(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
可動電極(11c)、第1固定電極(12b)、及び第2固定電極(13b)を有し、前記可動電極(11c)と前記第1固定電極(12b)との間に形成された第1容量を第1容量信号として出力すると共に、前記可動電極(11c)と前記第2固定電極(13b)との間に形成された第2容量を第2容量信号として出力するセンサチップ(10)と、
力学量のオフセット成分を補正するための調整値が記憶された記憶手段(23)を有し、前記可動電極(11c)を駆動するための搬送波信号を出力する一方、前記センサチップ(10)から前記第1容量信号及び前記第2容量信号を入力し、前記力学量が印加されたときの前記可動電極(11c)の変位に伴う、前記第1容量と前記第2容量との差動容量変化及び前記調整値に基づいて前記力学量を取得する回路チップ(20)と、
前記センサチップ(10)と前記回路チップ(20)とを電気的に接続すると共に、前記センサチップ(10)から前記回路チップ(20)に前記第1容量信号を伝える第1ワイヤ(40)と、
前記センサチップ(10)と前記回路チップ(20)とを電気的に接続すると共に、前記センサチップ(10)から前記回路チップ(20)に前記第2容量信号を伝える第2ワイヤ(41)と、
前記センサチップ(10)と前記回路チップ(20)とを電気的に接続すると共に前記第1ワイヤ(40)と前記第2ワイヤ(41)との間に配置されており、前記回路チップ(20)から前記可動電極(11c)に前記搬送波信号を伝える第3ワイヤ(42)と、
を備えており、
さらに、前記回路チップ(20)は、
前記第1ワイヤ(40)に電気的に接続された第1配線部(24、30)と、
前記第2ワイヤ(41)に電気的に接続された第2配線部(25、32)と、
前記第3ワイヤ(42)に電気的に接続されていると共に、前記第1配線部(24、30)及び前記第2配線部(25、32)との距離が変化するように設けられた第3配線部(26、31、33)と、
前記第1配線部(24、30)の一部と前記第3配線部(26、31、33)の一部とで構成されていると共に、前記第1配線部(24、30)と前記第3配線部(26、31、33)との距離が異なる複数の第1オフセット調整部(27)と、
前記第2配線部(25、32)の一部と前記第3配線部(26、31、33)の一部とで構成されていると共に、前記第2配線部(25、32)と前記第3配線部(26、31、33)との距離が異なる複数の第2オフセット調整部(28)と、
前記複数の第1オフセット調整部(27)及び前記複数の第2オフセット調整部(28)のうち、前記第1ワイヤ(40)と前記第3ワイヤ(42)とで形成された第1オフセット容量と、前記第2ワイヤ(41)と前記第3ワイヤ(42)とで形成された第2オフセット容量と、の差分が無くなる距離に対応したオフセット調整部(27、28)に配置されることで当該オフセット調整部(27、28)と共にコンデンサを構成する誘電部材(29)と、
を有していることを特徴とする半導体装置。
可動電極(11c)、第1固定電極(12b)、及び第2固定電極(13b)を有し、前記可動電極(11c)と前記第1固定電極(12b)との間に形成された第1容量を第1容量信号として出力すると共に、前記可動電極(11c)と前記第2固定電極(13b)との間に形成された第2容量を第2容量信号として出力するセンサチップ(10)と、
力学量のオフセット成分を補正するための調整値が記憶された記憶手段(23)を有し、前記可動電極(11c)を駆動するための搬送波信号を出力する一方、前記センサチップ(10)から前記第1容量信号及び前記第2容量信号を入力し、前記力学量が印加されたときの前記可動電極(11c)の変位に伴う、前記第1容量と前記第2容量との差動容量変化及び前記調整値に基づいて前記力学量を取得する回路チップ(20)と、
前記センサチップ(10)と前記回路チップ(20)とを電気的に接続すると共に、前記センサチップ(10)から前記回路チップ(20)に前記第1容量信号を伝える第1ワイヤ(40)と、
前記センサチップ(10)と前記回路チップ(20)とを電気的に接続すると共に、前記センサチップ(10)から前記回路チップ(20)に前記第2容量信号を伝える第2ワイヤ(41)と、
前記センサチップ(10)と前記回路チップ(20)とを電気的に接続すると共に前記第1ワイヤ(40)と前記第2ワイヤ(41)との間に配置されており、前記回路チップ(20)から前記可動電極(11c)に前記搬送波信号を伝える第3ワイヤ(42)と、
を備えた半導体装置の製造方法であって、
前記回路チップ(20)として、前記第1ワイヤ(40)に電気的に接続された第1配線部(24、30)と、前記第2ワイヤ(41)に電気的に接続された第2配線部(25、32)と、前記第3ワイヤ(42)に電気的に接続されていると共に、前記第1配線部(24、30)及び前記第2配線部(25、32)との距離が変化するように設けられた第3配線部(26、31、33)と、を有するものを用意する工程と、
