(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
<樹脂組成物>
当該樹脂組成物は、フォトリソグラフィーによるレジストパターン形成方法に用いられる樹脂組成物であって、[A]重合体及び[B]溶媒を含有することを特徴とする。
【0014】
当該樹脂組成物の好適な実施形態としては、感放射線性樹脂組成物(以下、「樹脂組成物(A)」ともいう)、液浸露光用保護膜形成樹脂組成物(以下、「樹脂組成物(B)」ともいう)等が挙げられる。
【0015】
<樹脂組成物(A)>
当該樹脂組成物が樹脂組成物(A)(感放射線性樹脂組成物)の場合、[A]重合体及び[B]溶媒を含有し、感放射線性酸発生体(以下、「[C]酸発生体」ともいう)をさらに含有し、好適成分として、[D]酸拡散制御体、[E][A]重合体以外のフッ素原子含有重合体(以下、「[E]重合体」ともいう)を含有してもよく、本発明の効果を損なわない範囲においてその他の任意成分を含有していてもよい。
【0016】
樹脂組成物(A)は、重合体成分として、ベース重合体のみを含有していてもよく、ベース重合体以外に撥水性重合体添加剤を含有することもできる。「ベース重合体」とは、樹脂組成物(A)から形成されるレジスト膜の主成分となる重合体をいい、好ましくは、レジスト膜を構成する全重合体に対して50質量%以上を占める重合体をいう。また、「撥水性重合体添加剤」とは、樹脂組成物(A)に含有させることで、形成されるレジスト膜の表層に偏在化する傾向を有する重合体である。ベース重合体となる重合体より疎水性が高い重合体は、レジスト膜表層に偏在化する傾向があり、撥水性重合体添加剤として機能させることができる。樹脂組成物(A)は、撥水性重合体添加剤を含有することで、レジスト膜からの酸発生体等の溶出を抑制できると共に、形成されたレジスト膜表面が高い動的接触角を示すので、レジスト膜表面は優れた水切れ特性を発揮することができる。これにより液浸露光プロセスにおいて、レジスト膜表面と液浸媒体を遮断するための上層膜を別途形成することを要することなく、高速スキャン露光を可能にすることができる。樹脂組成物(A)が撥水性重合体添加剤を含有する場合、撥水性重合体添加剤の含有量としては、ベース重合体100質量部に対して、0.1質量部〜20質量部が好ましく、0.3質量部〜15質量部がより好ましく、0.5質量部〜10質量部がさらに好ましい。樹脂組成物(A)におけるベース重合体の含有量としては、樹脂組成物(A)中の全固形分に対して、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、85質量%以上がさらに好ましい。
【0017】
樹脂組成物(A)において、重合体が撥水性重合体添加剤として良好に機能するには、撥水性重合体添加剤を構成する重合体は、フッ素原子を有する重合体であることが好ましく、また、そのフッ素原子含有率が、ベース重合体のフッ素原子含有率より大きいことがより好ましい。撥水性重合体添加剤のフッ素原子含有率がベース重合体のフッ素原子含有率よりも大きいと、形成されたレジスト膜において、撥水性重合体添加剤がその表層に偏在化する傾向がより高まるため、レジスト膜表面の高い水切れ性等の撥水性重合体添加剤の疎水性に起因する特性が、より効果的に発揮される。撥水性重合体添加剤を構成する重合体のフッ素原子含有率としては、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましく、7質量%以上が特に好ましい。なお、このフッ素原子含有率(質量%)は、
13C−NMRの測定により求めた重合体の構造から算出することができる。
【0018】
樹脂組成物(A)における重合体成分の態様としては、(1)ベース重合体としての[A]重合体、(2)ベース重合体としての[A]重合体及び撥水性重合体添加剤としての[A]重合体、(3)ベース重合体としての[A]重合体及び撥水性重合体添加剤としての[E]重合体、(4)ベース重合体としての[F]重合体及び撥水性重合体添加剤としての[A]重合体をそれぞれ含有する場合等が挙げられる。
【0019】
<樹脂組成物(B)>
当該樹脂組成物が樹脂組成物(B)(液浸露光用保護膜形成樹脂組成物)の場合、[A]重合体及び[B]溶媒を含有し、好適成分として、後述する[E][A]重合体以外のフッ素原子含重合体(以下、「[E]重合体」ともいう)を含有していてもよく、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の任意成分を含有してもよい。
樹脂組成物(B)における重合体成分の含有量としては、樹脂組成物(B)中の全固形分に対して、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましい。
以下、各成分について説明する。
【0020】
<[A]重合体>
[A]重合体は、構造単位(I)を有する重合体である。当該樹脂組成物は、[A]重合体が構造単位(I)を有することで、優れた焦点深度、露光余裕度及びMEEF性能を発揮して、LWR性能、CDU性能、解像性及び断面形状の矩形性に優れるレジストパターンを形成することができる(これらの性能を、以下、「リソグラフィー性能」ともいう)。当該樹脂組成物が上記構成を有することで上記効果を奏する理由については必ずしも明確ではないが、例えば、以下のように推察することができる。すなわち,構造単位(I)は、上記式(1)のようにヒドロキシ基とフッ素原子と−COOR基を有しており、フッ素原子等に起因する撥水性とヒドロキシ基等に起因する親水性とのバランスをより適度に調整することができる。その結果、当該樹脂組成物によれば、形成されるレジストパターンのリソグラフィー性能を向上させることができると考えられる。
【0021】
また、樹脂組成物(B)(液浸露光用保護膜形成樹脂組成物)は、上述のリソグラフィー性能に加えて、組成物安定性及び上層膜除去性に優れ、溶出量、剥がれ耐性、ブロッブ欠陥及びブリッジ欠陥が抑制されたレジストパターンを形成することができる。
【0022】
樹脂組成物(A)におけるベース重合体としての[A]重合体(以下、「[A1]重合体」ともいう)は、構造単位(I)以外にも、酸解離性基を含む構造単位(II)及び構造単位(I)以外の構造単位にあって、ラクトン構造、環状カーボネート構造及びスルトン構造からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む構造単位(III)を有することが好ましく、ヒドロキシ基を有する構造単位(VI)を有してもよく、上記構造単位(I)〜(III)及び(VI)以外の構造単位を有してもよい。
樹脂組成物(A)における撥水性重合体添加剤としての[A]重合体(以下、「[A2]重合体」ともいう)は、構造単位(I)以外にも、上記構造単位(I)以外の構造単位であってフッ素原子を含む構造単位を有することが好ましく、ヒドロキシ基を含む構造単位(VI)を有してもよく、上記構造単位(I)〜(III)及び(VI)以外の構造単位を有してもよい。
樹脂組成物(B)における[A]重合体(以下、「[A3]重合体」ともいう)は、構造単位(I)以外にも、末端にヒドロキシ基を有しこのヒドロキシ基に隣接する炭素原子が少なくとも1個のフッ素原子又はフッ素化アルキル基を有する基(z)を含む構造単位(IV)を有することが好ましく、スルホ基を含む構造単位(V)を有してもよく、上記以外の構造単位を有してもよい。
[A]重合体は、上記各構造単位を1種又は2種以上有していてもよい。
以下、各構造単位について説明する。
[構造単位(I)]
構造単位(I)は、下記式(1)又は下記式(2)で表される基を含む構造単位である。(以下、「構造単位(I−1)」、「構造単位(I−2)」ともいう)
【0024】
上記式(1)及び(2)中、R
1及びR
2は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又は炭素数1〜20の1価の有機基である。これらの基が互いに合わせられ構成される環構造を形成してもよい。R
3は、それぞれ独立して、炭素数1〜30の1価の有機基である。R
f2及びR
f3は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数1〜10のフッ素化アルキル基である。1又は複数のR
f2及びR
f3並びにR
3のうちの2つ以上は、互いに合わせられ構成される環員数4〜30の環構造を形成してもよい。但し、R
f1、R
f2及びR
f3のうちの少なくとも1つはフッ素原子又はフッ素化アルキル基である。m及びnは、それぞれ独立して、1〜3の整数である。R
1、R
2、R
f2及びR
f3がそれぞれ複数の場合、複数のR
1、R
2、R
f2及びR
f3はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。*は、上記構造単位の他の部分に結合する部位を示す。
式(1)中、R
f1は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基又は炭素数1〜10のフッ素化アルキル基である。1又は複数のR
1及びR
2並びにR
f1のうちの2つ以上は、互いに合わせられ構成される環員数3〜30の環構造を形成してもよい。
【0025】
上記R
1、R
2及びR
3で表される1価の有機基としては、例えば、炭素数1〜20の1価の炭化水素基である。上記炭化水素基の炭素−炭素間又は結合手側の末端に2価のヘテロ原子含有基を含む基、上記炭化水素基及び上記ヘテロ原子含有基を含む基が有する水素原子の一部又は全部を1価のヘテロ原子含有基で置換した基等が挙げられる。
【0026】
上記炭素数1〜20の1価の炭化水素基としては、例えば、炭素数1〜20の鎖状炭化水素基、炭素数3〜20の脂環式炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基等が挙げられる。上記炭素数1〜30の1価の炭化水素基としては、例えば、炭素数1〜30の鎖状炭化水素基、炭素数3〜30の脂環式炭化水素基、炭素数6〜30の芳香族炭化水素基等が挙げられる。
【0027】
上記鎖状炭化水素基としては、例えば、
メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等のアルキル基;
エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基等のアルケニル基;
エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基等のアルキニル基などが挙げられる。
【0028】
上記脂環式炭化水素基としては、例えば、
シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基;
ノルボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基等の多環のシクロアルキル基;
シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の単環のシクロアルケニル基;
ノルボルネニル基、トリシクロデセニル基等の多環のシクロアルケニル基などが挙げられる。
【0029】
上記芳香族炭化水素基としては、例えば、
フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基等のアリール基;
ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、アントリルメチル基等のアラルキル基などが挙げられる。
【0030】
上記1価及び2価のヘテロ原子含有基が有するヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ケイ素原子、リン原子などが挙げられる。これらの中で、酸素原子、硫黄原子、窒素原子が好ましく、酸素原子がより好ましい。
【0031】
上記2価のヘテロ原子含有基としては、例えば、−O−、−CO−、−CS−、−NR’−、これらを組み合わせた基などが挙げられる。R’は、水素原子又は炭素数1〜10の1価の炭化水素基である。
【0032】
上記1価のヘテロ原子含有基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルファニル基(−SH)、アミノ基、シアノ基などが挙げられる。
【0033】
上記R
1とR
2の基が互いに合わせられ構成される環構造としては、例えば、
シクロプロパン構造、シクロブタン構造、シクロペンタン構造、シクロヘキサン構造、シクロオクタン構造等の単環のシクロアルカン構造;
ノルボルナン構造、アダマンタン構造、トリシクロデカン構造、テトラシクロドデカン構造等の多環のシクロアルカン構造;
シクロプロペン構造、シクロブテン構造、シクロペンテン構造、シクロヘキセン構造、シクロオクテン構造等の単環のシクロアルケン構造;
ノルボルネン構造、トリシクロデセン構造、テトラシクロドデセン構造等の多環のシクロアルケン構造;
ブチロラクトン構造等のラクトン構造などが挙げられる。
【0034】
上記R
f1、R
f2及びR
f3で表される上記アルキル基としては、例えば、
メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基などが挙げられる。
【0035】
上記R
f1、R
f2及びR
f3で表される上記シクロアルキル基としては、例えば、
シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基;
ノルボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基等の多環のシクロアルキル基などが挙げられる。
【0036】
上記R
f1、R
f2及びR
f3で表される上記フッ素化アルキル基としては、例えば、
トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、パーフルオロエチル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル基、パーフルオロn−プロピル基、パーフルオロi−プロピル基、パーフルオロn−ブチル基、パーフルオロi−ブチル基、パーフルオロt−ブチル基、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基などが挙げられる。
【0037】
上記R
f2及びR
f3並びにR
3が互いに合わせられ構成される環構造としては、上記R
1とR
2の基が互いに合わせられ構成される環構造と同様の基が挙げられる。
【0038】
上記R
1及びR
2並びにR
f1が互いに合わせられ構成される環構造としては、上記R
1とR
2の基が互いに合わせられ構成される環構造と同様の基が挙げられる。
【0039】
上記R
1及びR
2としては水素原子、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基が好ましく、水素原子がより好ましい。これらの基が合わせられ構成される環構造としては、シクロアルカン構造が好ましく、シクロヘキサン構造がより好ましい。
上記R
3としては、メチル基、エチル基、ラクトン構造を有する基、フッ素化アルキル基、単環のシクロアルカン構造、多環のシクロアルカン構造が好ましく、ペンタフルオロエチル基、トリフルオロメチル基、ブチロラクトン構造を有する基、アダマンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基が好ましい。
【0040】
上記R
3がフッ素原子を含む場合、フッ素化アルキル基、−COO−及びフッ素原子を含む基がより好ましく、パーフルオロアルキル基、炭化水素オキシカルボニルジフルオロメチル基、フッ素化アルコキシカルボニルジフルオロメチル基がさらに好ましく、トリフルオロメチル基、アルコキシカルボニルジフルオロメチル基、フッ素化アルコキシカルボニルジフルオロメチル基が特に好ましい。
【0041】
上記R
f2及びR
f3のいずれかがフッ素原子を含む場合、R
