【実施例】
【0012】
以下に、多段プレス装置の収納式架台にかかる実施例につき、図面を参照して説明する。
本例の多段プレス装置1の収納式架台5A,5Bは、
図1〜
図3に示すごとく、上型311,321,331及び下型312,322,332からなるプレス型31,32,33が鉛直方向に複数連なって構成された多段プレス装置1と、複数のプレス型31,32,33に対してワーク8の出し入れを行う搬送ロボット4A,4B,4Cとの間に配設され、多段プレス装置1における高所点検作業を行う際の足場を形成するものである。収納式架台5A,5Bは、多段プレス装置1に隣接して設置する固定フレーム6と、固定フレーム6に配設され、水平方向に伸縮可能な状態で互いに連結された複数の移動床7とを備えている。複数の移動床7は、
図5、
図6に示すごとく、多段プレス装置1の稼動時に、ワーク8の出し入れが行われるワーク搬送領域X1,X2から退避して上下に重なる状態で収納される収納状態501と、
図1、
図2に示すごとく、多段プレス装置1の停止時に、ワーク搬送領域X1,X2において水平方向に広がって高所点検作業を行う際の足場を形成する足場状態502とに切り換えられるよう構成されている。
【0013】
以下に、本例の多段プレス装置1の収納式架台5A,5Bにつき、
図1〜
図6を参照して詳説する。
図4に示すごとく、多段プレス装置1は、複数のプレス型31,32,33の上型311,321,331と下型312,322,332との間にそれぞれワーク8を挟み込んで、複数のワーク8に同時にプレス加工を行う。複数のプレス型31,32,33は、プレス加工を段階的に行う複数の工程のうちの各工程ごとのプレス加工を行うよう形成されている。本例の複数のプレス型31,32,33は、鉛直方向に3段に重なって配置されており、多段プレス装置1においては3つのプレス加工の工程が行われる。
図5に示すごとく、多段プレス装置1に搬入されるワーク8は、各搬送ロボット4A,4B,4Cによって複数のプレス型31,32,33に順次移載され、多段プレス装置1から搬出される。
【0014】
図4に示すごとく、多段プレス装置1は、ベッド2と、ベッド2から立設された複数(本例では4本)の支柱21と、複数の支柱21の上に設けられたクラウン20とを有している。また、多段プレス装置1には、複数の支柱21に対してスライド可能な加圧ベース22と、加圧ベース22に第1の連結部材231によって吊り下げられ、複数の支柱21に対してスライド可能な第1のスライドベース23Aと、第1のスライドベース23Aに第2の連結部材232によって吊り下げられ、複数の支柱21に対してスライド可能な第2のスライドベース23Bとが設けられている。
【0015】
最上段のプレス型31における上型311は、加圧ベース22の下面に配設されており、最上段のプレス型31における下型312は、第1のスライドベース23Aの上面に配設されている。中段のプレス型32における上型321は、第1のスライドベース23Aの下面に配設されており、中段のプレス型32における下型322は、第2のスライドベース23Bの上面に配設されている。最下段のプレス型33における上型331は、第2のスライドベース23Bの下面に配設されており、最下段のプレス型33における下型332は、ベッド2の上面に配設されている。
【0016】
図3、
図4に示すごとく、加圧ベース22は、昇降シリンダー24による推力を受けて昇降可能であり、加圧シリンダー25による推力を受けて、複数のワーク8を同時に加圧可能である。具体的には、加圧ベース22が下降すると、まず、最下段のプレス型33の上型331と下型332との間にワーク8が挟まれ、次いで、中段のプレス型32の上型321と下型322との間にワーク8が挟まれ、最後に、最上段のプレス型31の上型311と下型312との間にワーク8が挟まれる。そして、昇降シリンダー24及び加圧シリンダー25の推力によって、全てのプレス型31,32,33の上型311,321,331と下型312,322,332との間にワーク8が同時に挟まれて、各ワーク8にプレス加工が同時に行われる。
【0017】
図1、
図5に示すごとく、搬送ロボット4A,4B,4Cは、多段プレス装置1の両側からワーク8の出し入れを行うよう、多段プレス装置1の両側に分散して配設されている。最上段のプレス型31にワーク8を搬入するための搬入用搬送ロボット4Aは、多段プレス装置1の一方側に配設されている。搬入用搬送ロボット4Aの可動領域の一部は、一方側のワーク搬送領域X1に入っている。最上段のプレス型31から中段のプレス型32へワーク8を移載するとともに中段のプレス型32から最下段のプレス型33へワーク8を移載する移載用搬送ロボット4Bは、多段プレス装置1の他方側に配設されている。また、最下段のプレス型33からワーク8を搬出するための搬出用搬送ロボット4Cは、多段プレス装置1の他方側に配設されている。移載用搬送ロボット4Bの可動領域の一部及び搬出用搬送ロボット4Cの可動領域の一部は、他方側のワーク搬送領域X2に入っている。