前記センサチップ(10)を用意し、前記回路チップ(20)に対して前記第1ワイヤ(40)、前記第2ワイヤ(41)、及び前記第3ワイヤ(42)を接続する工程と、
前記回路チップ(20)の記憶手段(23)に前記調整値を書き込む工程と、
前記調整値を書き込む工程の後、前記第1ワイヤ(40)と前記第3ワイヤ(42)とで形成された第1オフセット容量と、前記第2ワイヤ(41)と前記第3ワイヤ(42)とで形成された第2オフセット容量と、の差分が無くなる距離に対応した位置に誘電部材(29)を配置する工程と、
を含んでいることを特徴とする半導体装置の製造方法。
前記誘電部材(29)を配置する工程では、前記誘電部材(29)として前記力学量の温度特性をキャンセルする温度特性を有するものを配置することを特徴とする請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
前記回路チップ(20)を用意する工程では、前記第1配線部(24、30)として前記回路チップ(20)の一面(21)から突出する第1突出部(34)を有し、前記第2配線部(25、32)として前記回路チップ(20)の一面(21)から突出する第2突出部(35)を有し、さらに、第3配線部(26、31、33)として前記回路チップ(20)の一面(21)から突出する第3突出部(36)を有するものを用意し、
前記誘電部材(29)を配置する工程では、前記誘電部材(29)を前記第1突出部(34)のうち前記第3突出部(36)に対向する第1対向面(34a)と前記第3突出部(36)のうち前記第1対向面(34a)に対向する第3対向面(36a)との間に配置するか、または、前記第2突出部(35)のうち前記第3突出部(36)に対向する第2対向面(35a)と前記第3突出部(36)のうち前記第2対向面(35a)に対向する第4対向面(36b)との間に配置することを特徴とする請求項5または6に記載の半導体装置の製造方法。
前記回路チップ(20)を用意する工程では、第1配線部(24、30)と前記第3配線部(26、31、33)との距離が連続して変化するように構成されていると共に、前記第2配線部(25、32)と前記第3配線部(26、31、33)との距離が連続して変化するように構成されているものを用意することを特徴とする請求項5ないし7のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術では、記憶手段に調整値が書き込まれた後の製造工程において半導体装置を構成する部品が何らかの影響を受ける可能性がある。これにより、処理回路の出力値がずれてしまうという問題がある。
【0005】
特に、2つの半導体チップがワイヤを介して信号のやりとりを行う半導体装置の構成では、ワイヤ間にも静電容量が発生する。例えば、他方の半導体チップから一方の半導体チップへ検出信号を伝える2本のワイヤを第1ワイヤ及び第2ワイヤとし、一方の半導体チップから他方の半導体チップへセンシング部を駆動するための搬送波信号を伝えるワイヤを第3ワイヤとする。ここで、第3ワイヤを挟むように第1ワイヤと第2ワイヤとが配置される。これにより、第1ワイヤと第2ワイヤとで第1オフセット容量が形成され、第2ワイヤと第3ワイヤとで第2オフセット容量が形成される。
【0006】
そして、第1オフセット容量と第2オフセット容量との差分が大きくなると、当該差分に基づくオフセット成分が検出信号に含まれてしまうため、記憶手段に調整値を予め書き込むことで当該差分を小さくしている。ところが、調整値の書き込み後に各ワイヤに異物等が接触することやワイヤのレアショート、内部回路の一部不良等で出力値にオフセット成分が発生してしまう可能性がある。記憶手段への調整値の書き込みは既に完了しているためにさらなる調整値の変更はできず、処理回路の出力値が所定の値からずれてしまった半導体装置は不良品となってしまう。
【0007】
本発明は上記点に鑑み、記憶手段への調整値の書き込み後に出力値にオフセット成分が含まれた場合でもそのオフセット成分を補正することができる構成を備えた半導体装置を提供することを第1の目的とする。また、当該半導体装置の製造方法を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、可動電極(11c)、第1固定電極(12b)、及び第2固定電極(13b)を有し、可動電極(11c)と第1固定電極(12b)との間に形成された第1容量を第1容量信号として出力すると共に、可動電極(11c)と第2固定電極(13b)との間に形成された第2容量を第2容量信号として出力するセンサチップ(10)を備えている。
【0009】
また、力学量のオフセット成分を補正するための調整値が記憶された記憶手段(23)を有し、可動電極(11c)を駆動するための搬送波信号を出力する一方、センサチップ(10)から第1容量信号及び第2容量信号を入力し、力学量が印加されたときの可動電極(11c)の変位に伴う、第1容量と第2容量との差動容量変化及び調整値に基づいて力学量を取得する回路チップ(20)を備えている。
