特許第6036369号(P6036369)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友電気工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6036369-バラスト水処理装置 図000002
  • 特許6036369-バラスト水処理装置 図000003
  • 特許6036369-バラスト水処理装置 図000004
  • 特許6036369-バラスト水処理装置 図000005
  • 特許6036369-バラスト水処理装置 図000006
  • 特許6036369-バラスト水処理装置 図000007
  • 特許6036369-バラスト水処理装置 図000008
  • 特許6036369-バラスト水処理装置 図000009
  • 特許6036369-バラスト水処理装置 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6036369
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】バラスト水処理装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/32 20060101AFI20161121BHJP
   B63B 13/00 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   C02F1/32
   B63B13/00 Z
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-25295(P2013-25295)
(22)【出願日】2013年2月13日
(65)【公開番号】特開2014-151300(P2014-151300A)
(43)【公開日】2014年8月25日
【審査請求日】2015年8月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116366
【弁理士】
【氏名又は名称】二島 英明
(74)【代理人】
【識別番号】100139387
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 剛史
(74)【代理人】
【識別番号】100144691
【弁理士】
【氏名又は名称】小副川 みさ子
(74)【代理人】
【識別番号】100146802
【弁理士】
【氏名又は名称】戸谷 昌弘
(74)【代理人】
【識別番号】100157794
【弁理士】
【氏名又は名称】荻野 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100159374
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 顕
(72)【発明者】
【氏名】母倉 修司
(72)【発明者】
【氏名】中井 龍資
(72)【発明者】
【氏名】守屋 知巳
【審査官】 河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−179349(JP,A)
【文献】 特開昭59−150589(JP,A)
【文献】 特開2001−054788(JP,A)
【文献】 特開2006−116536(JP,A)
【文献】 特開2007−144386(JP,A)
【文献】 特開2001−239256(JP,A)
【文献】 実開昭62−072191(JP,U)
【文献】 特表平05−506405(JP,A)
【文献】 特表2012−525139(JP,A)
【文献】 特表2012−509763(JP,A)
【文献】 特許第4835785(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/20 − 1/26
C02F 1/30 − 1/38
B63B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶に搭載されたバラスト水処理装置であって、
前記バラスト水処理装置は水処理用紫外線照射装置を含み、
前記水処理用紫外線照射装置は、
紫外線ランプと紫外線ランプ保護管とを備える紫外線ランプユニットと、少なくとも1つの前記紫外線ランプユニットを内部に備え被処理水に紫外線を照射するための複数の筒状のチャンバーと、チャンバー間に前記被処理水を流すための接続管とを備え、
前記チャンバーはその筒状の軸を平行にして並列配置されており、かつ前記接続管によって前記チャンバー内部を被処理水が連続して流れるように直列に接続されており、
前記紫外線ランプユニットの交換時において、
