【実施例】
【0010】
本発明を低圧EGR装置の吸気絞り弁に適用した具体的な一例(実施例)を、図面を参照して説明する。なお、以下の実施例は具体的な一例を開示するものであって、本発明が実施例に限定されないことは言うまでもない。
【0011】
[実施例1]
図1を参照して実施例1を説明する。
この実施例1は、本発明をエンジン吸排気システムにおける低圧EGR装置の吸気絞り弁1に適用したものであり、エンジン吸排気システムには、低圧EGR装置とは別に、高圧EGR装置が設けられる。
【0012】
高圧EGR装置は、高排気圧範囲(DPFや触媒の排気上流側など、高い排気圧が発生する範囲)の排気通路の内部と、高吸気負圧発生範囲(スロットルバルブの吸気下流側など、高い吸気負圧が発生する範囲)の吸気通路2aの内部とを接続して、多量のEGRガスをエンジンへ戻すことを得意とする排気ガス再循環装置である。
【0013】
一方、低圧EGR装置は、低排気圧範囲(DPFや触媒の排気下流側など、低い排気圧が発生する範囲)の排気通路の内部と、低吸気負圧発生範囲(スロットルバルブの吸気上流側で、低い吸気負圧が発生する範囲)の吸気通路2aの内部とを接続して、少量のEGRガスをエンジンに戻すことを得意とする排気ガス再循環装置である。
【0014】
低圧EGR装置は、排気ガスの一部をEGRガスとして吸気通路2aの吸気上流側に戻す低圧EGR流路を備えている。この低圧EGR流路には、低圧EGR流路の開度を調整することでEGRガスの流量調整を行なう低圧EGR調整弁の他に、吸気側に戻されるEGRガスの冷却を行なう低圧EGRクーラが設けられている。
また、低圧EGR装置は、吸気通路2aと低圧EGR流路の合流部に吸気負圧を発生させるための吸気絞り弁1を設けている。
【0015】
この吸気絞り弁1は、吸気通路2aを最大に絞った状態(最小開度時)であっても、吸気通路2aの一部を開放するように設けられるものである。具体的な一例として、吸気絞り弁1が吸気通路2aを最大に絞った状態であっても、吸気通路2aの例えば10%ほどを開放するように設けられる。
【0016】
低圧EGR装置は、低排気圧範囲のEGRガスを、低吸気負圧発生範囲に戻すものであるため、少量のEGRガスをエンジンに戻すことを得意とする。しかるに、低圧EGR装置を用いて多量のEGRガスをエンジンへ戻したい運転領域が存在しても、低吸気負圧発生範囲にEGRガスを戻す構造の低圧EGR装置では多量のEGRガスをエンジンへ戻すことが困難である。
そこで、低圧EGR装置は、吸気通路2aのうち、EGRガスを戻す箇所(低圧EGR流路の合流箇所)に吸気負圧を発生させるための吸気絞り弁1を設けており、低圧EGR装置において大きなEGR量を得たい運転領域では、吸気絞り弁1を閉じる方向(吸気負圧が発生する方向)に開度制御し、低圧EGR装置において多量のEGRガスを吸気通路2aへ導くことを可能にしている。
【0017】
低圧EGR装置は、具体的な一例として、低圧EGR調整弁と吸気絞り弁1を組付けた低圧EGR弁体ユニットを備える。
この低圧EGR弁体ユニットには、低圧EGR調整弁を駆動する1つの電動アクチュエータと、この電動アクチュエータの出力特性を変化させて吸気絞り弁1を駆動するリンク装置とを備え、リンク装置を介して伝達された電動アクチュエータの出力によって吸気絞り弁1を駆動するように設けられている。
【0018】
なお、リンク装置には、電動アクチュエータの出力特性を変化させて吸気絞り弁1へ伝達する特性変換部(カム溝等)が設けられており、低圧EGR調整弁が所定開度より大きくなってから低圧EGR調整弁の開度アップに連動させて吸気絞り弁1の開度を小さくするように設けられている。
【0019】
吸気絞り弁1(バルブ装置の一例)は、
・吸気通路2aが形成されるハウジング2と、
・このハウジング2に対して回動自在に支持されるシャフト3と、
・このシャフト3に設けられて吸気通路2aの絞り開度調整を行う弁体4と、
を備えて構成される。
弁体4は、吸気通路2a内においてシャフト3にネジやカシメ等で固定されるバタフライバルブであり、シャフト3と一体に回動する。
【0020】
また、低圧EGR弁体4ユニットには、低圧EGR調整弁を全閉位置へ戻し、吸気絞り弁1を全開位置へ戻すリターンスプリングが設けられるとともに、吸気絞り弁1の弁体4を最大開度で停止させるストッパ部材が設けられている。
これにより、電動アクチュエータの通電停止時(電動モータの通電停止時)に、低圧EGR調整弁が最小開度位置に戻されるとともに、吸気絞り弁1が全開位置に戻される。
