特許第6036622号(P6036622)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6036622
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】多段プレス装置の収納式架台
(51)【国際特許分類】
   B30B 15/00 20060101AFI20161121BHJP
   B30B 7/02 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   B30B15/00 Z
   B30B7/02
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-193218(P2013-193218)
(22)【出願日】2013年9月18日
(65)【公開番号】特開2015-58445(P2015-58445A)
(43)【公開日】2015年3月30日
【審査請求日】2015年12月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉川 克也
(72)【発明者】
【氏名】千葉 哲也
(72)【発明者】
【氏名】柴田 高良
【審査官】 福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−5628(JP,A)
【文献】 実開平4−23277(JP,U)
【文献】 実開昭48−74225(JP,U)
【文献】 特開2001−138797(JP,A)
【文献】 特開2007−029960(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B 15/00
B30B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上型及び下型からなるプレス型が鉛直方向に複数連なって構成された多段プレス装置と、上記複数のプレス型に対してワークの出し入れを行う搬送ロボットとの間に配設され、上記多段プレス装置における高所点検作業を行う際の足場を形成する収納式架台であって、
該収納式架台は、上記多段プレス装置に隣接して設置する固定フレームと、該固定フレームに配設され、水平方向に伸縮可能な状態で互いに連結された複数の移動床とを備えており、
該複数の移動床は、上記多段プレス装置の稼動時に、上記ワークの出し入れが行われるワーク搬送領域から退避して上下に重なる状態で収納される収納状態と、上記多段プレス装置の停止時に、上記ワーク搬送領域において水平方向に広がって上記高所点検作業を行う際の足場を形成する足場状態とに切り換えられるよう構成されていることを特徴とする多段プレス装置の収納式架台。
【請求項2】
上記搬送ロボットは、上記多段プレス装置の両側から上記ワークの出し入れを行うよう、上記多段プレス装置の両側に対向して配設されており、
上記ワーク搬送領域は、上記多段プレス装置の両側に形成されており、
上記収納式架台は、上記両側の搬送ロボットと上記多段プレス装置との間にそれぞれ配設されていることを特徴とする請求項1に記載の多段プレス装置の収納式架台。
【請求項3】
上記固定フレームは、上記ワーク搬送領域に、水平方向に伸びる水平フレーム部を配置して形成されており、
上記複数の移動床は、上記水平フレーム部に設けられた複数の滑車に掛け渡されたワイヤの移動によって水平方向に伸縮するよう構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の多段プレス装置の収納式架台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多段プレス装置における高所点検作業を行う際の足場を形成する収納式架台に関する。
【背景技術】
【0002】
上型及び下型からなるプレス型が鉛直方向に複数連なって構成された多段プレス装置においては、搬送ロボットを用いて、各プレス型に対してワークの出し入れが行われている。そして、多段プレス装置は、複数のプレス型が連なるために高さ寸法が大きい。そのため、高所位置での点検作業を行う際には、作業者が利用する足場を形成する架台を、多段プレス装置に隣接して設置する。この架台の足場を利用することにより、高所位置での点検作業を可能にしている。
また、足場を形成する点検装置としては、例えば、特許文献1に開示されたものがある。この点検装置においては、柱材にフレーム部を設け、フレーム部に隣接して展開及び収納可能に形成された複数の足場部材を設けることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−21707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記足場を形成する架台は、多段プレス装置の稼動時に、搬送ロボットによって各プレス型に対してワークの出し入れを行う際の障害となる。そのため、架台は、多段プレス装置の稼動時には撤去し、高所位置での点検作業を行う度に設置する必要がある。また、特許文献1においては、多段プレス装置における特有の問題は生じない。
