(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記受信手段により受信した情報に基づいて前記制御手段が前記加熱動作禁止時間帯の設定を変更する機能を有効にするか無効にするかを使用者が選択可能な選択手段を備える請求項1または請求項2に記載の貯湯式給湯機。
【背景技術】
【0002】
例えばヒートポンプ装置などの加熱手段により水を加熱して生成した湯を貯湯タンクに貯え、必要に応じて貯湯タンクから湯を取り出して給湯する貯湯式給湯機が広く用いられている。
【0003】
夏場の日中等において電力需給が逼迫する際には、各電気機器の動作を制限することが求められる。貯湯式給湯機においても、電力需給の逼迫中には、電力の使用を制限し、最も電力消費の大きい、加熱手段による加熱動作(沸き上げ動作)を回避する等の制御を行うことが求められている。
【0004】
また、電気料金の体系によっては、電力需要の多い時間帯をピーク時間帯とし、ピーク時間帯における電気料金が割高に設定されているため、使用者としても、ピーク時間帯の加熱動作を回避したいという要望がある。
【0005】
上記のような要求を満足させることを目的として、特許文献1には、電力供給事業者のホストコンピュータと、貯湯式給湯機(ネットワーク対応電気温水器)の制御部とをネットワーク網を介して接続し、電力のピークを抑制させるために、電力供給事業者のホストコンピュータが、瞬時の電力需要、電力需要予測データ、時間帯別の電気料金単価等に基づいて、貯湯式給湯機の加熱動作のオン・オフを操作する発明が提案されている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において共通する要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0013】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1の貯湯式給湯機を示す構成図である。
図1に示すように、本実施の形態1の貯湯式給湯機1は、水を加熱して高温の湯を生成する加熱手段2と、加熱手段2により生成された湯を貯留する貯湯タンク10を内蔵した貯湯タンクユニット3とを備えている。本実施の形態1における加熱手段2は、ヒートポンプサイクル(冷凍サイクル)の冷媒と熱交換することにより水を加熱するヒートポンプユニットで構成されている。加熱手段2は、電力系統(商用電源)から供給される電力により作動し、水を加熱する加熱動作(沸き上げ動作)を行う。なお、本発明における加熱手段2は、ヒートポンプサイクルを用いるものに限定されず、例えば電気ヒータなどであっても良い。
【0014】
貯湯タンク10内には、上側が高温、下側が低温になるように温度成層を形成して、湯水を貯留可能である。加熱動作時には、循環ポンプ4の作動により、貯湯タンク10内の下部に貯留された水が入水配管5を通って加熱手段2に送られるとともに、加熱手段2で加熱されて生成した湯が出湯配管6を通って貯湯タンク10に送られて貯湯タンク10内の上部に流入する。このような加熱動作が継続することにより、貯湯タンク10内の高温水(湯)と低温水との温度境界層が徐々に下に移動していき、貯湯タンク10内の貯湯量(蓄熱量)が増加していく。
【0015】
貯湯タンク10の上部には、加熱動作時の水の温度膨張により上昇する貯湯タンク10内の圧力を逃がすための逃し弁7が接続されている。また、貯湯タンク10には、貯湯タンク10内の湯水の温度を検出する複数の湯温検出手段14が、互いに異なる高さ位置に取り付けられている。これらの湯温検出手段14により貯湯タンク10内の上下方向の温度分布を検出することにより、貯湯タンク10内の蓄熱量(貯湯量)を算出することができる。
【0016】