【0010】
また、センサチップ(10)と回路チップ(20)とを電気的に接続すると共に、センサチップ(10)から回路チップ(20)に第1容量信号を伝える第1ワイヤ(40)と、センサチップ(10)と回路チップ(20)とを電気的に接続すると共に、センサチップ(10)から回路チップ(20)に第2容量信号を伝える第2ワイヤ(41)と、センサチップ(10)と回路チップ(20)とを電気的に接続すると共に第1ワイヤ(40)と第2ワイヤ(41)との間に配置されており、回路チップ(20)から可動電極(11c)に搬送波信号を伝える第3ワイヤ(42)を備えている。
【0011】
さらに、回路チップ(20)は、第1ワイヤ(40)に電気的に接続された第1配線部(24、30)と、第2ワイヤ(41)に電気的に接続された第2配線部(25、32)と、第3ワイヤ(42)に電気的に接続されていると共に、第1配線部(24、30)及び第2配線部(25、32)との距離が変化するように設けられた第3配線部(26、31、33)と、を有している。
【0012】
また、回路チップ(20)は、第1配線部(24、30)の一部と第3配線部(26、31、33)の一部とで構成されていると共に、第1配線部(24、30)と第3配線部(26、31、33)との距離が異なる複数の第1オフセット調整部(27)と、第2配線部(25、32)の一部と第3配線部(26、31、33)の一部とで構成されていると共に、第2配線部(25、32)と第3配線部(26、31、33)との距離が異なる複数の第2オフセット調整部(28)と、を有している。
【0013】
また、回路チップ(20)は、複数の第1オフセット調整部(27)及び複数の第2オフセット調整部(28)のうち、第1ワイヤ(40)と第3ワイヤ(42)とで形成された第1オフセット容量と、第2ワイヤ(41)と第3ワイヤ(42)とで形成された第2オフセット容量と、の差分が無くなる距離に対応したオフセット調整部(27、28)に配置されることで当該オフセット調整部(27、28)と共にコンデンサを構成する誘電部材(29)を有していることを特徴とする。
【0014】
これによると、調整値が記憶手段(23)に記憶された後に各ワイヤ(40〜42)に異物等が接触すること等で第1オフセット容量と第2オフセット容量とのいずれかが変化したとしても、誘電部材(29)によって構成されるコンデンサによって第1オフセット容量と第2オフセット容量との差分が無くなるようにすることができる。したがって、記憶手段(23)への調整値の書き込み後に回路チップ(20)の出力値にさらなるオフセット成分が含まれた場合でもその出力値を調整することができる。
【0015】
請求項5に記載の発明では、請求項1に記載の発明の製造方法であって、まず、回路チップ(20)として、第1ワイヤ(40)に電気的に接続された第1配線部(24、30)と、第2ワイヤ(41)に電気的に接続された第2配線部(25、32)と、第3ワイヤ(42)に電気的に接続されていると共に、第1配線部(24、30)及び第2配線部(25、32)との距離が変化するように設けられた第3配線部(26、31、33)と、を有するものを用意する。
【0016】
また、センサチップ(10)を用意し、回路チップ(20)に対して第1ワイヤ(40)、第2ワイヤ(41)、及び第3ワイヤ(42)を接続する。続いて、回路チップ(20)の記憶手段(23)に調整値を書き込む。
【0017】
調整値を書き込む工程の後、第1ワイヤ(40)と第3ワイヤ(42)とで形成された第1オフセット容量と、第2ワイヤ(41)と第3ワイヤ(42)とで形成された第2オフセット容量と、の差分が無くなる距離に対応した位置に誘電部材(29)を配置することを特徴とする。これにより、請求項1と同様の効果が得られる。
【0018】
なお、この欄及び特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0021】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図を参照して説明する。本実施形態に係る半導体装置は、加速度等の力学量を検出する容量式のセンサデバイスである。
図1に示されるように、半導体装置は、センサチップ10、回路チップ20、第1ワイヤ40、第2ワイヤ41、第3ワイヤ42、及び第4ワイヤ43を備えて構成されている。
【0022】
センサチップ10は、半導体装置に印加された加速度等の力学量を検出するように構成されている。センサチップ10は板状であり、例えば支持基板と半導体層とにより犠牲層が挟み込まれたSOI基板として構成されたものである。支持基板及び半導体層は例えば単結晶シリコンで形成され、犠牲層は例えばSiO
2で形成されている。センサチップ10は、支持基板側が回路チップ20の一面21に接着剤等で固定されている。
