(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
この種の乗物用シートでは、シートの利便性を考慮して、アームレストなどの部材を、使用状態と収納状態の間で変位させることがある。
使用状態のアームレストは、シート前方に突出して乗員肘部を支持可能に配置する。また収納状態のアームレストは、(使用状態からシート上方に回転変位などして)シートバックの収納部に収納される。このとき収納部内の部材(第一部材としての当接部材)にアームレスト(第二部材)が当接するのであるが、この種の構成では、両部材の当接時に異音が発生することを極力回避すべきである。
【0003】
例えば特許文献1では、シートクッションに対して起倒可能に連結するシートバックが開示される。このシートバックは、シートクッションに前倒する姿勢と、シート後方の壁体に当接状態で起立する姿勢の間で変位可能である。
公知技術では、略円錐状の弾性体を、シートバックの裏面側にボルト止めして壁体に当接可能に配置する。そしてシートバックを起立姿勢とする際に、シートバックと壁体が、弾性体を弾性変形させつつ当接することにより、両部材の当接による異音発生を極力防止できる。
そこで公知技術の構成を、アームレストと当接部材に適用することで、両部材の当接による異音発生を極力防止できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで公知技術では、弾性体をボルト止めする構成(部品点数の比較的多い構成)であるため、シートのシンプル化の観点から、すんなり採用できる構成ではなかった。
本発明は上述の点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、比較的シンプルな構成にて、第一部材と第二部材の当接による異音発生を極力阻止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段として、第1発明の乗物用シートは、第一部材と、第一部材に対して相対的に近接又は離間可能な第二部材と、第一部材と第二部材の少なくとも一方の部材に設けられた緩衝部を有する。
本発明では、第一部材と第二部材が、緩衝部を押圧にて変形させつつ当接する。この種の構成では、シートの部品点数の増加を極力抑えつつ、両部材の当接による異音発生を極力阻止できることが望ましい。
そこで本実施例では、緩衝部が、一方の部材の一部を、一方とは異なる他方の部材に向けて凸状に変形させてなるとともに、第一部材と第二部材の当接時の押圧にて撓み変形する構成とした。
本発明によれば、第一部材又は第二部材の一部にて緩衝部を形成しつつ(部品点数の増加を極力抑えつつ)、緩衝部の撓み変形にて当接時の異音発生を極力阻止できる。
【0007】
また第1発明の乗物用シート
は、上述の緩衝部が樹脂製であるとともに、
緩衝部の本体をなして他方の部材に当接可能な
筒状又は線状の当接部位と、当接部位
の周囲に配置されて一方の部材につながっている変形部位とを有
している。そして変形部位が、第一部材と第二部材の当接時を基準として他方の部材から離れる向きに凹状の部位とされていることにより、第一部材と第二部材の当接時の押圧に
て当接部位よりも大きく撓み変形する構成である。
本発明では、変形部位を積極的に撓み変形させることで、当接部位(比較的目につきやすい部位)の撓み変形による劣化を極力阻止できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る第1発明によれば、比較的シンプルな構成にて、第一部材と第二部材の当接による異音発生を極力阻止することができる。また第
1発明によれば、第一部材と第二部材の当接による異音発生を性能良く阻止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態を、
図1〜
図6を参照して説明する。各図には、適宜、乗物用シートの前方に符号F、乗物用シートの後方に符号B、乗物用シートの上方に符号UP、乗物用シートの下方に符号DWを付す。