貯湯タンクユニット3内には、更に、給湯側混合弁9と、制御部15と、混合給湯側流量検出部16と、ふろ給湯側開閉弁17と、ふろ給湯側流量検出部19と、ふろ側混合弁20と、減圧弁22とが設けられている。貯湯タンク10の上部には、給湯配管8の一端が接続されている。給湯配管8の他端側は、二つに分岐し、給湯側混合弁9とふろ側混合弁20とにそれぞれ接続されている。水道等の水源からの水は、給水配管23を通って、貯湯タンクユニット3に供給される。減圧弁22は、給水配管23から供給される水の圧力を所定の圧力に減圧する。減圧弁22の下流側で給水配管23は三つの経路に分岐し、それらの各経路は、貯湯タンク10の下部と、給湯側混合弁9と、ふろ側混合弁20とに接続されている。給湯側混合弁9は、貯湯タンク10から給湯配管8を通って供給される高温の湯と、給水配管23から供給される水との混合比を調整することにより温度調節する。給湯側混合弁9で温度調節された湯は、混合給湯経路24を通って、貯湯タンクユニット3の外部の、例えばシャワー、蛇口等の一般混合水栓(図示省略)へ供給される。混合給湯側流量検出部16は、混合給湯経路24を通る湯の流量(使用湯量)を検出する。ふろ側混合弁20は、貯湯タンク10から給湯配管8を通って供給される高温の湯と、給水配管23から供給される水との混合比を調整することにより温度調節する。ふろ側混合弁20で温度調節された湯は、ふろ給湯経路18を通って、浴室内の浴槽21へ供給される。ふろ給湯側開閉弁17は、ふろ給湯経路18の途中に配置され、浴槽21への出湯(湯張り)の開始および停止を制御する。ふろ給湯側流量検出部19は、ふろ給湯経路18を通る湯の流量(使用湯量)を検出する。制御部15は、貯湯式給湯機1が備える各アクチュエータおよび各センサと電気的に接続され、貯湯式給湯機1の動作を制御する。
【0017】
制御部15は、更に、外部入出力装置101と電気的に接続されている。外部入出力装置101は、使用者が操作する操作部および貯湯式給湯機1の状態を表示する表示部を備えており、使用者が貯湯式給湯機1の動作や給湯温度などを設定したり確認したりできるように構成されている。外部入出力装置101は、例えば、浴室あるいは台所などに設置されるリモコン装置で構成することができる。
【0018】
また、制御部15は、通信回線104を介して、機器管理システム103と相互に通信可能に接続されている。機器管理システム103は、貯湯式給湯機1のほか、宅内で用いられる各機器(図示省略)と通信可能に接続されている。機器管理システム103と、制御部15を含む各機器との接続は、有線接続でも、無線接続でも良い。また、機器管理システム103(受信手段)は、インターネット等のネットワーク網105を介して、電力系統の電力供給事業者のコンピュータ106から配信される電力需給情報等の情報を受信可能になっている。
【0019】
機器管理システム103は、貯湯式給湯機1を含む宅内の各機器の状態に関する情報と、ネットワーク網105を介して電力供給事業者のコンピュータ106から受信する情報とを取得し、それらの情報に基づいて、宅内の各機器に対して指示を行う。
【0020】
制御部15は、機器管理システム103からの指示、湯温検出手段14により検出される貯湯タンク10内の蓄熱量、外部入出力装置101にて使用者により設定された情報、過去の動作実績から学習された情報などに基づいて、循環ポンプ4、加熱手段2、給湯側混合弁9、ふろ給湯側開閉弁17、ふろ側混合弁20等を制御するとともに、給湯制御の状況を外部入出力装置101へ出力する。
【0021】
電力供給事業者は、電力料金単価を時間帯毎に定めた電力料金メニューを複数用意している。貯湯式給湯機1の使用者は、それら複数の電力料金メニューから一つを選択して、電力供給事業者と契約する。機器管理システム103は、貯湯式給湯機1の使用者に適用される電力料金メニューの情報を、ネットワーク網105を介して電力供給事業者のコンピュータ106から受信することができる。
【0022】
また、電力供給事業者は、当日の電力需給状況を予測し、電力需給が逼迫すると予測した場合には、電力需給が逼迫すると予測される時間帯をピーク時間帯としてコンピュータ106からネットワーク網105を介して配信することにより、ピーク時間帯における電力の使用抑制を各需要家に要請する。
【0023】
図2は、本発明の実施の形態1における制御処理を示すフローチャートである。
図2に示す制御処理は、毎日1回または複数回、所定の時刻に実行される。
【0024】
図2のステップS1では、機器管理システム103は、制御部15に現在設定されている電力料金メニューの情報およびピーク時間帯の情報を制御部15から取得する。本実施の形態1では、制御部15は、現在設定されている電力料金メニューの時間帯別の電気料金単価のうちで、電気料金単価が最も高い時間帯をピーク時間帯として記憶している。
【0025】
