【実施例】
【0047】
以下の実施例において、実施例1、実施例5、実施例12は、本発明における参考例である。
(実施例1)
(1)種粒子の作製
φ30mm単軸押出機を用いて、温度210〜230℃で、スチレン−メタクリル酸共重合体(PSジャパン社製、G9001:ガラス転移温度121℃)87質量部と、黒鉛マスターバッチ(黒鉛粉の平均粒子径:約15μm、黒鉛濃度:40質量%、基材樹脂(ポリスチレン):残部)13質量部とを溶融混練した。そして、溶融樹脂を穴径1.4mmのダイスからストランド状に押し出した。押出物を直ちに水槽へ導入して冷却した後、切断して約0.8mg/個の円柱形状のペレット(種粒子)を作製した。このようにして種粒子を得た。
【0048】
(2)発泡性樹脂粒子の作製
撹拌装置の付いた内容積が3Lのオートクレーブに、脱イオン水788g、ピロリン酸ナトリウム4.6g、硝酸マグネシウム11.4gを投入し、塩交換によりオートクレーブ内で懸濁剤としてのピロリン酸マグネシウムを合成した。次いで、この懸濁剤に、界面活性剤としてのアルキルスルホン酸ナトリウム0.2g、電解質としての塩化ナトリウム6g及び硝酸ナトリウム3g、種粒子414gを投入した。このようにして、種粒子を水性媒体中に懸濁させて懸濁液を得た。
【0049】
次に、オートクレーブ内を窒素置換した後、オートクレーブを密閉し、懸濁液を350rpmで撹拌しながらオートクレーブ内を温度72℃まで昇温させた。また、脱イオン水146g、アルキルスルホン酸ナトリウム0.12g、スチレン87g、過酸化ベンゾイル(日油社製、ナイパーBW)2.1g、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート(化薬アクゾ社製、トリゴノックス117)2.4g、ジクミルパーオキサイド(日油社製、パークミルD)3.0gの混合物をホモジナイザーにより乳化液に調整した。そして、オートクレーブ内の温度が上述の72℃に到達後、乳化液をオートクレーブ内に投入した。次いで、オートクレーブ内を温度72℃で1時間保持した後、4時間かけて温度93℃まで昇温させた。温度93℃到達後、この温度93℃で3時間保持し、さらに温度120℃まで3時間かけて昇温させた。次いで、この温度120℃で2時間保持し、その後室温まで冷却した。そして、温度72℃から93℃の昇温中に、スチレン190gを4時間かけてオートクレーブ内に連続的に添加した。また、温度93℃到達時から1時間後に発泡剤としてのペンタン(n−ペンタン80%、i−ペンタン20%)83gを30分かけてオートクレーブ内に添加して樹脂粒子中に発泡剤を含浸させた。
【0050】
オートクレーブ内を室温まで冷却した後、発泡剤を含む発泡性樹脂粒子をオートクレーブより取り出した。そして、この発泡性樹脂粒子を希硝酸で洗浄して樹脂粒子表面に付着した懸濁剤を溶解除去した。次いで、水洗を行い、遠心分離機で脱水した。次に、発泡性樹脂粒子100質量部に対して、帯電防止剤としてのアルキルジエタノールアミン0.01質量部を被覆させた後、流動乾燥(室温空気、10分間)により樹脂粒子表面の水分を除去した。得られた発泡性樹脂粒子100質量部に対してブロッキング防止剤としてのステアリン酸亜鉛0.1質量部、帯電防止剤としてのグリセリンモノステアレート0.05質量部を被覆させた。
このようにして、発泡性樹脂粒子を得た。
【0051】
(3)発泡粒子成形体の作製
上記のようにして得られた発泡性樹脂粒子500gを容積30Lの常圧バッチ発泡機内に投入し、この発泡機内にスチームを供給することにより、発泡性樹脂粒子を加熱し、発泡させ、嵩密度が約20kg/m
3の予備発泡粒子を得た。得られた予備発泡粒子を室温で1日間熟成した後、型物成形機(DABO社製のDSM−0705VS)の金型に充填した。そして、0.09MPa(ゲージ圧力)のスチームで金型内に充填した予備発泡粒子を15秒間加熱した。これにより、予備発泡粒子を金型内にて相互に融着させた。次いで、金型内を所定時間冷却した後、予備発泡粒子同士が相互に融着してなる発泡粒子成形体を金型から取り出した。
このようにして、発泡粒子成形体を得た。
本例の製造方法における、種粒子中の黒鉛量(質量%)及びPS量(質量%)、スチレン添加量、基材樹脂の組成(樹脂組成;質量部)、各種添加剤の配合割合等の製造条件を後述の表1に示す。なお、後述する実施例2〜11、比較例1〜5についても同様の製造条件を表1、表3に示す。
【0052】
(実施例2)
本例は、実施例1とは種粒子とスチレンの配合を変え、さらに難燃剤を添加して発泡性樹脂粒子、予備発泡粒子、発泡粒子成形体を作製する例である。
具体的には、まず、φ30mm単軸押出機を用いて、温度210〜230℃で、スチレン−メタクリル酸共重合体78質量部と、黒鉛マスターバッチ13質量部と、臭素系難燃剤マスターバッチ9質量部とを溶融混練した。スチレン−メタクリル酸共重合体及び黒鉛マスターバッチとしては、実施例1と同様のものを用い、臭素系難燃剤マスターバッチとしては、その組成が、2,2−ビス[4’−(2”,3”−ジブロモ−2”−メチルプロポキシ)−3’,5’−ジブロモフェニル]プロパン:23質量%、2,2−ビス[4’−(2”,3”−ジブロモプロポキシ)−3’,5’−ジブロモフェニル]プロパン:15質量%、基材樹脂(ポリスチレン):残部であるものを用いた。次いで、実施例1と同様に溶融樹脂をストランド状に押し出し、冷却した後、切断して円柱形状の種粒子を作製した。
【0053】
次に、この種粒子を用いて発泡性樹脂粒子を作製した。本例の発泡性樹脂粒子は、種粒子の投入量を449gに変更し、温度72℃から93℃の昇温中に添加するスチレンの量を155gに変更した点を除いては、実施例1と同様にして作製した。
