特許第6036534号(P6036534)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6036534-給湯機 図000002
  • 特許6036534-給湯機 図000003
  • 特許6036534-給湯機 図000004
  • 特許6036534-給湯機 図000005
  • 特許6036534-給湯機 図000006
  • 特許6036534-給湯機 図000007
  • 特許6036534-給湯機 図000008
  • 特許6036534-給湯機 図000009
  • 特許6036534-給湯機 図000010
  • 特許6036534-給湯機 図000011
  • 特許6036534-給湯機 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6036534
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】給湯機
(51)【国際特許分類】
   F24H 1/18 20060101AFI20161121BHJP
   F24H 4/02 20060101ALN20161121BHJP
【FI】
   F24H1/18 503Z
   !F24H4/02 N
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-102435(P2013-102435)
(22)【出願日】2013年5月14日
(65)【公開番号】特開2014-222136(P2014-222136A)
(43)【公開日】2014年11月27日
【審査請求日】2015年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082175
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 守
(74)【代理人】
【識別番号】100106150
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100115543
【弁理士】
【氏名又は名称】小泉 康男
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 好次
(72)【発明者】
【氏名】宮下 章志
(72)【発明者】
【氏名】豊島 正樹
【審査官】 礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−091181(JP,A)
【文献】 特開2005−308235(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/137281(WO,A1)
【文献】 特開2013−088044(JP,A)
【文献】 特開2012−247130(JP,A)
【文献】 特開2010−190464(JP,A)
【文献】 実開昭59−145617(JP,U)
【文献】 特開2011−214793(JP,A)
【文献】 特開2005−009859(JP,A)
【文献】 特開2012−117776(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/029786(WO,A1)
【文献】 特開昭58−027679(JP,A)
【文献】 特開2000−157943(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/00
F24H 1/06 − 1/20
F24H 4/00 − 4/06
F24H 9/00
F28G 7/00
B08B 9/032
F24D 3/00 − 3/18
F24D 17/00 − 19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温水を貯湯するための貯湯タンクと、
給湯対象に温水を供給するための給湯経路と、
前記給湯経路の途中に設けられて当該給湯経路の一部を構成し、前記貯湯タンクに貯湯された温水を利用して前記給湯経路を流れる湯水を加熱する加熱手段と、
前記給湯経路を流れる温水の流量を変化させることが可能な流量可変手段と、
前記流量可変手段を制御することにより、前記給湯経路を流れる温水の流量にスケールの付着を抑制するための変動を発生させるスケール抑制制御手段と、
前記加熱手段を流れる湯水の温度を検出する温度検出手段と、
前記温度検出手段により検出した水温に基いて、前記スケール抑制制御手段による前記流量の変動状態を制御する流量変動制御手段と、
前記貯湯タンク内の湯水を加熱するための水加熱用熱交換器と、
前記貯湯タンクと前記水加熱用熱交換器との間に湯水を循環させると共に、当該循環湯水の流量を変化させることが可能な貯湯側流量可変手段と、
前記貯湯側流量可変手段を制御することにより、前記循環湯水の流量にスケールの付着を抑制するための脈動を発生させる貯湯側スケール抑制制御手段と、
前記水加熱用熱交換器により湯水を加熱した回数に基いて、前記脈動の発生状態を変化させる脈動制御手段と、
を備えた給湯機。
【請求項2】
温水を貯湯するための貯湯タンクと、
給湯対象に温水を供給するための給湯経路と、
前記給湯経路の途中に設けられて当該給湯経路の一部を構成し、前記貯湯タンクに貯湯された温水を利用して前記給湯経路を流れる湯水を加熱する加熱手段と、
前記給湯経路を流れる温水の流量を変化させることが可能な流量可変手段と、
