(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
正極板(1)及び負極板(2)を、セパレータ(3)を介して順次積層してなる電池要素(4)を、外装樹脂(5)、コア金属(6)及び接着樹脂(7)からなる二のラミネートフィルムの間に収容し、その外周全辺で当接する前記接着樹脂(7)同士を融着させることにより、前記電池要素(4)を包装して形成するラミネート二次電池(21)であって、
前記一方のラミネートフィルムは、前記電池要素を収容するための凹型成形部(9)を有し、
前記電池要素の電極端子(19,20)を有しない前記ラミネートフィルム融着辺の少なくとも一辺で、
前記ラミネートフィルム融着辺と前記凹型成形部とを繋ぐ前記一方のラミネートフィルムに設けられた湾曲部(11)と、
前記湾曲部と比較して前記電池要素により近い位置の前記他方のラミネートフィルムに、内部の前記電池要素側に突出するように設けられた突出部(13)と、
前記ラミネートフィルムの前記湾曲部(11)及び前記突出部(13)が設けられた位置と、前記電池要素側に互いに離隔する前記各ラミネートフィルムとの間に存在する断面三角形状の樹脂塊(17)と、を備え、
前記突出部(13)は、前記外装樹脂(5)を外表面とする前記ラミネートフィルムに断面円弧状に形成され、その近似円半径(R)が、0.5mm以上、3.0mm以下であり、その溝深さ(D)が、0.1mm以上、1.5mm以下であり、
前記ラミネートフィルムの厚さ(Ta)と、対向する前記湾曲部と前記突出部との最短間隔である融着厚さ(Tb)との間に、1.3Ta≦Tb<1.9Taの関係を有し、
対向する前記湾曲部と前記突出部との最短間隔である融着厚さ(Tb)を形成する位置と、前記セパレータ(3)の前記熱接着部側の端面との距離(L)は、2mm以上、15mm以下であり、
前記ラミネートフィルムは、前記外装樹脂(5)としての二軸延伸ポリエステル樹脂及び二軸延伸ポリアミド樹脂と、前記コア金属(6)としてのアルミ箔と、前記接着樹脂(7)としての無延伸ポリオレフィン樹脂とを順次熱融着又は接着剤により貼り合わせたものであって、前記無延伸ポリオレフィン樹脂の厚さ(Tp)が70〜100μmである、
ことを特徴とするラミネート二次電池。
前記湾曲部(11)及び前記突出部(13)は、前記ラミネートフィルムにより形成された二のラミネートフィルム容器(8,80)の外周全辺で前記接着樹脂同士が当接し融着して一体となる熱接着部(10)の前記電池要素側の位置で前記二のラミネートフィルム容器を挟んで対向することを特徴とする請求項1に記載のラミネート二次電池。
前記熱接着部(10)は、その端面の少なくとも一部が樹脂で被覆され、前記電池要素(4)の両側に前記熱接着部の融着面に対し80度以上、100度以下の範囲となるように折り曲げられた側壁(22)を有することを特徴とする請求項2に記載のラミネート二次電池。
正極板(1)及び負極板(2)を、セパレータ(3)を介して順次積層してなる電池要素(4)を、外装樹脂(5)、コア金属(6)及び接着樹脂(7)からなるラミネートフィルムで形成した二のラミネートフィルム容器(8,80)の間に収容し、その外周全辺に設けられ前記接着樹脂(7)同士が当接する熱接着部(10)を融着することにより前記電池要素(4)を包装するラミネート二次電池の製造方法であって、
前記熱接着部(10)での前記ラミネートフィルム容器(8、80)の融着は、
前記熱接着部の前記電池要素側の端部に対応する端部角部を湾曲部円(12)の円弧形状とする湾曲金型(15)と、前記熱接着部の前記電池要素側の端部に対応する端部角部を突出部円(14)の円弧形状で突出させた突出金型(16)とを、前記突出金型(16)の突出部円(14)の中心が、前記湾曲金型の前記湾曲部円(12)の中心と比較して前記電池要素(4)により近くなるように対向配置し、
前記湾曲金型(15)と前記突出金型(16)との間に前記二のラミネートフィルム容器(8、80)の前記熱接着部を配置させ、
前記湾曲金型(15)と前記突出金型(16)とを前記熱接着部の面に垂直の方向に相互に近接するよう移動させ、
前記湾曲部円(12)と前記突出部円(14)との最小間隔である融着厚さ(Tb)が前記ラミネートフィルムの厚さ(Ta)の二倍より小さくなるようにして行われることを特徴とするラミネート二次電池の製造方法。