また、この発泡性樹脂粒子を用いて、実施例1と同様にして予備発泡粒子を作製し、さらにこの予備発泡粒子を用いて、実施例1と同様にして発泡粒子成形体を作製した。
【0054】
(実施例3)
本例は、実施例1とは種粒子とスチレンの配合をさらに変え、難燃剤を添加して発泡性樹脂粒子、予備発泡粒子、発泡粒子成形体を作製する例である。
具体的には、まず、φ30mm単軸押出機を用いて、温度210〜230℃で、スチレン−メタクリル酸共重合体74質量部と、黒鉛マスターバッチ15質量部と、臭素系難燃剤マスターバッチ11質量部とを溶融混練した。スチレン−メタクリル酸共重合体及び黒鉛マスターバッチとしては、実施例1と同様のものを用い、臭素系難燃剤マスターバッチとしては、実施例2と同様のものを用いた。次いで、実施例1と同様に溶融樹脂をストランド状に押し出し、冷却した後、切断して円柱形状の種粒子を作製した。
【0055】
次に、この種粒子を用いて発泡性樹脂粒子を作製した。本例の発泡性樹脂粒子の作製にあたっては、まず、脱イオン水の量を642gに変更した点を除いては実施例1と同様にして、オートクレーブ内にてピロリン酸マグネシウムの懸濁剤を合成した。
次いで、懸濁剤を合成したオートクレーブ内に、界面活性剤としてのアルキルスルホン酸ナトリウム0.2g、電解質としての塩化ナトリウム6gと硝酸ナトリウム3g、種粒子345gを投入した。このようにして、種粒子を水性媒体中に懸濁させて懸濁液を得た。
【0056】
次に、オートクレーブ内を窒素置換した後、オートクレーブを密閉し、懸濁液を350rpmで撹拌しながらオートクレーブ内を温度72℃まで昇温させた。また、脱イオン水146g、アルキルスルホン酸ナトリウム0.12g、スチレン87g、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート(化薬アクゾ社製、トリゴノックス117)2.4g、ジクミルパーオキサイド(日油社製、パークミルD)3.0gの混合物をホモジナイザーにより乳化液に調整した。これを以下、乳化液Aという。そして、オートクレーブ内の温度が上述の72℃に到達後、乳化液Aをオートクレーブ内に投入した。また、脱イオン水146g、アルキルスルホン酸ナトリウム0.12g、スチレン70g、過酸化ベンゾイル(日油社製、ナイパーBW)2.1gの混合物をホモジナイザーにより乳化液に調整した。これを以下、乳化液Bという。そして、オートクレーブ内の温度が上述の72℃に到達してから1時間後に、乳化液Bをオートクレーブ内に投入した。
【0057】
そして、オートクレーブ内を温度72℃で2時間保持した後は、実施例1と同様の条件で加熱を行うと共にスチレン、ペンタンを添加した。このようにして、発泡性樹脂粒子を作製した。
また、この発泡性樹脂粒子を用いて、実施例1と同様にして予備発泡粒子を作製し、さらにこの予備発泡粒子を用いて、実施例1と同様にして発泡粒子成形体を作製した。
【0058】
(実施例4)
本例は、実施例1とは種粒子とスチレンの配合をさらに変え、難燃剤を添加して発泡性樹脂粒子、予備発泡粒子、発泡粒子成形体を作製する例である。
具体的には、まず、φ30mm単軸押出機を用いて、温度210〜230℃で、スチレン−メタクリル酸共重合体78質量部と、黒鉛マスターバッチ13質量部と、臭素系難燃剤マスターバッチ9質量部とを溶融混練した。スチレン−メタクリル酸共重合体及び黒鉛マスターバッチとしては、実施例1と同様のものを用い、臭素系難燃剤マスターバッチとしては、実施例2と同様のものを用いた。次いで、実施例1と同様に溶融樹脂をストランド状に押し出し、冷却した後、切断して円柱形状の種粒子を作製した。
【0059】
次に、この種粒子を用いて発泡性樹脂粒子を作製した。本例の発泡性樹脂粒子は、種粒子の投入量を483gに変更し、温度72℃から93℃の昇温中に添加するスチレンの量を121gに変更した点を除いては、実施例1と同様にして作製した。
また、この発泡性樹脂粒子を用いて、実施例1と同様にして予備発泡粒子を作製し、さらにこの予備発泡粒子を用いて、実施例1と同様にして発泡粒子成形体を作製した。
【0060】
(実施例5)
本例は、実施例1とは種粒子とスチレンの配合をさらに変え、難燃剤を添加して発泡性樹脂粒子、予備発泡粒子、発泡粒子成形体を作製する例である。
具体的には、まず、φ30mm単軸押出機を用いて、温度210〜230℃で、スチレン−メタクリル酸共重合体61質量部と、黒鉛マスターバッチ21質量部と、臭素系難燃剤マスターバッチ18質量部とを溶融混練した。スチレン−メタクリル酸共重合体及び黒鉛マスターバッチとしては、実施例1と同様のものを用い、臭素系難燃剤マスターバッチとしては、実施例2と同様のものを用いた。次いで、実施例1と同様に溶融樹脂をストランド状に押し出し、冷却した後、切断して円柱形状の種粒子を作製した。
【0061】
次に、この種粒子を用いて発泡性樹脂粒子を作製した。本例の発泡性樹脂粒子は、本例において作製した種粒子を用いた点を除いては、実施例1と同様にして作製した。
また、この発泡性樹脂粒子を用いて、実施例1と同様にして予備発泡粒子を作製し、さらにこの予備発泡粒子を用いて、実施例1と同様にして発泡粒子成形体を作製した。
【0062】
(実施例6)
本例は、実施例1とは種粒子とスチレンの配合をさらに変え、難燃剤を添加して発泡性樹脂粒子、予備発泡粒子、発泡粒子成形体を作製する例である。
