【実施例1】
【0018】
図1は、本実施例に係るサーマルプリンタ100の構成を示す図である。
図2は、本実施例に係るサーマルプリンタ100の断面図である。
図3は、本実施例に係るサーマルプリンタ100のメディアホルダ113の断面図である。
図1及び
図2に示すサーマルプリンタ100は、インキを転写して紙等の媒体に文字や図形等を印字するための印刷版を製造する製造装置である。サーマルプリンタ100では、熱可塑性を有する多孔質材料Mから印刷版が製造される。印刷版の製造に用いられる熱可塑性を有する多孔質材料Mは、必ずしもこれらに限られないが、例えば、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)、ポリウレタンなどからなる無数の細孔を有する材料である。
まず、
図1から
図3を参照しながら、本実施例に係るサーマルプリンタ100の構成について説明する。
【0019】
サーマルプリンタ100は、
図1に示すように、中央制御回路101、センサー102、サーマルヘッド103、電源回路104、モータードライバ105、ステッピングモーター106、表示デバイス107、表示画面制御回路108、メモリ制御回路109、ユーザインターフェース(UI)制御回路110、USB制御回路111、無線通信モジュール112を備えている。
【0020】
中央制御回路101は、サーマルプリンタ100の各部(サーマルヘッド103、メモリ制御回路109など)を制御する制御部である。中央制御回路101は、メモリ制御回路109に記憶されている制御プログラムを実行するCPUなどから構成されている。
【0021】
センサー102は、所定の方向に向けて光を出射する発光素子と、物体で反射した反射光を受光する受光素子と、を備えた反射型光学センサーである。センサー102は、
図2に示すように、多孔質材料Mを保持するメディアホルダ113に設けられた切欠きを光学的に検出するように構成されている。中央制御回路101は、センサー102からの信号に基づいて、多孔質材料Mのサイズや多孔質材料Mが製版処理の開始位置に移動したことなどを認識する。なお、メディアホルダ113は、例えば、
図3に示すように、Wテープ113cで接着されたコートボール(コートボール113a、コートボール113b)の2層構造から構成されている。
図3の例では、多孔質材料Mは、一層目のコートボール113aの上面と二層目のコートボール113bの側面によって支持され、さらにPETフィルム113dで覆われることによって、メディアホルダ113に保持される。
【0022】
サーマルヘッド103は、各々が独立して制御されて通電によって発熱する複数の発熱素子と、複数の発熱素子への通電を制御するドライバICとを備えている。サーマルヘッド103では、中央制御回路101から出力される印字データと印字指示信号に従って、ドライバICが電源回路104から供給された電力によって複数の発熱素子を選択的に発熱させる。複数の発熱素子は、サーマルヘッド103内において、ステッピングモーター106による多孔質材料Mの搬送方向と直交する方向(
図3では、紙面に直交する方向)に一次元に並べられ、メディアホルダ113によって保持された多孔質材料Mに同時に接触できるように配置されている。なお、サーマルヘッド103は、例えば、200dpiの解像度(1dot当たり0.125mm)を有し、48mmの有効印字幅を有している。
電源回路104は、サーマルヘッド103やモータードライバ105などサーマルプリンタ100の各部に電力を供給する回路である。
【0023】
モータードライバ105は、ステッピングモーター106を駆動するためのドライバである。モータードライバ105は、中央制御回路101から出力された駆動信号(励磁信号)に従って、電源回路104から供給された電力をステッピングモーター106に供給し、ステッピングモーター106を駆動する。
【0024】
ステッピングモーター106は、中央制御回路101から出力される駆動信号の1パルス当たり一定量だけ回転するモータであり、メディアホルダ113(多孔質材料M)を搬送する搬送機構にギアを介して接続されている。なお、ステッピングモーター106は、例えば、1−2相励磁方式で駆動し、一ステップ当たりメディアホルダ113を0.0078mm搬送する。多孔質材料Mを製版する際の一ラインを0.125mmとすると、ステッピングモーター106は、16ステップで一ライン分だけメディアホルダ113(多孔質材料M)を搬送する。サーマルプリンタ100では、中央制御回路101は、モータードライバ105へ出力した駆動信号のパルス数によってメディアホルダ113の搬送量を正確に把握することができる。
