(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
刃部が設けられたカッタを有し、前記刃部が出没可能かつ前記刃部の突出量が変更可能であるカートリッジを装着した状態で、前記刃部の突出量を調整する調整治具であって、
シート状の被切断物を該被切断物の厚み方向の両側から挟持する挟持部を備え、
前記カートリッジを装着し、前記挟持部に前記被切断物を挟持した状態で前記刃部の突出量を変更した場合に、前記被切断物が自重により前記挟持部から外れたときの前記刃部の突出量が適正な突出量となることを特徴とする調整治具。
前記カートリッジは、切断装置に装着されて前記被切断物を切断するものであって、長手方向に延びて先端部に前記刃部が設けられた前記カッタを保持する本体部と、前記刃部が貫通可能な穴部を有して前記カッタを覆うとともに前記本体部に回転可能に螺合し、回転に応じて前記カッタの長手方向へ移動して前記穴部から突出する前記刃部の突出量を変更するキャップ部と、を有するカートリッジの、前記刃部の突出量を調整する調整治具であって、
前記キャップ部を回転可能かつ前記長手方向へ移動不能に保持するとともに前記本体部を回転不能かつ前記長手方向へ移動可能に保持するベース部材と、
前記ベース部材に一体的に設けられた第一挟持部であって、前記挟持部を構成する第一挟持部と、
前記ベース部材に前記長手方向へ移動可能に支持され、前記キャップ部の回転に伴い前記刃部が突出することにより、前記刃部が接触して該刃部に押圧されることで前記刃部の突出量に応じて移動する移動部材と、
前記移動部材と一体的に移動可能に設けられ、前記移動部材が前記刃部に押圧されずに移動していない初期位置において前記第一挟持部に当接する第二挟持部であって、前記挟持部を構成する第二挟持部と、
前記第二挟持部が前記第一挟持部に近づく方向へ前記移動部材を付勢する付勢部材と、を備え、
前記カートリッジを装着し、前記第一挟持部と前記第二挟持部との間に前記被切断物を挟み込んだ状態で前記キャップ部を回転させて前記穴部からの前記刃部の突出量を変更し、前記刃部が前記移動部材を押圧して前記付勢部材の付勢力に抗して前記移動部材を移動させることで前記第二挟持部を前記第一挟持部から離間させた場合に、前記被切断物が自重により前記第一挟持部と前記第二挟持部との間から外れたときの前記刃部の突出量が適正な突出量となることを特徴とする請求項4に記載の調整治具。
請求項1から3のいずれか一項に記載のカッタカートリッジ装置、或は請求項1から3のいずれか一項に記載のカートリッジ及び請求項4から6のいずれか一項に記載の調整治具と、
シート状の被切断物を保持する保持部材と、
被切断物を切断するために前記保持部材と前記カートリッジとを相対的に移動させる移動手段と、
を備えることを特徴とする切断装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、一実施形態によるカッタカートリッジ装置、調整治具、及び切断装置について図面を参照して説明する。
図1及び
図2は、切断装置10を示している。切断装置10は、
図1に示す保持部材90に保持された被切断物91を、所望の形状に切断するものである。保持部材90は、表面に粘着層(図示せず)を有する樹脂製の平板であり、布や紙等の被切断物91を粘着層に貼り付けて保持する。切断装置10は、
図1及び
図2に示すように、本体カバー11、切断装置本体12、X軸移動機構13、Y軸移動機構14、及びキャリッジ15を備えている。また、切断装置10は、
図2に示すように、カッタ30が設けられたカートリッジ40を備えている。カートリッジ40は、
図2に示すように、キャリッジ15に着脱可能に取り付けられる。
【0013】
本体カバー11は、全体として矩形の箱状に構成されており、切断装置本体12、X軸移動機構13、Y軸移動機構14、キャリッジ15、及びカートリッジ40の外側全体を覆っている。以下の説明において、本体カバー11の長手方向を切断装置10の左右方向とし、開口部111側を切断装置10の前側とする。また、切断装置10に対し、左右方向をX軸方向、前後方向をY軸方向、上下方向をZ軸方向と定義する。
【0014】