【0023】
SOI基板のうちの犠牲層は、支持基板と半導体層との間に一定の間隔を形成するためのものである。また、半導体層は、
図2に示されるように、可動部11、第1固定部12、及び第2固定部13を有している。これら可動部11、第1固定部12、及び第2固定部13は、半導体層を貫通した図示しない開口部により画定され、分離されている。
【0024】
可動部11は、アンカー部11a、錘部11b、可動電極11c、及び梁部11dを備えて構成されている。このうちのアンカー部11aは、支持基板に対して錘部11bを浮かせて支持するためのものである。このアンカー部11aはブロック状をなしており、犠牲層の上に2箇所設けられている。
【0025】
錘部11bは、半導体装置に加速度等の力学量が印加されたときに各アンカー部11aに対して可動電極11cを移動させる錘として機能するものであり、細長状をなしている。この錘部11bには、複数のエッチングホール11eが形成されている。このエッチングホール11eは、錘部11bと支持基板との間の犠牲層を除去する際のエッチング媒体の導入孔として用いられる。
【0026】
可動電極11cは、錘部11bを構成する細長状の部位から直角方向に延設され、複数本が設けられることで櫛歯状に配置されている。各可動電極11cの間隔は、一定間隔とされており、各可動電極11cの幅、長さも一定とされている。
【0027】
梁部11dは、アンカー部11aと錘部11bとを連結するものである。この梁部11dは、平行な2本の梁がその両端で連結された矩形枠状をなしており、2本の梁の長手方向と直交する方向に変位するバネ機能を有するものである。このような梁部11dにより、錘部11bがアンカー部11aに一体に連結されて支持されている。本実施形態では、2つの梁部11dがアンカー部11aと錘部11bとをそれぞれ連結している。
【0028】
そして、梁部11d、錘部11b、及び可動電極11cの下部の犠牲層は部分的に除去され、梁部11d、錘部11b、及び可動電極11cは支持基板の上に一定の間隔で浮遊した状態になっている。この一定の間隔とは、半導体層と支持基板との間の間隔であり、犠牲層の厚みに相当する。
【0029】
一方、第1固定部12及び第2固定部13は、可動部11を構成する細長状の錘部11bの長辺と対向するように配置されている。したがって、第1固定部12及び第2固定部13が錘部11bを挟むように配置されている。第1固定部12は第1接続部12a及び第1固定電極12bを有し、第2固定部13は第2接続部13a及び第2固定電極13bを有している。
【0030】
各接続部12a、13aは、各固定電極12b、13bと外部とを電気的に接続するための配線として機能する部位である。各接続部12a、13aの下方には犠牲層が残されており、各接続部12a、13aが犠牲層を介して支持基板に固定されている。
【0031】
各固定電極12b、13bは、各接続部12a、13aのうちの錘部11bと対向する辺から直角方向に延設され、各接続部12a、13aに複数本ずつ備えられることで櫛歯状に配置されている。第1固定電極12bのそれぞれの間隔は一定間隔とされており、第1固定電極12bのそれぞれの幅、長さも一定とされている。第2固定電極13bについても同様である。
【0032】
なお、各接続部12a、13aは犠牲層の上に形成されており、当該犠牲層を介して支持基板に固定されている。一方、各固定電極12b、13bと支持基板との間の犠牲層は除去されており、各固定電極12b、13bは支持基板に対して浮いた状態になっている。
【0033】
そして、各固定電極12b、13bが可動電極11cに対向配置され、各固定電極12b、13bと可動電極11cとの間にコンデンサが形成されている。つまり、可動部11及び各固定部12、13は、可動電極11cと各固定電極12b、13bとの間に形成される容量に基づいて加速度等の力学量を検出するためのセンシング部14を構成している。このため、支持基板の平面方向であって錘部11bの長手方向に加速度等が印加されたときに、当該コンデンサの容量値の変化に基づいてその加速度等を検出することが可能になっている。
【0034】
センサチップ10は、可動電極11cと第1固定電極12bとの間に形成された第1容量を第1容量信号として第1固定部12から出力する。また、センサチップ10は、可動電極11cと第2固定電極13bとの間に形成された第2容量を第2容量信号として第2固定部13から出力する。
【0035】
半導体層は、上記の可動部11及び各固定部12、13の他に図示しない構造を有している。さらに、センサチップ10は、
図1に示されるように、半導体層に形成された複数のパッド15を有している。各パッド15は、各ワイヤ30〜33に対応して設けられている。例えば、パッド15は可動部11のアンカー部11aや、各接続部12a、13aに形成されている。
【0036】
