特許第6036651号(P6036651)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ車体株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6036651-組付用回転治具 図000002
  • 特許6036651-組付用回転治具 図000003
  • 特許6036651-組付用回転治具 図000004
  • 特許6036651-組付用回転治具 図000005
  • 特許6036651-組付用回転治具 図000006
  • 特許6036651-組付用回転治具 図000007
  • 特許6036651-組付用回転治具 図000008
  • 特許6036651-組付用回転治具 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6036651
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】組付用回転治具
(51)【国際特許分類】
   B23P 21/00 20060101AFI20161121BHJP
   B23P 19/00 20060101ALI20161121BHJP
   B62D 65/10 20060101ALN20161121BHJP
【FI】
   B23P21/00 303C
   B23P19/00 304K
   !B62D65/10 B
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-231937(P2013-231937)
(22)【出願日】2013年11月8日
(65)【公開番号】特開2015-93327(P2015-93327A)
(43)【公開日】2015年5月18日
【審査請求日】2016年1月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鷲津 新佑
【審査官】 大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−062250(JP,U)
【文献】 特開2012−030328(JP,A)
【文献】 特開昭56−063202(JP,A)
【文献】 特開2003−145438(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23P 21/00
B23P 19/00
B62D 65/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部品に内蔵された第1回転体と、第2部品に内蔵された第2回転体とを、回転中心を合わせて、径方向の同じ位置において所定角度の間隔で周方向に並ぶ複数の締結部位によって組み付ける際に用いる組付用回転治具であって、
架台に配設される治具本体部と、
該治具本体部に回転可能に設けられ、上記第1回転体に回転中心を合わせて係合される回転軸部と、
上記治具本体部に設けられ、上記回転軸部の正方向への回転を許容する一方、上記回転軸部の逆方向への回転を阻止する回転規制部と、
上記所定角度の間隔で上記回転軸部の外周に設けられ、作業者が回転操作するための複数のハンドル部と、を備え、
上記回転規制部によって上記回転軸部の逆方向への回転が阻止された状態で、上記ハンドル部を回転操作して上記回転軸部を正方向に回転させ、上記第1回転体及び上記第2回転体における上記複数の締結部位を、上記第1部品又は上記第2部品に形成された締付窓に逐次合わせるよう構成されていることを特徴とする組付用回転治具。
【請求項2】
上記回転軸部は、その回転中心位置に、上記第1回転体の軸方向端部の回転中心に設けられた組付ボルト又は組付ナットに係合する多角形溝を先端に有しており、
上記回転規制部は、上記回転軸部に連結され周方向に複数の被掛止歯が設けられた回転盤と、上記治具本体部に設けられ、上記複数の被掛止歯のうちのいずれかの被掛止歯に係合して上記回転盤の正方向への回転量を逐次規制する一方、上記いずれかの被掛止歯に係合している状態で上記回転盤を逆方向に回転させようとすると該いずれかの被掛止歯を掛止して上記回転盤の逆方向への回転を阻止する掛止爪と、上記被掛止歯への上記掛止爪の係合状態を保持するためのバネとを有するラチェット機構を備えていることを特徴とする請求項1に記載の組付用回転治具。
【請求項3】
上記第1回転体は、一端にドライブプレートを有するとともに他端にクランクプーリを有する、エンジンのクランクシャフトであり、
上記第2回転体は、上記ドライブプレートに組み付けられる、トルクコンバータの連結プレートであり、