f2及びR
f3の少なくともいずれかがフッ素原子、フッ素化アルキル基であることが好ましく、R
f2及びR
f3の両方がフッ素原子、フッ素化アルキル基であることがより好ましく、R
f2及びR
f3の両方がフッ素原子、パーフルオロアルキル基であることがさらに好ましく、R
f2及びR
f3の両方がフッ素原子、トリフルオロメチル基であることが特に好ましく、R
f2及びR
f3の両方がフッ素原子であることがさらに特に好ましい。
【0042】
上記R
f2又はR
f3とR
3とが合わせられ構成される環構造としては、ラクトン構造が好ましく、ブチロラクトン構造がより好ましい。
上記R
f1としてはジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、シクロヘキシル基、フェニル基が好ましく、トリフルオロメチル基がより好ましい。
【0043】
構造単位(I)は、上記式(1)の−COHに隣接する炭素原子に結合するR
f2及びR
f3並びにR
f1のうち少なくとも1つがフッ素原子を含むことが好ましい。これにより、OH基の酸性度を高めることができ、[A]重合体はアルカリ現像液に対してより高い親和性を発揮することができる。また、上記式(1)の−COO−に隣接する炭素原子に結合するR
f2、R
f3及びR
3のうちの少なくとも1つがフッ素原子を含むことが好ましい。このようにすることで、アルカリの作用により加水分解する性質が向上する。この−COOR
3−が加水分解すると、カルボキシ基とヒドロキシ基とを与えるので、[A]重合体は、アルカリ現像の際に、より高い親水性を有することにより、当該樹脂組成物のアルカリ現像液への親和性がさらに高くなる。これらの結果、当該樹脂組成物によれば、形成されるレジストパターンのリソグラフィー性能をさらに向上させることができる。
【0044】
m及びnは、それぞれ独立して、1〜3の整数である。mは1又は2が好ましく、1がより好ましい。nは1又は2が好ましく、1がより好ましい。
【0045】
上記構造単位(I)としては、例えば、下記式(1−1)〜(1−3)で表される構造単位(以下、「構造単位(I−1)〜(I−3)」ともいう)等が挙げられる。
【0047】
上記式(1−1)〜(1−3)中、Zは、上記式(1)で表される基である。R
4は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
【0048】
構造単位(I−1)としては、下記式(1−1−1)〜(1−3−1)で表される構造単位(以下、「構造単位(I−1−1)〜(I−3−1)」ともいう)が好ましい。
【0050】
上記式(1−1−1)〜(1−3−1)中、R
1、R
2、R
3、R
f1、R
f2及びR
f3は、上記式(1)におけるそれぞれの基と同義である。
【0051】
構造単位(I)を与える単量体(以下、「化合物(i)」ともいう)としては、例えば、下記式(i−1−1)〜(i−1−17)、(i−2−1)、(i−2−2)、(i−3−1)及び(i−3−2)で表される化合物(以下、「化合物(i−1−1)〜(i−1−17)、(i−2−1)、(i−2−2)、(i−3−1)及び(i−3−2)」ともいう)等が挙げられる。
【0054】
これらの中で、化合物(i−1−1)〜(i−1−17)が好ましい。
【0055】
[A1]重合体の構造単位(I)の含有割合としては、[A1]重合体を構成する全構造単位に対して、2モル%〜30モル%が好ましく、3モル%〜20モル%がより好ましく、5モル%〜15モル%がさらに好ましい。[A2]重合体の構造単位(I)の含有割合としては、[A2]重合体を構成する全構造単位に対して、5モル%〜60モル%が好ましく、10モル%〜50モル%がより好ましく、20モル%〜45モル%がさらに好ましい。[A3]重合体の構造単位(I)の含有割合としては、[A3]重合体を構成する全構造単位に対して、30モル%〜100モル%が好ましく、40モル%〜99モル%がより好ましく、45モル%〜98モル%がさらに好ましい。上記含有割合を上記範囲とすることで、当該樹脂組成物のリソグラフィー性能がより向上する。
【0056】
化合物(i)は、例えば、化合物(i)が下記式(1−1A)〜(1−3A)で表される場合、下記のスキームに従い、簡便かつ収率よく合成することができる。
【0058】
上記式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又は炭素数1〜20の1価の有機基である。これらの基が互いに合わせられ構成される環構造を形成してもよい。R
3は、炭素数1〜30の1価の有機基である。R
f2及びR
f3は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数1〜10のフッ素化アルキル基である。1又は複数のR
f2及びR
f3並びにR
3のうちの2つ以上は、互いに合わせられ構成される環員数4〜30の環構造を形成してもよい。但し、R
f1、R
f2及びR
f3のうちの少なくとも1つはフッ素原子又はフッ素化アルキル基である。m及びnは、それぞれ独立して、1〜3の整数である。R
1、R
2、R
f2及びR
f3がそれぞれ複数の場合、複数のR
1、R
2、R
f2及びR
f3はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。R
f1は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基又は炭素数1〜10のフッ素化アルキル基である。1又は複数のR
1及びR
2並びにR
f1のうちの2つ以上は、互いに合わせられ構成される環員数3〜30の環構造を形成してもよい。R
4は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Yは、ハロゲン原子である。
【0059】
Yとしては、塩素原子、臭素原子が好ましく、臭素原子が好ましい。
【0060】
上記式(1−1a)〜(1−3a)で表される化合物と、上記式(b)で表される化合物とを、亜鉛存在下、溶媒中で反応させることにより、上記式(1−1A)〜(1−3A)で表される化合物を得ることができる。この化合物を、溶媒洗浄、カラムクロマトグラフィー、再結晶、蒸留等により精製することにより単離することができる。また、式(2)で表される基を有する化合物についても同様のスキームにより合成することができる。
【0061】
[構造単位(II)]
構造単位(II)は、下記式(3)で表される構造単位である。構造単位(II)の−CR
6R
7R
8で表される基は、酸解離性基である。「酸解離性基」とは、カルボキシ基の水素原子を置換する基であって、酸の作用により解離する基をいう。当該樹脂組成物は、[A]重合体が構造単位(II)を有することで、感度を向上させることができ、その結果、リソグラフィー性能等を向上させることができる。
【0063】
上記式(2)中、R
5は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R
6は、炭素数1〜10の1価の鎖状炭化水素基又は炭素数3〜20の1価の脂環式炭化水素基である。R
7及びR
8は、それぞれ独立して、炭素数1〜10の1価の鎖状炭化水素基若しくは炭素数3〜20の1価の脂環式炭化水素基であるか、又はこれらの基が互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される炭素数3〜20の脂環構造を表す。但し、R
7及びR
8が互いに合わせられ構成される脂環構造がこれらが結合する炭素原子に隣接する炭素原子とこの炭素原子に隣接する炭素原子との間に二重結合を含む場合、R
6は水素原子であってもよい。
【0064】
上記R
5としては、構造単位(II)を与える単量体の共重合性の観点から、水素原子、メチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0065】
上記R
6、R
7及びR
8で表される炭素数1〜10の1価の鎖状炭化水素基としては、例えば、
メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基等のアルキル基;
エテニル基、プロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基;
エチニル基、プロピニル基、ブチニル基等のアルキニル基等が挙げられる。
【0066】
上記R
6、R
7及びR
8で表される炭素数3〜20の1価の脂環式炭化水素基としては、例えば、
シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基;
シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の単環のシクロアルケニル基;
ノルボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデシル基等の多環のシクロアルキル基;
ノルボルネニル基、トリシクロデセニル基等の多環のシクロアルケニル基等が挙げられる。
【0067】
上記これらの基が互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成され表す炭素数3〜20の脂環構造としては、例えば、
シクロプロパン構造、シクロブタン構造、シクロペンタン構造、シクロヘキサン構造、シクロヘプタン構造、シクロオクタン構造等の単環のシクロアルカン構造;
ノルボルナン構造、アダマンタン構造、トリシクロデカン構造、テトラシクロドデカン構造等の多環のシクロアルカン構造等が挙げられる。
【0068】
構造単位(II)としては、下記式(3−1)〜(3−5)で表される構造単位(以下、「構造単位(II−1)〜(II−5)」ともいう)が好ましい。
【0070】
上記式(3−1)〜(3−5)中、R
5〜R
8は、上記式(3)と同義である。R
6’は、水素原子、炭素数1〜10の1価の鎖状炭化水素基又は炭素数3〜20の1価の脂環式炭化水素基である。i及びjは、それぞれ独立して、1〜4の整数である。R
X及びR
Yは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10の1価の鎖状炭化水素基である。R
Zは、R6’が結合する炭素原子、及びR
Xが結合する炭素原子とR
Yが結合する炭素原子との間の二重結合を含む炭素数3〜20の4価の脂環式炭化水素基である。
【0071】
構造単位(II−1)〜(II−5)としては、例えば、下記式で表される構造単位等が挙げられる。
【0074】
上記式中、R
5は、上記式(3)と同義である。
【0075】
構造単位(II)としては、1−アルキル−1−シクロペンチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位、2−アルキル−2−アダマンチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位、2−(アダマンタン−1−イル)プロパン−2−イル(メタ)アクリレートに由来する構造単位、2−シクロヘキシルプロパン−2−イル(メタ)アクリレートに由来する構造単位が好ましい。
【0076】
[A1]重合体の構造単位(II)の含有割合としては、[A1]重合体を構成する全構造単位に対して、10モル%〜80モル%が好ましく、20モル%〜70モル%がより好ましく、30モル%〜65モル%がさらに好ましい。[A2]重合体の構造単位(II)の含有割合としては、[A2]重合体を構成する全構造単位に対して、30モル%〜90モル%が好ましく、40モル%〜85モル%がより好ましく、50モル%〜80モル%がさらに好ましい。上記含有割合を上記範囲とすることで、当該樹脂組成物の感度及び解像性がより向上し、結果として、リソグラフィー性能が向上する。上記含有割合が上記下限未満だと、当該樹脂組成物のパターン形成性が低下する場合がある。上記含有割合が上記上限を超えると、レジストパターンの基板への密着性が低下する場合がある。
【0077】
[構造単位(III)]
構造単位(III)は、構造単位(I)以外の構造単位であってラクトン構造、環状カーボネート構造及びスルトン構造からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む構造単位である。[A]重合体は、構造単位(I)に加えて、構造単位(III)をさらに有することで、現像液への溶解性をさらに調整することができ、その結果、当該樹脂組成物のリソグラフィー性能等を向上させることができる。また、当該樹脂組成物から形成されるレジストパターンと基板との密着性を向上させることができる。
【0078】
構造単位(III)としては、例えば、下記式で表される構造単位等が挙げられる。
【0082】
上記式中、R
L1は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
【0083】
構造単位(III)としては、これらの中で、ノルボルナンラクトン構造を含む構造単位、γ−ブチロラクトン構造を含む構造単位、エチレンカーボネート構造を含む構造単位、ノルボルナンスルトン構造を含む構造単位が好ましく、ノルボルナンラクトン−イル(メタ)アクリレートに由来する構造単位、シアノ置換ノルボルナンラクトン−イル(メタ)アクリレートに由来する構造単位、ノルボルナンラクトン−イルオキシカルボニルメチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位、γ−ブチロラクトン−イル(メタ)アクリレートに由来する構造単位、エチレンカーボネート−イルメチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位、ノルボルナンスルトン−イル(メタ)アクリレートに由来する構造単位、ノルボルナンスルトン−イルオキシカルボニルメチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位がより好ましい。
【0084】
[A1]重合体の構造単位(III)の含有割合としては、[A1]重合体を構成する全構造単位に対して、0モル%〜70モル%が好ましく、10モル%〜65モル%がより好ましく、25モル%〜55モル%がさらに好ましい。上記含有割合を上記範囲とすることで、当該樹脂組成物から形成されるレジストパターンの基板への密着性をより向上させることができる。上記含有割合が上記下限未満だと、当該樹脂組成物から形成されるレジストパターンの基板への密着性が低下する場合がある。上記含有割合が上記上限を超えると、当該樹脂組成物のパターン形成性が低下する場合がある。
【0085】
[構造単位(IV)]
構造単位(IV)は、末端にヒドロキシ基を有しこのヒドロキシ基に隣接する炭素原子が少なくとも1個のフッ素原子又はフッ素化アルキル基を有する基(z)を含む構造単位である。[A]重合体は、構造単位(IV)を有することで、現像液への溶解性をより適度に調整することができ、その結果、当該樹脂組成物のリソグラフィー性能をより向上させることができる。また、EUV露光の場合の当該樹脂組成物の感度を高めることができる。
【0086】
上記基(z)としては、例えば、下記式(z−1)で表される基等が挙げられる。
【0088】
上記式(z−1)中、R
f4及びR
f5は、それぞれ独立して、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数1〜10のフッ素化アルキル基である。但し、R
f4及びR
f5はのうちの少なくともいずれかはフッ素化アルキル基である。
【0089】
上記R
f4及びR
f5で表される炭素数1〜10のフッ素化アルキル基としては、例えば、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、フルオロエチル基、ジフルオロエチル基、トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘキサフルオロプロピル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基等が挙げられる。
