(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0013】
<第1の実施の形態>
図1は、本発明の半導体レーザ装置の構成の一例の概要を示す説明図である。
この半導体レーザ装置10は、レーザ光源として、直線状に並ぶ複数の発光部を有する、複数の半導体レーザ素子11a〜11fを備えており、当該複数の半導体レーザ素子11a〜11fからのレーザ光が光ファイバー14を介して外部に出射される構成を有するものである。
複数の半導体レーザ素子11a〜11fは、冷却部材25上に設置された、例えば銅およびアルミニウムなどの金属よりなり、半導体レーザ素子11a〜11fの発光部の点灯中に発生する熱を速やかに冷却部材25に伝達するためのヒートシンク20上に配置されている。具体的には、各半導体レーザ素子11a〜11fの光出射面が光ファイバー14の光入射面に対向するよう、略同一方向(
図1において右方)を向く状態に配置されている。この複数の半導体レーザ素子11a〜11fの各々と、ヒートシンク20との間には、例えば銅タングステン(CuW)や窒化アルミニウム(AlN)などからなるサブマウント部材(図示省略)が介在している。
また、半導体レーザ装置10には、複数の半導体レーザ素子11a〜11fと、光ファイバー14との間に、当該複数の半導体レーザ素子11a〜11fからのレーザ光を集光する、例えば略円板形状の外観形状を有する集光レンズ19が設けられている。
光ファイバー14は、円形状の一端面14aが光入射面とされ、円形状の他端面14bが光出射面とされており、集光レンズ19によって集光されたレーザ光が光入射面に入射されるように当該集光レンズ19の焦点位置に配置されている。
図1において、La1〜Lf1は、各々、半導体レーザ素子11a〜11fからのレーザ光の光軸示す。
【0014】
また、半導体レーザ装置10において、複数の半導体レーザ素子11a〜11fからのレーザ光が集光レンズ19に至るまでの光路上には、各半導体レーザ素子11a〜11fに対応して、当該半導体レーザ素子11a〜11fからのレーザ光をコリメートして略平行光に偏向するためのコリメート部材が設けられている。
【0015】
複数の半導体レーザ素子11a〜11fは、各々、矩形平板状の外観形状を有しており、
図2に示されるように、直線状に並ぶ複数の発光部(エミッタ)13を有する一面12が光出射面とされたものである。この光出射面を構成する一面12において、複数の発光部13は、長手方向(
図2(a)、(c)における左右方向)に特定の配設ピッチpで配列されている。配設ピッチpは、隣接する発光部13の中心間距離である。
また、これらの複数の半導体レーザ素子11a〜11fは、複数の発光部13が並ぶ方向の長さが同一のものであることが好ましい。
この図の例において、複数の半導体レーザ素子11a〜11fは、同一の規格を有するものである。
【0016】
半導体レーザ素子11a〜11fの寸法例を示すと、長手方向長さが4mm、高さ方向(
図2(a)における上下方向)長さが0.1mm、奥行き方向(
図2(a)における紙面と垂直な方向)長さが1.5mmである。
また、半導体レーザ素子11a〜11fの各発光部13におけるレーザ光が出射されるレーザ光出射端面の長手方向長さ(w)が40μm、高さ方向長さ(h)が1μmである。
また、発光部13の配設ピッチpは200μmである。
発光部13を構成するエミッタの発振波長は、例えば634〜644nmであり、エミッタの光軸に対するファスト軸方向の発散角度が半値全角で40°(2.3mrad)、スロー軸方向の発散角度が半値全角で7°(0.4mrad)である。
【0017】
半導体レーザ素子11a〜11fは、アレイ型半導体レーザ素子であってもよく、また複数のシングルエミッタ半導体が、0.5mm程度、あるいはそれ以下の間隔で直線状に並ぶように配置されてなる構成のものであってもよい。
【0018】
コリメート部材は、ファスト軸用コリメートレンズ17aと、スロー軸用コリメートレンズ17bとよりなる。