前記チャンバーから前記紫外線ランプユニットを引き出すための空間であるメンテナンススペースの前記紫外線ランプユニットを引き出す方向の幅が、前記紫外線ランプユニットの長さより長く、複数の前記紫外線ランプユニットの合計長さである紫外線ランプユニットを引き出すために必要なメンテナンススペースの幅を前記複数の数で除した幅よりも短い、
バラスト水処理装置。
【請求項2】
前記接続管内部に整流板をさらに備える請求項1に記載のバラスト水処理装置。
【請求項3】
前記チャンバー内部に整流板をさらに備える請求項1または請求項2に記載のバラスト水処理装置。
【請求項4】
前記紫外線ランプ保護管を洗浄する洗浄機構をさらに備える請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のバラスト水処理装置。
【請求項5】
1つの前記チャンバーは1つの前記紫外線ランプユニットを備える請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のバラスト水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体中の微生物を死滅させるための水処理用紫外線照射装置に関するものである。特に、船舶に貯留されるバラスト水の処理システムに用いられバラスト水中の微生物を死滅させるための水処理用紫外線照射装置およびこれを用いたバラスト水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、船舶に積載するバラスト水の処理が問題となっている。バラスト水は空荷状態でも安全に航行するために船舶に積載される海水であり、バラスト水は出港時に付近の海域から取水し、入港時の積荷の積載時に海洋へ排水される。即ち、出港地の海水からなるバラスト水が入港地(積荷港)で排水されることになる。例えば、日本から出港したオイルタンカーがオイル産油国のクエート等の中近東へ航行してオイルを搭載する場合、日本海域の海水がバラスト水として積載され、中近東の海域で洋上に排水されることとなる。このようにバラスト水が取水した海域と異なる海域に排水されると、海水中の生物が本来の生息地でない海域に移動させられることとなり、海洋の生態系に大きな影響を及ぼすこととなる。
【0003】
このため、バラスト水を浄化処理して微生物を除去あるいは死滅、不活性化する方法が種々検討されている。例えば、特許文献1には濾過膜を用いたバラスト水の処理装置が記載されている。特許文献1のバラスト水処理装置は、濾過水に紫外線を照射する紫外線ランプを備えており、紫外線ランプにより微生物の死滅化をおこなうことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4835785号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
紫外線ランプは紫外線ランプ保護管に収納されて、紫外線ランプユニットとしてバラスト水を紫外線処理するチャンバー内に設置されている。しかし、紫外線ランプの交換や修理を行うためには、紫外線ランプユニットをチャンバーから取り出す必要がある。バラスト水の死滅化処理に使用される紫外線ランプユニットは2m程度の長さとなる場合があり、チャンバーから取り出すためには、チャンバーの取り出し口から2m以上の幅の空間、即ちメンテナンススペースを必要とする。バラスト水処理装置は船舶内に設置されるものであるため、船舶内の空間を効率よく使用するために、メンテナンススペースはできるだけ小さくすることが望ましい。
【0006】
そこで、本発明は、メンテナンススペースを小さくすることが可能な水処理用紫外線照射装置およびこれを用いたバラスト水処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願1の発明は、(1)紫外線ランプと紫外線ランプ保護管とを備える紫外線ランプユニットと、少なくとも1つの前記紫外線ランプユニットを内部に備え被処理水に紫外線を照射するための複数の筒状のチャンバーと、チャンバー間に前記被処理水を流すための接続管とを備え、前記チャンバーはその筒状の軸を平行にして並列配置されており、かつ前記接続管によって前記チャンバー内部を被処理水が連続して流れるように直列に接続されている、水処理用紫外線照射装置である。
【0008】
本願発明の水処理用紫外線照射装置では、チャンバー内部で被処理水は紫外線ランプの長手方向に沿って流している。したがって、被処理水は紫外線ランプの長手方向が長いほど、長い時間で紫外線処理されることになる。つまり、紫外線ランプが長い方が、被処理水をより長時間の紫外線処理をすることができる。一方、紫外線ランプの交換や修理を行うためには、紫外線ランプユニットをチャンバーから取り出す必要があり、紫外線ランプユニットを取り出すための空間、すなわちメンテナンススペースが必要である。したがって、紫外線ランプユニットが長いほど、このメンテナンススペースが大きくなってしまう。
【0009】
しかし、水処理用紫外線照射装置を上記のような構成にすることにより、紫外線ランプの全長が同じでも、紫外線ランプユニット1つあたりの長さを短くすることができる。例えば、チャンバーを2つとすれば、紫外線ランプユニット1つあたりの長さは、チャンバーが1つのときの約半分にすることができる。また、チャンバーはその筒状の軸を平行にして並列配置されているので、紫外線ランプユニットをチャンバーから同じ方向に取り出すことが可能であり、各チャンバーの紫外線ランプユニットが交差することによってメンテナンススペースが広がることはない。さらに、接続管によってチャンバー内部を被処理水が連続して流れるように直列に接続されているので、被処理水が紫外線処理される空間の全長は、チャンバーが1つの場合と同じにすることができる。
【0010】
以上のことから、水処理用紫外線照射装置を上記のような構成にすることにより、紫外線処理能力は同じでありながら、メンテナンススペースを小さくすることができる。
【0011】
(2)接続管内部に整流板をさらに備えることが望ましい。整流板は流体の流れを整えるための板である。
【0012】
被処理水は、被処理水流路又は接続管からチャンバーへ流れ込むが、上記の構成では流入方向とチャンバー内部で流れる方向が異なる構成をとることになる。流入方向とチャンバー内部で流れる方向が異なる場合、被処理水は、チャンバーにおいて流入口の反対側の領域に偏って速く流れ、流入口側の領域では被処理水の流量が少なくなる傾向にある。被処理水の流量が少ない部分があると効率的に紫外線処理されず、また、流れが速い部分では十分に紫外線処理されない恐れがある。したがって、チャンバー内部では、被処理水はできるだけ一様に流れるようにすることが望ましい。
【0013】
接続管からチャンバーへの被処理水の流れについては、接続管に整流板を設置して被処理水の流れを整えておけば、下流側のチャンバーにおいて被処理水の流量の偏りを抑制することができ、したがって効率的に紫外線処理をおこなうことができる。また、チャンバーの内部ではなく接続管の内部に整流板を設けているので、紫外線ランプから発せられた紫外線がこの整流板によってチャンバー内部で遮られることはなく、紫外線が効率的に照射されることが期待できる。
【0014】
整流板には種々のものが利用できる。例えば、接続管内部の断面形状に沿った形状の板で、多数の貫通孔を有するものなどが利用できる。
【0015】
(3)チャンバー内部に整流板をさらに備えることもできる。チャンバー内部に整流板を設けることにより、チャンバー内部での水の流れを整えることができる。この構成では、被処理水流路から被処理水が流れ込むチャンバーの内部にも整流板を設けておけば、このチャンバー内部の被処理水の流れも整えることができる。
【0016】
チャンバー内部に備える整流板は、接続管内部に備える整流板と類似のものが利用できる。ただし、チャンバー内部には紫外線ランプユニットがあるので、チャンバー内部に備える整流板は、紫外線ランプユニットを挿入するための貫通孔を有している。
【0017】
(4)紫外線ランプ保護管を洗浄する洗浄機構をさらに備えることが望ましい。紫外線ランプ保護管表面に汚れが付着すると、ランプ保護管の紫外線透過率が下がって、被処理水への紫外線照射量が低下する。そこで、紫外線ランプ保護管を洗浄する洗浄機構を備え、紫外線ランプ保護管表面を定期的に洗浄すれば、紫外線照射量の低下を防止することができる。このため、紫外線照射量一定モードで運転させた場合でも、消費電力の増加を抑制することができる。
【0018】
(5)また、1つのチャンバーには、紫外線ランプユニットを1つだけ備えることが望ましい。1つのチャンバーに紫外線ランプユニットを2つ以上設置する場合、紫外線ランプユニットを1つだけ設置する場合に比べてチャンバーの内径が大きくなることが多く、そのためチャンバー内で紫外線の強度がかえって弱くなる領域が生じてしまうことがあるためである。
【0019】
さらに、1つのチャンバーに紫外線ランプユニットを1つだけ備える構成は、特に、紫外線ランプ保護管を洗浄する洗浄機構を備える場合に好ましい構成である。1つのチャンバーには紫外線ランプユニットを1つだけ備えるようにすれば、紫外線ランプユニットの取り付け精度や洗浄機構の洗浄部分の寸法精度に、高い精度は要求されない。したがって、紫外線ランプユニット取り付けの煩雑さ軽減や洗浄機構のコスト低減を図ることができる。
【0020】
(6)上述の水処理用紫外線照射装置はバラスト水処理装置に好適に利用することができる。本発明のバラスト水処理装置は、上述の水処理用紫外線照射装置を備えるバラスト水処理装置である。本発明の水処理用紫外線照射装置はメンテナンススペースが小さいので、これを備えるバラスト水処理装置が船舶内に設置された場合でも、船舶内の空間を効率よく使用することができる。