これらの中で、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基が好ましく、トリフルオロメチル基がより好ましい。
【0090】
上記基(z)としては、ヒドロキシ−ジ(トリフルオロメチル)メチル基、ヒドロキシ−ジ(ペンタフルオロエチル)メチル基、ヒドロキシ−メチル−トリフルオロメチルメチル基が好ましく、ヒドロキシ−ジ(トリフルオロメチル)メチル基がより好ましい。
【0091】
構造単位(IV)としては、例えば、下記式(4−1)〜(4−9)で表される構造単位(以下、「構造単位(IV−1)〜(IV−9)」ともいう)等が挙げられる。
【0093】
上記式(4−1)〜(4−9)中、R
L3は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基である。
【0094】
これらの中で、構造単位(IV−4)、構造単位(IV−6)が好ましい。
【0095】
[A3]重合体における構造単位(IV)の含有割合としては、[A3]重合体を構成する全構造単位に対して、0モル%〜80モル%が好ましく、20モル%〜70モル%がより好ましく、30モル%〜60モル%がさらに好ましい。
[A3]重合体は構造単位(IV)の含有割合を上記範囲とすることで、現像液への溶解性をさらに適度に調整することができ、その結果、当該樹脂組成物のリソグラフィー性能をさらに向上させることができる。また、EUV露光の場合の当該樹脂組成物の感度をより高めることができる。
【0096】
[構造単位(V)]
構造単位(V)は、スルホ基を含む構造単位である。[A]重合体は、構造単位(V)を有することで、基板への密着性を高めることができ、例えば、液浸露光用保護膜形成樹脂組成物として好適に用いることができる。
【0097】
構造単位(V)としては、例えば、下記式(5)で表される構造単位等が挙げられる、
【0099】
上記式(5)中、R
Gは、水素原子、メチル基、フッ素原子又はトリフルオロメチル基である。L
2は、単結合、酸素原子、硫黄原子、炭素数1〜6の2価の直鎖状若しくは分岐状の炭化水素基、炭素数4〜12の2価の脂環式炭化水素基、炭素数6〜12の2価の芳香族炭化水素基又は−C(=O)−X
4−R
g−基である。X
4は、酸素原子、硫黄原子又はNH基である。R
gは、単結合、炭素数1〜6の2価の直鎖状若しくは分岐状の炭化水素基、炭素数4〜12の2価の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜12の2価の芳香族炭化水素基である。
【0100】
上記L
2及びR
gで表される炭素数1〜6の2価の直鎖状若しくは分岐状の炭化水素基としては、飽和炭化水素基が好ましく、例えば、メチレン基、エチレン基、1,3−プロピレン基、1,2−プロピレン基、1,1−プロピレン基、2,2−プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、1−メチル−1,3−プロピレン基、2−メチル−1,3−プロピレン基、2−メチル−1,2−プロピレン基、1−メチル−1,4−ブチレン基、2−メチル−1,4−ブチレン基等が挙げられる。
【0101】
上記L
2及びR
gで表される炭素数4〜12の2価の脂環式炭化水素基としては、単環式でも多環式でもよく、多環式においては架橋構造を有していてもよい。単環式炭化水素基としては、例えば、1,3−シクロブチレン基等のシクロブチレン基、1,3−シクロペンチレン基等のシクロペンチレン基、1,4−シクロヘキシレン基等のシクロヘキシレン基、1,5−シクロオクチレン基等のシクロオクチレン基等が挙げられる。多環式炭化水素基としては、例えば、2〜4員環を有する炭化水素基が挙げられ、1,4−ノルボルニレン基、2,5−ノルボルニレン基等のノルボルニレン基、1,5−アダマンチレン基、2,6−アダマンチレン基等のアダマンチレン基等が挙げられる。
【0102】
上記L
2及びR
gで表される炭素数6〜12の2価の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニレン基、トリレン基等のアリーレン基等が挙げられる。
【0103】
上記L
2としては、単結合、炭素数1〜6の2価の直鎖状若しくは分岐状の炭化水素基、炭素数6〜12の2価の芳香族炭化水素、又はR
gが炭素数1〜6の2価の直鎖状若しくは分岐状の炭化水素基である−C(=O)−NH−R
Cが好ましく、単結合、メチレン基、フェニレン基、−C(=O)−NH−C(CH
3)
2−CH
2−がより好ましい。
【0104】
構造単位(V)としては、例えば、下記式(5−1)〜(5−4)で表される構造単位(以下、「構造単位(V−1)〜(V−4)」ともいう)等が挙げられる。
【0106】
上記式(5−1)〜(5−4)中、R
Gは、上記式(5)と同義である。
【0107】
これらの中で、構造単位(V−1)が好ましい。
【0108】
[A3]重合体における構造単位(V)の含有割合としては、[A3]重合体を構成する全構造単位に対して、0モル%〜20モル%が好ましく、0モル%〜10モル%がより好ましく、0.1モル%〜5モル%がさらに好ましく、0.5モル%〜3モル%が特に好ましい。
[A]重合体の構造単位(V)の含有割合を上記範囲とすることで、当該樹脂組成物から形成される膜と基板との密着性をさらに向上させることができる。
【0109】
[構造単位(VI)]
構造単位(VI)は、ヒドロキシ基を含む構造単位である。[A]重合体は、構造単位(VI)を有することで、溶解性をより適度に調製することができる。また、当該樹脂組成物から形成されるレジストパターンの基板への密着性を高めることがでる。
【0110】
構造単位(VI)としては、例えば、下記式で表される構造単位等が挙げられる。
【0112】
上記式中、R
Bは水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
【0113】
上記ヒドロキシ基を含む構造単位の含有割合としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、30モル%以下が好ましく、20モル%以下が好ましく、3モル%〜15モル%がさらに好ましい。上記含有割合が上記上限を超えると、当該樹脂組成物のパターン形成性が低下する場合がある。
【0114】
[その他の構造単位]
[A]重合体は、上記構造単位(I)〜(VI)以外のその他の構造単位を有していてもよい。上記その他の構造単位の含有割合としては、例えば、構造単位(I)以外の構造単位であって、フッ素原子を含む構造単位等が挙げられる。このフッ素原子を含む構造単位としては、後述する[E]重合体における構造単位(Ea)及び(Eb)等が挙げられる。[A]重合体を構成する全構造単位に対して20モル%以下が好ましく、10モル%以下がより好ましい。
【0115】
<[A]重合体の合成方法>
[A]重合体は、例えば、各構造単位を与える単量体を、ラジカル重合開始剤等を用い、適当な溶媒中で重合することにより合成できる。
【0116】
上記ラジカル重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート等のアゾ系ラジカル開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の過酸化物系ラジカル開始剤等が挙げられる。これらの中で、AIBN、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレートが好ましく、AIBNがより好ましい。これらのラジカル開始剤は1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0117】
上記重合に使用される溶媒としては、例えば、
n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン等のアルカン類;
シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン、ノルボルナン等のシクロアルカン類;
ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン等の芳香族炭化水素類;
クロロブタン類、ブロモヘキサン類、ジクロロエタン類、ヘキサメチレンジブロミド、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;
酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、プロピオン酸メチル等の飽和カルボン酸エステル類;
アセトン、メチルエチルケトン、4−メチル−2−ペンタノン、2−ヘプタノン等のケトン類;
テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン類、ジエトキシエタン類等のエーテル類;
メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、4−メチル−2−ペンタノール等のアルコール類等が挙げられる。これらの重合に使用される溶媒は、1種単独で又は2種以上を併用してもよい。
【0118】
上記重合における反応温度としては、通常40℃〜150℃、50℃〜120℃が好ましい。反応時間としては、通常1時間〜48時間、1時間〜24時間が好ましい。
【0119】
[A]重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は特に限定されないが、1,000以上50,000以下が好ましく、2,000以上30,000以下がより好ましく、3,000以上20,000以下がさらに好ましく、5,000以上15,000が特に好ましい。[A]重合体のMwを上記範囲とすることで、当該樹脂組成物の塗布性及び現像欠陥抑制性が向上する。[A]重合体のMwが上記下限未満だと、十分な耐熱性を有するレジスト膜が得られない場合がある。[A]重合体のMwが上記上限を超えると、レジスト膜の現像性が低下する場合がある。
【0120】
[A]重合体のGPCによるポリスチレン換算数平均分子量(Mn)に対するMwの比(Mw/Mn)は、通常、1以上5以下であり、1以上3以下が好ましく、1以上2以下がさらに好ましい。
【0121】
本明細書における重合体のMw及びMnは、以下の条件によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定される値である。
GPCカラム:G2000HXL 2本、G3000HXL 1本、G4000HXL 1本(以上、東ソー製)
カラム温度:40℃
溶出溶媒:テトラヒドロフラン(和光純薬工業製)
流速:1.0mL/分
試料濃度:1.0質量%
試料注入量:100μL
検出器:示差屈折計
標準物質:単分散ポリスチレン
【0122】
<[B]溶媒>
当該樹脂組成物は、通常、[B]溶媒を含有する。[B]溶媒は、少なくとも[A]重合体及び所望により含有される[C]酸発生体及び[D]酸拡散制御体等を溶解又は分散可能な溶媒であれば特に限定されない。
【0123】
[B]溶媒としては、例えば、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系有機溶媒、アミド系溶媒、エステル系有機溶媒、炭化水素系溶媒等が挙げられる。
【0124】
アルコール系溶媒としては、例えば、
メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、iso−ペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、tert−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、3−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、2,6−ジメチル−4−ヘプタノール、n−デカノール、sec−ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec−テトラデシルアルコール、sec−ヘプタデシルアルコール、フルフリルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール等のモノアルコール系溶媒;
エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2,4−ヘプタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等の多価アルコール系溶媒;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等の多価アルコール部分エーテル系溶媒等が挙げられる。
【0125】
エーテル系溶媒としては、例えば、
ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のジアルキルエーテル系溶媒;
テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等の環状エーテル系溶媒;
ジフェニルエーテル、アニソール(メチルフェニルエーテル)等の芳香環含有エーテル系溶媒等が挙げられる。
【0126】
ケトン系溶媒としては、例えば、
アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル−iso−ブチルケトン、2−ヘプタノン(メチル−n−ペンチルケトン)、エチル−n−ブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジ−iso−ブチルケトン、トリメチルノナノン等の鎖状ケトン系溶媒:
シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、メチルシクロヘキサノン等の環状ケトン系溶媒:
2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、アセトフェノン等が挙げられる。
【0127】
アミド系溶媒としては、例えば、
N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、N−メチルピロリドン等の環状アミド系溶媒;
N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド等の鎖状アミド系溶媒等が挙げられる。
【0128】
エステル系溶媒としては、例えば、
酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸iso−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸i−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n−ノニル等の酢酸エステル系溶媒;
エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の多価アルコール部分エーテルアセテート系溶媒;
ジエチルカーボネート等のカーボネート系溶媒;
ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸iso−アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチルなどが挙げられる。
【0129】
炭化水素系溶媒としては、例えば、
n−ペンタン、iso−ペンタン、n−ヘキサン、iso−ヘキサン、n−ヘプタン、iso−ヘプタン、2,2,4−トリメチルペンタン、n−オクタン、iso−オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;
ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、iso−プロピルベンゼン、ジエチルベンゼン、iso−ブチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ジ−iso−プロピルベンセン、n−アミルナフタレン等の芳香族炭化水素系溶媒等が挙げられる。
【0130】
これらの中で、エステル系溶媒、ケトン系溶媒が好ましく、多価アルコール部分エーテルアセテート系溶媒、環状ケトン系溶媒がより好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノンがさらに好ましい。当該樹脂組成物は、[B]溶媒を1種又は2種以上含有していてもよい。
【0131】
<[C]酸発生体>
[C]酸発生体は、露光により酸を発生する物質である。この発生した酸により[A]重合体等が有する酸解離性基が解離してカルボキシ基等が生じ、[A]重合体の有機溶媒を含有する現像液への溶解性が低下するため、当該樹脂組成物から、ネガ型のレジストパターンを形成することができる、当該樹脂組成物における[C]酸発生体の含有形態としては、後述するような低分子化合物の形態(以下、適宜「[C]酸発生剤」ともいう)でも、重合体の一部として組み込まれた酸発生基の形態でも、これらの両方の形態でもよい。
【0132】
[C]酸発生剤としては、例えば、オニウム塩化合物、N−スルホニルオキシイミド化合物、ハロゲン含有化合物、ジアゾケトン化合物等が挙げられる。
【0133】
オニウム塩化合物としては、例えば、スルホニウム塩、テトラヒドロチオフェニウム塩、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ピリジニウム塩等が挙げられる。
【0134】
スルホニウム塩としては、例えば、
トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1−ジフルオロエタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムカンファースルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムカンファースルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムカンファースルホネート、トリフェニルスルホニウム1,1,2,2−テトラフルオロ−6−(1−アダマンタンカルボニロキシ)−ヘキサン−1−スルホネート等が挙げられる。
【0135】
テトラヒドロチオフェニウム塩としては、例えば、
1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムカンファースルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムカンファースルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムカンファースルホネート等が挙げられる。
【0136】
ヨードニウム塩としては、例えば、
ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ジフェニルヨードニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムカンファースルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムカンファースルホネート等が挙げられる。
【0137】
N−スルホニルオキシイミド化合物としては、例えば、
N−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(ノナフルオロ−n−ブタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(パーフルオロ−n−オクタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−(3−テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]ドデカニル)−1,1−ジフルオロエタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(カンファースルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド等を挙げることができる。
【0138】
[C]酸発生剤としては、下記式(6)で表される化合物が好ましい。[C]酸発生剤が下記構造を有することで、[A]重合体の各構造単位との相互作用等により、露光により発生する酸のレジスト膜中の拡散長がより適度に短くなると考えられ、その結果、当該樹脂組成物のリソグラフィー性能をより向上させることができる。
【0140】
上記式(6)中、R
9は、環員数6以上の脂環構造を含む1価の基又は環員数6以上の脂肪族複素環構造を含む1価の基である。R
10は、炭素数1〜10のフッ素化アルカンジイル基である。X
+は、1価の放射線分解性オニウムカチオンである。
【0141】
R
9における「環員数」とは、脂環構造及び脂肪族複素環構造の環を構成する原子数をいい、多環の脂環構造及び多環の脂肪族複素環構造の場合は、この多環を構成する原子数をいう。
【0142】
上記R
9で表される環員数6以上の脂環構造を含む1価の基としては、例えば、
シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロドデシル基等の単環のシクロアルキル基;
シクロオクテニル基、シクロデセニル基等の単環のシクロアルケニル基;
ノルボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基等の多環のシクロアルキル基;
ノルボルネニル基、トリシクロデセニル基等の多環のシクロアルケニル基等が挙げられる。
【0143】
上記R
9で表される環員数6以上の脂肪族複素環構造を含む1価の基としては、例えば、
ノルボルナンラクトン−イル基等のラクトン構造を含む基;
ノルボルナンスルトン−イル基等のスルトン構造を含む基;
オキサシクロヘプチル基、オキサノルボルニル基等の酸素原子含有複素環基;
アザシクロヘキシル基、アザシクロヘプチル基、ジアザビシクロオクタン−イル基等の窒素原子含有複素環基;
チアシクロヘプチル基、チアノルボルニル基等のイオウ原子含有複素環基等が挙げられる。
【0144】
R
9で表される基の環員数しては、上述の酸の拡散長がさらに適度になる観点から、8以上が好ましく、9〜15がより好ましく、10〜13がさらに好ましい。
【0145】
R
9としては、これらの中で、環員数9以上の脂環構造を含む1価の基、環員数9以上の脂肪族複素環構造を含む1価の基が好ましく、アダマンチル基、ヒドロキシアダマンチル基、ノルボルナンラクトン−イル基、5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.3.1.1
3,8]ウンデカン−イル基がより好ましく、アダマンチル基がさらに好ましい。
【0146】
上記R
9で表される炭素数1〜10のフッ素化アルカンジイル基としては、例えば、メタンジイル基、エタンジイル基、プロパンジイル基等の炭素数1〜10のアルカンジイル基が有する水素原子の1個以上をフッ素原子で置換した基等が挙げられる。
これらの中で、SO
3−基に隣接する炭素原子にフッ素原子が結合しているフッ素化アルカンジイル基が好ましく、SO
3−基に隣接する炭素原子に2個のフッ素原子が結合しているフッ素化アルカンジイル基がより好ましく、1,1−ジフルオロメタンジイル基、1,1−ジフルオロエタンジイル基、1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−1,2−プロパンジイル基、1,1,2,2−テトラフルオロエタンジイル基、1,1,2,2−テトラフルオロブタンジイル基、1,1,2,2−テトラフルオロヘキサンジイル基がさらに好ましい。
【0147】
上記X
+で表される1価の放射線分解性オニウムカチオンは、放射線の照射により分解するカチオンである。露光部では、この放射線分解性オニウムカチオンの分解により生成するプロトンと、スルホネートアニオンとからスルホン酸を生じる。上記X
+で表される1価の放射線分解性オニウムカチオンとしては、例えば、S、I、O、N、P、Cl、Br、F、As、Se、Sn、Sb、Te、Bi等の元素を含む放射線分解性オニウムカチオンが挙げられる。元素としてS(イオウ)を含むカチオンとしては、例えば、スルホニウムカチオン、テトラヒドロチオフェニウムカチオン等が挙げられ、元素としてI(ヨウ素)を含むカチオンとしては、ヨードニウムカチオン等が挙げられる。これらの中で、下記式(X−1)で表されるスルホニウムカチオン、下記式(X−2)で表されるテトラヒドロチオフェニウムカチオン、下記式(X−3)で表されるヨードニウムカチオンが好ましい。
【0149】
上記式(X−1)中、R
a1、R
a2及びR
a3は、それぞれ独立して、置換若しくは非置換の炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換若しくは非置換の炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、−OSO
2−R
P若しくは−SO
2−R
Qであるか、又はこれらの基のうちの2つ以上が互いに合わせられ構成される環構造を表す。R
P及びR
Qは、それぞれ独立して、置換若しくは非置換の炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換若しくは非置換の炭素数5〜25の脂環式炭化水素基又は置換若しくは非置換の炭素数6〜12の芳香族炭化水素基である。k1、k2及びk3は、それぞれ独立して0〜5の整数である。R
a1〜R
a3並びにR
P及びR
Qがそれぞれ複数の場合、複数のR
a1〜R
a3並びにR
P及びR
Qはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
上記式(X−2)中、R
b1は、置換若しくは非置換の炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は置換若しくは非置換の炭素数6〜8の芳香族炭化水素基である。k4は0〜7の整数である。R
b1が複数の場合、複数のR
b1は同一でも異なっていてもよく、また、複数のR
b1は、互いに合わせられ構成される環構造を表してもよい。R
b2は、置換若しくは非置換の炭素数1〜7の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は置換若しくは非置換の炭素数6若しくは7の芳香族炭化水素基である。k5は、0〜6の整数である。R
b2が複数の場合、複数のR
b2は同一でも異なっていてもよく、また、複数のR
b2は互いに合わせられ構成される環構造を表してもよい。qは、0〜3の整数である。
上記式(X−3)中、R
c1及びR
c2は、それぞれ独立して、置換若しくは非置換の炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換若しくは非置換の炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、−OSO
2−R
R若しくは−SO
2−R
Sであるか、又はこれらの基のうちの2つ以上が互いに合わせられ構成される環構造を表す。R
R及びR
Sは、それぞれ独立して、置換若しくは非置換の炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換若しくは非置換の炭素数5〜25の脂環式炭化水素基又は置換若しくは非置換の炭素数6〜12の芳香族炭化水素基である。k6及びk7は、それぞれ独立して0〜5の整数である。R
c1、R
c2、R
R及びR
Sがそれぞれ複数の場合、複数のR
c1、R
c2、R
R及びR
Sはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0150】
上記R
a1〜R
a3、R
b1、R
b2、R
c1及びR
c2で表される非置換の直鎖状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基等が挙げられる。
上記R
a1〜R
a3、R
b1、R
b2、R
c1及びR
c2で表される非置換の分岐状のアルキル基としては、例えば、i−プロピル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等が挙げられる。
上記R
a1〜R
a3、R
c1及びR
c2で表される非置換の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等が挙げられる。
上記R
b1及びR
b2で表される非置換の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基、ベンジル基等が挙げられる。
【0151】
上記アルキル基及び芳香族炭化水素基が有する水素原子を置換していてもよい置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルオキシ基、アシル基、アシロキシ基等が挙げられる。
これらの中で、ハロゲン原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
【0152】
上記R
a1〜R
a3、R
b1、R
b2、R
c1及びR
c2としては、非置換の直鎖状又は分岐状のアルキル基、フッ素化アルキル基、非置換の1価の芳香族炭化水素基、−OSO
2−R”、−SO
2−R”が好ましく、フッ素化アルキル基、非置換の1価の芳香族炭化水素基がより好ましく、フッ素化アルキル基がさらに好ましい。R”は、非置換の1価の脂環式炭化水素基又は非置換の1価の芳香族炭化水素基である。
【0153】
上記式(X−1)におけるk1、k2及びk3としては、0〜2の整数が好ましく、0又は1がより好ましく、0がさらに好ましい。
上記式(X−2)におけるk4としては、0〜2の整数が好ましく、0又は1がより好ましく、1がさらに好ましい。k5としては、0〜2の整数が好ましく、0又は1がより好ましく、0がさらに好ましい。
上記式(X−3)におけるk6及びk7としては、0〜2の整数が好ましく、0又は1がより好ましく、0がさらに好ましい。
【0154】
上記式(3)で表される酸発生剤としては、例えば、下記式(6−1)〜(6−13)で表される化合物(以下、「化合物(6−1)〜(6−13)」ともいう)等が挙げられる。
【0156】
[C]酸発生剤としては、これらの中でも、オニウム塩化合物が好ましく、スルホニウム塩、テトラヒドロチオフェニウム塩がより好ましく、化合物(6−1)、化合物(6−2)、化合物(6−12)、化合物(6−13)がさらに好ましい。
【0157】
[C]酸発生体の含有量としては、[C]酸発生体が[C]酸発生剤の場合、当該樹脂組成物の感度及び現像性を確保する観点から、[A]重合体100質量部に対して、0.1質量部以上30質量部以下が好ましく、0.5質量部以上20質量部以下がより好ましく、1質量部以上15質量部以下がさらに好ましい。[B]酸発生剤の含有量を上記範囲とすることで、当該樹脂組成物の感度及び現像性が向上する。[B]酸発生体は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0158】
<[D]酸拡散制御体>
当該樹脂組成物は、必要に応じて、[D]酸拡散制御体を含有してもよい。
[D]酸拡散制御体は、露光により[C]酸発生体から生じる酸のレジスト膜中における拡散現象を制御し、非露光領域における好ましくない化学反応を抑制する効果を奏し、得られる樹脂組成物の貯蔵安定性がさらに向上し、またレジストとしての解像度がさらに向上すると共に、露光から現像処理までの引き置き時間の変動によるレジストパターンの線幅変化を抑えることができ、プロセス安定性に優れた樹脂組成物が得られる。[D]酸拡散制御体の当該樹脂組成物における含有形態としては、遊離の化合物(以下、適宜「[D]酸拡散制御剤」という)の形態でも、重合体の一部として組み込まれた形態でも、これらの両方の形態でもよい。
