特許第6036337号(P6036337)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6036337
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】車両用ステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 3/12 20060101AFI20161121BHJP
   B62D 1/20 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   B62D3/12
   B62D3/12 507
   B62D1/20
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-11145(P2013-11145)
(22)【出願日】2013年1月24日
(65)【公開番号】特開2014-141183(P2014-141183A)
(43)【公開日】2014年8月7日
【審査請求日】2015年12月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(72)【発明者】
【氏名】瀧本 学
【審査官】 鈴木 敏史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−322788(JP,A)
【文献】 特開平09−242880(JP,A)
【文献】 特開2005−41430(JP,A)
【文献】 実開昭59−85778(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 3/12
B62D 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングに回転可能に支持されたピニオン軸と、
前記ピニオン軸のピニオンと噛み合うラックを有し、前記ハウジング内に設置された軸方向に変位可能なラック軸と、
前記ハウジングの前記ピニオン軸を覆うジョイントカバーと、
前記ジョイントカバーに嵌合し、前記ピニオン軸の外周を囲むダストカバーと、
前記ダストカバーの内周に設けた遮音部材と、
前記ダストカバー内に設けられ、前記遮音部材と前記ピニオン軸の外周との間をシールするシール部材と、を備え、
前記遮音部材外周端部前記ダストカバーの内周に形成された環状溝に嵌合するとともに、前記遮音部材の内周端部前記シール部材の外周に形成された環状溝に嵌合することを特徴とする車両用ステアリング装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用ステアリング装置において、
前記ジョイントカバーは、前記ハウジングの前記ピニオン軸方向の上端に取り付けられ、前記ハウジングの上端に形成された開口部を覆っていることを特徴とする車両用ステアリング装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両用ステアリング装置において、
前記遮音部材は、前記ダストカバーの前記ラックと前記ピニオンとの噛み合い側に設けられていることを特徴とする車両用ステアリング装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用ステアリング装置において、
前記遮音部材は、環状で円板形状であることを特徴とする車両用ステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ステアリング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ラックアンドピニオン式のステアリングギヤのピニオン軸は、車両のダッシュボードのコラムホールを挿通して車室内に延びている。従来、上端がコラムホールに係合されたゴム製のコラムホールカバーの下端をピニオン軸収容部の上端を閉塞するダストカバーの周縁に係合させることにより、車室内への泥、水などの異物やエンジン音などの騒音の侵入を防止している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−137707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、車両のエンジンルームのステアリングギヤと車室側との間にはダストカバーが設けられているのみのため、ステアリングギヤのラックとピニオンとの噛み合いにより発生する異音がコラムホールカバーを透過して車室内に侵入する場合がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、車室内へのステアリングギヤの異音の進入を抑制することができる車両用ステアリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、車両用ステアリング装置において、ハウジングに回転可能に支持されたピニオン軸と、前記ピニオン軸のピニオンと噛み合うラックを有し、前記ハウジング内に設置された軸方向に変位可能なラック軸と、前記ハウジングの前記ピニオン軸を覆うジョイントカバーと、前記ジョイントカバーに嵌合し、前記ピニオン軸の外周を囲むダストカバーと、前記ダストカバーの内周に設けた遮音部材と、前記ダストカバー内に設けられ、前記遮音部材と前記ピニオン軸の外周との間をシールするシール部材と、を備え、前記遮音部材外周端部前記ダストカバーの内周に形成された環状溝に嵌合するとともに、前記遮音部材の内周端部前記シール部材の外周に形成された環状溝に嵌合することを要旨とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用ステアリング装置において、前記ジョイントカバーは、前記ハウジングの前記ピニオン軸方向の上端に取り付けられ、前記ハウジングの上端に形成された開口部を覆っていることを要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の車両用ステアリング装置において、前記遮音部材は、前記ダストカバーの前記ラックと前記ピニオンとの噛み合い側に設けられていることを要旨とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用ステアリング装置において、前記遮音部材は、環状で円板形状であることを要旨とする。
【0007】
請求項1に係る発明によれば、ダストカバーの内周に遮音部材を設け、その外周端部はダストカバーの内周に設けられた環状溝に嵌め合わされ、内周端部はシール部材の外周に設けられた環状溝に嵌め合わされ保持されている。これにより、ラックとピニオンとの噛み合い部から発生しジョイントカバー内を伝播する異音が遮音部材およびシール部材により遮音される。その結果、異音がダストカバーを透過して車室側へ進入することが抑制され、車両の遮音性を向上させることができる。
請求項2に係る発明によれば、ジョイントカバーはハウジングの開口部を覆っているので、異音がピニオン軸の上端に向かいジョイントカバー内を伝播する。
請求項3に係る発明によれば、遮音部材はダストカバー下端のジョイントカバー側に設けられるので、異音が遮音部材により遮音される。
請求項4に係る発明によれば、遮音部材はダストカバーとシール部材との環状溝に固定されるので、遮音部材の脱落を抑制できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車室内へのステアリングギヤの異音の進入を抑制することができる車両用ステアリング装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る車両用ステアリング装置の概略構成を示す模式図。
図2】車両用ステアリング装置の要部を示す部分断面図。
図3図2のダストカバー嵌合部の拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の実施形態に係る車両に搭載されるステアリング装置について、図に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る車両用ステアリング装置の概略構成を示す模式図である。図1に示すように、車両用ステアリング装置1は、ステアリングホイール2等の操舵部材に連結されたステアリングシャフト3と、ステアリングシャフト3に自在継手4を介して連結された中間軸5と、中間軸5に自在継手6を介して連結されたピニオン軸7と、ピニオン軸7の端部近傍に設けられたピニオン7aに噛み合うラック8aを有する転舵軸としてのラック軸8とを有している。
【0011】
ステアリングシャフト3は、車体9にブラケット10を介して固定されたステアリングコラム11によって、図示しない軸受を介して回転可能に支持されている。ピニオン軸7およびラック軸8によりラックアンドピニオン機構からなるステアリングギヤ12が構成されている。ピニオン軸7のピニオン7aは、車体9にブラケット13を介して固定されたステアリングギヤボックス14内で、ラック軸8のラック8aと噛み合わされている。
【0012】
ステアリングギヤボックス14は、ラック軸8が挿通された筒状のラックハウジング(ラック軸収容部)15と、ラックハウジング15から交差状に分岐し、ピニオン軸7が挿通された筒状のピニオンハウジング(ピニオン軸収容部)16とを単一の材料(例えば、アミニウム合金など)で一体に形成して構成されている。
【0013】
ピニオンハウジング16の上端には開口部が形成されており、この開口部を閉塞する、例えば、ゴム製のダストカバー17が設けられている。ピニオン軸7の一部は、ダストカバー17を貫通してダストカバー17の上方へ突出し、さらに、車両のエンジンルームと乗員室(車室)とを仕切るダッシュボード20に設けられたコラムホール21を挿通して、車室内に延び、上記中間軸5に自在継手6を介して連結されている。コラムホール21は、例えば、ゴム製のコラムホールカバー22によって覆われており、そのコラムホールカバー22をピニオン軸7が貫通している。