回路チップ20は、センサチップ10との間で信号のやりとりを行う機能や、センサチップ10から取得した信号を演算・増幅処理して外部へ出力する等の機能を有する制御回路部等が形成されたものである。回路チップ20は、例えばシリコン基板等に対してCMOSトランジスタ等が半導体プロセスで形成された半導体チップである。
【0037】
また、回路チップ20の一面21はセンサチップ10の平面サイズよりも大きなサイズで形成されており、当該回路チップ20の一面21に複数のパッド22を有している。各パッド22は、各ワイヤ30〜33に対応して設けられている。
【0038】
さらに、回路チップ20は、メモリ23、第1配線部24、第2配線部25、第3配線部26、複数の第1オフセット調整部27、複数の第2オフセット調整部28、及び誘電部材29を有している。
【0039】
メモリ23は、回路チップ20の制御回路部等の調整値や、回路チップ20の出力値のオフセット成分を補正するための調整値が記憶された記憶手段である。メモリ23は、回路チップ20を構成するシリコン基板に対して半導体プロセスで形成されている。メモリ23は例えばEEPROMである。
図1では、メモリ23を模式的に図示している。
【0040】
第1配線部24は、第1ワイヤ40が接合されたパッド22に電気的に接続された配線である。これにより、第1配線部24は、第1ワイヤ40に電気的に接続されている。第2配線部25は、第2ワイヤ41が接合されたパッド22に電気的に接続された配線である。これにより、第2配線部25は、第2ワイヤ41に電気的に接続されている。第3配線部26は、第3ワイヤ42が接合されたパッド22に電気的に接続された配線である。これにより、第3配線部26は、第3ワイヤ42に電気的に接続されている。
【0041】
これら、第1配線部24及び第2配線部25は、回路チップ20を構成するシリコン基板の表層部のうちセンサチップ10の周囲に形成されている。シリコン基板の表面は例えば図示しない絶縁膜で覆われているので、第1配線部24及び第2配線部25は回路チップ20の一面21には露出していない。なお、絶縁膜の表面が回路チップ20の一面21に対応している。
【0042】
一方、第3配線部26は、センサチップ10を横切るように回路チップ20を構成するシリコン基板の表層部に形成されている。また、第3配線部26は分岐しており、第1配線部24側と第2配線部25側とに分かれている。そして、第3配線部26の一方の分岐部分は、回路チップ20の一面21の面方向において、第1配線部24との距離が変化するように設けられている。同様に、第3配線部26の他方の分岐部分は、当該面方向において、第2配線部25との距離が変化するように設けられている。
【0043】
本実施形態では、回路チップ20の一面21の面方向において、第3配線部26の各分岐部分の先端部分(直線部分)は、第1配線部24及び第2配線部25の先端部分(直線部分)に対して傾けられている。これにより、第1配線部24及び第2配線部25と第3配線部26との間の距離が変化している。なお、各配線部24〜26は、シリコン基板と電気的に接続されないように図示しない絶縁構造によってシリコン基板に対して絶縁されている。
【0044】
第1オフセット調整部27は、第1配線部24の一部と第3配線部26の一部とで構成されていると共に、第1ワイヤ40と第3ワイヤ42とで形成された第1オフセット容量を調整する部分である。第1オフセット調整部27は、第1配線部24に設けられた複数のパッド30と、第3配線部26の一方の分岐部分に設けられていると共に各パッド30に対応して設けられた複数のパッド31と、で構成されている。また、第1オフセット調整部27は、第1配線部24と第3配線部26との距離が異なる毎に設けられている。つまり、第1オフセット調整部27はパッド30とパッド31との距離が異なる毎に設けられている。本実施形態では、第1オフセット調整部27は4カ所設けられている。
【0045】
第2オフセット調整部28は、第2配線部25の一部と第3配線部26の一部とで構成されていると共に、第2ワイヤ41と第3ワイヤ42とで形成された第2オフセット容量を調整する部分である。第2オフセット調整部28は、第2配線部25に設けられた複数のパッド32と、第3配線部26の他方の分岐部分に設けられていると共に各パッド32に対応して設けられた複数のパッド33と、で構成されている。そして、第2オフセット調整部28は、第2配線部25と第3配線部26との距離が異なる毎、すなわちパッド32とパッド33との距離が異なる毎に設けられている。本実施形態では、第2オフセット調整部28は4カ所設けられている。
【0046】
上記のパッド30〜33は、回路チップ20を構成するシリコン基板の表面に形成された絶縁膜から露出するように形成されている。したがって、回路チップ20の一面21には各配線部24〜26は見えず、回路チップ20の一面21に各パッド30〜33が点在した状態になっている。
【0047】