前記流量可変手段を制御することにより、前記給湯経路を流れる温水の流量にスケールの付着を抑制するための脈動を発生させるスケール抑制制御手段と、
前記加熱手段を流れる湯水の温度を検出する温度検出手段と、
前記温度検出手段により検出した水温が低いほど、前記脈動の周期を長くする流量変動制御手段と、
を備えた給湯機。
【請求項3】
温水を貯湯するための貯湯タンクと、
給湯対象に温水を供給するための給湯経路と、
前記給湯経路の途中に設けられて当該給湯経路の一部を構成し、前記貯湯タンクに貯湯された温水を利用して前記給湯経路を流れる湯水を加熱する加熱手段と、
前記給湯経路を流れる温水の流量を変化させることが可能な流量可変手段と、
前記流量可変手段を制御することにより、前記給湯経路を流れる温水の流量にスケールの付着を抑制するための変動を発生させるスケール抑制制御手段と、
前記加熱手段を流れる湯水の温度を検出する温度検出手段と、
前記温度検出手段により検出した水温に基いて、前記スケール抑制制御手段による前記流量の変動状態を制御する流量変動制御手段と、
を備え
前記スケール抑制制御手段は、前記給湯経路を流れる温水の流量を予め設定された基準流量よりも小さな減少側のピーク流量と、前記基準流量よりも大きな増加側のピーク流量との間で脈動させ、隣接する脈動の間においては、前記給湯経路を流れる温水の流量が前記基準流量に保持される構成とした給湯機。
【請求項4】
前記スケール抑制制御手段は、前記給湯経路を流れる温水の流量を予め設定された基準流量と当該基準流量よりも大きなピーク流量との間で切換える構成とし、前記基準流量と前記ピーク流量との差分は、前記給湯経路へのスケールの付着を抑制可能な大きさに設定してなる請求項1または請求項2に記載の給湯機。
【請求項5】
前記スケール抑制制御手段は、前記給湯経路を流れる温水の流量を予め設定された基準流量よりも小さな減少側のピーク流量と、前記基準流量よりも大きな増加側のピーク流量との間で切換える構成とし、
前記減少側のピーク流量と前記増加側のピーク流量との差分は、前記給湯経路へのスケールの付着を抑制可能な大きさに設定してなる請求項1または請求項2に記載の給湯機。
【請求項6】
前記給湯経路から前記給湯対象に供給される温水の目標温度である目標給湯温度に基いて、前記スケール抑制制御手段を作動させるか否かを切換える構成としてなる請求項1乃至のうち何れか1項に記載の給湯機。
【請求項7】
前記加熱手段から温水を排出する温水排出手段を備え、
前記給湯経路により前記給湯対象に向けて温水を供給する給湯運転の停止後に、前記温水排出手段により前記加熱手段から温水を排出する構成としてなる請求項1乃至のうち何れか1項に記載の給湯機。
【請求項8】
前記給湯経路には、前記スケール抑制制御手段により発生させた前記流量の変動を前記加熱手段の下流側で吸収する可変容量型のバッファタンクを設けてなる請求項1乃至のうち何れか1項に記載の給湯機。
【請求項9】
前記給湯経路のうち前記加熱手段の流入側に位置する部位と流出側に位置する部位とを接続するバイパス通路と、
前記バイパス通路を流れる湯水の流量を変化させることが可能なバイパス流量可変手段と、
を備えてなる請求項1乃至のうち何れか1項に記載の給湯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高硬度水の使用時等において、熱交換器を含む温水流路にスケールが付着するのを抑制する機能を備えた給湯機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、例えば特許文献1に記載されているように、スケールの付着を抑制する機能を備えたヒートポンプ式の給湯機が知られている。従来技術では、水道水、井戸水等の低温水をヒートポンプユニットにより加熱して高温水を生成し、この高温水を各種の給湯先に給湯する。このとき、ヒートポンプユニットの熱交換器内には、水に含まれるカルシウム成分が炭酸カルシウムとなって析出した固形析出物(所謂スケール)が付着することがある。
【0003】
このように、スケールが熱交換器の配管内に析出すると、配管内を流れる湯水に熱が伝わり難くなり、熱交換器の熱伝達性能、即ち、ヒートポンプユニットの加熱能力が低下するという問題がある。このため、従来技術では、給湯用の湯水を加熱する湯を蓄熱タンクに貯留し、蓄熱タンク内の湯が全て蓄熱タンクに戻る構成としている。この構成は、高硬度の水を使用することを目的としたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-7802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来技術では、蓄熱タンク内の高温水を熱源として使用し、熱交換により水を加熱して給湯する構成としている。このため、高硬度の水を使用して給湯すると、ヒートポンプユニット内の熱交換器と同様に、給湯用の熱交換器にもスケールが析出し易い。そして、この状態が長期間にわたって続くと、熱交換効率や給湯流量が低下するという問題点がある。
