(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
[A]重合体が、構造単位(I)以外の構造単位であって、ラクトン構造、環状カーボネート構造及びスルトン構造からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む構造単位(III)をさらに有する請求項1又は請求項2に記載のフォトレジスト組成物。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<フォトレジスト組成物>
当該フォトレジスト組成物は、[A]重合体及び[B]酸発生体を含有する。当該フォトレジスト組成物によれば、広いELを発揮しつつ、LWR及びCDUが小さいレジストパターンを形成することができる。
【0014】
当該フォトレジスト組成物は、好適成分として、[C]酸拡散制御体、[D]フッ素原子含有重合体(以下、「[D]重合体」ともいう)、[E]溶媒を含有してもよく、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の任意成分を含有してもよい。
以下、各成分について説明する。
【0015】
<[A]重合体>
[A]重合体は、構造単位(I)を有する重合体である。当該フォトレジスト組成物は、[A]重合体が構造単位(I)を有することで、EL性能、LWR性能及びCDU性能に優れる。
当該フォトレジスト組成物が上記構成を有することで、上記効果を奏する理由については必ずしも明確ではないが、例えば、以下のように推察することができる。すなわち、構造単位(I)は、5〜9員環のラクトン環が、エステル基と炭素原子1個とを介して重合体鎖に結合し、かつこの炭素原子と、この炭素原子に隣接するラクトン環の炭素原子とに少なくとも1個ずつの炭化水素基等が結合する特定構造を有している。このように、ラクトン環が重合体鎖と適度な距離を有し、かつこのラクトン環を含む側鎖の動きが立体構造により適度に制限されていることで、この構造単位(I)を有する[A]重合体は、適度な極性と剛直性を有すると考えられ、現像液に対する好適な溶解性を発現する。その結果、当該フォトレジスト組成物は、EL性能、LWR性能及びCDU性能が向上する。
【0016】
[A]重合体は、構造単位(I)以外に、後述する下記式(2)で表される構造単位(II)を有することが好ましく、構造単位(I)以外の構造単位であってラクトン構造、環状カーボネート構造及びスルトン構造からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む構造単位(III)を有していてもよい。また、構造単位(I)〜(III)以外のその他の構造単位を有していてもよい。[A]重合体は、上記構造単位をそれぞれ1種又は2種以上有していてもよい。
以下、各構造単位について説明する。
【0017】
[構造単位(I)]
構造単位(I)は、下記式(1)で表される。
【0019】
上記式(1)中、R
1は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R
2及びR
3は、R
2が置換又は非置換の炭素数1〜30の1価の炭化水素基であり、かつR
3が水素原子若しくは炭素数1〜30の1価の炭化水素基であるか、又はR
2及びR
3が互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される炭素数3〜20の脂環構造を表す。R
4は、炭素数1〜10の1価の鎖状炭化水素基又は炭素数3〜20の1価の脂環式炭化水素基である。R
5は、炭素数1〜6の1価の鎖状炭化水素基又は炭素数3〜15の1価の脂環式炭化水素基である。p及びqは、それぞれ独立して、0〜3の整数である。但し、p+qは、2以上6以下である。rは、0〜4の整数である。rが2以上の場合、複数のR
5は同一でも異なっていてもよい。
【0020】
上記R
1としては、構造単位(I)を与える単量体の共重合性の観点から、水素原子、メチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0021】
R
2及びR
3で表される炭素数1〜30の1価の炭化水素基としては、例えば、炭素数1〜30の1価の鎖状炭化水素基、炭素数3〜30の1価の脂環式炭化水素基、炭素数6〜30の1価の芳香族炭化水素基等が挙げられる。
【0022】
上記炭素数1〜30の1価の鎖状炭化水素基としては、例えば、
メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等のアルキル基;
エテニル基、プロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基;
エチニル基、プロピニル基、ブチニル基等のアルキニル基などが挙げられる。
【0023】
上記炭素数3〜30の1価の脂環式炭化水素基としては、例えば、
シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等の単環のシクロアルキル基;
ノルボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基等の多環のシクロアルキル基;
シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基、シクロオクテニル基等の単環のシクロアルケニル基;
ノルボルネニル基、トリシクロデセニル基、テトラシクロドデセニル基等の多環のシクロアルケニル基などが挙げられる。
【0024】
上記炭素数6〜30の1価の芳香族炭化水素基としては、例えば、
フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、ナフチル基、アントリル基等のアリール基;
ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、アントリルメチル基等のアラルキル基などが挙げられる。
【0025】
上記R
2の炭化水素基を置換する置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルオキシ基、アシル基、アシロキシ基等が挙げられる。
【0026】
上記R
2及びR
3が互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される炭素数3〜20の脂環構造としては、例えば、シクロプロパン構造、シクロブタン構造、シクロペンタン構造、シクロヘキサン構造、シクロヘプタン構造、シクロオクタン構造、ノルボルナン構造、アダマンタン構造、これらの構造の炭素−炭素間に酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を含む基を有する構造等が挙げられる。
【0027】
R
2としては、当該フォトレジスト組成物のEL性能、LWR性能及びCDU性能の向上の観点から、非置換の1価の炭化水素基が好ましく、1価の鎖状炭化水素基、1価の脂環式炭化水素基がより好ましく、アルキル基、シクロアルキル基がさらに好ましく、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基が特に好ましく、炭素数1〜6のアルキル基がさらに特に好ましく、メチル基、シクロヘキシル基が最も好ましい。
【0028】
R
3としては、当該フォトレジスト組成物のEL性能、LWR性能及びCDU性能の向上の観点から、水素原子、1価の鎖状炭化水素基が好ましく、水素原子がより好ましい。また、R
3が水素原子の場合は、構造単位(I)を与える単量体の合成が容易になる。
【0029】
R
2及びR
3の組み合わせとしては、R
2が1価の鎖状炭化水素基又は1価の脂環式炭化水素基かつR
3が水素原子又は1価の鎖状炭化水素基が好ましく、R
2が炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数3〜8のシクロアルキル基かつR
3が水素原子がより好ましく、R
2が炭素数1〜6のアルキル基かつR
3が水素原子がさらに好ましく、R
2がメチル基かつR
3が水素原子が特に好ましい。R
2及びR
3を上記組み合わせとし、これらの基の嵩高さを適度にすることで、[A]重合体の剛直性がより適度になると考えられ、その結果当該フォトレジスト組成物のEL性能、LWR性能及びCDU性能をより向上させることができる。
【0030】
R
4で表される炭素数1〜10の1価の鎖状炭化水素基としては、例えば、上記R
2及びR
3として例示した鎖状炭化水素基のうち、炭素数1〜10のもの等が挙げられる。
【0031】
R
4で表される炭素数3〜20の1価の脂環式炭化水素基としては、例えば上記R
2及びR
3として例示した脂環式炭化水素基のうち、炭素数3〜20のもの等が挙げられる。
【0032】
R
4としては、1価の鎖状炭化水素基が好ましく、炭素数1〜5の鎖状炭化水素基がより好ましく、炭素数1〜5のアルキル基がさらに好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基が特に好ましく、メチル基がさらに特に好ましい。
【0033】
R
2、R
3及びR
4の組み合わせとしては、R
2が1価の鎖状炭化水素基又は1価の脂環式炭化水素基、R
3が水素原子かつR
4が1価の鎖状炭化水素基が好ましく、R
2が炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数3〜8のシクロアルキル基、R
3が水素原子かつR
4が炭素数1〜5のアルキル基がより好ましく、R
2がメチル基又はシクロヘキシル基、R
3が水素原子かつR
4がメチル基、エチル基又はi−プロピル基がさらに好ましく、R
2がメチル基、R
3が水素原子かつR
4がメチル基、エチル基又はi−プロピル基が特に好ましい。R
2、R
3及びR
4を上記組み合わせとすることで、これらの基の間の適度な立体障害により[A]重合体の剛直性がさらに適度になると考えられ、その結果、当該フォトレジスト組成物のEL性能、LWR性能及びCDU性能をさらに向上させることができる。
【0034】
R
5で表される炭素数1〜6の1価の鎖状炭化水素基としては、例えば、上記R
2及びR
3として例示した鎖状炭化水素基のうち、炭素数1〜6のもの等が挙げられる。
【0035】
R
5で表される炭素数3〜15の1価の脂環式炭化水素基としては、例えば上記R
2及びR
3として例示した脂環式炭化水素基のうち、炭素数3〜15のもの等が挙げられる。
【0036】
R
5としては、1価の鎖状炭化水素基が好ましく、炭素数1〜3の鎖状炭化水素基がより好ましく、メチル基、エチル基がさらに好ましい。
【0037】
pとしては1〜3の整数が好ましく、1又は2がより好ましく、2がさらに好ましい。
qとしては0〜2の整数が好ましく、0又は1がより好ましく、0がさらに好ましい。
p+qとしては、2以上5以下が好ましく、2又は3がより好ましく、2がさらに好ましい。
【0038】
構造単位(I)としては、例えば、下記式(1−1)〜(1−12)で表される構造単位(以下、「構造単位(I−1)〜(I−12)」ともいう)等が挙げられる。
【0040】
上記式(1−1)〜(1−12)中、R
1は、上記式(1)と同義である。
【0041】
これらの中で、当該フォトレジスト組成物のEL性能、LWR性能及びCDU性能により優れる観点から、構造単位(I−1)〜(I−5)、(I−8)〜(I−12)が好ましく、構造単位(I−1)〜(I−4)がより好ましく、構造単位(I−1)がさらに好ましい。
【0042】
構造単位(I)の含有割合の下限としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、5モル%が好ましく、10モル%がより好ましく、20モル%がさらに好ましく、30モル%が特に好ましい。構造単位(I)の含有割合の上限としては、90モル%が好ましく、80モル%がより好ましく、70モル%がさらに好ましく、60モル%が特に好ましい。構造単位(I)の含有割合を上記範囲とすることで、当該フォトレジスト組成物のEL性能、LWR性能及びCDU性能を向上させることができる。
【0043】
構造単位(I)を与える化合物としては、例えば、下記式(i)で表される化合物(以下、「化合物(i)」ともいう)等が挙げられる。
【0045】
上記式(i)中、R
1は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R
2及びR
3は、R
