB)となる。
【0084】
図8(a)において、ハッチングを付した領域は、各比較ステップT1〜T5における比較範囲を示す。1回目の比較(比較ステップT1)において、比較基準信号Vrefと比較するアナログ入力信号VINの範囲は、0LSB〜16LSBである。2進探索では、比較基準信号Vrefを比較範囲の中心値に設定する。
【0085】
1回目の比較によって、比較範囲は0LSB〜8LSBに絞られる。つまり、
図8(a)の2回目の比較(比較ステップT2)において、比較基準信号Vrefと比較するアナログ入力信号VINの範囲は0LSB〜8LSBである。この比較結果に基づいて、第1のD/A変換器14の第1の制御信号DUは、4LSBに設定される。同様に、2回目の比較によって、比較範囲は4LSB〜8LSBに絞られる。つまり、
図8(a)の3回目の比較(比較ステップT3)において、第1のD/A変換器14の第1の制御信号DUは、6LSBに設定される。
【0086】
第1のD/A変換器14の第1の制御信号DUを決定すると、次に、第2のD/A変換器15における2進探索を行う。
図3及び
図4に示すA/D変換回路10において、第2のD/A変換器15は3ビットのD/A変換器であり、第2のキャパシタ17によって0LSB〜8LSBの範囲の第2の基準信号Vr2を生成する。この第2のD/A変換器15において、出力可変範囲の中間値(4LSB)の第2の基準信号Vr2を出力するとき、この第2のD/A変換器15と比較回路12を含むアナログ−デジタル変換回路の比較範囲は、第1のD/A変換器14が出力する第1の基準信号Vr1に基づいて、2LSB〜10LSBとなる。
【0087】
この比較範囲2LSB〜10LSBは、1回目の比較において、絞られていない範囲である8〜10LSBと重なる。つまり、3回目の比較において、1回目の比較結果により選択されていない範囲とオーバーラップし、このオーバーラップする範囲のアナログ入力信号VINについて判定する。従って、このオーバーラップする範囲(+2LSB)は、1回目の比較に対する冗長性となる。
図8(a)において、オーバーラップする領域を白抜きの矢印にて示す。
【0088】
また、比較範囲2LSB〜10LSBは、2回目の比較において、絞られていない範囲である2〜4LSBと重なる。つまり、3回目の比較において、2回目の比較結果により選択されていない範囲とオーバーラップし、このオーバーラップする範囲のアナログ入力信号VINについて判定する。従って、このオーバーラップする範囲(−2LSB)は、1回目の比較に対する冗長性となる。
【0089】
なお、アナログ入力信号VINが8LSBより大きい場合でも同様であり、1回目の比較に対して−2LSBの冗長性となる。また、アナログ入力信号VINが4LSBより小さい場合でも同様であり、2回目の比較に対して+2LSBの冗長性となる。従って、1回目の比較における冗長性は、±2LSBである。同様に、2回目の比較における冗長性は、±2LSBである。
図8(a)において、冗長性の範囲を矢印にて示す。
【0090】
図9(a)は、アナログ入力信号VINと比較基準信号Vrefの比較結果に対する比較基準信号Vref(比較電圧)の変化を示す。
図9(b)は、比較信号Sc(比較結果)に対する上位DACコード(第1の制御信号DU)及び下位DACコード(第2の制御信号DL)の設定を示す。
【0091】
図9(a)に示すように、比較基準信号Vrefは、キャパシタ16,17の容量値等に応じて変化する。比較基準信号Vrefの変化量は、上位側のビットを変更する、つまり上位DACコード(第1の制御信号DU)の制御信号DU1を変更するときに最も大きく、比較基準信号Vrefが整定するまでに要する時間が長い。
【0092】
例えば、温度や電圧の変化によって整定に要する時間が変化すると、誤判定を起こす場合がある。
図9(a)に示す例では、1回目の比較(比較ステップT1)における誤判定によってHレベルの比較信号Scが生成される。この場合、
図9(b)に示すように、2回目の比較(比較ステップT2)において、1回目の比較結果(Hレベルの比較信号Sc)に基づいて、上位DACの制御信号DU1を「1」に、上位DACの制御信号DU0を「1」に設定する。この設定に従って、