【0006】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、スケールの付着を抑制し、流路の構成部品の寿命を延ばすことが可能な給湯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る給湯機は、温水を貯湯するための貯湯タンクと、給湯対象に温水を供給するための給湯経路と、給湯経路の途中に設けられて当該給湯経路の一部を構成し、貯湯タンクに貯湯された温水を利用して給湯経路を流れる湯水を加熱する加熱手段と、給湯経路を流れる温水の流量を変化させることが可能な流量可変手段と、流量可変手段を制御することにより、給湯経路を流れる温水の流量にスケールの付着を抑制するための変動を発生させるスケール抑制制御手段と、加熱手段を流れる湯水の温度を検出する温度検出手段と、温度検出手段により検出した水温に基いて、スケール抑制制御手段による流量の変動状態を制御する流量変動制御手段と、貯湯タンク内の湯水を加熱するための水加熱用熱交換器と、貯湯タンクと水加熱用熱交換器との間に湯水を循環させると共に、当該循環湯水の流量を変化させることが可能な貯湯側流量可変手段と、貯湯側流量可変手段を制御することにより、循環湯水の流量にスケールの付着を抑制するための脈動を発生させる貯湯側スケール抑制制御手段と、水加熱用熱交換器により湯水を加熱した回数に基いて、脈動の発生状態を変化させる脈動制御手段と、を備えている。
また、本発明に係る給湯機は、温水を貯湯するための貯湯タンクと、給湯対象に温水を供給するための給湯経路と、給湯経路の途中に設けられて当該給湯経路の一部を構成し、貯湯タンクに貯湯された温水を利用して給湯経路を流れる湯水を加熱する加熱手段と、給湯経路を流れる温水の流量を変化させることが可能な流量可変手段と、流量可変手段を制御することにより、給湯経路を流れる温水の流量にスケールの付着を抑制するための脈動を発生させるスケール抑制制御手段と、加熱手段を流れる湯水の温度を検出する温度検出手段と、温度検出手段により検出した水温が低いほど、脈動の周期を長くする流量変動制御手段と、を備えている。
また、本発明に係る給湯機は、温水を貯湯するための貯湯タンクと、給湯対象に温水を供給するための給湯経路と、給湯経路の途中に設けられて当該給湯経路の一部を構成し、貯湯タンクに貯湯された温水を利用して給湯経路を流れる湯水を加熱する加熱手段と、給湯経路を流れる温水の流量を変化させることが可能な流量可変手段と、流量可変手段を制御することにより、給湯経路を流れる温水の流量にスケールの付着を抑制するための変動を発生させるスケール抑制制御手段と、加熱手段を流れる湯水の温度を検出する温度検出手段と、温度検出手段により検出した水温に基いて、スケール抑制制御手段による流量の変動状態を制御する流量変動制御手段と、を備え、スケール抑制制御手段は、給湯経路を流れる温水の流量を予め設定された基準流量よりも小さな減少側のピーク流量と、基準流量よりも大きな増加側のピーク流量との間で脈動させ、隣接する脈動の間においては、給湯経路を流れる温水の流量が基準流量に保持される構成としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、給湯経路を流れる温水の流量に変動を発生させ、給湯経路にスケールが付着するのを抑制することができる。これにより、給湯経路を構成する各種部品の寿命を延ばすことができる。また、加熱手段を流れる湯水の温度に基いて、流量の変動状態を制御することができるので、スケールが生じ難い状態にも拘らず、流量可変手段が余分な変動を発生させるのを抑制することができる。従って、流量可変手段の負荷を軽減し、その寿命を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態1によるヒートポンプ式の給湯機を示す全体構成図である。
図2】本発明の実施の形態1において、スケール抑制制御により発生させた脈動の波形例を示す特性線図である。
図3】給湯運転時(a)及び給湯運転の停止時(b)における給湯経路の湯水の流れを示す動作説明図である。
図4】本発明の実施の形態1による流量変動制御の一例を示す特性線図である。
図5】本発明の実施の形態2において、スケール抑制制御により発生させた脈動の波形例を示す特性線図である。
図6】本発明の実施の形態3において、給湯目標温度が制御開始温度よりも低い場合に、スケール抑制制御を停止した状態を示す特性線図である。
図7】給湯目標温度が制御開始温度以上の場合に、スケール抑制制御を実行した状態を示す特性線図である。
図8】本発明の実施の形態4によるヒートポンプ式の給湯機を示す全体構成図である。
図9】本発明の実施の形態5によるヒートポンプ式の給湯機を示す全体構成図である。
図10】本発明の実施の形態6において、水加熱用熱交換器を流通する湯水の流量変化を示す特性線図である。
図11】本発明の実施の形態7において、水加熱用熱交換器を流通する湯水の流量変化を示す特性線図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
以下、図1乃至図4を参照して、本発明の実施の形態1について説明する。なお、本明細書で使用する各図においては、共通する要素に同一の符号を付し、重複する説明を省略するものとする。図1は、本発明の実施の形態1によるヒートポンプ式の給湯機を示す全体構成図である。この図に示すように、給湯機は、ヒートポンプユニット1とタンクユニット2とを備えている。
【0011】
ヒートポンプユニット1は、圧縮機3、水加熱用熱交換器4、膨張弁5及び蒸発器6を冷媒循環配管7により環状に接続することによって構成され、これらの機器はケース内に収容されている。ヒートポンプユニット1は、後述の貯湯タンク8から水加熱用熱交換器4の2次側流路に導入される低温水と、冷媒循環配管7を介して水加熱用熱交換器4の1次側流路を流れる高温な冷媒との間で熱交換を行うことにより、低温水を加熱して高温水を生成するものである。ヒートポンプユニット1は、例えば自然冷媒である二酸化炭素を冷媒として用いている。