【0005】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたもので、多段プレス装置の稼動時には、搬送ロボットの障害にならず、多段プレス装置の停止時に高所点検作業を行う際には、作業者の足場を迅速に形成することができる多段プレス装置の収納式架台を提供しようとして得られたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、上型及び下型からなるプレス型が鉛直方向に複数連なって構成された多段プレス装置と、上記複数のプレス型に対してワークの出し入れを行う搬送ロボットとの間に配設され、上記多段プレス装置における高所点検作業を行う際の足場を形成する収納式架台であって、
該収納式架台は、上記多段プレス装置に隣接して設置する固定フレームと、該固定フレームに配設され、水平方向に伸縮可能な状態で互いに連結された複数の移動床とを備えており、
該複数の移動床は、上記多段プレス装置の稼動時に、上記ワークの出し入れが行われるワーク搬送領域から退避して上下に重なる状態で収納される収納状態と、上記多段プレス装置の停止時に、上記ワーク搬送領域において水平方向に広がって上記高所点検作業を行う際の足場を形成する足場状態とに切り換えられるよう構成されていることを特徴とする多段プレス装置の収納式架台にある。
【発明の効果】
【0007】
上記多段プレス装置の収納式架台は、多段プレス装置と搬送ロボットとの間に配設され、多段プレス装置における高所点検作業を行う際の足場を形成する。収納式架台は、水平方向に伸縮可能な状態で互いに連結された複数の移動床を用いて構成されている。
多段プレス装置の稼動時においては、複数の移動床を収納状態にし、収納式架台が搬送ロボットの障害にならないようにする。また、多段プレス装置の停止時において、多段プレス装置の高所点検作業を行う際には、複数の移動床を足場状態にし、作業者が利用する足場を形成する。
これにより、多段プレス装置の稼動時には、収納式架台が搬送ロボットの障害にならず、多段プレス装置の停止時に高所点検作業を行う際には、収納式架台によって作業者の足場を迅速に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例にかかる、多段プレス装置の停止時において、複数の移動床が足場状態を形成する状態の収納式架台を示す平面図。
図2】実施例にかかる、多段プレス装置の停止時において、複数の移動床が足場状態を形成する状態の収納式架台を示す正面図。
図3】実施例にかかる、多段プレス装置及び収納式架台を示す側面図。
図4】実施例にかかる、多段プレス装置を示す正面図。
図5】実施例にかかる、多段プレス装置の稼動時において、複数の移動床が収納状態を形成する状態の収納式架台を示す平面図。
図6】実施例にかかる、多段プレス装置の稼動時において、複数の移動床が収納状態を形成する状態の収納式架台を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
上述した多段プレス装置の収納式架台における好ましい実施の形態につき説明する。
上記多段プレス装置の収納式架台において、上記多段プレス装置における高所点検作業には、上記複数のプレス型のうち、作業者の手が届かない高所にあるプレス型の上型及び下型のメンテナンス作業、清掃作業等が含まれる。
【0010】
また、上記搬送ロボットは、上記多段プレス装置の両側から上記ワークの出し入れを行うよう、上記多段プレス装置の両側に対向して配設されており、上記ワーク搬送領域は、上記多段プレス装置の両側に形成されており、上記収納式架台は、上記両側の搬送ロボットと上記多段プレス装置との間にそれぞれ配設されていてもよい。
この場合には、多段プレス装置の両側において、ワークの出し入れを可能にするとともに、収納式架台による高所点検作業を可能にすることができる。
【0011】
また、上記固定フレームは、上記ワーク搬送領域に、水平方向に伸びる水平フレーム部を配置して形成されており、上記複数の移動床は、上記水平フレーム部に設けられた複数の滑車に掛け渡されたワイヤの移動によって水平方向に伸縮するよう構成されていてもよい。
この場合には、複数の移動床を伸縮させる機構を、水平フレーム部に配設して容易に形成することができる。
【実施例】
【0012】
以下に、多段プレス装置の収納式架台にかかる実施例につき、図面を参照して説明する。
