特許第6036627号(P6036627)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6036627
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】蓄電装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/04 20060101AFI20161121BHJP
   H01G 11/84 20130101ALI20161121BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20161121BHJP
【FI】
   H01M4/04 A
   H01G11/84
   H01M4/139
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-195468(P2013-195468)
(22)【出願日】2013年9月20日
(65)【公開番号】特開2015-60796(P2015-60796A)
(43)【公開日】2015年3月30日
【審査請求日】2015年12月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(72)【発明者】
【氏名】嵯峨 庄太
【審査官】 藤原 敬士
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−159333(JP,A)
【文献】 特開2011−204613(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/04
H01G 11/84
H01M 4/139
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に活物質層を有する電極を備える蓄電装置の製造方法であって、
搬送される前記電極となるべき帯状の金属箔シートの表面に、前記活物質層を塗工する塗工工程と、
前記金属箔シートの表面に、前記活物質層を全体的に覆うセラミック層を形成する被覆工程と、
前記活物質層が塗工され、かつ、前記セラミック層が形成された領域の前記金属箔シートを、前記電極の形状に打ち抜く打抜工程と
を含み、
前記塗工工程の後であって、かつ、前記被覆工程の前に、前記金属箔シートの表面に、前記活物質層の塗工位置を基準とするマークを形成するマーキング工程
をさらに含む、蓄電装置の製造方法。
【請求項2】
前記塗工工程の後であって、かつ、前記被覆工程の前に、前記活物質層をプレスするプレス工程をさらに含み、
前記プレス工程の後に、前記マーキング工程をおこなう、請求項1に記載の蓄電装置の製造方法。
【請求項3】
前記塗工工程において、前記金属箔シートの搬送方向に沿って連続的に帯状の前記活物質層を塗工する、請求項1または2に記載の蓄電装置の製造方法。
【請求項4】
前記塗工工程において、前記金属箔シートの搬送方向に沿って間欠的に矩形状の前記活物質層を塗工する、請求項1または2に記載の蓄電装置の製造方法。
【請求項5】
前記蓄電装置が二次電池である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の蓄電装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、蓄電装置の一種である二次電池としては、例えばリチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池などがよく知られている。このような二次電池は、蓄電要素として、表面に活物質層を有する電極(正極又は負極)とセパレータとを積層又は捲回することで電極組立体を構成し、この電極組立体がケースに収容された構成を有する。
【0003】
たとえば、下記特許文献1、2には、二次電池の製造方法として、帯状の金属箔シートの表面に活物質層を塗工した後、各電極の形状に打ち抜く技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−134479号公報
【特許文献2】特開2009−266739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、電極間の絶縁性を向上させる等の目的で、金属箔シートに塗工された活物質層をセラミック層で覆う技術について、開発が進められている。
【0006】
ただし、セラミック層で活物質層を覆った場合には、位置検出用のカメラが活物質層の位置を検出できない。これは、セラミック層による被覆時、製造誤差などによる位置ズレが生じても、活物質層上に、セラミック層で覆われない部位が生じないように、活物質層の塗工部よりも、セラミック層の被覆部の面積を大きく設定することによる。このため、活物質層の外周縁は、セラミック層で覆われてしまう。そのため、高い位置精度で金属箔を打ち抜くことが困難であり、打ち抜き位置が大幅にずれた場合には、電極特性の低下を招いてしまう。
【0007】