【0014】
ラック軸8は、車両の左右方向に沿う軸方向に延び、ラックハウジング15内に図示しない複数の軸受を介して直線往復動可能に支持されている。ラック軸8の両端部は、ラックハウジング15の両側へ突出し、各端部には、それぞれタイロッド(図示せず)が結合されている。各タイロッドは対応するナックルアーム(図示せず)を介して対応する転舵輪(図示せず)に連結されている。
【0015】
そして、ステアリングホイール2が操作されてステアリングシャフト3が回転されると、この回転がピニオン7aおよびラック8aによって、車両の左右方向に沿ってのラック軸8の直線運動に変換される。これにより、転舵輪の転舵が達成される。
【0016】
コラムホールカバー22は、下向きに突出した形状をなしている。コラムホールカバー22の底部には、ピニオン軸7を挿通させる挿通孔が形成されている。その挿通孔には、ピニオン軸7が回転にともなって滑り接触する環状のシール部が設けられている。
【0017】
次に、図2は、本発明の一実施形態に係る車両用ステアリング装置の要部を示す部分断面図である。図2に示すように、車両用ステアリング装置1は、車両の左右方向に延びるラック軸8を備えている。ラック軸8は、両端部にてラックハウジング15にラック軸方向へ移動可能に支持されている。このラック軸8の近傍には、同じくピニオンハウジング16に回転可能に支持されてラック軸8のラック8aと噛み合うピニオン軸7のピニオン7aが配置されている。ピニオン7a(ピニオン軸7)には中間軸5を介してステアリングシャフト3が接続されており、このステアリングシャフト3の先端部にはステアリングホイール2が接続されている(図1参照)。これにより、ステアリングホイール2による操舵によりピニオン7aが回転するように構成されている。この構成により、ピニオン軸7の回転運動をラック軸8の直線運動に変換するラックアンドピニオン機構を構成している。
【0018】
また、ラック軸8に関してピニオン7aと反対側の位置には、ラック軸8と略直交する方向(図中、略左右方向)の移動をガイドするサポートヨーク38が配置されている。ラック軸8は、このサポートヨーク38の一方の端面に接触するように構成されている。さらに、サポートヨーク38の他方の端面に設けた凹部状の空間には、コイルばね(弾性部材)29が配置されている。このコイルばね29は、ラックハウジング15に螺着されたプラグ(アジャストスクリュー)32とサポートヨーク38のプラグ32側の凹部底面とにより挟み込まれており、コイルばね29によりサポートヨーク38およびラック軸8には、ピニオン軸7側に向かう付勢力が作用している。
【0019】
さらに、サポートヨーク38の外周面に形成された凹部状の空間に、シール材としてゴムで環状に形成されたOリング(オイルシール)33,34が装着されており、サポートヨーク38の外周壁面とラックハウジング15の内周壁面に密接して軸封し、ラックハウジング15にサポートヨーク38が摺動自在に支持されている。
【0020】
サポートヨーク38は、金属材料(例えば、焼結材や炭素鋼、アルミニウム合金など)により形成され、ラックハウジング15内に組み付けられてラック軸8を軸方向に移動可能に支持するためのものである。サポートヨーク38は、略円柱形状であって、ラックハウジング15内に収容されており、ピニオン7a側にラック軸8の背面に摺動可能に係合する弾性材料(例えば、合成樹脂など)からなるシート部材39を有している。このサポートヨーク38の外周とラックハウジング15との間には、径方向に所定量の隙間が設けられている。
【0021】
コイルばね29は、サポートヨーク38とプラグ32との間に弾装されていて、サポートヨーク38の凹部底面とプラグ32の内端面に係合している。このコイルばね29は、例えば、圧縮コイルばねからなり、コイルばね29の軸方向にて、サポートヨーク38を介して、ラック軸8を図中右側に向けて付勢している。
【0022】
プラグ32は、コイルばね29の付勢力を調整するためのものであり、ラックハウジング15と同様の金属材料により形成され、ラックハウジング15内に進退可能に螺着されている。このプラグ32とサポートヨーク38との間には、軸方向に所定量の隙間が設けられている。ラック軸8にピニオン軸7から退避する方向の力が極端に大きくなった場合には、プラグ32とサポートヨーク38とが突き当たり、それ以上、ラック軸8がピニオン7aから退避しないようにする。また、ロックナット37がプラグ32のラックハウジング15に対する緩み防止のために用いられている。
【0023】