【0025】
表示デバイス107は、表示画面制御回路108の制御の下で画面を表示して利用者に種々の情報を提供するデバイスであり、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)である。表示画面制御回路108は、表示デバイス107へのデータ転送や表示デバイス107のバックライトの点灯制御などを行う。
【0026】
メモリ制御回路109は、ROMやRAMなどのメモリデバイスを含み、それらのメモリデバイスに対するデータの読み書きを制御する回路である。メモリ制御回路109のROMには、制御プログラムが記憶されている。
【0027】
UI制御回路110は、図示しないキーボード、マウス、リモコン、タッチパネルなどの入力デバイスへの入力に応じて、表示デバイス107の画面表示を変更する制御を行う。この制御は、入力デバイスへの入力に基づく信号を検出して、検出した情報に基づいて表示画面制御回路108を通じて表示デバイス107を制御することによって行われる。
【0028】
USB制御回路111は、外部装置であるパーソナルコンピュータ(PC)200との間でUSBケーブルを通じてデータの授受を行う回路である。USB制御回路111は、例えば、PC200から、印刷版によって印字すべき文字や図形等の印字パターンを特定するための印字データを受信する。この場合、USB制御回路111は、印字データを取得するデータ取得部である。
【0029】
無線通信モジュール112は、外部装置との間で無線を通じてデータの授受を行う回路であり、例えば、Bluetooth(登録商標)モジュールや無線LAN(WLAN)モジュールである。無線通信モジュール112は、例えば、PC200から印字データを受信する。この場合、無線通信モジュール112は、印字データを取得するデータ取得部である。
【0030】
以上のように構成されたサーマルプリンタ100は、制御プログラムを実行して、印字データに基づいてインキが滲みやすい領域を特定する制御データを生成する。そして、印字データとともに制御データを製版処理における発熱素子の発熱制御に用いることで、インキの滲みを抑えて良好な印字を行うことができる印刷版を製造することができる。
【0031】
図4は、サーマルプリンタ100で行われる製版処理のフローチャートである。
図5は、PC200から取得した印字データの一例を示した図である。
図6は、サーマルプリンタ100で生成される制御データの一例を示した図である。
図4から
図6を参照しながら、サーマルプリンタ100で行われる製版処理について説明する。
【0032】
図4に示す製版処理は、中央制御回路101がメモリ制御回路109のROMに記憶されている制御プログラムをRAMにロードして実行することによって、開始される。
【0033】
サーマルプリンタ100は、まず、利用者が、印字パターンを特定するための印字データをPC200から取得する(ステップS1)。ここでは、USB制御回路111または無線通信モジュール112がPC200から印字データを取得して、取得した印字データを中央制御回路101がメモリ制御回路109のRAMに記憶させる。
【0034】
印字データは、
図5に例示されるように、製版される多孔質材料Mを格子状に区画した各領域に対応する画素データからなっている。なお、本実施例では、印字データを構成する画素データは1ビットのデータである。画素値が「0」の画素データ(
図5の白色の画素データ)は印字パターンを構成する画素データ(以降、印字画素データと記す)を示し、画素値が「1」の画素データ(
図5の黒色の画素データ)は印字パターンを構成しない画素データ(以降、非印字画素データと記す)を示す。例えば、印字パターンが「あ」であれば、「あ」を構成する多孔質材料Mの領域に対応する画素データが印字画素データであり、多孔質材料Mのそれ以外の領域に対応する画素データが非印字画素データである。
【0035】
印字データを取得したサーマルプリンタ100は、多孔質材料Mを製版処理の開始位置まで搬送する(ステップS2)。ここでは、中央制御回路101がセンサー102からの信号に基づいて多孔質材料Mが開始位置に到達したことを検出するまでモータードライバ105へ駆動信号を出力し、モータードライバ105が中央制御回路101から出力された駆動信号に従ってステッピングモーター106を駆動する。なお、製版処理の開始位置とは、サーマルヘッド103で多孔質材料Mを押圧した際に、多孔質材料Mの格子状に区画した各領域の一ライン目が複数の発熱素子と接する位置をいう。
【0036】
