特許第6036650号(P6036650)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6036650
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】火炎監視装置
(51)【国際特許分類】
   F23N 5/08 20060101AFI20161121BHJP
【FI】
   F23N5/08 F
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-230400(P2013-230400)
(22)【出願日】2013年11月6日
(65)【公開番号】特開2015-90245(P2015-90245A)
(43)【公開日】2015年5月11日
【審査請求日】2015年6月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】越智 幹夫
【審査官】 礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−097823(JP,A)
【文献】 特開2000−055358(JP,A)
【文献】 特開2003−106996(JP,A)
【文献】 実公平04−016205(JP,Y2)
【文献】 特公昭51−009356(JP,B2)
【文献】 特開2004−036907(JP,A)
【文献】 特開平06−147475(JP,A)
【文献】 特開2013−195401(JP,A)
【文献】 実開平01−094751(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23N 5/00 − 5/26
G01N 21/00 − 21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーナの火炎が発する紫外線を受光することで、前記火炎を検出する紫外線センサと、
前記火炎の形成位置と前記紫外線センサの設置位置との間に配置され、前記紫外線センサへの紫外線の入射を遮断可能な紫外線遮断部と、
前記火炎の形成位置近傍に電気火花を生じさせ、当該電気火花により前記バーナを点火するバーナ点火部と、
前記バーナ点火部の作動中に、前記紫外線遮断部を駆動制御して前記紫外線センサへの紫外線の入射を遮断する遮断制御部と、を備え
前記紫外線センサの異常を監視する異常監視部を備え、
前記異常監視部は、前記バーナ点火部を作動停止した後で、前記紫外線遮断部を駆動制御して前記紫外線の入射を許可したとき、前記紫外線センサが火炎を検出したら前記紫外線センサの異常監視を開始することを特徴とする火炎監視装置。
【請求項2】
前記バーナ点火部に駆動電圧を供給する電源回路を有し、
前記遮断制御部は、前記電源回路が作動中であるとき、前記バーナ点火部が作動中であると判断することを特徴とする請求項1に記載の火炎監視装置。
【請求項3】
前記異常監視部は、前記紫外線遮断部を駆動制御して、前記紫外線センサへの紫外線の入射の遮断と許可とを所定周期で繰り返したときの、前記紫外線センサの火炎検出の有無を監視することで、当該紫外線センサに異常が発生しているか否かを判断することを特徴とする請求項1又は2に記載の火炎監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーナの火炎を紫外線により検出する火炎検出器を有する火炎監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の燃焼制御装置として、例えば特許文献1に記載の技術がある。この技術は、火炎が発する紫外線を検出することで火炎を検出する火炎検出器と、火炎検出器の自己放電異常を検出するために設けられたシャッタとを備えるものである。ここでは、シャッタにより火炎からの紫外線を遮断しているときの火炎検出器の放電の有無を監視することで、自己放電異常を検出している。
【0003】