【0012】
タンクユニット2は、貯湯タンク8、制御装置9、加熱循環用送水ポンプ10、往き配管11、戻り配管12、三方弁13、給湯加熱用配管14、給湯加熱用ポンプ16、給湯用熱交換器17、加熱側温度センサ18、逃がし弁19、バイパス配管20、給水配管21、減圧弁22、給湯配管23、給湯ポンプ24、排水弁25等を備えている。これらの機器は、タンクユニットケース内に収容されている。以下、これらの機器について説明する。
【0013】
貯湯タンク8は、ヒートポンプユニット1により加熱した温水を貯湯する密閉型のタンク等により構成されている。貯湯タンク8の上部には、温水導入口81及び温水導出口82が設けられており、温水導出口82には、圧力が過度に上昇した場合に当該圧力を逃がすための逃がし弁19が接続されている。貯湯タンク8の下部には、水導入口83、水導出口84及び水戻り口85が設けられている。給湯機の運転時には、後述のように、貯湯タンク8の上部からタンク内に高温水が流入し、貯湯タンク8の下部からタンク内に低温水が供給される。このため、貯湯タンク8の内部には、上部側に高温水が滞留し、下部側に低温水が滞留するように温度成層が形成される。
【0014】
加熱循環経路は、水加熱用熱交換器4、往き配管11、戻り配管12及び三方弁13により構成されている。往き配管11は、貯湯タンク8の水導出口84から低温水を取出して当該低温水を水加熱用熱交換器4の2次側流路に流入させる。戻り配管12は、水加熱用熱交換器4の2次側流路から流出した高温水を、三方弁13を介して貯湯タンク8の上部の温水導入口81に流入させる。加熱循環用送水ポンプ10は、貯湯タンク8と水加熱用熱交換器4との間に接続された加熱循環経路に湯水を循環させるもので、例えば往き配管11の途中に設けられている。三方弁13は、戻り配管12の途中に接続されると共に、バイパス配管20を介して貯湯タンク8の水戻り口85に接続されている。
【0015】
給湯加熱用配管14は、貯湯タンク8内の高温水を外部に取出すための配管であり、その一端側は温水導出口82に接続されている。給湯加熱用配管14の他端側は、給湯用熱交換器17の1次側流路と、後述する給水配管21の一部とを介して貯湯タンク8の水導入口83に接続されている。給湯加熱用配管14の途中には、給湯加熱用配管14に湯水を循環させる給湯加熱用ポンプ16と、加熱側温度センサ18とが設けられている。加熱側温度センサ18は、貯湯タンク8から給湯用熱交換器17の1次側流路に供給される温水の温度を検出するもので、温度検出手段の具体例を構成している。
【0016】
給湯用熱交換器17は、貯湯タンク8に貯湯された温水を利用して後述の給湯経路を流れる湯水を加熱するもので、本実施の形態の加熱手段の具体例を構成している。詳しく述べると、給湯用熱交換器17は、貯湯タンク8の上部から給湯加熱用配管14を介して給湯用熱交換器17の1次側流路に供給される高温水と、給湯配管23を介して給湯用熱交換器17の2次側流路に供給される低温水との間で熱交換を行うことにより、2次側流路に中間温度の湯水(中温水)を生成する。なお、給湯用熱交換器17は、給湯配管23の途中に設けられ、給湯経路の一部を構成している。
【0017】
給水配管21は、水道水、井戸水等の低温水をタンクユニット2に供給するもので、貯湯タンク8の水導入口83に接続されている。給水配管21の途中には、水道等の1次圧を減圧する減圧弁22が設けられている。また、給湯配管23は減圧弁22の下流側で給水配管21から分岐し、給湯用熱交換器17の2次側流路を介して外部の給湯対象(図示せず)に接続されている。給湯対象には、給湯栓、シャワー、浴槽、温水循環暖房機等が含まれる。給湯配管23は、給湯対象に温水を供給するための給湯経路を構成しており、この給湯経路には給湯用熱交換器17の2次側流路も含まれている。
【0018】
給湯配管23の途中には、給湯対象に供給する温水の量を調整することが可能な給湯ポンプ24が設けられている。給湯ポンプ24は、本実施の形態において、給湯経路を流れる温水の流量を変化させることが可能な流量可変手段の具体例を構成している。なお、他の手段として例えば流量調整弁を用いてもよい。流量調整弁の開放度合いを一部絞った状態から全開放にし、再び一部絞った状態に戻すことで、後述のポンプでの場合と同様に流量調整が可能となる。給湯機は、給湯ポンプ24により給湯流量を調整することで、所望温度の温水を給湯することができる。一方、給湯配管23には、給湯用熱交換器17の下流側に排水弁25が接続されている。排水弁25は、給湯が停止されたときに、給湯用熱交換器17の内部に滞留した温水を外部に排出するもので、温水排出手段の具体例を構成している。
【0019】
次に、本実施の形態のシステムの制御系統について説明する。制御装置9は、ROM、RAM、不揮発性メモリ等からなる記憶回路と、記憶回路に記憶されたプログラム等に基いて所定の演算処理を実行する演算処理装置(CPU)と、演算処理装置に対して外部の信号を入出力する入出力ポートとを備えている。制御装置9の入力側には、加熱側温度センサ18、タンク温度センサ等を含むセンサ系統が接続されている。なお、タンク温度センサは、貯湯タンク8の複数個所で温度を検出し、当該タンク内の貯湯量(残湯量)を検出するために用いられる。
【0020】
制御装置9の出力側には、圧縮機3、加熱循環用送水ポンプ10、三方弁13、給湯加熱用ポンプ16、給湯ポンプ24等を含む各種のアクチュエータが接続されている。制御装置9は、センサ系統の出力、ユーザの設定等に基いてアクチュエータを駆動することにより、沸き上げ運転、給湯運転、スケール抑制制御、給湯後冷却制御及び流量変動制御を実行する。以下、これらの運転形態について説明する。
【0021】
(沸き上げ運転)
次に、本実施の形態による給湯の作動について説明する。まず、沸き上げ運転について説明すると、沸き上げ運転は、ヒートポンプユニット1を用いて貯湯タンク8内の湯水を加熱する(沸き上げる)もので、沸き上げ運転の実行時には、ヒートポンプユニット1と、加熱循環用送水ポンプ10とを作動させる。これにより、貯湯タンク8の下部から往き配管11に流出した低温水は、往き配管11を介してヒートポンプユニット1の水加熱用熱交換器4の2次側流路に流入し、高温の冷媒と熱交換することにより加熱されて高温水となる。そして、水加熱用熱交換器4から流出した高温水は、戻り配管12及び三方弁13を経由して貯湯タンク8の上部に流入する。これにより、貯湯タンク8には、高温水が上部から順次貯湯される。
【0022】
(給湯運転)
一方、ユーザが給湯操作を実行したときには、給湯運転が行われる。給湯運転では、制御装置9が給湯の流量または圧力の変化に基いて給湯操作を検出し、給湯加熱用ポンプ16が駆動される。これにより、貯湯タンク8上部から取出された高温水は、給湯加熱用配管14、給湯用熱交換器17及び給水配管21の一部を経由して貯湯タンク8の下部に戻される。また、給湯操作により給水配管21から給湯配管23に流入した低温水は、給湯用熱交換器17の2次側流路を通過するときに、1次側流路を流れる高温水と熱交換し、中温水となる。この中温水は給湯配管23を介して給湯対象に供給される。
【0023】
(スケール抑制制御)
また、制御装置9は、給湯運転が行われるときに、スケール抑制制御を実行する。この制御は、例えば給湯ポンプ24の吐出流量を短時間に増減させることにより、給湯経路を流れる温水の流量に脈動等の変動を発生させるものである。図2は、本発明の実施の形態1において、スケール抑制制御により発生させた脈動の波形例を示す特性線図である。この図は、給湯用熱交換器17の2次側流路における温水流量の変化を例示している。
【0024】
スケール抑制制御では、図2に示すように、給湯ポンプ24の吐出流量に応じて、給湯用熱交換器17の2次側流路を流れる温水の流量を基準流量Aとピーク流量AHとの間で切換える動作を繰返す。ここで、基準流量Aは、スケール抑制制御の非実行時にも用いられる基準の流量として予め設定されている。ピーク流量AHは、基準流量Aよりも大きな流量値として予め設定され、スケール抑制制御の実行時に用いられるものである。基準流量Aに対するピーク流量AHの差分は、給湯経路へのスケールの付着を抑制可能な大きさに設定される。また、脈動の周期(図2中の脈動周期T)は、スケールの付着抑制効果、給湯ポンプ24の負荷等を考慮して適切な値に設定されている。隣接する脈動の間においては、給湯経路を流れる温水の流量が基準流量Aに保持される。
【0025】
スケール抑制制御により脈動が発生した湯水は、給湯配管23を介して給湯用熱交換器17に流入し、給湯用熱交換器17内で加熱されつつ、滞留することなく給湯用熱交換器17を通過する。これにより、給湯用熱交換器17の2次側流路を含む給湯経路にスケールが付着して堆積するのを抑制することができる。従って、スケール抑制制御によれば、給湯経路にスケールが付着するのを抑制し、給湯経路を構成する各種部品の寿命を延ばすことができる。また、基準流量Aとピーク流量AHとの差分を、給湯経路へのスケールの付着が抑制される程度の大きさに設定することにより、スケールの付着抑制効果を確実に発揮することができる。
【0026】
(給湯後冷却制御)
次に、図3を参照して、給湯後冷却制御について説明する。給湯後冷却制御は、給湯運転の停止後に、給湯用熱交換器17の2次側流路に滞留した温水を排水弁25により外部に排出するものである。図3は、給湯運転時(a)及び給湯運転の停止時(b)における給湯経路の湯水の流れを示している。給湯運転時には、図3(a)に示すように、排水弁25が閉弁されている。このため、給湯用熱交換器17により加熱された温水は、その全てが給湯配管23から給湯対象に供給される。一方、給湯運転が停止した場合には、給湯用熱交換器17の2次側流路内に加熱された温水が滞留した状態となるので、2次側流路内にスケールが析出し易くなる。
【0027】
このため、制御装置9は、図3(b)に示すように、給湯後冷却制御を実行する。給湯後冷却制御では、給湯運転の終了と同時に排水弁25を開弁し、給湯用熱交換器17の内部に滞留した温水を当該交換器内の温度が低下するまで排出する。具体的に述べると、制御装置9は、給湯用熱交換器17の2次側流路の水温がスケールの付着を抑制可能な所定の判定温度以下となるまで排水弁25を開弁する。これにより、排水弁25の開弁中には、給湯用熱交換器17の2次側流路に残留した温水が給湯配管23から排水弁25を介して排出される。
【0028】
この結果、前記2次側流路には、給水配管21及び給湯配管23を介して低温水が流入するので、2次側流路を冷却することができる。また、前記2次側流路の水温が前記判定温度以下となったときには、排水弁25が閉弁され、給湯後冷却制御が終了する。なお、給湯後冷却制御の実行中には、スケール抑制制御を並行して実行し、湯水の脈動を発生させてもよい。また、給湯用熱交換器17の2次側流路の水温は、例えば給湯配管23に配置した給湯側温度センサ等により直接検出してもよいし、加熱側温度センサ18により検出した水温(給湯用熱交換器17の1次側流路に供給される温水の水温)に基いて算出してもよい。