図9(a)に示すように、比較基準信号Vrefは12LSBへと上昇する。そして、比較基準信号Vrefとアナログ入力信号VINが比較され、Lレベルの比較信号Scが比較回路12から出力される。
【0093】
次に、
図9(b)に示すように、3回目の比較(比較ステップT3)において、2回目の比較結果(Lレベルの比較信号Sc)に基づいて、上位DACの制御信号DU1をそのままとし、上位DACの制御信号DU0を「0」(前回−1)に設定する。さらに、下位DACの制御信号DL2を「1」に、下位DACの制御信号DL1を「0」に設定する。この設定に従って、
図9(a)に示すように、比較基準信号Vrefは10LSBへと変化する。このとき、比較基準信号Vrefは、
図3に示すキャパシタ16,17に対する充放電によって一旦上昇したのち、設定値(10LSB)に整定する。この比較基準信号Vrefとアナログ入力信号VINが比較され、Lレベルの比較信号Scが比較回路12から出力される。
【0094】
このとき、比較範囲は、設定値(10LSB)を中心とする6LSB〜14LSBであり、アナログ入力信号VINはこの範囲に含まれる。つまり、アナログ入力信号VINは、1回目の変換に対する冗長整の範囲(−2LSB)に含まれる。このため、下位DACにおける2進探索において、アナログ入力信号VINに対して比較基準信号Vrefを設定することが可能である。つまり、1回目の誤判定(上位DACにおける誤判定)を、下位DACにおける2進探索によって補正することが可能である。
【0095】
そして、
図9(b)に示すように、4回目の比較(比較ステップT4)において、3回目の比較結果、つまりLレベルの比較信号Scに基づいて、下位DACの制御信号DL2を「0」に、下位DACの制御信号DL1を「1」に設定する。この設定に従って、
図9(a)に示すように、比較基準信号Vrefは8LSBへと変化する。この比較基準信号Vrefとアナログ入力信号VINが比較され、Lレベルの比較信号Scが比較回路12から出力される。
【0096】
次に、
図9(b)に示すように、5回目の比較(比較ステップT5)において、4回目の比較結果、つまりLレベルの比較信号Scに基づいて、下位DACの制御信号DL1を「0」に、下位DACの制御信号DL0を「1」に設定する。この設定に従って、
図9(a)に示すように、比較基準信号Vrefは7LSBへと変化する。この比較基準信号Vrefとアナログ入力信号VINが比較され、Hレベルの比較信号Scが比較回路12から出力される。
【0097】
次に、
図9(b)に示すように、比較完了ステップTeにおいて、5回目の比較結果、つまりHレベルの比較信号Scに基づいて、下位DACの制御信号DL0を「1」に設定する。
【0098】
上記のように、比較ステップT1〜T5及び比較完了ステップTeにおいて、第1の制御信号DUのビット値「10」と、第2の制御信号DLのビット値「001」が決定される。上記と同様に、第1の制御信号DUと第2の制御信号DLを補正してデジタル出力信号DOが生成される。つまり、デジタル出力信号DOは、7LSB(=8LSB+1LSB−2LSB)となり、誤判定を起こさない場合と同じ結果が得られる。
【0099】
次に、比較例のA/D変換回路について説明する。
図13に示すように、比較例のA/D変換回路200は、アナログ入力信号VINを4ビットのデジタル出力信号DO(D3〜D0)に変換する。
【0100】
このA/D変換回路200は、サンプル−ホールド回路201、比較回路202、SARロジック回路203、デジタル−アナログ変換器(「DAC」と表記。以下、D/A変換器という。)204,205、キャパシタ206,207、スイッチ208を有している。
【0101】
サンプル−ホールド回路201は、
図1に示すサンプル−ホールド回路11と同様に動作する。比較回路202は、
図1に示す比較回路12と同様に動作する。