また、火炎検知用のフレームロッドに酸化被膜が付着することによる火炎検知不具合を防止する燃焼装置として、例えば特許文献2に記載の技術がある。この技術は、火炎検知用の電極とバーナへの点火用の電極とを兼用し、点火用の電極回路を点火後一定時間経過後に火炎検知回路に切り換えるものである。
さらに、火炎検出装置として、例えば特許文献3に記載の技術がある。この技術は、火炎検出器で火炎を検出してから、所定時間に亘って火炎が発する紫外線を阻止するシャッタを作動するシャッタ駆動回路を備えるものである。
【0004】
また、他の火炎検出装置としては、例えば特許文献4に記載の技術がある。この技術は、光センサが高温になった場合に燃焼を停止して、光センサの信頼性を確保するようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2−97823号公報
【特許文献2】特開平6−147475号公報
【特許文献3】特開2004−36907号公報
【特許文献4】特開2009−121713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、バーナを点火する場合、火炎を形成する位置で電気火花を生じさせるが、その電気火花によって発せられる紫外線は、火炎が発する紫外線と比べて非常に強い。しかしながら、上記各特許文献に記載の技術にあっては、いずれもバーナ点火時のスパークにより発生する強い紫外線については、全く考慮されていない。そのため、バーナ点火時の強い紫外線から火炎検出器のセンサを保護することができない。
そこで、本発明は、火炎検出器のセンサを保護することができる火炎監視装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る火炎監視装置の一態様は、バーナの火炎が発する紫外線を受光することで、前記火炎を検出する紫外線センサと、前記火炎の形成位置と前記紫外線センサの設置位置との間に配置され、前記紫外線センサへの紫外線の入射を遮断可能な紫外線遮断部と、前記火炎の形成位置近傍に電気火花を生じさせ、当該電気火花により前記バーナを点火するバーナ点火部と、前記バーナ点火部の作動中に、前記紫外線遮断部を駆動制御して前記紫外線センサへの紫外線の入射を遮断する遮断制御部と、を備え、前記紫外線センサの異常を監視する異常監視部を備え、前記異常監視部は、前記バーナ点火部を作動停止した後で、前記紫外線遮断部を駆動制御して前記紫外線の入射を許可したとき、前記紫外線センサが火炎を検出したら前記紫外線センサの異常監視を開始することを特徴としている。
【0008】
このように、バーナ点火時に紫外線センサへの紫外線の入射を遮断するので、バーナ点火時の電気火花が発する強い紫外線から紫外線センサを保護することができる。そのため、火炎検出用の紫外線センサの寿命を延ばすことができる。
また、上記において、前記バーナ点火部に駆動電圧を供給する電源回路を有し、前記遮断制御部は、前記電源回路が作動中であるとき、前記バーナ点火部が作動中であると判断することが好ましい。
【0009】
このように、バーナ点火部が作動中であるか否かを電源側で判断することで、バーナ点火部側で作動中か否かの判断を行う必要がない。そのため、容易且つ適切に紫外線遮断部を駆動制御することができる
【0010】
また、前記異常監視部は、前記バーナ点火部を作動停止した後で、前記紫外線遮断部を駆動制御して前記紫外線の入射を許可したとき、前記紫外線センサが火炎を検出したら前記紫外線センサの異常監視を開始する。
このように、バーナが燃焼中であることを確認してから紫外線センサの異常監視機能を作動させることができる。そのため、紫外線センサによる火炎の有無と、紫外線センサの異常発生の有無とを確認することができる。
【0011】
た、上記において、前記異常監視部は、前記紫外線遮断部を駆動制御して、前記紫外線センサの紫外線の入射の遮断と許可とを所定周期で繰り返したときの、前記紫外線センサの火炎検出の有無を監視することで、当該紫外線センサに異常が発生しているか否かを判断することが好ましい。
【0012】
