特許第6036635号(P6036635)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6036635
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】吸気装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 35/10 20060101AFI20161121BHJP
   F02D 35/00 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   F02M35/10 311C
   F02M35/10 301D
   F02M35/10 301G
   F02M35/10 101E
   F02D35/00 366L
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-211724(P2013-211724)
(22)【出願日】2013年10月9日
(65)【公開番号】特開2015-75027(P2015-75027A)
(43)【公開日】2015年4月20日
【審査請求日】2015年12月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100080045
【弁理士】
【氏名又は名称】石黒 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100124752
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷 真司
(72)【発明者】
【氏名】林 俊男
(72)【発明者】
【氏名】西尾 佳高
【審査官】 津田 健嗣
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−37821(JP,A)
【文献】 特開2010−138845(JP,A)
【文献】 特開2007−270619(JP,A)
【文献】 特開2005−180223(JP,A)
【文献】 特開2003−333867(JP,A)
【文献】 特開2004−239211(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 35/10
F02D 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関に吸入される吸気を浄化するエアクリーナ(2)と、
このエアクリーナ(2)の下流に設けられて吸気量を測定する吸気量測定装置(3)と、
前記エアクリーナ(2)からの吸気を前記吸気量測定装置(3)へ導くダクト(4)と、
前記ダクト(4)を囲う外管(5)と、
前記外管(5)内で前記ダクト(4)の外周に配され、吸気下流側からの音響エネルギを受けて前記外管(5)の軸方向に温度勾配を形成するスタック(6)と、
前記スタック(6)の低温側となる部分の内側で前記ダクト内に配され、前記吸気量測定装置(3)の上流で吸気を整流する金属製の整流格子(7)とを備える特徴とする吸気装置。
【請求項2】
請求項1に記載の吸気装置において、
前記整流格子(7)を形成する金属製の薄板(30、31)が、前記ダクト(4)の径方向外側に延長されており、前記スタック(6)に接合されていることを特徴とする吸気装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の吸気装置において、
前記外管(5)内には、前記スタック(6)の高温側の端部が曝される空間(26)が形成されており、前記空間(26)を形成する前記外管(5)の管壁の少なくとも一部が金属製の放熱板(27)となっていることを特徴とする吸気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に吸入される吸気を浄化するエアクリーナと、エアクリーナから排出される吸気量を測定する吸気量測定装置とを備える吸気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、吸気の温度を低下させるために、熱音響効果を用いる技術が開示されている(特許文献1参照)。特許文献1では、音響エネルギが伝搬すると温度勾配を生じるスタックを吸気管内部に配置し、スタックの低温側を用いて吸気を冷却している。
【0003】
しかし、この技術では、スタックにより吸気管での吸気抵抗が著しく増加し、十分な吸気量を得ることが困難となる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−270619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、吸気装置において、吸気抵抗の増大を最小限に抑えつつ吸気を冷却することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の吸気装置は、エアクリーナ、吸気量測定装置、ダクト、外管、スタック、及び整流格子を備える。