【0159】
[D]酸拡散制御剤としては、例えば、下記式(7)で表される化合物(以下、「含窒素化合物(I)」ともいう)、同一分子内に窒素原子を2個有する化合物(以下、「含窒素化合物(II)」ともいう)、窒素原子を3個有する化合物(以下、「含窒素化合物(III)」ともいう)、アミド基含有化合物、ウレア化合物、含窒素複素環化合物等が挙げられる。
【0161】
上記式(7)中、R
11、R
12及びR
13は、それぞれ独立して、水素原子、置換されていてもよい直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、アリール基又はアラルキル基である。
【0162】
含窒素化合物(I)としては、例えば、n−ヘキシルアミン等のモノアルキルアミン類;ジ−n−ブチルアミン等のジアルキルアミン類;トリエチルアミン等のトリアルキルアミン類;アニリン等の芳香族アミン類等が挙げられる。
【0163】
含窒素化合物(II)としては、例えば、エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン等が挙げられる。
【0164】
含窒素化合物(III)としては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン等のポリアミン化合物;ジメチルアミノエチルアクリルアミド等の重合体等が挙げられる。
【0165】
アミド基含有化合物としては、例えば、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、ベンズアミド、ピロリドン、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
【0166】
ウレア化合物としては、例えば、尿素、メチルウレア、1,1−ジメチルウレア、1,3−ジメチルウレア、1,1,3,3−テトラメチルウレア、1,3−ジフェニルウレア、トリブチルチオウレア等が挙げられる。
【0167】
含窒素複素環化合物としては、例えば、ピリジン、2−メチルピリジン等のピリジン類;N−プロピルモルホリン、N−(ウンデシルカルボニルオキシエチル)モルホリン等のモルホリン類;ピラジン、ピラゾール等が挙げられる。
【0168】
また、上記含窒素有機化合物として、酸解離性基を有する化合物を用いることもできる。このような酸解離性基を有する含窒素有機化合物としては、例えば、N−t−ブトキシカルボニルピペリジン、N−t−ブトキシカルボニルイミダゾール、N−t−ブトキシカルボニルベンズイミダゾール、N−t−ブトキシカルボニル−2−フェニルベンズイミダゾール、N−(t−ブトキシカルボニル)ジ−n−オクチルアミン、N−(t−ブトキシカルボニル)ジエタノールアミン、N−(t−ブトキシカルボニル)ジシクロヘキシルアミン、N−(t−ブトキシカルボニル)ジフェニルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジン、N−t−アミルオキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジン等が挙げられる。
【0169】
また、[D]酸拡散制御剤として、露光により感光し弱酸を発生する光崩壊性塩基を用いることもできる。光崩壊性塩基としては、例えば、露光により分解して酸拡散制御性を失うオニウム塩化合物等が挙げられる。オニウム塩化合物としては、例えば、下記式(8−1)で表されるスルホニウム塩化合物、下記式(8−2)で表されるヨードニウム塩化合物等が挙げられる。
【0171】
上記式(8−1)及び式(8−2)中、R
14〜R
18は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基又はハロゲン原子である。E
−及びQ
−は、それぞれ独立して、OH
−、R
β−COO
−、R
β−SO
3−又は下記式(5−3)で表されるアニオンである。但し、R
βは、アルキル基、アリール基又はアラルキル基である。
【0173】
上記式(8−3)中、R
19は、水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基である。uは、0〜2の整数である。
【0174】
上記光崩壊性塩基としては、例えば、下記式で表される化合物等が挙げられる。
【0176】
上記光崩壊性塩基としては、これらの中で、スルホニウム塩が好ましく、トリアリールスルホニウム塩がより好ましく、トリフェニルスルホニウムサリチレート、トリフェニルスルホニウム10−カンファースルホネートがさらに好ましく、トリフェニルスルホニウム10−カンファースルホネートが特に好ましい。
【0177】
[D]酸拡散制御体の含有量としては、[D]酸拡散制御体が[D]酸拡散制御剤である場合、[A]重合体100質量部に対して、0〜20質量部が好ましく、0.1質量部〜15質量部がより好ましく、0.3質量部〜10質量部がさらに好ましい。[D]酸拡散制御剤の含有量が上記上限を超えると、当該樹脂組成物の感度が低下する場合がある。
【0178】
<[E]重合体>
[E]重合体は、[A]重合体以外のフッ素原子含有重合体である。
【0179】
[E]重合体のフッ素原子含有率としては、1質量%以上が好ましく、2質量%〜60質量%がより好ましく、4質量%〜40質量%がさらに好ましく、7質量%〜30質量%が特に好ましい。[E]重合体のフッ素原子含有率が上記下限未満だと、レジスト膜表面の疎水性が低下する場合がある。なお重合体のフッ素原子含有率(質量%)は、
13C−NMRスペクトル測定により重合体の構造を求め、その構造から算出することができる。
【0180】
[E]重合体としては、下記構造単位(E1)及び構造単位(E2)からなる群より選ばれる少なくとも1種を有することが好ましい。[E]重合体は、構造単位(E1)及び構造単位(E1)をそれぞれ1種又は2種以上有していてもよい。
【0181】
[構造単位(E1)]
構造単位(E1)は、下記式(9a)で表される構造単位である。[E]重合体は、構造単位(E1)を有することでフッ素原子含有率を調整することができる。
【0183】
上記式(9a)中、R
Dは、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Gは、単結合、酸素原子、硫黄原子、−CO−O−、−SO
2−O−NH−、−CO−NH−又は−O−CO−NH−である。R
Eは、少なくとも1個のフッ素原子を有する炭素数1〜6の1価の鎖状炭化水素基又は少なくとも1個のフッ素原子を有する炭素数4〜20の1価の脂肪族環状炭化水素基である。
【0184】
上記R
Eで表される少なくとも1個のフッ素原子を有する炭素数1〜6の鎖状炭化水素基としては、例えば、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、パーフルオロエチル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル基、パーフルオロn−プロピル基、パーフルオロi−プロピル基、パーフルオロn−ブチル基、パーフルオロi−ブチル基、パーフルオロt−ブチル基、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基等が挙げられる。
【0185】
上記R
Eで表される少なくとも1個のフッ素原子を有する炭素数4〜20の脂肪族環状炭化水素基としては、例えば、モノフルオロシクロペンチル基、ジフルオロシクロペンチル基、パーフルオロシクロペンチル基、モノフルオロシクロヘキシル基、ジフルオロシクロペンチル基、パーフルオロシクロヘキシルメチル基、フルオロノルボルニル基、フルオロアダマンチル基、フルオロボルニル基、フルオロイソボルニル基、フルオロトリシクロデシル基、フルオロテトラシクロデシル基等が挙げられる。
【0186】
上記構造単位(E1)を与える単量体としては、例えば、トリフルオロメチル(メタ)アクリル酸エステル、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリル酸エステル、2,2,2−トリフルオロエチルオキシカルボニルメチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロエチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロn−プロピル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロi−プロピル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロn−ブチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロi−ブチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロt−ブチル(メタ)アクリル酸エステル、2−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル)(メタ)アクリル酸エステル、1−(2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル)(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロシクロヘキシルメチル(メタ)アクリル酸エステル、1−(2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル)(メタ)アクリル酸エステル、モノフルオロシクロペンチル(メタ)アクリル酸エステル、ジフルオロシクロペンチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロシクロペンチル(メタ)アクリル酸エステル、モノフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリル酸エステル、ジフルオロシクロペンチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロシクロヘキシルメチル(メタ)アクリル酸エステル、フルオロノルボルニル(メタ)アクリル酸エステル、フルオロアダマンチル(メタ)アクリル酸エステル、フルオロボルニル(メタ)アクリル酸エステル、フルオロイソボルニル(メタ)アクリル酸エステル、フルオロトリシクロデシル(メタ)アクリル酸エステル、フルオロテトラシクロデシル(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
これらの中で、2,2,2−トリフルオロエチルオキシカルボニルメチル(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。
【0187】
構造単位(E1)の含有割合としては、[E]重合体を構成する全構造単位に対して、5モル%〜95モル%が好ましく、10モル%〜90モル%がより好ましく、30モル%〜85モル%がさらに好ましい。このような含有割合にすることによって液浸露光時においてレジスト膜表面のより高い動的接触角を発現させることができる。
【0188】
[構造単位(E2)]
構造単位(E2)は、下記式(9b)で表される構造単位である。[E]重合体は、構造単位(E2)を有することで疎水性が上がるため、当該樹脂組成物から形成されたレジスト膜表面の動的接触角をさらに向上させることができる。
【0190】
上記式(9b)中、R
Fは、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R
20は、炭素数1〜20の(s+1)価の炭化水素基であり、R
20のR
21側の末端に酸素原子、硫黄原子、−NR’−、カルボニル基、−CO−O−又は−CO−NH−が結合された構造のものも含む。R’は、水素原子又は1価の有機基である。R
20は、単結合、炭素数1〜10の2価の鎖状炭化水素基又は炭素数4〜20の2価の脂肪族環状炭化水素基である。X
2は、少なくとも1個のフッ素原子を有する炭素数1〜20の2価の鎖状炭化水素基である。A
1は、酸素原子、−NR”−、−CO−O−*又は−SO
2−O−*である。R”は、水素原子又は1価の有機基である。*は、R
20に結合する結合部位を示す。R
22は、水素原子又は1価の有機基である。sは、1〜3の整数である。但し、sが2又は3の場合、複数のR
21、X
2、A
1及びR
22はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0191】
上記R
22が水素原子である場合には、[E]重合体のアルカリ現像液に対する溶解性を向上させることができる点で好ましい。
【0192】
上記R
22で表される1価の有機基としては、例えば、酸解離性基、アルカリ解離性基又は置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基等が挙げられる。
【0193】
上記構造単位(E2)としては、例えば、下記式(9b−1)〜(9b−3)で表される構造単位等が挙げられる。
【0195】
上記式(9b−1)〜(9b−3)中、R
20’は、炭素数1〜20の2価の直鎖状、分岐状若しくは環状の飽和若しくは不飽和の炭化水素基である。R
F、X
2、R
22及びsは、上記式(9b)と同義である。sが2又は3である場合、複数のX
2及びR
22はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0196】
上記構造単位(9b)の含有割合としては、[E]重合体を構成する全構造単位に対して、0モル%〜90モル%が好ましく、5モル%〜85モル%がより好ましく、10モル%〜80モル%がさらに好ましい。このような含有割合にすることによって、当該樹脂組成物から形成されたレジスト膜表面は、アルカリ現像において動的接触角の低下度を向上させることができる。
【0197】
[他の構造単位]
また、[E]重合体は、上記構造単位以外にも、例えば、アルカリ可溶性基を含む構造単位、ラクトン構造、環状カーボネート構造及びスルトン構造からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を含む構造単位、脂環式基を含む構造単位等の他の構造単位を有していてもよい。上記アルカリ可溶性基としては、例えば、カルボキシ基、スルホンアミド基、スルホ基等が挙げられる。ラクトン構造、環状カーボネート構造及びスルトン構造からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を有する構造単位としては、上述した[A]重合体における構造単位(III)等が挙げられる。
【0198】
上記他の構造単位の含有割合としては、[E]重合体を構成する全構造単位に対して、通常、30モル%以下であり、20モル%以下が好ましい。上記他の構造単位の含有割合が上記上限を超えると、当該樹脂組成物のパターン形成性が低下する場合がある。
【0199】
当該樹脂組成物における[E]重合体の含有量としては、[A]重合体の100質量部に対して、0〜20質量部が好ましく、0.5質量部〜15質量部がより好ましく、1質量部〜10質量部がさらに好ましい。[E]重合体の含有量が上記上限を超えると、当該樹脂組成物のパターン形成性が低下する場合がある。
【0200】
<[F]重合体>
[F]重合体は、[A]重合体よりフッ素原子含有率が小さく、酸解離性基を含む構造単位を有する重合体である。当該樹脂組成物は、[A]重合体が撥水性重合体添加剤として用いられている場合([A2]重合体)に、ベース重合体として[F]重合体を含有することが好ましい。[F]重合体としては、[A]重合体における構造単位(II)及び構造単位(III)を有するものが好ましく、構造単位(IV)〜(VI)を有していてもよい。