上記回転軸部は、その上記多角形溝を上記クランクプーリの軸方向端部の回転中心に設けられた組付ボルト又は組付ナットに係合させるよう構成されていることを特徴とする請求項2に記載の組付用回転治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1部品に内蔵された第1回転体と第2部品に内蔵された第2回転体とを組み付ける際に用いる組付用回転治具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、エンジンとトルクコンバータを組み付ける部分等においては、エンジンに内蔵された回転体であるドライブプレートと、トルクコンバータに内蔵された回転体であるコンバータプレートとを、ボルト等の締結具によって組み付けている。この組付においては、エンジンのシリンダケース等に設けられた締付窓から、ドライブプレートとコンバータプレートとを覗き込み、ドライブプレートにおける締結部位とコンバータプレートにおける締結部位とを合わせる。そして、締付窓からボックスレンチ等の先端部を挿入して、各締結部位の締結具の締付を行っている。なお、ドライブプレートの締結部位とコンバータプレートの締結部位との位置合わせは、作業者が治具を何ら用いずに手動によって行う場合、モータ等を用いた電動によって行う場合等がある。
【0003】
また、エンジンのサービスホールに、ドライブプレートの締結部位と接続プレートの締結部位とを電気的な制御によって合わせる装置としては、例えば、特許文献1に開示されたドライブプレート回転装置がある。このドライブプレート回転装置においては、エンジンのクランクシャフトの一端部に減速機の出力軸を連結し、回転駆動装置の駆動軸を所定の角度で回転させて、クランクシャフトの他端部におけるドライブプレートを所定の角度で回転させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−30328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、作業者が、治具を用いずに締付窓に挿入したボックスレンチ等を用いて、手動によって締結部位の締結具の締付を行う場合には、締付を行う際にドライブプレート及びコンバータプレートが回転してしまわないようにする必要がある。この場合には、作業者自身が、ドライブプレート及びコンバータプレートを受け止める必要があり、作業性が悪い。また、特許文献1を含め、モータ等を用いた電動によってドライブプレートの締結部位とコンバータプレートの締結部位との位置合わせを行う場合には、装置の構造が大掛かりになってしまう。
【0006】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたもので、モータ等の電気制御を行う装置を用いることなく、第1回転体及び第2回転体における各締結部位を締付窓に合わせる作業、及び各締結部位の締結作業を容易にすることができる組付用回転治具を提供しようとして得られたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、第1部品に内蔵された第1回転体と、第2部品に内蔵された第2回転体とを、回転中心を合わせて、径方向の同じ位置において所定角度の間隔で周方向に並ぶ複数の締結部位によって組み付ける際に用いる組付用回転治具であって、
架台に配設される治具本体部と、
該治具本体部に回転可能に設けられ、上記第1回転体に回転中心を合わせて係合される回転軸部と、
上記治具本体部に設けられ、上記回転軸部の正方向への回転を許容する一方、上記回転軸部の逆方向への回転を阻止する回転規制部と、
上記所定角度の間隔で上記回転軸部の外周に設けられ、作業者が回転操作するための複数のハンドル部と、を備え、
上記回転規制部によって上記回転軸部の逆方向への回転が阻止された状態で、上記ハンドル部を回転操作して上記回転軸部を正方向に回転させ、上記第1回転体及び上記第2回転体における上記複数の締結部位を、上記第1部品又は上記第2部品に形成された締付窓に逐次合わせるよう構成されていることを特徴とする組付用回転治具にある。
【発明の効果】
【0008】
上記組付用回転治具は、第1部品に内蔵された第1回転体と、第2部品に内蔵された第2回転体とを、回転中心を合わせて組み付けるために用いる。組付用回転治具は、架台に配設される治具本体部に、回転軸部の正方向への回転を許容する一方、回転軸部の逆方向への回転を阻止する回転規制部を設けて構成されている。また、治具本体部に回転可能に設けられた回転軸部の外周には、作業者が回転操作するための複数のハンドル部が所定角度の間隔で設けられている。