上記ステップS1の処理に続いて、ステップS2では、機器管理システム103は、ネットワーク網105を介して電力供給事業者のコンピュータ106から、ピーク時間帯に関する情報を取得する。本実施の形態1では、このステップS2で、機器管理システム103は、貯湯式給湯機1の使用者に適用される電力料金メニューの情報を、ネットワーク網105を介して電力供給事業者のコンピュータ106から受信し、その受信した電力料金メニューの時間帯別の電気料金単価のうちで、電気料金単価が最も高い時間帯をピーク時間帯として取得する。また、電力供給事業者のコンピュータ106が、当日の電力需給が逼迫すると予測したピーク時間帯の情報を配信している場合には、機器管理システム103は、この当日の電力需給逼迫予測に基づくピーク時間帯の情報を取得する。
【0026】
上記ステップS2の処理に続いて、ステップS3では、機器管理システム103は、ステップS1で制御部15から取得したピーク時間帯と、ステップS2で電力供給事業者のコンピュータ106から取得したピーク時間帯の情報とを比較し、両者に差異がある場合にはステップS4へ移行し、両者に差異がない場合には処理を終了する。
【0027】
ステップS4では、機器管理システム103は、ステップS2で電力供給事業者のコンピュータ106から取得したピーク時間帯の情報を制御部15に送信し、制御部15は、機器管理システム103から受信した情報に基づいて、ピーク時間帯として記憶している情報を変更する。ここで、制御部15は、ピーク時間帯の変更が電力料金メニューの変更に伴うものである場合には、電力料金メニューの設定を変更し、このピーク時間帯の変更を翌日以降にも適用する。これに対し、制御部15は、ピーク時間帯の変更が当日の電力需給が逼迫するとの予測に基づくものである場合には、電力料金メニューの設定を変更せず、ピーク時間帯の変更を当日に限って適用する。
【0028】
上記ステップS4の処理に続いて、ステップS5では、制御部15は、ピーク時間帯の加熱動作を禁止する機能を有効とする設定がなされているか否かを判断する。本実施の形態1では、ピーク時間帯に加熱動作を禁止する機能を有効にするか無効にするかを、外部入出力装置101を操作することで使用者が予め選択することができる。これにより、使用者の意向に応じて、最適な制御が可能となる。このステップS5で、制御部15は、ピーク時間帯の加熱動作を禁止する機能を有効とする設定がなされている場合にはステップS6へ移行し、そうでない場合には処理を終了する。
【0029】
ステップS6では、制御部15は、ステップS4で変更されたピーク時間帯に応じて、加熱動作を禁止する加熱動作禁止時間帯を変更する。制御部15は、この加熱動作禁止時間帯中には、加熱手段2による加熱動作を実行しないように制御する。
【0030】
以上説明した実施の形態1によれば、電力需給が逼迫するという電力供給面での制約、あるいは電力料金メニューの変更により、ピーク時間帯の開始時刻あるいは終了時刻が変更された場合であっても、貯湯式給湯機1におけるピーク時間帯の設定を自動的に変更し、そのピーク時間帯に対応(一致)するように加熱動作禁止時間帯を変更することができる。このため、電力需給への悪影響を確実に防止することができるとともに、割高な電気料金での加熱動作を行うことを確実に回避することができる。また、電力供給事業者のコンピュータ106が貯湯式給湯機1の加熱動作のオン・オフを操作する必要がないため、そのようなサービスを提供していない電力供給事業者から電力の供給を受けている場合にも、上記効果を達成することができる。
【0031】
なお、上記実施の形態1では、ピーク時間帯の加熱動作を禁止する機能が無効に設定されている場合の制御については特に記載していないが、この場合には、電気料金が割高となる時間帯が変更されたものとみなして、ピーク時間帯に加熱動作を実施する確率(頻度)が下がるように制御しても良い。
【0032】
また、本発明では、機器管理システム103がネットワーク網105を介して電力供給事業者のコンピュータ106から受信したピーク時間帯の情報に基づいて制御部15が加熱動作禁止時間帯を変更する機能を有効にするか無効にするかを、外部入出力装置101(選択手段)を操作することで使用者が予め選択することができるようにしても良い。このようにすることにより、加熱動作禁止時間帯が意図せずに変更されることを希望しない使用者の要望にも応えることができる。
【0033】
また、上記実施の形態1では、ピーク時間帯の変更処理を機器管理システム103側で行うようにしているが、ピーク時間帯の変更処理を制御部15で行うようにしても良い。
【0034】