具体的には、まず、φ30mm単軸押出機を用いて、温度210〜230℃で、スチレン−メタクリル酸共重合体87.5質量部と、黒鉛マスターバッチ7.5質量部と、臭素系難燃剤マスターバッチ5質量部とを溶融混練した。スチレン−メタクリル酸共重合体及び黒鉛マスターバッチとしては、実施例1と同様のものを用い、臭素系難燃剤マスターバッチとしては、実施例2と同様のものを用いた。次いで、実施例1と同様に溶融樹脂をストランド状に押し出し、冷却した後、切断して円柱形状の種粒子を作製した。
【0063】
次に、この種粒子を用いて発泡性樹脂粒子を作製した。本例の発泡性樹脂粒子は、種粒子の投入量を431gに変更し、温度72℃から93℃の昇温中に添加するスチレンの量を173gに変更した点を除いては、実施例1と同様にして作製した。
また、この発泡性樹脂粒子を用いて、実施例1と同様にして予備発泡粒子を作製し、さらにこの予備発泡粒子を用いて、実施例1と同様にして発泡粒子成形体を作製した。
【0064】
(実施例7)
本例は、実施例1とは種粒子とスチレンの配合をさらに変え、難燃剤を添加して発泡性樹脂粒子、予備発泡粒子、発泡粒子成形体を作製する例である。
具体的には、まず、φ30mm単軸押出機を用いて、温度210〜230℃で、スチレン−メタクリル酸共重合体69質量部と、黒鉛マスターバッチ18質量部と、臭素系難燃剤マスターバッチ13質量部とを溶融混練した。スチレン−メタクリル酸共重合体及び黒鉛マスターバッチとしては、実施例1と同様のものを用い、臭素系難燃剤マスターバッチとしては、実施例2と同様のものを用いた。次いで、実施例1と同様に溶融樹脂をストランド状に押し出し、冷却した後、切断して円柱形状の種粒子を作製した。
【0065】
次に、この種粒子を用いて発泡性樹脂粒子を作製した。本例の発泡性樹脂粒子の作製にあたっては、まず、実施例1と同様にして、オートクレーブ内にてピロリン酸マグネシウムの懸濁剤を合成した。
次いで、懸濁剤を合成したオートクレーブ内に、界面活性剤としてのアルキルスルホン酸ナトリウム0.2g、電解質としての塩化ナトリウム6gと硝酸ナトリウム3g、種粒子311gを投入した。このようにして、種粒子を水性媒体中に懸濁させて懸濁液を得た。
【0066】
次に、オートクレーブ内を窒素置換した後、オートクレーブを密閉し、懸濁液を350rpmで撹拌しながらオートクレーブ内を温度72℃まで昇温させた。また、実施例3と同様の乳化液Aを作製し、オートクレーブ内の温度が上述の72℃に到達後、この乳化液Aをオートクレーブ内に投入した。また、実施例3と同様の乳化液Bを作製し、オートクレーブ内の温度が上述の72℃に到達してから1時間後に、この乳化液Bをオートクレーブ内に投入した。
【0067】
そして、オートクレーブ内を温度72℃で2時間保持した後、温度72℃から93℃の昇温中に添加するスチレンの量を224gに変更した点を除いては、実施例1と同様にして発泡性樹脂粒子を作製した。
また、この発泡性樹脂粒子を用いて、実施例1と同様にして予備発泡粒子を作製し、さらにこの予備発泡粒子を用いて、実施例1と同様にして発泡粒子成形体を作製した。
【0068】
(実施例8)
本例は、実施例1とは種粒子とスチレンの配合をさらに変え、難燃剤を添加して発泡性樹脂粒子、予備発泡粒子、発泡粒子成形体を作製する例である。
具体的には、まず、φ30mm単軸押出機を用いて、温度210〜230℃で、スチレン−メタクリル酸共重合体83.5質量部と、黒鉛マスターバッチ10質量部と、臭素系難燃剤マスターバッチ6.5質量部とを溶融混練した。スチレン−メタクリル酸共重合体及び黒鉛マスターバッチとしては、実施例1と同様のものを用い、臭素系難燃剤マスターバッチとしては、実施例2と同様のものを用いた。次いで、実施例1と同様に溶融樹脂をストランド状に押し出し、冷却した後、切断して円柱形状の種粒子を作製した。
【0069】
次に、この種粒子を用いて発泡性樹脂粒子を作製した。本例の発泡性樹脂粒子は、種粒子の投入量を552gに変更し、温度72℃から93℃の昇温中に添加するスチレンの量を52gに変更した点を除いては、実施例1と同様にして作製した。
また、この発泡性樹脂粒子を用いて、実施例1と同様にして予備発泡粒子を作製し、さらにこの予備発泡粒子を用いて、実施例1と同様にして発泡粒子成形体を作製した。
【0070】
(実施例9)
本例は、実施例1とは種粒子とスチレンの配合及び黒鉛の平均粒子径を変え、難燃剤を添加して発泡性樹脂粒子、予備発泡粒子、発泡粒子成形体を作製する例である。
具体的には、まず、φ30mm単軸押出機を用いて、温度210〜230℃で、スチレン−メタクリル酸共重合体78質量部と、黒鉛マスターバッチ13質量部と、臭素系難燃剤マスターバッチ9質量部とを溶融混練した。本例においては、黒鉛マスターバッチとしては、黒鉛粉の平均粒子径:約5μm、黒鉛濃度:40質量%、基材樹脂(ポリスチレン):残部であるものを用いた。また、スチレン−メタクリル酸共重合体としては、実施例1と同様のものを用い、臭素系難燃剤マスターバッチとしては、実施例2と同様のものを用いた。次いで、実施例1と同様に溶融樹脂をストランド状に押し出し、冷却した後、切断して円柱形状の種粒子を作製した。
【0071】
次に、この種粒子を用いて発泡性樹脂粒子を作製した。本例の発泡性樹脂粒子は、種粒子の投入量を431gに変更し、温度72℃から93℃の昇温中に添加するスチレンの量を173gに変更した点を除いては、実施例1と同様にして作製した。
また、この発泡性樹脂粒子を用いて、実施例1と同様にして予備発泡粒子を作製し、さらにこの予備発泡粒子を用いて、実施例1と同様にして発泡粒子成形体を作製した。
【0072】
(実施例10)
本例は、実施例1とは、スチレン−メタクリル酸共重合体の種類、種粒子とスチレンの配合を変え、難燃剤を添加して発泡性樹脂粒子、予備発泡粒子、発泡粒子成形体を作製する例である。