エアクリーナは、内燃機関に吸入される吸気を浄化するものである。
吸気量測定装置は、エアクリーナの下流に設けられて吸気量を測定するものである。
ダクトは、エアクリーナからの吸気を吸気量測定装置へ導くものである。
【0007】
外管は、ダクトを囲う管である。
スタックは、外管内でダクトの外周に配され、吸気下流側からの音響エネルギを受けて外管の軸方向に温度勾配を形成するものである。
整流格子は、スタックの低温側となる部分の内側でダクト内に配され、吸気量測定装置の上流で吸気を整流するものであり、金属で形成されている。
【0008】
これによれば、整流格子がスタックによって冷却され、整流格子を通過する吸気が冷却される。整流格子は、従来より吸気量測定装置へ導かれる吸気を整流する目的で設けられる部材であって、整流格子を設けることによる吸気抵抗の増大度合いは小さい。
従って、吸気抵抗の増大を最小限に抑えつつ吸気を冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】吸気装置の模式的断面図である(実施例)。
図2図1のII−II断面図である(実施例)。
図3】吸気装置の模式的断面図である(変形例)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を実施するための形態を以下の実施例により詳細に説明する。
【実施例】
【0011】
〔実施例の構成〕
実施例の吸気装置1の構成を、図1及び図2を用いて説明する。
図1に示すように、吸気装置1は、エアクリーナ2、吸気量測定装置(AFM3)、ダクト4、外管5、スタック6、及び整流格子7を備える。
【0012】
エアクリーナ2は、内燃機関(図示せず)に吸入される吸気を浄化するものであって、吸気をろ過するエレメント10と、このエレメント10を内蔵するクリーナケース11とを有している。
クリーナケース11は、樹脂により略直方体に形成されており、クリーナケース11の壁面にはクリーナケース11内への吸気の入口となる吸気入口11aと、吸気の出口となる吸気出口11bが開口している。
【0013】
エレメント10は、例えば合成繊維の不織布や濾紙などの濾材によって構成され、クリーナケース11内の吸気入口11aと吸気出口11bとの間に配置されている。これにより、吸気入口11aから入った吸気はエレメント10を通過して吸気出口11bへ向かう。吸気入口11aにはエアクリーナ2上流側の吸気通路13を形成する吸気配管14が、吸気出口11bにはエアクリーナ2下流側の吸気通路13を形成する吸気配管15が形成されている。
【0014】
AFM3は、クリーナケース11から流出する吸気の一部を取り込むバイパス流路(図示せず)を形成するハウジング17と、バイパス流路内の吸気流量を検出する流量センサ(図示せず)とを有する周知の構造を有する。AFM3は、吸気配管15に配されている。
【0015】
ダクト4は、エアクリーナ2からの吸気をAFM3へ導くものであり、クリーナケース11の吸気出口11bに接続されて、吸気配管15の一部をなす。
ダクト4は、例えば樹脂で形成されており、上流端にフランジ4aを有している。フランジ4aは、クリーナケース11の壁面の一部を形成する。
ダクト4の下流には、吸気配管の一部をなす配管20が配されており、この配管20にAFM3が装着されている。
【0016】
外管5は、ダクト4の外側を囲む管である。
ここで、ダクト4及び外管5において、吸気上流方向を軸方向一端側、吸気下流方向を軸方向他端側とする。
【0017】
外管5は軸方向一端5aが閉端となっている。具体的には、外管5の軸方向一端5aはフランジ4aによって封鎖されている。
【0018】
そして、外管5の軸方向他端5bは、ダクト4の軸方向他端4bよりも軸方向他端側(吸気下流側)に位置しており、外管5の軸方向他端5bは、配管20に接続している。すなわち、外管5と配管20とは、段21を介して外径が下流側で小さくなる異径管を形成している。そして、この異径管の段21よりも上流にダクト4の軸方向他端4bが位置する。
これにより、外管5は、ダクト4の軸方向他端4bよりも下流側で、吸気通路13と連通する。この連通する開口を連通口23と呼ぶ。
【0019】
スタック6は、軸方向に延びる微細な平行通路24を複数有し、一方の端から音波が入ると、音響エネルギが熱エネルギに変換されて、温度勾配を生じるものである。すなわち、音波の導入側となる一方の端が低温となり、他方の端が高温となるという温度勾配が生じる。
スタック6は、アルミ合金等の金属の薄板25によって形成されている。本実施例では、多重管として形成されており、各管の間が平行通路24となっている。