【0029】
給湯後冷却制御によれば、給湯運転が終了したときには、給湯用熱交換器17内に残留する温水を排水弁25から速やかに排出し、当該熱交換器を冷却することができる。これにより、給湯経路にスケールが付着するのを抑制し、給湯経路を構成する各種部品の寿命を延ばすことができる。
【0030】
(流量変動制御)
一方、給湯運転により貯湯タンク8内の温水が消費されたり、沸き上げ運転から時間が経過して貯湯タンク8内の温水が自然放熱すると、給湯用熱交換器17に供給される温水の温度が低下する。この場合には、給湯用熱交換器17内にスケールが析出し難い温度環境となる。このため、本実施の形態では、スケール抑制制御を行うときに、給湯用熱交換器17に供給される温水の温度に基いて、スケール抑制制御による温水流量の変動状態を制御する流量変動制御を実行する。図4は、本発明の実施の形態1による流量変動制御の一例を示す特性線図である。
【0031】
流量変動制御では、例えば貯湯タンク8から給湯用熱交換器17の1次側流路に流入する温水の温度(1次側水温)を加熱側温度センサ18により検出し、1次側水温が低いほど、脈動周期T(図4参照)を長くする。脈動周期Tの変更は、給湯ポンプ24の吐出流量または吐出圧を変化させることで実現される。これにより、スケール抑制制御中には、スケールが生じ難い状態にも拘らず、給湯ポンプ24が余分な脈動を発生させるのを抑制することができる。従って、給湯ポンプ24の負荷を軽減し、当該ポンプの寿命を延ばすことができる。なお、スケール抑制制御及び流量変動制御は、給湯運転時と給湯後冷却制御の何れで実行してもよく、両方で実行する構成としてもよい。
【0032】
実施の形態2.
次に、図5を参照して、本発明の実施の形態2について説明する。図5は、本発明の実施の形態2において、スケール抑制制御により発生させた脈動の波形例を示す特性線図である。本実施の形態によるスケール抑制制御では、給湯経路を流れる温水の流量を基準流量Aから減少側のピーク流量ALまで急激に減少させた後に、当該流量を増加側のピーク流量AHまで急激に増加させる動作を繰返すことにより、図5に示すような脈動を発生させる。
【0033】
この場合、隣接する脈動の間においては、給湯経路を流れる温水の流量が基準流量Aに保持される。また、ピーク流量AH,AL間の差分は、給湯経路へのスケールの付着を抑制可能な大きさに設定される。なお、ピーク流量AH,ALからなる脈動の脈動周期Tは、前記実施の形態1と同様に可変に設定してもよい。
【0034】
このように構成される本実施の形態でも、前記実施の形態1と同様の効果を得ることができる。そして、特に本実施の形態では、給湯経路を流れる温水の流量を基準流量Aに対して減少及び増加させることができ、増加側のピーク流量AHを実施の形態1と同じ大きさに保持しつつ、ピーク流量AH,AL間の差分を大きく設定することができる。従って、スケールの付着抑制効果をより顕著に発揮することができる。
【0035】
実施の形態3.
次に、図6及び図7を参照して、本発明の実施の形態3について説明する。図6は、本発明の実施の形態3において、給湯目標温度が制御開始温度よりも低い場合に、スケール抑制制御を停止した状態を示す特性線図である。また、図7は、給湯目標温度が制御開始温度以上の場合に、スケール抑制制御を実行した状態を示す特性線図である。ここで、給湯目標温度とは、例えば給湯機のユーザによりリモコン等を用いて設定されるもので、ユーザが希望する給湯の温度に対応している。制御装置9は、給湯ポンプ24の吐出流量(言い換えれば、前述の基準流量A)を変化させることにより、給湯配管23から給湯対象に供給される温水の温度が給湯目標温度と一致するように制御する。
【0036】
ここで、例えば給湯経路にスケールが付着し易い下限の温度を制御開始温度として定義すると、給湯運転時において、給湯目標温度が制御開始温度よりも低い場合には、給湯経路にスケールが付着し難いと考えられる。このため、本実施の形態では、給湯運転時において、給湯目標温度が制御開始温度よりも低い場合に、スケール抑制制御を停止する。即ち、この場合には、図6に示すように、給湯経路を流れる温水に脈動を発生させず、例えば給湯ポンプ24の吐出流量を基準流量Aに保持する。制御開始温度よりも低い給湯目標温度の一例としては、35℃程度の低温が挙げられる。
【0037】
一方、給湯運転時において、給湯目標温度が制御開始温度以上の場合には、給湯経路にスケールが付着し易いと考えられる。そこで、この場合には、前述のスケール抑制制御を実行し、例えば図7に示すような脈動を発生させる。なお、このときに発生させる脈動は、例えば実施の形態1(図2)と同様のものであってもよい。
【0038】
このように構成される本実施の形態でも、前記実施の形態1及び2と同様の効果を得ることができる。そして、特に本実施の形態では、目標給湯温度に基いてスケール抑制制御を実行及び停止させる構成としたので、目標給湯温度が制御開始温度よりも低い場合には、スケール抑制制御を停止することができる。これにより、スケールが生じ難いにも拘らず、不要な脈動が生成される事態を回避し、給湯ポンプ24の負荷を軽減することができる。一方、目標給湯温度が制御開始温度以上の場合には、スケール抑制制御を実行し、スケールの付着を抑制することができる。
【0039】
実施の形態4.