具体的には、まず、φ30mm単軸押出機を用いて、温度210〜230℃で、スチレン−メタクリル酸共重合体78質量部と、黒鉛マスターバッチ13質量部と、臭素系難燃剤マスターバッチ9質量部とを溶融混練した。本例においては、スチレン−メタクリル酸共重合体としては、DIC社製のリューレックスA−14(ガラス転移温度129℃)を用いた。また、黒鉛マスターバッチとしては、実施例1と同様のものを用い、臭素系難燃剤マスターバッチとしては、実施例2と同様のものを用いた。次いで、実施例1と同様に溶融樹脂をストランド状に押し出し、冷却した後、切断して円柱形状の種粒子を作製した。
【0073】
次に、この種粒子を用いて発泡性樹脂粒子を作製した。本例の発泡性樹脂粒子は、種粒子の投入量を449gに変更し、温度72℃から93℃の昇温中に添加するスチレンの量を155gに変更した点を除いては、実施例1と同様にして作製した。
また、この発泡性樹脂粒子を用いて、実施例1と同様にして予備発泡粒子を作製し、さらにこの予備発泡粒子を用いて、実施例1と同様にして発泡粒子成形体を作製した。
【0074】
(実施例11)
本例は、実施例1とは種粒子とスチレンの配合、黒鉛の平均粒子径、及び発泡剤の組成を変え、さらに難燃剤を添加して発泡性樹脂粒子、予備発泡粒子、発泡粒子成形体を作製する例である。
具体的には、まず、φ30mm単軸押出機を用いて、温度210〜230℃で、スチレン−メタクリル酸共重合体48.4質量部と、ポリスチレン樹脂4.6質量部、黒鉛マスターバッチ8質量部と、臭素系難燃剤マスターバッチ9質量部とを溶融混練した。スチレン−メタクリル酸共重合体としては、実施例1と同様のものを用い、ポリスチレン樹脂としては、PSジャパン社製の「679」(重量平均分子量18万)を用いた。本例においては、黒鉛マスターバッチとしては、黒鉛粉の平均粒子径:約5μm、黒鉛濃度:40質量%、基材樹脂(ポリスチレン):残部であるものを用いた。また、臭素系難燃剤マスターバッチとしては、実施例2と同様のものを用いた。次いで、実施例1と同様に溶融樹脂をストランド状に押し出し、冷却した後、切断して円柱形状の種粒子を作製した。
【0075】
次に、この種粒子を用いて発泡性樹脂粒子を作製した。本例の発泡性樹脂粒子は、種粒子の投入量を431gに変更し、温度72℃から93℃の昇温中に添加するスチレンの量を173gに変更し、発泡剤としてペンタン(n−ペンタン80%、i−ペンタン20%)72gとブタン(n−ブタン65%、i−ブタン35%)22gを併用した点を除いては、実施例1と同様にして作製した。
また、この発泡性樹脂粒子を用いて、実施例1と同様にして予備発泡粒子を作製し、さらにこの予備発泡粒子を用いて、実施例1と同様にして発泡粒子成形体を作製した。
【0076】
上述の実施例1〜11においては、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体を含有する種粒子にスチレンを含浸重合(シード重合)させることにより、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体とポリスチレン樹脂との複合樹脂を基材樹脂とする発泡性樹脂粒子を作製した。これに対し、下記の比較例1〜3は、種粒子にスチレンを含浸して重合することなく、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体とポリスチレン樹脂とを溶融混練することのみにより、これらの混合樹脂を基材樹脂とする発泡性樹脂粒子を作製する例である。
【0077】
(比較例1)
具体的には、まず、φ26mm同方向2軸押出機を用いて、温度200℃で、スチレン−メタクリル酸共重合体52質量部、ポリスチレン樹脂35質量部、黒鉛マスターバッチ7.5質量部、臭素系難燃剤マスターバッチ5.5質量部を溶融混練した。本例において、ポリスチレン樹脂としては、PSジャパン社製のポリスチレン「680」(重量平均分子量18万)を用いた。また、スチレン−メタクリル酸共重合体及び黒鉛マスターバッチとしては、実施例1と同様のものを用い、臭素系難燃剤マスターバッチとしては、実施例2と同様のものを用いた。
次いで、溶融樹脂を穴径1.5mmの小孔からストランド状に押し出し、直ちに水槽へ導入して冷却した後、切断して平均4mg/個の円柱形状の混合樹脂粒子を得た。
【0078】
次に、撹拌装置の付いた内容積が3Lのオートクレーブに、脱イオン水900g、ピロリン酸ナトリウム4.6g、硝酸マグネシウム11.4gを投入し、塩交換によりオートクレーブ内で懸濁剤としてのピロリン酸マグネシウムを合成した。次いで、この懸濁剤に、界面活性剤としてのアルキルスルホン酸ナトリウム0.3g、電解質としての塩化ナトリウム6g及び硝酸ナトリウム3g、上記混合樹脂粒子600g、ジクミルパーオキサイド(日油社製、パークミルD)3.0gを投入した。このようにして、混合樹脂粒子を水性媒体中に懸濁させて懸濁液を得た。
【0079】
次に、オートクレーブ内を窒素置換した後、オートクレーブを密閉し、懸濁液を350rpmで撹拌しながらオートクレーブ内を温度120℃まで昇温させた。そして、温度120℃到達後、発泡剤としてペンタン(n−ペンタン80%、i−ペンタン20%)72gを30分かけてオートクレーブ内に添加して混合樹脂粒子に発泡剤を含浸させた。オートクレーブ内を室温まで冷却した後、発泡性樹脂粒子をオートクレーブより取り出した。次いで、実施例1と同様にして、洗浄、脱水、帯電防止剤及びブロッキング防止剤の被覆を行うことにより、発泡性樹脂粒子を得た。
また、この発泡性樹脂粒子を用いて、実施例1と同様にして予備発泡粒子を作製し、さらにこの予備発泡粒子を用いて、実施例1と同様にして発泡粒子成形体を作製した。