2が置換又は非置換の炭素数1〜30の1価の炭化水素基であり、かつR
3が水素原子若しくは炭素数1〜30の1価の炭化水素基であるか、又はR
2及びR
3が互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される炭素数3〜20の脂環構造を表す。R
4は、炭素数1〜10の1価の鎖状炭化水素基又は炭素数3〜20の1価の脂環式炭化水素基である。R
5は、炭素数1〜6の1価の鎖状炭化水素基又は炭素数3〜15の1価の脂環式炭化水素基である。p及びqは、それぞれ独立して、0〜3の整数である。但し、p+qは、2以上6以下である。rは、0〜4の整数である。rが2以上の場合、複数のR
5は同一でも異なっていてもよい。
【0046】
化合物(i)としては、例えば、下記式(1m−1)〜(1m−12)で表される化合物(以下、「化合物(1m−1)〜(1m−12)」ともいう)等が挙げられる。
【0048】
上記式(1m−1)〜(1m−12)中、R
1は、上記式(i)と同義である。
【0049】
これらの中で、化合物(1m−1)〜(1m−5)、(1m−8)〜(1m−12)が好ましく、構造単位(1m−1)〜(1m−4)がより好ましく、構造単位(1m−1)がさらに好ましい。
【0050】
化合物(i)の合成方法は、例えば、上記式(i)におけるR
3が水素原子かつqが0の場合は以下の通りであり、下記スキームに従い合成することができる。それ以外の場合も、同様の公知の方法により合成することができる。
【0052】
上記スキーム中、R
1、R
2、R
4、R
5、p及びrは、上記式(i)と同義である。Zは、ハロゲン原子、ヒドロキシ基又は−OCORである。Rは、1価の炭化水素基である。
【0053】
α−アセチル−γ−ブチロラクトン等のα−カルボニル炭化水素置換ラクトン化合物と、ヨウ化メチル等のヨウ素化鎖状炭化水素又はヨウ素化脂環式炭化水素とを、塩基存在下、溶媒中で反応させることにより、α位が鎖状炭化水素基又は脂環式炭化水素基で置換された化合物が得られる(反応1)。この化合物を、溶媒中、水素化ホウ素ナトリウムを用いて還元することにより、アルコール化合物が得られる(反応2)。このアルコール化合物と、(メタ)アクリロイルクロリド等の(メタ)アクリロイル化合物とを、塩基存在下、溶媒中で反応させることにより化合物(i)を得ることができる(反応3)。
【0054】
上記反応1で用いる塩基としては、例えば、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩;水素化ナトリウム、水素化カリウム等のアルカリ金属水素化物;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物などが挙げられる。
上記反応1で用いる溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;アセトン、2−ブタノン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル系溶媒;ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン等の炭化水素系溶媒;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶媒;水などが挙げられる。これらの溶媒は、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0055】
上記反応2で用いる溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン等の炭化水素系溶媒;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶媒;水などが挙げられる。これらの溶媒は、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0056】
上記反応3で用いる塩基としては、例えば、ジエチルアミン、トリエチルアミン等の鎖状アミン化合物;ピロリジン、ピペリジン等の環状アミン化合物;ピリジン、ジメチルアミノピリジン等のピリジン化合物などが挙げられる。
上記反応3で用いる溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;アセトン、2−ブタノン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル系溶媒;ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン等の炭化水素系溶媒;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶媒;アセトニトリル、水などが挙げられる。これらの溶媒は、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0057】
[構造単位(II)]
構造単位(II)は、下記式(2)で表される構造単位である。構造単位(II)の−CR
7R
8R
9で表される基は、酸解離性基である。「酸解離性基」とは、カルボキシ基の水素原子を置換する基であって、酸の作用により解離する基をいう。当該フォトレジスト組成物は、[A]重合体が構造単位(II)を有することで、感度及び解像性が向上し、結果として、EL性能、LWR性能及びCDU性能を向上させることができる。
【0059】
上記式(2)中、R
6は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Yは、単結合、炭素数3〜20のカルボニルオキシシクロアルカンジイル基又は炭素数3〜20のカルボニルオキシシクロアルカンジイルオキシ基である。R
7は、炭素数1〜10の1価の鎖状炭化水素基又は炭素数3〜20の1価の脂環式炭化水素基である。R
8及びR
9は、それぞれ独立して、炭素数1〜10の1価の鎖状炭化水素基若しくは炭素数3〜20の1価の脂環式炭化水素基であるか、又はこれらの基が互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される炭素数3〜20の脂環構造を表す。
【0060】
上記Yで表される炭素数3〜20のカルボニルオキシシクロアルカンジイル基としては、例えば、
カルボニルオキシシクロプロパンジイル基、カルボニルオキシシクロブタンジイル基、カルボニルオキシシクロペンタンジイル基、カルボニルオキシシクロヘキサンジイル基等の単環のカルボニルオキシシクロアルカンジイル基;
カルボニルオキシノルボルナンジイル基、カルボニルオキシアダマンタンジイル基、カルボニルオキシトリシクロデカンジイル基、カルボニルオキシテトラシクロドデカンジイル基等の多環のカルボニルオキシシクロアルカンジイル基等が挙げられる。
【0061】
上記Yで表される炭素数3〜20のカルボニルオキシシクロアルカンジイルオキシ基としては、例えば、
カルボニルオキシシクロプロパンジイルオキシ基、カルボニルオキシシクロブタンジイルオキシ基、カルボニルオキシシクロペンタンジイルオキシ基、カルボニルオキシシクロヘキサンジイルオキシ基等の単環のカルボニルオキシシクロアルカンジイルオキシ基;
カルボニルオキシノルボルナンジイルオキシ基、カルボニルオキシアダマンタンジイルオキシ基、カルボニルオキシトリシクロデカンジイルオキシ基、カルボニルオキシテトラシクロドデカンジイルオキシ基等の多環のカルボニルオキシシクロアルカンジイルオキシ基等が挙げられる。
【0062】
上記Yとしては、単結合、炭素数3〜20のカルボニルオキシシクロアルカンジイルオキシ基が好ましく、単結合、多環のカルボニルオキシシクロアルカンジイルオキシ基がより好ましく、単結合がさらに好ましい。
【0063】
上記R
6としては、構造単位(II)を与える単量体の共重合性の観点から、水素原子、メチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0064】
上記R
7、R
8及びR
9で表される炭素数1〜10の1価の鎖状炭化水素基としては、例えば、
メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基等のアルキル基;
エテニル基、プロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基;
エチニル基、プロピニル基、ブチニル基等のアルキニル基等が挙げられる。
【0065】
上記R
7、R
8及びR
9で表される炭素数3〜20の1価の脂環式炭化水素基としては、例えば、
シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基;
シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の単環のシクロアルケニル基;
ノルボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデシル基等の多環のシクロアルキル基;
ノルボルネニル基、トリシクロデセニル基等の多環のシクロアルケニル基等が挙げられる。
【0066】
上記これらの基が互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成され表す炭素数3〜20の脂環構造としては、例えば、
シクロプロパン構造、シクロブタン構造、シクロペンタン構造、シクロヘキサン構造、シクロヘプタン構造、シクロオクタン構造等の単環のシクロアルカン構造;
ノルボルナン構造、アダマンタン構造、トリシクロデカン構造、テトラシクロドデカン構造等の多環のシクロアルカン構造等が挙げられる。
【0067】
構造単位(II)としては、下記式(2−1)〜(2−6)で表される構造単位(以下、「構造単位(II−1)〜(II−6)」ともいう)が好ましい。
【0069】
上記式(2−1)〜(2−6)中、R
6〜R
9は、上記式(2)と同義である。h、i及びjは、それぞれ独立して、1〜4の整数である。
【0070】
構造単位(II−1)〜(II−6)としては、例えば、下記式で表される構造単位等が挙げられる。
【0073】
上記式中、R
6は、上記式(2)と同義である。
【0074】
構造単位(II)としては、構造単位(II−1)、構造単位(II−2)、構造単位(II−5)が好ましく、1−アルキル−1−シクロペンチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位、2−アルキル−2−アダマンチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位、3−(t−アルキルオキシカルボニルオキシ)アダマンチル−1−イル(メタ)アクリレートに由来する構造単位が好ましい。
【0075】
構造単位(II)の含有割合としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、10モル%〜80モル%が好ましく、20モル%〜75モル%がより好ましく、30モル%〜70モル%がさらに好ましく、40モル%〜65モル%が特に好ましい。上記含有割合を上記範囲とすることで、当該フォトレジスト組成物の感度及び解像性がより向上し、結果として、EL性能、LWR性能及びCDU性能が向上する。上記含有割合が上記下限未満だと、当該フォトレジスト組成物のパターン形成性が低下する場合がある。上記含有割合が上記上限を超えると、レジストパターンの基板への密着性が低下する場合がある。
【0076】
[構造単位(III)]
構造単位(III)は、構造単位(I)以外の構造単位であってラクトン構造、環状カーボネート構造及びスルトン構造からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む構造単位である。[A]重合体は、構造単位(I)に加えて、構造単位(III)をさらに有することで、現像液への溶解性をさらに調整することができ、その結果、当該フォトレジスト組成物のEL性能、LWR性能及びCDU性能を向上させることができる。また、当該フォトレジスト組成物から形成されるレジストパターンと基板との密着性を向上させることができる。
【0077】
構造単位(III)としては、例えば、下記式で表される構造単位等が挙げられる。
【0082】
上記式中、R
L1は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
【0083】