図1の乗物用シート2は、第一シート部位2Aと、第二シート部位2Bと、第三シート部位2Cを有し、複数人の乗員が着座可能である。
ここで第一シート部位2Aは、シート構成部材(シートクッション4a,シートバック6a,ヘッドレスト8a)を有する。また第二シート部位2Bは、シート構成部材(シートクッション4b、シートバック6b、ヘッドレスト8b)を有する。
これらシート構成部材は、各々、シート骨格をなすシートフレームと、シート外形をなして乗員を弾性的に支持可能なシートパッド(典型的に発泡樹脂製)と、シートパッドに被覆のシートカバー(典型的に布帛又は皮革製)とを有する(便宜上、これらの部材の符号は省略)。
【0011】
また第三シート部位2Cは、シート構成部材(シートクッション4c,シートバック部6c)を有して、上述の両シート部位2A,2Bの間に配置する(
図1及び
図2を参照)。
ここでシートバック部6cは、第三シート部位2C(上部側)を構成する部位であり、シートフレーム(図示省略)と、第一シートパッドP1と、第二シートパッドP2と、後述の構成(収納部10,当接部材12,アームレスト20)を有する。
第一シートパッドP1は、シートバック部6c起立時を基準として、シートバック部6cの上端形状を形成する。また第二シートパッドP2は、シートバック部6cの下端形状を形成する。ここで各シートパッドP1,P2の表面は、シートカバー(図示省略)にて適宜被覆できる。
【0012】
そしてシートバック部6cの中央に、後述の収納部10(当接部材12)とアームレスト20を設ける(
図2を参照)。
このとき後述するようにアームレスト20を、当接部材12に回転可能に取付けて、使用状態と収納状態の間で変位可能とする。使用状態のアームレスト20は、シート前方に突出して乗員肘部を支持可能に配置する。また収納状態のアームレストは、シート上方に回転変位しつつシートバック部6c内(収納部10)に収納される。
そして本実施例では、使用状態から収納状態への変位により、収納部10内の当接部材12(第一部材)にアームレスト20(第二部材)が当接する。この種の構成では、比較的シンプルな構成にて、アームレスト20と当接部材12の当接による異音発生を極力阻止できることが望ましい。
そこで本実施例では、後述のシンプルな構成にて、アームレスト20と当接部材12の当接による異音発生を極力阻止することとした。以下、各構成について詳述する。
【0013】
[収納部(第一部材)]
収納部10は、シートバック部6c中央の凹部位であり、当接部材12(第一部材の一例)を有する(
図2及び
図4を参照)。
本実施例の当接部材12は、樹脂製の中空な箱状部材(正面視で略長方形状)であり、一対の軸受け部14と、天井部16と、一対の緩衝部18a,18b(後述)を有する。そして当接部材12は、比較的幅広(第三シート部位2Cの幅寸法と略同一)であり、当接部材12一面(着座側の面)が後述のアームレスト20に倣った形状を有する。
また当接部材12の厚み寸法は、第三シート部位2Cの厚み寸法よりも小さく(薄く)される。本実施例の当接部材12では、一端から他端(天井部16)に向けて次第に厚み寸法が大きくされる。ここで天井部16は、シートバック部6c起立時を基準として、当接部材12の上面(略平坦)となる部位であり、第一シートパッドP1を支持可能である。
【0014】
また一対の軸受け部14は、各々、平板部位(側面視で略半円状)であり、当接部材12(一端)の両側から着座側にそれぞれ突出する。各軸受け部14(中央)には、回転軸A1を挿入可能な孔部H1が設けられており、アームレスト20(後述)を取付け可能である。
本実施例では、一対の軸受け部14をシートクッション4c側に配置しつつ、当接部材12を、第三シート部位2Cの中央(第一シートパッドP1と第二シートパッドP2の間)に配置する。このとき当接部材12(比較的薄手の部材)を、シート後側に配置しつつシートフレーム(図示省略)に取付けることで、第三シート部位2Cの着座側に収納部10(凹部位)を形成できる。