【0080】
(比較例2)
本例は、比較例1とは異なる分子量のポリスチレン樹脂を用いて、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体を連続相とし、ポリスチレン樹脂を分散相とする海島構造を示す混合樹脂を基材樹脂とする発泡性樹脂粒子を作製した例、すなわち、比較例1の発泡性樹脂粒子の海島構造が逆転した混合樹脂を基材樹脂とする発泡性樹脂粒子を作製した例である。
具体的には、ポリスチレン樹脂としてPSジャパン社製のポリスチレン「GX−154」(重量平均分子量27万)を用い、φ30mmの同方向2軸押出機により、200℃の温度で、溶融混練し、溶融樹脂を穴径1.0mmの小孔からストランド状に押し出し、直ちに水槽へ導入して冷却後、切断して平均1.5mg/個の円柱形状の混合樹脂粒子を作製した以外は、比較例1と同様にして混合樹脂粒子を得た。
【0081】
次に、撹拌装置の付いた内容積が3Lのオートクレーブに、脱イオン水900g、ピロリン酸ナトリウム4.6g、硝酸マグネシウム11.4gを投入し、塩交換によりオートクレーブ内で懸濁剤としてのピロリン酸マグネシウムを合成した。次いで、この懸濁剤に、界面活性剤としてのアルキルスルホン酸ナトリウム0.3g、電解質としての塩化ナトリウム9g及び硝酸ナトリウム4.5g、上記混合樹脂粒子600g、ジクミルパーオキサイド(日油社製、パークミルD)2.6gを投入した。このようにして、混合樹脂粒子を水性媒体中に懸濁させて懸濁液を得た。
【0082】
次に、オートクレーブ内を窒素置換した後、オートクレーブを密閉し、懸濁液を350rpmで撹拌しながらオートクレーブ内を温度120℃まで昇温させた。そして、温度120℃到達後、発泡剤としてペンタン(n−ペンタン80%,i−ペンタン20%)78gを30分かけてオートクレーブ内に添加して混合樹脂粒子に発泡剤を含浸させた。オートクレーブ内を室温まで冷却した後、発泡性樹脂粒子をオートクレーブより取り出した。次いで、実施例1と同様にして、洗浄、脱水、帯電防止剤及びブロッキング防止剤の被覆を行うことにより、発泡性樹脂粒子を得た。
また、この発泡性樹脂粒子を用いて、実施例1と同様にして予備発泡粒子を作製し、さらにこの予備発泡粒子を用いて、実施例1と同様にして発泡粒子成形体を作製した。
【0083】
(比較例3)
本例は、比較例2よりもスチレン−メタクリル酸共重合体の質量比の高い、スチレン−メタクリル酸共重合体とポリスチレン樹脂との混合樹脂を基材樹脂とする発泡性樹脂粒子を作製した例である。
【0084】
具体的には、まず、φ30mmの同方向2軸押出機により、温度200℃で、スチレン−メタクリル酸共重合体66重量部、ポリスチレン樹脂21重量部、黒鉛マスターバッチ7.5重量部、臭素系難燃剤マスターバッチ5.5重量部を溶融混練した。本例において、スチレン−メタクリル酸共重合体及び黒鉛マスターバッチとしては実施例1と同様のものを用い、ポリスチレン樹脂としては比較例1と同様のものを用い、臭素系難燃剤マスターバッチとしては実施例2と同様のものを用いた。
次いで、溶融樹脂を穴径1.0mmの小孔からストランド状に押し出し、直ちに水槽へ導入して冷却後、切断して平均1.5mg/個の円柱形状の混合樹脂粒子を作製した。そして、この混合樹脂粒子を用いた点を除いては、比較例2と同様にして発泡性樹脂粒子、予備発泡粒子、及び発泡粒子成形体を得た。
【0085】
(実施例12)
本例は、複合樹脂粒子中のポリスチレンの質量比を非常に高くして発泡性樹脂粒子を作製する例である。
【0086】
具体的には、まず、φ30mm単軸押出機を用いて、温度210〜230℃で、スチレン−メタクリル酸共重合体70質量部と、黒鉛マスターバッチ30質量部とを溶融混練した。スチレン−メタクリル酸共重合体及び黒鉛マスターバッチとしては、実施例1と同様のものを用いた。次いで、実施例1と同様に溶融樹脂をストランド状に押し出し、冷却した後、切断して円柱形状の種粒子を作製した。
【0087】
次に、この種粒子を用いて発泡性樹脂粒子を作製した。本例の発泡性樹脂粒子の作製にあたっては、まず、脱イオン水の量を552gに変更した点を除いては実施例1と同様にして、オートクレーブ内にてピロリン酸マグネシウムの懸濁剤を合成した。
次いで、懸濁剤を合成したオートクレーブ内に、界面活性剤としてのアルキルスルホン酸ナトリウム0.2g、電解質としての塩化ナトリウム6gと硝酸ナトリウム3g、種粒子173gを投入した。このようにして、種粒子を水性媒体中に懸濁させて懸濁液を得た。
【0088】
次に、オートクレーブ内を窒素置換した後、オートクレーブを密閉し、懸濁液を350rpmで撹拌しながらオートクレーブ内を温度72℃まで昇温させた。また、脱イオン水146g、アルキルスルホン酸ナトリウム0.12g、スチレン34.8g、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート(化薬アクゾ社製、トリゴノックス117)2.4gの混合物をホモジナイザーにより乳化液に調整した。これを以下、乳化液Cという。そして、オートクレーブ内の温度が上述の72℃に到達後、乳化液Cをオートクレーブ内に投入した。また、脱イオン水146g、アルキルスルホン酸ナトリウム0.12g、スチレン24.4g、過酸化ベンゾイル(日油社製、ナイパーBW)2.1gの混合物をホモジナイザーにより乳化液に調整した。これを以下、乳化液Dという。そして、オートクレーブ内の温度が上述の72℃に到達してから1時間後に、乳化液Dをオートクレーブ内に投入した。
【0089】
そして、オートクレーブ内を温度72℃で2時間保持した後、温度72℃から93℃の昇温中に添加するスチレンの量を459gに変更した点を除いては、実施例1と同様にして発泡性樹脂粒子を作製した。