誘電部材29は、パッド30とパッド31と間やパッド32とパッド33との間に配置されることで第1配線部24と第3配線部26と間や第2配線部25と第3配線部26との間にコンデンサを形成する役割を果たす。具体的に、誘電部材29は、各オフセット調整部27、28のうち、第1オフセット容量と第2オフセット容量との差分が無くなる距離に対応したオフセット調整部27、28に配置されている。これにより、誘電部材29は、当該誘電部材29が配置されたオフセット調整部27、28のいずれかと共にコンデンサを構成する。
【0048】
本実施形態では、誘電部材29は、複数の第1オフセット調整部27のうち2番目に距離が大きい第1オフセット調整部27に配置されている。誘電部材29として、例えばフッ素ゲルやシリコーンゲル等のゲル材料が採用される。
【0049】
ここで、
図3に示されるように、第1配線部24と第3配線部26との間には対向電位に基づいて直線状の電気力線が発生する。また、
図4に示されるように、電気力線は直線状だけではなく、回路チップ20の外の空間電位に基づいて回り込む電気力線も発生する。このため、回路チップ20の一面21に第1配線部24及び第3配線部26が露出していなくても、回路チップ20の一面21に誘電部材29が配置されることで第1ワイヤ40と第3ワイヤ42とで形成された第1オフセット容量を変更することが可能となる。第2ワイヤ41と第3ワイヤ42とで形成された第2オフセット容量についても同様である。
【0050】
例えば、誘電部材29が各オフセット調整部27、28のいずれかに配置されるということは、オフセット容量を大きくすることになる。第1オフセット容量が第2オフセット容量よりも大きい場合は、第2オフセット調整部28のいずれかに誘電部材29を配置することにより各オフセット容量の差分を小さくすることができる。一方、第2オフセット容量が第1オフセット容量よりも大きい場合は、第1オフセット調整部27のいずれかに誘電部材29を配置することにより各オフセット容量の差分を小さくすることができる。
【0051】
なお、上記のように各配線部24〜26が回路チップ20の一面21に露出していなくても誘電部材29の配置により第1オフセット容量及び第2オフセット容量を変更することができるが、実際は各パッド30〜33が目印となっている。
【0052】
回路チップ20は、センサチップ10の可動部11に対して可動電極11cを駆動するための搬送波信号を出力する機能を有する。これにより、可動部11の錘部11bが所定の周波数で振動する。また、回路チップ20は、センサチップ10から第1容量信号及び第2容量信号を入力する。これにより、回路チップ20は、可動電極11cに力学量が印加されたときの当該可動電極11cの変位に伴う、第1容量と第2容量との差動容量変化及びメモリ23の調整値に基づいて力学量を取得する。
【0053】
具体的には、搬送波は180°の位相差を持っているので、第1容量(C1)と第2容量(C2)の共通電極である可動電極11cにはC1−C2に比例すると共に搬送波の振幅に比例した電荷量が蓄積される。すなわち、C1−C2の差動変化は可動電極11cの変位によるものであり、加速度等の力学量に比例している。したがって、この電荷量の変化を検出することにより、容量変化=力学量の変化を検出することができる。
【0054】
第1ワイヤ40は、センサチップ10の第1接続部12aと回路チップ20とを電気的に接続する配線部品である。すなわち、第1ワイヤ40は、センサチップ10の第1接続部12aから回路チップ20に第1容量信号を伝える役割を果たす。
【0055】
第2ワイヤ41は、センサチップ10の第2接続部13aと回路チップ20とを電気的に接続する配線部品である。すなわち、第2ワイヤ41は、センサチップ10の第2接続部13aから回路チップ20に第2容量信号を伝える役割を果たす。
【0056】
第3ワイヤ42は、センサチップ10の可動部11と回路チップ20とを電気的に接続する配線部品である。第3ワイヤ42は、第1ワイヤ40と第2ワイヤ41との間に配置されており、回路チップ20から可動電極11cに搬送波信号を伝える役割を果たす。
【0057】
第4ワイヤ43は、センサチップ10の一部と回路チップ20とを電気的に接続する配線部品である。第4ワイヤ43は、第1ワイヤ40において第3ワイヤ42とは反対側に配置されており、回路チップ20の制御回路部によってセンサチップ10の一部に固定電圧を印加する役割を果たす。
【0058】
第1〜第3ワイヤ40〜42については、第1オフセット容量と第2オフセット容量との差分が無くなるように、長さや形状、隣との距離等のペア性が確保されている。また、4本のワイヤ30〜33が、センサチップ10及び回路チップ20の各パッド15、22にワイヤボンディングされている。以上が、本実施形態に係る半導体装置の全体構成である。
【0059】
次に、上記の半導体装置の製造方法について説明する。まず、センシング部14や複数のパッド15が形成されたセンサチップ10を用意する。また、制御回路部やメモリ23、各配線部24〜26、各パッド22、30〜33が形成された回路チップ20を用意する。
