(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来より、プリンター、複写機などとして電子写真方式の画像形成装置が知られている。この画像形成装置では、転写部材により用紙に画像を転写し、その後、定着部材により用紙に画像を定着するという一連のプロセスを、搬送される用紙に対して実行する。搬送過程にある用紙に着目した場合、当該用紙は、転写部材によって形成される転写ニップと、定着部材によって形成される定着ニップとの両者に跨がった状態となることがある。ところで、定着部材の用紙搬送速度には変動成分が含まれるため、速度変動が生じた場合には、定着部材によって用紙が引っ張られ転写ずれを引き起こすことが想定される。変動成分の要因としては、定着ニップの状態、温度、定着部材の機械精度、定着部材を駆動する駆動手段の動作ムラといった種々の原因が考えられる。そのため、用紙の引っ張り合いを抑制すべく、定着部材の用紙搬送速度を適切に制御することで、定着ニップと転写ニップとの間で用紙をループ状に撓ませることとしている。すなわち、用紙に生じさせた撓みによって、定着部材の用紙搬送速度の変動を吸収することとしている。
【0003】
なお、用紙搬送速度の制御に関しては、以下に示すような技術が知られている。例えば特許文献1には、画像不良を発生させることなく用紙を搬送することのできる画像形成装置が開示されている。この画像形成は、トナー像が転写された用紙を定着部に搬送する用紙搬送速度が可変な用紙搬送ベルトを備えており、この用紙搬送ベルトは、用紙の剛性に応じて、用紙搬送ベルトの用紙搬送速度が所定の関係を満たすように増速又は減速するように制御される。
【0004】
例えば特許文献2には、定着フィルムと加圧ローラーとが互いに圧接するニップ部に挟持されて、用紙とともに移動する速度検出フィルムと、この速度検出フィルムに形成された信号パターンを読取る読取り手段と、この読取り手段からの読取り信号に基づいて定着駆動部の駆動速度を制御する速度制御手段と、を有する画像形成装置が開示されている。
【0005】
例えば特許文献3には、用紙の移動状態を検出することができる画像形成装置が開示されている。この画像形成装置は、用紙搬送手段と、移動する用紙表面における異なる領域を互いに連続的に撮影して画像を出力する複数の撮像手段と、出力された複数の画像に基づき複数の領域における用紙の移動速度、用紙の移動量若しくは用紙の移動方向を検出する移動状態検出手段と、この検出結果に基づき用紙搬送手段を制御する用紙搬送制御手段と、を有している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本実施形態にかかる画像形成装置を模式的に示す構成図である。また、
図2は、画像形成装置の要部を拡大して模式的に示す構成図である。この画像形成装置は、例えば複写機といった電子写真方式の画像形成装置であり、複数の感光体を一本の中間転写ベルトに対面させて縦方向に配列することによりフルカラーの画像を形成する、いわゆる、タンデム型カラー画像形成装置である。
【0019】
画像形成装置は、原稿読取装置SC、画像形成部10Y,10M,10C,10K、定着装置50、制御部70を主体に構成され、これらが一つの筐体内に収められている。
【0020】
原稿読取装置SCは、走査露光装置の光学系により原稿の画像を走査露光し、その反射光をラインイメージセンサーにより読み取り、これにより、画像信号を得る。この画像信号は、A/D変換、シェーディング補正、圧縮等の処理が施された後、画像データとして制御部70に入力される。なお、制御部70に入力される画像データとしては、原稿読取装置SCで読み取ったものに限らず、例えば、画像形成装置に接続されたパーソナルコンピューターや他の画像形成装置から受信したものや、USBメモリといった可搬性の記録媒体に格納されたものであってもよい。
【0021】
画像形成部10Y,10M,10C,10Kは、イエロー(Y)の画像を形成する画像形成部10Y、マゼンダ(M)の画像を形成する画像形成部10M、シアン(C)の画像を形成する画像形成部10C、ブラック(K)の画像を形成する画像形成部10Kに対応している。
【0022】
画像形成部10Yは、感光体ドラム1Y及びその周辺に配置された帯電部2Y、光書込部3Y、現像装置4Y及びドラムクリーナー5Yで構成されている。同様に、画像形成部10M,10C,10Kは、感光体ドラム1M,1C,1K及びその周辺に配置された帯電部2M,2C,2K、光書込部3M,3C,3K、現像装置4M,4C,4K及びドラムクリーナー5M,5C,5Kで構成されている。