ファスト軸用コリメートレンズ17aおよびスロー軸用コリメートレンズ17bは、各々、半導体レーザ素子11a〜11fにおける複数の発光部の各々に対応するレンズセルを有するアレイ型のもの、すなわち、各々、直線状に並んだ複数のレンズセルを有するものである。
ファスト軸用コリメートレンズ17aおよびスロー軸用コリメートレンズ17bは、各半導体レーザ素子11a〜11fにおける複数の発光部の各々に対応するレンズ素子群によって構成されていてもよい。
【0019】
コリメート部材の寸法例を示すと、ファスト軸用コリメートレンズ17aの光軸方向の長さが1mm、光軸に垂直な方向の長さ(高さ)が1mm、ファスト軸用コリメートレンズ17aの屈折率が1.78である。また、スロー軸用コリメートレンズ17bの光軸方向の長さが1mm、光軸に垂直な方向の長さ(高さ)が1mm、スロー軸用コリメートレンズ17bのレンズセルの各々の曲率半径が0.81mm、スロー軸用コリメートレンズ17bの屈折率が1.81である。
【0020】
コリメート部材は、半導体レーザ素子11a〜11fに接近した位置に配置される。
コリメート部材を半導体レーザ素子11a〜11fに接近した位置に配置することにより、半導体レーザ素子11a〜11fからのレーザ光を高い効率でコリメート部材に入射させることができる。
【0021】
半導体レーザ装置10におけるコリメート部材の配置位置の寸法例を示すと、ファスト軸用コリメートレンズ17aの光入射面における平坦面と半導体レーザ素子11a〜11fの光出射面との光軸La1〜Lf1の方向の離間距離が0.16mmである。また、スロー軸用コリメートレンズ17bのレンズセルの各々の光入射面とファスト軸用コリメートレンズ17aの光出射面との光軸方向の最小離間距離が0.4mmである。
【0022】
ヒートシンク20は、6段のステップを有する階段状のものであって、集光レンズ19に対向して、上段のステップほど集光レンズ19から離間する状態で配置されている。
【0023】
各ステップを構成するステップ面21a〜21fは、集光レンズ19の光軸Cと平行または後述するように略平行な面であり、各々、半導体レーザ素子11a〜11fを配置する面とされる。
ステップ面21a〜21fは、各々、矩形状であって、各々1個の半導体レーザ素子を配置することのできる大きさを有する。また、排熱性の観点から、1個の半導体レーザ素子の下面(
図1における下面)の全域を接触させることができる大きさであることが好ましい。
【0024】
ヒートシンク20において、ステップの1段の高さ(
図1における上下方向の長さ)は、レーザ光利用性の観点から、半導体レーザ素子11a〜11fからのレーザ光あるいはコリメート部材によってコリメートされたレーザ光(コリメート光)のファスト軸方向の光線幅に応じて適宜に定められる。
具体的には、各ステップ面21a〜21eに配置された半導体レーザ素子11a〜11eの各々からのレーザ光が、その下段のステップ面21b〜21fに配置された半導体レーザ素子11b〜11fに対応して近接配置されるコリメート部材に干渉しないよう段差設計されている。
ここに、ヒートシンク20のステップの各々における1段の高さとは、隣接するステップ面の位置レベルの差、例えばステップ面21aとステップ面21bとの位置レベルの差をいう。
この図の例において、ヒートシンク20のステップの1段の高さは1.3mmである。
【0025】
ヒートシンク20においては、ステップ面21a〜21fに、各々、1個の半導体レーザ素子が配置されている。これにより、半導体レーザ素子11a〜11fは、集光レンズ19の一方側(
図1における左方側)において、ファスト軸方向に階段状に並ぶように積層配置されている。
ステップ面21a〜21fの各々において、半導体レーザ素子11a〜11fは、光出射面を構成する一面12がそれぞれステップ面21a〜21fの集光レンズ19に対向する外縁に沿って伸びるように位置されている。
この図の例において、半導体レーザ素子11a〜11fは、各々、光出射面を構成する一面12がそれぞれステップ面21a〜21fの集光レンズ19に対向する外縁上に位置するように配置されている。また、各半導体レーザ素子11a〜11eに対応するコリメート部材は、対応する半導体レーザ素子11a〜11eが配置されているステップ面21a〜21eよりも1段下のステップにおけるステップ面21b〜21fの上方に配置されている。半導体レーザ素子11fに対応するコリメート部材は、対応する半導体レーザ素子11fが配置されているステップ面21fから光出射方向に突出する状態に配置されている。