また、この発泡性樹脂粒子を用いて、実施例1と同様にして予備発泡粒子を作製し、さらにこの予備発泡粒子を用いて、実施例1と同様にして発泡粒子成形体を作製した。
【0090】
(比較例4)
実施例1〜11においては、ポリスチレン樹脂を含むスチレン系重合体種粒子にスチレンを含浸重合して、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体とポリスチレン樹脂とを基材樹脂とする発泡性樹脂粒子を作製した。これに対し、本例は、ポリスチレン樹脂を含まないスチレン系重合体種粒子にスチレンを含浸重合して、アクリロニトリル−スチレン共重合体とポリスチレン樹脂とを基材樹脂とする発泡性樹脂粒子を作製する例である。
【0091】
具体的には、まず、φ30mm単軸押出機を用いて、温度220〜240℃で、アクリロニトリル−スチレン共重合体80質量部と、黒鉛マスターバッチ20質量部とを溶融混練した。本例において、アクリロニトリル−スチレン共重合体としては、電気化学工業社製の「AG−XGS」を用い、黒鉛マスターバッチとしては、黒鉛粉の平均粒子径:約15μm、黒鉛濃度:25質量%、基材樹脂(アクリロニトリル−スチレン共重合体):残部であるものを用いた。次いで、実施例1と同様に溶融樹脂をストランド状に押し出し、冷却した後、切断して円柱形状の種粒子を作製した。
【0092】
次に、この種粒子を用いて発泡性樹脂粒子を作製した。本例の発泡性樹脂粒子は、本例において作製した種粒子を用いた点を除いては、実施例1と同様にして作製した。
また、この発泡性樹脂粒子を用いて、実施例1と同様にして予備発泡粒子を作製し、さらにこの予備発泡粒子を用いて、実施例1と同様にして発泡粒子成形体を作製した。
【0093】
上述の実施例1〜12、比較例1〜4において作製した各発泡性樹脂粒子について、発泡剤の含有量、ガラス転移温度、平均分子量、発泡性樹脂粒子断面の形態観察、平均分散相径を以下のようにして評価した。また、各予備発泡粒子について、表皮及び全体における(メタ)アクリル酸成分単位の含有量、平均気泡径、成形性を以下のようにして評価した。なお、比較例4は、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体を含有していないため、その含有量の評価、並びに発泡性樹脂粒子断面の形態観察及び平均分散相径の評価を省略した。これらの結果を表1〜表3に示す。
また、各発泡粒子成形体について、成形品密度、加熱寸法変化率、燃焼性、酸素指数、熱伝導率を以下のようにして評価した。但し、良好な発泡粒子成形体の製造ができなかった比較例1〜
4については、これらの評価を省略した。また、難燃剤を含有していない実施例1、
実施例12については、燃焼性、酸素指数の評価を省略した。その結果を表2及び表3に示す。また、実施例2及び比較例1の発泡粒子成形体については、その外観をスキャナで画像データとして取り込み、その結果(デジタル写真)を
図2及び
図4にそれぞれ示す。
【0094】
(a)発泡剤含有量
発泡性樹脂粒子をジメチルホルムアミド(DMF)に溶解させ、ガスクロマトグラフィーにて、添加した発泡剤の含有量を測定し、各成分の含有量を合計して求めた。ガスクロマトグラフによる発泡剤の定量は、具体的には以下の手順で行った。
まず、100mLのメスフラスコにシクロペンタノール約5gを小数点以下第3位まで精秤し(このときの重量をWiとする)、DMFを加えて全体を100mLとした。このDMF溶液をさらにDMFで100倍に希釈し内部標準溶液とした。次いで、測定対象となる発泡性樹脂粒子約1gを小数点以下第3位まで精秤し、このときの重量をWs(g)とした。精秤した発泡性樹脂粒子の試料を約18mLのDMFに溶解させ、溶解物に、内部標準溶液をホールピペットにて正確に2mL加えた。この溶液1μLをマイクロシリンジにて採集し、ガスクロマトグラフィーに導入し、クロマトグラムを得た。得られたクロマトグラムから各発泡剤成分及び内部標準のピーク面積を求め、下式(1)により各成分濃度を求めた。
各成分濃度(質量%)=[(Wi/10000)×2]×[An/Ai]×Fn÷Ws×100・・・(1)
ここで、
Wi:内部標準溶液を作成したときのシクロペンタノール重量(g)
Ws:DMFに溶解させた試料重量(g)
An:ガスクロマトグラフ測定時の各発泡剤成分のピーク面積
Ai:ガスクロマトグラフ測定時の内部標準物質のピーク面積
Fn:あらかじめ作成した検量線より求めた各発泡剤成分の補正係数
また、上記ガスクロマトグラフ分析の条件は以下の通りとした。
使用機器:(株)島津製作所製のガスクロマトグラフGC−6AM
検出器:FID(水素炎イオン化検出器)
カラム材質:内径3mm、長さ5000mmのガラスカラム
カラム充填剤:[液相名]FFAP(遊離脂肪酸)、[液相含浸率]10質量%、[担体名]ガスクロマトグラフ用珪藻土Chomasorb W、[担体粒度]60/80メッシュ、[担体処理方法]AW−DMCS(水洗・焼成・酸処理・シラン処理)、[充填量]90mL
注入口温度:250℃
カラム温度:120℃
検出部温度:250℃
キャリヤーガス:N
2、流量40ml/分
【0095】
(b)ガラス転移温度(Tg)の測定