【0201】
上記構造単位(II)の含有割合としては、[F]重合体を構成する全構造単位に対して、20モル%〜80モル%が好ましく、30モル%〜70モル%がより好ましい。
上記構造単位(III)の含有割合としては、[F]重合体を構成する全構造単位に対して、20モル%〜70モル%が好ましく、30モル%〜60モル%がより好ましい。
上記構造単位(IV)〜(VI)の含有割合としてはそれぞれ、[F]重合体を構成する全構造単位に対して、0モル%〜40モル%が好ましく、10モル〜30モル%がより好ましい。
【0202】
[F]重合体のMwとしては、1,000以上50,000以下が好ましく、2,000以上30,000以下がより好ましく、3,000以上20,000以下がさらに好ましく、5,000以上15,000が特に好ましい。
【0203】
[F]重合体のMw/Mnとしては、通常、1以上5以下であり、1以上3以下が好ましく、1以上2以下がさらに好ましい。
【0204】
<その他の任意成分>
当該樹脂組成物は、上記[A]〜[F]成分以外にも、その他の任意成分を含有していてもよい。上記その他の任意成分としては、例えば、偏在化促進剤、界面活性剤、脂環式骨格含有化合物、増感剤等が挙げられる。これらのその他の任意成分は、それぞれ1種又は2種以上を併用してもよい。
【0205】
[偏在化促進剤]
偏在化促進剤は、樹脂組成物(A)が[A]重合体及び/又は[E]重合体として撥水性重合体添加剤を含有する場合等に、この撥水性重合体添加剤を、より効率的にレジスト膜表面に偏析させる効果を有するものである。当該樹脂組成物にこの偏在化促進剤を含有させることで、上記撥水性重合体添加剤の添加量を従来よりも少なくすることができる。従って、解像性、LWR性能及び欠陥抑制性を損なうことなく、レジスト膜から液浸液への成分の溶出をさらに抑制したり、高速スキャンにより液浸露光をより高速に行うことが可能になり、結果としてウォーターマーク欠陥等の液浸由来欠陥を抑制するレジスト膜表面の疎水性を向上させることができる。このような偏在化促進剤として用いることができるものとしては、比誘電率が30以上200以下で、1気圧における沸点が100℃以上の低分子化合物を挙げることができる。このような化合物としては、具体的には、ラクトン化合物、カーボネート化合物、ニトリル化合物、多価アルコール等が挙げられる。
【0206】
上記ラクトン化合物としては、例えば、γ−ブチロラクトン、バレロラクトン、メバロニックラクトン、ノルボルナンラクトン等が挙げられる。
上記カーボネート化合物としては、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート等が挙げられる。
上記ニトリル化合物としては、例えばスクシノニトリル等が挙げられる。
上記多価アルコールとしては、例えばグリセリン等が挙げられる。
【0207】
偏在化促進剤の含有量としては、当該樹脂組成物における重合体の総量100質量部に対して、10質量部〜500質量部が好ましく、15質量部〜300質量部がより好ましく、20質量部〜200質量部がさらに好ましく、25質量部〜100質量部が特に好ましい。
【0208】
(界面活性剤)
界面活性剤は、塗布性、ストリエーション、現像性等を改良する効果を奏する。界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンn−オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンn−ノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のノニオン系界面活性剤;市販品としては、KP341(信越化学工業製)、ポリフローNo.75、同No.95(以上、共栄社化学製)、エフトップEF301、同EF303、同EF352(以上、トーケムプロダクツ製)、メガファックF171、同F173(以上、DIC製)、フロラードFC430、同FC431(以上、住友スリーエム製)、アサヒガードAG710、サーフロンS−382、同SC−101、同SC−102、同SC−103、同SC−104、同SC−105、同SC−106(以上、旭硝子工業製)等が挙げられる。当該樹脂組成物における界面活性剤の含有量としては、[A]重合体100質量部に対して通常2質量部以下である。
【0209】
(脂環式骨格含有化合物)
脂環式骨格含有化合物は、ドライエッチング耐性、パターン形状、基板との接着性等を改善する効果を奏する。
【0210】
脂環式骨格含有化合物としては、例えば、
1−アダマンタンカルボン酸、2−アダマンタノン、1−アダマンタンカルボン酸t−ブチル等のアダマンタン誘導体類;
デオキシコール酸t−ブチル、デオキシコール酸t−ブトキシカルボニルメチル、デオキシコール酸2−エトキシエチル等のデオキシコール酸エステル類;
リトコール酸t−ブチル、リトコール酸t−ブトキシカルボニルメチル、リトコール酸2−エトキシエチル等のリトコール酸エステル類;
3−〔2−ヒドロキシ−2,2−ビス(トリフルオロメチル)エチル〕テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]ドデカン、2−ヒドロキシ−9−メトキシカルボニル−5−オキソ−4−オキサ−トリシクロ[4.2.1.0
3,7]ノナン等が挙げられる。当該樹脂組成物における脂環式骨格含有化合物の含有量としては、[A]重合体100質量部に対して通常5質量部以下である。
【0211】
(増感剤)
増感剤は、[C]酸発生剤等からの酸の生成量を増加する作用を示すものであり、当該樹脂組成物の「みかけの感度」を向上させる効果を奏する。
【0212】
増感剤としては、例えば、カルバゾール類、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ナフタレン類、フェノール類、ビアセチル、エオシン、ローズベンガル、ピレン類、アントラセン類、フェノチアジン類等が挙げられる。これらの増感剤は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。当該樹脂組成物における増感剤の含有量としては、[A]重合体100質量部に対して通常2質量部以下である。
【0213】
<樹脂組成物の調製方法>
当該樹脂組成物は、例えば、[A]重合体、必要に応じて含有される任意成分及び[B]溶媒を所定の割合で混合することにより調製できる。当該樹脂組成物は、混合後に、例えば、孔径0.2μm程度のフィルター等でろ過することが好ましい。当該樹脂組成物の固形分濃度としては、通常0.1質量%〜50質量%であり、0.5質量%〜30質量%が好ましく、1質量%〜20質量%がより好ましい。
【0214】
<レジストパターン形成方法>
上記樹脂組成物(A)を用いる当該レジストパターン形成方法(以下、「レジストパターン形成方法(A)」ともいう)は、
レジスト膜を形成する工程(以下、「レジスト膜形成工程」ともいう)、
上記レジスト膜を露光する工程(以下、「露光工程」ともいう)、及び
上記露光されたレジスト膜を現像する工程(以下、「現像工程」ともいう)
を備え、
上記レジスト膜を当該樹脂組成物により形成する。
【0215】
また、上記樹脂組成物(B)を用いる当該レジストパターン形成方法(以下、「レジストパターン形成方法(B)」ともいう)は、
レジスト膜を形成する工程(以下、「レジスト膜形成工程」ともいう)、
上記レジスト膜上に保護膜を積層する工程(以下、「保護膜積層工程」ともいう)、
上記保護膜が積層されたレジスト膜を液浸露光する工程(以下、「液浸露光工程」ともいう)、及び
上記液浸露光されたレジスト膜を現像する工程(以下、「現像工程」ともいう)
を備え、
上記保護膜を当該樹脂組成物により形成する。
【0216】
当該レジストパターン形成方法によれば、上述の当該樹脂組成物を用いているので、優れた焦点深度、露光余裕度及びMEEF性能を発揮しつつ、LWR及びCDUが小さく、解像度が高く、断面形状の矩形性に優れるレジストパターンを形成することができる。以下、各レジストパターン形成方法の各工程について説明する。
【0217】
<レジストパターン形成方法(A)>
[レジスト膜形成工程]
本工程では、当該樹脂組成物によりレジスト膜を形成する。このレジスト膜を形成する基板としては、例えばシリコンウェハ、二酸化シリコン、アルミニウムで被覆されたウェハ等の従来公知のもの等が挙げられる。また、例えば特公平6−12452号公報や特開昭59−93448号公報等に開示されている有機系又は無機系の反射防止膜を基板上に形成してもよい。塗布方法としては、例えば、回転塗布(スピンコーティング)、流延塗布、ロール塗布等が挙げられる。塗布した後に、必要に応じて、塗膜中の溶媒を揮発させるため、プレベーク(PB)を行ってもよい。PB温度としては、通常60℃〜140℃であり、80℃〜120℃が好ましい。PB時間としては、通常5秒〜600秒であり、10秒〜300秒が好ましい。形成されるレジスト膜の膜厚としては、10nm〜1,000nmが好ましく、10nm〜500nmがより好ましい。
【0218】
[露光工程]
本工程では、レジスト膜形成工程で形成されたレジスト膜に、フォトマスクを介するなどして(場合によっては、水等の液浸媒体を介して)露光光を照射し、露光する。露光光としては、目的とするパターンの線幅に応じて、例えば、可視光線、紫外線、遠紫外線、極端紫外線(EUV)、X線、γ線等の電磁波;電子線、α線等の荷電粒子線などが挙げられる。これらの中でも、遠紫外線、EUV、電子線が好ましく、ArFエキシマレーザー光(波長193nm)、KrFエキシマレーザー光(波長248nm)、EUV、電子線がより好ましく、ArFエキシマレーザー光、EUV、電子線がさらに好ましい。
【0219】
露光を液浸露光により行う場合、用いる液浸液としては、例えば、水、フッ素系不活性液体等が挙げられる。液浸液は、露光波長に対して透明であり、かつ膜上に投影される光学像の歪みを最小限に留めるよう屈折率の温度係数ができる限り小さい液体が好ましいが、特に露光光源がArFエキシマレーザー光(波長193nm)である場合、上述の観点に加えて、入手の容易さ、取り扱いのし易さといった点から水を用いるのが好ましい。水を用いる場合、水の表面張力を減少させるとともに、界面活性力を増大させる添加剤をわずかな割合で添加しても良い。この添加剤は、ウェハ上のレジスト膜を溶解させず、かつレンズの下面の光学コートに対する影響が無視できるものが好ましい。使用する水としては蒸留水が好ましい。
【0220】
上記露光の後、ポストエクスポージャーベーク(PEB)を行い、レジスト膜の露光された部分において、露光により[C]酸発生体から発生した酸による[A]重合体等が有する酸解離性基の解離を促進させることが好ましい。このPEBによって、露光部と未露光部とで現像液に対する溶解性に差が生じる。PEB温度としては、通常50℃〜180℃であり、80℃〜130℃が好ましい。PEB時間としては、通常5秒〜600秒であり、10秒〜300秒が好ましい。
【0221】
[現像工程]
本工程では、上記露光工程で露光されたレジスト膜を現像する。これにより、所定のレジストパターンを形成することができる。現像後は、水又はアルコール等のリンス液で洗浄し、乾燥することが一般的である。
【0222】
上記現像に用いる現像液としては、
アルカリ現像の場合、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、けい酸ナトリウム、メタけい酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、エチルジメチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネン等のアルカリ性化合物の少なくとも1種を溶解したアルカリ水溶液等が挙げられる。これらの中でも、TMAH水溶液が好ましく、2.38質量%TMAH水溶液がより好ましい。
また、有機溶媒現像の場合、炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、アルコール系溶媒等の有機溶媒、又は有機溶媒を含有する溶媒が挙げられる。上記有機溶媒としては、例えば、上述の樹脂組成物の[B]溶媒として列挙した溶媒の1種又は2種以上等が挙げられる。これらの中でも、エステル系溶媒、ケトン系溶媒が好ましい。エステル系溶媒としては、酢酸エステル系溶媒が好ましく、酢酸n−ブチルがより好ましい。ケトン系溶媒としては、鎖状ケトンが好ましく、2−ヘプタノンがより好ましい。現像液中の有機溶媒の含有量としては、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、99質量%以上が特に好ましい。現像液中の有機溶媒以外の成分としては、例えば、水、シリコンオイル等が挙げられる。
【0223】
現像方法としては、例えば、現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止することで現像する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液塗出ノズルをスキャンしながら現像液を塗出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)等が挙げられる。
【0224】
<レジストパターン形成方法(B)>
[レジスト膜形成工程]
本工程では、レジスト膜を形成する。このレジスト膜は、例えば、酸解離性基を含む構造単位を有する重合体及び感放射線性酸発生体を含有する感放射線性樹脂組成物等により形成される。このレジスト膜を形成する方法としては、上記「レジストパターン形成方法(A)におけるレジスト膜形成工程の場合と同様の方法が挙げられる。
【0225】
[保護膜積層工程]
本工程では、上記レジスト膜形成工程で形成したレジスト膜上に保護膜を積層する。樹脂組成物(B)の塗布方法としては、上記レジストパターン形成方法(A)のレジスト膜形成工程における樹脂組成物(A)の塗布方法と同様の方法が挙げられる。本工程においては、樹脂組成物(B)を塗布した後、プレベーク(PB)を行うことが好ましい。レジスト膜上に保護膜を形成することによって、液浸液とレジスト膜とが直接接触しなくなるため、液浸液がレジスト膜に浸透することに起因してレジスト膜のリソグラフィ性能が低下したり、レジスト膜から液浸液に溶出した成分によって投影露光装置のレンズが汚染されたりすることが効果的に抑制される。
【0226】
形成する保護膜の厚さは、λ/4m(λ:放射線の波長、m:保護膜の屈折率)の奇数倍にできる限り近づけることが好ましい。このようにすることで、レジスト膜の上側界面における反射抑制効果を大きくすることができる。
【0227】
[液浸露光工程]
本工程では、上記保護膜積層工程で形成した保護膜が積層されたレジスト膜を液浸露光する。この液浸露光は、上記積層された保護膜上に液浸液を配置し、この液浸液を介して露光することにより行う。
【0228】
上記液浸液、用いる露光光及び液浸露光する方法としては、上記レジストパターン形成方法(A)における露光工程の液浸露光の場合と同様のもの等が挙げられる。
【0229】
上記液浸露光後、得られるレジストパターンの解像度、パターン形状、現像性等を向上させるために、ポストエクスポージャーベーク(PEB)を行うことが好ましい。PEB温度としては、使用される感放射線性樹脂組成物や樹脂組成物(B)の種類等によって適宜設定することができるが、通常、30℃〜200℃であり、50℃〜150℃が好ましい。PEB時間としては、通常、5秒〜600秒であり、10秒〜300秒が好ましい。
【0230】
[現像工程]
本工程では、上記液浸露光工程で液浸露光されたレジスト膜を現像する。これにより、所定のレジストパターンを形成することができる。本工程を行う方法としては、上述のレジストパターン形成方法(A)の現像工程と同様の方法等が挙げられる。
【実施例】
【0231】