正極板(1)及び負極板(2)を、セパレータ(3)を介して順次積層してなる電池要素(4)を、外装樹脂(5)、コア金属(6)及び接着樹脂(7)からなるラミネートフィルムで形成した二のラミネートフィルム容器(8,80)の間に収容し、その外周全辺に設けられ前記接着樹脂(7)同士が当接する熱接着部(10)を融着することにより前記電池要素(4)を包装するラミネート二次電池の製造方法であって、
前記一方のラミネートフィルム容器(8)を予め成形して、前記電池要素を収容するための凹型成形部(9)と、前記凹型成形部と前記熱接着部とを繋ぐ湾曲部(11)と、を設け、
前記他方のラミネートフィルム容器(80)を予め成形して、前記湾曲部と比較して前記電池要素により近い相当位置に内部の前記電池要素側に突出する突出部(13)を設けた後に、前記熱接着部を融着することを特徴とするラミネート二次電池の製造方法。
【背景技術】
【0002】
ノート型コンピュータ、携帯電話、デジタルカメラ等電子機器の普及に伴い、これら電子機器を駆動するための二次電池の需要が拡大している。近年、これら電子機器のほか車両や住宅用の二次電池においては、高機能化の進展に伴い消費電力が増大していることや、小型化が期待されていることから、その容量の増大が求められている。
【0003】
二次電池としては、正極板、負極板及び正極板と負極板との間に配されるセパレータからなる電池要素を、電解質を非水溶媒に溶解させてなる電解液とともにラミネートフィルムよりなる電池容器に収納したものが普及している。
【0004】
この電池容器を形成するラミネートフィルムは、金属箔の片面または両面に樹脂層を密着させてなる構成であり、その金属箔は穴のない材料を用いることでフィルム面を透過する方向(ラミネートフィルムの厚さ方向)の気密構造を達成している。また、その樹脂層は、一般に延展性を持つ金属箔の引っ張り強度、突き刺し強度、屈曲弱さ等を補強するうえ、電池要素を収納した後熱融着して封止が可能となるようフィルム面に接着性を付与する機能を有する。すなわち、このラミネートフィルムよりなる電池容器は、電池要素を収納した状態で、ラミネートフィルムの樹脂層を融着して容器を封止している。
【0005】
しかしながら、電池が過充電状態となったり内部短絡が生じたりすることにより電池が発熱した場合や、高温下に放置された場合に、二次電池容器内部の圧力が上昇すると、ラミネートフィルムの融着部付近の屈曲部に応力が集中するため、電池内側の融着部が剥離し、電池の気密漏れを起こし最悪の場合では液漏れを起こすという問題があった。
【0006】
この問題に対して、特許文献1には、ラミネートフィルムの融着部で、電池内側に大きく突出した樹脂塊を形成することにより耐久性を高めることが開示されている。特許文献1によれば、電池容器の内部の圧力が増加してラミネートフィルムの融着部を開く方向に力が加わった場合には、樹脂塊を含めたラミネート樹脂全体が変形して力を受けることで、電池容器の損傷を抑えることができる。この場合、電池内側に突出する樹脂塊の大きさ(樹脂量)が、緩和できる応力の大きさに影響を及ぼす。すなわち、樹脂塊の電池内側への突出量が大きくなるほど、緩和できる応力の大きさが大きくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、クリープ試験のように一定の応力が加わった状態で長時間が経過した場合、樹脂塊を含めたラミネート樹脂全体が変形せずに、樹脂塊とラミネートフィルムの境界部(ラミネート樹脂と樹脂塊の融着部の電池内部側の端部)に応力が集中するようになる。応力の集中は疲労の蓄積を生じさせ、亀裂の起点となる。発生した亀裂は、樹脂塊が融着した樹脂層から金属箔との界面にまで到達し、ラミネートフィルムよりなる電池容器の融着部が剥離するという問題を生じさせる。
【0009】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、ラミネートフィルムの境界部に応力による亀裂が発生しないような樹脂塊が形成されたラミネート二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するためになされた請求項1に記載の発明は、正極板(1)及び負極板(2)を、セパレータ(3)を介して順次積層してなる電池要素(4)を、外装樹脂(5)、コア金属(6)及び接着樹脂(7)からなる二のラミネートフィルムの間に収容し、その外周全辺で当接する前記接着樹脂(7)同士を融着させることにより、前記電池要素(4)を包装して形成するラミネート二次電池(21)であって、前記一方のラミネートフィルムは、前記電池要素を収容するための凹型成形部(9)を有し、前記電池要素の電極端子(19,20)を有しない前記ラミネートフィルム融着辺の少なくとも一辺で、前記ラミネートフィルム融着辺と前記凹型成形部とを繋ぐ前記一方のラミネートフィルムに設けられた湾曲部(11)と、前記湾曲部と比較して前記電池要素により近い位置の前記他方のラミネートフィルムに、内部の前記電池要素側に突出するように設けられた突出部(13)と