本体カバー11の正面には、開口部111が形成されている。本体カバー11の開口部111に対向する後面にも、保持部材90が通過可能な開口部(図示せず)が形成されている。本体カバー11は、前カバー112及び操作パネル113を有している。前カバー112は、下端部が本体カバー11に回動可能に枢支され、開口部111を開放する位置と開口部111を閉じる位置とに亘って回動する。操作パネル113は、本体カバー11の上部に設けられている。操作パネル113は、例えばタッチ式液晶ディスプレイで構成された入力表示部114と複数のスイッチ115などを有している。ユーザは、タッチ式液晶ディスプレイ114や操作パネル113を操作することによって、各種の設定や動作状況の確認を行う。
【0015】
切断装置本体12は、基台121、受け機構122などから構成されている。基台121は、本体カバー11の底部に設けられて、矩形の枠状に構成されている。受け機構122は、略水平な平板状に構成されている。受け機構122には被切断物91を保持した保持部材が載置される。受け機構122は、被切断物91を切断する際、カートリッジ40の下端部が被切断物91及び保持部材90に与える押圧力を受ける。
【0016】
X軸移動機構13は、キャリッジ15をX軸方向つまり左右方向へ移動させる。X軸移動機構13は、上下一対のX軸ガイドレール131、132、X軸モータ133、X軸駆動ギヤ134、X軸従動ギヤ135、一対のタイミングプーリ136、137、及びタイミングベルト138から構成されている。上下一対のX軸ガイドレール131、132は、上下に水平に並んで設けられている。X軸モータ133は、例えばステッピングモータである。X軸駆動ギヤ134は、X軸モータ133の回転を受け、X軸モータ133の回転軸と一体的に回転する。X軸従動ギヤ135は、X軸駆動ギヤ134と噛み合って設けられている。
【0017】
左右一対のタイミングプーリ136、137のうち、左側タイミングプーリ136は、X軸従動ギヤ135の下側に設けられている。左側タイミングプーリ136は、X軸従動ギヤ135の回転に伴いX軸従動ギヤ135と一体的に回転する。タイミングベルト138は、左側タイミングプーリ136と右側タイミングプーリ137との間に亘って架けられている。詳しくは図示しないが、タイミングベルト138の一部が、キャリッジ15に接続されている。
【0018】
この構成において、X軸モータ133が回転すると、その回転は、X軸駆動ギヤ134、X軸従動ギヤ135、及び左側タイミングプーリ136によってタイミングベルト138に伝達される。これによりキャリッジ15は、タイミングベルト138の移動に伴ってX軸方向つまり左右方向へ移動する。
【0019】
Y軸移動機構14は、保持部材90に保持された被切断物91をY軸方向つまり前後方向へ移動させる。Y軸移動機構14は、駆動ローラ141、ピンチローラ142、Y軸モータ143、Y軸駆動ギヤ144、及びY軸従動ギヤ145から構成されている。駆動ローラ141及びピンチローラ142は、軸中心が左右方向すなわちX軸方向へ向くようにX軸ガイドレール131、132と平行に設けられている。駆動ローラ141とピンチローラ142との間に配置された保持部材90は、ピンチローラ142によって駆動ローラ141に押し付けられる。
【0020】
Y軸モータ143は、例えばステッピングモータである。Y軸駆動ギヤ144は、Y軸モータ143の回転を受け、Y転モータ143の回転軸と一体的に回転する。Y軸従動ギヤ145は、駆動ローラ141の右端部に設けられている。Y軸従動ギヤ145は、Y軸駆動ギヤ144と噛み合っている。
【0021】
この構成において、Y軸モータ143が回転すると、その回転は、Y軸駆動ギヤ144とY軸従動ギヤ145とによって駆動ローラ141に伝達される。そして、駆動ローラ141の回転は、駆動ローラ141とピンチローラ142との間に挟持された保持部材90に伝達される。これにより、保持部材90は、駆動ローラ141の軸方向に直交するY軸方向つまり前後方向へ移動する。
【0022】
キャリッジ15は、カートリッジホルダ151と図示しないZ軸移動機構とを有して構成されている。カートリッジホルダ151は、キャリッジ15の前側に設けられ、カートリッジ40を着脱可能に保持する。カートリッジ40は、
図2に示すようにカッタ30の刃部を露出させた形態で、カートリッジホルダ151に固定される。図示しないZ軸移動機構は、キャリッジ15の内部に設けられており、カートリッジホルダ151をカートリッジ40とともに上下方向つまりZ軸方向へ移動させる。
【0023】