【0023】
感光体ドラム1Y,1M,1C、1Kは、帯電部2Y,2M,2C,2Kによりその表面が一様に帯電させられており、光書込部3Y,3M,3C,3Kによる走査露光により、感光体ドラム1Y,1M,1C、1Kには潜像が形成される。さらに、現像装置4Y,4M,4C、4Kは、トナーで現像することによって感光体ドラム1Y,1M,1C、1K上の潜像を顕像化する。これにより、感光体ドラム1Y,1M,1C、1K上には、イエロー、マゼンダ、シアン及びブラックのいずれかに対応する所定色の画像(トナー画像)が形成される。感光体ドラム1Y,1M,1C、1K上に形成された画像は、1次転写ローラー7Y,7M,7C,7Kにより、ベルト状の中間転写体である中間転写ベルト6上の所定位置へと逐次転写される。
【0024】
中間転写ベルト6上に転写された各色よりなる画像は、後述する用紙搬送部20により所定のタイミングで搬送される用紙Pに対して、転写部材である2次転写ローラー9によって転写される。この2次転写ローラー9は、ローラー状の回転部材であり、中間転写ベルト6と圧接して配置されることによりニップ(転写ニップ)を構成し、用紙Pを搬送しながら当該用紙Pに画像を転写する。
【0025】
用紙搬送部20は、搬送経路に従って用紙Pを搬送する。用紙Pは給紙トレイ21に収容されており、当該給紙トレイ21に収容された用紙Pは、給紙部22により取り込まれ、搬送経路へと送り出される。搬送経路において、転写ニップ部よりも上流側には、用紙Pを搬送する複数の搬送手段が設けられている。個々の搬送手段は、互いに圧接された一対のローラーによって構成されており、駆動手段である電動モーターを通じて少なくとも一方のローラーが回転駆動する。そして、搬送手段は、用紙Pを挟持して回転することにより、用紙Pを搬送する。なお、搬送手段は、一対のローラーで構成する以外にも、ベルト同士の組み合わせや、ベルト及びローラーの組み合わせといったように、一対の回転部材からなる構成を広く採用することができる。
【0026】
定着装置50は、転写ニップから搬送される用紙Pに、画像を定着させる定着処理を施す装置である。定着装置50は、互いに圧接して配置されることによりニップ(定着ニップ)を構成する一対の定着部材、例えば定着ローラー51,52と、当該定着ローラー51,52の一方又は双方を加熱するヒーターとで構成されている。個々の定着ローラー51,52は、回転可能に構成されており、駆動手段である定着ローラー駆動モーター53(
図3参照)を通じて、少なくとも一方のローラー(例えば定着ローラー52)が回転駆動する。一対の定着ローラー51,52は、用紙Pを搬送するとともに、一対の定着ローラー51,52による加圧と定着ローラー51,52の有する熱との作用を通じて、画像を用紙Pに定着させる。
【0027】
定着装置50により定着処理が施された用紙Pは、排紙ローラー28により、筐体の外部側面に取り付けられた排紙トレイ29に排出される。また、用紙Pの裏面にも画像形成を行う場合、用紙表面に対する画像形成を終えた用紙Pは、切換ゲート30により、下方にある反転ローラー31へと搬送される。反転ローラー31は、搬送された用紙Pの後端を挟持した後、逆送することによって用紙Pを反転させて、再給紙搬送経路に送り出す。この再給紙搬送経路へと送り出された用紙Pは、再給紙用の複数の搬送手段によって搬送され、転写位置へと用紙Pを回帰させる。
【0028】
操作部60は、ユーザーによって設定される種々の情報を制御部70に出力する。操作部60としては、例えば、ディスプレイ上に表示される情報に従い、入力操作を行うことが可能なタッチパネルを用いることができる。かかる操作部60を通じて、ユーザーは、印刷条件、すなわち、用紙Pの種類(例えば、厚み(坪量)やサイズ)、画像の濃度や倍率などを設定することができる。また、制御部70は、操作部60を制御することにより、当該操作部60を介してユーザーに種々のメッセージを表示することができる。
【0029】
図3は、本実施形態に係る画像形成装置の制御系の構成を示すブロック図である。制御部70は、画像形成装置を統合的に制御する機能を担っており、CPU、ROM、RAM、I/Oインターフェースを主体に構成されたマイクロコンピュータを用いることができる。
【0030】