次に、図8を参照して、本発明の実施の形態4について説明する。図8は、本発明の実施の形態4によるヒートポンプ式の給湯機を示す全体構成図である。本実施の形態は、前記実施の形態1の構成に加えて、バッファタンク26を備えることを特徴としている。バッファタンク26は、スケール抑制制御により給湯経路に脈動が発生したときに、この脈動が給湯対象に到達しないように脈動を吸収するものである。また、バッファタンク26は、例えば可変容量型のタンクにより構成され、給湯用熱交換器17の2次側流路の下流側、さらに言えば、排水弁25よりも下流側となる位置で給湯配管23に設けられている。制御装置9は、アクチュエータ等を用いてバッファタンク26内の容積(以下、タンク容積と表記)を変化させるタンク容量制御を実行する。
【0040】
詳しく述べると、制御装置9は、給湯運転を実行するときに、スケール抑制制御と共にタンク容量制御を実行し、脈動による流量の変化がタンク容積の変化により吸収されるように当該タンク容積を制御する。一例を挙げると、タンク容積は、脈動の波形に対して逆位相となるタイミングで増減される。これにより、脈動による流量の増加はタンク容積の拡大により吸収され、流量の減少はタンク容積の縮小により補償される。従って、脈動がバッファタンク26を超えて給湯対象に到達するのを抑制し、給湯対象の位置における水圧及び水量を安定させることができる。
【0041】
実施の形態5.
次に、図9を参照して、本発明の実施の形態5について説明する。図9は、本発明の実施の形態5によるヒートポンプ式の給湯機を示す全体構成図である。本実施の形態は、前記実施の形態1の構成に加えて、バイパス通路27と、バイパス流量可変手段としてのバイパスポンプ28とを備えることを特徴としている。バイパス通路27は、給湯配管23のうち給湯用熱交換器17の流入側に位置する部位と流出側に位置する部位とを接続している。より詳しく述べると、バイパス通路27は、一端側が給湯用熱交換器17の流入側で給水配管21に接続され、他端側が給湯用熱交換器17の流出側で給湯配管23に接続されている。バイパスポンプ28は、バイパス通路27を流れる湯水の流量を変化させるもので、バイパス通路27に設けられている。
【0042】
制御装置9は、給湯運転を実行するときに、スケール抑制制御と共にバイパス流量制御を実行する。バイパス流量制御では、脈動による流量の変化がバイパス通路27を流れる湯水の流量の変化により吸収されるように、バイパスポンプ28を制御する。これにより、給水配管21からバイパス通路27及びバイパスポンプ28を経由して温水に合流する水の量は、脈動の波形に対して逆位相となるタイミングで増減される。即ち、脈動による流量の増加はバイパス通路27から流入する水量の減少により吸収され、脈動による流量の減少はバイパス通路27から流入する水量の増加により補償される。従って、脈動がバイパス通路27を超えて給湯対象に到達するのを抑制し、給湯対象の位置における水圧及び水量を安定させることができる。
【0043】
実施の形態6.
次に、図10を参照して、本発明の実施の形態6について説明する。図10は、本発明の実施の形態6において、水加熱用熱交換器を流通する湯水の流量変化を示す特性線図である。なお、図10(a)は、初回の沸き上げ運転時における脈動の波形例を示し、図10(b)は、2回目以降の沸き上げ運転時における脈動の波形例を示している。本実施の形態は、沸き上げ運転時において、水加熱用熱交換器4を流通する湯水に対して脈動を発生し、かつ、沸き上げ運転の回数に基いて、前記脈動の発生状態を変化させることを特徴としている。
【0044】
給湯機に水を供給する給水源が高硬度水であり、かつ、貯湯タンク8が空の状態から満水まで給水した後に初回の沸き上げ運転を行う場合には、水加熱用熱交換器4により高硬度水を加熱する必要がある。この場合、制御装置9は、加熱循環用送水ポンプ10の吐出流量を変化させることにより、図10(a)に示すように、貯湯側スケール抑制制御を実行する。貯湯側スケール抑制制御では、貯湯タンク8と水加熱用熱交換器4との間を循環する湯水(循環湯水)の流量に脈動を発生させる。この脈動は、例えば図2に示すスケール抑制制御の脈動と同様のものである。なお、加熱循環用送水ポンプ10は、本実施の形態の貯湯側流量可変手段を構成している。
【0045】
貯湯側スケール抑制制御により脈動が発生した湯水は、滞留することなく前述の加熱循環経路を流通し、水加熱用熱交換器4の2次側流路を通過する。従って、貯湯側スケール抑制制御によれば、水加熱用熱交換器4を含む加熱循環経路にスケールが付着して堆積するのを抑制することができる。
【0046】