【0009】
組付用回転治具を用いて第1回転体と第2回転体との組付を行うに当たっては、作業者は、第1部品又は第2部品に形成された締付窓に、第1回転体及び第2回転体における複数の締結部位のうちのいずれかの締結部位を合わせる。次いで、作業者は、締付窓を介して、第1回転体及び第2回転体におけるいずれかの締結部位の締結を行う。このとき、締結部位の締結を行う際に、作業者による締結の力を受けて第1回転体及び第2回転体が回転しようとする力を、回転規制部が回転軸部の逆方向への回転を阻止する力によって受けることができる。これにより、作業者による締結部位の締結作業を容易にすることができる。
【0010】
次いで、いずれかの締結部位の締結が行われた後は、回転規制部によって回転軸部の逆方向への回転が阻止された状態で、ハンドル部によって回転軸部を正方向へ所定角度回転操作することにより、残りの複数の締結部位を締付窓に逐次合わせることができる。そして、作業者は、締付窓を介して、各締結部位の締結を行うことができる。
【0011】
また、複数のハンドル部は、第1回転体及び第2回転体の複数の締結部位が周方向に並ぶ所定角度と同じ角度で、回転軸部の外周に設けられている。そのため、作業者は、ハンドル部を目視し、いずれかのハンドル部があった回転位置に、このハンドル部に隣接するハンドル部が来るように、ハンドル部によって回転軸部を正方向に回転操作することにより、残りの締結部位を締付窓に逐次合わせることができる。
【0012】
また、上記組付用回転治具は、極めて簡単な機械的構成によって実現することができ、モータ等の電気制御を行わずに、作業者による締結部位の締結作業を容易にすることができる。
それ故、上記組付用回転治具によれば、モータ等の電気制御を行う装置を用いることなく、第1回転体及び第2回転体における各締結部位を締付窓に合わせる作業、及び各締結部位の締結作業を容易にすることができる。
【0013】
なお、治具本体部が配設される架台は、第1部品が載置される架台であってもよく、第1部品が載置される架台とは別に設けられた架台であってもよい。また、治具本体部が配設される架台は、第1部品及び第2部品が載置される架台であってもよく、さらに、第2部品が載置される架台であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例にかかる、エンジン及びトルクコンバータが載置された架台に配設された組付用回転治具を、側方から見た状態で示す説明図。
図2】実施例にかかる、締付窓が形成されたエンジンをクランクシャフトの軸方向から見た状態で示す説明図。
図3】実施例にかかる、クランクプーリの組付ボルトに、回転軸部における六角溝を係合させた組付用回転治具を、側方から見た状態で示す説明図。
図4】実施例にかかる、組付用回転治具を、クランクシャフトの軸方向から見た状態で示す説明図。
図5】実施例にかかる、組付用回転治具における回転軸部及びハンドル部を示す斜視図。
図6】実施例にかかる、組付用回転治具のラチェット機構を、クランクシャフトの軸方向から見た状態で示す説明図。
図7】実施例にかかる、エンジンにおけるドライブプレートとトルクコンバータにおける連結プレートとが対向する状態を、側方から見た状態で示す説明図。
図8】実施例にかかる、ドライブプレートと連結プレートとを締結する状態を、側方から見た状態で示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
上述した組付用回転治具における好ましい実施の形態につき説明する。
上記組付用回転治具においては、上記回転軸部は、その回転中心位置に、上記第1回転体の軸方向端部の回転中心に設けられた組付ボルト又は組付ナットに係合する多角形溝を先端に有しており、上記回転規制部は、上記回転軸部に連結され周方向に複数の被掛止歯が設けられた回転盤と、上記治具本体部に設けられ、上記複数の被掛止歯のうちのいずれかの被掛止歯に係合して上記回転盤の正方向への回転量を逐次規制する一方、上記いずれかの被掛止歯に係合している状態で上記回転盤を逆方向に回転させようとすると該いずれかの被掛止歯を掛止して上記回転盤の逆方向への回転を阻止する掛止爪と、上記被掛止歯への上記掛止爪の係合状態を保持するためのバネとを有するラチェット機構を備えていてもよい。
【0016】
この場合には、ボックスレンチ等に用いられるラチェット機構を、組付用回転治具の回転規制部に応用することができる。そして、回転軸部の先端における多角形溝を、第1回転体又は第2回転体の軸方向端部の回転中心に設けられた組付ボルト又は組付ナットに係合させ、ハンドル部を正方向に回転操作して、複数の締結部位を締付窓に逐次合わせることができる。