多孔質材料Mが開始位置に到達すると、サーマルプリンタ100は、メモリ制御回路109から読み出した一ライン分の印字データに基づいてサーマルヘッド103に第1の時間通電する(ステップS3)。ここでは、中央制御回路101がメモリ制御回路109から一ライン分の印字データを読み出して、読み出した一ライン分の印字データを印字指示信号とともにサーマルヘッド103のドライバICへ出力する。印字指示信号を受信したサーマルヘッド103のドライバICは、受信した一ライン分の印字データに従って第1の時間通電処理を行い、複数の発熱素子に選択的に発熱させる。
【0037】
より具体的には、以下のような手順で処理が行われる。まず、一ライン分の印字データから印字画素データと非印字画素データを特定する。次に、サーマルヘッド103で多孔質材料Mを押圧したときに非印字画素データに対応する多孔質材料Mの領域に接することになる発熱素子(第1の発熱素子)を特定する。最後に、サーマルヘッド103の複数の発熱素子の中から特定された第1の発熱素子に第1の時間だけ通電し、特定された第1の発熱素子を選択的に発熱させる。これは、非印字画素データに対応する多孔質材料Mの領域は、インキが吸収されないように細孔を塞ぐべき領域であり、加熱対象となる領域であるからである。
【0038】
ステップS3において、サーマルプリンタ100は、サーマルヘッド103で多孔質材料Mを第1の時間通電する。第1の時間は、予め決定された所定時間であり、例えば、発熱している発熱素子に接触した多孔質材料Mの領域に形成されている細孔を完全に塞ぐのに十分な時間であればよい。ここで、サーマルヘッド103は、印刷版のもとになる多孔質材料Mの印刷面に常に当接し、多孔質材料Mの印刷面を一定の力で押圧している。これにより、多孔質材料Mのうち、発熱している発熱素子と接触する非印字画素データに対応する領域が溶融し、その領域に形成されていた細孔が塞がれる。一方、発熱していない発熱素子と接触する印字画素データに対応する多孔質材料Mの領域は溶融しないため、その領域に形成されている細孔は維持される。
【0039】
次に、サーマルプリンタ100は、インキが滲みやすい多孔質材料Mの領域を特定するための制御データを一ライン分生成する(ステップS4)。ここでは、中央制御回路101が、現在のラインの印字データとその前後のラインの印字データをRAMから読み出して、読み出した印字データに基づいて生成する。即ち、サーマルプリンタ100では、中央制御回路101は、データ生成部として機能する。
【0040】
制御データは、印字データと同様に、製版される多孔質材料Mを格子状に区画した各領域に対応する画素データからなっている。
図6には、一ライン分の制御データの一例が示されている。なお、本実施例では、制御データを構成する画素データは1ビットのデータである。画素値が「1」の画素データ(
図6の黒色の画素データ)はインキが滲みやすい領域に対応する画素データである。インキが滲みやすい領域は滲み防止のための補正処理である加熱処理が行われる領域であるので、以降では、当該領域に対応する画素データを補正対象画素データと記す。一方、画素値「0」の画素データ(
図6の白色または網掛けの画素)はそれ以外の領域に対応する画素データである。この領域は滲み防止のための補正処理が不要な領域であるので、以降では、当該領域に対応する画素データを補正対象外画素データと記す。
【0041】
印字データにおいて非印字画素データに対応する領域は、制御データにおいてデータ補正対象外画素データ(
図6の網掛けの画素)となる。これは、非印字画素データに対応する領域は加熱処理されてインキを吸収しない領域となっているため、インキが滲むことがないからである。一方、印字データにおいて印字画素データに対応する領域は、制御データにおいてデータ補正対象画素データ(
図6の黒色の画素データ)またはデータ補正対象外画素データ(
図6の白色の画素データ)となる。
図5及び
図6を参照しながら、Nライン目の制御データを生成する場合を例に、制御データの生成手順について詳細に説明する。
【0042】
まず、Nライン目の印字データから印字画素データに対応する領域を特定する。ここでは、
図5に示す領域(N、m−1)、領域(N、m)、領域(N、m+1)が特定される。なお、領域(I、j)とは、Iラインのj列の領域のことである。
【0043】
次に、特定した印字画素データに対応する領域毎に、RAMから読み出した印字データに基づいてその領域の周囲に非印字画素データに対応する領域が存在するか否かを判定する。なお、本実施例では、領域の周囲とは、上下左右に隣接する領域のことであり、例えば、
図5に示す領域(N、m)に対応する領域であれば、領域(N、m−1)、領域(N、m+1)、領域(N−1、m)、領域(N+1、m)のそれぞれに対応する領域が周囲の領域である。