なお、電動アクチュエータは、通電により回転出力を発生する電動モータ(例えば、DCモータ)と、この電動モータの回転を減速して出力トルクを増大させる歯車減速装置とを組み合わせたものである。
【0021】
次に、本発明にかかる吸気絞り弁1の弁体4について詳細に説明する。
なお、以下では、弁体4のうち、最小開度時においてシャフト3より吸気上流側(エアクリーナ側)を上流弁部4aと称し、最小開度時においてシャフト3より吸気下流側(エンジン側)を下流弁部4bと称する。
【0022】
吸気絞り弁1は、吸気通路2aを最大に絞った状態(最小開度時)であっても、
図1(b)に示すように、弁体4とハウジング2(吸気通路2aの内壁)の間に環状の隙間αが設けられるものであり、最小開度時であっても隙間αを介して吸気が流れるように設けられている。このため、最小開度時には、弁体4に流速勾配が生じる。その結果、上流弁部4aに加わる圧力P1が、下流弁部4bに加わる圧力P2より大きくなる(P1>P2)。
【0023】
そこで、この実施例1では、上流弁部4aの面積S1より、下流弁部4bの面積S2を大きく設けている(S1<S2)。
なお、上流弁部4aの面積S1とは、上流弁部4aにおける吸気の受圧面積であり、上流弁部4aの外縁とシャフト3で囲まれる面積である。
同様に、下流弁部4bの面積S2とは、下流弁部4bにおける吸気の受圧面積であり、下流弁部4bの外縁とシャフト3で囲まれる面積である。
【0024】
上流弁部4aの面積S1より、下流弁部4bの面積S2を大きく設ける手段として、この実施例1では、
図1(a)に示すように、シャフト3の軸方向から見た場合、上流弁部4aの角度に対し、下流弁部4bの角度が異なって設けられる。
具体的には、最小開度時における上流弁部4aより、最小開度時における下流弁部4bが、吸気下流側に傾いて設けられることで、上流弁部4aの面積S1より下流弁部4bの面積S2が大きく設けられる。
【0025】
上流弁部4aの面積S1と下流弁部4bの面積S2の比率は、最小開度時において、上流弁部4aが流速勾配によって受ける受動トルクT1(T1=S1×P1)と、下流弁部4bが流速勾配によって受ける受動トルクT2(T2=S2×P2)とが、略等しくなる比率に設けられる。
具体的にこの実施例1では、上流弁部4aが受ける受動トルクT1と、下流弁部4bが受ける受動トルクT2とが略等しくなるように、最小開度時における下流弁部4bの傾きを従来技術(
図3参照)よりも大きくして、下流弁部4bの面積S2を大きく設けるものである。
【0026】
また、弁体4は、シャフト3の一部を平面に設けた取付面(平面)に固定される。一方、弁体4にも、シャフト3の取付面に合致する平坦部4cが設けられている。
この実施例1では、シャフト3の軸方向から見た場合、平坦部4cの角度が、「上流弁部4aの傾斜角度」および「下流弁部4bの傾斜角度」とも異なって設けられるものであり、シャフト3の軸方向から見て弁体4が略Z字形状を呈して設けられる。
【0027】
(実施例1の効果1)
この実施例1の吸気絞り弁1は、上述したように、上流弁部4aの面積S1より下流弁部4bの面積S2を大きく設けて、上流弁部4aの受動トルクT1(T1=S1×P1)と、下流弁部4bの受動トルクT2(T2=S2×P2)とを、略等しく設けている。
これにより、流速勾配によってシャフト3に作用する回動トルクTを略0(ゼロ)にできる(T=T1−T2≒0)。即ち、最小開度時にシャフト3に作用する回動トルクTをキャンセルすることができる。
このため、最小開度状態から弁体4を開弁させる際や、最小開度付近で弁体4をコントロールする際の回動負荷を低減することができ、電動アクチュエータおよびトルク伝達範囲(リンク装置等)の負荷を低減できる。
【0028】
(実施例1の効果2)
この実施例1は、上述したように、シャフト3の軸方向から見た場合、上流弁部4aの角度と下流弁部4bの角度が異なって設けられる。
具体的には、最小開度時における下流弁部4bを、上流弁部4aより吸気下流側に傾けることで、上流弁部4aの面積S1より下流弁部4bの面積S2を大きく設けている。
これにより、シャフト3の位置を従来技術(
図3参照)と同じ位置に設けることができ、弁体4の形状変更のみで本発明を実施できる。
【0029】
(実施例1の効果3)
この実施例1は、上述したように、シャフト3の軸方向から見た場合、弁体4を略Z字形状に設けている。具体的には、シャフト3の取付面に合致する平坦部4cを弁体4に設けている。
これにより、シャフト3に対する弁体4の位置決めが容易になり、シャフト3に対する弁体4の組付けを容易にすることができる。