第1のD/A変換器204と第2のD/A変換器205は2ビットのD/A変換器である。第2のD/A変換器205の出力端子に接続されたキャパシタ207の容量値は、基準容量値Cに設定されている。第1のD/A変換器204の出力端子に接続されたキャパシタ206の容量値は、第2のD/A変換器205のビット数に応じて、C×2^2に設定されている。
【0102】
SARロジック回路203は、第1のD/A変換器204に対する第1の制御信号SUと、第2のD/A変換器205に対する第2の制御信号SLを生成する。そして、SARロジック回路203は、比較回路202における比較結果つまり比較信号Scに基づいて、第1のD/A変換器204に対する第1の制御信号SUと、第2のD/A変換器205に対する第2の制御信号SLの値を順次設定する。第1の制御信号SUは上位2ビットのデジタル出力信号D3,D2として出力され、第2の制御信号SLは下位2ビットのデジタル出力信号D1,D0として出力される。
【0103】
SARロジック回路203は、カウンタ211、デコーダ212、設定レジスタ213,214を有している。上位DACコード(第1の制御信号SU)に対応する設定レジスタ213は、フリップフロップ回路221,222を有している。下位DACコード(第2の制御信号SL)に対応する設定レジスタ214は、フリップフロップ回路223,224を有している。
【0104】
このA/D変換回路200は、2進探索により比較基準信号Vrefを設定し、4回の比較動作において比較基準信号Vrefとアナログ入力信号VINを比較し、比較結果に基づいてD/A変換器204,205に対する制御信号SU,SLのビット値を設定する。
【0105】
図14(a)に示すように、比較基準信号Vrefは、キャパシタ206,207の容量値等に応じて変化する。比較基準信号Vrefの変化量は、上位側のビットを変更する、つまり上位DACコード(第1の制御信号SU)の出力信号D3を変更するときに最も大きく、比較基準信号Vrefが整定するまでに要する時間が長い。
【0106】
例えば、温度や電圧の変化によって整定に要する時間が変化すると、誤判定を起こす場合がある。
図14(a)に示す例では、1回目の比較(比較ステップT1)における誤判定によってHレベルの比較信号Scが生成される。この場合、
図14(b)に示すように、2回目の比較(比較ステップT2)において、1回目の比較結果(Hレベルの比較信号Sc)に基づいて、上位DACの出力信号D3を「1」に、上位DACの出力信号D2を「1」に設定する。この設定に従って、
図14(a)に示すように、比較基準信号Vrefは12LSBへと上昇する。そして、比較基準信号Vrefとアナログ入力信号VINが比較され、Lレベルの比較信号Scが生成される。
【0107】
次に、
図14(b)に示すように、3回目の比較(比較ステップT3)において、2回目の比較結果(Lレベルの比較信号Sc)に基づいて、上位DACの出力信号D3をそのままとし、上位DACの出力信号D2を「0」(前回−1)に設定する。さらに、下位DACの出力信号D1を「1」に、下位DACの出力信号D0を「0」に設定する。この設定に従って、
図14(a)に示すように、比較基準信号Vrefは10LSBへと下降する。そして、比較基準信号Vrefとアナログ入力信号VINが比較され、Lレベルの比較信号Scが生成される。
【0108】
そして、
図14(b)に示すように、4回目の比較(比較ステップT4)において、3回目の比較結果(Lレベルの比較信号Sc)に基づいて、下位DACの出力信号D1を「0」に、下位DACの出力信号D0を「1」に設定する。この設定に従って、
図14(a)に示すように、比較基準信号Vrefは9LSBへと変化する。この比較基準信号Vrefとアナログ入力信号VINが比較され、Lレベルの比較信号Scが生成される。
【0109】
次に、
図14(b)に示すように、比較完了ステップTeにおいて、4回目の比較結果、つまりLレベルの比較信号Scに基づいて、下位DACの出力信号D0を「0」に設定する。
【0110】
上記のように、比較ステップT1〜T4及び比較完了ステップTeにおいて、第1の制御信号SUのビット値「10」と、第2の制御信号SLのビット値「00」が決定される。この場合、デジタル出力信号DOは、8LSBとなり、アナログ入力信号VINに対して±0.5LSB以上の誤差を含む。