【0015】
(緩衝部)
一対の緩衝部18a,18bは、それぞれ当接部材12一部を、アームレスト20に向けて凸状(中空)に変形してなる部位である(
図2、
図4及び
図5を参照)。
本実施例では、一対の緩衝部18a,18bを、それぞれ当接部材12一面(着座側の面)の他端側に設けて、アームレスト20に当接可能に突設する。各緩衝部18a,18bは、各々、略円筒状(同形同寸)であり、当接部材12の幅方向で見た両側にそれぞれ配置する。
そして本実施例では、
図5を参照して、各緩衝部18a,18bの厚み寸法T1を、当接部材12の他部位の厚み寸法T2よりも小さくする。例えば各緩衝部18a,18bの厚み寸法T1を他部位の厚み寸法T2の1/10〜1/5に設定する(例えば0.25mm〜0.5mmの範囲に設定する)。こうすることで各緩衝部18a,18bが、後述のアームレスト20と当接部材12の当接時の押圧により撓み変形可能となる。
ここで各緩衝部18a,18bの形成方法は特に限定しないが、典型的に当接部材12を成形すると同時に形成できる。例えば成形装置を用いて当接部材12を成形するに際して、成形装置の成形面を部分的に凹状(又は凸状)とすることで、各緩衝部18a,18bを形成可能である。
【0016】
[アームレスト(第二部材)]
アームレスト20(第二部材の一例)は、略直方体状(シート前後に長尺)の樹脂部材であり、ホルダ部位22と、一対の取付け部24を有する(
図2及び
図3を参照)。
本実施例のアームレスト20は、比較的幅広(第三シート部位2Cの幅寸法と略同一)であり、収納部10に収納可能な厚み寸法を有する。なおアームレスト20には、図示しないパッド材(シートパッドと同一素材)と、カバー材(シートカバーと同一素材)を適宜設けることができる。
ここでホルダ部位22は、アームレスト20(一面側)に設けられる部位であり、空間部(図示省略)と、空間部を覆う蓋部22aと、操作部22bを有する。空間部(図示省略)は、アームレスト20一端の凹部位であり、収納空間として利用できる。また蓋部22aは、略横L字状(断面視)の平板材であり、空間部を覆いつつアームレスト20一端に開閉可能に取付けられる。そして蓋部22a近傍の操作部22bを押圧するなどして、蓋部22aを開き状態として空間部を露出させることができる。
【0017】
また一対の取付け部24は、それぞれ当接部材12(軸受け部14)に取付け可能な部位であり、アームレスト20他端に設けられる。本実施例の各取付け部24は、それぞれアームレスト20の両側面(シート幅方向を向く面)の凹み部位であり、回転軸A1を挿設可能な孔部H2を有する。
そして本実施例では、一対の取付け部24をシートクッション4c側に配置しつつ、アームレスト20を収納部10内に配置する。この状態で各軸受け部14と各取付け部24を対面配置しつつ、各孔部(H1,H2)に回転軸A1を挿設する。こうしてアームレスト20が、当接部材12に回転可能に取付けられて、使用状態と収納状態の間で変位可能となる。
【0018】
[アームレストの変位動作]
図2〜
図4を参照して、アームレスト20を、回転軸A1を回転中心とした回転動作により、使用状態と収納状態の間で回転変位させる。
使用状態では、アームレスト20の一面側が上側に向いて(ホルダ部位22が使用可能な状態とされて)、乗員肘部を支持可能に配置する(
図3を参照)。
そして使用状態から収納状態に変位させることで、アームレスト20を収納部10内に配置する(
図1及び
図2を参照)。こうすることでアームレスト20全体が収納部10に嵌装されて、アームレスト20の他面側が着座側に向いてシートバック部6cの一部を構成する。このとき本実施例では、アームレスト20と当接部材12が、緩衝部18a,18bを押圧にて撓み変形させつつ当接することにより、両部材当接時の異音発生を極力阻止できる。
【0019】