、前記ラミネートフィルムの前記湾曲部(11)及び前記突出部(13)が設けられた位置と、前記電池要素側に互いに離隔する前記各ラミネートフィルムとの間に存在する断面三角形状の樹脂塊(17)と、を備え、前記突出部(13)は、前記外装樹脂(5)を外表面とする前記ラミネートフィルムに断面円弧状に形成され、その近似円半径(R)が、0.5mm以上、3.0mm以下であり、その溝深さ(D)が、0.1mm以上、1.5mm以下であり、前記ラミネートフィルムの厚さ(Ta)と、対向する前記湾曲部と前記突出部との最短間隔である融着厚さ(Tb)との間に、1.3Ta≦Tb<1.9Taの関係を有し、対向する前記湾曲部と前記突出部との最短間隔である融着厚さ(Tb)を形成する位置と、前記セパレータ(3)の前記熱接着部側の端面との距離(L)は、2mm以上、15mm以下であり、前記ラミネートフィルムは、前記外装樹脂(5)としての二軸延伸ポリエステル樹脂及び二軸延伸ポリアミド樹脂と、前記コア金属(6)としてのアルミ箔と、前記接着樹脂(7)としての無延伸ポリオレフィン樹脂とを順次熱融着又は接着剤により貼り合わせたものであって、前記無延伸ポリオレフィン樹脂の厚さ(Tp)が70〜100μmである、ことを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、正極板(1)及び負極板(2)を、セパレータ(3)を介して順次積層してなる電池要素(4)を、外装樹脂(5)、コア金属(6)及び接着樹脂(7)からなる二のラミネートフィルムの間に収容し、その外周全辺で当接する前記接着樹脂(7)同士を融着させることにより、前記電池要素(4)を包装して形成するラミネート二次電池(21)は、前記一方のラミネートフィルムが、前記電池要素を収容するための凹型成形部(9)を有し、前記電池要素の電極端子(19,20)を有しない前記ラミネートフィルム融着辺の少なくとも一辺で、前記ラミネートフィルム融着辺と前記凹型成形部とを繋ぐ前記一方のラミネートフィルムに設けられた湾曲部(11)と、前記湾曲部と比較して前記電池要素により近い位置の前記他方のラミネートフィルムに、内部の前記電池要素側に突出するように設けられた突出部(13)とを備える。
【0012】
そのため、溶融した接着樹脂(7)は、二のラミネートフィルムの間の接着樹脂(7)の面を滑らかに流動して蓄積されるので、ラミネートフィルムの境界部に応力による亀裂が発生しないラミネート二次電池容器を得ることができるという優れた効果を奏する。
【0013】
また、
請求項4に記載の発明は、正極板(1)及び負極板(2)を、セパレータ(3)を介して順次積層してなる電池要素(4)を、外装樹脂(5)、コア金属(6)及び接着樹脂(7)からなるラミネートフィルムで形成した二のラミネートフィルム容器(8,80)の間に収容し、その外周全辺に設けられ前記接着樹脂(7)同士が当接する熱接着部(10)を融着することにより前記電池要素(4)を包装するラミネート二次電池の製造方法であって、前記熱接着部(10)での前記ラミネートフィルム容器(8、80)の融着は、前記熱接着部の前記電池要素側の端部に対応する端部角部を湾曲部円(12)の円弧形状とする湾曲金型(15)と、前記熱接着部の前記電池要素側の端部に対応する端部角部を突出部円(14)の円弧形状で突出させた突出金型(16)と
を、前記突出金型(16)の突出部円(14)の中心が、前記湾曲金型の前記湾曲部円(12)の中心と比較して前記電池要素(4)により近くなるように対向配置し、前記湾曲金型(15)と前記突出金型(16)との間に前記二のラミネートフィルム容器(8、80)の前記熱接着部を配置させ、前記湾曲金型(15)と前記突出金型(16)とを前記熱接着部の面に垂直の方向に相互に近接するよう移動させ、前記湾曲部円(12)と前記突出部円(14)との最小間隔である融着厚さ(Tb)が前記ラミネートフィルムの厚さ(Ta)の二倍より小さくなるようにして行われることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、前記熱接着部(10)での前記ラミネートフィルム容器(8、80)の融着は、前記熱接着部の前記電池要素側の端部に対応する端部角部を湾曲部円(12)の円弧形状とする湾曲金型(15)と、前記熱接着部の前記電池要素側の端部に対応する端部角部を突出部円(14)の円弧形状で突出させた突出金型(16)とを対向配置し、前記湾曲金型(15)と前記突出金型(16)との間に前記二のラミネートフィルム容器(8、80)の前記熱接着部を配置させ、前記湾曲金型(15)と前記突出金型(16)とを前記熱接着部の面に垂直の方向に相互に近接するよう移動させ、前記湾曲部円(12)と前記突出部円(14)との最小間隔である融着厚さ(Tb)が前記ラミネートフィルムの厚さ(Ta)の二倍より小さくなるようにして行われる。