【0044】
そして、その領域の周囲に非印字画素データに対応する領域が存在しないと判断される場合には、その領域をインキが滲みやすい領域として特定する。一方、存在すると判断される場合には、その領域をインキが滲みにくい領域として特定する。ここでは、領域(N、m)はインキが滲みやすい領域として特定され、領域(N、m−1)及び領域(N、m+1)はインキが滲みにくい領域として特定される。
【0045】
最後に、インキが滲みやすい領域として特定された領域の画素データを補正対象画素データとし、インキが滲みにくい領域として特定された領域の画素データと非印字画素データに対応する領域の画素データとを補正対象外画素データとする一ライン分の制御データを生成する。これにより、
図6に例示されるNライン目の制御データが生成される。
【0046】
なお、上記の制御データの生成処理(ステップS4)は、本実施例では、印字データの論理演算によって容易に行うことできる。具体的には、注目する領域に対応する画素データ(印字データ)とその周囲の領域に対応するすべての画素データ(印字データ)との論理和(OR)を取り、その結果に論理否定(NOT)を行うことで制御データを生成することができる。
【0047】
一ライン分の制御データが生成されると、サーマルプリンタ100は、生成された一ライン分の制御データに基づいてサーマルヘッド103に第2の時間通電する(ステップS5)。ここでは、中央制御回路101が一ライン分の制御データを印字指示信号とともにサーマルヘッド103のドライバICへ出力する。印字指示信号を受信したサーマルヘッド103のドライバICは、受信した一ライン分の制御データに従って第2の時間通電処理を行い、複数の発熱素子を選択的に発熱させる。
【0048】
より具体的には、以下のような手順で処理が行われる。まず、一ライン分の制御データから補正対象画素データと補正対象外画素データを特定する。次に、サーマルヘッド103で多孔質材料Mを押圧したときに補正対象画素データに対応する多孔質材料Mの領域に接することになる発熱素子(第2の発熱素子)を特定する。最後に、サーマルヘッド103の複数の発熱素子の中から特定された第2の発熱素子に第2の時間だけ通電し、第2の発熱素子を選択的に発熱させる。これは、補正対象画素データに対応する多孔質材料Mの領域は、インキが滲みやすいと特定された領域であり、細孔の一部を塞いでインキの吸収を抑制すべき領域であるからである。
【0049】
ステップS5において、サーマルプリンタ100は、サーマルヘッド103で多孔質材料Mを第2の時間通電する。第2の時間は、予め決定された所定時間であって第1の時間よりも短い時間であり、例えば、第1の時間の1割から5割程度の時間である。ここで、サーマルヘッド103は、印刷版のもとになる多孔質材料Mの印刷面に常に当接し、多孔質材料Mの印刷面を一定の力で押圧している。これにより、多孔質材料Mのうち、発熱している発熱素子と接触する補正対象画素データに対応する領域が溶融し、その領域に形成されていた細孔の一部が塞がれる。一方、発熱していない発熱素子と接触する補正対象外画素データに対応する多孔質材料Mの領域は、そのままの状態が維持される。
【0050】
最後に、サーマルプリンタ100は、すべてのラインを処理済みか否かを判定する(ステップS6)。すべてのラインを処理済みでないと判断すると、サーマルプリンタ100は、一ライン分だけ多孔質材料Mを搬送して(ステップS7)、すべてのラインを処理済であると判断するまでステップS3からステップS6の処理を繰り返す。すべてのラインを処理済みであると判断すると、
図4に示す製版処理を終了する。
【0051】
サーマルプリンタ100では、
図4に示す製版処理が行われることで、印字パターンを構成しない領域(非印字画素データの領域)に形成されている細孔が完全に塞がれるとともに、印字パターンを構成する領域(印字画素データの領域)のうちのインキが滲みやすいと判断される領域に形成されている細孔の一部が塞がれる。これにより、インキが滲みやすい領域に吸収されるインキの量を制限することを減らすことができるため、サーマルプリンタ100によれば、インキの滲みを抑えて良好な印字を行う印刷版を製造することができる。
【0052】
また、サーマルプリンタ100では、インキが滲みやすい領域を特定するに当たり印字データが用いられる。これにより、真にインキが滲みやすい領域のみが加熱処理されるため、インキが滲みにくい領域が誤って加熱処理されることを防止することができる。このため、サーマルプリンタ100によれば、インキの滲みを抑えて良好な印字を行う印刷版を製造することができる。