以下、本発明の実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に制限されるものではない。なお、実施例及び比較例における各測定は、下記の方法により行った。
【0232】
[重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)]
GPCカラム(東ソー社の「G2000HXL」2本、「G3000HXL」1本、「G4000HXL」1本)を用い、流量:1.0mL/分、溶出溶媒:テトラヒドロフラン、試料濃度:1.0質量%、試料注入量:100μL、カラム温度:40℃、検出器:示差屈折計の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするGPC(Gel Permeation Chromatography)により測定した。また、分散度(Mw/Mn)は、Mw及びMnの測定結果より算出した。
【0233】
[
13C−NMR分析]
核磁気共鳴装置(日本電子社の「JNM−ECX400」)を用い、測定溶媒として重クロロホルムを使用して、各重合体における各構造単位の含有割合(モル%)を求める分析を行った。
【0234】
<化合物の合成>
[合成例1](化合物(M−1)の合成)
下記式(M−a)で表される化合物と下記式(M−b)で表されるブロモ体をトリエチルアミン存在下、溶媒中で反応させ下記式(M−c)で表される化合物を得た。化合物(M−c)と下記式(M−d)で表されるブロモ体とを亜鉛の存在下で反応させ化合物(M−1)を合成した。次に、カラムクロマトグラフで精製することにより下記式(M−1)で表される化合物を得た。
【0235】
【化30】
【0236】
[合成例2〜21](化合物(M−2)〜(M−21)の合成)
前駆体を適宜選択し、合成例1と同様の操作を行うことによって、下記式(M−2)〜(M−21)で表される化合物を合成した。
【0237】
【化31】
【0238】
【化32】
【0239】
<重合体の合成>
[[A]重合体、[E]重合体、[F]重合体及び[H]重合体の合成]
[A]重合体として、ベース重合体として用いられる[A1]重合体、撥水性重合体添加剤として用いられる[A2]重合体、及び液浸露光用保護膜形成組成物として用いられる[A3]重合体、撥水性重合体添加剤として用いられる[E]重合体、ベース重合体として用いられる[F]重合体、並びに液浸露光用保護膜形成組成物として用いられる[H]重合体をそれぞれ合成した。
上記合成した化合物(M−2)〜(M−21)以外の重合体の合成で用いた単量体を以下に示す。
【0240】
【化33】
【0241】
【化34】
【0242】
【化35】
【0243】
[[A1]重合体及び[F]重合体の合成]
[合成例1]
上記化合物(M−1)3.05g(10モル%)、化合物(MP−1)9.21g(55モル%)及び化合物(ML−2)7.74g(35モル%)を2−ブタノン40gに溶解し、ラジカル重合開始剤としてのAIBN0.82g(化合物の合計に対して5モル%)を添加して単量体溶液を調製した。次いで、20gの2−ブタノンを入れた100mLの三口フラスコを30分窒素パージした後、攪拌しながら80℃に加熱し、上記調製した単量体溶液を滴下漏斗にて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合反応の開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合反応終了後、重合溶液を水冷して30℃以下に冷却した。400gのメタノール中に冷却した重合溶液を投入し、析出した白色粉末をろ別した。ろ別した白色粉末を80gのメタノールで2回洗浄した後、ろ別し、50℃で17時間乾燥させて白色粉末状の重合体(A1−1)を合成した(収率74%)。重合体(A1−1)のMwは7,300、Mw/Mnは1.53、低分子量成分の含有率は0.04質量%であった。また、
13C−NMR分析の結果、(M−1)、(MP−1)及び(ML−2)に由来する各構造単位の含有割合は、それぞれ9.5モル%、55.1モル%及び35.4モル%であった。
【0244】
[合成例2〜36]
下記表1に示す種類及び使用量の単量体を用いた以外は、合成例1と同様の操作を行うことによって、重合体(A1−2)〜(A1−35)及び(F−1)を合成した。表1の「−」は、該当する単量体を用いなかったことを示す。用いる単量体の合計質量は20gとした。
【0245】
【表1】
【0246】
[[A2]重合体及び[E]重合体の合成]
[合成例37]
上記化合物(M−1)41.86g(30モル%)及び化合物(MP−2)58.14g(70モル%)を、100gの2−ブタノンに溶解し、さらにラジカル重合開始剤としてのジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート3.05gを溶解させて単量体溶液を調製した。次いで100gの2−ブタノンを入れた1,000mLの三口フラスコを30分窒素パージした後、攪拌しながら80℃に加熱し、上記調製した単量体溶液を滴下漏斗にて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合反応の開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合反応終了後、重合溶液を水冷して30℃以下に冷却した。反応溶液を2L分液漏斗に移液した後、150gのn−ヘキサンで上記重合溶液を均一に希釈し、600gのメタノールを投入して混合した。次いで30gの蒸留水を投入し、さらに攪拌して30分静置した。その後、下層を回収し、固形分である重合体(A2−1)を含むプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液を得た(収率64%)。重合体(A2−1)のMwは7,000、Mw/Mnは1.99、低分子量成分の含有量は0.05質量%であった。また、
13C−NMR分析の結果、(M−1)及び(MP−2)に由来する各構造単位の含有割合は、それぞれ29.9モル%及び70.1モル%であった。
【0247】
[合成例38〜52]
下記表2に示す種類及び使用量の単量体を用いた以外は、合成例37と同様の操作を行うことによって、重合体(A2−2)〜(A2−15)及び(E−1)を合成した。表2の「−」は、該当する単量体を用いなかったことを示す。用いる単量体の合計質量は100gとした。
【0248】
【表2】
【0249】
[[A3]重合体及び[H]重合体の合成]
[合成例53](重合体(A3−1)の合成)
上記化合物(M−1)45.80g(50モル%)及び化合物(MF−3)54.20g(50モル%)を、100gの2−ブタノンに溶解し、ラジカル重合開始剤としてのジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート2.46gをさらに溶解させて単量体溶液を調製した。次いで100gの2−ブタノンを入れた1,000mLの三口フラスコを30分窒素パージした後、攪拌しながら80℃に加熱し、上記調製した単量体溶液を滴下漏斗にて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合反応の開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合反応終了後、重合溶液を水冷して30℃以下に冷却した。反応溶液を2L分液漏斗に移液した後、150gのn−ヘキサンで上記重合溶液を均一に希釈し、600gのメタノールを投入して混合した。
次いで30gの蒸留水を投入し、さらに攪拌して30分静置した。その後、下層を回収し、固形分である重合体(A3−1)を含むプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液を得た(収率74%)。重合体(A3−1)のMwは9,900、Mw/Mnは1.72、低分子量成分の含有量は0.05質量%であった。また、
13C−NMR分析の結果、(M−1)及び(MF−3)に由来する各構造単位の含有割合は、それぞれ50.2モル%及び49.8モル%であった。
【0250】
[合成例54〜75]
下記表3に示す種類及び使用量の各単量体を用いた以外は、合成例1と同様の操作を行うことによって、重合体(A3−2)〜(A3−21)並びに(H−1)及び(H−2)を合成した。表3の「−」は、該当する単量体を用いなかったことを示す。用いる単量体の合計質量は100gとした。
【0251】
【表3】
【0252】
<樹脂組成物の調製>
樹脂組成物の調製に用いた[B]溶媒、[C]酸発生剤、[D]酸拡散制御剤及び[G]偏在化促進剤を以下に示す。
【0253】
[[B]溶媒]
B−1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
B−2:シクロヘキサノン
B−3:4−メチル−2−ペンタノール
B−4:ジイソアミルエーテル
【0254】
[[C]酸発生剤]
各構造式を以下に示す。
C−1:トリフェニルスルホニウム2−(アダマンタン−1−イルカルボニルオキシ)−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパン−1−スルホネート
C−2:トリフェニルスルホニウムノルボルナンスルトン−2−イルオキシカルボニルジフルオロメタンスルホネート
C−3:トリフェニルスルホニウム3−(ピペリジン−1−イルスルホニル)−1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン−1−スルホネート
C−4:トリフェニルスルホニウムアダマンタン−1−イルオキシカルボニルジフルオロメタンスルホネート
【0255】
【化36】
【0256】
[[D]酸拡散制御剤]
各構造式を以下に示す。
D−1:トリフェニルスルホニウムサリチレート
D−2:トリフェニルスルホニウム10−カンファースルホネート
D−3:N−(n−ウンデカン−1−イルカルボニルオキシエチル)モルホリン
D−4:2,6−ジi−プロピルアニリン
D−5:トリn−ペンチルアミン
【0257】
【化37】
【0258】
[[G]偏在化促進剤]
G−1:γ−ブチロラクトン
【0259】
[樹脂組成物(A)の調製]
(樹脂組成物(J1):[A1]重合体をベース重合体及び[A2]重合体を撥水性重合体添加剤として含有するArF露光用樹脂組成物(A)の調製
[実施例1]
[A]重合体としての(A1−1)100質量部、[B]溶媒としての(B−1)2,240質量部及び(B−2)960質量部、[C]酸発生剤としての(C−1)8.5質量部、[D]酸拡散制御剤としての(D−1)2.3質量部、[E]重合体としての(E−1)3質量部、並びに[G]偏在化促進剤としての(G−1)30質量部を混合し、孔径0.2μmのメンブランフィルターでろ過することにより樹脂組成物(J1−1)を調製した。
【0260】
[実施例2〜37及び比較例1]
下記表4に示す種類及び配合量の各成分を用いた以外は、実施例1と同様に操作して、樹脂組成物(J1−2)〜(J1−37)及び(CJ−1)を調製した。
【0261】
【表4】
【0262】
(樹脂組成物(J2):[A1]重合体をベース重合体として含有するEUV、電子線露光用樹脂組成物(A)の調製)
[実施例38]
[A1]重合体としての(A1−1)100質量部、[B]溶媒としての(B−1)4,280質量部及び(B−2)1,830質量部、[C]酸発生剤としての(C−1)20質量部並びに[D]酸拡散制御剤としての(D−1)3.6質量部を混合し孔径0.2μmのメンブランフィルターでろ過することにより樹脂組成物(J2−1)を調製した。
【0263】
[実施例39〜76及び比較例2]
下記表5に示す種類及び配合量の各成分を用いた以外は、実施例38と同様に操作して、樹脂組成物(J2−2)〜(J2−39)及び(CJ−2)を調製した。
【0264】
【表5】
【0265】
[樹脂組成物(B)(液浸露光用保護膜形成樹脂組成物)の調製]
(樹脂組成物(J3):[A3]重合体を含有する樹脂組成物(B)の調製)
[実施例77]
[A3]重合体としての(A3−1)50質量部、[H]重合体としての(H−2)50質量部、並びに[B]溶媒としての(B−3)1,000質量部及び(B−4)4,000質量部を配合し、孔径0.2μmのメンブランフィルターでろ過することにより樹脂組成物(J3−1)を調製した。
【0266】
[実施例78〜99及び比較例3]
下記表6に示す種類及び配合量の各成分を用いた以外は、実施例77と同様に操作して、樹脂組成物(J3−2)〜(J3−23)及び(CJ−3)を調製した。
【0267】
(樹脂組成物(B)(液浸露光用保護膜形成樹脂組成物)を用いる場合の感放射線性樹脂組成物の調製)
[合成例76]
[F]重合体としての(F−1)100質量部、[B]溶媒としての(B−1)2,240質量部及び(B−2)960質量部、[C]酸発生剤としての(C−1)8.5質量部、[D]酸拡散制御剤としての(D−1)2.3質量部並びに[G]偏在化促進剤としての(G−1)30質量部を配合し、孔径0.2μmのメンブランフィルターでろ過することにより感放射線性樹脂組成物(a)を調製した。
【0268】
【表6】
【0269】
<レジストパターンの形成>
(樹脂組成物(A)を用いるArF露光による場合)
[レジストパターンの形成(1)]
12インチのシリコンウエハー表面に、スピンコーター(東京エレクトロン社の「CLEAN TRACK ACT12」)を使用して、下層反射防止膜形成用組成物(ブルワーサイエンス社の「ARC66」)を塗布した後、205℃で60秒間加熱することにより膜厚105nmの下層反射防止膜を形成した。この下層反射防止膜上に、上記スピンコーターを使用して上記調製した樹脂組成物(A)を塗布し、90℃で60秒間PBを行った。その後、23℃で30秒間冷却し、膜厚90nmのレジスト膜を形成した。次に、このレジスト膜を、ArFエキシマレーザー液浸露光装置(NIKON社の「NSR−S610C」)を用い、NA=1.3、ダイポール(シグマ0.977/0.782)の光学条件にて、40nmラインアンドスペース(1L1S)マスクパターンを介して露光した。露光後、90℃で60秒間PEBを行った。その後、アルカリ現像液としての2.38質量%TMAH水溶液を用いてアルカリ現像し、水で洗浄し、乾燥してポジ型のレジストパターンを形成した。このレジストパターン形成の際、ターゲット寸法が40nmの1対1ラインアンドスペースのマスクを介して形成した線幅が、線幅40nmの1対1ラインアンドスペースに形成される露光量を最適露光量とした。
【0270】
[レジストパターンの形成(2)]
上記[レジストパターンの形成(1)]においてTMAH水溶液の代わりに酢酸n−ブチルを用いて有機溶媒現像し、かつ水での洗浄を行わなかった以外は、上記[レジストパターンの形成(1)]と同様に操作して、ネガ型のレジストパターンを形成した。
【0271】
(樹脂組成物(A)を用いる電子線露光の場合)
[レジストパターンの形成(3)]
8インチのシリコンウエハー表面にスピンコーター(東京エレクトロン社の「CLEAN TRACK ACT8」)を使用して、上記調製した樹脂組成物(A)を塗布し、90℃で60秒間PBを行った。その後、23℃で30秒間冷却し、膜厚50nmのレジスト膜を形成した。次に、このレジスト膜に、簡易型の電子線描画装置(日立製作所社の「HL800D」、出力:50KeV、電流密度:5.0A/cm
2)を用いて電子線を照射した。照射後、120℃で60秒間PEBを行った。その後、アルカリ現像液として2.38質量%のTMAH水溶液を用いて23℃で30秒間現像し、水で洗浄し、乾燥してポジ型のレジストパターンを形成した。
【0272】
(樹脂組成物(B)を用いるArF露光の場合)
[レジストパターンの形成(4)]