【0015】
そのため、溶融した接着樹脂(7)は、相互に離隔するラミネートフィルムのそれぞれの接着樹脂(7)の面に容易に流動して三角形状の樹脂塊を形成することができ、ラミネートフィルムの境界部に応力による亀裂が発生しないラミネート二次電池容器を得ることができるという優れた効果を奏する。
【0016】
また、
請求項5に記載の発明は、正極板(1)及び負極板(2)を、セパレータ(3)を介して順次積層してなる電池要素(4)を、外装樹脂(5)、コア金属(6)及び接着樹脂(7)からなるラミネートフィルムで形成した二のラミネートフィルム容器(8,80)の間に収容し、その外周全辺に設けられ前記接着樹脂(7)同士が当接する熱接着部(10)を融着することにより前記電池要素(4)を包装するラミネート二次電池の製造方法であって、前記一方のラミネートフィルム容器(8)を予め成形して、
前記電池要素を収容するための凹型成形部(9)と、前記凹型成形部と前記熱接着部とを繋ぐ湾曲部(11)と
、を設け、前記他方のラミネートフィルム容器(80)を予め成形して、前記湾曲部と比較して前記電池要素により近い相当位置に内部の前記電池要素側に突出する突出部(13)を設けた後に、前記熱接着部を融着することを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、一方のラミネートフィルム容器(8)を予め成形して、
前記電池要素を収容するための凹型成形部(9)と、前記凹型成形部と前記熱接着部とを繋ぐ湾曲部(11)と
、を設け、前記他方のラミネートフィルム容器(80)を予め成形して、前記湾曲部と比較して前記電池要素により近い相当位置に内部の前記電池要素側に突出する突出部(13)を設けた後に、前記熱接着部を融着する。
【0018】
そのため、簡易な製造装置でラミネート二次電池を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。但し、本明細書中の全図において相互に対応する部分には同一符号を付し、重複部分においては後述での説明を適時省略する。
【0021】
ラミネート二次電池21は、ラミネートフィルムからなる二のラミネートフィルム容器8、80の間に電池要素4を収容し、その外周全辺に設けた熱接着部10同士を当接させた後、熱接着部10を融着させることにより電池要素4を電解液とともに気密に包装して形成したものである。
【0022】
電池要素4は、正極板1と負極板2とを、セパレータ3を介して積層したものである。また、電解液は電解質を非水溶媒に溶解させたものである。電池要素4の厚さ寸法は、一般に5〜10mmである。
【0023】
正極板1は、正極活物質、導電剤及び結着剤からなる正極合材を適切な溶媒に懸濁させて混合し、スラリーとしたものを正極集電体の片面または両面に塗布し、乾燥することで作製することができる。正極板1は、それから電力を取り出しラミネートフィルム容器の外部へ導くタブ状の部材である正極の電極端子19を有する。
【0024】
負極板2は、負極活物質、導電剤及び結着剤からなる負極合材を適切な溶媒に懸濁させて混合し、スラリーとしたものを負極集電体の片面または両面に塗布し、乾燥することで作製することができる。負極板2は、それから電力を取り出しラミネートフィルム容器の外部へ導くタブ状の部材である負極の電極端子20を有する。
【0025】
セパレータ3は、正極板1及び負極板2を電気的に絶縁し、電解液を保持する役割を有する。セパレータ3は、例えば、多孔性合成樹脂膜、特にポリオレフィン系高分子(ポリエチレン、ポリプロピレン)の多孔膜を用いることができる。なお、セパレータ3は、正極板1と負極板2との絶縁を担保するため、正極板1及び負極板2よりもさらに大きい外形状を有することが好ましい。
【0026】
ラミネートフィルム容器8は、外周全辺に熱接着部10を有し、その内側に電池要素4を収容するための凹型成形部9を予め形成させたものである。ラミネートフィルム容器80は、外周全辺に熱接着部10を有する平坦な形状のものであり、ラミネートフィルム容器8と同一の平面外形寸法を有する。