この構成において、Z軸移動機構によってカートリッジホルダ151が下方へ移動されると、カートリッジ40に取り付けられたカッタ30の先端部は、シート状の保持部材90に保持されている被切断物91に食い込む。切断装置10は、カッタ30の先端部を被切断物91に食い込ませた状態で、X軸移動機構13によってキャリッジ15をX軸方向へ移動させるとともに、Y軸移動機構14によって被切断物91をY軸方向へ移動させることで、被切断物91を所望の形状に切断する。この場合、X軸移動機構13、Y軸移動機構14、及び図示しないZ軸移動機構は、被切断物91を切断するために、保持部材90とカートリッジ40が設けられたキャリッジ15とを相対的に移動させる移動手段として機能する。
【0024】
切断装置10は、
図3に示すように、制御回路17を備えている。制御回路17は、中央演算処理装置(CPU)であって、切断装置10の全体の制御を司っている。制御回路17には、操作パネル113の入力表示部114及びスイッチ115、RAM181、ROM182、及び駆動回路19が接続されている。RAM181は、各モータ133、143、152を駆動させて被切断物91を所望の形状に切断するための切断データなどを記憶する。ROM182は、RAM181に記憶された切断データに基づいて各モータ133、143、152を駆動制御するための駆動制御プログラムなどを記憶している。駆動回路19は、制御回路17からの命令に基づいて、それぞれX軸モータ133、Y軸モータ143、Z軸モータ152を駆動させる。
【0025】
また、切断装置10は、
図4に示すカッタカートリッジ装置20を備えている。カッタカートリッジ装置20は、カッタ30が交換可能に設けられたカートリッジ40と、カッタカートリッジ40が着脱可能に装着される調整治具50とから構成されている。次に、このカッタカートリッジ装置20について
図4〜
図11を参照して説明する。なお、
図4、
図6〜
図11は、カッタカートリッジ装置20又は調整治具50を使用状態における姿勢で示している。この場合、
図4及び
図6においては、紙面左奥側をカッタカートリッジ装置20又は調整治具50の前端側とし、紙面右手前側をカッタカートリッジ装置20又は調整治具50の後端側とする。また、
図7〜
図11においては、紙面左側をカッタカートリッジ装置20の前端側とし、紙面右側をカッタカートリッジ装置20の後端側としている。また、
図5においては、カートリッジ40を、キャリッジ15に取り付けられる際の姿勢で示している。この場合、
図5における紙面下側をカートリッジ40の下側とし、紙面上側をカートリッジ40の上側としている。
【0026】
まず、
図5を参照して、カートリッジ40について説明する。カートリッジ40は、本体部41、ドグ部42、キャップ部43、及びカッタ30を有している。カッタ30は、長手方向へ延びる円柱状に構成された軸部31と、この軸部31の先端部に設けられた刃部32とを一体に有している。なお、カッタ30はこの構成に限られず、例えば円柱状の軸部の先端に、平板状の刃部を設けた構成でもよい。
【0027】
本体部41は、樹脂製であって、全体として長手方向、
図5では上下方向へ長く、下部の外径が上部の外径よりも小さい二段の円柱状に形成されている。つまり、本体部41は、略円柱状に形成された本体大径部411と、本体大径部411の下側に設けられ、その外径が本体大径部411の外径よりも小さい円柱状の本体小径部412とを一体に有して構成されている。また、本体部41には、本体大径部411の外周部を平面状に切り取るようにして二箇所の平面部413が対向して形成されている。
【0028】
本体部41の内側には、収容室414と挿通部415とが形成されている。収容室414は、本体大径部411の内側にあって、本体大径部411の上端部から本体小径部412側へ向って本体大径部411の途中部分まで窪ませるようにして形成されている。挿通部415は、本体小径部412から本体大径部411の下端部に亘り、本体小径部412側から本体大径部411側へ向って狭まる円錐台形の空間に形成されている。挿通部415は、その上端側が収容室414内へ連通している。
【0029】
本体部41の内部には、第一軸受44、第二軸受45、止め輪46、固定部材47、及び磁石48が設けられている。第一軸受44は、例えばボールベアリングなどの転がり軸受であって、挿通部415の下端部である本体小径部412の内側に設けられている。止め輪46は、第一軸受44の下側であって本体小径部412の内側に設けられている。止め輪46は、第一軸受44が挿通部415内から抜け落ちないように、該第一軸受44を本体小径部412の内側に固定している。