【発明の効果】
【0021】
上記発明によれば、メンテナンススペースが小さい水処理用紫外線照射装置およびこれを用いたバラスト水処理装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】水処理用紫外線照射装置の一例を示す図であって、垂直断面の構成を模式的に示す図である。
図2】本発明による水処理用紫外線照射装置の一例を示す図であって、垂直断面の構成を模式的に示す図である。
図3図2におけるA−A断面の構成を模式的に示す図である。
図4】本発明による水処理用紫外線照射装置の一例を示す図であって、内部に整流板を備えた構成を模式的に示す図である。
図5図4における整流板のB−B断面の構成を模式的に示す図である。
図6図4における整流板のC−C断面の構成を模式的に示す図である。
図7】バラスト水処理装置を用いたバラスト水処理システムの全体構成例を説明する図である。
図8】バラスト水処理装置の濾過装置部分の構成例を示す縦断面模式図である。
図9図8のD−D断面を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明にかかる水処理用紫外線照射装置およびバラスト水処理装置の構成例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0024】
(バラスト水処理システム)
まず、図7にてバラスト水処理装置を用いたバラスト水処理システムの全体構成例を説明する。バラスト水処理装置は、濾過装置と紫外線処理装置および付随する配管類から構成される。このシステムは配管31からポンプ41によって取水した海水を処理し、バラスト水としてタンク14に貯留する。配管32を経て濾過装置12に送られた被濾過水としての海水は、濾過装置12により濾過される。濾過された被濾過水は配管33を経て、紫外線照射装置13などの微生物死滅化手段に送られる。濾過された被濾過水すなわち被処理水は、紫外線照射装置13にて微生物の死滅化処理が行われる。また、濾過装置12において濾過されなかった排出水は、配管35を経て装置外部へ導出される。微生物の死滅化処理を経た海水は、配管34、配管36を経てタンク14に送られる。
【0025】
濾過装置の具体的構成例を図8および図9を参照して説明する。図8および図9は船舶用のバラスト水処理装置の一部を例示する。図8は軸線を含む垂直断面の構成、図9図8における水平D−D断面の構成をそれぞれ模式的に示す図である。円筒形状のプリーツフィルター101は回転中心となる軸線Eを囲むように配置されており、中心に配置された中心配管140(配管は回転しない)の周囲を回転自在に取り付けられている。プリーツフィルターの円筒上下面は水密に塞がれている。回転自在な取り付け構造は、同じく水密構造とする必要があるが、特に限定されることなく既知の構造が用いられる。フィルター全体を覆うようにケース103が設けられる。ケース103は外筒部131、蓋部132、底部133で構成され、底部133には排出流路108が設けられる。ケース103内に被濾過水としての海水を導入するため被濾過水流路106と被濾過水ノズル102が設けられる。被濾過水ノズル102は、そのノズル口121をケース103の外筒部131内に備えるように被濾過水流路106から延設され、被濾過水がプリーツフィルターの外周面に向かって流出するように構成されている。また、プリーツフィルターの回転のためにモーター190がプリーツフィルターの中心軸に備えられている。モーター190はモーターカバー191で覆われて収納され、駆動制御部(図示せず)からの電力により駆動される。
【0026】
本例の場合、被濾過水ノズルから噴出した被濾過水はプリーツフィルターのプリーツ外周面に当たり、その圧力によってプリーツフィルターの洗浄効果が得られる。濾過されない被濾過水およびケース103内に沈殿した濁質分は、ケース底部133の排出流路108から順次排出される。このように濁質分や残った被濾過水が連続的に常に排出されつつ濾過が進行される点もこの装置の特徴であり、バラスト水に求められる10〜20ton/時間やさらには100ton/時間という処理量を確保するために効果がある。なお、図では排出流路108にバルブなどを記載していないが、保守用や流量調節用に必要な機器を設けることはできる。一方、プリーツフィルター101により濾過された被濾過水はフィルター内部にて中心配管140に設けられた取水穴141を通して被処理水流路107に導かれ、ケース103の外部に流出される。
【0027】
ケース103にはその蓋部132に薬液用の薬液注入口170が設けられている。機械的な洗浄では落とすことができずにフィルター表面に徐々に堆積してゆく物質があり得る。フィルターの利用時間である寿命を延ばすために、薬液による洗浄を併用することが望ましい。
【0028】