制御部70は、画像形成部10(画像形成部10Y,10M,10C,10Kといった画像形成に必要な要素を総称するものとする)を制御することにより、用紙Pに画像を形成する。また、本実施形態との関係において、制御部70は、定着ローラー52を回転駆動する定着ローラー駆動モーター53に速度指令を出力し、この定着ローラー52の用紙搬送速度を制御する。この場合、制御部70は、記憶部75に格納された速度指令のプロファイルに基づいて、定着ローラー駆動モーター53に速度指令を出力する。この速度指令のプロファイルは、定着ローラー52の1回転周期に対応する用紙搬送速度の推移と、2次転写ローラー9の用紙搬送速度とに基づいて作成されている。記憶部75としては、ハードディスク装置や、半導体メモリといった各種の記憶装置を利用することができ、制御部70によって読み出し又は書き込み可能に構成されている。
【0031】
かかる制御を行うために、制御部70には、第1の用紙検出センサー71及び第2の用紙検出センサー72並びに位相検出センサー73からのセンサー信号が入力されている。
【0032】
第1の用紙検出センサー71は、搬送される用紙P(例えば用紙Pの先端)が、搬送経路上の第1の検出位置へと到達したことを検出する(用紙検出部)。また、第2の用紙検出センサー72は、搬送される用紙P(例えば用紙Pの先端)が、搬送経路上の第2の検出位置へと到達したことを検出する(用紙検出部)。個々の用紙検出センサー71,72としては、フォトセンサなどを用いることができる。個々の用紙検出センサー71,72は、通常はオフ信号を出力しているが、検出位置へと用紙先端が到達するとオン信号へと切り替わり、当該用紙Pが検出位置を通過している期間に亘って、オン信号を出力し続ける。第1の用紙検出センサー71に係る第1の検出位置は、定着装置50よりも用紙搬送方向の下流側に設定され、第2の用紙検出センサー72に係る第2の検出位置は、第1の検出位置よりも用紙搬送方向の下流側に所定距離だけオフセットするように設定されている。
【0033】
位相検出センサー73は、回転駆動する定着ローラー52の1回転周期を検出するセンサーである。この位相検出センサー73は、例えば、定着ローラー52の表面に形成された基準マークを読み取ることで、定着ローラー52の1回転周期を検出することができ、また、この基準マークを検出したタイミングからの経過時間に基づいて定着ローラー52の回転方向の位置(以下「位相」という)を検出することができる。
【0034】
図4は、本実施形態に係る画像形成装置の制御手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、調整モードの実行をトリガーとして呼び出され、制御部70によって実行される。この調整モードは、工場出荷時、ユーザーの操作に起因する操作部60からの調整モード実行信号の入力時、制御部70により判断される所定のメンテナンス周期を具備した時といったように、非画像形成時に実行される。ここで、
図5は、定着ローラー52の1回転周期に対応する用紙搬送速度の推移の測定概念を示す説明図である。なお、同図において、Rdは位相検出センサー73の検出信号を示し、D1は第1の用紙検出センサー71の検出信号を示し、D2は第2の用紙検出センサー72の検出信号を示す。また、同図下段において、横軸は位相Rd、縦軸は速度Vを示す(以下、対応する図面において同じ)。
【0035】
まず、ステップ10(S10)において、制御部70は、用紙Pの搬送を開始する。この場合、制御部70は、定着ローラー駆動モーター53に対しても所定の速度指令を出力する。なお、調整モードは、非画像形成時に実行するものであるため、制御部70は、調整モードの実行にあたり用紙Pを強制的に搬送することとなり、また、用紙Pが搬送されても当該用紙Pに対する画像形成は行わない。
【0036】
ステップ11(S11)において、制御部70は、第1の用紙検出センサー71の検出信号D1に基づいて、第1の検出位置を用紙Pの先端が通過したか否かを判断する。このステップ11において肯定判定された場合、すなわち、用紙Pの先端が第1の検出位置を通過した場合には、ステップ12(S12)に進む。一方、ステップ11において否定判定された場合、すなわち、用紙Pの先端が第1の検出位置を通過していない場合には、ステップ11の処理を再度行う。
【0037】
ステップ12において、制御部70は、第2の用紙検出センサー72の検出信号D2に基づいて、第2の検出位置を用紙Pの先端が通過したか否かを判断する。このステップ12において肯定判定された場合、すなわち、用紙Pの先端が第2の検出位置を通過した場合には、ステップ13(S13)に進む。一方、ステップ12において否定判定された場合、すなわち、用紙Pの先端が第2の検出位置を通過していない場合には、ステップ12の処理を再度行う。