【0027】
ラミネートフィルム容器8、80を形成させるラミネートフィルムは、二軸延伸ポリエステル樹脂及び二軸延伸ポリアミド樹脂等からなる外装樹脂5と、アルミ箔等でなるコア金属6と、無延伸ポリオレフィン樹脂等でなる接着樹脂7とを前記の順に熱融着又は接着剤により貼り合わせたものである。外装樹脂5は、一般に延展性を持つコア金属6の引っ張り強度、突き刺し強度、屈曲弱さ等を補強する。コア金属6は、穴のない材料を用いることでフィルム面を透過する方向(ラミネートフィルムの厚さ方向)の気密構造を達成させている。接着樹脂7は、電池要素4を収納したラミネートフィルム容器8、80のラミネートフィルム同士を熱融着して封止が可能となるようフィルム面に接着性を付与させている。接着樹脂7の厚さTpは、無延伸ポリオレフィン樹脂の場合70〜100μmであることが好ましい。
【0028】
ラミネートフィルム容器8,80で電池要素4を包装するとき、二枚のラミネートフィルム容器8、80の各接着樹脂7は電池要素4の両端面にそれぞれ当接する。そして、電池要素4の外周全辺に対応する二のラミネートフィルム容器8、80の外周端部に位置する熱接着部10では、ラミネートフィルム容器8、80の接着樹脂7同士が当接する。
【0029】
ラミネートフィルム容器8及びラミネートフィルム容器80は、熱接着部10で当接し、熱接着部10の面に垂直な方向に対向しつつ近接、離隔移動する湾曲金型15及び突出金型16により熱接着部10が押圧される。このとき、電極端子19,20は、両対辺の熱接着部10において、タブフィルム18を介して、ラミネートフィルム容器8及びラミネートフィルム容器80で挟まれる。なお、電極端子19,20が、一辺の熱接着部10に設けられるように構成してもよい。
【0030】
湾曲金型15は、熱接着部10の電池要素4側の端部に対応する端部角部が湾曲部円12の円弧形状となっている。湾曲金型15は、湾曲部円12の接線から熱接着部10の端面までの幅と、熱接着部10の辺方向の長さに応じた長さを有する一角のみ角の円みが異なった角柱様体である。湾曲金型15は、一又は複数の図示しないヒータを備えて温調可能になっている。
【0031】
突出金型16は、熱接着部10の電池要素4側の端部に対応する端部角部が突出部円14の円弧形状で突出している。突出金型16は、突出部円14の接線から熱接着部10の端面までの幅と、熱接着部10の辺方向の長さに応じた長さを有する一角の近傍に突出部を有する角柱様体である。突出金型16は、一又は複数の図示しないヒータを備えて温調可能になっている。
【0032】
(製造方法)
湾曲金型15及び突出金型16は、図示しないプレス装置に取り付けられ、湾曲金型15及び突出金型16のいずれか一方又は双方が上下移動して相互に近接・離隔可能となっている。湾曲金型15及び突出金型16は、接着樹脂7が溶融する温度となるようヒータにより温調される。接着樹脂7をポリオレフィン樹脂とした実施例では、湾曲金型15及び突出金型16の温度は摂氏180度乃至220度である。
【0033】
湾曲金型15はラミネートフィルム容器8の熱接着部10に、突出金型16はラミネートフィルム容器80の熱接着部10にそれぞれ当接するように、二のラミネートフィルム容器8、80が図示しないプレス装置に設置される。このとき、湾曲金型15及び突出金型16は、突出金型16の突出部円14の中心が、湾曲金型15の湾曲部円12の中心と比較して電池要素4により近くなるように配置される。
【0034】
プレス装置は、その駆動機構に設けられた図示しない衝止部により湾曲金型15と突出金型16との近接移動を停止する。
図1はこの状態を示しており、このとき熱接着部10は融着されている。それとともに、湾曲金型15の湾曲部円12の円弧形状によってラミネートフィルム容器8の熱接着部10端部に湾曲部11が成形される。また、突出金型16の突出部円14の円弧形状によって、ラミネートフィルム容器80の熱接着部10の電池要素4側端部に突出部13が成形される。なお、突出部13は円弧形状に限定されず、他の如何なる形状であってもよい。
【0035】
このとき、湾曲部円12の中心と突出部円14の中心とを結ぶ線上に形成され、湾曲部11と突出部13との最短間隔を形成する融着厚さTbは、ラミネートフィルムの厚さTaの二倍より小さくなっている。
【0036】