【0030】
第二軸受45は、例えば金属合金からなるすべり軸受けであって、挿通部415の上端部すなわち収容室414の底部に設けられている。固定部材47は、収容室414内にあって、第二軸受45の上側に設けられている。固定部材47は、第二軸受45を挿通部415から外れないように、該第二軸受45を収容室414の底部に固定している。磁石48は、挿通部415の上端部の上側に位置し、固定部材47に埋め込まれるようにして設けられている。また、本体大径部411の外周には、本体大径部411の下端から収容室414の底部付近にかけて雄ねじ部416が設けられている。
【0031】
ドグ部42は、樹脂製であって、本体部41の上端部に設けられて収容室414の上側の開口を閉塞している。ドグ部42は、摘み部421を有している。摘み部421の形状は、平面部分を有しない円弧状の曲面で形成されている。
【0032】
キャップ部43は、樹脂製であって、全体として下部の外径が上部の外径よりも小さい二段の円筒状に形成されている。すなわち、キャップ部43は、円筒状に形成されたキャップ大径部431とキャップ小径部432とを一体に有している。キャップ大径部431の内径は、本体大径部411の外径よりも僅かに大きく形成されている。キャップ小径部432の内径は、本体小径部412の外径よりも僅かに大きく形成されている。キャップ大径部431とキャップ小径部432との間には、段部433が形成されている。
【0033】
キャップ小径部432の下端部には、押圧面部434が設けられている。押圧面部434は、円形の平坦面に形成されており、被切断物91を切断する際、被切断物91の上面に接触し該被切断物91を押圧する。押圧面部434には、該押圧面部434の中央部分を円形に貫いて穴部435が形成されている。穴部435は、キャップ部43の内側と外側とを連通し、本体部41に保持されたカッタ30の刃部32が貫通可能な構成となっている。キャップ大径部431の内側には、雌ねじ部436が設けられている。雌ねじ部436は、本体大径部411の外周に設けられた雄ねじ部416に螺合する。すなわち、キャップ部43は、本体部41に対して回転可能に螺合する。
【0034】
この構成において、ユーザは、本体部41からキャップ部43を取り外した状態で、カッタ30を本体部41に取り付ける。カッタ30の軸部31が、第一軸受44及び第二軸受45に挿通されると、軸部31の上端部が磁石48に吸引される。これにより、カッタ30は、回転可能な状態で本体部41に保持される。その後、ユーザは、キャップ部43を本体部41に取り付ける。これにより、カッタ30は、キャップ部43により覆われた状態で、刃部32がキャップ部43の穴部435から出没可能で、かつ該刃部32の突出量が変更可能となる。
【0035】
すなわち、カッタ30の刃部32は、キャップ部43の位置に応じて、キャップ部43の先端の穴部435を貫通して該穴部435からキャップ部43の外部に突出される。そして、キャップ部43の先端の穴部435から突出したカッタ30の突出量Lは、次の様にして変更される。すなわち、本体部41を回転不能に固定した状態で、キャップ部43を回転させる。これにより、本体部41の雄ねじ部416に対してキャップ部43の雌ねじ部436が相対的に回転する。すると、キャップ部43は、その回転に応じて本体部41に対して該本体部41の長手方向、
図5では上下方向へ移動し、これによりカッタ30の突出量Lが変化する。このように、カッタ30の刃部32の突出量Lは、キャップ部43の回転に応じて変更される。
【0036】
キャップ大径部431の内側かつ本体小径部412の外側には、圧縮コイルバネ49が設けられている。圧縮コイルバネ49は、本体部41の本体大径部411の下端部と、キャップ部43のキャップ大径部431の底部との間に設けられている。圧縮コイルバネ49は、本体部41とキャップ部43とを上下方向へ相互に離間するように付勢している。これにより、本体大径部411の雄ねじ部416とキャップ大径部431の雌ねじ部436との螺合に起因する緩みやガタつきが抑制される。よって、本体部41に対するキャップ部43の位置、すなわちカッタ30の突出量Lを精度良く調整することができる。
【0037】
次に、
図6及び