【0038】
ステップ13において、制御部70は、位相検出センサー73の検出信号Rdに基づいて、定着ローラー52の位相Rd(Rd1,Rd2,Rd3,Rd4,Rd5・・・)を検出する。定着ローラー52の位相の検出タイミングは、第2の用紙検出センサー72において用紙Pの先端が検出されるタイミングと対応している。
【0039】
ステップ14(S14)において、制御部70は、用紙Pの先端が第1の検出位置を通過したタイミングと、用紙Pの先端が第2の検出位置を通過したタイミングとの差から、第1の検出位置から第2の検出位置までの用紙先端の通過時間Tf(Tf1,Tf2,Tf3,Tf4,Tf5・・・)を算出する。そして、制御部14は、第1の検出位置から第2の検出位置までの距離を通過時間Tfで除算することにより、ステップ13において検出された位相における定着ローラー52の用紙搬送速度Vf(Vf1,Vf2,Vf3,Vf4,Vf5・・・)を算出する。
【0040】
ステップ15(S15)において、制御部70は、ステップ13において検出された定着ローラー52の位相Rdと、ステップ14において算出された定着ローラー52の用紙搬送速度Vfとを関連付けた上で、このデータを記憶部75に記憶させる。
【0041】
ステップ16(S16)において、制御部70は、速度指令のプロファイルを作成するために必要な数だけデータが集まったか否かを判断する。規定のデータ数は、1回転周期に対応する用紙搬送速度Vfの推移が十分に再現されるかといった事情などを考慮して、実験やシミュレーションを通じて予め設定されている。このステップ16において肯定判定された場合、すなわち、データが必要数だけ集まり、定着ローラー52の1回転周期に対応する用紙搬送速度Vfの推移が測定された場合には、ステップ17(S17)に進む。一方、ステップ16において否定判定された場合、すなわわち、データが必要数だけ集まっていない場合には、ステップ10に戻り上述の処理を繰り返す。
【0042】
ステップ17において、制御部70は速度指令プロファイルを作成する。ここで、
図6は用紙搬送速度Vfの推移及び速度指令のプロファイルの説明図である。同図において、Vftは定着ローラー駆動モーター53の速度指令を示し、Vt2は2次転写ローラー9の用紙搬送速度を示し、Vfは定着ローラー52の用紙搬送速度を示す。
【0043】
まず、制御部70は、記憶部75に記憶された各データ、すなわち、それぞれが所定の位相における定着ローラー52の用紙搬送速度Vfを参照し、定着ローラー52の1回転周期に対応する用紙搬送速度Vfの推移を作成する。同図(a)に示すように、用紙搬送速度Vfの推移から分かるように、用紙搬送速度Vfには、定着ニップの押圧状態、温度、定着部材の精度、定着部材の駆動機構の動作ムラといったことに起因して変動成分が含まれる。
【0044】
そこで、同図(b)に示すように、制御部70は、この用紙搬送速度Vfの推移の測定結果に基づいて速度指令Vftaのプロファイルを作成する。この速度指令Vftaのプロファイルは、用紙搬送速度Vfに含まれる変動成分をキャンセルするとともに、定着ローラー52の用紙搬送速度Vfが2次転写ローラー9の用紙搬送速度Vt2から特定される目標速度(例えば、2次転写ローラー9の用紙搬送速度Vt2よりも若干低下させた値)となるように作成されている。例えば、制御部70は、用紙搬送速度Vfのプロファイルを反転させた逆位相の関係で速度指令Vftaのプロファイルを設定するといった如くである。
【0045】
ステップ18(S18)において、制御部70は、速度指令のプロファイルを記憶部75に格納する。速度指令プロファイルが既に存在する場合、制御部70は、新たに作成した速度指令のプロファイルにて従前のプロファイルを更新し、これがまだ存在していない場合には、速度指令のプロファイルを新規に格納する。
【0046】
以上に示す手順にて速度指令プロファイルが作成されると、制御部70は、ジョブの実行時において、記憶部75に格納された速度指令プロファイルに基づいて、定着ローラー駆動モーター53に速度指令を出力する。具体的には、制御部70は、位相検出センサー73の検出信号Rdを参照し、定着ローラー52の位相と対応する関係にある速度指令を定着ローラー駆動モーター53に出力する。
【0047】