このような融着工程により、ラミネートフィルム容器8,80は、熱接着部10が融着されて電池要素4を電解液とともに封止する。それと同時に、ラミネートフィルム容器8の熱接着部10に繋がる凹型成形部9の立ち上がり角部は、湾曲金型15の湾曲部円12の円弧形状に附型されて湾曲部11となる。また、ラミネートフィルム容器80の熱接着部10電池要素4側の湾曲部11と比較して電池要素4により近い位置には、突出金型16の突出部円14の円弧形状に附型されて突出部13が成形される。
【0037】
すなわち、突出金型16の突出部円14の円弧形状が、湾曲金型15の湾曲部円12の円弧形状と比較して電池要素4により近い位置に、両者が対向するように設けられている。そのため、両者が挟んで押圧するラミネートフィルム容器8,80の溶融された接着樹脂7は、前記対向位置から相互に離隔するラミネートフィルム容器8,80のそれぞれの接着樹脂7の面に容易かつ滑らかに流動して三角形状の樹脂塊17を形成するのである。
【0038】
なお、上記融着工程の後、熱接着部10の端面の少なくとも一部を樹脂で被覆し、電池要素4の両側の熱接着部10を融着面に対し80度以上、100度以下の範囲となるように折り曲げて側壁22(
図2に示す)を形成してもよい。また、必要に応じて、側壁22をテープや接着剤で固定してもよい。
【0039】
また、湾曲部11及び突出部13を熱接着部10の融着と同時に形成するのではなく、ラミネートフィルム容器8に凹型成形部9と湾曲部11とを予め成形し、ラミネートフィルム容器80に突出部13を予め成形した後に熱接着部10を融着するようにしてもよい。
【0040】
(評価)
図3に基づいて、八例の実施例と九例の比較例に係る評価項目又は測定項目について以下に説明する。なお、これらの試料は全て側壁22を備えたものである。
【0041】
1[突出部]突出部13を備えるか否かについての項目である。
【0042】
2[対向位置]湾曲部11の断面を観察して、湾曲部11の中央が突出部13との最短間隔部となっているか否かを確認する。
【0043】
3[突出部のR]突出部13の円弧で成形された外装樹脂5としての二軸延伸ポリエステル樹脂でなる表面形状の近似円半径Rを、三次元形状測定装置で測定したものである。円弧の近似円半径Rは、0.5mm以上、3.0mm以下であることが好ましい。
【0044】
4[D]突出部13の溝深さDを三次元形状測定装置で測定したものである。溝深さDは、0.1mm以上、1.5mm以下であることが好ましい。
【0045】
5[Tb]湾曲部11と突出部13とが最短間隔で対向している部分の融着厚さTbを断面観察により測定したものである。ラミネートフィルムの厚さTaと、融着厚さTbとの間に、1.3Ta≦Tb<1.9Taの関係を有することが好ましい。
【0046】
6[L]対向する湾曲部11と突出部13との最短間隔である融着厚さTbを形成する位置と、セパレータ3の熱接着部10側の端面との距離Lを断面観察により測定したものである。距離Lは、2mm以上、15mm以下であることが好ましい。また、融着厚さTbを形成する位置は、熱接着部10の電池要素4側の端部でもあり、この位置と熱接着部10端面との間は、熱接着部の幅Mである。熱接着部の幅Mの好ましい寸法は3〜10mmである。
【0047】
7[Tp]接着樹脂の厚さTpをダイヤルゲージで計測したものである。接着樹脂7の厚さTpは、無延伸ポリオレフィン樹脂の場合70〜100μmであることが好ましい。
【0048】
8[樹脂塊]樹脂塊17が三角形状で良好な状態に形成されているか否かを断面観察により評価する。
【0049】
9[切り欠き]切り欠きは、樹脂塊17と二のラミネートフィルム容器8,80との間のそれぞれの境界である境界部に形成されるものであって、樹脂塊17が三角形状であれば切り欠きは存在しない。樹脂塊17が団子状になったときラミネートフィルム容器8,80との間の境界部に溝が形成される。その溝の幅寸法が1mmより小さいときに切り欠きと判定する。
【0050】
10[耐圧強度Mpa]車載環境で必要寿命を満足するためには、初期値として0.8Mpa(摂氏40度において)より大きいことが必要である。
耐圧強度試験は、正負電極板を有しない正負電極端子を設け、加圧用の水を注入するために平面部に設けた開口にストロー状の樹脂または金属を熱融着して形成した評価用の電池筐体を、四隅にボルト固定用の孔を有する厚さ20mmのアルミ板の間に、内圧が上昇しても太鼓状に変形しないように挟んで固定し、摂氏40度の水を注入・加圧して行った。この耐圧強度は、耐圧破壊試験機(長野計器株式会社製PC72H)により計測した。
【0051】