【0026】
半導体レーザ装置10において、複数の半導体レーザ素子11a〜11fがヒートシンク20においてファスト軸方向に階段状に積層配置されていることにより、互いに隣接する半導体レーザ素子が大きく離間した状態とされる。これにより、高い排熱性が得られ、その結果、複数の半導体レーザ素子11a〜11fの各々に高い信頼性および高い出力が得られる。
【0027】
また、この半導体レーザ装置10においては、複数の半導体レーザ素子11a〜11fに共通のヒートシンク20が用いられていることから、これらの複数の半導体レーザ素子11a〜11fを冷却するための冷却機構を簡易な構成のものとすることができる。従って、半導体レーザ装置10を簡易な構成のものとすることができる。
【0028】
光ファイバー14は、円筒状のコア部と、当該コア部の周面に設けられたクラッド部とを有するものであり、光入射面を構成する一端面14aにおいては、コア部によって円形状の有効取り込み領域が形成されている。
光ファイバー14としては、例えば石英ファイバーなどが用いられる。
図の例においては、光ファイバー14の光入射面とされる一端面側の端部には、光ファイバー14の外径に適合した内径を有する円筒状の光ファイバー保持部材15が装着されている。
【0029】
そして、本発明においては、集光レンズ19の有効レンズ径の領域19Aにおける周縁部に入射するレーザ光の光軸が、当該集光レンズ19の光軸Cに対して、集光レンズ19に向かうに従って当該集光レンズ19の光軸Cに接近する方向に傾斜している。
【0030】
具体的には、半導体レーザ素子11a〜11fからのレーザ光の光軸La1〜Lf1の各々と、集光レンズ19の光軸Cとの成す角の角度がそれぞれ±10mrad以内であることが好ましい。
図1の例においては、ヒートシンク20の最上段のステップに配置された半導体レーザ素子11aからのレーザ光、および、最下段のステップに配置された半導体レーザ素子11fからのレーザ光が、それぞれ、それらの光軸La1,Lf1が集光レンズ19の光軸Cに対して傾斜する状態のものとされている。具体的には、半導体レーザ素子11aからのレーザ光の光軸La1と集光レンズ19の光軸Cとの成す角の角度が5mrad、半導体レーザ素子11fからのレーザ光の光軸Lf1と集光レンズ19の光軸Cとの成す角の角度が5mradとなるよう、それぞれ、それらの光軸La1,Lf1が集光レンズ19の光軸Cに対して傾斜している。
【0031】
一方、有効レンズ径の領域19Aの周縁部と離間した位置、具体的には領域19Aの中心部に入射するレーザ光の光軸Lb1〜Le1は、集光レンズ19の光軸Cと平行とされている。すなわち、図の例においては、半導体レーザ素子11b〜11eからのレーザ光は、各々、それらの光軸Lb1〜Le1が集光レンズ19の光軸Cと平行とされている。
【0032】
本発明において、集光レンズ19の有効レンズ径とは、下記式(1)で定義されるものであって、搭載される光ファイバー14のコア部の径および開口数、半導体レーザ素子11a〜11fの発光部13の全幅、並びにスロー軸用コリメートレンズ17bの焦点距離が設定されることにより、必然的に決定されるものである。
この集光レンズ19の有効レンズ径の領域19A内に入射されたレーザ光は、当該集光レンズ19を介して光ファイバー14の一端面14aにおける有効取り込み領域に入射させることができる。
式(1):有効レンズ径φ
l =2×(tanθ・φ
f ・f
slow)/w
total
〔上記式(1)において、w
total は一つの半導体レーザ素子における全発光部(エミッタ)の幅、具体的には一つの半導体レーザ素子における一端の発光部と他端の発光部との中心間距離であり、f
slowはスロー軸用コリメートレンズ17bの焦点距離、φ
f は光ファイバー14のコア部の径、θは光ファイバー14の開口数NAに関する角度であって、NA=sinθと定義される角度である。〕