これにより、紫外線遮断部を閉状態として紫外線の入射を遮断した状態で紫外線センサが火炎を検出している場合に、紫外線センサに自己放電異常が発生していると判断することができる。また、紫外線センサの保護用の紫外線遮断部を利用して紫外線センサの異常監視ができるので、紫外線遮断部を別途設置することによるコストの増大を抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、紫外線遮断部によって、バーナ点火時の強い紫外線から紫外線センサを保護することができる。したがって、紫外線センサを含んで構成される火炎検出器の寿命を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態におけるバーナの要部断面図である。
図2】火炎監視装置および周辺機器のブロック図である。
図3】本実施形態の動作を示すタイムチャートである。
図4】点火プラグに生じる電圧と火花電流とを説明する図である。
図5】従来の動作を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態の火炎監視装置を適用するバーナの要部断面図である。
図中、符号1はパイロットバーナのバーナ本体であり、このバーナ本体1には、図示しない空気供給装置から空気が供給される空気供給口2と、図示しないガス供給装置からガスが供給されるガス供給口3とが設けられている。
【0016】
バーナ本体1に供給された空気とガスは、それぞれバーナ本体1の二重管を通り、保炎筒4内の炎口5に開いた孔から吐出して混合し、可燃性気体となる。ここで、空気供給口2とガス供給口3とは炉外に設けられており、保炎筒4は炉内面に設けられている。そのため、バーナ本体1の二重管は、炉の厚さに応じて700mm程度の長さを有する。また、保炎筒4は、燃焼量に応じて20mm程度の内径を有する。
【0017】
炎口5の近傍には点火プラグ6が設けられており、この点火プラグ6には、図示しない点火トランスから、高圧コードを経由して高電圧が供給される。高圧コードは、高圧コード接続口7に接続される。また、点火プラグ6は、可燃性気体の中に点火用火花(電気火花)を生じさせるよう、保炎筒4の外面から内部に突出している。
また、バーナ本体1には、火炎検出器10が設けられている。この火炎検出器10は、紫外線を検出する受光素子を含む紫外線センサ11と、紫外線センサ11への紫外線の入力を遮断可能な遮断装置(紫外線遮断部)12とを内蔵している。さらに、火炎検出器10は、この他に増幅回路(増幅基板)13と、遮断装置駆動コイル14とを内蔵している。増幅回路(増幅基板)13は、紫外線センサ11にパルス電圧を供給すると共に、紫外線センサ11が出力する紫外線信号を受信するものである。また、遮断装置駆動コイル14は、遮断装置12を駆動するためのものであり、後述する火炎監視装置からの指令を受けて遮断装置12の作動/非作動を制御する。
【0018】
この火炎検出器10は、炎口5を通して混合気に生成する火炎からの紫外線を検出するために、バーナ本体1の保炎筒4他端に設ける。そして、火炎検出器10は、この位置から火炎と点火用火花の両方の紫外線を受光する。
次に、火炎監視装置の構成について説明する。
図2は、火炎監視装置および周辺機器のブロック図である。
【0019】
火炎監視装置20は、火炎検出器10の増幅回路13に電源電圧を供給する。このとき、増幅回路13は紫外線センサ11にパルス電圧を供給し、紫外線センサ11は、そのパルス電圧に同期して、増幅回路13に対して紫外線を受光しているか否かを示す紫外線信号を出力する。
紫外線センサ11は、特定ガスを封入したガラス管内に陰極と陽極とを設けた構造を有し、この両極間に増幅回路13から供給されるパルス電圧が印加される。そして、このパルス電圧を印加した状態で紫外線が照射されると、両電極間で放電が生じるようになっている。紫外線センサ11は、このとき生じる放電電流を紫外線信号として出力する。
【0020】
すなわち、紫外線センサ11は、紫外線を受光している場合には、パルス電圧に同期した紫外線信号を増幅回路13に出力し、紫外線を受光していない場合には紫外線信号を増幅回路に与えないようになっている。