12インチのシリコンウエハー表面に、スピンコーター(東京エレクトロン社の「CLEAN TRACK ACT12」)を使用して、下層反射防止膜形成用組成物(ブルワーサイエンス社の「ARC66」)を塗布した後、205℃で60秒間加熱することにより膜厚105nmの下層反射防止膜を形成した。この下層反射防止膜上に、上記スピンコーターを使用して上記調製した感放射線性樹脂組成物(a)を塗布し、90℃で60秒間PBを行った。その後、23℃で30秒間冷却し、膜厚90nmのレジスト膜を形成した。次に、このレジスト膜上に上記調製した樹脂組成物(B)を塗布し、90℃で60秒間PBを行うことにより膜厚30nmのレジスト上層膜を形成した。次に、このレジスト膜を、ArFエキシマレーザー液浸露光装置(NIKON社の「NSR−S610C」)を用い、NA=1.3、ダイポール(シグマ0.977/0.782)の光学条件にて、40nmラインアンドスペース(1L1S)マスクパターンを介して露光した。露光後、90℃で60秒間PEBを行った。その後、アルカリ現像液として2.38質量%のTMAH水溶液を用いてアルカリ現像し、水で洗浄し、乾燥してポジ型のレジストパターンを形成した。このレジストパターン形成の際、ターゲット寸法が40nmの1対1ラインアンドスペースのマスクを介して形成した線幅が、線幅40nmの1対1ラインアンドスペースに形成される露光量を最適露光量とした。
【0273】
<評価>
上記樹脂組成物を用いて形成したレジストパターンについて、下記方法により測定を行うことにより、樹脂組成物についてのLWR性能、CDU性能、解像性、断面形状の矩形性、焦点深度、露光余裕度及びMEEF性能を評価した。また、樹脂組成物(B)は上記に加えて、組成物安定性、上層膜除去性、溶出量、剥がれ耐性、ブロッブ欠陥、ブリッジ欠陥についても評価した。評価結果を表7〜9に示す。上記レジストパターンの測長には、走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社の「S−9380」)を用いた。なお、LWR性能、CDU性能、解像性、焦点深度、露光余裕度及びMEEF性能における判定基準となる比較例は実施例1〜37については比較例1、実施例38〜76については比較例2、実施例77〜99については比較例3である。
【0274】
[LWR性能]
上記Eopの露光量を照射して形成したレジストパターンを、上記走査型電子顕微鏡を用い、パターン上部から観察した。線幅を任意のポイントで計50点測定し、その測定値の分布から3シグマ値を求め、これをLWR性能とした。LWR性能は、その値が小さいほどラインのガタつきが小さく良いことを示す。LWR性能は、その値を比較例のものと比べたとき、10%以上の向上(LWR性能の値が90%以下)があった場合は「良好」と、10%未満の向上(LWR性能の値が90%超)の場合は「不良」と評価した。
【0275】
[CDU性能]
上記Eopの露光量を照射して形成したレジストパターンを、上記走査型電子顕微鏡を用いてパターン上部から観察した。400nmの範囲で線幅を20点測定してその平均値を求め、その平均値を任意のポイントで計500点測定し、その測定値の分布から3シグマ値を求め、これをCDU性能とした。CDU性能は、その値が小さいほど長周期での線幅のバラつきが小さく良いことを示す。CDU性能は、その値を比較例のものと比べたとき、10%以上の向上(CDU性能の値が90%以下)があった場合は「良好」と、10%未満の向上(CDU性能の値が90%超)の場合は「不良」と評価した。
【0276】
[解像性]
上記Eopの露光量を照射して解像される最小のレジストパターンの寸法を測定し、この測定値を解像性とした。解像性は、その値が小さいほどより微細なパターンを形成でき良いことを示す。解像性は、その値を比較例のものと比べたとき、10%以上の向上(解像性の値が90%以下)があった場合は「良好」と、10%未満の向上(解像性の値が90%超)の場合は「不良」と評価した。
【0277】
[断面形状の矩形性]
上記Eopの露光量を照射して解像されるレジストパターンの断面形状を観察し、レジストパターンの高さ方向での中間での線幅Lb及びレジストパターンの上部での線幅Laを測定した。断面形状の矩形性は、その値が1に近いほど、レジストパターンがより矩形であり良いことを示す。断面形状の矩形性は、0.9≦(La/Lb)≦1.1である場合は「良好」と、(La/Lb)<0.9又は1.1<(La/Lb)である場合は「不良」と評価した。
【0278】
[焦点深度]
上記Eopの露光量を照射して解像されるレジストパターンにおいて、深さ方向にフォーカスを変化させた際の寸法を観測し、ブリッジや残渣が無いままパターン寸法が基準の90%〜110%に入る深さ方向の余裕度を測定し、この測定値を焦点深度とした。焦点深度は、その値が大きいほど、焦点の位置が変動した際に得られるパターンの寸法の変動が小さく、デバイス作製時の歩留まりを高くすることができる。焦点深度は、その値を比較例のものと比べたとき10%以上の向上(焦点深度が110%以上)があった場合は「良好」と、10%未満の向上(焦点深度が110%未満)の場合は「不良」と評価した。
【0279】
[露光余裕度]
上記Eopを含む露光量の範囲において、露光量を1mJ/cm
2ごとに変えて、それぞれレジストパターンを形成し、上記走査型電子顕微鏡を用いて、それぞれの線幅を測定した。得られた線幅と露光量の関係から、線幅が44nmとなる露光量E(44)、及び線幅が36nmとなる露光量E(36)を求め、露光余裕度=(E(36)−E(44))×100/(最適露光量)の式から露光余裕度(%)を算出した。露光余裕度は、その値が大きいほど、露光量が変動した際に得られるパターンの寸法の変動が小さく、デバイス作製時の歩留まりを高くすることができる。露光余裕度は、その値を比較例のものと比べたとき、10%以上の向上(露光余裕度の値が110%以上)があった場合は「良好」と、10%未満の向上(露光余裕度の値が110%未満)の場合は「不良」と評価した。
【0280】
[MEEF性能]
上記Eopの露光量を照射して解像されるレジストパターンにおいて、線幅が51nm、53nm、55nm、57nm、59nmとなるマスクパターンを用いて形成されたレジストパターンの線幅を縦軸に、マスクパターンのサイズを横軸にプロットしたときの直線の傾きを算出し、これをMEEF性能とした。MEEF性能は、その値が1に近いほどマスク再現性が良好であることを示す。MEEF性能は、その値を比較例のものと比べたとき、10%以上の向上(MEEF性能の値が90%以下)があった場合は「良好」と、10%未満の向上(MEEF性能の値が90%超)の場合は「不良」と評価した。
【0281】
[組成物安定性]
液浸露光用保護膜形成樹脂組成物の経時的な白濁化の有無について評価した。液浸露光用保護膜形成樹脂組成物を30分間攪拌した後、目視で白濁の有無を観察した。組成物安定性は、白濁が認められない場合は「良好」と、白濁が認められる場合は「不良」と評価した。
【0282】
[保護膜除去性]
液浸露光用保護膜のアルカリ現像液による除去性について評価した。塗布/現像装置(東京エレクトロン社の「CLEAN TRACK ACT8」)にて8インチシリコンウエハ上に、液浸露光用保護膜形成組成物をスピンコートし、90℃で60秒間PBを行い、膜厚90nmの液浸露光用保護膜を形成した。膜厚は膜厚測定装置(大日本スクリーン社の「ラムダエースVM90」)を用いて測定した。この液浸露光用保護膜を上記塗布/現像装置にて、現像液として2.38質量%TMAH水溶液を用いて60秒間パドル現像を行い、振り切りによりスピンドライした後、ウエハ表面を観察した。このとき保護膜除去性は、残渣が認められなければ「良好」と、残渣が観察されれば「不良」と評価した。
【0283】
[溶出量]
液浸露光用保護膜を形成したレジスト膜からのレジスト膜成分の溶出量について評価した。上記塗布/現像装置にてヘキサメチルジシラザン(HMDS)処理(100℃で60秒間)を行った8インチシリコンウエハ上の中心部に、厚み1.0mm、1辺30cmの正方形で中央部が直径11.3cmの円形状にくり抜かれたシリコンゴムシート(クレハエラストマー社)を乗せた。次いで、シリコンゴム中央部のくり抜き部に10mLホールピペットを用いて超純水10mLを満たした。
【0284】
一方、予め、下層反射防止膜、レジスト膜及び保護膜を形成した、上記の8インチシリコンウエハとは別の8インチシリコンウエハを準備し、その8インチシリコンウエハを、上層膜がシリコンゴムシート側に位置するように、すなわち、液浸露光用保護膜と超純水とを接触させつつ、超純水が漏れないように載せた。
【0285】
なお、下層反射防止膜、レジスト膜及び保護膜は、8インチシリコンウエハ上に次のように形成した。まず、下層反射防止膜用組成物(ブルワー・サイエンス社の「ARC29A」)を、「CLEAN TRACK ACT8」を用いて膜厚77nmの塗膜を形成するように塗布した。次いで、上記調製した感放射線性樹脂組成物(a)を、上記CLEAN TRACK ACT8を用いて下層反射防止膜上にスピンコートし、115℃で60秒間でベークすることにより膜厚205nmのレジスト膜を形成した。その後、レジスト膜上に、調製した液浸露光用保護膜形成組成物を塗布して保護膜を形成した。
【0286】
液浸露光用保護膜を載せた後、その状態のまま10秒間保った。その後、上記別の8インチシリコンウェハを取り除き、超純水をガラス注射器にて回収し、これを分析用サンプルとした。なお、実験終了後の超純水の回収率は95%以上であった。
【0287】
次いで、上記回収した超純水中の感放射線性酸発生剤のアニオン部のピーク強度を、LC−MS液体クロマトグラフ質量分析計(LC部:SERIES1100 AGILENT社、MS部:Mariner Perseptive Biosystems,Inc.社)を用いて下記の測定条件により測定した。その際、上記の感放射線性樹脂組成物(a)に用いている感放射線性酸発生剤の1ppb、10ppb、100ppb水溶液のピーク強度を、下記の測定条件で測定して検量線を作成し、この検量線を用いて上記ピーク強度から溶出量を算出した。また、同様にして、酸拡散制御剤の1ppb、10ppb、100ppb水溶液の各ピーク強度を下記測定条件で測定して検量線を作成し、この検量線を用いて上記ピーク強度から酸拡散制御剤の溶出量を算出した。溶出抑制性は、その溶出量が5.0×10
−12mol/cm
2以下であった場合には「良好」と、5.0×10
−12mol/cm
2よりも大きかった場合に「不良」とした。
【0288】
(測定条件)
使用カラム;(資生堂社の「CAPCELL PAK MG」1本)
流量;0.2mL/分
溶出溶媒:水/メタノール(3/7)に0.1質量%のギ酸を添加したもの
カラム温度;35℃
【0289】
[剥がれ耐性]
液浸露光用保護膜の基板からの剥がれ難さを評価した。基板として、HMDS処理をしていない8インチシリコンウェハを用いた。上記基板上に、液浸露光用保護膜形成樹脂組成物を上記塗布/現像装置にて、スピンコートした後に90℃で60秒間PBを行い、膜厚30nmの塗膜(レジスト上層膜)を形成した。その後、上記塗布/現像装置にて純水によるリンスを60秒間行い、振り切りによる乾燥を行った。剥がれ耐性は、目視により、リンス後にウェハ全面で液浸露光用保護膜の剥がれが認められた場合は「不良」と、エッジ部でのみ剥がれが認められた場合は「良好」と評価した。
【0290】
[ブロッブ欠陥]
液浸露光用保護膜を形成したレジスト膜を現像して得られるレジストパターンにおけるブロッブ欠陥の発生数を測定した。塗布/現像装置(東京エレクトロン社の「Lithius Pro−i」)を用いて、100℃で60秒間、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)処理を行った12インチシリコンウエハを用意した。この12インチシリコンウエハ上に、感放射線性樹脂組成物(a)をスピンコートし、ホットプレート上で100℃で60秒間PBを行い、膜厚100nmのレジスト膜を形成した。このレジスト膜上に、調製した液浸露光用保護膜形成樹脂組成物をスピンコートし、90℃で60秒間又は110℃で60秒間PBを行って膜厚30nmの塗膜(保護膜)を形成した。その後、パターンが形成されていない擦りガラスを介して露光を行った。この露光後の8インチシリコンウエハを用いて、以下の手順にて、ブロッブ欠陥の評価を行った。
【0291】
まず、上記露光後の8インチシリコンウエハの上層膜上に「CLEAN TRACK ACT8」のリンスノズルから超純水を60秒間吐出させ、4,000rpmで15秒間振り切りによりスピンドライを行った。次に、「CLEAN TRACK ACT8」のLDノズルによってパドル現像を30秒間行い、保護膜を除去した。なお、このパドル現像では、現像液として2.38%TMAH水溶液を使用した。現像後、保護膜の溶け残りの程度を、欠陥検査装置(KLAテンコール社の「KLA2351」)を用いて、ブロッブ欠陥を測定とした。検出されたブロッブ欠陥が200個以下の場合を「良好」と、200個を超えた場合を「不良」と評価した。
【0292】
[ブリッジ欠陥]
液浸露光用保護膜を形成したレジスト膜を現像して得られるレジストパターンにおけるブリッジ欠陥の発生数を測定した。12インチシリコンウエハ表面に、下層反射防止膜(日産化学社の「ARC66」)を塗布/現像装置(東京エレクトロン社の「Lithius Pro−i」)を使用してスピンコートした後、PBを行うことにより膜厚105nmの塗膜を形成した。次いで、「CLEAN TRACK ACT12」を使用して感放射線性樹脂組成物(a)をスピンコートし、100℃で60秒間PBした後、23℃で30秒間冷却することにより膜厚100nmのレジスト被膜を形成した。その後、形成したレジスト膜上に、液浸露光用保護膜形成樹脂組成物を塗布して保護膜を形成した。
【0293】
次に、ArF液浸露光装置(NIKON社の「S610C」)を使用し、NA:1.30、Crosspoleの光学条件にて、45nmライン/90nmピッチのパターンを投影するためのマスクを介して露光した(以下、マスクによって投影されるパターンの寸法をそのマスクの「パターン寸法」ともいう。例えば、パターン寸法が40nmライン/84nmピッチのマスクとは40nmライン/84nmピッチのパターンを投影するためのマスクのことを指す)。「Lithius Pro−i」のホットプレート上で100℃で60秒間PEBを行い、23℃で30秒間冷却を行った後、現像カップのGPノズルにて、2.38%TMAH水溶液を現像液として10秒間パドル現像し、超純水でリンスした。2,000rpm、15秒間振り切りでスピンドライすることにより、レジストパターンが形成された基板を得た。このとき、パターン寸法が45nmライン/90nmピッチのマスクにおいて、45nmライン/90nmピッチのレジストパターンが形成される露光量を最適露光量とした。45nm/90nmピッチのレジストパターンが形成される際、ブリッジ欠陥が認められなかった場合は「良好」と、認められた場合は「不良」と評価した。
【0294】
【表7】
【0295】
【表8】
【0296】
【表9】
【0297】
表7の結果から明らかなように、実施例の樹脂組成物(A)は、感放射線性樹脂組成物として用いることで、ArF露光場合、かつアルカリ現像及び有機溶媒現像の場合とも、LWR性能、CDU性能、解像性、断面形状の矩形性、焦点深度、露光余裕度及びMEEF性能に優れている。表8の結果から明らかなように、実施例の樹脂組成物(A)は、感放射線性樹脂組成物として用いることで、電子線露光、かつアルカリ現像の場合、LWR性能、CDU性能、解像性、断面形状の矩形性、焦点深度及び露光余裕度に優れている。また、表9の結果から明らかなように、実施例の樹脂組成物(B)は、液浸露光用保護膜形成樹脂組成物として用いることで、ArF露光かつアルカリ現像の場合、優れた焦点深度、露光余裕度及びMEEF性能を発揮しつつ、形成されるレジストパターンが、LWR性能、CDU性能及び解像性、断面形状の矩形性に優れ、また、組成物安定性、上層膜除去性、溶出量、剥がれ耐性、ブロッブ欠陥、ブリッジ欠陥にも優れている。なお、一般的に、電子線露光によればEUV露光の場合と同様の傾向が得られることが知られており、従って、実施例の樹脂組成物によれば、EUV露光の場合においても、リソグラフィー性能に優れることが推測される。なお、表7〜9中「−」は判定基準であることを表す。