一方、貯湯タンク8が空の状態から満水まで給水した後において、2回目以降の沸き上げ運転を行うときには、貯湯タンク8内の湯水の一部が体積膨張に伴う排水により少量ずつ入れ替わった状態となっている。従って、この場合には、スケールが付着する可能性が低下する。そこで、制御装置9は、図10(b)に示すように、初回の沸き上げ運転時と比較して、貯湯側スケール抑制制御における脈動周期Tを長くするか、または、同制御における脈動の流量差(基準流量とピーク流量との差分)を小さくする。この場合には、基準流量Aに対して、脈動時の最大流量であるピーク流量をAHからAH′に減少させることにより、脈動の流量差を小さくすることができる。
【0047】
本制御によれば、スケールが生じ難いにも拘らず、不要な脈動が生成される事態を回避し、加熱循環用送水ポンプ10の負荷を軽減することができる。なお、脈動周期tの延長量、脈動の流量差の減少量は、沸き上げ運転の実行回数、水中の高硬度成分濃度等に応じて徐々に変更する構成としてもよい。また、沸き上げ運転時において、三方弁13は、水加熱用熱交換器4と貯湯タンク8とを戻り配管12により接続し、バイパス配管20を戻り配管12から遮断した状態に切換えられる。
【0048】
また、沸き上げ運転の終了時には、高温水が水加熱用熱交換器4の内部に滞留するので、スケールが付着する可能性が高くなる。そこで、制御装置9は、沸き上げ運転が終了したときに、三方弁13を切換えることにより、水加熱用熱交換器4の流出側を貯湯タンク8の水戻り口85に接続する。そして、加熱循環用送水ポンプ10を運転し、貯湯タンク8と水加熱用熱交換器4との間に湯水を循環させる。これにより、水加熱用熱交換器4の内部に残留した高温水は、戻り配管12の一部、三方弁13及びバイパス配管20を介して貯湯タンク8の下部に戻される。
【0049】
そして、貯湯タンク8の水導出口84から流出した低温水が往き配管11及び加熱循環用送水ポンプ10を介して水加熱用熱交換器4の内部に流入する。従って、本制御によれば、水加熱用熱交換器4の内部に残留した湯水の温度を、スケールの付着を抑制可能な低い温度まで低下させることができる。そして、水加熱用熱交換器4内の温度が前記低い温度まで低下した時点で、加熱循環用送水ポンプ10を停止する。
【0050】
このように構成される本実施の形態によれば、前記実施の形態1乃至5の効果に加えて、加熱循環経路へのスケールの付着を抑制することができる。従って、スケールに対する給湯機の耐久性をより向上させることができる。
【0051】
実施の形態7.
次に、図11を参照して、本発明の実施の形態7について説明する。図11は、本発明の実施の形態7において、水加熱用熱交換器を流通する湯水の流量変化を示す特性線図である。本実施の形態は、前記実施の形態6で説明した貯湯側スケール抑制制御において、前記実施の形態2(図5)と同様の波形をもつ脈動を循環湯水に発生させることを特徴としている。即ち、本実施の形態の貯湯側スケール抑制制御では、循環湯水の流量を基準流量Aから減少側のピーク流量ALまで急激に減少させた後に、当該流量を増加側のピーク流量AHまで急激に増加させる動作を繰返すことにより、図11に示すような脈動を発生させる。このように構成される本実施の形態によれば、前記実施の形態6の効果に対して、前記実施の形態2の効果を加味することができる。
【0052】
なお、前記実施の形態1乃至5では、スケール抑制制御がスケール抑制制御手段の具体例を示し、流量変動制御が流量変動制御手段の具体例を示している。また、前記実施の形態6及び7では、貯湯側スケール抑制制御が貯湯側スケール抑制制御手段の具体例を示し、図10が脈動制御手段の具体例を示している。
【0053】
また、前記実施の形態1乃至7では、それぞれ個別の構成について説明した。しかし、本発明はこれに限らず、実施の形態1乃至7のうち組合せが可能な2つ以上の構成を組合わせることにより、給湯機を実現してもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 ヒートポンプユニット,2 タンクユニット,3 圧縮機,4 水加熱用熱交換器,5 膨張弁,6 蒸発器,7 冷媒循環配管,8 貯湯タンク,9 制御装置,10 加熱循環用送水ポンプ(貯湯側流量可変手段),11 往き配管,12 戻り配管,13 三方弁,14 給湯加熱用配管,16 給湯加熱用ポンプ,17 給湯用熱交換器(加熱手段、給湯経路),18 加熱側温度センサ(温度検出手段),19 逃がし弁,20 バイパス配管,21 給水配管,22 減圧弁,23 給湯配管(給湯経路),24 給湯ポンプ(流量可変手段),25 排水弁(温水排出手段),26 バッファタンク,27 バイパス通路,28 バイパスポンプ(バイパス流量可変手段),81 温水導入口,82 温水導出口,83 水導入口,84 水導出口,85 水戻り口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11