100ton/時間の処理を行う装置の一例として、プリーツフィルターの外径は700mm、軸方向長さ320mm、有効面積としての高さ280mm、プリーツ深さ70mm、プリーツ数420折、が挙げられる。被濾過水ノズル102はノズル口121が矩形開口であるとよい。
【0029】
(水処理用紫外線照射装置)
本発明の水処理用紫外線照射装置は、図7における紫外線照射装置13として、被処理水の中の微生物の死滅化に利用される。
【0030】
図1は水処理用紫外線照射装置の一例を示す図であって、垂直断面の構成を模式的に示す図である。筒状のチャンバー1は、内部に紫外線ランプユニット2を備えている。紫外線ランプユニット2は、紫外線ランプ保護管22の中に紫外線ランプ21が収納されて構成されている。被処理水流路6を流れてきた被処理水(濾過された水)は、図1に示す矢印のようにチャンバー1の内部を流れる。被処理水は、チャンバー1の内部では紫外線ランプユニット2に沿って流れるが、流れている間に、紫外線ランプ21から照射される紫外線によって、被処理水中の微生物の死滅化が行われる。
【0031】
紫外線ランプ21は消耗品であるので、交換や修理を行うためには、紫外線ランプユニット2をチャンバーから取り出す必要がある。紫外線ランプユニット2をチャンバー1から取り出すためには、チャンバー1の取り出し口から紫外線ランプユニット2の長さ以上の幅の空間、即ちメンテナンススペース7を必要とする。バラスト水の死滅化処理に通常使用される紫外線ランプユニットの長さが例えば2m程度のものを使用した場合には、メンテナンススペース7の幅Lは2m程度以上となる。
【0032】
図2は、本発明の実施形態として、水処理用紫外線照射装置の一例を示す図であって、垂直断面の構成を模式的に示す図である。ここでは、2つの筒状のチャンバー1は、チャンバー1間に被処理水を流すために接続管3によって直列に接続されている。また、2つの筒状のチャンバー1は、その筒状の軸を平行にして並列配置されている。
【0033】
2つの筒状のチャンバー1は、内部にそれぞれ1つの紫外線ランプユニット2を備えている。紫外線ランプユニット2は、紫外線ランプ保護管22の中に紫外線ランプ21が収納されて構成されている。紫外線ランプ保護管22は石英ガラスなどを用いて作製されている。2つの筒状のチャンバー1は、内部に紫外線ランプユニット2を収納しており、それぞれフランジ4によって水密性を保つように封止されている。紫外線ランプ21の電極配線23は外部の電源へ接続されている。
【0034】
被処理水流路6を流れてきた被処理水は、図2に示す矢印のようにチャンバー1の内部および接続管3の内部を流れる。被処理水は、チャンバー1の内部では紫外線ランプユニット2に沿って流れており、流れている間に、紫外線ランプ21から照射される紫外線によって、被処理水中の微生物の死滅化が行われる。紫外線処理された被処理水は、処理水流路5へ排出される。
【0035】
紫外線ランプ21が故障したときや消耗した場合には、紫外線ランプ21の交換や修理を行うために、紫外線ランプユニット2をチャンバー1から抜き出す。そのため、紫外線ランプユニット2を抜き出すための空間、すなわちメンテナンススペース7が必要である。紫外線ランプ21が長くなるほど、すなわち紫外線ランプユニット2が長くなるほど、メンテナンススペースは大きくなってしまう。
【0036】
図2の水処理用紫外線照射装置の紫外線ランプの合計長さは図1の水処理用紫外線照射装置の紫外線ランプ長さと同じである。しかし、図2では紫外線ランプユニット2は2つになっていることにより、図2の紫外線ランプユニット1つあたりの長さは図1の紫外線ランプユニット1つあたりの長さの約半分になっている。したがって、図2ではメンテナンススペース7の幅Lは、図1におけるメンテナンススペース7の幅Lの約半分でよい。つまり、図2の水処理用紫外線照射装置で必要とされるメンテナンススペースの床面積は、図1の水処理用紫外線照射装置の約半分でよいことになる。
【0037】
また、2つのチャンバー1は、その筒状の軸を平行にして並列配置されているので、紫外線ランプユニット2をチャンバー1から同じ方向に取り出すことが可能である。2つのチャンバー1がその筒状の軸を交差して配置された場合、2つの紫外線ランプユニット2が交差する方向で取り出されることとなり、紫外線ランプユニット2の直径以上の幅の空間が必要となる。したがって、2つのチャンバー1は、その筒状の軸を平行にして並列配置することにより、メンテナンススペースを小さくすることができる。
【0038】
さらに、2つのチャンバー1は、接続管3によって、チャンバー1の内部を被処理水が連続して流れるように直列に接続されているので、被処理水が紫外線処理される空間の全長は、紫外線ランプ21の合計長さと等しくなる。したがって、被処理水を効率的に紫外線処理することができる。
【0039】