構造単位(III)としては、これらの中で、ノルボルナンラクトン構造を含む構造単位、γ−ブチロラクトン構造を含む構造単位、エチレンカーボネート構造を含む構造単位、ノルボルナンスルトン構造を含む構造単位が好ましい。
【0084】
構造単位(III)の含有割合としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、0モル%〜70モル%が好ましく、0モル%〜60モル%がより好ましく、20モル%〜55モル%がさらに好ましい。上記含有割合を上記範囲とすることで、当該フォトレジスト組成物から形成されるレジストパターンの基板への密着性をより向上させることができる。
【0085】
[その他の構造単位]
[A]重合体は、上記構造単位(I)〜(III)以外のその他の構造単位を有していてもよい。その他の構造単位としては、例えば、ヒドロキシ基を含む構造単位等が挙げられる。
【0086】
上記ヒドロキシ基を含む構造単位としては、例えば、下記式で表される構造単位等が挙げられる。
【0088】
上記式中、R
Bは水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
【0089】
上記ヒドロキシ基を含む構造単位の含有割合としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、30モル%以下が好ましく、20モル%以下が好ましく、3モル%〜15モル%がさらに好ましい。上記含有割合が上記上限を超えると、当該フォトレジスト組成物のパターン形成性が低下する場合がある。
【0090】
[A]重合体は、上記構造単位以外にもその他の構造単位を有してもよい。上記その他の構造単位の含有割合としては、20モル%以下が好ましく、10モル%以下がより好ましい。
【0091】
[A]重合体の含有量としては、当該フォトレジスト組成物の全固形分中、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、85質量%以上がさらに好ましい。
【0092】
<[A]重合体の合成方法>
[A]重合体は、例えば、各構造単位を与える単量体を、ラジカル重合開始剤等を用い、適当な溶媒中で重合することにより合成できる。
【0093】
上記ラジカル重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート等のアゾ系ラジカル開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の過酸化物系ラジカル開始剤等が挙げられる。これらの中で、AIBN、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレートが好ましく、AIBNがより好ましい。これらのラジカル開始剤は1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0094】
上記重合に使用される溶媒としては、例えば
n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン等のアルカン類;
シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン、ノルボルナン等のシクロアルカン類;
ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン等の芳香族炭化水素類;
クロロブタン類、ブロモヘキサン類、ジクロロエタン類、ヘキサメチレンジブロミド、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;
酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、プロピオン酸メチル等の飽和カルボン酸エステル類;
アセトン、メチルエチルケトン、4−メチル−2−ペンタノン、2−ヘプタノン等のケトン類;
テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン類、ジエトキシエタン類等のエーテル類;
メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、4−メチル−2−ペンタノール等のアルコール類等が挙げられる。これらの重合に使用される溶媒は、1種単独で又は2種以上を併用してもよい。
【0095】
上記重合における反応温度としては、通常40℃〜150℃、50℃〜120℃が好ましい。反応時間としては、通常1時間〜48時間、1時間〜24時間が好ましい。
【0096】
[A]重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は特に限定されないが、1,000以上50,000以下が好ましく、2,000以上30,000以下がより好ましく、3,000以上20,000以下がさらに好ましく、5,000以上15,000が特に好ましい。[A]重合体のMwを上記範囲とすることで、当該フォトレジスト組成物の塗布性及び現像欠陥抑制性が向上する。[A]重合体のMwが上記下限未満だと、十分な耐熱性を有するレジスト膜が得られない場合がある。[A]重合体のMwが上記上限を超えると、レジスト膜の現像性が低下する場合がある。
【0097】
[A]重合体のGPCによるポリスチレン換算数平均分子量(Mn)に対するMwの比(Mw/Mn)は、通常、1以上5以下であり、1以上3以下が好ましく、1以上2以下がさらに好ましい。
【0098】
本明細書における重合体のMw及びMnは、以下の条件によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定される値である。
GPCカラム:G2000HXL 2本、G3000HXL 1本、G4000HXL 1本(以上、東ソー製)
カラム温度:40℃
溶出溶媒:テトラヒドロフラン(和光純薬工業製)
流速:1.0mL/分
試料濃度:1.0質量%
試料注入量:100μL
検出器:示差屈折計
標準物質:単分散ポリスチレン
【0099】
<[B]酸発生体>
[B]酸発生体は、露光により酸を発生する物質である。この発生した酸により[A]重合体等が有する酸解離性基が解離してカルボキシ基等が生じ、[A]重合体の有機溶媒を含有する現像液への溶解性が低下するため、当該フォトレジスト組成物から、ネガ型のレジストパターンを形成することができる、当該フォトレジスト組成物における[B]酸発生体の含有形態としては、後述するような低分子化合物の形態(以下、適宜「[B]酸発生剤」ともいう)でも、重合体の一部として組み込まれた酸発生基の形態でも、これらの両方の形態でもよい。
【0100】
[B]酸発生剤としては、例えば、オニウム塩化合物、N−スルホニルオキシイミド化合物、ハロゲン含有化合物、ジアゾケトン化合物等が挙げられる。
【0101】
オニウム塩化合物としては、例えば、スルホニウム塩、テトラヒドロチオフェニウム塩、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ピリジニウム塩等が挙げられる。
【0102】
スルホニウム塩としては、例えばトリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1−ジフルオロエタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムカンファースルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムカンファースルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムカンファースルホネート、トリフェニルスルホニウム1,1,2,2−テトラフルオロ−6−(1−アダマンタンカルボニロキシ)−ヘキサン−1−スルホネート等が挙げられる。
【0103】
テトラヒドロチオフェニウム塩としては、例えば1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムカンファースルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムカンファースルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムカンファースルホネート等が挙げられる。
【0104】
ヨードニウム塩としては、例えばジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ジフェニルヨードニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムカンファースルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムカンファースルホネート等が挙げられる。
【0105】
N−スルホニルオキシイミド化合物としては、例えばN−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(ノナフルオロ−n−ブタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(パーフルオロ−n−オクタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−(3−テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]ドデカニル)−1,1−ジフルオロエタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(カンファースルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド等を挙げることができる。
【0106】
[B]酸発生剤としては、下記式(3)で表される化合物が好ましい。[B]酸発生剤が下記構造を有することで、[A]重合体の構造単位(I)との相互作用等により、露光により発生する酸のレジスト膜中の拡散長がより適度に短くなると考えられ、その結果、当該フォトレジスト組成物のEL性能、LWR性能及びCDU性能を向上させることができる。
【0108】
上記式(3)中、R
10は、環員数7以上の脂環構造を含む1価の基又は環員数7以上の脂肪族複素環構造を含む1価の基である。R
11は、炭素数1〜10のフッ素化アルカンジイル基である。X
+は、1価の光分解性オニウムカチオンである。
【0109】
R
10における「環員数」とは、脂環構造及び脂肪族複素環構造の環を構成する原子数をいい、多環の脂環構造及び多環の脂肪族複素環構造の場合は、この多環を構成する原子数をいう。
【0110】
上記R
10で表される環員数7以上の脂環構造を含む1価の基としては、例えば、
シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロドデシル基等の単環のシクロアルキル基;
シクロオクテニル基、シクロデセニル基等の単環のシクロアルケニル基;
ノルボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基等の多環のシクロアルキル基;
ノルボルネニル基、トリシクロデセニル基等の多環のシクロアルケニル基等が挙げられる。
【0111】
上記R
10で表される環員数7以上の脂肪族複素環構造を含む1価の基としては、例えば、
ノルボルナンラクトン−イル基等のラクトン構造を含む基;
ノルボルナンスルトン−イル基等のスルトン構造を含む基;
オキサシクロヘプチル基、オキサノルボルニル基等の酸素原子含有複素環基;
アザシクロヘプチル基、ジアザビシクロオクタン−イル基等の窒素原子含有複素環基;
チアシクロヘプチル基、チアノルボルニル基等のイオウ原子含有複素環基等が挙げられる。
【0112】
R
10で表される基の環員数しては、上述の酸の拡散長がさらに適度になる観点から、8以上が好ましく、9〜15がより好ましく、10〜13がさらに好ましい。
【0113】
R
10としては、これらの中で、環員数9以上の脂環構造を含む1価の基、環員数9以上の脂肪族複素環構造を含む1価の基が好ましく、アダマンチル基、ヒドロキシアダマンチル基、ノルボルナンラクトン−イル基、5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.3.1.1
3,8]ウンデカン−イル基がより好ましく、アダマンチル基がさらに好ましい。
【0114】
上記R