また、上記実施の形態1では、機器管理システム103がネットワーク網105を介して電力供給事業者のコンピュータ106から受信したピーク時間帯を優先し、このピーク時間帯に一致するように加熱動作禁止時間帯を変更するようにしているが、本発明では、外部入出力装置101あるいはホームエネルギー・マネジメントシステム(HEMS)等を用いて使用者が加熱動作禁止時間帯を任意に設定できるようにし、使用者が設定した加熱動作禁止時間帯を条件によっては優先するようにしても良い。例えば、機器管理システム103がネットワーク網105を介して電力供給事業者のコンピュータ106から受信したピーク時間帯が、使用者が設定した加熱動作禁止時間帯に包含されている場合には、加熱動作禁止時間帯の設定を変更せず、このピーク時間帯が加熱動作禁止時間帯に包含されていない場合にのみ、このピーク時間帯を包含するように加熱動作禁止時間帯の設定を変更しても良い。このように制御することにより、使用者が、各家庭あるいは地域等の事情に応じた自発的な使用電力抑制を行うべく加熱動作禁止時間帯を長めに設定しておくこと、あるいは各家庭に設置された太陽光発電装置等での発電量等の他の機器の状態を含めた各家庭の電力状況に応じた加熱動作禁止時間帯の設定を行うことなどを可能にしつつ、電力需給への悪影響や、割高な電気料金での加熱動作を行うことを確実に防止することができる。
【0035】
実施の形態2.
次に、
図3を参照して、本発明の実施の形態2について説明するが、上述した実施の形態1との相違点を中心に説明し、同一部分または相当部分は同一符号を付し説明を省略する。
【0036】
本発明の実施の形態2の貯湯式給湯機1の構成図は、実施の形態1と同様であるので、省略する。
図3は、本発明の実施の形態2における制御処理を示すフローチャートである。
図3に示す制御処理は、毎日1回または複数回、所定の時刻に実行される。
【0037】
図3のフローチャートにおいて、ステップS1からステップS5までは実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。ステップS5で、制御部15は、ピーク時間帯の加熱動作を禁止する機能を有効とする設定がなされている場合にはステップS10へ移行し、そうでない場合には処理を終了する。
【0038】
ステップS10で、制御部15は、ステップS4でピーク時間帯が変更された理由(根拠)が、当日の電力需給が逼迫するとの予測に基づくものであると判断した場合には、ステップS11に移行し、そうでない場合、すなわちステップS4でピーク時間帯が変更された理由(根拠)が電力料金メニューの変更等に伴うものであると判断した場合には処理を終了する。
【0039】
ステップS11では、制御部15は、ステップS4で変更されたピーク時間帯に応じて、加熱動作を禁止する加熱動作禁止時間帯を変更する。
【0040】
以上説明したように、本実施の形態2では、ピーク時間帯の変更理由が電力需給の逼迫によるものである場合には、そのピーク時間帯の変更に応じて加熱動作禁止時間帯を変更することにより、電力需給状態への悪影響、すなわち社会的インフラストラクチャーへの悪影響を確実に回避することができる。その一方で、ピーク時間帯の変更理由が電力料金メニューの変更等によるものであり、電力需給状態には問題が無い場合には、加熱動作禁止時間帯を変更しないようにすることで、使用者の意向あるいは利便性に反する変更がなされることを回避することができる。例えば、使用者が設定した加熱動作禁止時間帯以外であれば、貯湯タンク10の湯切れが懸念されるような場合に限り、ピーク時間帯の割高な電気料金で加熱動作を行うことを許容し、使用者の利便性を向上することができる。
【0041】
なお、本実施の形態2では、ピーク時間帯の変更理由が電力需給の逼迫によるものである場合には加熱動作禁止時間帯を変更し、ピーク時間帯の変更理由が電力料金メニューの変更によるものである場合には加熱動作禁止時間帯を変更しないようにしているが、これとは逆に、本発明では、電力料金メニューの変更によるものを優先しても良い。すなわち、ピーク時間帯の変更理由が電力需給の逼迫によるものである場合には加熱動作禁止時間帯を変更せず、ピーク時間帯の変更理由が電力料金メニューの変更によるものである場合には加熱動作禁止時間帯を変更するようにしても良い。このような場合には、ピーク時間帯の割高な電気料金で加熱動作を行うことを確実に防止することができるので、電力コストをより確実に抑制することができる。