【0017】
また、上記第1回転体は、一端にドライブプレートを有するとともに他端にクランクプーリを有する、エンジンのクランクシャフトであり、上記第2回転体は、上記ドライブプレートに組み付けられる、トルクコンバータの連結プレートであり、上記回転軸部は、その上記多角形溝を上記クランクプーリの軸方向端部の回転中心に設けられた組付ボルト又は組付ナットに係合させるよう構成されていてもよい。
この場合には、クランクシャフトのドライブプレートとトルクコンバータの連結プレートとの組付を、組付用回転治具の簡単な構成によって容易に行うことができる。
【実施例】
【0018】
以下に、組付用回転治具にかかる実施例につき、図面を参照して説明する。
本例の組付用回転治具1は、図1に示すごとく、第1部品としてのエンジン7に内蔵された第1回転体としてのクランクシャフト72のドライブプレート73と、第2部品としてのトルクコンバータ8に内蔵された第2回転体としての連結プレート82とを、回転中心Oを合わせて、図2に示すごとく、径方向Rの同じ位置において、所定角度θの間隔としての60°の間隔で周方向Cに並ぶ複数の締結部位Aによって組み付ける際に用いる。
【0019】
組付用回転治具1は、図3図4に示すごとく、エンジン7及びトルクコンバータ8が載置される架台6に配設される治具本体部2と、治具本体部2に回転可能に設けられ、クランクシャフト72に回転中心Oを合わせて係合される回転軸部3と、治具本体部2に設けられ、回転軸部3の正方向C1への回転量を逐次規制する一方、回転軸部3の逆方向C2への回転を阻止する回転規制部としてのラチェット機構4と、所定角度θの間隔で回転軸部3の外周に設けられ、作業者が回転操作するための複数のハンドル部5とを備えている。組付用回転治具1は、ラチェット機構4によって回転軸部3の逆方向C2への回転が阻止された状態で、ハンドル部5を回転操作して回転軸部3を正方向C1に回転させることにより、ドライブプレート73及び連結プレート82における複数の締結部位Aを、エンジン7に形成された締付窓711に逐次合わせるよう構成されている。
【0020】
以下に、本例の組付用回転治具1につき、図1図8を参照して詳説する。
図1図7に示すごとく、組付用回転治具1は、エンジン7とトルクコンバータ8との組付を行う際に用いられる。エンジン7及びトルクコンバータ8は、ドライブプレート73と連結プレート82とが対面する状態で、架台6上に横方向に並んで配置される。エンジン7及びトルクコンバータ8はトレーに載置して運搬することができ、架台6上には、エンジン7及びトルクコンバータ8が載置されたトレーを載置することができる。締付窓711は、エンジン7のシリンダケース71の下方位置において、トルクコンバータ8のケース81に対面する端部に形成されている。
【0021】
図2に示すごとく、ドライブプレート73と連結プレート82とには、60°の間隔で6箇所に締結部位Aが設けられている。ドライブプレート73における締結部位Aには、ボルト62を挿通する挿通穴731が形成されており、連結プレート82における締結部位Aには、ボルト62を螺合するネジ穴821が形成されている。図8に示すごとく、締付窓711は、ボルト62を締め付けるボックスレンチ61のソケット部611を挿入できる大きさに形成されている。
【0022】
図1に示すごとく、エンジン7のクランクシャフト72は、一端にドライブプレート73を有するとともに他端にクランクプーリ74を有している。クランクシャフト72には、複数のピストンが連結されている。トルクコンバータ8は、ドライブプレート73に組み付けられる連結プレート82を有している。トルクコンバータ8における連結プレート82は、トルクコンバータ8が架台6に配置されるときには、いずれかの締結部位Aが下方に位置する状態にある。そして、連結プレート82におけるいずれかの締結部位Aは、エンジン7のシリンダケース71の下方位置に形成された締付窓711に対向する。
【0023】
図3に示すごとく、クランクプーリ74の軸方向外側の端部の回転中心Oには、クランクプーリ74をクランクシャフト72に固定するための組付ボルト75が設けられている。組付ボルト75は、六角ボルトによって構成されている。組付用回転治具1の回転軸部3は、その回転中心Oの位置に、クランクプーリ74の回転中心Oに設けられた組付ボルト75の頭部に係合する六角溝31を先端に有している。
【0024】