以下、サーマルプリンタ100の変形例について説明する。
【0053】
例えば、全面を塗りつぶす印字を行うための印刷版の製造を意図した
図7に例示される印字データを受信した場合、サーマルプリンタ100は上記の手順で制御データを生成すると、
図8に例示されるようにすべてが補正対象画素データで構成された制御データを生成する。このような制御データに従って加熱処理を行ってしまうと、多孔質材料Mの全領域において細孔の一部が塞がれることになる。このため、印刷版全体として過剰にインキの吸収が抑制されてしまう可能性がある。
【0054】
このため、サーマルプリンタ100は、
図4に示すステップS4の制御データ生成処理において、生成された制御データの妥当性を検証する処理を行い、制御データが妥当でない場合には制御データを調整する処理を行ってもよい。制御データの妥当性は、例えば、制御データ内で補正対象画素データが隣接しているか否かによって判断する。そして、隣接している補正対象画素データが存在する場合には、一方の補正対象画素データを補正対象外画素データに変更する処理を行う。これにより、
図7に例示される印字データを受信した場合であっても、
図8に例示される制御データを調整して、
図9に例示される制御データを得ることができる。
【0055】
隣接する補正対象画素データのどちらを調整対象とするかについては、例えば、奇数ライン(行)の制御データの場合には、奇数列の補正対象画素データを調整対象とし、偶数ライン(行)の制御データの場合には、偶数列の補正対象画素データを調整対象とするなど、予めルールを決めて対処してもよい。
【0056】
制御データの妥当性を検証する処理が行われるサーマルプリンタ100によれば、インキの吸収が過剰に抑制されてしまう事態を防止することができる。このため、印字パターンによらず、インキの滲みを抑えて良好な印字を行う印刷版を製造することができる。
【0057】
また、サーマルプリンタ100で行われる製版処理は、
図4に示すものに限られない。例えば、ステップS1の印字データ取得処理後に全ライン分の制御データを生成してもよく、その場合、ステップS4の処理を省略してもよい。
【0058】
また、サーマルプリンタ100は、ステップS4の制御データ生成処理において、上述した方法とは別の方法によって滲みやすい領域を特定してもよい。例えば、上下左右に隣接する領域に加えて斜め方向に隣接する領域を参照して滲みやすい領域を特定してもよい。また、非印字画素データに対応する領域が存在するか否かによって判定する代わりに、非印字画素データに対応する領域が一定の割合以上存在するか否かによって判定してもよい。
【0059】
また、サーマルプリンタ100は、各領域に与えるべき熱量が維持される限り、ステップS3とステップS5の通電処理において通電時間を異ならせる代わりに通電回数を異ならせても良い。
【実施例3】
【0069】
図11は、本実施例に係るサーマルプリンタで行われる製版処理のフローチャートである。
図12は、本実施例に係るサーマルプリンタが外部装置から取得する印字データの一例を示した図である。
図13は、本実施例に係るサーマルプリンタで
図12に示す印字データに基づいて生成される制御データの一例を示した図である。以下、
図11から
図13を参照しながら、本実施例に係るサーマルプリンタで行われる製版処理について説明する。
【0070】
本実施例に係るサーマルプリンタの構成は、実施例1に係るサーマルプリンタ100と同様である。このため、同一の構成要素は同一の符号で参照する。また、本実施例に係るサーマルプリンタで扱われる制御データは、実施例2に係るサーマルプリンタで扱われる制御データと同様に、マルチビットの画素データから構成されている。以降では、制御データが2ビットの画素データからなる場合を例に説明する。
【0071】
図11に示す製版処理が開始されると、ステップS21で印字データが取得され、ステップS22で多孔質材料Mが開始位置まで搬送される。さらに、ステップS23で一ライン分の印字データに基づいてサーマルヘッド103が第1の時間通電される。これらの処理は、
図4のステップS1からステップS3と同様である。
【0072】
次に、サーマルプリンタは、インキが滲みやすい多孔質材料Mの領域とその領域のインキの滲みやすさを特定するための制御データを一ライン分生成する(ステップS24)。ここでは、中央制御回路101が、現在のラインの印字データとその前後の2ラインずつの計5ラインの印字データをRAMから読み出して、読み出した印字データに基づいて生成する。
【0073】