11で表される炭素数1〜10のフッ素化アルカンジイル基としては、例えば、メタンジイル基、エタンジイル基、プロパンジイル基等の炭素数1〜10のアルカンジイル基が有する水素原子の1個以上をフッ素原子で置換した基等が挙げられる。
これらの中で、SO
3−基に隣接する炭素原子にフッ素原子が結合しているフッ素化アルカンジイル基が好ましく、SO
3−基に隣接する炭素原子に2個のフッ素原子が結合しているフッ素化アルカンジイル基がより好ましく、1,1−ジフルオロメタンジイル基、1,1−ジフルオロエタンジイル基、1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−1,2−プロパンジイル基、1,1,2,2−テトラフルオロエタンジイル基、1,1,2,2−テトラフルオロブタンジイル基、1,1,2,2−テトラフルオロヘキサンジイル基がさらに好ましい。
【0115】
上記X
+で表される1価の光分解性オニウムカチオンは、露光光の照射により分解するカチオンである。露光部では、この光分解性オニウムカチオンの分解により生成するプロトンと、スルホネートアニオンとからスルホン酸を生じる。上記X
+で表される1価の光分解性オニウムカチオンとしては、例えば、S、I、O、N、P、Cl、Br、F、As、Se、Sn、Sb、Te、Bi等の元素を含む放射線分解性オニウムカチオンが挙げられる。元素としてS(イオウ)を含むカチオンとしては、例えば、スルホニウムカチオン、テトラヒドロチオフェニウムカチオン等が挙げられ、元素としてI(ヨウ素)を含むカチオンとしては、ヨードニウムカチオン等が挙げられる。これらの中で、下記式(X−1)で表されるスルホニウムカチオン、下記式(X−2)で表されるテトラヒドロチオフェニウムカチオン、下記式(X−3)で表されるヨードニウムカチオンが好ましい。
【0117】
上記式(X−1)中、R
a1、R
a2及びR
a3は、それぞれ独立して、置換若しくは非置換の炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換若しくは非置換の炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、−OSO
2−R
P若しくは−SO
2−R
Qであるか、又はこれらの基のうちの2つ以上が互いに合わせられ構成される環構造を表す。R
P及びR
Qは、それぞれ独立して、置換若しくは非置換の炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換若しくは非置換の炭素数5〜25の脂環式炭化水素基又は置換若しくは非置換の炭素数6〜12の芳香族炭化水素基である。k1、k2及びk3は、それぞれ独立して0〜5の整数である。R
a1〜R
a3並びにR
P及びR
Qがそれぞれ複数の場合、複数のR
a1〜R
a3並びにR
P及びR
Qはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
上記式(X−2)中、R
b1は、置換若しくは非置換の炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は置換若しくは非置換の炭素数6〜8の芳香族炭化水素基である。k4は0〜7の整数である。R
b1が複数の場合、複数のR
b1は同一でも異なっていてもよく、また、複数のR
b1は、互いに合わせられ構成される環構造を表してもよい。R
b2は、置換若しくは非置換の炭素数1〜7の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は置換若しくは非置換の炭素数6若しくは7の芳香族炭化水素基である。k5は、0〜6の整数である。R
b2が複数の場合、複数のR
b2は同一でも異なっていてもよく、また、複数のR
b2は互いに合わせられ構成される環構造を表してもよい。tは、0〜3の整数である。
上記式(X−3)中、R
c1及びR
c2は、それぞれ独立して、置換若しくは非置換の炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換若しくは非置換の炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、−OSO
2−R
R若しくは−SO
2−R
Sであるか、又はこれらの基のうちの2つ以上が互いに合わせられ構成される環構造を表す。R
R及びR
Sは、それぞれ独立して、置換若しくは非置換の炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換若しくは非置換の炭素数5〜25の脂環式炭化水素基又は置換若しくは非置換の炭素数6〜12の芳香族炭化水素基である。k6及びk7は、それぞれ独立して0〜5の整数である。R
c1、R
c2、R
R及びR
Sがそれぞれ複数の場合、複数のR
c1、R
c2、R
R及びR
Sはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0118】
上記R
a1〜R
a3、R
b1、R
b2、R
c1及びR
c2で表される非置換の直鎖状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基等が挙げられる。
上記R
a1〜R
a3、R
b1、R
b2、R
c1及びR
c2で表される非置換の分岐状のアルキル基としては、例えば、i−プロピル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等が挙げられる。
上記R
a1〜R
a3、R
c1及びR
c2で表される非置換の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等が挙げられる。
上記R
b1及びR
b2で表される非置換の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基、ベンジル基等が挙げられる。
【0119】
上記アルキル基及び芳香族炭化水素基が有する水素原子を置換していてもよい置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルオキシ基、アシル基、アシロキシ基等が挙げられる。
これらの中で、ハロゲン原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
【0120】
上記R
a1〜R
a3、R
b1、R
b2、R
c1及びR
c2としては、非置換の直鎖状又は分岐状のアルキル基、フッ素化アルキル基、非置換の1価の芳香族炭化水素基、−OSO
2−R”、−SO
2−R”が好ましく、フッ素化アルキル基、非置換の1価の芳香族炭化水素基がより好ましく、フッ素化アルキル基がさらに好ましい。R”は、非置換の1価の脂環式炭化水素基又は非置換の1価の芳香族炭化水素基である。
【0121】
上記式(X−1)におけるk1、k2及びk3としては、0〜2の整数が好ましく、0又は1がより好ましく、0がさらに好ましい。
上記式(X−2)におけるk4としては、0〜2の整数が好ましく、0又は1がより好ましく、1がさらに好ましい。k5としては、0〜2の整数が好ましく、0又は1がより好ましく、0がさらに好ましい。
上記式(X−3)におけるk6及びk7としては、0〜2の整数が好ましく、0又は1がより好ましく、0がさらに好ましい。
【0122】
上記式(3)で表される酸発生剤としては、例えば、下記式(3−1)〜(3−11)で表される化合物(以下、「化合物(3−1)〜(3−11)」ともいう)等が挙げられる。
【0124】
[B]酸発生剤としては、これらの中で、オニウム塩化合物が好ましく、スルホニウム塩がより好ましく、アダマンタン構造を含むアニオンを有するスルホニウム塩がさらに好ましく、化合物(3−2)、化合物(3−3)、化合物(3−11)がさらに好ましい。
【0125】
[B]酸発生体の含有量としては、[B]酸発生体が[B]酸発生剤の場合、当該フォトレジスト組成物の感度及び現像性を確保する観点から、[A]重合体100質量部に対して、0.1質量部以上30質量部以下が好ましく、0.5質量部以上20質量部以下がより好ましく、1質量部以上15質量部以下がさらに好ましく、3質量部以上15質量部が特に好ましい。[B]酸発生剤の含有量を上記範囲とすることで、当該フォトレジスト組成物の感度及び現像性が向上する。[B]酸発生体は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0126】
<[C]酸拡散制御体>
当該フォトレジスト組成物は、必要に応じて、[C]酸拡散制御体を含有してもよい。
[C]酸拡散制御体は、露光により[B]酸発生体から生じる酸のレジスト膜中における拡散現象を制御し、非露光領域における好ましくない化学反応を抑制する効果を奏し、得られるフォトレジスト組成物の貯蔵安定性がさらに向上し、またレジストとしての解像度がさらに向上すると共に、露光から現像処理までの引き置き時間の変動によるレジストパターンの線幅変化を抑えることができ、プロセス安定性に優れたフォトレジスト組成物が得られる。[C]酸拡散制御体の当該フォトレジスト組成物における含有形態としては、遊離の化合物(以下、適宜「[C]酸拡散制御剤」という)の形態でも、重合体の一部として組み込まれた形態でも、これらの両方の形態でもよい。
【0127】
[C]酸拡散制御剤としては、例えば、下記式(4)で表される化合物(以下、「含窒素化合物(I)」ともいう)、同一分子内に窒素原子を2個有する化合物(以下、「含窒素化合物(II)」ともいう)、窒素原子を3個有する化合物(以下、「含窒素化合物(III)」ともいう)、アミド基含有化合物、ウレア化合物、含窒素複素環化合物等が挙げられる。
【0129】
上記式(4)中、R
12、R
13及びR
14は、それぞれ独立して、水素原子、置換されていてもよい直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、アリール基又はアラルキル基である。
【0130】
含窒素化合物(I)としては、例えば、n−ヘキシルアミン等のモノアルキルアミン類;ジ−n−ブチルアミン等のジアルキルアミン類;トリエチルアミン等のトリアルキルアミン類;アニリン等の芳香族アミン類等が挙げられる。
【0131】
含窒素化合物(II)としては、例えば、エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン等が挙げられる。
【0132】
含窒素化合物(III)としては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン等のポリアミン化合物;ジメチルアミノエチルアクリルアミド等の重合体等が挙げられる。
【0133】
アミド基含有化合物としては、例えば、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、ベンズアミド、ピロリドン、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
【0134】
ウレア化合物としては、例えば、尿素、メチルウレア、1,1−ジメチルウレア、1,3−ジメチルウレア、1,1,3,3−テトラメチルウレア、1,3−ジフェニルウレア、トリブチルチオウレア等が挙げられる。
【0135】
含窒素複素環化合物としては、例えば、ピリジン、2−メチルピリジン等のピリジン類;N−プロピルモルホリン、N−(ウンデシルカルボニルオキシエチル)モルホリン等のモルホリン類;ピラジン、ピラゾール等が挙げられる。
【0136】
また上記含窒素有機化合物として、酸解離性基を有する化合物を用いることもできる。このような酸解離性基を有する含窒素有機化合物としては、例えば、N−t−ブトキシカルボニルピペリジン、N−t−ブトキシカルボニルイミダゾール、N−t−ブトキシカルボニルベンズイミダゾール、N−t−ブトキシカルボニル−2−フェニルベンズイミダゾール、N−(t−ブトキシカルボニル)ジ−n−オクチルアミン、N−(t−ブトキシカルボニル)ジエタノールアミン、N−(t−ブトキシカルボニル)ジシクロヘキシルアミン、N−(t−ブトキシカルボニル)ジフェニルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジン、N−t−アミルオキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジン等が挙げられる。
【0137】