図7を参照して、調整治具50について説明する。調整治具50には、カートリッジ40が着脱可能に装着される。調整治具50は、カートリッジ40に設けられたカッタ30の刃部32の突出量Lを適正に調整するための治具である。調整治具50は、ベース部材60、移動部材70、及び圧縮コイルバネ51を有している。ベース部材60及び移動部材70は、例えば樹脂材料で構成されているが、金属製であってもよい。
【0038】
ベース部材60は、板部61、支持部62、第一挟持部63、抜止部64、規制部65、及びバネ受け部66を一体に有している。板部61は、カートリッジ40の幅(
図5におけるカートリッジ40の左右寸法)及び長さ(
図5におけるカートリッジ40の上下寸法)よりも一回り程度大きい矩形の平板状に構成されている。また、板部61には、
図7に示すように、該板部61の長手方向において前端側寄り部分に、該板部61を矩形に貫いた挿通穴611が形成されている。
【0039】
支持部62は、板部61の長手方向の中心に対して前端側寄りに設けられている。支持部62は、全体として板部61の面から直角方向へ突出した矩形のブロック状に構成されている。支持部62の内側には、このブロック状の一部にU字状の導入部621が形成されている。導入部621は、板部61と反対側が開放されている。導入部621における板部61の幅方向の寸法Aは、カートリッジ40のキャップ小径部432の外径寸法よりやや大きい寸法に設定されている。
【0040】
支持部62は、後端側の面を座面622としている。
図4に示すように調整治具50にカートリッジ40を装着した際、座面622には、キャップ部43の段部433が当接する。抜止部64は、支持部62に一体に設けられている。抜止部64は、矩形の板状に形成されており、支持部62の前端側部分から、前端側へ延び出ている。
【0041】
第一挟持部63は、矩形の板状に構成されている。第一挟持部63は、板部61の支持部62と反対側にあって、該板部61の面から直角方向へ突出して設けられている。
図7の(b)にも示すように、支持部62の前端側の面である支持部前端面623と、第一挟持部63の前端側の面である第一挟持面631とは、同一平面となっている。
【0042】
規制部65は、板部61の長手方向の中心よりやや後端側寄り部分に設けられている。規制部65は、二個の角柱で構成されており、板部61の幅方向の両側に設けられている。規制部65は、板部61の支持部62側の面において直角方向へ突出している。この場合、二個の規制部65と板部61とは、
図6に示すようにU字状を構成している。規制部65において、前端側の面を移動規制面651とし、板部61の幅方向の内側の面を回転規制面652としている。
【0043】
この場合、二個の規制部65における回転規制面652間の距離Bは、カートリッジ40の本体大径部411の外径及びキャップ大径部431の外径よりも小さく、かつ、本体部41に対向して設けられた二個の平面部413間の距離よりやや大きい値に設定されている。また、支持部62の座面622と規制部65の移動規制面651との間の距離Cは、キャップ部43の段部433からキャップ大径部431の後端部までの距離つまりキャップ大径部431の長手方向の寸法よりやや大きい値に設定されている。そして、座面622から第一挟持面631までの距離Dは、キャップ部43の段部433からキャップ小径部432の下端部434までの距離、すなわち当該キャップ小径部432の長手方向の寸法と同じ値に設定されている。
【0044】
バネ受け部66は、矩形の板状であって、板部61の前端側部分に設けられている。バネ受け部66は、板部61の第一挟持部63側の面から直角方向へ突出して設けられている。バネ受け部66は、第一挟持部63と平行になっている。バネ受け部66の後端側すなわち第一挟持部63側には、当該第一挟持部63側へ向って円柱状に突出した第一突部661が設けられている。
【0045】
移動部材70は、主体部71、延出部72、及び第二挟持部73を一体に有している。移動部材70は、全体としてT字状に構成されている。主体部71は矩形の板状に構成されている。主体部71には、溝部711が形成されている。溝部711は、主体部71においてベース部材60の板部61側に形成され、板部61の形状に合わせて窪んだ溝形状に形成されている。溝部711は、ベース部材60の板部61に嵌め込まれている。延出部72は、略矩形の板状であって、主体部71の後端側部分において直角方向へ突出して設けられている。この場合、移動部材70は、主体部71と延出部72との部分においてL字状に構成されている。延出部72の端部は、ベース部材60の抜止部64によって、板部61から外れないようになっている。これにより、移動部材70は、抜止部64の範囲内において、板部61上を長手方向へ摺動する。