【0060】
続いて、
図1に示されるように、回路チップ20の一面21にセンサチップ10を接着剤等で固定する。また、センサチップ10及び回路チップ20に対して各ワイヤ30〜33をワイヤボンディングする。
【0061】
この後、回路チップ20のメモリ23に調整値を書き込む工程を行う。調整値は、第1オフセット容量や第2オフセット容量等によって生じる出力値のオフセット成分を打ち消すためのデータであり、半導体装置毎に異なるデータである。メモリ23に調整値を書き込んだ後、回路チップ20の出力値にオフセット成分が発生しない場合は半導体装置が完成する。
【0062】
一方、メモリ23に調整値を書き込んだ後に各ワイヤ30〜33に対する異物等の接触や回路チップ20の内部回路の一部不良等で出力値にオフセット成分が発生する場合がある。この場合は、各オフセット調整部27、28のうち第1ワイヤ40と第3ワイヤ42とで形成された第1オフセット容量と、第2ワイヤ41と第3ワイヤ42とで形成された第2オフセット容量と、の差分が無くなる距離に対応した位置に誘電部材29配置する。このように、メモリ23に調整値を書き込むことで出力値のオフセット成分を調整した後に、再度、出力値のオフセット成分を調整することができる。こうして、半導体装置が完成する。
【0063】
以上説明したように、本実施形態では、回路チップ20に各配線部24〜26、各パッド30〜33、及び誘電部材29が設けられていることが特徴となっている。このため、回路チップ20の出力値のオフセット成分を無くすための調整値がメモリ23に記憶された後に各ワイヤ40〜42間で形成される第1オフセット容量や第2オフセット容量が変化したとしても、これらの差分が無くなるようにすることができる。したがって、メモリ23に調整値が書き込まれた後に回路チップ20の出力値すなわち力学量にさらなるオフセット成分が含まれた場合でも力学量のオフセット成分を再調整することができる。
【0064】
なお、本実施形態の記載と特許請求の範囲の記載との対応関係については、メモリ23が特許請求の範囲の「記憶手段」に対応する。また、第1配線部24及びパッド30が特許請求の範囲の「第1配線部」に対応し、第2配線部25及びパッド32が特許請求の範囲の「第2配線部」に対応する。さらに、第3配線部26及びパッド31、33が特許請求の範囲の「第3配線部」に対応する。
【0065】
(第2実施形態)
本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について説明する。
図5に示されるように、誘電部材29は、比誘電率が温度に対して変化する温度依存性を持っている。例えば、誘電部材29は、温度の上昇と共に比誘電率が小さくなる温度特性を有している。
【0066】
一方、センサチップ10のセンシング部14で検出される力学量も温度特性を有している。例えば、力学量が温度の上昇と共に大きくなる温度特性であるとする。この場合、
図5に示される誘電部材29を用いることにより、力学量の温度特性を打ち消すことができる。
【0067】
本実施形態に係る半導体装置を製造する場合、各オフセット調整部27、28のいずれかに誘電部材29を配置する際に誘電部材29として力学量の温度特性をキャンセルする温度特性を有するものを用意することとなる。そして、当該誘電部材29を該当箇所に配置すれば良い。
【0068】
以上のように、誘電部材29として力学量の温度特性をキャンセルする温度特性を有するものを用いることにより、回路チップ20は温度に依存しない力学量の出力値を出力することができる。
【0069】
(第3実施形態)
本実施形態では、第1、第2実施形態と異なる部分について説明する。
図6に示されるように、第1配線部24は回路チップ20の一面21から突出した平板状の第1突出部34を有している。第1突出部34は、複数の第1オフセット調整部27毎に第1配線部24に設けられている。
【0070】
第2配線部25は回路チップ20の一面21から突出した平板状の第2突出部35を有している。第2突出部35は、複数の第2オフセット調整部28毎に第2配線部25に設けられている。
【0071】
また、第3配線部26は、回路チップ20の一面21から突出した平板状の第3突出部36を有している。第3突出部36は、複数の第1オフセット調整部27毎及び複数の第2オフセット調整部28毎に第3配線部26に設けられている。
【0072】
ここで、本実施形態では、各配線部24〜26にはパッド30〜33は設けられていない。したがって、第1突出部34は、回路チップ20の一面21に露出した第1配線部24の一部の上に設けられている。また、第2配線部25は、回路チップ20の一面21に露出した第2配線部25の一部の上に設けられている。さらに、第3突出部36は、回路チップ20の一面21に露出した第3配線部26の一部の上に設けられている。
【0073】
そして、