このように本実施形態に係る画像形成装置は、2次転写ローラー9と、定着ローラー52と、定着ローラー52を回転駆動する定着ローラー駆動モーター53と、このモーター53に速度指令を出力し定着ローラー52の用紙搬送速度を制御する制御部70と、定着ローラーの1回転周期に対応する速度指令のプロファイルを格納する記憶部75とを有する。ここで、速度指令のプロファイルは、定着ローラー52の1回転周期に対応する用紙搬送速度の推移と、2次転写ローラー9の用紙搬送速度とに基づいて作成されており、制御部70は、速度指令のプロファイルに基づいて、定着ローラー駆動モーター53に速度指令を出力する。
【0048】
かかる構成によれば、速度指令のプロファイルは、定着ローラー52の1回転周期に対応する用紙搬送速度の推移と、2次転写ローラー9の用紙搬送速度とに基づいて作成されている。そのため、速度指令のプロファイルに基づいて速度指令を出力することで、定着ローラー52の用紙搬送速度を適切に制御することができ、定着ローラー52の用紙搬送速度と2次転写ローラー9の用紙搬送速度とを調和させることができる。これにより、ループ形成を不要とする用紙の搬送形態を実現することができる。その結果、厚紙を搬送するようなケースであっても、また、このような用紙Pに限らずとも、画像の転写性能の低下を抑制することができるので、画像品質の低下を抑制することができる。
【0049】
また、本実施形態において、制御部70は、定着ローラー駆動モーター53に所定の速度指令を出力し、定着ローラー52の1回転周期に対応する用紙搬送速度の推移を測定する(測定処理)。そして、制御部70は、この測定処理の結果に基づいて、用紙搬送速度に含まれる変動成分をキャンセルするとともに定着ローラー52の用紙搬送速度が2次転写ローラー9の用紙搬送速度から特定される目標速度となるように、速度指令のプロファイルを作成している。
【0050】
かかる構成によれば、用紙搬送速度に含まれる変動成分をキャンセルするように速度指令のプロファイルを作成することで、定着ローラー52による用紙搬送速度を一定の速度に保持することができる。また、定着ローラー52の用紙搬送速度が2次転写ローラー9の用紙搬送速度から特定される目標速度となるように速度指令のプロファイルを作成することで、定着ローラー52の用紙搬送速度を2次転写ローラー9の用紙搬送速度に応じた速度にコントロールすることができるので、両者の間で用紙Pが引っ張られるといった事態を適切に抑制することができる。
【0051】
本実施形態において、制御部70は、非画像形成時に実行する調整モードにおいて用紙Pを強制的に搬送することで、用紙搬送速度のプロファイルを作成するための測定処理を行っている。しかしながら、制御部70は、印刷ジョブの実行に伴う用紙搬送に応じて、測定処理を行ってもよい。前者の手法によれば、データの収集が中段されることなく、必要なデータを確実に収集することができるの、所望のプロファイルを適切に作成することができる。一方で、後者の手法によれば、印刷ジョブを実行しつつ、その過程で所望のプロファイルを得ることができるので、生産性を低下させることがない。
【0052】
なお、前者の手法及び後者の手法を組み合わせて行ってもよい。例えば、調整モードを優先的に実行して、所望のプロファイルを新規に作成し、これを記憶部75に記憶させ、その後は、印刷ジョブの実行とともにプロファイルを作成し、これにより記憶部75の内容を更新するといった如くである。この構成によれば、適切なプロファイルを保有する状態で印刷ジョブを開始することができるとともに、当該プロファイルを更新することにより、経時的な劣化や機内の温度変化といった後発的な要因に起因する速度変動成分をプロファイルに反映することができる。
【0053】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態に係る画像形成装置について説明する。第2の実施形態に係る画像形成装置が、第1の実施形態のそれと相違する点は、測定処理に要する時間の最小化を図ることにある。なお、第1の実施形態と重複する点については説明を省略することとし、以下、相違点を中心に説明を行う。
【0054】
プロファイルを作成するにあたり、用紙搬送速度の計測は用紙Pがセンサーの検出位置に到達するタイミングと、そのときの定着ローラー52の位相に準じて作成される。用紙搬送速度の測定が実施される定着ローラー52の位相は、その1回転の範囲に離散的に存在する必要があるが、用紙Pの搬送態様によっては必要なデータを収集するまでの時間が長期に及ぶことがある。そこで、本実施形態では、制御部70は、以下に示すような関係に基づいて用紙Pを搬送することとしている。
〔数式1〕
Tid=TL+Td−(Tp+Ti0)