また、[C]酸拡散制御剤として、露光により感光し弱酸を発生する光崩壊性塩基を用いることもできる。光崩壊性塩基としては、例えば、露光により分解して酸拡散制御性を失うオニウム塩化合物等が挙げられる。オニウム塩化合物としては、例えば、下記式(5−1)で表されるスルホニウム塩化合物、下記式(5−2)で表されるヨードニウム塩化合物等が挙げられる。
【0139】
上記式(5−1)及び式(5−2)中、R
15〜R
19は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基又はハロゲン原子である。E
−及びQ
−は、それぞれ独立して、OH
−、R
β−COO
−、R
β−SO
3−又は下記式(5−3)で表されるアニオンである。但し、R
βは、アルキル基、アリール基又はアラルキル基である。
【0141】
上記式(5−3)中、R
20は、水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基である。uは、0〜2の整数である。
【0142】
上記光崩壊性塩基としては、例えば、下記式で表される化合物等が挙げられる。
【0144】
上記光崩壊性塩基としては、これらの中で、スルホニウム塩が好ましく、トリアリールスルホニウム塩がより好ましく、トリフェニルスルホニウムサリチレート、トリフェニルスルホニウム10−カンファースルホネートがさらに好ましく、トリフェニルスルホニウム10−カンファースルホネートが特に好ましい。
【0145】
[C]酸拡散制御体の含有量としては、[C]酸拡散制御体が[C]酸拡散制御剤である場合、[A]重合体100質量部に対して、0〜20質量部が好ましく、0.1質量部〜15質量部がより好ましく、0.3質量部〜10質量部がさらに好ましく、0.5質量部〜5質量部が特に好ましい。[C]酸拡散制御剤の含有量が上記上限を超えると、当該フォトレジスト組成物の感度が低下する場合がある。
【0146】
<[D]重合体>
[D]重合体は、フッ素原子含有重合体である([A]重合体に該当するものを除く)。当該フォトレジスト組成物が、[D]重合体を含有することで、レジスト膜を形成した際に、膜中の含フッ素重合体の撥油性的特徴により、その分布がレジスト膜表面近傍で偏在化する傾向があり、液浸露光時における酸発生剤や酸拡散制御剤等が液浸媒体に溶出することを抑制することができる。また、この[D]重合体の撥水性的特徴により、レジスト被膜と液浸媒体との前進接触角が所望の範囲に制御でき、バブル欠陥の発生を抑制できる。さらに、レジスト膜と液浸媒体との後退接触角が高くなり、水滴が残らずに高速でのスキャン露光が可能となる。このように当該フォトレジスト組成物が[D]重合体を含有することにより、液浸露光法に好適なレジスト被膜を形成することができる。
【0147】
[D]重合体としては、フッ素原子を有する重合体である限り、特に限定されないが、当該フォトレジスト組成物中の[A]重合体よりも、フッ素原子含有率(質量%)が高いことが好ましい。[A]重合体よりもフッ素原子含有率が高いことで、上述の偏在化の度合いがより高くなり、得られるレジスト膜の撥水性及び溶出抑制性等の特性が向上する。
【0148】
[D]重合体のフッ素原子含有率としては、1質量%以上が好ましく、2質量%〜60質量%がより好ましく、4質量%〜40質量%がさらに好ましく、7質量%〜30質量%が特に好ましい。[D]重合体のフッ素原子含有率が上記下限未満だと、レジスト膜表面の疎水性が低下する場合がある。なお重合体のフッ素原子含有率(質量%)は、
13C−NMRスペクトル測定により重合体の構造を求め、その構造から算出することができる。
【0149】
[D]重合体としては、下記構造単位(Da)及び構造単位(Db)からなる群より選ばれる少なくとも1種を有することが好ましい。[D]重合体は、構造単位(Da)及び構造単位(Db)をそれぞれ1種又は2種以上有していてもよい。
【0150】
[構造単位(Da)]
構造単位(Da)は、下記式(6a)で表される構造単位である。[D]重合体は、構造単位(Da)を有することでフッ素原子含有率を調整することができる。
【0152】
上記式(6a)中、R
Dは、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Gは、単結合、酸素原子、硫黄原子、−CO−O−、−SO
2−O−NH−、−CO−NH−又は−O−CO−NH−である。R
Eは、少なくとも1個のフッ素原子を有する炭素数1〜6の1価の鎖状炭化水素基又は少なくとも1個のフッ素原子を有する炭素数4〜20の1価の脂肪族環状炭化水素基である。
【0153】
上記R
Eで表される少なくとも1個のフッ素原子を有する炭素数1〜6の鎖状炭化水素基としては、例えば、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、パーフルオロエチル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル基、パーフルオロn−プロピル基、パーフルオロi−プロピル基、パーフルオロn−ブチル基、パーフルオロi−ブチル基、パーフルオロt−ブチル基、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基等が挙げられる。
【0154】
上記R
Eで表される少なくとも1個のフッ素原子を有する炭素数4〜20の脂肪族環状炭化水素基としては、例えば、モノフルオロシクロペンチル基、ジフルオロシクロペンチル基、パーフルオロシクロペンチル基、モノフルオロシクロヘキシル基、ジフルオロシクロペンチル基、パーフルオロシクロヘキシルメチル基、フルオロノルボルニル基、フルオロアダマンチル基、フルオロボルニル基、フルオロイソボルニル基、フルオロトリシクロデシル基、フルオロテトラシクロデシル基等が挙げられる。
【0155】
上記構造単位(Da)を与える単量体としては、例えば、トリフルオロメチル(メタ)アクリル酸エステル、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリル酸エステル、2,2,2−トリフルオロエチルオキシカルボニルメチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロエチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロn−プロピル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロi−プロピル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロn−ブチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロi−ブチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロt−ブチル(メタ)アクリル酸エステル、2−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル)(メタ)アクリル酸エステル、1−(2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル)(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロシクロヘキシルメチル(メタ)アクリル酸エステル、1−(2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル)(メタ)アクリル酸エステル、モノフルオロシクロペンチル(メタ)アクリル酸エステル、ジフルオロシクロペンチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロシクロペンチル(メタ)アクリル酸エステル、モノフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリル酸エステル、ジフルオロシクロペンチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロシクロヘキシルメチル(メタ)アクリル酸エステル、フルオロノルボルニル(メタ)アクリル酸エステル、フルオロアダマンチル(メタ)アクリル酸エステル、フルオロボルニル(メタ)アクリル酸エステル、フルオロイソボルニル(メタ)アクリル酸エステル、フルオロトリシクロデシル(メタ)アクリル酸エステル、フルオロテトラシクロデシル(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
これらの中で、2,2,2−トリフルオロエチルオキシカルボニルメチル(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。
【0156】
構造単位(Da)の含有割合としては、[D]重合体を構成する全構造単位に対して、5モル%〜95モル%が好ましく、10モル%〜90モル%がより好ましく、30モル%〜85モル%がさらに好ましい。このような含有割合にすることによって液浸露光時においてレジスト膜表面のより高い動的接触角を発現させることができる。
【0157】
[構造単位(Db)]
構造単位(Db)は、下記式(6b)で表される構造単位である。[D]重合体は、構造単位(Db)を有することで疎水性が上がるため、当該フォトレジスト組成物から形成されたレジスト膜表面の動的接触角をさらに向上させることができる。
【0159】
上記式(6b)中、R
Fは、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R
21は、炭素数1〜20の(s+1)価の炭化水素基であり、R
21のR
22側の末端に酸素原子、硫黄原子、−NR’−、カルボニル基、−CO−O−又は−CO−NH−が結合された構造のものも含む。R’は、水素原子又は1価の有機基である。R
22は、単結合、炭素数1〜10の2価の鎖状炭化水素基又は炭素数4〜20の2価の脂肪族環状炭化水素基である。X
2は、少なくとも1個のフッ素原子を有する炭素数1〜20の2価の鎖状炭化水素基である。A
1は、酸素原子、−NR”−、−CO−O−*又は−SO
2−O−*である。R”は、水素原子又は1価の有機基である。*は、R
21に結合する結合部位を示す。R
23は、水素原子又は1価の有機基である。sは、1〜3の整数である。但し、sが2又は3の場合、複数のR
22、X
2、A
1及びR
23はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0160】
上記R
23が水素原子である場合には、[D]重合体のアルカリ現像液に対する溶解性を向上させることができる点で好ましい。
【0161】
上記R
23で表される1価の有機基としては、例えば、酸解離性基、アルカリ解離性基又は置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基等が挙げられる。
【0162】
上記構造単位(Db)としては、例えば、下記式(6b−1)〜(6b−3)で表される構造単位等が挙げられる。
【0164】
上記式(6b−1)〜(6b−3)中、R
21’は、炭素数1〜20の2価の直鎖状、分岐状若しくは環状の飽和若しくは不飽和の炭化水素基である。R
F、X
2、R
23及びsは、上記式(6b)と同義である。sが2又は3である場合、複数のX
2及びR
23はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0165】
上記構造単位(6b)の含有割合としては、[D]重合体を構成する全構造単位に対して、0モル%〜90モル%が好ましく、5モル%〜85モル%がより好ましく、10モル%〜80モル%がさらに好ましい。このような含有割合にすることによって、当該フォトレジスト組成物から形成されたレジスト膜表面は、アルカリ現像において動的接触角の低下度を向上させることができる。
【0166】
[構造単位(Dc)]
[D]重合体は、上記構造単位(Da)及び(Db)以外にも、酸解離性基を含む構造単位(以下、「構造単位(Dc)」ともいう。)を有してもよい(但し、構造単位(Db)に該当するものを除く)。[D]重合体が構造単位(Dc)を有することで、得られるレジストパターンの形状がより良好になる。構造単位(Dc)としては、上述した[A]重合体における構造単位(II)等が挙げられる。
【0167】