図3は、図2におけるA−A断面図の構成を模式的に示す図である。チャンバー1はここでは円筒状となっており、断面は円である。チャンバー1の形状は四角柱状、六角柱状、八角柱状などの筒形状にしてもかまわない。チャンバー1の長さは、ここでは1mである。チャンバー1の長さは、水処理用装置全体の仕様等に合わせて適宜変更可能であり、1m以上になることも、1m以下になることもある。水処理用紫外線照射装置の仕様に合わせてチャンバー1の内径は通常100mm〜300mm程度であるが、ここでは200mmである。
【0040】
紫外線ランプユニット2は、フランジ4によって固定され、チャンバーの中心軸付近に保持されている。紫外線ランプ21および紫外線ランプ保護管22はここでは円柱状になっている。ここでは、紫外線ランプ21の長さは600mm、ランプ部分の直径は22mmであり、紫外線ランプ保護管の長さは1m、直径は30mmである。
【0041】
(整流板)
図4は、本発明の実施形態として、水処理用紫外線照射装置の一例を示す図であって、内部に整流板を備えた構成を模式的に示す図である。接続管3には整流板8が取り付けられており、2つのチャンバー1にはそれぞれ整流板9が取り付けられている。図4の水処理用紫外線照射装置の構成は、整流板を備えていること以外は、図2の構成と同じである。
【0042】
接続管3に取り付けられている整流板8の、図4におけるB−B断面の構成の模式図を図5に示す。整流板8は、接続管3の内部の形状に沿った円板状であり、多数の貫通孔10を有している。
【0043】
被処理水は被処理水流路6または接続管3からチャンバー1へ流れ込むが、図5では流入方向とチャンバー1内部で流れる方向が直交している。このような構成では、被処理水は、チャンバー1において流入口の反対側の領域に偏って速く流れ、流入口側の領域では被処理水の流量が少なくなる傾向にある。被処理水の流量が少ない部分があると効率的に紫外線処理されず、また、流れが速い部分では十分に紫外線処理されない恐れがある。したがって、チャンバー1内部では、被処理水はできるだけ一様に流れるようにすることが望ましい。
【0044】
接続管3からチャンバー1への被処理水の流れについては、接続管3に整流板8を設置して被処理水の流れを整えておけば、下流側のチャンバー1において被処理水の流量の偏りを抑制することができ、したがって効率的に紫外線処理をおこなうことができる。また、チャンバー1の内部ではなく接続管3の内部に整流板8を設けているので、紫外線ランプ21から発せられた紫外線が、この整流板8によってチャンバー1内部で遮られることはなく、紫外線が効率的に照射されることが期待できる。
【0045】
チャンバー1に取り付けられている整流板9の、図4におけるC−C断面の構成の模式図を図6に示す。なお、もう一方のチャンバー1に取り付けられている整流板9も同じ構成である。整流板の設置位置は、チャンバー1の長手方向中央部よりもチャンバーの被処理水の流入口側に設置している。整流板9は、チャンバー1の内部の形状に沿った円板状であり、整流板8と同様に多数の貫通孔10を有している。整流板9が整流板8と異なる点は、中央部に紫外線ランプユニット2が貫通していることである。この整流板9により、チャンバー1を流れる被処理水の流れを整えて、被処理水の流量の偏りを抑制することができ、より効果的に紫外線処理ができることが期待できる。この構成では、被処理水流路から被処理水が流れ込むチャンバー1の内部にも整流板を設けておけば、このチャンバー1内部の被処理水の流れも整えることができる。
【0046】
図4では、複数のチャンバー1および接続管3のすべてに整流板8または整流板9を備える構成となっている。しかし、整流板の設置の仕方はこれに限定されるものではなく、接続管にのみ整流板を設けること、複数のチャンバーにのみに設けること、1つのチャンバーにのみに設けること、各チャンバーに複数の整流板を設けること、なども可能である。
【0047】
(洗浄機構)
図2図4では図示していないが、紫外線ランプ保護管22を洗浄する洗浄機構をさらに備えることができる。洗浄機構により、紫外線ランプ保護管表面を定期的に洗浄すれば、紫外線照射量の低下を防止することができる。したがって、紫外線照射量一定モードで運転させた場合でも、消費電力の増加を抑制することができる。洗浄機構としては、例えば、紫外線ランプ保護管表面に接触する樹脂製のリングを紫外線ランプ保護管の長手方向に沿って、モーター等を用いて往復させる機構とすることができる。
【0048】
チャンバー内部に整流板と洗浄機構の両方を設ける場合は、洗浄機構の動作によって、整流板の位置がずれないような構成および整流板が破損等しないような構成とすることが必要である。例えば、洗浄機構の樹脂製のリングは整流板でチャンバーを仕切る空間のうち広い方の空間でのみ整流板に接触しないように作動する、整流板に洗浄機構が貫通する孔を設けておく、などの構成が考えられる。