増幅回路13は、紫外線センサ11から入力したパルス状の電流である紫外線信号を、連続の電圧信号に変換し、これを火炎信号として火炎監視装置20に与える。これにより、火炎監視装置20は、火炎検出器10で火炎を検出しているか否か(バーナが燃焼しているか否か)を判断することができる。
【0021】
また、火炎監視装置20は、火炎検出器10の遮断装置駆動コイル14に駆動電圧を供給する。このとき遮断装置駆動コイル14で生じたトルク動力(軸動力)によって遮断装置12が開閉する。なお、遮断装置12が非作動となって紫外線センサ11への紫外線の入射を許可する状態を開状態、遮断装置12が作動して紫外線センサ11への紫外線の入射を遮断する状態を閉状態という。
【0022】
火炎監視装置20は、火炎検出器10の異常として、紫外線センサ11による紫外線の検出異常や、紫外線(火炎)が無くても放電する自己放電現象を検出するための異常監視機能を有する。この異常監視機能は、バーナの燃焼中に、所定の周期で遮断装置12を開閉させることにより実現する。すなわち、火炎監視装置20は、バーナの燃焼中に遮断装置12を開状態としたときに、火炎検出器10から火炎信号を受信しなかったり、バーナの燃焼中に遮断装置12を閉状態としたときに、火炎検出器10から火炎信号を受信したりした場合に、火炎検出器10に異常が発生していると判断する。
【0023】
なお、火炎検出器10と火炎監視装置20との間の信号のやり取りは、コネクタ15を介して行われる。
さらに、火炎監視装置20は、空気供給装置31及びガス供給装置32にそれぞれ駆動電圧を供給する電源回路を備えると共に、点火トランス33に交流の駆動電圧を供給する電源回路を備える。空気供給装置31及びガス供給装置32は、火炎監視装置20から駆動電圧が供給されることで、それぞれ空気、ガスをバーナ本体1に供給する。
【0024】
点火トランス33は、火炎監視装置20から駆動電圧が供給されると、交流周波数に同期した高電圧を発生する。点火トランス33で発生した高電圧は、点火プラグ6に供給する。このとき、点火トランス33から供給された高電圧によって点火プラグ6の先端から火花が生じ、炎口5を通って発生した可燃性混合気に点火する。
本実施形態では、火炎監視装置20は、点火トランス33が作動中であるときは、遮断装置12を閉状態とし(遮断制御部)、点火トランス33が作動停止したあとに、異常監視機能を作動状態とするものとする(異常監視部)。
【0025】
ここで、火炎監視装置20は、点火トランス33に駆動電圧を供給する電源回路を作動しているとき、点火トランス33が作動中であると判断するようにし、この電源回路を作動している間、遮断装置12を閉状態に制御するようにしてもよい。
また、火炎監視装置20は、点火トランス33を作動停止したあと、遮断装置12を開状態としたときに火炎検出器10が火炎を検出したら、異常監視機能を作動状態とするようにする。なお、点火トランス33を、作動開始から一定時間後にタイマにより作動停止するように構成し、それと同一のタイマにより異常監視機能を作動状態とすることもできる。
【0026】
このように、遮断装置12は、バーナの点火時には閉状態を維持し、バーナの燃焼中に、所定の周期で開閉駆動される。
以下、本実施形態の動作について、図3のタイムチャートを参照しながら具体的に説明する。
先ず、バーナの点火に先立ち、滞留燃料に引火しないよう、バーナ内に空気を供給してバーナとその近傍を空気で置換する。すなわち、火炎監視装置20は、時刻t1で、空気供給装置31に対して駆動電圧を供給して電磁弁を開き、バーナ本体1に空気を供給する。
【0027】
その後、バーナを燃焼させるために、火炎監視装置20は、点火装置(点火トランス33)に電源を供給するが、その前に、時刻t2で遮断装置駆動コイル14に駆動電圧を供給し、遮断装置12を閉状態とする。そして、時刻t3で、火炎監視装置20は、点火装置(点火トランス33)に電源を供給して点火プラグ6から火花を生じさせる。この点火装置の作動中は、遮断装置12は閉状態を維持する。
【0028】
次いで、火炎監視装置20は、時刻t4でガス供給装置32に対して駆動電圧を供給して電磁弁を開き、バーナ本体1に燃焼ガスを供給する。これにより、時刻t5でバーナが点火し、燃焼を開始する。