そこで、本発明は、電極特性の向上が図られた蓄電装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態に係る蓄電装置の製造方法は、表面に活物質層を有する電極を備える蓄電装置の製造方法であって、搬送される電極となるべき帯状の金属箔シートの表面に、活物質層を塗工する塗工工程と、金属箔シートの表面に、活物質層を全体的に覆うセラミック層を形成する被覆工程と、活物質層が塗工され、かつ、セラミック層が形成された領域の金属箔シートを、電極の形状に打ち抜く打抜工程とを含み、塗工工程の後であって、かつ、被覆工程の前に、金属箔シートの表面に、活物質層の塗工位置を基準とするマークを形成するマーキング工程をさらに含む。
【0009】
この蓄電装置の製造方法においては、マーキング工程において金属箔シートの表面に形成されたマークを、その後の打抜工程の際の位置検出に利用することができる。そのため、高い位置精度で電極の形状に打ち抜くことができ、高い電極特性を実現することができる。
【0010】
また、塗工工程の後であって、かつ、被覆工程の前に、活物質層をプレスするプレス工程をさらに含み、プレス工程の後に、マーキング工程をおこなう態様であってもよい。プレス工程において活物質層の寸法形状が変わる場合でも、プレス工程の後にマーキング工程をおこなうことで、高い位置精度で金属箔の形状に打ち抜くことできる。
【0011】
さらに、塗工工程において、金属箔シートの搬送方向に沿って連続的に帯状の活物質層を塗工する態様であってもよく、また、金属箔シートの搬送方向に沿って間欠的に矩形状の活物質層を塗工する態様であってもよい。
【0012】
なお、上記蓄電装置は二次電池であってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電極特性の向上が図られた蓄電装置の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の一形態に係る蓄電装置の製造方法を示したフロー図である。
図2図2は、図1に示した製造方法の一工程を示した図である。
図3図3は、図1に示した製造方法の一工程を示した図である。
図4図4は、(a)図1に示した製造方法の一工程を示した図であり、(b)IVb−IVb線断面図である。
図5図5は、電極の寸法形状を示した図である。
図6図6は、異なる態様の製造方法の一工程を示した図である。
図7図7は、異なる態様の製造方法の一工程を示した図である。
図8図8は、(a)異なる態様の製造方法の一工程を示した図であり、(b)VIIIb−VIIIb線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、同一又は同等の要素については同一の符号を付し、説明が重複する場合にはその説明を省略する。
【0016】
図1は、蓄電装置の製造方法として、二次電池の製造方法を示したフロー図である。図1に示すように、この製造方法には、塗工工程S10、乾燥工程S12、プレス工程S14、被覆工程S16、打抜工程S18が含まれる。
【0017】
塗工工程S10では、図2に示すように、ロール状に巻かれた帯状の金属箔シート10を順次繰り出し、その表面に、活物質層12を塗工する。
【0018】
金属箔シート10は、蓄電装置の電極を構成する個々の金属箔となるべきシートであり、たとえば負極であれば銅や、正極であればアルミニウムなどで構成されている。金属箔シート10は、その表面が十分に張られた状態で搬送方向Dに搬送される。
【0019】
活物質層12は、金属酸化物や炭素材料等の活物質、および導電材、結着剤、増粘剤を含む層であり、塗工工程S10においては塗工される際は溶剤を含むスラリー状態である。活物質層12は、金属箔シート10の表面に、金属箔シート10の搬送方向Dに沿って、均一幅、かつ、均一厚さで連続的に塗工される。
【0020】
乾燥工程S12では、塗工工程S10により金属箔シート10の表面に塗工された活物質層12を、所定の乾燥条件において乾燥させる。乾燥により、活物質層12においては、その内部に含まれる溶媒等が蒸散される。
【0021】
プレス工程S14では、乾燥工程S12により乾燥された活物質層12を、ロールプレスによりプレスする。プレスにより、活物質層12が高密度で固化される。なお、プレス時の圧力により、プレスの前後で、活物質層12の寸法形状が若干変わり(たとえば、最大1mm程度)、たとえば、活物質層12は幅方向に延びる。
【0022】
被覆工程S16では、プレス工程S14によりプレスされた活物質層12を、セラミック層14で全体的に覆う。セラミック層14は、上述した活物質層12同様、金属箔シート10の表面に、金属箔シート10の搬送方向Dに沿って、均一幅、かつ、均一厚さで塗工される。セラミック層14の幅は、活物質層12の幅よりも広く、セラミック層14は、活物質層12の幅方向の両端部を覆う。セラミック層14の材料としては、たとえばアルミナ、シリカや酸化チタン、およびこれらを混合したもの等を採用することができる。
【0023】
なお、上述した活物質層12およびセラミック層14は、金属箔シート10の表面だけでなく、図4(b)に示すように、金属箔シート10の裏面の対応領域に同じように設けられる。
【0024】