上記構造単位(Dc)の含有割合としては、[D]重合体を構成する全構造単位に対し、5モル%〜90モル%が好ましく、10モル%〜70モル%がより好ましく、15モル%〜60モル%がさらに好ましく、15モル%〜50モル%が特に好ましい。構造単位(Dc)の含有割合が上記下限未満だと、レジストパターンにおける現像欠陥の発生を十分に抑制できない場合がある。構造単位(Dc)の含有割合が上記上限を超えると、得られるレジスト膜表面の疎水性が低下する場合がある。
【0168】
[他の構造単位]
また、[D]重合体は、上記構造単位以外にも、例えば、アルカリ可溶性基を含む構造単位、ラクトン構造、環状カーボネート構造及びスルトン構造からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を含む構造単位、脂環式基を含む構造単位等の他の構造単位を有していてもよい。上記アルカリ可溶性基としては、例えば、カルボキシ基、スルホンアミド基、スルホ基等が挙げられる。ラクトン構造、環状カーボネート構造及びスルトン構造からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を有する構造単位としては、上述した[A]重合体における構造単位(III)等が挙げられる。
【0169】
上記他の構造単位の含有割合としては、[D]重合体を構成する全構造単位に対して、通常、30モル%以下であり、20モル%以下が好ましい。上記他の構造単位の含有割合が上記上限を超えると、当該フォトレジスト組成物のパターン形成性が低下する場合がある。
【0170】
当該フォトレジスト組成物における[D]重合体の含有量としては、[A]重合体の100質量部に対して、0〜20質量部が好ましく、0.5質量部〜15質量部がより好ましく、1質量部〜10質量部がさらに好ましい。[D]重合体の含有量が上記上限を超えると、当該フォトレジスト組成物のパターン形成性が低下する場合がある。
【0171】
<[E]溶媒>
当該フォトレジスト組成物は、通常、[E]溶媒を含有する。[E]溶媒は、少なくとも[A]重合体、[B]酸発生体及び所望により含有される[C]酸拡散制御体等を溶解又は分散可能な溶媒であれば特に限定されない。
【0172】
[E]溶媒としては、例えば、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系有機溶媒、アミド系溶媒、エステル系有機溶媒、炭化水素系溶媒等が挙げられる。
【0173】
アルコール系溶媒としては、例えば、
メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、iso−ペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、tert−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、3−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、2,6−ジメチル−4−ヘプタノール、n−デカノール、sec−ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec−テトラデシルアルコール、sec−ヘプタデシルアルコール、フルフリルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール等のモノアルコール系溶媒;
エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2,4−ヘプタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等の多価アルコール系溶媒;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等の多価アルコール部分エーテル系溶媒等が挙げられる。
【0174】
エーテル系溶媒としては、例えば、
ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のジアルキルエーテル系溶媒;
テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等の環状エーテル系溶媒;
ジフェニルエーテル、アニソール(メチルフェニルエーテル)等の芳香環含有エーテル系溶媒等が挙げられる。
【0175】
ケトン系溶媒としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル−iso−ブチルケトン、2−ヘプタノン(メチル−n−ペンチルケトン)、エチル−n−ブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジ−iso−ブチルケトン、トリメチルノナノン等の鎖状ケトン系溶媒:
シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、メチルシクロヘキサノン等の環状ケトン系溶媒:
2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、アセトフェノン等が挙げられる。
【0176】
アミド系溶媒としては、例えばN,N’−ジメチルイミダゾリジノン、N−メチルピロリドン等の環状アミド系溶媒;
N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド等の鎖状アミド系溶媒等が挙げられる。
【0177】
エステル系溶媒としては、例えば、
酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸iso−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸i−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n−ノニル等の酢酸エステル系溶媒;
エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の多価アルコール部分エーテルアセテート系溶媒;
γ−ブチロラクトン、バレロラクトン等のラクトン系溶媒;
ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒;
ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸iso−アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチルなどが挙げられる。
【0178】
炭化水素系溶媒としては、例えば
n−ペンタン、iso−ペンタン、n−ヘキサン、iso−ヘキサン、n−ヘプタン、iso−ヘプタン、2,2,4−トリメチルペンタン、n−オクタン、iso−オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;
ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、iso−プロピルベンゼン、ジエチルベンゼン、iso−ブチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ジ−iso−プロピルベンセン、n−アミルナフタレン等の芳香族炭化水素系溶媒等が挙げられる。
【0179】
これらの中で、エステル系溶媒、ケトン系溶媒が好ましく、多価アルコール部分エーテルアセテート系溶媒、環状ケトン系溶媒、ラクトン系溶媒がより好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトンがさらに好ましい。当該フォトレジスト組成物は、[E]溶媒を1種又は2種以上含有していてもよい。
【0180】
<その他の任意成分>
当該フォトレジスト組成物は、上記[A]〜[E]以外にも、その他の任意成分を含有していてもよい。上記その他の任意成分としては、例えば、界面活性剤、脂環式骨格含有化合物、増感剤等が挙げられる。これらのその他の任意成分は、それぞれ1種又は2種以上を併用してもよい。
【0181】
(界面活性剤)
界面活性剤は、塗布性、ストリエーション、現像性等を改良する効果を奏する。界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンn−オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンn−ノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のノニオン系界面活性剤;市販品としては、KP341(信越化学工業製)、ポリフローNo.75、同No.95(以上、共栄社化学製)、エフトップEF301、同EF303、同EF352(以上、トーケムプロダクツ製)、メガファックF171、同F173(以上、DIC製)、フロラードFC430、同FC431(以上、住友スリーエム製)、アサヒガードAG710、サーフロンS−382、同SC−101、同SC−102、同SC−103、同SC−104、同SC−105、同SC−106(以上、旭硝子工業製)等が挙げられる。当該フォトレジスト組成物における界面活性剤の含有量としては、[A]重合体100質量部に対して通常2質量部以下である。
【0182】
(脂環式骨格含有化合物)
脂環式骨格含有化合物は、ドライエッチング耐性、パターン形状、基板との接着性等を改善する効果を奏する。
【0183】
脂環式骨格含有化合物としては、例えば
1−アダマンタンカルボン酸、2−アダマンタノン、1−アダマンタンカルボン酸t−ブチル等のアダマンタン誘導体類;
デオキシコール酸t−ブチル、デオキシコール酸t−ブトキシカルボニルメチル、デオキシコール酸2−エトキシエチル等のデオキシコール酸エステル類;
リトコール酸t−ブチル、リトコール酸t−ブトキシカルボニルメチル、リトコール酸2−エトキシエチル等のリトコール酸エステル類;
3−〔2−ヒドロキシ−2,2−ビス(トリフルオロメチル)エチル〕テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]ドデカン、2−ヒドロキシ−9−メトキシカルボニル−5−オキソ−4−オキサ−トリシクロ[4.2.1.0
3,7]ノナン等が挙げられる。当該フォトレジスト組成物における脂環式骨格含有化合物の含有量としては、[A]重合体100質量部に対して通常5質量部以下である。
【0184】
(増感剤)
増感剤は、[B]酸発生剤等からの酸の生成量を増加する作用を示すものであり、当該フォトレジスト組成物の「みかけの感度」を向上させる効果を奏する。
【0185】
増感剤としては、例えばカルバゾール類、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ナフタレン類、フェノール類、ビアセチル、エオシン、ローズベンガル、ピレン類、アントラセン類、フェノチアジン類等が挙げられる。これらの増感剤は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。当該フォトレジスト組成物における増感剤の含有量としては、[A]重合体100質量部に対して通常2質量部以下である。
【0186】
<フォトレジスト組成物の調製方法>
当該フォトレジスト組成物は、例えば、[A]重合体、[B]酸発生体、[C]酸拡散制御剤、必要に応じて含有される任意成分及び[E]溶媒を所定の割合で混合することにより調製できる。当該フォトレジスト組成物は、混合後に、例えば、孔径0.2μm程度のフィルター等でろ過することが好ましい。当該フォトレジスト組成物の固形分濃度としては、通常0.1質量%〜50質量%であり、0.5質量%〜30質量%が好ましく、1質量%〜20質量%がより好ましい。
【0187】
当該フォトレジスト組成物は、アルカリ現像液を用いるポジ型パターン形成用にも、有機溶媒を含有する現像液を用いるネガ型パターン形成用にも用いることができる。これらのうち、有機溶媒を含有する現像液を用いるネガ型パターン形成に用いる場合、当該フォトレジスト組成物は、より高いEL性能を発揮することができる。
【0188】
<レジストパターン形成方法>
当該レジストパターン形成方法は、
当該フォトレジスト組成物を用い、レジスト膜を形成する工程(以下、「レジスト膜形成工程」ともいう)、
上記レジスト膜を露光する工程(以下、「露光工程」ともいう)、及び
上記露光されたレジスト膜を現像する工程(以下、「現像工程」ともいう)
を有する。
【0189】
また、上記レジスト膜形成工程で、有機溶媒を含有する現像液を用いるネガ型パターン形成用のフォトレジスト組成物を用い、