【0111】
図13に示す比較例のA/D変換回路200に含まれる2ビットのD/A変換器204,205を用いて、非2進探索アルゴリズムにより制御信号SU,SLを生成することで、冗長性を持たせることが可能である。この場合、
図13に示すSARロジック回路203の構成が変更される。
【0112】
図15は、非2進探索における比較基準信号Vrefの設定と冗長性を示す。
先ず、1回目の比較において、比較基準信号Vrefを8LSBとする。このときの冗長性は±2LSBである。
【0113】
次に、2回目の比較において、前回の比較結果が”H”の場合、前回の比較基準信号Vrefに対して+3LSBした値を新たな比較基準信号Vrefとし、前回の比較結果が”L”の場合、前回の比較基準信号Vrefに対して−3LSBした値を新たな比較基準信号Vrefとする。このときの冗長性は±1LSBである。
【0114】
3回目の比較において、前回の比較結果が”H”の場合、前回の比較基準信号Vrefに対して+2LSBした値を新たな比較基準信号Vrefとし、前回の比較結果が”L”の場合、前回の比較基準信号Vrefに対して−2LSBした値を新たな比較基準信号Vrefとする。このときの冗長性は±1LSBである。
【0115】
次に、4回目の比較において、前回の比較結果が”H”の場合、前回の比較基準信号Vrefに対して+1LSBした値を新たな比較基準信号Vrefとし、前回の比較結果が”L”の場合、前回の比較基準信号Vrefに対して−1LSBした値を新たな比較基準信号Vrefとする。このときの冗長性はない。
【0116】
そして、5回目の比較において、前回の比較結果が”H”の場合、前回の比較基準信号Vrefに対して+1LSBした値を新たな比較基準信号Vrefとし、前回の比較結果が”L”の場合、前回の比較基準信号Vrefに対して−1LSBした値を新たな比較基準信号Vrefとする。このときの冗長性はない。
【0117】
図16(a)は、非2進探索における比較基準信号Vrefの変化を示し、
図16(b)は比較信号Scに対する制御信号SU,SLの設定を示す。
図16(a)に示すように、1回目の比較(比較ステップT1)において、比較基準信号Vrefは、
図14に示す比較基準信号Vrefと同様に変化する。従って、この1回目の比較における誤判定によってHレベルの比較信号Scが生成される。この場合、
図16(b)に示すように、2回目の比較(比較ステップT2)において、1回目の比較結果(Hレベルの比較信号Sc)に基づいて、上位DACの出力信号D3を「1」,出力信号D2を「0」に設定し、下位DACの出力信号D1を「1」,出力信号D0を「1」に設定する。この設定に従って、
図16(a)に示すように、比較基準信号Vrefは11LSBへと上昇する。そして、比較基準信号Vrefとアナログ入力信号VINが比較され、Lレベルの比較信号Scが生成される。
【0118】
次に、
図16(b)に示すように、3回目の比較(比較ステップT3)において、2回目の比較結果(Lレベルの比較信号Sc)に基づいて、上位DACの出力信号D3を「1」,出力信号D2を「0」に設定する。さらに、下位DACの出力信号D1を「0」,出力信号D0を「1」に設定する。この設定に従って、
図16(a)に示すように、比較基準信号Vrefは9LSBへと変化する。この比較基準信号Vrefとアナログ入力信号VINが比較され、Lレベルの比較信号Scが生成される。
【0119】
そして、
図16(b)に示すように、4回目の比較(比較ステップT4)において、3回目の比較結果(Lレベルの比較信号Sc)に基づいて、上位DACの出力信号D3を「1」,出力信号D2を「0」に設定する。さらに、下位DACの出力信号D1を「0」,出力信号D0を「0」に設定する。この設定に従って、
図16(a)に示すように、比較基準信号Vrefは8LSBへと変化する。この比較基準信号Vrefとアナログ入力信号VINが比較され、Lレベルの比較信号Scが生成される。
【0120】
次に、