図4に示すごとく、各ハンドル部5は、回転軸部3から径方向Rに伸びる棒によって形成されており、回転軸部3の外周には、所定角度θの間隔としての60°の間隔でハンドル部5が6つ設けられている。6つのハンドル部5は、周方向Cに伸びる補強部51によって連結されて補強されている。組付用回転治具1の治具本体部2は、架台6に固定される固定ベース21と、固定ベース21に起立する状態で取り付けられたラチェット機構付レンチ22によって構成されている。本例のラチェット機構4は、ラチェット機構付レンチ22のラチェット機構によって構成されている。
【0025】
ラチェット機構付レンチ22は、固定ベース21に対して着脱可能である。そして、ラチェット機構付レンチ22は、ドライブプレート73と連結プレート82との組付を行うときに、固定ベース21に装着して使用することができる。ラチェット機構付レンチ22は、ストッパー211によって固定ベース21に固定される。
また、図5に示すごとく、回転軸部3は、ラチェット機構付レンチ22のソケット部によって構成されており、複数のハンドル部5は、ソケット部の外周に設けられている。回転軸部3及びハンドル部5は、ラチェット機構付レンチ22の本体部に対して着脱可能である。同図には、回転軸部3及びハンドル部5を、ラチェット機構付レンチ22の本体部から取り外した状態を示す。同図においては、補強部51を省略して示す。
【0026】
図6に示すごとく、ラチェット機構4は、回転軸部3に連結され周方向Cに複数の被掛止歯411が設けられた回転盤41と、治具本体部2に設けられ各被掛止歯411に逐次係合する掛止爪42と、各被掛止歯411への掛止爪42の係合状態を保持するためのバネ43とを有している。掛止爪42は、被掛止歯411に係合する係合位置と、被掛止歯411から退避する退避位置とに、操作つまみ421を操作して切換可能である。掛止爪42は、係合位置に移動させたときに、複数の被掛止歯411のうちのいずれかの被掛止歯411に係合して回転盤41の正方向C1への回転量を逐次規制する一方、いずれかの被掛止歯411に係合している状態で回転盤41を逆方向C2に回転させようとするといずれかの被掛止歯411を掛止して回転盤41の逆方向C2への回転を阻止するよう構成されている。掛止爪42は係合位置と退避位置とに回動可能であり、バネ43は、掛止爪42の回動を規制して、掛止爪42を被掛止歯411に押し当てる方向に付勢するよう構成されている。
【0027】
次に、本例の組付用回転治具1を用いて、エンジン7のクランクシャフト72におけるドライブプレート73と、トルクコンバータ8の連結プレート82との組付を行う順序、及び本例の作用効果につき説明する。
まず、作業者は、ラチェット機構付レンチ22の本体部に対して、ラチェット機構付レンチ2のソケット部としての回転軸部3と、ハンドル部5とを取り付ける。
【0028】
また、図3に示すごとく、作業者は、エンジン7及びトルクコンバータ8が載置された架台6において、クランクシャフト72におけるクランクプーリ74の軸方向端部の回転中心Oに設けられた組付ボルト75の頭部に、ラチェット機構付レンチ22の回転軸部3の先端における六角溝31を係合させる。そして、ラチェット機構付レンチ22の本体部を、架台6に固定された固定ベース21に装着し、ストッパー211によって固定ベース21に固定する。
このとき、組付ボルト75の頭部に六角溝31を係合させるときに、締付窓711にいずれかの挿通穴731が合った状態のクランクシャフト72におけるクランクプーリ74の組付ボルト75の頭部の回転位置と、回転軸部3の先端における六角溝31の回転位置とが合わないときには、組付ボルト75、回転軸部3、ラチェット機構4等の調整を行って、これらの回転位置を合わせることができる。
【0029】
次いで、図7に示すごとく、作業者は、エンジン7のシリンダケース71に形成された締付窓711に、連結プレート82のいずれかのネジ穴821の回転位置と、ドライブプレート73のいずれかの挿通穴731の回転位置とを合わせる。次いで、作業者は、図8に示すごとく、1箇所目の締結部位Aにおいて、ドライブプレート73の挿通穴731に締付窓711を介してボルト62を挿入し、締付窓711に挿入したボックスレンチ61のソケット部611における係合溝612を、1箇所目のボルト62の頭部に係合させる。そして、作業者は、ボックスレンチ61のソケット部611を回転させることにより、1箇所目のボルト62をネジ穴821に締め付ける。これにより、ドライブプレート73と連結プレート82とが1箇所目のボルト62によって締結される。
【0030】