本実施例では、制御データを構成する画素データは2ビットのデータである。画素値が「0」の画素データは、インキがにじみにくい領域に対応する画素データ(補正対象外画素データ)である。一方、画素値が「0」以外の画素データはインキが滲みやすい領域に対応する画素データ(補正対象画素データ)であり、画素値はインキの滲みやすさを示す重み値である。例えば、画素値「3」の画素データに対応する領域は、画素値「1」の画素データに対応する領域に比べて、3倍インキが滲みやすいことを示している。
図12及び
図13を参照しながら、制御データの生成手順について詳細に説明する。
【0074】
例えば、Nライン目の制御データを生成する場合であれば、まず、Nライン目の印字データから印字画素データに対応する領域を特定する。ここでは、
図12に示す領域(N、m−2)、領域(N、m−1)、領域(N、m)、領域(N、m+1)、領域(N、m+2)が特定される。
【0075】
次に、特定した印字画素データに対応する領域毎に、RAMから読み出した印字データに基づいてその領域の周囲に非印字画素データに対応する領域が存在するか否かを判定する。
【0076】
本実施例では、まず、領域の周囲を、上下左右の方向にその領域から2画素以内にある領域と定義し(第1の定義)、次に、領域の周囲を、上下左右に隣接する領域と定義する(第2の定義)。
【0077】
例えば、
図12に示す領域(N、m)を例にすると、第1の定義では、領域(N、m−2)、領域(N、m−1)、領域(N、m+1)、領域(N、m+2)、領域(N−2、m)、領域(N−1、m)、領域(N+1、m)、領域(N+2、m)のそれぞれに対応する領域がその領域の周囲である。また、第2の定義では、領域(N、m−1)、領域(N、m+1)、領域(N−1、m)、領域(N+1、m)のそれぞれに対応する領域がその領域の周囲である。
【0078】
そして、それぞれの定義において、その領域の周囲に非印字画素データに対応する領域が存在しないと判断される場合には、その領域をインキが滲みやすい領域として特定する。さらに、その領域とその領域から最も離れているその領域の周囲までの距離に基づいてその領域のインキの滲みやすさを特定する。例えば、第1の定義であれば、最大2画素分の距離だけ離れているため、特定された領域をインキの滲みやすさが「2」(重み値「2」)であるインキが滲みやすい領域として特定する。また、第2の定義であれば、最大1画素分の距離だけ離れているため、特定された領域をインキの滲みやすさが「1」(重み値「1」)であるインキが滲みやすい領域として特定する。一方、いずれの定義においてもその領域の周囲に非印字画素データに対応する領域が存在すると判断される場合には、その領域をインキが滲みにくい領域として特定する。
【0079】
その結果、
図13に示すように、Nライン目の印字画素データに対応する領域のうちの、領域(N、m)がインキの滲みやすさが「2」であるインキが滲みやすい領域として特定され、領域(N、m−1)と領域(N、m+1)がインキの滲みやすさが「1」であるインキが滲みやすい領域として特定される。また、領域(N、m−2)と領域(N、m+2)はインキが滲みにくい領域として特定される。
【0080】
最後に、インキが滲みやすい領域として特定された領域の画素データをインキの滲みやすさを画素値とする補正対象画素データとし、インキが滲みにくい領域として特定された領域の画素データと印字画素データに対応する領域の画素データとを補正対象外画素データとする一ライン分の制御データを生成する。これにより、一ライン分の制御データが生成される。
【0081】
一ライン分の制御データが生成されると、サーマルプリンタは、生成された一ライン分の制御データに基づいて画素値(重み値)毎にサーマルヘッド103に重み値に応じた時間通電する(ステップS25)。
【0082】
より具体的には、以下のような手順で処理が行われる。まず、サーマルプリンタは、一ライン分の制御データから重み値毎の補正対象画素データと補正対象外画素データを特定する。次に、サーマルヘッド103で多孔質材料Mを押圧したときに重み値「2」の補正対象画素データに対応する多孔質材料Mの領域に接することになる発熱素子(第3の発熱素子)を特定する。そして、サーマルヘッド103の複数の発熱素子の中から特定された第3の発熱素子に重み値「2」に応じた時間だけ通電し、第3の発熱素子を選択的に発熱させる。さらに、サーマルヘッド103で多孔質材料Mを押圧したときに重み値「1」の補正対象画素データに対応する多孔質材料Mの領域に接することになる発熱素子(第4の発熱素子)を特定する。そして、サーマルヘッド103の複数の発熱素子の中から特定された第4の発熱素子に重み値「1」に応じた時間だけ通電し、第4の発熱素子を選択的に発熱させる。なお、画素値(重み値)に応じた時間の定義は、実施例2と同様である。