上記現像工程の現像液が有機溶媒を含有することが好ましい。
【0190】
当該レジストパターン形成方法によれば、上述した当該フォトレジスト組成物を用いているので、広いELを発揮しつつ、LWR及びCDUが小さいレジストパターンを形成することができる。以下、各工程について説明する。
【0191】
[レジスト膜形成工程]
本工程では、当該フォトレジスト組成物を用い、レジスト膜を形成する。このレジスト膜を形成する基板としては、例えばシリコンウェハ、二酸化シリコン、アルミニウムで被覆されたウェハ等の従来公知のもの等が挙げられる。また、例えば特公平6−12452号公報や特開昭59−93448号公報等に開示されている有機系又は無機系の反射防止膜を基板上に形成してもよい。塗布方法としては、例えば、回転塗布(スピンコーティング)、流延塗布、ロール塗布等が挙げられる。塗布した後に、必要に応じて、塗膜中の溶媒を揮発させるため、プレベーク(PB)を行ってもよい。PB温度としては、通常60℃〜140℃であり、80℃〜120℃が好ましい。PB時間としては、通常5秒〜600秒であり、10秒〜300秒が好ましい。形成されるレジスト膜の膜厚としては、10nm〜1,000nmが好ましく、10nm〜500nmがより好ましい。
【0192】
環境雰囲気中に含まれる塩基性不純物等の影響を防止するために、例えば特開平5−188598号公報等に開示されている保護膜をレジスト膜上に設けることもできる。さらに、レジスト膜からの酸発生体等の流出を防止するために、例えば特開2005−352384号公報等に開示されている液浸用保護膜をレジスト膜上に設けることもできる。なお、これらの技術は併用できる。
【0193】
[露光工程]
本工程では、上記レジスト膜形成工程で形成されたレジスト膜に、フォトマスクを介して(場合によっては、水等の液浸媒体を介して)露光光を照射し、露光する。露光光としては、目的とするパターンの線幅に応じて、例えば、可視光線、紫外線、遠紫外線、極端紫外線(13.5nm、EUV)、X線、γ線等の電磁波;電子線、α線等の荷電粒子線などが挙げられる。これらの中でも、遠紫外線、EUV、電子線が好ましく、ArFエキシマレーザー光(波長193nm)、KrFエキシマレーザー光(波長248nm)、EUV、電子線がより好ましく、ArFエキシマレーザー光、EUV、電子線がさらに好ましい。
【0194】
露光を液浸露光により行う場合、用いる液浸液としては、例えば、水、フッ素系不活性液体等が挙げられる。液浸液は、露光波長に対して透明であり、かつ膜上に投影される光学像の歪みを最小限に留めるよう屈折率の温度係数ができる限り小さい液体が好ましいが、特に露光光源がArFエキシマレーザー光(波長193nm)である場合、上述の観点に加えて、入手の容易さ、取り扱いのし易さといった点から水を用いるのが好ましい。水を用いる場合、水の表面張力を減少させるとともに、界面活性力を増大させる添加剤をわずかな割合で添加しても良い。この添加剤は、ウェハ上のレジスト膜を溶解させず、かつレンズの下面の光学コートに対する影響が無視できるものが好ましい。使用する水としては蒸留水が好ましい。
【0195】
上記露光の後、ポストエクスポージャーベーク(PEB)を行い、レジスト膜の露光された部分において、露光により[B]酸発生体から発生した酸による[A]重合体等が有する酸解離性基の解離を促進させることが好ましい。このPEBによって、露光部と未露光部とで現像液に対する溶解性に差が生じる。PEB温度としては、通常50℃〜180℃であり、80℃〜130℃が好ましい。PEB時間としては、通常5秒〜600秒であり、10秒〜300秒が好ましい。
【0196】
[現像工程]
本工程では、現像液を用い、露光工程で露光されたレジスト膜を現像する。これにより、所定のレジストパターンが形成される。上記現像液としては、例えば、アルカリ現像液、有機溶媒を含有する現像液等が挙げられる。
【0197】
上記アルカリ現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、けい酸ナトリウム、メタけい酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、エチルジメチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネン等のアルカリ性化合物の少なくとも1種を溶解したアルカリ性水溶液等が挙げられる。
【0198】
上記有機溶媒を含有する現像液に含有される有機溶媒としては、例えば、上述のフォトレジスト組成物の[E]溶媒として列挙した溶媒の1種又は2種以上等が挙げられる。これらの中でも、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒が好ましい。エーテル系溶媒としては、芳香族含有エーテル系溶媒が好ましく、アニソールがより好ましい。エステル系溶媒としては、酢酸エステル系溶媒が好ましく、酢酸n−ブチルがより好ましい。ケトン系溶媒としては、鎖状ケトン系溶媒が好ましく、2−ヘプタノンがより好ましい。
【0199】
現像液中の有機溶媒の含有量としては、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、99質量%以上が特に好ましい。現像液中の有機溶媒の含有量を上記範囲とすることで、露光部と未露光部とのコントラストを向上させることができ、その結果、より広いELを発揮しつつ、LWR及びCDUがより小さいレジストパターンを形成することができる。なお、有機溶媒以外の成分としては、例えば、水、シリコンオイル等が挙げられる。
【0200】
現像液には、必要に応じて界面活性剤を適当量添加することができる。界面活性剤としては例えば、イオン性や非イオン性のフッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤等を用いることができる。
【0201】
上記現像液として、有機溶媒を含有する現像液を用いることにより、より広いELを発揮しつつ、LWR及びCDUが小さいレジストパターンを形成することができる。
【0202】
現像方法としては、例えば現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止することで現像する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液塗出ノズルをスキャンしながら現像液を塗出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)等が挙げられる。
【0203】
上記現像後は、水、アルコール等のリンス液を用いてリンスした後、乾燥することが好ましい。上記リンスの方法としては、例えば一定速度で回転している基板上にリンス液を塗出しつづける方法(回転塗布法)、リンス液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面にリンス液を噴霧する方法(スプレー法)等が挙げられる。
【実施例】
【0204】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。各種物性値の測定方法を以下に示す。
【0205】
[Mw及びMn]
重合体のMw及びMnは、GPCにより、下記条件で測定した。
GPCカラム:G2000HXL 2本、G3000HXL 1本、G4000HXL 1本(以上、東ソー製)
カラム温度:40℃
溶出溶媒:テトラヒドロフラン(和光純薬工業製)
流速:1.0mL/分
試料濃度:1.0質量%
試料注入量:100μL
検出器:示差屈折計
標準物質:単分散ポリスチレン
【0206】
[
1H−NMR分析及び
13C−NMR分析]
化合物の
1H−NMR分析及び
13C−NMR分析、重合体の各構成単位含有割合及びフッ素原子含有率を求めるための
13C−NMR分析は、核磁気共鳴装置(JNM−ECX400、日本電子製)を使用して測定した。
【0207】
<化合物(i)の合成>
下記反応スキームに従い、下記式(M−1)〜(M−4)で表される化合物(i)をそれぞれ合成した。
【0208】
【化28】
【0209】
上記反応スキーム中、Rは、メチル基又はシクロヘキシル基である。R’は、メチル基、エチル基又はi−プロピル基である。
【0210】
[実施例1]
α−アセチル−γ−ブチロラクトン94.0g(734mmol)、炭酸カリウム112g(807mmol)、ヨードメタン125g(881mmol)及び溶媒としてのアセトン600gを2,000mLのナスフラスコに入れ、55℃で6時間撹拌した。次いで濾過によって無機塩を除去した。濃縮後、カラムクロマトグラフィで精製することによりメチル置換体を100g(収率96%)得た。
上記メチル体90.0g(633mmol)及び溶媒としてのメタノール600mLを2,000mLのナスフラスコに入れ、氷浴にて0℃に冷却した。そこへ、水素化ホウ素ナトリウム12.0g(317mmol)をメタノール60mLに溶解させた溶液を20分かけて滴下した。0℃のまま3時間撹拌した後、塩化アンモニウムを加えて反応を停止させた後、抽出洗浄した。濃縮後、カラムクロマトグラフィで精製することによりアルコール体を62.1g(収率68%)得た。
上記アルコール体16.5g(114mmol)、ジメチルアミノピリジン1.39g(11.4mmol)、トリエチルアミン17.4g(172mmol)及び溶媒としての脱水アセトニトリル100gを500mLナスフラスコに入れ、氷浴にて0℃に冷却した。そこへメタクリル酸クロライド12.5g(120mmol)を10分かけて滴下した。0℃から室温まで徐々に昇温しながら10時間撹拌した。水を加えて反応を停止させた後、抽出洗浄した。濃縮後、カラムクロマトグラフィで精製することにより下記式(M−1)で表されるメタクリル酸1−(α−メチル−γ−ブチロラクトン−イル)エタン−1−イルを20.3g(収率84%、純度>99%)得た。
【0211】
[実施例2]
実施例1において、ヨードメタンの代わりに、同モル数のヨードエタンを用いた以外は、実施例1と同様にして、下記式(M−2)で表されるメタクリル酸1−(α−エチル−γ−ブチロラクトン−イル)エタン−1−イルを21.2g(収率82%、純度>99%)得た。
【0212】
[実施例3]
実施例1において、ヨードメタンの代わりに、同モル数の2−ヨードプロパンを用いた以外は、実施例1と同様にして、下記式(M−3)で表されるメタクリル酸1−(α−イソプロピル−γ−ブチロラクトン−イル)エタン−1−イルを21.4g(収率78%、純度>99%)得た。
【0213】
[実施例4]
実施例1において、α−アセチル−γ−ブチロラクトンの代わりに、同モル数のα−シクロヘキシルカルボニル−γ−ブチロラクトンを用いた以外は実施例1と同様にして、下記式(M−4)で表されるメタクリル酸(α−メチル−γ−ブチロラクトン−イル)−シクロヘキシルメチルを24.0g(収率75%、純度>99%)得た。
【0214】
<重合体の合成>
[A]重合体及び[D]重合体の合成に用いた各単量体を以下に示す。
【0215】
【化29】
【0216】
[[A]重合体の合成]
[実施例5]
化合物(M−1)9.14g(40モル%)及び化合物(M−13)10.86g(60モル%)を2−ブタノン40gに溶解し、さらに、重合開始剤としての2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)0.88g(化合物の合計モル数に対して5モル%)を溶解させて単量体溶液を調製した。20gの2−ブタノンを入れた100mLの三口フラスコを30分窒素パージした後、攪拌しながら80℃に加熱し、上記調製した単量体溶液を滴下漏斗にて4時間かけて滴下した。滴下開始を重合反応の開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合反応終了後、重合反応液を水冷して30℃以下に冷却した。400gのメタノール中に、この冷却した重合反応液を投入し、析出した白色粉末をろ別した。このろ別した白色粉末を80gのメタノールで2回洗浄した後、ろ別し、60℃で17時間乾燥させて、白色粉末状の重合体(A−1)を得た(収量11.6g、収率58%)。重合体(A−1)のMwは8,800であり、Mw/Mnは1.45であった。
13C−NMR分析の結果、化合物(M−1)に由来する構造単位及び(M−13)に由来する構造単位の含有割合は、それぞれ42モル%及び58モル%であった。
【0217】
[実施例6〜13及び合成例1〜8]