図7に示されるように、誘電部材29は、第1突出部34のうち第3突出部36に対向する第1対向面34aと第3突出部36のうち第1対向面34aに対向する第3対向面36aとの間に配置されている。誘電部材29は、第2突出部35のうち第3突出部36に対向する第2対向面35aと第3突出部36のうち第2対向面35aに対向する第4対向面36bとの間に配置されていても良い。
【0074】
上記の構成を有する半導体装置を製造する場合は、回路チップ20を用意するに際し、第1配線部24として第1突出部34を有し、第2配線部25として第2突出部35を有し、さらに、第3配線部26として第3突出部36を有するものを用意する。そして、誘電部材29を配置する際に、誘電部材29を第1突出部34のうち第3突出部36に対向する第1対向面34aと第3突出部36のうち第1対向面34aに対向する第3対向面36aとの間に配置する。または、誘電部材29を第2突出部35のうち第3突出部36に対向する第2対向面35aと第3突出部36のうち第2対向面35aに対向する第4対向面36bとの間に配置しても良い。このようにして各配線部24〜26の間にコンデンサを形成する。
【0075】
以上説明したように、本実施形態では、第1突出部34または第2突出部35と第3突出部36とで平行平板コンデンサが形成されるので、誘電部材29の誘電率の効果をより線形にすることができる。したがって、各配線部24〜26間に形成されるコンデンサの容量の精度を向上させることができる。
【0076】
(第4実施形態)
本実施形態では、第1〜第3実施形態と異なる部分について説明する。本実施形態では、
図8に示されるように、複数の第1オフセット調整部27は、第1配線部24と第3配線部26との距離が連続して変化するように構成されている。同様に、複数の第2オフセット調整部28は、第2配線部25と第3配線部26との距離が連続して変化するように構成されている。
【0077】
そして、誘電部材29は、連続して距離が変化した各オフセット調整部27、28のいずれかの位置に配置されている。誘電部材29は、上述のようにゲル状のものでも良いし、フィルム状のものでも良い。フィルム状の誘電部材29の場合は、その形状によって容量を調整しやすいというメリットや、回路チップ20の一面21に貼り付けるだけで良いという作業性向上のメリットがある。
【0078】
上述のように、各配線部24〜26は対向電位だけでなく空間電位によって回路チップ20の一面21の上方に回り込む電気力線も発生させる。したがって、各配線部24〜26は、回路チップ20の一面21に露出していても良いし、絶縁膜で覆われていても良い。
【0079】
本実施形態に係る半導体装置を製造する場合は、第1配線部24と第3配線部26との距離が連続して変化するように構成されていると共に、第2配線部25と第3配線部26との距離が連続して変化するように構成された回路チップ20を用意すれば良い。
【0080】
以上説明したように、本実施形態では、第1配線部24及び第2配線部25と第3配線部26との距離が連続して変化しているので、第1オフセット容量と第2オフセット容量との差分が無くなる距離の選択肢が増える。したがって、誘電部材29による出力値のオフセット補正の精度を向上させることができる。
【0081】
(他の実施形態)
上記各実施形態で示された半導体装置の構成は一例であり、上記で示した構成に限定されることなく、本発明を実現できる他の構成とすることもできる。例えば、各配線部24〜26のレイアウトは
図1や
図8に限らず適宜設定すれば良い。第1オフセット調整部27や第2オフセット調整部28の数についても同様である。また、第4ワイヤ43はセンサチップ10の構成に応じて設けられていなくても良い。
【0082】
第2実施形態で示された誘電部材29の温度特性は一例である。したがって、回路チップ20で取得される力学量の温度特性に応じて当該温度特性を打ち消す温度特性を有する誘電部材29を適宜選定すれば良い。
【0083】
第3実施形態では、各配線部24〜26にはパッド30〜33が設けられていない構成が示されているが、各配線部24〜26にパッド30〜33が設けられており、各突出部34〜36がパッド30〜33の上に設けられていても良い。
【0084】
上記各実施形態では、回路チップ20の上にセンサチップ10が積層された構造になっているが、これは一例である。例えば、センサチップ10と回路チップ20とが横並びに配置されていても良い。この場合は回路チップ20の一面21にセンサチップ10が配置されないので、各配線部24〜26のレイアウトの自由度が向上する。
【0085】
また、上記各実施形態では、センサチップ10はSOI基板に基づいて構成されていたが、これは一例である。したがって、センサチップ10はSOI基板ではなく、他の基板によって構成されていても良い。もちろん、センサチップ10は力学量として加速度の他に角速度や圧力を検出するものでも良い。さらに、
図2に示された可動部11や各固定部12、13の構造は一例であり、他の構造でも良い。