【0020】
スタック6は、外管5とダクト4との間の円筒空間に配されている。
そして、吸気下流側からの脈動波が連通口23から外管5内に導入されて軸方向一端6bから軸方向他端6aへ伝播する。このとき、スタック6で脈動波の音響エネルギが熱エネルギに変換され、スタック6には軸方向一端6aが高温となり軸方向他端6bが低温となるという温度勾配が生じる。
なお、脈動波は、内燃機関の吸気ポートを開閉する吸気バルブ(図示せず)の開閉により発生する。
【0021】
外管5内には、スタック6の軸方向一端6aとクリーナケース11の壁面とで封鎖される空間26が形成されている。すなわち、スタック6の高温側の端部である軸方向一端6aは、この空間26に曝されることになる。
空間26を形成する外管5の管壁の少なくとも一部は、熱伝導性に優れたアルミ合金等の金属によって形成された放熱板27となっている。
本実施例では、空間26の外周を囲うように放熱板27が環状に形成されている。
【0022】
整流格子7は、ダクト4内に配されてAFM3の上流で吸気を整流するものである。エアクリーナ2からの吸気は、クリーナケース11の形状やエレメント10のばらつきなどによって、流れが乱れている可能性がある。このため、AFM3の上流で吸気を整流することにより、AFM3の特性安定化を図っている。
【0023】
また、整流格子7は、ダクト4内に配されており、その軸方向位置は、スタック6の温度勾配の低温側となる軸方向位置となっている。すなわち、スタック6の軸方向において、所望の冷却能を得るのに必要な温度となっている部分の内側に整流格子7が配される。
本実施例では、整流格子7の軸方向他端がスタック6の軸方向他端6bと略同じ軸方向位置に位置している。
【0024】
整流格子5は、例えば、熱伝導性に優れたアルミ合金等の金属の薄板により形成されている。すなわち、流れ方向が薄板の面方向となるように配されて径方向の一方向に延びる複数の薄板30と、それと垂直な径方向の一方向に延びる複数の薄板31とで格子状に形成されている(図2参照)。
【0025】
薄板30、31は、それぞれ、ダクト4の外周に延設されており、ダクト4の外周に突出した部分が、スタック6を形成する薄板25に接合されている。
例えば、薄板30、31で格子を形成したものをインサート部品として、薄板30、31の両端部がダクト4の壁面から外側に突出するように、樹脂製のダクト4が成形されている。そして、薄板30、31と薄板25とは例えば溶接などによって接合されている。
【0026】
〔実施例の作用効果〕
本実施例の吸気装置1は、ダクト4の外側を囲う外管5と、外管5内でダクト4の外周に配され、吸気下流側からの音響エネルギを受けて軸方向に温度勾配を形成するスタック6を備える。また、スタック6の低温側となる部分の内側でダクト内に配され、AFM3の上流で吸気を整流する金属製の整流格子7を備える。
【0027】
これによれば、スタック6の低温部によって整流格子7が冷却されて、整流格子7によって吸気を冷却することができる。
本実施例では、整流格子7を形成する薄板30、31の一部が薄板25に接合しているため、より効率よく整流格子7を冷却することができる。
【0028】
なお、吸気通路13内に整流格子7を配することになるが、整流格子7は従来よりAFM3へ導かれる吸気を整流する目的で設けられる部材であって、整流格子7を設けることによる吸気抵抗の増大度合いは小さい。
従って、吸気抵抗の増大を最小限に抑えつつ吸気を冷却することができる。
【0029】
また、本実施例では、スタック6の高温側の端部(軸方向一端6a)がさらされる空間26が外管5内に形成されている。そして、空間26を囲う管壁の少なくとも一部が放熱板27となっている。
これによれば、スタック6の高温側の端部の熱を放熱板27によって外管5の外部に逃し、スタック6の高温側の温度によって吸気温度が上昇してしまうのを防止できる。そして、スタック6の低温側での冷却効果をより高めることができる。
【0030】
〔変形例〕
本実施例では、配管20と外管5が異径管を形成していたが、図3に示すように、外管5と配管20が同径であってもよい。この場合、外管5の軸方向一端の開口が連通口23となり、この連通口23から脈動波がスタック6に導入される。
【0031】
また、本実施例では、脈動波の発生源は、主に吸気バルブの開閉であった。しかし、その他にも、例えばクランク室に設けられる圧抜きバルブの開閉や、内燃機関周辺の機械の動作によって生じる脈動波も含めてスタック6に導入される態様であってもよい。
また、脈動発生装置を設けて、脈動発生装置により生成される脈動波をスタック6に導入してもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 吸気装置
2 エアクリーナ
3 AFM(吸気量測定装置)
4 ダクト
5 外管
6 スタック
7 整流格子
図1
図2
図3