【0033】
集光レンズ19の有効レンズ径φ
l の一例を挙げると、半導体レーザ素子における全発光部の幅w
total が4mm、スロー軸用コリメートレンズ17bの焦点距離f
slowが25mm、光ファイバー14のコア部の径φ
f が0.8mm、光ファイバー14の開口数NAが0.22であって、有効レンズ径φ
l は10mmとなる。
【0034】
集光レンズ19の有効レンズ径の領域19Aにおける周縁部に入射するレーザ光の光軸La1,Lf1を、当該集光レンズ19の光軸Cに対して傾斜させるための方法を以下に説明する。
具体的には、
図3に示すように、ヒートシンク20における、集光レンズ19の光軸Cに対して傾斜させるべきレーザ光を出射する半導体レーザ素子11a(11f)が配置されるステップ面21a(21f)を、集光レンズ19の光軸Cに対して傾斜させることにより、半導体レーザ素子11a(11f)自体を傾斜させて配置する方法が挙げられる。このとき、ファスト軸用コリメートレンズ17aおよびスロー軸用コリメートレンズ17bは、それぞれの光軸が半導体レーザ素子11a(11f)からのレーザ光の光軸La1,Lf1に対して平行に配置される。
【0035】
また、
図4に示すように、集光レンズ19の光軸Cに対して平行なステップ面21a(21f)上に半導体レーザ素子11a(11f)を配置し、ファスト軸用コリメートレンズ17aを、その光軸が集光レンズ19の光軸Cに対して傾斜するよう設ける方法を採用してもよい。この方法によっては、半導体レーザ素子11a(11f)から出射される光の光軸La1(Lf1)は集光レンズ19の光軸Cに平行となるが、ファスト軸用コリメートレンズ17aによって、集光レンズ19の光軸Cに対して傾斜されたレーザ光を得ることができる。このとき、スロー軸用コリメートレンズ17bは、その光軸が集光レンズ19の光軸Cに対して平行に配置される。
【0036】
以上の半導体レーザ装置10においては、複数の半導体レーザ素子11a〜11fからのレーザ光は、コリメート部材(ファスト軸用コリメートレンズ17aおよびスロー軸用コリメートレンズ17b)によってコリメートされて略平行光に偏向される。その後、このコリメート部材によってコリメートされて略平行光に偏向されたレーザ光は、集光レンズ19の有効レンズ径の領域19A内に入射され、当該集光レンズ19によって集光されて、光ファイバー14の一端面14aにおける有効取り込み領域に入射される。そして、この光ファイバー14によって導光されて他端面14bから外部に出射され、例えばプロジェクター装置の光源光として利用される。
【0037】
以上の半導体レーザ装置10においては、集光レンズ19の有効レンズ径の領域19Aにおける周縁部に入射するレーザ光の光軸La1,Lf1が、当該集光レンズ19の光軸Cに対して、集光レンズ19に向かうに従って当該光軸Cに接近する方向に傾斜されている。これにより、通常であれば集光レンズ19の有効レンズ径の領域19A外に入射されていたレーザ光を、集光レンズ19の有効レンズ径の領域19A内に入射させることができるので、複数の半導体レーザ素子11a〜11fからのレーザ光を高い効率で集光レンズ19に入射させることができる。その結果、この集光レンズ19から出射されたレーザ光を高い集光率で光ファイバー14の有効取り込み領域に入射させることができる。従って、この半導体レーザ装置10によれば、大型化が抑制されながら高いレーザ出力が得られる。
【0038】
以上、第1の実施の形態に係る半導体レーザ装置について説明したが、この半導体レーザ装置は、種々の変更を加えることが可能である。
【0039】
<第2の実施の形態>
図5は、本発明の半導体レーザ装置の構成の他の例の概要を示す説明図である。
この半導体レーザ装置30は、レーザ光源として、直線状に並ぶ複数の発光部を有する、複数の半導体レーザ素子11a〜11fを備えており、当該複数の半導体レーザ素子11a〜11fからのレーザ光が光ファイバー14を介して外部に出射される構成を有するものである。