本例の多段プレス装置1の収納式架台5A,5Bは、図1図3に示すごとく、上型311,321,331及び下型312,322,332からなるプレス型31,32,33が鉛直方向に複数連なって構成された多段プレス装置1と、複数のプレス型31,32,33に対してワーク8の出し入れを行う搬送ロボット4A,4B,4Cとの間に配設され、多段プレス装置1における高所点検作業を行う際の足場を形成するものである。収納式架台5A,5Bは、多段プレス装置1に隣接して設置する固定フレーム6と、固定フレーム6に配設され、水平方向に伸縮可能な状態で互いに連結された複数の移動床7とを備えている。複数の移動床7は、図5図6に示すごとく、多段プレス装置1の稼動時に、ワーク8の出し入れが行われるワーク搬送領域X1,X2から退避して上下に重なる状態で収納される収納状態501と、図1図2に示すごとく、多段プレス装置1の停止時に、ワーク搬送領域X1,X2において水平方向に広がって高所点検作業を行う際の足場を形成する足場状態502とに切り換えられるよう構成されている。
【0013】
以下に、本例の多段プレス装置1の収納式架台5A,5Bにつき、図1図6を参照して詳説する。
図4に示すごとく、多段プレス装置1は、複数のプレス型31,32,33の上型311,321,331と下型312,322,332との間にそれぞれワーク8を挟み込んで、複数のワーク8に同時にプレス加工を行う。複数のプレス型31,32,33は、プレス加工を段階的に行う複数の工程のうちの各工程ごとのプレス加工を行うよう形成されている。本例の複数のプレス型31,32,33は、鉛直方向に3段に重なって配置されており、多段プレス装置1においては3つのプレス加工の工程が行われる。
図5に示すごとく、多段プレス装置1に搬入されるワーク8は、各搬送ロボット4A,4B,4Cによって複数のプレス型31,32,33に順次移載され、多段プレス装置1から搬出される。
【0014】
図4に示すごとく、多段プレス装置1は、ベッド2と、ベッド2から立設された複数(本例では4本)の支柱21と、複数の支柱21の上に設けられたクラウン20とを有している。また、多段プレス装置1には、複数の支柱21に対してスライド可能な加圧ベース22と、加圧ベース22に第1の連結部材231によって吊り下げられ、複数の支柱21に対してスライド可能な第1のスライドベース23Aと、第1のスライドベース23Aに第2の連結部材232によって吊り下げられ、複数の支柱21に対してスライド可能な第2のスライドベース23Bとが設けられている。
【0015】
最上段のプレス型31における上型311は、加圧ベース22の下面に配設されており、最上段のプレス型31における下型312は、第1のスライドベース23Aの上面に配設されている。中段のプレス型32における上型321は、第1のスライドベース23Aの下面に配設されており、中段のプレス型32における下型322は、第2のスライドベース23Bの上面に配設されている。最下段のプレス型33における上型331は、第2のスライドベース23Bの下面に配設されており、最下段のプレス型33における下型332は、ベッド2の上面に配設されている。
【0016】
図3図4に示すごとく、加圧ベース22は、昇降シリンダー24による推力を受けて昇降可能であり、加圧シリンダー25による推力を受けて、複数のワーク8を同時に加圧可能である。具体的には、加圧ベース22が下降すると、まず、最下段のプレス型33の上型331と下型332との間にワーク8が挟まれ、次いで、中段のプレス型32の上型321と下型322との間にワーク8が挟まれ、最後に、最上段のプレス型31の上型311と下型312との間にワーク8が挟まれる。そして、昇降シリンダー24及び加圧シリンダー25の推力によって、全てのプレス型31,32,33の上型311,321,331と下型312,322,332との間にワーク8が同時に挟まれて、各ワーク8にプレス加工が同時に行われる。
【0017】
図1図5に示すごとく、搬送ロボット4A,4B,4Cは、多段プレス装置1の両側からワーク8の出し入れを行うよう、多段プレス装置1の両側に分散して配設されている。最上段のプレス型31にワーク8を搬入するための搬入用搬送ロボット4Aは、多段プレス装置1の一方側に配設されている。搬入用搬送ロボット4Aの可動領域の一部は、一方側のワーク搬送領域X1に入っている。最上段のプレス型31から中段のプレス型32へワーク8を移載するとともに中段のプレス型32から最下段のプレス型33へワーク8を移載する移載用搬送ロボット4Bは、多段プレス装置1の他方側に配設されている。また、最下段のプレス型33からワーク8を搬出するための搬出用搬送ロボット4Cは、多段プレス装置1の他方側に配設されている。移載用搬送ロボット4Bの可動領域の一部及び搬出用搬送ロボット4Cの可動領域の一部は、他方側のワーク搬送領域X2に入っている。