図16(b)に示すように、5回目の比較(比較ステップT5)において、4回目の比較結果(Lレベルの比較信号Sc)に基づいて、上位DACの出力信号D3を「0」,出力信号D2を「1」に設定する。さらに、下位DACの出力信号D1を「1」,出力信号D0を「1」に設定する。このとき、比較基準信号Vrefは、容量値が小さなキャパシタ207に対する充電によって一旦大きく上昇したのち、キャパシタ206に対する放電によって設定値(7LSB)へと下降する。そして、このときの比較基準信号Vrefの変化は、誤判定の要因となる。つまり、Lレベルの比較信号Scが生成される。この結果、
図16(b)に示すように、比較完了ステップTeにおいて、5回目の比較結果、つまりLレベルの比較信号Scに基づいて、上位DACの出力信号D3を「0」,出力信号D2を「1」に設定する。さらに、下位DACの出力信号D1を「1」,出力信号D0を「0」に設定する。従って、デジタル出力信号DOは6LSBとなり、アナログ入力信号VINに対して±0.5LSB以上の誤差を含む。つまり、非2進探索では、下位DACコードを設定するときに上位DACの出力信号を変更することによって誤判定を生じる場合がある。そして、このような比較のステップについて冗長性を設定することができないため、誤判定によって生じる誤差を補正することはできない。
【0121】
上記実施形態のA/D変換回路10は、第2のD/A変換器15(下位DAC)の第2の制御信号DL(下位DACコード)を設定する際に、第1のD/A変換器14(上位DAC)の第1の制御信号DUを変更しない。従って、比較基準信号Vrefが大きく変動することが抑制される。このため、冗長性を設定できない比較ステップにおける誤判定の発生を抑制することで、デジタル出力信号DOの精度低下を抑制する。
【0122】
次に、A/D変換回路10の変換速度について説明する。
変換速度は、
図1に示すD/A変換器14,15の出力信号Va,Vbによる比較基準信号Vrefの整定時間に対応する。A/D変換回路10は、クロック信号CLKのサイクルに従って比較ステップが遷移する。冗長の無いA/D変換回路では、比較基準信号Vrefを設定レベルに対して0.5LSB以内に整定する必要がある。また、冗長性を設定したA/D変換回路では、比較基準信号Vrefを設定レベルに対して冗長+0.5LSB以内に整定する必要がある。そして、1サイクルの時間は、比較基準信号Vrefが最も大きく変化するときの整定時間よりも長く設定される。
【0123】
ここで、4ビットのデジタル出力信号DOを生成するA/D変換回路、即ち、
図3及び
図4に示すA/D変換回路10と、
図13に示すA/D変換回路200について、変換時間を検討する。
【0124】
図15に示した非2進探索アルゴリズムの場合、D/A変換器204,205の5回の比較それぞれに必要な整定時間は、以下のようになる。
例えば、
図13に示すD/A変換器204,205の出力インピーダンスをR、比較回路202の入力容量をCとする。
【0125】
D/A変換器204に対する容量値は、
C*1/(1/4+1/(1+1))=C*1.33
となり、D/A変換器205に対する容量値は、
C*1/(1/1+1/(4+1))=C*0.83
となる。
【0126】
従って、各比較ステップにおける整定時間は、
1回目:−ln(2.5/8)*R*C*1.33=1.16*R*C*1.33=1.54*R*C
2回目:−ln(1.5/4)*R*C*1.33=1.67*R*C*1.33=2.22*R*C
3回目:−ln(1.5/4)*R*C*1.33=0.98*R*C*1.33=1.30*R*C
4回目:−ln(0.5/8)*R*C*1.33=2.77*R*C*1.33=3.68*R*C
5回目:−ln(0.5/8)*R*C*1.33=2.77*R*C*1.33=3.68*R*C
となる。そして、比較完了までに必要な時間は、
3.68*R*C*5=18.40*R*C
となる。
【0127】
次に、本実施形態のA/D変換回路10を説明する。
上記と同様に、
図3に示すD/A変換器14,15の出力インピーダンスをR、比較回路12の入力容量をCとする。