【0046】
第二挟持部73は、板部61に形成された挿通穴611の幅よりも幅の狭い板状に構成されている。第二挟持部73は、主体部71の後端側部分にあって、延出部72と反対側の面から直角方向へ突出して設けられている。第二挟持部73は、第一挟持部63とともに挟持部を構成している。第二挟持部73は、板部61の挿通穴611に通されている。第二挟持部73は、ベース部材60のバネ受け部66と対向している。第二挟持部73の前端側つまりバネ受け部66側には、前端側へ向って円柱状に突出した第二突部731が設けられている。バネ受け部66の第一突部661と、第二挟持部73の第二突部731とは対向している。この場合、第二挟持部73において後端側の面つまり第一挟持面631に対向する面を第二挟持面732とする。
【0047】
圧縮コイルバネ51は、ベース部材60のバネ受け部66と移動部材70の第二挟持部73との間に設けられ、バネ受け部66の第一突部661と第二挟持部73の第二突部731とに支持されている。移動部材70は、圧縮コイルバネ51によって、ベース部材60の第一挟持部63側へ近づく方向、すなわち調整治具50の後端側へ向う付勢力を受けている。この場合、圧縮コイルバネ51は、移動部材70を後端側へ付勢する付勢部材として機能している。
【0048】
また、
図8に示すように、延出部72の後端側の面には、凹部721が形成されている。凹部721は、第二挟持部73の第二挟持面732に対して、所定距離窪んでいる。この凹部721の深さ寸法Eは、例えば0.01〜0.05mm程度に設定されている。この場合、移動部材70が移動していない初期位置において、ベース部材60の第一挟持面631と、移動部材70の第二挟持面732とは当接している。一方、初期位置において、ベース部材60の支持部前端面623と移動部材70の凹部721とは当接せずに、凹部721による僅かな隙間が形成されている。すなわち、移動部材70の凹部721は、該移動部材70が初期位置にあるときにキャップ部43の押圧面部434から所定距離、この場合凹部721の深さ寸法Eである0.01〜0.05mm離間している。
【0049】
次に、調整治具50による、カートリッジ40に設けられたカッタ30の刃部32の突出量の調整方法について説明する。
ユーザは、カートリッジ40にカッタ30を取り付けた後、カッタ30をキャップ部43内に没入させた状態で、カートリッジ40を調整治具50に装着する。このとき、カートリッジ40は、
図4に示すように、キャップ大径部431が支持部62の座面622と規制部65の移動規制面651との間に入り込むとともに、キャップ小径部432が、導入部621に入り込んだ状態で、調整治具50に装着される。このとき、カートリッジ40は、キャップ大径部431の段部433が支持部62の座面622に当接することで、長手方向の前端側への移動が規制される。また、カートリッジ40は、キャップ大径部431の後端側部分が規制部65の移動規制面651に当接することで、長手方向の後端側への移動が規制される。このように、キャップ部43は、調整治具50に装着された状態では、長手方向には移動不能に保持されるが、回転は規制されていない。
【0050】
さらに、カートリッジ40は、二個の平面部413が、二個の規制部65の回転規制面652の間に入り込むようにして、調整治具50に装着される。これにより、キャップ部43が回転しても、本体部41は回転不能に保持される。一方、本体部41は、長手方向への移動は規制されていない。このように、調整治具50のベース部材60は、キャップ部43を回転可能かつ長手方向へ移動不能に保持するとともに、本体部41を回転不能かつ長手方向へ移動可能に保持している。
【0051】
図8及び
図9に示すように、カッタ30の刃部32がキャップ部43内に没入している場合、移動部材70が初期位置にあっても、カッタ30の刃部32先端部は、移動部材70の凹部721から離間している。また、キャップ部43の押圧面部434も、移動部材70の凹部721から離間している。一方、この初期位置において、ベース部材60の第一挟持部63のうちの第一挟持面631と、移動部材70の第二挟持部73のうちの第二挟持面732とは当接している。
【0052】
次に、