ピニオンハウジング16の上端には、開口が形成されており、その開口を覆うようにして、ジョイントカバー23が、ピニオンハウジング16の上端に取り付けられている。ジョイントカバー23の下方内側において、ピニオンハウジング16の内周には、当該内周とピニオン軸7の外周との間を封止するための、例えば、ゴム製で環状のダストシール26が保持されている。ジョイントカバー23は、シール性を有する弾性材料(例えば、ゴム材など)や樹脂材料から構成され、ピニオンハウジング16の開口を囲いピニオン軸7の上端に向かいテーパ形状に縮径するように形成されている。
【0024】
ラック8aとピニオン7aとの噛み合いにより発生した異音は、ピニオン軸7の周囲に設けたダストシール26を透過してわずかに減衰された後、ジョイントカバー23により形成された空間に伝播される。ダストカバー17は、ステアリングギヤボックス14(ピニオンハウジング16)を覆うジョイントカバー23に固定されている。ジョイントカバー23の上端部には、ゴム製のダストカバー17が嵌め合わされ、ダストカバー17の上端をピニオン軸7が挿通している。ダストカバー17の上端面にはダッシュボード20から突出したコラムホールカバー22底部がダストカバー17を押圧し、周縁と係合している。
【0025】
図3は、図2のダストカバー嵌合部の拡大断面図である。図3に示すように、ダストカバー17下端のジョイントカバー23側に遮音シールド板25が配置されている。ピニオン軸7の外周には、ジョイントカバー23に固定されたゴム製で環状のシール24が保持されている。遮音シールド板25は、金属材料(例えば、SPHC材(熱間圧延軟鋼板)など)により環状で円板形状に形成されており、ダストカバー17の内周とシール24の外周との間に設けられている。
【0026】
遮音シールド板25の外周端部は、ダストカバー17のジョイントカバー23の内周に設けられた環状溝40に嵌め合わされ、遮音シールド板25の内周端部は、シール24の外周に設けられた環状溝41に嵌め合わされ固定されている。これにより、遮音シールド板25が内部から脱落することを抑制できる。また、遮音シールド板25およびシール24を配置することにより、ダストカバー17とジョイントカバー23との嵌め合い部と、ダストカバー17、遮音シールド板25およびシール24との嵌め合い部との間には凸凹状の空間(ラビリンス隙間)が形成されている。
【0027】
次に、上記のように構成された本実施形態である車両用ステアリング装置1の作用および効果について説明する。
【0028】
上記構成によれば、ダストカバー17下端のジョイントカバー23側(ラック8aとピニオン7aとの噛み合い側)に環状で円板形状の遮音シールド板25を設け、その外周端部はダストカバー17の内周に設けられた環状溝40に嵌め合わされ、内周端部はシール24の外周に設けられた環状溝41に嵌め合わされ保持されている。また、ダストカバー17とジョイントカバー23との嵌め合い部と、ダストカバー17、遮音シールド板25およびシール24との嵌め合い部との間には凸凹状の隙間が形成されている。
【0029】
これにより、ステアリングギヤボックス14内のラック8aとピニオン7aとの噛み合い部から発生し伝播する異音がダストカバー17内の遮音シールド板25およびシール24により遮音される。また、嵌め合い部の隙間により音波が反射され透過が低減される。その結果、異音がダストカバー17を透過して車室側へ進入することが抑制され、車両の遮音性を向上させることができる。
【0030】
以上のように、本発明の実施形態によれば、車室内へのステアリングギヤの異音の進入を抑制することができる車両用ステアリング装置を提供できる。
【0031】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明はさらに他の形態で実施することも可能である。
【0032】
上記実施形態では、遮音シールド板25として円板状の鋼板を用いたが、これに限らず、質量が大きく音波を反射できる他の部材(例えば、遮音シート材を貼り付けたものなど)を用いてもよい。
【0033】
上記実施形態では、ダストカバー17とシール24との間に嵌め合いにより遮音シールド板25を固定するようにしたが、これに限らず、ダストカバー17の内周面とシール24の外周面に対して、例えば、接着、粘着等により固定する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1:車両用ステアリング装置、2:ステアリングホイール、3:ステアリングシャフト、4,6:自在継手、5:中間軸、7:ピニオン軸、7a:ピニオン、8:ラック軸、
8a:ラック、9:車体、10,13:ブラケット、11:ステアリングコラム、12:ステアリングギヤ、14:ステアリングギヤボックス(ハウジング)、15:ラックハウジング、16:ピニオンハウジング、17:ダストカバー、20:ダッシュボード、
21:コラムホール、22:コラムホールカバー、23:ジョイントカバー、24:シール(シール部材)、25:遮音シールド板(遮音部材)、26:ダストシール、29:コイルばね、32:プラグ、33,34:Oリング、37:ロックナット、38:サポートヨーク、39:シート部材、40,41:環状溝
図1
図2
図3