そして、1箇所目の締結部位Aにおけるボルト62の締付が行われた後は、ラチェット機構4における回転盤41の被掛止歯411が掛止爪42に係合する。そして、回転軸部3の正方向C1への回転量が逐次規制され、かつ回転軸部3の逆方向C2への回転が阻止される状態で、ハンドル部5によって回転軸部3を所定角度θだけ正方向C1へ回転操作する。これにより、図4に示すごとく、ハンドル部5の回転操作によって、ドライブプレート73の残りの挿通穴731の回転位置及び連結プレート82の残りのネジ穴821の回転位置を、締付窓711に逐次合わせることができる。
【0031】
そして、作業者は、図8に示すごとく、締付窓711に挿入したボックスレンチ61のソケット部611における係合溝612を、2箇所目以降の締結部位Aにおけるボルト62の頭部に係合させ、ボックスレンチ61のソケット部611を回転させて、2箇所目以降のボルト62をネジ穴821に締め付ける。
このとき、2箇所目以降の締結部位Aにおけるボルト62の締付を行う際に、作業者による締結の力を受けてドライブプレート73及び連結プレート82が回転しようとする力を、ラチェット機構4によって受けることができる。具体的には、ラチェット機構4における回転盤41の被掛止歯411が掛止爪42によって掛止されることにより、上記ドライブプレート73及び連結プレート82が回転しようとする力を受けることができる。これにより、作業者による2箇所目以降の締結部位Aにおけるボルト62の締付作業を容易にすることができる。
【0032】
また、図4に示すごとく、複数のハンドル部5は、ドライブプレート73及び連結プレート82の複数の締結部位Aが周方向Cに並ぶ所定角度θと同じ角度で、回転軸部3の外周に設けられている。そのため、作業者は、ハンドル部5を目視し、いずれかのハンドル部5があった回転位置に、このハンドル部5に隣接するハンドル部5が来るように、ハンドル部5及び回転軸部3を正方向C1に回転操作することにより、2箇所目以降のボルト62を締め付ける締結部位Aの回転位置を、締付窓711に逐次合わせることができる。また、作業者は、締付窓711を目視することなく、ハンドル部5を目視することによって、2箇所目以降のボルト62を締め付ける締結部位Aの回転位置を、締付窓711に逐次合わせることができる。
そして、回転軸部3を正方向C1に回転させるときには、回転盤41の被掛止歯411が掛止爪42によって掛止されることにより、ハンドル部5を逆方向C2に回転させることができなくなる。これにより、挿通穴731及びネジ穴821の締結部位Aを、締付窓711に容易に合わせることができる。
【0033】
また、ハンドル部5によって回転軸部3を正方向C1に回転させるときには、クランクシャフト72及びドライブプレート73に生じる反力を、ラチェット機構4によって受けることもできる。より具体的には、この反力は、ラチェット機構4における回転盤41の被掛止歯411が掛止爪42によって掛止されて、回転軸部3が逆方向C2に回転しないことによって受けることができる。そのため、作業者による、締付窓711への各締結部位Aの位置合わせを良好にすることができる。
なお、全ての締結部位Aにおけるボルト62の締付が終わった後には、作業者は、固定ベース21からストッパー211を取り外して、クランクプーリ74及び固定ベース21からラチェット機構付レンチ22を取り外す。
【0034】
また、組付用回転治具1は、極めて簡単な機械的構成によって実現することができ、モータ等の駆動源を用いずに、作業者による締結部位Aの締結作業を容易にすることができる。そして、モータ等の駆動源を用いずに手作業用の組付用治具1を構成することができ、装置の小型化を図ることができる。
それ故、本例の組付用回転治具1によれば、モータ等の電気制御を行う装置を用いることなく、ドライブプレート73及び連結プレート82の各締結部位Aを締付窓711に逐次合わせる作業、及び各締結部位Aの締結作業を容易にすることができる。
なお、治具本体部2が配設される架台6は、エンジン7が配設される架台であってもよく、エンジン7が配設される架台とは別に設けた架台であってもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 組付用回転治具
2 治具本体部
3 回転軸部
4 ラチェット機構(回転規制部)
41 回転盤
411 被掛止歯
42 掛止爪
5 ハンドル部
6 架台
7 エンジン(第1部品)
711 締付窓
72 クランクシャフト(第1回転体)
73 ドライブプレート
74 クランクプーリ
75 組付ボルト
8 トルクコンバータ(第2部品)
82 連結プレート(第2回転体)
A 締結部位
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8