【0083】
これにより、インキが滲みやすい領域ほどより多くの細孔が塞がれてインキのにじみが抑制されることになる。
その後の処理(ステップS26、ステップS27)は、
図4のステップS6、ステップS7と同様である。
【0084】
本実施例に係るサーマルプリンタによっても、実施例1に係るサーマルプリンタ100と同様の効果を得ることが可能であり、また、実施例1に係るサーマルプリンタ100と同様に種々の変形を行うことができる。例えば、本実施例に係るサーマルプリンタは、各領域に与えるべき熱量が維持される限り、ステップS23とステップS25の通電処理において通電時間を異ならせる代わりに通電回数を異ならせても良い。
【0085】
また、本実施例に係るサーマルプリンタによれば、インキの滲みやすい領域に対してインキの滲みやすさに応じて異なる熱量を加えることができる。このため、より適切にインキの滲みを抑制して、印字パターンを構成する領域内での濃淡の差を十分に抑制する印刷版を製造することができる。
【0086】
上述した実施例は、発明の理解を容易にするために本発明の具体例を示したものであり、本発明はこの実施例に限定されるものではない。印刷版の製造方法、印刷版製造装置、データ生成方法、及びプログラムは、特許請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、さまざまな変形、変更が可能である。
【0087】
例えば、サーマルヘッド103で多孔質材料Mを押圧しながら、サーマルヘッド103に通電したときに重み値「1」と「2」の補正対象画素データに対応する多孔質材料Mの領域に接することになる発熱素子を特定し、特定された発熱素子だけを選択的に、重み値「1」に応じた時間だけ発熱させる。次いで、多孔質材料Mのうち、重み値「2」の補正対象画素データに対応する領域に接することになる発熱素子を特定し、特定された発熱素子だけを選択的に、重み値「1」に応じた時間と「2」に応じた時間との差分だけ発熱させるようにしてもよい。
【0088】
以下、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[付記1]
熱可塑性を有する多孔質材料から印刷版を製造する製造方法であって、
印字パターンを特定するための印字データであって前記多孔質材料を格子状に区画した各領域に対応する画素データからなる印字データを取得し、
前記印字データに基づいて、前記印字パターンを構成する画素データである印字画素データと前記印字パターンを構成しない画素データである非印字画素データとを特定し、
サーマルヘッドに設けられた複数の発熱素子のうち、前記非印字画素データに対応する領域に接することになる第1の発熱素子に第1の所定時間だけ通電して、該第1の発熱素子を選択的に発熱させ、
前記サーマルヘッドに設けられた前記複数の発熱素子のうち、インキが滲みやすい前記多孔質材料の領域を特定するための制御データであって、前記多孔質材料を格子状に区画した各領域に対応する画素データからなる前記制御データによって特定されるインキが滲みやすい領域に接することになる第2の発熱素子に前記第1の所定時間よりも短い第2の所定時間だけ通電して、該第2の発熱素子を選択的に発熱させる
ことを特徴とする製造方法。
【0089】
[付記2]
付記1に記載の製造方法において、
前記サーマルヘッドに設けられた前記複数の発熱素子のうち、インキが滲みやすい前記多孔質材料の領域と当該領域のインキの滲みやすさとを特定するための前記制御データであって、前記多孔質材料を格子状に区画した各領域に対応する画素データからなる前記制御データによって特定されるインキが滲みやすい領域であってインキの滲みやすさが第1の滲みやすさとされた領域に接することになる第3の発熱素子に、前記第1の滲みやすさに応じた時間又は回数だけ通電して、該第3の発熱素子を選択的に発熱させ、前記インキが滲みやすい領域であってインキの滲みやすさが第2の滲みやすさとされた領域に接することになる第4の発熱素子に、前記第2の滲みやすさに応じた時間又は回数だけ通電して、該第4の発熱素子を選択的に発熱させる
ことを特徴とする製造方法。
【0090】
[付記3]
付記1に記載の製造方法において、