【0128】
D/A変換器14に対する容量値は、
C*1/(1/4+1/(2+1))=C*1.71
となり、D/A変換器15に対する容量値は、
C*1/(1/2+1/(4+1))=C*1.43
となる。
【0129】
従って、各比較ステップにおける整定時間は、
1回目:−ln(2.5/8)*R*C*1.71=1.16*R*C*1.71=1.98*R*C
2回目:−ln(2.5/8)*R*C*1.71=1.16*R*C*1.71=1.98*R*C
3回目:−ln(0.5/4)*R*C*1.71=2.1*R*C*1.71=3.59*R*C
4回目:−ln(0.5/4)*R*C*1.43=2.1*R*C*1.43=3.00*R*C
5回目:−ln(0.5/2)*R*C*1.43=1.4*R*C*1.43=2.00*R*C
となる。そして、比較完了までに必要な時間は、
3.59*R*C*5=17.95*R*C
となる。
【0130】
このように、本実施形態の場合、比較例と比べて、各比較サイクルの時間(例えば、クロック信号CLKの1周期(1サイクル)の時間を短くすることができ、変換完了までに要する時間を短縮することができる。このような時間の短縮は、デジタル出力信号DOのビット数が多いほど顕著となる。
【0131】
例えば、10ビットのA/D変換回路(5ビットの上位DACと5ビットの下位DAC)の場合、上位DACに対する容量値は、
C*1/(1/32+1/(1+6))=C*5.74
となり、下位DACに対する容量値は、
C*1/(1/1+1/(32+6))=C*0.97
となる。従って、非2進探索を行う場合、10回目の変換において上位DACの出力信号D3が変化する場合の整定時間は、
−ln(0.5/512)*R*C*5.74=6.93*R*C*5.74=39.79*R*C
となり、変換完了までに要する時間は、
39.79*R*C*11=437.69*R*C
となる。
【0132】
2進探索を行う場合、1回目の比較における整定時間が最も長く、
−ln(0.5/512)*R*C*5.74=6.93*R*C*5.74=39.79*R*C
となり、変換完了までに要する時間は、
39.79*R*C*10=397.90*R*C
となる。
【0133】
本実施形態の場合、上位DACを5ビット、下位DACを6ビットとする。この場合、上位DACに対する容量値は、
C*1/(1/32+1/(2+6))=C*6.40
となり、下位DACに対する容量値は、
C*1/(1/2+1/(32+6))=C*1.90
となる。そして、6回目の比較における整定時間が最も長く、
−ln(0.5/32)*R*C*6.40=4.16*R*C*6.40=26.62*R*C
となり、変換完了までに要する時間は、
26.62*R*C*11=292.82*R*C
となる。
【0134】
このように、変換に要する時間が比較例(5ビットの上位DAC及び下位DACを用いた2進探索、非2進探索)と比べて短くなる。
以上記述したように、本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
【0135】
(1)A/D変換回路10は、アナログ入力信号VINをNx(=N1+N2A)ビットのデジタル出力信号DOに変換する。A/D変換回路10は第1のD/A変換器14と第2のD/A変換器15を有する。第1のD/A変換器14は、デジタル出力信号DOの上位側のビット数に応じたN1ビットの第1の制御信号DUに応じた信号Vaを出力する。第2のD/A変換器15は、デジタル出力信号DOの下位側のビット数N2Aと補正ビットのビット数Kに応じたN2B(=N2A+K)ビットの第2の制御信号DLに応じた信号Vbを出力する。比較回路12は、第1のD/A変換器14の出力信号Vaと第2のD/A変換器15の出力信号Vbに応じた比較基準信号Vrefとアナログ入力信号VINを比較して比較信号Scを出力する。SARロジック回路13は、制御回路21と補正回路22を有している。制御回路21は、比較信号Scに応じて第1の制御信号DUと第2の制御信号DLの各ビット値を設定する。補正回路22は、第1の制御信号DUに2^(Nx−N1)を乗算した結果の値に第2の制御信号DLを加算した合計値に応じてデジタル出力信号DOを生成する。