【0049】
(チャンバーの数)
図2図4に示した水処理用紫外線照射装置では、チャンバーは2つである。しかし、チャンバーの数量は2つに限られず、3つ以上でもかまわない。紫外線ランプの全長を一定にする場合、チャンバーの数量が増えると、それだけメンテナンススペースを小さくすることができる。一方、チャンバーの数量が増えると、チャンバーを接続する接続管の数が増えて装置が複雑になり、また紫外線ランプを交換するときには、チャンバーから取り出して再び収納する回数が増えることになる。紫外線ランプの交換には5分〜10分程度の時間がかかり、交換本数が増えると、水処理用紫外線照射装置の全部の紫外線ランプの交換に要する時間が長くなってしまう。したがって、メンテナンススペースを小さくすることと、装置の複雑化および紫外線ランプ交換等の煩雑化の抑制のバランスを考慮し、チャンバーの数量は5つ以下にすることが好ましい。特に、装置の複雑化および紫外線ランプ交換等の煩雑化の抑制を重視する場合には、チャンバーの数量は2つまたは3つにすることがさらに好ましい。装置の複雑化および紫外線ランプ交換等の煩雑化を最小限に抑え、かつメンテナンススペースを小さくする効果を発揮するには、図2図4に示した構成例のようにチャンバーを2つにするとよい。
【0050】
(チャンバーおよび紫外線ランプユニットの長さ)
複数のチャンバーの長さを異なるようにすることも可能であり、複数の紫外線ランプユニットの長さも異ならせることができる。しかし、図2図4に示した水処理用紫外線照射装置では、チャンバーおよび紫外線ランプユニットの長さをすべて等しくしている。紫外線ランプユニットの長さを同じにする方が、長さを異ならせるよりも、メンテナンススペースを小さくできるためである。
【0051】
(チャンバー内の紫外線ランプユニットの数)
図2図4に示した水処理用紫外線照射装置では、チャンバー1それぞれの内部に1つの紫外線ランプユニット2を備えている。しかし、各チャンバーの内部に収納する紫外線ランプユニットの数量は1つに限られず、2つ以上とすることも可能である。紫外線ランプユニットの数量を増やせば、それだけ各チャンバーでの紫外線処理の効率を高めることができる。しかし、1つのチャンバーに複数の紫外線ランプユニットが備わっている場合は、紫外線ランプ保護管が破損することを防止するため、および洗浄機構がスムーズに動作するようにするために、紫外線ランプユニット間の間隔を高い精度で制御して紫外線ランプユニットを取り付けることや洗浄機構の洗浄部分を高い寸法精度で作製することが要求される。そこで、1つのチャンバーには紫外線ランプユニットを1つだけ備えるようにすれば、紫外線ランプユニットの取り付け精度や洗浄機構の洗浄部分の寸法精度にそれほど高い精度は要求されず、紫外線ランプユニット取り付けの煩雑さ軽減や洗浄機構のコスト低減を図ることができる。
【0052】
(バラスト水処理装置)
本発明の水処理用紫外線照射装置はメンテナンススペースが小さいので、これを備えるバラスト水処理装置も、その設置場所の空間を効率よく使用することができる。したがって、このバラスト水処理装置が例えば船舶内に設置された場合、船舶内の空間を効率よく使用することができる。例えば、図2の水処理用紫外線照射装置を備えるバラスト水処理装置を船舶内に設置する場合は、図1の水処理用紫外線照射装置を備えるバラスト水処理装置を設置する場合に比べて、必要とされるメンテナンススペースの床面積は約半分ですむ。したがって、図2の水処理用紫外線照射装置を備えるバラスト水処理装置は、図1の水処理用紫外線照射装置を備えるバラスト水処理装置よりも、船舶内の空間を効率よく使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の水処理用紫外線照射装置はメンテナンススペースが小さいので、海水淡水化やバラスト水などの汽水・海水、下水、生活排水、工業排水などの微生物の死滅化処理装置として好適に利用できる。
【符号の説明】
【0054】
1 チャンバー
2 紫外線ランプユニット
21 紫外線ランプ
22 紫外線ランプ保護管
23 電極配線
3 接続管
4 フランジ
5 処理水流路
6 被処理水流路
7 メンテナンススペース
8、9 整流板
10 貫通孔
12 濾過装置
13 紫外線照射装置
14 タンク
31、32、33、34、35、36 配管
41 ポンプ
101 プリーツフィルター
102 被濾過水ノズル
103 ケース
106 被濾過水流路
107 被処理水流路
108 排出流路
121 ノズル口
131 外筒部
132 蓋部
133 底部
140 中心配管
141 取水穴
170 薬液注入口
190 モーター
191 モーターカバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9