11[セパレータダメージ]評価用の電池筐体を解体した後、目視観察により寸法及び外観を評価した。なお、ダメージが大きい場合、セパレータが収縮して正負極間が短絡する可能性がある。また、ダメージが小さく、短絡が起きない場合でも、セパレータの収縮により多孔質の均一性が失われ、透気度や突き刺し強度などの必要性を満足できなくなる可能性がある。
【0052】
なお、円弧の近似円半径R及び溝深さDの形状測定は、平坦な机上(例えば定盤)にラミネート二次電池21を置き、電池要素部分のほぼ全面が机上面に押し付けられた状態で、非接触三次元形状測定装置(三鷹光器株式会社製NH−3)を用いて行った。また、その他の測定手段としては、デプスゲージなどの物理的計測のほか、粘土などに形状を転写するなどの方法もある。
【0053】
図3に示す評価及び計測結果によれば、実施例1乃至8に関しては、全ての評価項目は良好であり、全ての計測項目は好ましい数値範囲にあるので、総合的に良好な判定がなされている。これに対し、比較例1乃至9に関しては、各比較例が評価又は計測結果のいずれかに問題又は好ましい数値範囲から外れたもの(下線を付して示す)を有するので、総合的に不良と判定されている。なお、比較例2は、凹凸を設けた熱接着部品を用いて製造した評価用の電池筐体によるものである。
【0054】
以上詳述したことから明らかなように、本実施形態によれば、正極板1及び負極板2を、セパレータ3を介して順次積層してなる電池要素4を、外装樹脂5、コア金属6及び接着樹脂7からなる二枚のラミネートフィルムの間に収容し、その外周全辺で当接する接着樹脂7同士を融着させることにより、電池要素4を包装して形成するラミネート二次電池21は、一方のラミネートフィルムが、電池要素4を収容するための凹型成形部9を有し、電池要素4の電極端子19,20を有しないラミネートフィルム融着辺の少なくとも一辺で、ラミネートフィルム融着辺と凹型成形部9とを繋ぐ一方のラミネートフィルムに設けられた湾曲部11と、湾曲部11と比較して電池要素4により近い位置の他方のラミネートフィルムに、内部の電池要素4側に突出するように設けられた突出部13とを備える。
【0055】
そのため、溶融した接着樹脂7は、二枚のラミネートフィルムの間の接着樹脂7の面を滑らかに流動して蓄積されるので、ラミネートフィルムの境界部に応力による亀裂が発生しないラミネート二次電池容器を得ることができるという優れた効果を奏する。
【0056】
また、湾曲部11及び突出部13は、ラミネートフィルムにより形成された二のラミネートフィルム容器8,80の外周全辺で接着樹脂7同士が当接し融着して一体となる熱接着部10の電池要素4側の位置で二のラミネートフィルム容器8,80を挟んで対向する。
【0057】
そのため、溶融した接着樹脂7は、相互に離隔するラミネートフィルムのそれぞれの接着樹脂7の面に容易に流動して切り欠きのない三角形状の樹脂塊を形成することができ、ラミネートフィルムの境界部に応力による亀裂が発生しないラミネート二次電池容器を得ることができるという優れた効果を奏する。
【0058】
また、突出部13は、外装樹脂5を外表面とするラミネートフィルムに断面円弧状に形成され、その近似円半径Rが、0.5mm以上、3.0mm以下であり、その溝深さDが、0.1mm以上、1.5mm以下である。
【0059】
そのため、円弧の近似円半径Rが0.5mmより小さかったり、溝深さDが0.1mmより小さかったりしたときに形成される切り欠きは形成されない。また、円弧の近似円半径Rが3.0mmより大きかったり、溝深さDが1.5mmより大きかったりしたときに突出金型16の接近によってセパレータ3が損傷される可能性を消滅させる。
【0060】
また、ラミネートフィルムの湾曲部11及び突出部13が設けられた位置と、電池要素4側に互いに離隔する各ラミネートフィルムとの間に断面三角形状の樹脂塊17が存在する。
【0061】
そのため、ラミネートフィルムの境界部に応力による亀裂が発生しないラミネート二次電池容器を得ることができる。
【0062】
また、対向する湾曲部11と突出部13との最短間隔である融着厚さTbは、ラミネートフィルムの厚さTaとの間に、{1.3Ta≦Tb<
1.9Ta}の関係を有する。
【0063】
融着厚さTbが1.3Taより小さいときのように溶融した接着樹脂7を潰し過ぎた状態では、接着樹脂7が多く押し出されることによりラミネートフィルム容器の耐圧強度が低下する。一方、融着厚さTbが1.9Ta以上のときのように溶融した接着樹脂7が殆ど潰されない状態では、樹脂塊17を形成するだけの樹脂を押し出すことができず、切り欠きの無い樹脂塊17を形成することができない。このように、融着厚さTbが、{1.3Ta≦Tb<1.9Ta}の関係であれば、断面三角形状の樹脂塊17が良好に形成されるので、ラミネートフィルムの境界部に応力による亀裂が発生しないラミネート二次電池容器を得ることができる。