複数の半導体レーザ素子11a〜11fは、冷却部材45上に設置された、例えば銅およびアルミニウムなどの金属よりなり、半導体レーザ素子11a〜11fの発光部の点灯中に発生する熱を速やかに冷却部材45に伝達するためのヒートシンク40上に配置されている。
具体的には、複数の半導体レーザ素子11a〜11fは、略同一方向(
図5において右方向)にレーザ光を出射する半導体レーザ素子11a〜11cの群と、当該方向と反対の方向(
図5において左方向)における略同一方向にレーザ光を出射する半導体レーザ素子11d〜11fの群とに分けられている。そして、これらの2つの群が対向配置されると共に、当該2つの群から出射されるレーザ光を同方向に向かうよう合成するための直角三角プリズムからなる折り返しミラー38が、これらの2つの群の間に介在して設けられている。
この複数の半導体レーザ素子11a〜11fの各々と、ヒートシンク40との間には、例えば銅タングステン(CuW)や窒化アルミニウム(AlN)などからなるサブマウント部材(図示省略)が介在している。
また、半導体レーザ装置30には、折り返しミラー38と、光ファイバー14との間に、当該複数の半導体レーザ素子11a〜11fからのレーザ光を集光する、例えば略円板形状の外観形状を有する集光レンズ19が設けられている。
光ファイバー14は、円形状の一端面14aが光入射面とされ、円形状の他端面14bが光出射面とされており、集光レンズ19によって集光されたレーザ光が光入射面に入射されるように当該集光レンズ19の焦点位置に配置されている。
図5において、La2〜Lf2は、各々、半導体レーザ素子11a〜11fからのレーザ光の光軸を示す。
【0040】
また、半導体レーザ装置30において、複数の半導体レーザ素子11a〜11fからのレーザ光が集光レンズ19に至るまでの光路上には、各半導体レーザ素子11a〜11fに対応して、当該半導体レーザ素子11a〜11fからのレーザ光をコリメートして略平行光に偏向するためのコリメート部材が設けられている。
【0041】
コリメート部材は、半導体レーザ素子11a〜11fに接近した位置に配置される。
コリメート部材を半導体レーザ素子11a〜11fに接近した位置に配置することにより、半導体レーザ素子11a〜11fからのレーザ光を高い効率でコリメート部材に入射させることができる。
【0042】
半導体レーザ装置30におけるコリメート部材の配置位置の寸法例を示すと、ファスト軸用コリメートレンズ17aの光入射面における平坦面と半導体レーザ素子11a〜11fの光出射面との光軸La2〜Lf2の方向の離間距離が0.16mmである。また、スロー軸用コリメートレンズ17bのレンズセルの各々の光入射面とファスト軸用コリメートレンズ17aの光出射面との光軸方向の最小離間距離が0.4mmである。
【0043】
この半導体レーザ装置30において、半導体レーザ素子11a〜11f、コリメート部材(ファスト軸用コリメートレンズ17aおよびスロー軸用コリメートレンズ17b)、光ファイバー14および集光レンズ19は、
図1の半導体レーザ装置10と同様の構成を有するものである。
【0044】
ヒートシンク40は、3段のステップを有する階段状の2つのブロック構造体40A,40Bが互いに対向する状態に、折り返しミラー38を挟む状態に形成されてなるものである。2つのブロック構造体40A,40Bは、それぞれ、上段のステップほど折り返しミラー38から離間する状態で、かつ、集光レンズ19の光軸Cに関して互いに鏡面対称に配置されている。
【0045】
各ステップを構成するステップ面41a〜41fは、集光レンズ19の光軸Cと平行または略平行な面であり、各々、半導体レーザ素子11a〜11fを配置する面とされる。
ステップ面41a〜41fは、各々、矩形状であって、各々1個の半導体レーザ素子を配置することのできる大きさを有する。また、排熱性の観点から、1個の半導体レーザ素子の下面(
図5における下面)の全域を接触させることができる大きさであることが好ましい。
【0046】
ヒートシンク40において、ステップの1段の高さ(
図5における上下方向の長さ)は、レーザ光利用性の観点から、半導体レーザ素子11a〜11fからのレーザ光あるいはコリメート部材によってコリメートされたレーザ光(コリメート光)のファスト軸方向の光線幅に応じて適宜に定められる。