以上説明したとおり本実施例によれば、当接部材12の一部にて各緩衝部18a,18bを形成することで、シートの部品点数の増加を極力抑えることができる。そして各緩衝部18a,18bの撓み変形にて、アームレスト20と当接部材12の当接時の異音発生を極力阻止できる。
このため本実施例によれば、比較的シンプルな構成にて、アームレスト20と当接部材12の当接による異音発生を極力阻止することができる。
【0020】
[変形例]
ここで緩衝部は、上述の構成のほか各種の構成を取り得る。
例えば変形例1では、緩衝部18c(略円筒形状)に、当接部位19aと、変形部位19bを設ける(
図6(a)を参照)。当接部位19aは、緩衝部18cの本体をなす部位であり、アームレスト20に当接可能である。また変形部位19bは、当接部材12の内方に向けて凹状の部位であり、当接部位19aの周囲に形成できる。
本変形例では、変形部位19bが、当接部材12(着座側の面)から内方に湾曲しつつ凹状に形成されて、当接部位19aの端部につながる。このように変形部位19bを凹み(湾曲)形状としたことで、アームレスト20との当接時において(押圧にて)、変形部位19bが、当接部位19aよりも大きく撓み変形することとなる。このように本変形例では、変形部位19bにて、当接部位19aの撓み変形を極力抑えることで、当接部位19a(比較的人目につきやすい部位)の撓み変形による劣化(白化)を極力阻止できる。
【0021】
また変形例2では、当接部位19cを、緩衝部18dの当接面(着座側を向く平坦面)で構成する(
図6(b)を参照)。そして変形部位19dを、緩衝部18dの周壁を蛇腹状とすることで形成できる。そしてアームレスト20との当接時において(押圧にて)、変形部位19d(蛇腹状)が撓み変形することにより、当接部位19cの劣化を極力阻止できる。
【0022】
また実施例1において、緩衝部18a,18bにおいて、これらの当接面の厚み寸法を、周壁の厚み寸法よりも大きく設定することもできる(
図5を参照)。こうして緩衝部18a,18bの周壁が、比較的撓み変形しやすくなり(変形部位として機能して)、緩衝部18a,18bの当接面の劣化を極力阻止できる。
【0023】
本実施形態の乗物用シートは、上述した実施形態に限定されるものではなく、その他各種の実施形態を取り得る。
(1)本実施形態では、緩衝部18a,18bを当接部材12に設ける例を説明した。緩衝部は、当接部位(第一部位)とアームレスト(第二部位)の少なくとも一方に設けることができる。また本実施形態では、緩衝部の構成(形成数,形状,寸法,形成位置等)を例示したが、同部の構成を限定する趣旨ではない。例えば本実施例では、一対の緩衝部を設ける例を説明したが、単数の緩衝部を設けることもできる。また円筒形状(スポット状)の緩衝部を例示したが、線状(直線状や十字状等)の緩衝部を形成することもできる。また複数の緩衝部を、当接部材などにシート上下に並列して設けることもできる。
【0024】
(2)また本実施形態では、収納部10と当接部材12とアームレスト20の構成(形状,寸法,材質等)を例示したが、これらの構成を限定する趣旨ではない。例えばアームレストを扁平形状とすることもできる。また各部材は、樹脂又は金属で適宜形成することができる。なお樹脂製の各部材の材質として、熱可塑性樹脂(ポリプロピレン,塩化ビニル樹脂,ポリエチレン)や、熱硬化性樹脂(フェノール樹脂,メラミン樹脂,エポキシ樹脂,ユリア樹脂)を例示できる。
【0025】
(3)また本実施形態では、複数人の着座可能な乗物用シートを一例に説明したが、本実施例の構成は、一人用の乗物用シートに適用できる。また本実施例の構成は、車両や航空機や電車などの各種の乗物用シート全般に適用できる。
(4)また本実施形態では、収納部10(当接部材12)とアームレスト20を一例に説明したが、本実施例の構成は、コンソールボックス(第一部材の一例)と蓋部材(第二部材の一例)などの各種当接可能な構造に適用可能である。なお第二部材は、第一部材二回転変位可能に取付けることができ、またスライド移動可能(上下動,前後動,左右移動)に取付けることもできる。