打抜工程S18では、金属箔シート10のうち、活物質層12が塗工され、かつ、セラミック層14が形成された領域を、図5に示す電極20の形状に打ち抜く。図5に示すように、電極20は、矩形状の本体部22の一辺から、矩形状のタブ部24が突出した形状を有している。本体部22には、その全面に、上述した活物質層12が形成されている。一方、タブ部24は、本体部22に近接する一部領域にのみ活物質層12が形成されており、その他の領域には活物質層12は形成されない。電極20は、タブ部24のうちの活物質層12およびセラミック層14が形成されていない領域において、二次電池の電極端子と電気的に接続される。なお、打ち抜きには、公知の打抜機(切断装置)を用いることができ、金属箔シート10の搬送方向Dに沿う方向の打ち抜きと金属箔シート10の幅方向に沿う方向の打ち抜きの2段階でおこなわれる。なお、電極20は、その後の工程において複数積層されて、二次電池の電極組立体を構成する。
【0025】
ここで、電極20の寸法は、負極に用いる場合には、たとえば幅Wが136mmであり、高さHが108.5mmである。また、タブ部24のうちの活物質層12は形成された領域の高さは4mmである。このような電極20の寸法は、電極特性に大きく影響するため、高い精度が要求される。その寸法精度の要求は、一例として、誤差±0.5mm以内である。
【0026】
ただし、上述した製造方法のように、金属箔シート10の表面に形成された活物質層12をセラミック層14で覆うと、位置検出用のカメラで活物質層12の位置(たとえば、活物質層12の縁の位置)を検出できなくなる。そのため、打抜工程S18において、打ち抜かれるべき電極20の領域の位置を、精度良く求めることができない。
【0027】
そこで、本実施形態においては、上述した塗工工程S10と被覆工程S16との間、より詳細には、プレス工程S14と被覆工程S16との間に、マーキング工程S20を含む。
【0028】
マーキング工程S20では、金属箔シート10の表面に、活物質層12の塗工位置を基準とするマークMを形成する。マークMは、直線状であり、図3に示すように、活物質層12と外周縁をなす一辺と平行に延在し(すなわち、搬送方向Dに沿って延在し)、かつ、活物質層12の外周縁の一辺から所定距離(たとえば、2〜3mm)だけ離間するように形成される。マークMの形成には、ペン、インクジェット、ディスペンサ、ローラマーカ、テープ等を用いることができる。マークMの形状は、直線状に限らず、マークMに直交した短直線状や十字状や三角や四角のドット状、およびこれらを組み合わせた形状等であってもよい。
【0029】
マークMは、図4に示すように、被覆工程S16において、セラミック層14に覆われない位置に設けられ、被覆工程S16の後でもセラミック層14から露出しているため、位置検出用のカメラで検出することができる。つまり、マークMを、被覆工程S16の後におこなわれる打抜工程S18の際の位置検出に利用することができる。
【0030】
したがって、上述した蓄電装置の製造方法においては、金属箔シート10を、高い位置精度で電極20の形状に打ち抜くことができ、高い電極特性を実現することができる。
【0031】
また、上述した蓄電装置の製造方法においては、特に、プレス工程S14の後に、マーキング工程S20をおこなっている。そのため、乾燥工程S12やプレス工程S14において活物質層12の寸法形状が変わった場合、マーキング工程では、その寸法形状が変わった活物質層12の位置を基準にマークMを形成することができる。したがって、寸法形状が変わる前の活物質層12の位置を基準にする場合に比べて、より高い位置精度で電極20の形状に打ち抜くことできる。
【0032】
なお、以上の説明においては、金属箔シート10の表面に、活物質層12を連続的に塗工する連続塗工について説明したが、活物質層を間欠的に塗工する間欠塗工においても、同様の効果を奏する。
【0033】
間欠塗工では、塗工工程S10において、図6に示すように、金属箔シート10の表面に、矩形状の活物質層12Aが形成される。活物質層12Aは、金属箔シート10の搬送方向Dに沿って所定間隔で同一形状に形成される。また、マーキング工程S20においては、図7に示すように、隣り合う活物質層12Aの間の領域に、対応する活物質層12Aから所定距離だけ離間するように、金属箔シート10の幅方向に延びるマークMが形成される。さらに、被覆工程S16工程においては、図8に示すように、矩形状のセラミック層14Aで、各活物質層12Aを全体的に覆う。なお、マークMは、被覆工程S16において、セラミック層14Aに覆われない位置に設けられ、被覆工程S16の後でもセラミック層14Aから露出する。
【0034】
したがって、連続塗工だけでなく、間欠塗工であっても、セラミック層14Aから露出するマークMを、被覆工程S16の後におこなわれる打抜工程S18の際の位置検出に利用することができる。それにより、金属箔シート10を、高い位置精度で電極20の形状に打ち抜くことができ、高い電極特性を実現することができる。
【0035】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0036】
たとえば、蓄電装置は、リチウムイオン二次電池等の二次電池に限らず、その他の蓄電装置(たとえば電気二重層キャパシタやリチウムイオンキャパシタ等)であってもよい。
【符号の説明】
【0037】
10…金属箔シート、12、12A…活物質層、14、14A…セラミック層、20…電極、M…マーク。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8