下記表1に示す種類及び使用量の各単量体を用いた以外は、実施例5と同様にして、重合体(A−2)〜(A−9)及び重合体(a−1)〜(a−8)を合成した。なお、使用する単量体の合計質量は20.0gとした。表1中の「−」は、該当する化合物を用いなかったことを示す。得られた重合体の各構造単位の含有割合、収率(%)、Mw及びMw/Mn比を、表1に合わせて示す。
【0218】
【表1】
【0219】
[[D]重合体の合成]
[合成例9]
上記化合物(M−16)20.0gを20.0gの2−ブタノンに溶解し、さらに、重合開始剤としてのジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート1.25g(化合物に対して8モル%)を溶解させて単量体溶液を調製した。20gの2−ブタノンを入れた300mLの三口フラスコを30分窒素パージした後、攪拌しながら80℃に加熱し、上記調製した単量体溶液を滴下漏斗にて4時間かけて滴下した。滴下開始を重合反応の開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合反応終了後、重合反応液を水冷して30℃以下に冷却した。この重合反応液を500mL分液漏斗に移液した後、60gのn−ヘキサンを用いてこの重合反応液を均一に希釈し、240gのメタノールを投入して混合し、次いで、12gの蒸留水を投入してさらに攪拌した後30分静置した。その後、下層を回収し、溶媒置換を行うことにより、重合体(D−1)のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液とした(収率79%)。重合体(D−1)のMwは、6,100であり、Mw/Mnは1.52であった。
【0220】
<フォトレジスト組成物の調製>
フォトレジスト組成物の調製に用いた各成分を以下に示す。
【0221】
[[B]酸発生剤]
各構造式を下記に示す。
B−1:トリフェニルスルホニウム2−(アダマンタン−1−イルカルボニルオキシ)−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパン−1−スルホネート
B−2:トリフェニルスルホニウムアダマンタン−1−イルカルボニルオキシジフルオロメタンスルホネート
B−3:トリフェニルスルホニウム2−(アダマンタン−1−イル)−1,1−ジフルオロエタンスルホネート
【0222】
【化30】
【0223】
[[C]酸拡散制御剤]
各構造式を下記に示す。
C−1:トリフェニルスルホニウム10−カンファースルホネート
C−2:N−(ウンデカン−1−イルカルボニルオキシエチル)モルホリン
C−3:N−(t−アミルオキシカルボニル)−4−ヒドロキシピペリジン
【0224】
【化31】
【0225】
[[E]溶媒]
E−1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
E−2:シクロヘキサノン
E−3:γ−ブチロラクトン
【0226】
[実施例14]
[A]重合体としての(A−1)100質量部、[B]酸発生剤としての(B−1)8.5質量部、[C]酸拡散制御剤としての(C−1)1.9質量部、[D]重合体としての(D−1)3質量部、並びに[E]溶媒としての(E−1)2,214質量部、(E−2)949質量部及び(E−3)30質量部を混合し、フォトレジスト組成物(J−1)を調製した。
【0227】
[実施例15〜27及び比較例1〜9]
下記表2に示す種類及び含有量の各成分を用いた以外は実施例1と同様にして、フォトレジスト組成物(J−2)〜(J−14)及び(CJ−1)〜(CJ−9)を調製した。表2の「−」は、該当する成分を用いなかったことを示す。
【0228】
【表2】
【0229】
上記得られたフォトレジスト組成物について、下記方法に従ってレジストパターンを形成し、評価した。
ArF露光の場合は、アルカリ現像及び有機溶媒現像について、EUV露光の場合はアルカリ現像について、それぞれ評価した。
【0230】
<ArF露光:アルカリ現像>
<レジストパターンの形成>
[実施例28〜39及び比較例10〜17]
12インチのシリコンウェハ表面に、スピンコーター(CLEAN TRACK ACT12、東京エレクトロン製)を使用して、下層反射防止膜形成用組成物(ARC66、ブルワーサイエンス製)を塗布した後、205℃で60秒間加熱することにより膜厚105nmの下層反射防止膜を形成した。この下層反射防止膜上に、上記スピンコーターを使用して各フォトレジスト組成物を塗布し、100℃で60秒間PBを行った。その後23℃で30秒間冷却し、膜厚90nmのレジスト膜を形成した。次に、このレジスト膜を、ArFエキシマレーザー液浸露光装置(NSR−S610C、NIKON精機カンパニー製)を用い、NA=1.3、ダイポール(シグマ0.977/0.782)の光学条件にて、40nmラインアンドスペース(1L/1S)のレジストパターン形成用のマスクパターンを介して露光した。露光後、下記表3に示すPEB温度で60秒間PEBを行った。その後、2.38質量%TMAH水溶液を用い、23℃で30秒間パドル現像を行い、次いで、超純水を用いて7秒間リンスし、その後、2,000rpm、15秒間振り切りでスピンドライすることにより、40nmラインアンドスペース(1L/1S)のレジストパターンを形成した。
【0231】
<評価>
上記得られたレジストパターンについて、下記方法に従い評価を行った。評価結果を表3に示す。なお、レジストパターンの観察及び測長には走査型電子顕微鏡(CG−4000、日立ハイテクノロジーズ製)を用いた。
【0232】
[感度]
上記レジストパターンの形成において、40nmラインアンドスペース(1L/1S)のレジストパターンを形成する露光量を最適露光量(Eop)として求め、これを感度(mJ/cm
2)とした。感度は、40mJ/cm
2以下の場合は「良好」と、40mJ/cm
2を超える場合は「不良」と評価できる。
【0233】
[EL性能]
縮小投影露光後のラインパターンが40nmラインアンドスペース(1L/1S)となるようなマスクを介して露光し、形成されるラインパターンのライン幅が40nmの±10%以内となる場合の露光量の範囲の、最適露光量に対する割合をEL性能(露光余裕度)とした。EL性能は、15%以上の場合は「良好」と、15%未満の場合は「不良」と評価できる。
【0234】
[LWR性能]
上記、最適露光量にて解像した40nmラインアンドスペース(1L/1S)のラインパターンを、上記走査型電子顕微鏡を用い、パターン上部から観察した。そして、ライン幅を任意のポイントで計50点測定し、その測定ばらつきを3シグマとして算出した値をLWR性能(nm)とした。LWR性能は、その値が小さいほど、ラインのがたつきが小さく良好である。LWR性能は、3.5nm以下の場合は「良好」と、3.5nmを超える場合は「不良」と評価できる。
【0235】
[CDU性能]
上記、最適露光量にて解像した40nmラインアンドスペース(1L/1S)のラインパターンを、上記走査型電子顕微鏡を用い、パターン上部から観察した。400nmの範囲で線幅を20点測定し、その平均値を任意のポイントで計1,000点測定し、その測定バラつきを3シグマとして算出した値をCDU(nm)とした。CDU性能は、その値が小さいほど、長周期での線幅のばらつきが小さく良好である。CDU性能は、1.3nm以下の場合は「良好」と、1.3nmを超える場合は「不良」と評価できる。
【0236】
【表3】
【0237】
表3の結果から、ArF露光のアルカリ現像において、実施例のフォトレジスト組成物は、EL性能、LWR性能及びCDU性能の全てにおいて優れていることが分かる。一方、比較例のフォトレジスト組成物は、これらの性能が全て不十分であるか、又はこれらの性能の併立が困難であることも示された。
【0238】
<ArF露光:有機溶媒現像>
<レジストパターンの形成>
[実施例40〜48及び比較例18〜25]
12インチのシリコンウェハ表面に、スピンコーター(CLEAN TRACK ACT12、東京エレクトロン製)を使用して、下層反射防止膜形成用組成物(ARC66、ブルワーサイエンス製)を塗布した後、205℃で60秒間加熱することにより膜厚105nmの下層反射防止膜を形成した。この下層反射防止膜上に、上記スピンコーターを使用して各フォトレジスト組成物を塗布し、100℃で60秒間PBを行った。その後23℃で30秒間冷却し、膜厚90nmのレジスト膜を形成した。次に、このレジスト膜を、ArFエキシマレーザー液浸露光装置(NSR−S610C、NIKON精機カンパニー製)を用い、NA=1.3、ダイポール(シグマ0.977/0.782)の光学条件にて、40nmラインアンドスペース(1L/1S)のレジストパターン形成用のマスクパターンを介して露光した。露光後、下記表4に示すPEB温度で60秒間PEBを行った。その後、酢酸ブチルにてパドル現像(30秒間)し、4−メチル−2−ペンタノールでリンス(7秒間)した。その後、2,000rpm、15秒間振り切りでスピンドライすることにより、40nmラインアンドスペース(1L/1S)のレジストパターンを形成した。
【0239】
上記得られたレジストパターンについて、上記「アルカリ現像」の場合と同様の方法及び評価基準により評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0240】
【表4】
【0241】
表4の結果から、ArF露光の有機溶媒現像において、実施例のフォトレジスト組成物は、EL性能、LWR性能及びCDU性能の全てにおいて優れていることが分かる。一方、比較例のフォトレジスト組成物は、これらの性能が全て不十分であるか、又はこれらの性能の併立が困難であることも示された。また、表3の結果との比較により、有機溶媒現像の方が、アルカリ現像よりさらに広いELを発揮することができることが分かる。
【0242】
<EUV露光>
<レジストパターンの形成>
[実施例49及び比較例26]
12インチのシリコンウェハ表面に、下層反射防止膜形成用組成物を塗布した後、205℃で60秒間加熱することにより膜厚25nmの下層反射防止膜を形成した。この下層反射防止膜上に、下記表5に示す各フォトレジスト組成物を塗布し、100℃で60秒間PBを行った。その後23℃で30秒間冷却し、膜厚50nmのレジスト膜を形成した。次に、このレジスト膜を、EUV露光装置(NXE3100、ASML製)を用い、NA=0.25、ダイポールの光学条件にて、35nmラインアンドスペース(1L/1S)のレジストパターン形成用のマスクパターンを介して露光した。露光後、下記表5に示すPEB温度で60秒間PEBを行った。その後、2.38質量%TMAH水溶液を用い、23℃で30秒間パドル現像を行い、次いで、超純水を用いて7秒間リンスし、その後、2,000rpm、15秒間振り切りでスピンドライすることにより、35nmラインアンドスペース(1L/1S)のレジストパターンを形成した。
【0243】
上記得られたレジストパターンについて、下記方法により評価を行った。評価結果を表5に示す。レジストパターンの観察及び測長には走査型電子顕微鏡(CG−4000、日立ハイテクノロジーズ製)を用いた。
【0244】
<評価>
[感度]
上記レジストパターンの形成において、35nmラインアンドスペース(1L/1S)のレジストパターンを形成する露光量を最適露光量(Eop)として求め、これを感度(mJ/cm
2)とした。感度は、20mJ/cm
2以下の場合は「良好」と、20mJ/cm
2を超える場合は「不良」と評価できる。
【0245】
[解像性]
上記最適露光量において解像される最小のレジストパターンの寸法を解像性とした。解像性(nm)は、その値が小さいほど良好であることを示す。解像性は、30nm以下の場合は「良好」と、30nmを超える場合は「不良」と評価できる。
【0246】
[LWR性能]
上記最適露光量にて解像した35nmラインアンドスペース(1L/1S)のラインパターンを、上記走査型電子顕微鏡を用い、パターン上部から観察した。そして、ライン幅を任意のポイントで計50点測定し、その測定ばらつきを3シグマとして算出した値をLWR(nm)とした。LWR性能は、その値が小さいほど、ラインのがたつきが小さく良好である。LWR性能は、5.0nm以下の場合は「良好」と、5.0nmを超える場合は「不良」と評価できる。
【0247】
【表5】
【0248】
表5の結果から、EUV露光において、実施例のフォトレジスト組成物は、比較例のフォトレジスト組成物と比べて、解像性を維持しつつ、LWR性能に優れることが分かる。