【0064】
また、対向する湾曲部11と突出部13との最短間隔である融着厚さTbを形成する位置(熱接着部の端部位置)と、セパレータ3の熱接着部10側の端面との距離Lは、2mm以上、15mm以下である。
【0065】
電池要素4の構成要素のなかで耐熱性の低いセパレータ3は、2mmより近く熱接着部10に接近すると、融着時の熱により損傷を受ける可能性が高い。一方、熱接着部10が、セパレータ3から15mmより遠くに位置すると、ラミネートフィルム容器8,80同士が離隔して形成する三角形状の頂角が狭くなり、突出部13による樹脂押し出し効果が低下する。このように、熱接着部10の端部位置と、セパレータ3の熱接着部10側の端面との距離Lが、2mm以上、15mm以下であれば、断面三角形状の樹脂塊17が良好に形成されるので、ラミネートフィルムの境界部に応力による亀裂が発生しないラミネート二次電池容器を得ることができる。
【0066】
また、ラミネートフィルムは、外装樹脂5としての二軸延伸ポリエステル樹脂及び二軸延伸ポリアミド樹脂と、コア金属6としてのアルミ箔と、接着樹脂7としての無延伸ポリオレフィン樹脂とを順次熱融着又は接着剤により貼り合わせたものであって、無延伸ポリオレフィン樹脂の厚さTpが70〜100μmである。
【0067】
接着樹脂7としての無延伸ポリオレフィン樹脂の厚さTpが70μmより薄いと、樹脂塊17の形成に必要な樹脂量を押し出すことができない。一方、接着樹脂7としての無延伸ポリオレフィン樹脂の厚さTpが100μmより厚いと、押し出された樹脂が充填空間からはみ出して、接着樹脂7より耐熱温度の低いセパレータ3を溶融させる。このように、無延伸ポリオレフィン樹脂の厚さTpが70〜100μmであれば、断面三角形状の樹脂塊17が良好に形成されるので、ラミネートフィルムの境界部に応力による亀裂が発生しないラミネート二次電池容器を得ることができるとともに、セパレータ3の安全が確保できる。
【0068】
また、熱接着部10は、その端面の少なくとも一部が樹脂で被覆され、電池要素4の両側に熱接着部10の融着面に対し80度以上、100度以下の範囲となるように折り曲げられた側壁22を有する。
【0069】
そのため、ラミネート二次電池容器の横幅寸法が短縮されることにより、ラミネート二次電池の小型化が可能となる。
【0070】
また、熱接着部10でのラミネートフィルム容器8、80の融着は、熱接着部10の電池要素4側の端部に対応する端部角部を湾曲部円12の円弧形状とする湾曲金型15と、熱接着部10の電池要素4側の端部に対応する端部角部を突出部円14の円弧形状で突出させた突出金型16とを対向配置し、湾曲金型15と突出金型16との間に二のラミネートフィルム容器8、80の熱接着部10を配置させ、湾曲金型15と突出金型16とを熱接着部10の面に垂直の方向に相互に近接するよう移動させ、湾曲部円12と突出部円14との最小間隔である融着厚さTbがラミネートフィルムの厚さTaの二倍より小さくなるようにして行われる。
【0071】
そのため、溶融した接着樹脂7は、相互に離隔するラミネートフィルムのそれぞれの接着樹脂7の面に容易に流動して三角形状の樹脂塊を形成することができ、ラミネートフィルムの境界部に応力による亀裂が発生しないラミネート二次電池容器を得ることができるという優れた効果を奏する。
【0072】
また、一方のラミネートフィルム容器8を予め成形して、凹型成形部9と前記熱接着部とを繋ぐ湾曲部11と、電池要素4を収容するための凹型成形部9とを設け、他方のラミネートフィルム容器80を予め成形して、湾曲部11と比較して電池要素4により近い相当位置に内部の電池要素4側に突出する突出部13を設けた後に、熱接着部10を融着する。
【0073】
そのため、簡易な製造装置でラミネート二次電池を製造することができる。
【0074】
なお、本発明は、当業者の知識に基づいて様々な変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものを含む。また、前記変更等を加えた実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限りいずれも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。