【0018】
収納式架台5Aは、搬入用搬送ロボット4Aと多段プレス装置1との間に配設されており、収納式架台5Bは、移載用搬送ロボット4B及び搬出用搬送ロボット4Cと多段プレス装置1との間に配設されている。いずれの搬送ロボット4A,4B,4Cも、多段プレス装置1において4本の支柱21が位置する4つの角部の周辺に配設されている。
【0019】
図1、
図2、
図5に示すごとく、収納式架台5A,5Bの固定フレーム6は、複数の移動床7と並べられて足場を形成するとともに複数の移動床7が収納される固定床61と、ワーク搬送領域X1,X2において水平方向に伸びる水平フレーム部62と、固定床61及び水平フレーム部62を支える脚部63と、固定床61及び水平フレーム部62の上方において、複数の移動床7を垂下させて移動させるための上方フレーム部64とを有している。固定床61は、多段プレス装置1におけるワーク搬送領域X1,X2の側方にずれた位置に配設されている。
【0020】
図2に示すごとく、複数の移動床7は、それぞれ上方フレーム部64から垂下される垂下フレーム部71と、作業者の転落を防止する手摺部72とを有している。垂下フレーム部71の上端部には、上方フレーム部64の上を転がるローラ711が設けられている。本例の移動床7は3つが連結されており、収納状態501においては、3つの移動床7が、上下に互いに重なるとともに固定床61の上方又は下方に重なって収納される。
【0021】
図2、
図6に示すごとく、水平フレーム部62には、複数の移動床7を水平方向に移動させるためのワイヤ65と、ワイヤ65を環状に掛け渡すための複数の滑車66と、固定床61から最も離れる最先端側に位置する移動床7に係合して、複数の移動床7を足場状態502に維持するためのロック部67とが設けられている。固定床61を支える脚部63には、ワイヤ65を掛け渡す滑車66と、この滑車66を回転させる操作ハンドル68とが設けられている。複数の移動床7は、作業者が操作ハンドル68を回転させたときに循環するワイヤ65によって水平方向に伸縮し、収納状態501と足場状態502とに切り換わる。
【0022】
次に、本例の多段プレス装置1の収納式架台5A,5Bの動作及び作用効果につき説明する。
本例の収納式架台5A,5Bは、多段プレス装置1の稼動時においても、多段プレス装置1に隣接して設置したままの状態にできるものである。
図5、
図6に示すごとく、多段プレス装置1の稼動時においては、各収納式架台5A,5Bの複数の移動床7を収納状態501にし、各収納式架台5A,5Bが、各プレス型31,32,33との間でワーク8を出し入れする各搬送ロボット4A,4B,4Cの障害にならないようにする。このとき、複数の移動床7の全体は、多段プレス装置1の側方に位置する固定床61に対して上下に重なって収納される。そして、多段プレス装置1のワーク搬送領域X1,X2には、水平フレーム部62が常時配置されている。ただし、この水平フレーム部62は、各搬送ロボット4A,4B,4Cが各プレス型31,32,33との間でワーク8の出し入れを行う際に、各搬送ロボット4A,4B,4Cの障害にならない。このように、多段プレス装置1の稼動時においては、複数の移動床7が、多段プレス装置1の両側に形成されたワーク搬送領域X1,X2から退避する。
【0023】
一方、
図1、
図2に示すごとく、多段プレス装置1の停止時において、多段プレス装置1の高所点検作業を行う際には、各収納式架台5A,5Bの複数の移動床7を足場状態502にし、作業者が利用する足場を形成する。このとき、複数の移動床7が各ワーク搬送領域X1,X2に配置される。そして、作業者は、移動床7を利用して、最上段のプレス型31及び中段のプレス型32のそれぞれの上型311,321及び下型312,322に対してメンテナンス、清掃等の点検作業を行うことができる。
それ故、本例の多段プレス装置1の収納式架台5A,5Bによれば、多段プレス装置1の稼動時には、収納式架台5A,5Bが搬送ロボット4A,4B,4Cの障害にならず、多段プレス装置1の停止時に高所点検作業を行う際には、収納式架台5A,5Bによって作業者の足場を迅速に形成することができる。