【0018】
収納式架台5Aは、搬入用搬送ロボット4Aと多段プレス装置1との間に配設されており、収納式架台5Bは、移載用搬送ロボット4B及び搬出用搬送ロボット4Cと多段プレス装置1との間に配設されている。いずれの搬送ロボット4A,4B,4Cも、多段プレス装置1において4本の支柱21が位置する4つの角部の周辺に配設されている。
【0019】
図1図2図5に示すごとく、収納式架台5A,5Bの固定フレーム6は、複数の移動床7と並べられて足場を形成するとともに複数の移動床7が収納される固定床61と、ワーク搬送領域X1,X2において水平方向に伸びる水平フレーム部62と、固定床61及び水平フレーム部62を支える脚部63と、固定床61及び水平フレーム部62の上方において、複数の移動床7を垂下させて移動させるための上方フレーム部64とを有している。固定床61は、多段プレス装置1におけるワーク搬送領域X1,X2の側方にずれた位置に配設されている。
【0020】
図2に示すごとく、複数の移動床7は、それぞれ上方フレーム部64から垂下される垂下フレーム部71と、作業者の転落を防止する手摺部72とを有している。垂下フレーム部71の上端部には、上方フレーム部64の上を転がるローラ711が設けられている。本例の移動床7は3つが連結されており、収納状態501においては、3つの移動床7が、上下に互いに重なるとともに固定床61の上方又は下方に重なって収納される。
【0021】
図2図6に示すごとく、水平フレーム部62には、複数の移動床7を水平方向に移動させるためのワイヤ65と、ワイヤ65を環状に掛け渡すための複数の滑車66と、固定床61から最も離れる最先端側に位置する移動床7に係合して、複数の移動床7を足場状態502に維持するためのロック部67とが設けられている。固定床61を支える脚部63には、ワイヤ65を掛け渡す滑車66と、この滑車66を回転させる操作ハンドル68とが設けられている。複数の移動床7は、作業者が操作ハンドル68を回転させたときに循環するワイヤ65によって水平方向に伸縮し、収納状態501と足場状態502とに切り換わる。
【0022】
次に、本例の多段プレス装置1の収納式架台5A,5Bの動作及び作用効果につき説明する。
本例の収納式架台5A,5Bは、多段プレス装置1の稼動時においても、多段プレス装置1に隣接して設置したままの状態にできるものである。
図5図6に示すごとく、多段プレス装置1の稼動時においては、各収納式架台5A,5Bの複数の移動床7を収納状態501にし、各収納式架台5A,5Bが、各プレス型31,32,33との間でワーク8を出し入れする各搬送ロボット4A,4B,4Cの障害にならないようにする。このとき、複数の移動床7の全体は、多段プレス装置1の側方に位置する固定床61に対して上下に重なって収納される。そして、多段プレス装置1のワーク搬送領域X1,X2には、水平フレーム部62が常時配置されている。ただし、この水平フレーム部62は、各搬送ロボット4A,4B,4Cが各プレス型31,32,33との間でワーク8の出し入れを行う際に、各搬送ロボット4A,4B,4Cの障害にならない。このように、多段プレス装置1の稼動時においては、複数の移動床7が、多段プレス装置1の両側に形成されたワーク搬送領域X1,X2から退避する。
【0023】
一方、図1図2に示すごとく、多段プレス装置1の停止時において、多段プレス装置1の高所点検作業を行う際には、各収納式架台5A,5Bの複数の移動床7を足場状態502にし、作業者が利用する足場を形成する。このとき、複数の移動床7が各ワーク搬送領域X1,X2に配置される。そして、作業者は、移動床7を利用して、最上段のプレス型31及び中段のプレス型32のそれぞれの上型311,321及び下型312,322に対してメンテナンス、清掃等の点検作業を行うことができる。
それ故、本例の多段プレス装置1の収納式架台5A,5Bによれば、多段プレス装置1の稼動時には、収納式架台5A,5Bが搬送ロボット4A,4B,4Cの障害にならず、多段プレス装置1の停止時に高所点検作業を行う際には、収納式架台5A,5Bによって作業者の足場を迅速に形成することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 多段プレス装置
31 最上段のプレス型
32 中段のプレス型
33 最下段のプレス型
4A,4B,4C 搬送ロボット
5A,5B 収納式架台
501 収納状態
502 足場状態
6 固定フレーム
62 水平フレーム部
65 ワイヤ
7 移動床
X1,X2 ワーク搬送領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6