図10に示すように、ユーザは、移動部材70を、圧縮コイルバネ51の付勢力に抗して前端側へ移動させる。これにより、第一挟持部63の第一挟持面631と、第二挟持部73の第二挟持面732とが離間する。その後、ユーザは、第一挟持面631と第二挟持面732との間にシート状の被切断物91を挟み込む。そして、第一挟持面631と第二挟持面732とを閉じて、被切断物91を第一挟持面631と第二挟持面732との間に保持させる。このように、第一挟持部63と第二挟持部73とにより構成される挟持部は、シート状の被切断物91を該被切断物91の厚み方向の両側から挟持する。ここで、被切断物91全体を前記挟持部で挟持するのではなく、被切断物91の一部を小片にしておき、この小片を挟持してもよい。なお、
図10、
図11では、被切断物91を小片にしたものを示している。
【0053】
その後、ユーザは、調整治具50を回転しないように把持した状態で、キャップ部43を刃部32の突出量が増大する方向、すなわちキャップ部43を本体部41にねじ込む方向、この場合時計回り方向に回転させる。すると、キャップ部43は調整治具50によってカートリッジ40の長手方向へ移動不能に保持されているため、カッタ30を保持した本体部41が、キャップ部43側へ引き込まれる。これにより、キャップ部43の穴部435からカッタ30の刃部32が突出する突出量が増大する。
【0054】
カッタ30の刃部32の突出量が増大すると、刃部32の先端部は、移動部材70の凹部721に当接する。その後、さらにカッタ30の刃部32の突出量を増大させると、刃部32が移動部材70を押圧し、圧縮コイルバネ51の付勢力に抗して移動部材70が移動する。これにより、移動部材70の第二挟持部73が、ベース部材60の第一挟持部63から離間する。すなわち、刃部32の突出量が変更されることに連動して第一挟持部63と第二挟持部73との間隔が徐々に拡がる。すると、第一挟持部63と第二挟持部73との挟持力が弱まり、被切断物91が自重により第一挟持部63と第二挟持部73との間から外れ、
図11に矢印で示すように落下する。このように、被切断物91が自重により外れたときの刃部32の突出量が、適正な突出量となる。
【0055】
これによれば、ユーザは、調整治具50を用いてカッタ30の刃部32の突出量を容易に調整することができる。すなわち、カッタ30の刃部32の突出量を調整する際、ユーザは、カートリッジ40を調整治具50に装着した状態でキャップ部43を回転させて、被切断物91が第一挟持部63と第二挟持部73との間から外れるまで刃部32を突出させるだけでよい。これにより、ユーザは、被切断物91が第一挟持部63と第二挟持部73との間から外れたことによって、刃部32の突出量が適正な突出量となったことが分かる。換言すれば、微小な刃部32の突出量を目視で確認しなくとも、刃部32の突出量が適正な突出量となったことを明確に知ることができる。即ち、刃部32の突出量を容易に調整することができる。
【0056】
また、移動部材70の延出部72には僅かに窪んだ凹部721が形成されている。この移動部材70が初期位置にあるとき、移動部材70の凹部721は、ベース部材60の第一挟持面631と移動部材70の第二挟持面732とは接しているが、ベース部材60の支持部前端面623及びキャップ部43の押圧面部434に接していない。これによれば、カッタ30の刃部32の突出量を調整する際、移動部材70の凹部721の深さ方向の寸法分だけ、刃部32を多く突出させることができる。すなわち、被切断物91の厚み寸法に、移動部材70の凹部721の深さ寸法(0.01〜0.05mm程度)を加えた寸法を、刃部32の適正な突出量とすることができる。従って、刃部32の突出量を、被切断物91の厚みよりも僅かに大きい寸法に容易に調整することができる。従って、切断装置10による切断動作において、被切断物91が切れていない切断不良の発生を確実に防止することができる。更に、保持部材90に付く切断跡の深さを最小限に抑えると共に、刃部32の摩耗を極力少なくすることができる。換言すれば、保持部材90、及び刃部32即ちカッタ30の耐久性を向上させることができる。
【0057】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な拡張、変更が可能である。
例えば、圧縮コイルバネ51に換えて、引張コイルバネを設けてもよい。この場合、引張コイルバネは、その一端部を移動部材70に設け、他端部をベース部材60において第一挟持部63よりも後端側に設ければよい。