【0136】
第2のD/A変換器15の第2の制御信号DLのビット数を、デジタル出力信号DOの下位ビットのビット数N2Aと補正ビットのビット数Kに応じたN2Bビットとした。これにより、第2のD/A変換器15の出力信号Vbに基づいて変更する比較基準信号Vrefによる比較において判定する範囲は、第1のD/A変換器14の出力信号Vaに基づいて設定した比較基準信号Vrefにおける比較の範囲にオーバーラップする。このオーバーラップによる冗長性により、誤判定の判定結果を補正することができ、デジタル出力信号DOの精度低下を抑制することができる。
【0137】
(2)第1のD/A変換器14の出力電圧(第1の参照電圧Vr1)の1ステップの変化量よりも大きな電圧範囲の第2参照電圧Vr2を生成するように、第2のD/A変換器15のビット数及び出力電圧範囲を設定した。そして、補正ビットのビット数Kに応じて、第1の参照電圧Vr1と第2の参照電圧Vr2の合成電圧に対してオフセットした参照電圧Vrefを比較回路12に供給する。比較回路12は、参照電圧Vrefとアナログ入力信号VINの電圧を大小比較し、比較結果に応じた比較信号Scを出力する。
【0138】
下位側の制御信号DLの下位ビットの値を順次決定する際に、上位側の制御信号DUを変更することなく、同じ値の参照電圧Vrefを生成ことができる。例えば,「11/100」→「11/010」と[10/100」→「10/110」では同じ12LSBの参照電圧Vrefを比較回路12に供給する。これにより、比較サイクルT4,T5において、容量値の大きなキャパシタ16に対する第1参照電圧Vr1が変化しないため、参照電圧Vrefの大きな変動を抑制することができる。これにより、制御信号DLの下位ビットの値を決定するときの誤判定を抑制することができる。そして、誤判定の抑制により、精度の高いデジタル出力信号DOを生成することができる。
【0139】
尚、上記各実施形態は、以下の態様で実施してもよい。
・上記実施形態において、デジタル出力信号DOのビット数Nx、第1のD/A変換器14のビット数N1、第2のD/A変換器15のビット数N2B、補正ビットのビット数Kのそれぞれを適宜変更してもよい。例えば、デジタル出力信号DOのビット数Nxを「6」、第1のD/A変換器14のビット数N1を「3」、第2のD/A変換器15のビット数N2B(=N2A+K)を「5」、補正ビットのビット数Kを「2」とする。また、デジタル出力信号DOのビット数Nxを「6」、第1のD/A変換器14のビット数N1を「4」、第2のD/A変換器15のビット数N2Bを「5」、補正ビットのビット数Kを「3」とする。
【0140】
・上記実施形態では、第1のD/A変換器14と第2のD/A変換器15に対して同じ電圧値の基準電圧VRH,VRLを供給し、キャパシタ16,17の容量比によって0〜16LSBの範囲の第1の参照電圧Vr1と、0〜8LSBの範囲の第2の参照電圧Vr2を合成して参照電圧Vrefを生成した。これに対し、所望の参照電圧Vrefを生成することができればよく、各D/A変換器14,15に供給する基準電圧VRH,VRLとキャパシタ16,17の容量比を適宜変更してもよい。
【0141】
例えば、アナログ入力信号VINの電圧範囲FSRと等しい電圧値の基準電圧を第1のD/A変換器14に供給し、電圧範囲FSRの1/2の電圧値の基準電圧を第2のD/A変換器15に供給する。なお、D/A変換器14,15における低電位側の基準電圧VRLは0[V]とする。そして、キャパシタ16,17の容量値を基準容量Cと等しくする。
【0142】
・第1のD/A変換器14の出力信号Vaを増幅する増幅器と、第2のD/A変換器15の出力信号Vbを増幅する増幅器を用い、それらの増幅器の増幅率に応じてキャパシタ16,17の容量値C1,C2を設定してもよい。
【0143】
・第1のD/A変換器14と第2のD/A変換器15のうちの少なくとも一方を、電流出力のデジタル−アナログ変換器としてもよい。