具体的には、各ステップ面41a,41b,41e,41fに配置された半導体レーザ素子11a,11b,11e,11fの各々からのレーザ光が、その下段のステップ面41b,41c,41d,41eに配置された半導体レーザ素子11b,11c,11d,11eに対応して近接配置されるコリメート部材に干渉しないよう段差設計されている。
ここに、ヒートシンク40のブロック構造体40A,40Bのステップの各々における1段の高さとは、隣接するステップ面の位置レベルの差、例えばステップ面41aとステップ面41bとの位置レベルの差をいう。
この図の例において、ヒートシンク40のステップの1段の高さは1.3mmである。
【0047】
ヒートシンク40においては、ステップ面41a〜41fに、各々、1個の半導体レーザ素子が配置されている。これにより、半導体レーザ素子11a〜11fは、折り返しミラー38の両方側(
図5における左方側および右方側)において、それぞれ、ファスト軸方向に階段状に並ぶように積層配置されている。
ステップ面41a〜41fの各々において、半導体レーザ素子11a〜11fは、光出射面を構成する一面12がそれぞれステップ面41a〜41fの折り返しミラー38に対向する外縁に沿って伸びるように位置されている。
この図の例において、半導体レーザ素子11a〜11fは、各々、光出射面を構成する一面12がそれぞれステップ面41a〜41fの折り返しミラー38に対向する外縁上に位置するように配置されている。また、各半導体レーザ素子11a,11b,11e,11fに対応するコリメート部材は、対応する半導体レーザ素子11a,11b,11e,11fが配置されているステップ面41a,41b,41e,41fよりも1段下のステップにおけるステップ面41b,41c,41d,41eの上方に配置されている。半導体レーザ素子11c,11dに対応するコリメート部材は、対応する半導体レーザ素子11c,11dが配置されているステップ面41c,41dから光出射方向に突出する状態に配置されている。
【0048】
折り返しミラー38は、複数の半導体レーザ素子11a〜11fからのレーザ光(コリメート光)が入射されると共に、この折り返しミラー38で反射されることによって直角に屈曲したレーザ光が集光レンズ19に入射されるように位置されている。
折り返しミラー38を構成する直角三角プリズムの一構成例を示すと、2面ある反射面間の角度は直角であり、各反射面の面積は10mm×10mm、反射面は、その表面に金、アルミニウムまたは誘電体多層膜などのコーティングが施されたものとされている。
【0049】
折り返しミラー38と半導体レーザ素子11a〜11fとの配置位置を示すと、最上段に配置された半導体レーザ素子11a,11fの光出射面の位置と、折り返しミラー38の頂点位置との、光軸Lb2,Le2の方向(
図5において水平方向)の距離が60mmである。また、中段に配置された半導体レーザ素子11b,11eの光出射面の位置と、折り返しミラー38の頂点位置との、光軸Lb2,Le2の方向の距離が45mmである。さらに、最下段に配置された半導体レーザ素子11c,11dの光出射面の位置と、折り返しミラー38の頂点位置との、光軸Lb2,Le2の方向の距離が30mmである。
【0050】
半導体レーザ装置30において、複数の半導体レーザ素子11a〜11fがヒートシンク40の2つの階段状のブロック構造体40A,40Bの各々においてファスト軸方向に階段状に積層配置されていることにより、互いに隣接する半導体レーザ素子が大きく離間した状態とされる。これにより、高い排熱性が得られ、その結果、複数の半導体レーザ素子11a〜11fの各々に高い信頼性および高い出力が得られる。
【0051】
また、この半導体レーザ装置30においては、複数の半導体レーザ素子11a〜11fに共通のヒートシンク40が用いられていることから、これらの複数の半導体レーザ素子11a〜11fを冷却するための冷却機構を簡易な構成のものとすることができる。従って、半導体レーザ装置30を簡易な構成のものとすることができる。
【0052】