まず、温度180℃に加熱したプレス機を用いて、発泡性樹脂粒子またはその予備発泡粒子またはその発泡粒子成形体からスチレン系樹脂のフィルムを作製した。このフィルムから2〜4mgの試験片を切り出し、試験片について示差走査熱量(DSC)分析を行った。DSCの測定は、ティ・エイ・インスツルメント社製のDSC測定装置「Q1000型DSC」を用いて、JIS K 7121(1987年)に準拠して行なった。そして、昇温速度10℃/分の条件で得られるDSC曲線の中間点ガラス転移温度を求めた。そして、低温側に観察される、ポリスチレン樹脂に由来するガラス転移温度をTg1、高温側に観察される、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体に由来するガラス転移温度をTg2とした。
【0096】
(c)平均分子量の測定
発泡性樹脂粒子の基材樹脂の平均分子量(数平均分子量、重量平均分子量、Z平均分子量)は、ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法により測定することができる。
具体的には、東ソー(株)製のHLC−8320GPC EcoSECを用いて、溶離液:テトラヒドロフラン(THF)、THF流量:0.6ml/分、試料濃度:0.1wt%という測定条件で測定した。カラムとしては、TSKguardcolumn SuperH−H×1本、TSK−GEL SuperHM−H×2本を直列に接続したカラムを用いた。即ち、発泡性樹脂粒子またはその発泡粒子またはその発泡粒子成形体をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で分子量を測定した。そして、測定値を標準ポリスチレンで校正して、数平均分子量、重量平均分子量、Z平均分子量をそれぞれ求めた。
【0097】
(d)発泡性樹脂粒子断面の形態観察
発泡性樹脂粒子の中心部付近を切り出し、エポキシ樹脂に包埋した。四酸化ルテニウムにより染色後、ウルトラミクロトームにより超薄切片を作製した。この超薄切片をグリッドに載せ、発泡性樹脂粒子の断面部を透過型電子顕微鏡(日本電子社製、JEM1010)により観察した。透過型電子顕微鏡(TEM)観察は、加速電圧100kV、観察倍率10,000倍という条件で行った。そして、発泡性樹脂粒子を構成する基材樹脂のモルフォロジーを調べた。実施例2、比較例1の発泡性樹脂粒子の断面におけるTEM写真を
図1、
図3にそれぞれ示す。
また、TEM写真から平均分散相径を算出した。具体的には、TEM写真について、無作為に選択した100個の分散相の直径(各分散相の最長径)をそれぞれ計測し、計測値を加重平均することにより平均分散相径(μm)を求めた。なお、分散相の形状が例えば真円である場合には、その直径が分散相の最長径となり、分散相の形状が例えば楕円である場合には、その長径が分散相の最長径となる。
【0098】
(e)(メタ)アクリル酸成分単位の含有量の測定
(メタ)アクリル酸成分単位の含有量の測定は、全反射吸収測定装置を用いて行った。全反射吸収測定としては、日本分光社製の赤外分光光度計「FT/IR-460plus」と、同社製の全反射吸収測定装置「ATR PRO 450−S型」を用いた。また、全反射吸収測定装置側の測定条件は、プリズム:ZnSe、入射角:45°とした。
具体的には、まず、全反射吸収測定装置のプリズムに予備発泡粒子を押し付けて予備発泡粒子の表面の赤外吸収スペクトルを測定した。次に、予備発泡粒子を温度180℃で熱プレスしてフィルムを作製し、全反射吸収測定装置を用いてこのフィルムの赤外吸収スペクトルを測定した。これにより、予備発泡粒子全体の赤外吸収スペクトルを測定した。次に、得られた赤外吸収スペクトルをATR補正した後、スチレン成分単位に由来する698cm
-1の吸光度I
698と(メタ)アクリル酸成分単位に由来する1700cm
-1における吸光度I
1700を測定し、これらの吸光度比(I
1700/I
698)を求めた。そして、あらかじめ作成した検量線を用いて、予備発泡粒子表面及び全体における(メタ)アクリル酸成分単位の含有量(質量%)を求めた。10個の予備発泡粒子について、同様に(メタ)アクリル酸成分単位の含有量を測定し、算術平均して、予備発泡粒子の表面及び全体における(メタ)アクリル酸成分単位の含有量(質量%)を求めた。また、予備発泡粒子の全体における(メタ)アクリル酸成分単位の含有量に対する予備発泡粒子の表面における(メタ)アクリル酸成分単位の含有量の割合(表皮/全体;百分率)を算出した。
【0099】
なお、検量線の作成は以下のように行った。
即ち、まず、押出機を用いて、スチレン−メタクリル酸共重合体(PSジャパン社製の「G9001」)とポリスチレン樹脂(PSジャパン社製の「680」)を、100/0、75/25、50/50、25/75、0/100の重量比(スチレン−メタクリル酸共重合体/ポリスチレン樹脂)で、溶融混練してペレットを作製した。次いで、温度180℃に加熱したプレス機によりこのペレットをフィルム状に成形した。上述の全反射吸収測定装置を用いて、得られたフィルムの赤外吸収スペクトルを測定した。この赤外吸収スペクトルをATR補正した後、上述の方法と同様に、吸光度I
698及びI
1700を測定し、これらの吸光度比(I
1700/I
698を)を求めた。スチレン−メタクリル酸共重合体(PSジャパン社製の「G9001」)のメタクリル酸成分単位の含有量を元素分析により8.2質量%とし、(メタ)アクリル酸成分単位の含有量と吸光度比の検量線を作成した。
【0100】
(f)平均気泡径の測定
剃刀刃を用いて予備発泡粒子をその中心を通るように2つに切断し、蒸着処理後(Au−Pdターゲット)、走査型電子顕微鏡(キーエンス社製、VE7800)により、予備発泡粒子の断面を撮影した(観察倍率30倍)。得られた電子顕微鏡写真において、予備発泡粒子の中心を通るように直線を引き、該直線の実際の長さ、及び直線上に存在する気泡数を計測し、予備発泡粒子の直径を気泡数で除して気泡径(μm)とした。10個の予備発泡粒子について同様に気泡径を計測し、算術平均により平均気泡径を求めた。