すると、火炎監視装置20は、時刻t7で点火トランス33の電源供給を停止する。ここで、点火トランス33の電源供給は一定時間のタイマを用いて停止するものとする。タイマの設定時間は、点火に要する時間をもとに決定する。例えば、点火に要する時間が、燃焼ガスを供給してから約2秒である場合、それよりも長い、例えば4秒のタイマを設けて点火トランス33の電源供給を停止する。
【0029】
点火トランス33の電源供給を停止して点火装置を非作動となると、火炎監視装置20は、時刻t8で遮断装置12を開状態に切り替える。
この時刻t8では、バーナは燃焼中であるため、火炎検出器10が正常に動作している場合、火炎検出器10は火炎監視装置20に対して火炎信号を出力する。時刻t8でこの火炎信号を受信すると、火炎監視装置20は火炎検出器10の異常監視を開始する(異常監視機能を作動状態とする)と判断する。
【0030】
そのため、火炎監視装置20は、時刻t9以降、所定の周期で遮断装置駆動コイル13に駆動電圧を供給し、遮断装置12を所定の周期で開閉する。これにより、火炎監視装置20は、火炎の有無と紫外線センサ11の異常発生の有無とを交互に確認することになる。
このように、本実施形態では、点火装置の作動中、遮断装置12を作動して(閉状態として)、火炎検出器10の紫外線センサ11への紫外線の入射を阻止する。したがって、バーナ点火時に発生するスパークにより発生する紫外線から、紫外線センサ11を保護することができる。
【0031】
一般に、火炎検出用の紫外線センサとしては、太陽光によって誤動作しないように、大気上層のオゾンによって吸収され、地表に達しない波長200nm付近のUV−Cバンドの紫外線を検出し、それよりも長波長の紫外線を検出しないものが用いられる。
また、UV−Cバンドは高いエネルギー準位を持つことから、熱発光ではなく炭化水素や水素の燃焼に伴う下式の電子励起状態から基底状態に遷移する時の発光が主となる。
【0032】
H+O → OH* → OH+hν ………(1)
そのため、一酸化炭素のように水素組成を含まない燃料を用いるバーナでは、当該波長の発光が弱く、紫外線センサも約100nW/m2以上で検出する高感度な物が必要となる。
しかしながら、電気火花によってバーナに点火する場合に必要なエネルギーは、気体燃料の種類によらず、ほぼ一定であり、そのエネルギーを得るためには、電極間距離を広くとって、放電初期に点火トランスからの容量成分による強い火花を生じさせる必要がある。
【0033】
図4は、点火プラグ6に生じる電圧と火花電流とを説明する図である。
図中、最上段は点火コイルの電気回路、Vは電圧波形、iは電流波形である。また、電圧V及び電流iの添え字1,2は、一次回路、二次回路を表している。
この図4に示すように、点火トランス二次側から高電圧が生じた直後は、5μs程度の間、容量火花が生じる。そして、その電子なだれによって空間に電離が生じるため、その後は低電圧の誘導火花が2ms程度継続する。この誘導火花は、火核に継続してエネルギーを供給するため、その両者を有する合成火花は、点火率が高くなる。
【0034】
このように、容量火花は高電圧であるため、電子速度が大きく、さまざまな化学種を励起することから、基底状態に戻るときに遠紫外から可視光に至る広いバンドの発光を伴う。そのうち、遠紫外は火炎検出器の接続口に設けた石英ガラスに吸収されて、紫外線センサに到達しない。また、UV−B以上の波長の紫外線は、紫外線センサの陰極金属板に光電子を生じさせないため、紫外線センサの寿命に有害ではない。これに対して、火炎検出器の紫外線センサに達するUV−Cバンドの紫外線は、前述の火炎からの紫外線よりもはるかに強く、10mW/m2程度のセンサ許容強度を上回るものとなる。
【0035】
また、バーナ点火のために電気火花を生じさせる箇所は、燃料と空気とが適度に混合し、火炎の形成される位置である必要があり、その箇所は火炎検出のためにも適していることから、特に口径の小さいパイロットバーナなどでは、火炎検出用の光軸上から点火用電気火花を回避することが困難である。