前記サーマルヘッドに設けられた前記複数の発熱素子のうち、インキが滲みやすい前記多孔質材料の領域と当該領域のインキの滲みやすさとを特定するための前記制御データであって、前記多孔質材料を格子状に区画した各領域に対応する画素データからなる前記制御データによって特定されるインキが滲みやすい領域であってインキの滲みやすさが第1の滲みやすさとされた領域に接することになる第3の発熱素子と前記インキが滲みやすい領域であってインキの滲みやすさが第2の滲みやすさとされた領域に接することになる第4の発熱素子とに、前記第1の滲みやすさに応じた時間又は回数だけ通電して、該第3の発熱素子及び該第4の発熱素子を選択的に発熱させ、さらに、前記第4の発熱素子に、前記第2の滲みやすさと前記第3の滲みやすさとの差分に応じた時間又は回数だけ通電して、該第4の発熱素子を選択的に発熱させる
ことを特徴とする製造方法。
【0091】
[付記4]
付記1乃至付記3のいずれか1項に記載の製造方法において、
前記制御データは、
前記印字画素データに対応する領域毎に前記印字データに基づいて当該領域の周囲に前記非印字画素データに対応する領域が存在するか否かを判定して、存在しないと判定した場合に当該領域をインキが滲みやすい領域として特定する、ことによって生成されるものである
ことを特徴とする製造方法。
【0092】
[付記5]
付記2または付記3に記載の製造方法において、
前記制御データは、
前記印字画素データに対応する領域毎に前記印字データに基づいて当該領域の周囲に前記非印字画素データに対応する領域が存在するか否かを判定して、存在しないと判定した場合に、当該領域をインキが滲みやすい領域として特定して、当該領域と当該領域から最も離れている当該領域の周囲までの距離に基づいて当該領域のインキの滲みやすさを特定する、ことによって生成されるものである
ことを特徴とする製造方法。
【0093】
[付記6]
熱可塑性を有する多孔質材料から印刷版を製造する製造装置であって、
印字パターンを特定するための印字データであって前記多孔質材料を格子状に区画した各領域に対応する画素データからなる印字データを取得するデータ取得部と、
複数の発熱素子を有するサーマルヘッドと、
前記サーマルヘッドを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記複数の発熱素子のうち、前記データ取得部で取得した前記印字データに基づいて特定される前記印字パターンを構成しない画素データである非印字画素データに対応する前記多孔質材料の領域に接することになる第1の発熱素子に第1の所定時間だけ通電して、該第1の発熱素子を選択的に発熱させて、
前記複数の発熱素子のうち、インキが滲みやすい前記多孔質材料の領域を特定するための制御データであって前記多孔質材料を格子状に区画した各領域に対応する画素データからなる前記制御データによって特定されるインキが滲みやすい前記多孔質材料の領域に接することになる第2の発熱素子に前記第1の所定時間よりも短い第2の所定時間だけ通電して、該第2の発熱素子を選択的に発熱させる、ように構成される
ことを特徴とする製造装置。
【0094】
[付記7]
熱可塑性を有する多孔質材料から印刷版を製造するためのデータを生成する方法であって、
印字パターンを特定するための印字データであって前記多孔質材料を格子状に区画した各領域に対応する画素データからなる印字データを取得し、
前記印字データのうちの前記印字パターンを構成する画素データである印字画素データに対応する領域毎に前記印字データに基づいて当該領域の周囲に前記印字データのうちの前記印字パターンを構成しない画素データである非印字画素データに対応する領域が存在するか否かを判定して、存在しないと判定した場合に当該領域をインキが滲みやすい領域として特定することによって、インキが滲みやすい前記多孔質材料の領域を特定するための制御データであって前記多孔質材料を格子状に区画した各領域に対応する画素データからなる制御データを生成する
ことを特徴とする方法。
【0095】
[付記8]
熱可塑性を有する多孔質材料から印刷版を製造するためのデータを生成するためのプログラムであって、
印字パターンを特定するための印字データであって前記多孔質材料を格子状に区画した各領域に対応する画素データからなる印字データを取得し、
前記印字データのうちの前記印字パターンを構成する画素データである印字画素データに対応する領域毎に前記印字データに基づいて当該領域の周囲に前記印字データのうちの前記印字パターンを構成しない画素データである非印字画素データに対応する領域が存在するか否かを判定して、存在しないと判定した場合に当該領域をインキが滲みやすい領域として特定することによって、インキが滲みやすい前記多孔質材料の領域を特定するための制御データであって前記多孔質材料を格子状に区画した各領域に対応する画素データからなる制御データを生成する
処理をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。