【0055】
図7は、数式1に示すパラメータの説明図である。同数式において、Tidは、用紙Pの給紙間隔の補正値であり、Ti0は、初期的に設定される用紙Pの給紙間隔である。ここで、用紙Pの給紙間隔は、先行する用紙Pと、これに続く後続の用紙Pとの間の間隔を示す時間である。また、
図7に示すように、TLは、測定処理における定着ローラー52の1回転周期であり、Tdは、定着ローラー52の位相分割周期、すなわち、速度指令のプロファイルの作成に必要なプロット周期であり、定着ローラー52の1回転周期TLを位相分割数で除算することにより算出される。また、Tpは、用紙Pの1枚あたり紙送り時間である。
【0056】
すなわち、計測処理において、制御部70は、初期値Ti0に補正値Tidを加算することにより、用紙Pの給紙間隔を補正し、この補正した給紙間隔にて用紙Pを搬送する。換言すれば、制御部70は、定着ローラー52の1回転周期と、用紙1枚あたりの紙送り時間と、用紙の給紙間隔と、速度指令のプロファイルの作成に必要な定着部材の位相分割周期とに基づいて、用紙の給紙間隔を補正している。かかる構成によれば、所定の位相分割数に対応したデータを最も短期間で収集できるように用紙Pを搬送することができる。これにより、速度指令プロファイルの作成に要する処理期間を短くすることができるので、ダウンタイムの長期化を抑制することができる。
【0057】
(第3の実施形態)
以下、第3の実施形態に係る画像形成装置について説明する。第3の実施形態に係る画像形成装置が、第1の実施形態のそれと相違する点は、測定処理に要する時間の最小化を図ることにある。なお、第1の実施形態と重複する点については説明を省略することとし、以下、相違点を中心に説明を行う。
【0058】
図8は、用紙Pに形成された検出パターンPaの説明図である。本実施形態では、調整モードの実行にあたり、用紙Pに所定のパターンを形成することとしている。このパターンは、用紙搬送方向に沿って一列に配列された複数の検出パターンPaで構成されている。そして、制御部70は、測定処理にあたり、個々の検出パターンPaが形成された用紙Pを搬送する。制御部70は、個々の検出パターンPa毎に、第1の用紙検出センサー71及び第2の用紙検出センサー72の検出結果から得られる検出パターンPaの通過時間に応じて用紙搬送速度を特定する。これにより、
図9に示すように、用紙Pの1枚あたりの搬送により、個々のパターンPaに対応した複数のデータA1,A2を収集することができる。
【0059】
このように本実施形態によれば、速度指令のプロファイルの作成に要する処理期間を短くすることができるので、ダウンタイムの長期化を抑制することができる。また、位相分割周期に対応して検出パターンPaのレイアウトを設定することで、測定処理を効率的に実行することができる。
【0060】
なお、このような検出パターンPaを用いた計測処理の実施形態は、調整モードの実行時のみならず、印刷ジョブの実行に伴う用紙搬送に応じて行ってもよい。例えば、画像形成後の後処理によって裁断される領域が存在するような場合には、当該裁断領域に検出パターンPaを形成することが好ましい。これにより、最終的な仕上がり形態に影響を与えることなく、測定処理を行うことができる。
【0061】
なお、上述した各実施形態では、第1の用紙検出センサー71及び第2の用紙検出センサー72は、定着ローラー52よりも下流側に配置され、用紙Pの先端を検出している。しかしながら、第1の用紙検出センサー71及び第2の用紙検出センサー72は定着ローラー51,52の用紙搬送速度を検出するためのものであるから、少なくとも定着ローラー51,52によって用紙Pが挟持されている状態の用紙Pを検出し得る範囲に設定されていれば足りる。例えば、第1の用紙検出センサー71及び第2の用紙検出センサー72を、定着ローラー52よりも用紙搬送方向の上流側の配置し、用紙Pの後端を検出するものであってもよい。また、これに限らず、第1の用紙検出センサー71及び第2の用紙検出センサー72は、前述の条件を満たす範囲において用紙搬送方向にオフセットして配置されていれば足りる。また、用紙の検出箇所は、端部に限定されず、検出マークを用紙Pの任意の位置に形成し、検出マークの存在によって用紙Pを検出するようにしてもよい。
【0062】
以上、本発明の実施形態にかかる画像形成装置について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、その発明の範囲内において種々の変形が可能であることはいうまでもない。