【0101】
(g)成形性の評価
予備発泡粒子から作製した発泡粒子成形体の外観を目視にて観察し、下記の基準で判定した。
◎:成形体表面にボイド(発泡粒子間の間隙)が少なく平滑である場合。
○:成形体表面に多少のボイドが見られるが製品として問題ないレベルである場合。
×:成形することができない場合、又は成形体表面から内部まで発泡粒子間に大きな間隙が存在する成形体しか得られない場合。
【0102】
(h)成形品密度
発泡粒子成形体の外形寸法から体積を求め、次いで発泡粒子成形体の質量を測定し、該質量を体積で除することにより成形品密度を算出した。
【0103】
(i)加熱寸法変化率の測定
発泡粒子成形体から50mm×50mm×25mmの板状の試験片を切り出し、この試験片を温度23℃で1日間以上静置した。その後、ノギスを用いて、試験片の縦、横の各部位の寸法を小数点第2位まで測定した。次いで、温度80℃、90℃、又は100℃の各温度に設定した強制循環式オーブン内に、寸法測定後の試験片を22時間(約1日間)保持した。その後、試験片をオーブンから取り出し、温度23℃で1日間静置した。次いで、加熱前と同じ箇所の寸法を測定し、縦と横それぞれの加熱寸法変化率を次の式(2)から算出し、その相加平均値を加熱寸法変化率とした。
加熱寸法変化率(%)=(加熱前の寸法−加熱後の寸法)×100/加熱前の寸法・・・(2)
【0104】
(j)燃焼性の評価
燃焼性の評価は、JIS A 9511(2006年)の燃焼試験(A法)に準拠して行った。具体的には、まず、発泡粒子成形体を温度40℃で3日間、室温で1日養生した。その後、発泡粒子成形体から200mm×25mm×10mmの直方体状の試験片を5つ切り出した。次いで、ろうそくを用いて、着火限界指示線および燃焼限界指示線まで試験片を着火させた後、ろうそくをすばやく試験片から後退させた。そして、ろうそくを後退させた瞬間から試験片の炎が消えるまでの時間(消炎時間)を計測した。
【0105】
(k)酸素指数の測定
酸素指数の測定は、JIS K 7201−2(2007年)の試験方法に準拠して行った。測定にあたっては、発泡粒子成形体を温度40℃で3日間静置し、さらに室温で1日間養生した後、発泡粒子成形体から切り出した寸法150mm×10mm×10mmの試験片を15個作製し、これらの試験片について酸素指数を測定した。
【0106】
(l)熱伝導率の測定
JIS A 1412−2(1999年)に規定の熱流計法(HFM法)に準じて測定した。測定にあたっては、発泡粒子成形体を温度60℃で7日間静置し、さらに室温で1日間養生した後、発泡粒子成形体から切り出した寸法200mm×200mm×25mmの試験片を作製した。そして、この試験片を測定装置の加熱板と冷却熱板との間に挟み、試験片温度差20℃、試験辺平均温度23℃という条件で熱伝導率(W/m・K)の測定を行った。
【0107】
【表1】
【0108】
【表2】
【0109】
【表3】
【0110】
表1及び2に示すごとく、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体を主成分とする種粒子にスチレンを含浸及び重合してなる複合樹脂を基材樹脂とする実施例にかかる発泡性樹脂粒子は、20kg/m
3程度の低密度まで発泡させても、0.034W/m・K以下という低い熱伝導率を示し、断熱性に優れている。また、実施例にかかる発泡性樹脂粒子を用いると、温度80℃及び90℃における加熱寸法変化率が±2%以内という優れた耐熱性を有する発泡粒子成形体が得られることがわかる。
【0111】
また、表1及び表2に示すごとく、実施例にかかる発泡性樹脂粒子は、黒鉛を含有していても、発泡時に黒鉛により気泡膜が破壊され難くなり、優れた発泡成形性を示す。その結果、これらの発泡性樹脂粒子を用いると、粒子間に間隙が少なく、良好な形状の発泡粒子成形体を得ることができた(
図2参照)。
また、表1及び表2より知られるごとく、実施例にかかる発泡性樹脂粒子に臭素系難燃剤を添加することにより、発泡粒子成形体に難燃性を付与することができた。
【0112】
これに対し、比較例1〜3の発泡樹脂粒子は、ポリスチレン樹脂とスチレン−(メタ)アクリル酸共重合体とを溶融混練してなる混合樹脂を基材樹脂とする混合樹脂粒子に発泡剤を含浸させて作製したものである。この場合には、表3より知られるごとく、基材樹脂がポリスチレン樹脂を連続相とし、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体を分散相とする海島構造を有する場合であっても、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体を連続相とし、ポリスチレン樹脂を分散相とする海島構造を有する場合であっても、発泡成形性が不十分であり、良好な発泡粒子成形体を得ることができなかった(
図4参照)。なお、良好な発泡粒子成形体が得られなかったため、比較例1〜3については、発泡粒子成形体の評価を省略した(表3参照)。
【0113】
また、表3に示すごとく、基材樹脂中のスチレン−(メタ)アクリル酸共重合体の比率が18質量部と低い実施例12においては、温度90℃における寸法変化率が3%もあり、耐熱性が劣っていた。
また、表3に示すごとく、アクリロニトリル−スチレン共重合体とポリスチレン樹脂を基材樹脂とする比較例4においては、発泡成形性が不十分であり、良好な発泡粒子成形体を得ることができなかった。なお、良好な発泡粒子成形体が得られなかったため、比較例4については、発泡粒子成形体の評価を省略した(表3参照)。