そして、本発明においては、集光レンズ19の有効レンズ径の領域19Aにおける周縁部に入射するレーザ光の光軸が、当該集光レンズ19の光軸Cに対して、集光レンズ19に向かうに従って当該集光レンズ19の光軸Cに接近する方向に傾斜している。
具体的には、半導体レーザ素子11a〜11fからのレーザ光の光軸La2〜Lf2の各々と、集光レンズ19の光軸Cとの成す角の角度がそれぞれ±10mrad以内であることが好ましい。
ここに、半導体レーザ素子11a〜11fからのレーザ光の光軸La2〜Lf2の各々と、集光レンズ19の光軸Cとの成す角の角度とは、半導体レーザ素子11a〜11fから出射されたレーザ光について、折り返しミラー38によって反射された後のレーザ光の光軸と光軸Cとの角度をいう。
【0053】
図5の例においては、ヒートシンク40の最下段のステップに配置された半導体レーザ素子11c,11dからのレーザ光が、それぞれ、それらの光軸Lc2,Ld2が集光レンズ19の光軸Cに対して傾斜する状態のものとされている。具体的には、半導体レーザ素子11cからのレーザ光の光軸Lc2と集光レンズ19の光軸Cとの成す角の角度が5mrad、半導体レーザ素子11dからのレーザ光の光軸Ld2と集光レンズ19の光軸Cとの成す角の角度が5mradとなるよう、それぞれ、それらの光軸Lc2,Ld2が集光レンズ19の光軸Cに対して傾斜している。
【0054】
一方、有効レンズ径の領域19Aの周縁部と離間した位置、具体的には領域19Aの中心部に入射するレーザ光の光軸Lb2,Le2は、集光レンズ19の光軸Cと平行とされている。すなわち、図の例においては、半導体レーザ素子11b,11eからのレーザ光は、各々、それらの光軸Lb2,Le2が集光レンズ19の光軸Cと平行とされている。
【0055】
第2の実施の形態に係る半導体レーザ装置30において、集光レンズ19の有効レンズ径は、第1の実施の形態に係る半導体レーザ装置10と同様にして決定されるものである。
【0056】
集光レンズ19の有効レンズ径の領域19Aにおける周縁部に入射するレーザ光の光軸Lc2,Ld2を、当該集光レンズ19の光軸Cに対して傾斜させるための方法は、第1の実施の形態と同様の方法を挙げることができる。
【0057】
この半導体レーザ装置30においては、最上段のステップに配置された半導体レーザ素子11a,11fが、そのレーザ光の光軸La2,Lf2が集光レンズ19の光軸Cに対して、集光レンズ19に向かうに従って当該集光レンズ19の光軸Cから離間する方向に傾斜されるよう配置されていることが好ましい。
【0058】
このように半導体レーザ素子11a,11fからのレーザ光の光軸La2,Lf2が傾斜していることにより、折り返しミラー38を構成する直角三角プリズムとして小さなものを用いた場合にも、所期の量のレーザ光を直角三角プリズムの反射面に入射させることができる。従って、複数の半導体レーザ素子11a〜11fからのレーザ光を高い効率で集光レンズ19の有効レンズ径の領域19A内に入射させることができる。その結果、半導体レーザ装置30の大型化を抑制することができる。
【0059】
以上の半導体レーザ装置30においては、複数の半導体レーザ素子11a〜11fからのレーザ光は、コリメート部材(ファスト軸用コリメートレンズ17aおよびスロー軸用コリメートレンズ17b)によってコリメートされて略平行光に偏向される。その後、このコリメート部材によってコリメートされて略平行光に偏向されたレーザ光は、折り返しミラー38によって集光レンズ19に向かって反射される。そして、折り返しミラー38によって反射されたレーザ光は、集光レンズ19の有効レンズ径の領域19A内に入射され、当該集光レンズ19によって集光されて、光ファイバー14の一端面14aにおける有効取り込み領域に入射される。そして、この光ファイバー14によって導光されて他端面14bから外部に出射され、例えばプロジェクター装置の光源光として利用される。
【0060】