近年、火炎検出器の紫外線センサが自己放電故障を生じているか否かを燃焼中の火炎からの紫外線を、紫外線センサの光軸上で遮断することによって確認する方法が用いられているが、その紫外線を遮断する遮断装置の使用はバーナの燃焼中に限られ、点火の時に使用するには至っていない。
【0036】
本実施形態は、遮断装置12を点火装置が作動中にも動作させることで、上記のセンサ許容強度を上回ることを防止し、紫外線センサ11の寿命を延ばす効果が得られる。なお、遮断装置12は、上述した理由により、少なくともUV−Cバンドの紫外線を遮断する金属板により製作する必要がある。
ところで、点火装置の作動中に遮断装置12を閉状態とするセンサ保護を行わない場合、その動作は以下のようになる。
【0037】
図5は、時刻t11で空気供給装置の電磁弁を開いた後、時刻t13で点火装置(点火トランス)に電源を供給すると同時に、遮断装置の開閉駆動を開始した場合のタイムチャートである。
この場合、時刻t13で点火装置に電源を供給してから、時刻t17で点火装置を非作動とするまでの間、点火プラグ6から火花が生じる。そのため、火炎検出器の紫外線センサは、遮断装置が開状態となっている時刻t14〜t15と時刻t16〜t17とにおいて紫外線を受光し、火炎検出器は火炎信号を出力する。しかしながら、これらの時刻で発生する紫外線は、上述したように非常に強い紫外線であり、火炎検出用の高感度な紫外線センサにとっては大きなダメージを与え得るものである。
【0038】
これに対して、本実施形態では、点火装置が作動中であるときには、遮断装置12を作動して火炎検出器10の紫外線センサ11への紫外線の入射を遮断する。したがって、バーナ点火時の強い紫外線から紫外線センサ11を保護し、火炎検出器10の寿命を延ばすことができる。
また、火炎検出器10の異常を監視するために設置している遮断装置を利用して、紫外線センサ11の保護機能を実現するので、新たに保護用の遮断装置を設ける必要が無く、その分のコストを削減することができる。また、既存の火炎監視装置に、当該保護機能を追加する場合にも、駆動装置の簡単な改造で済む。
【0039】
さらに、点火装置を作動停止した後で火炎検出器10の異常監視機能を作動するので、バーナ燃焼中に紫外線センサ11の異常を監視することができる。したがって、火炎検出器10の信頼性を向上させることができる。
また、点火装置を非作動とした後、遮断装置12を閉状態としたとき、紫外線センサ11が火炎を検出したら異常監視機能を作動するので、バーナが燃焼中であることを確認してから紫外線センサ11の異常監視機能を作動させることができる。さらに、火炎検出器10の異常監視に際し、所定の周期で遮断装置12を開閉駆動するので、バーナ燃焼中は、紫外線センサ11による火炎の有無と紫外線センサの異常発生の有無(自己放電発生の有無)とを交互に確認することができる。
【0040】
また、電源側の判断に基づいて点火装置が作動中であるか否かを判断し、遮断装置12を閉状態に制御するようにすれば、高電圧の点火装置側で作動を検出する必要が無くなる。さらに、遮断装置駆動コイル14に駆動電圧を供給する駆動装置と、点火装置(点火トランス33)に駆動電圧を供給する駆動装置とを同期させるだけで所望の動作が得られる。
【0041】
また、点火トランス33を、作動開始から一定時間後にタイマにより作動停止するように構成し、それと同一のタイマにより異常監視機能を作動状態とするようにすれば、バーナの点火を制御している火炎監視装置20から異常監視機能を動作させることができる。そのため、専用のフレームリレーを用いる必要が無くなる。
以上のように、火炎検出器10の異常監視機能と火炎検出器10の保護機能とを備える火炎監視装置とすることができる。
【符号の説明】
【0042】
1…バーナ本体、2…空気供給口、3…ガス供給口、4…保炎筒、5…炎口、6…点火プラグ、7…高圧コード接続口、10…火炎検出器、11…紫外線センサ、12…遮断装置(紫外線遮断部)、13…増幅基板、14…遮断装置駆動コイル、15…コネクタ、20…火炎監視装置、33…点火トランス(バーナ点火部)
図1
図2
図3
図4
図5