以上の半導体レーザ装置30においては、集光レンズ19の有効レンズ径の領域19Aにおける周縁部に入射するレーザ光の光軸Lc2,Ld2が、当該集光レンズ19の光軸Cに対して、集光レンズ19に向かうに従って当該光軸Cに接近する方向に傾斜されている。これにより、通常であれば集光レンズ19の有効レンズ径の領域19A外に入射されていたレーザ光を、集光レンズ19の有効レンズ径の領域19A内に入射させることができるので、複数の半導体レーザ素子11a〜11fからのレーザ光を高い効率で集光レンズ19に入射させることができる。その結果、この集光レンズ19から出射されたレーザ光を高い集光率で光ファイバー14の有効取り込み領域に入射させることができる。従って、この半導体レーザ装置30によれば、大型化が抑制されながら高いレーザ出力が得られる。
【0061】
以上、第2の実施の形態に係る半導体レーザ装置について説明したが、この半導体レーザ装置は、種々の変更を加えることが可能である。
【0062】
以下、本発明の作用効果を確認するために行った実験例について説明する。
【0063】
〔実験例1〕
図1の構成に基づいて、6段のステップを有する階段状のブロック構造体におけるステップ面の各々に、同一の規格を有する6個の半導体レーザ素子が配置されてなる構成の半導体レーザ装置(以下、「半導体レーザ装置(1)」ともいう。)を作製した。
半導体レーザ装置(1)において、6個の半導体レーザ素子の配置間隔は、集光レンズの光軸方向の間隔が15mmであって、当該光軸に垂直な方向の間隔(ステップの1段の高さ)が1.3mmである。
各半導体レーザ素子は、長手方向長さ(複数の発光部が並ぶ方向の長さ)が4mm、全発光部の幅w
total が4mmのものである。集光レンズは、焦点距離が20mmのものである。光ファイバーは、コア径が0.8mmであって開口数(NA)が0.22のものである。スロー軸用コリメートレンズは、焦点距離が25mmのものである。有効レンズ径φ
l は10mmである。
また、この半導体レーザ装置(1)において、コリメート部材から出射されるレーザ光は、波長640nmである。また、ファスト軸方向の発散角度が半値全角で40°(2.3mrad)であってスロー軸方向の発散角度が半値全角で7°(0.4mrad)である。
そして、最上段の半導体レーザ素子を、出射されるレーザ光の光軸が集光レンズの光軸に対して、集光レンズに向かうに従って当該集光レンズの光軸に接近する方向に、5mrad傾斜するよう配置した。他の5個の半導体レーザ素子は、出射されるレーザ光の光軸が集光レンズの光軸と平行になるよう配置した。
この半導体レーザ装置(1)の最上段の半導体レーザ素子について、光ファイバーの有効取り込み領域における集光率を確認したところ、98%であった。
【0064】
〔比較実験例1〕
実験例1に係る半導体レーザ装置(1)において、最上段の半導体レーザ素子も、出射されるレーザ光の光軸が集光レンズの光軸と平行になるよう配置したことの他は同様にして構成した、比較用の半導体レーザ装置を作製した。これを、半導体レーザ装置(1x)という。
この比較用の半導体レーザ装置(1x)の最上段の半導体レーザ素子について、光ファイバーの有効取り込み領域における集光率を確認したところ、91%であった。
【0065】
〔実験例2〕
実験例1に係る半導体レーザ装置(1)において、各半導体レーザ素子を以下のように配置したことの他は同様にして構成した、半導体レーザ装置を作製した。これを、半導体レーザ装置(2)という。
すなわち、最下段の半導体レーザ素子を、出射されるレーザ光の光軸が集光レンズの光軸に対して、集光レンズに向かうに従って当該集光レンズの光軸に接近する方向に、10mrad傾斜するよう配置した。他の5個の半導体レーザ素子は、出射されるレーザ光の光軸が集光レンズの光軸と平行になるよう配置した。
この半導体レーザ装置(2)の最下段の半導体レーザ素子について、光ファイバーの有効取り込み領域における集光率を確認したところ、90%であった。
【0066】
〔比較実験例2〕
実験例1に係る半導体レーザ装置(2)において、最下段の半導体レーザ素子も、出射されるレーザ光の光軸が集光レンズの光軸と平行になるよう配置したことの他は同様にして構成した、比較用の半導体レーザ装置を作製した。これを、半導体レーザ装置(2x)という。
この比較用の半導体レーザ装置(2x)の最下段の半導体レーザ素子について、光ファイバーの有効取り込み領域における集光率を確認したところ、87%であった。