【実施例】
【0018】
以下に、組付用回転治具にかかる実施例につき、図面を参照して説明する。
本例の組付用回転治具1は、
図1に示すごとく、第1部品としてのエンジン7に内蔵された第1回転体としてのクランクシャフト72のドライブプレート73と、第2部品としてのトルクコンバータ8に内蔵された第2回転体としての連結プレート82とを、回転中心Oを合わせて、
図2に示すごとく、径方向Rの同じ位置において、所定角度θの間隔としての60°の間隔で周方向Cに並ぶ複数の締結部位Aによって組み付ける際に用いる。
【0019】
組付用回転治具1は、
図3、
図4に示すごとく、エンジン7及びトルクコンバータ8が載置される架台6に配設される治具本体部2と、治具本体部2に回転可能に設けられ、クランクシャフト72に回転中心Oを合わせて係合される回転軸部3と、治具本体部2に設けられ、回転軸部3の正方向C1への回転量を逐次規制する一方、回転軸部3の逆方向C2への回転を阻止する回転規制部としてのラチェット機構4と、所定角度θの間隔で回転軸部3の外周に設けられ、作業者が回転操作するための複数のハンドル部5とを備えている。組付用回転治具1は、ラチェット機構4によって回転軸部3の逆方向C2への回転が阻止された状態で、ハンドル部5を回転操作して回転軸部3を正方向C1に回転させることにより、ドライブプレート73及び連結プレート82における複数の締結部位Aを、エンジン7に形成された締付窓711に逐次合わせるよう構成されている。
【0020】
以下に、本例の組付用回転治具1につき、
図1〜
図8を参照して詳説する。
図1、
図7に示すごとく、組付用回転治具1は、エンジン7とトルクコンバータ8との組付を行う際に用いられる。エンジン7及びトルクコンバータ8は、ドライブプレート73と連結プレート82とが対面する状態で、架台6上に横方向に並んで配置される。エンジン7及びトルクコンバータ8はトレーに載置して運搬することができ、架台6上には、エンジン7及びトルクコンバータ8が載置されたトレーを載置することができる。締付窓711は、エンジン7のシリンダケース71の下方位置において、トルクコンバータ8のケース81に対面する端部に形成されている。
【0021】
図2に示すごとく、ドライブプレート73と連結プレート82とには、60°の間隔で6箇所に締結部位Aが設けられている。ドライブプレート73における締結部位Aには、ボルト62を挿通する挿通穴731が形成されており、連結プレート82における締結部位Aには、ボルト62を螺合するネジ穴821が形成されている。
図8に示すごとく、締付窓711は、ボルト62を締め付けるボックスレンチ61のソケット部611を挿入できる大きさに形成されている。
【0022】
図1に示すごとく、エンジン7のクランクシャフト72は、一端にドライブプレート73を有するとともに他端にクランクプーリ74を有している。クランクシャフト72には、複数のピストンが連結されている。トルクコンバータ8は、ドライブプレート73に組み付けられる連結プレート82を有している。トルクコンバータ8における連結プレート82は、トルクコンバータ8が架台6に配置されるときには、いずれかの締結部位Aが下方に位置する状態にある。そして、連結プレート82におけるいずれかの締結部位Aは、エンジン7のシリンダケース71の下方位置に形成された締付窓711に対向する。
【0023】
図3に示すごとく、クランクプーリ74の軸方向外側の端部の回転中心Oには、クランクプーリ74をクランクシャフト72に固定するための組付ボルト75が設けられている。組付ボルト75は、六角ボルトによって構成されている。組付用回転治具1の回転軸部3は、その回転中心Oの位置に、クランクプーリ74の回転中心Oに設けられた組付ボルト75の頭部に係合する六角溝31を先端に有している。
【0024】
図4に示すごとく、各ハンドル部5は、回転軸部3から径方向Rに伸びる棒によって形成されており、回転軸部3の外周には、所定角度θの間隔としての60°の間隔でハンドル部5が6つ設けられている。6つのハンドル部5は、周方向Cに伸びる補強部51によって連結されて補強されている。組付用回転治具1の治具本体部2は、架台6に固定される固定ベース21と、固定ベース21に起立する状態で取り付けられたラチェット機構付レンチ22によって構成されている。本例のラチェット機構4は、ラチェット機構付レンチ22のラチェット機構によって構成されている。
【0025】
ラチェット機構付レンチ22は、固定ベース21に対して着脱可能である。そして、ラチェット機構付レンチ22は、ドライブプレート73と連結プレート82との組付を行うときに、固定ベース21に装着して使用することができる。ラチェット機構付レンチ22は、ストッパー211によって固定ベース21に固定される。
また、
図5に示すごとく、回転軸部3は、ラチェット機構付レンチ22のソケット部によって構成されており、複数のハンドル部5は、ソケット部の外周に設けられている。回転軸部3及びハンドル部5は、ラチェット機構付レンチ22の本体部に対して着脱可能である。同図には、回転軸部3及びハンドル部5を、ラチェット機構付レンチ22の本体部から取り外した状態を示す。同図においては、補強部51を省略して示す。
【0026】
図6に示すごとく、ラチェット機構4は、回転軸部3に連結され周方向Cに複数の被掛止歯411が設けられた回転盤41と、治具本体部2に設けられ各被掛止歯411に逐次係合する掛止爪42と、各被掛止歯411への掛止爪42の係合状態を保持するためのバネ43とを有している。掛止爪42は、被掛止歯411に係合する係合位置と、被掛止歯411から退避する退避位置とに、操作つまみ421を操作して切換可能である。掛止爪42は、係合位置に移動させたときに、複数の被掛止歯411のうちのいずれかの被掛止歯411に係合して回転盤41の正方向C1への回転量を逐次規制する一方、いずれかの被掛止歯411に係合している状態で回転盤41を逆方向C2に回転させようとするといずれかの被掛止歯411を掛止して回転盤41の逆方向C2への回転を阻止するよう構成されている。掛止爪42は係合位置と退避位置とに回動可能であり、バネ43は、掛止爪42の回動を規制して、掛止爪42を被掛止歯411に押し当てる方向に付勢するよう構成されている。
【0027】
次に、本例の組付用回転治具1を用いて、エンジン7のクランクシャフト72におけるドライブプレート73と、トルクコンバータ8の連結プレート82との組付を行う順序、及び本例の作用効果につき説明する。
まず、作業者は、ラチェット機構付レンチ22の本体部に対して、ラチェット機構付レンチ2のソケット部としての回転軸部3と、ハンドル部5とを取り付ける。
【0028】
また、
図3に示すごとく、作業者は、エンジン7及びトルクコンバータ8が載置された架台6において、クランクシャフト72におけるクランクプーリ74の軸方向端部の回転中心Oに設けられた組付ボルト75の頭部に、ラチェット機構付レンチ22の回転軸部3の先端における六角溝31を係合させる。そして、ラチェット機構付レンチ22の本体部を、架台6に固定された固定ベース21に装着し、ストッパー211によって固定ベース21に固定する。
このとき、組付ボルト75の頭部に六角溝31を係合させるときに、締付窓711にいずれかの挿通穴731が合った状態のクランクシャフト72におけるクランクプーリ74の組付ボルト75の頭部の回転位置と、回転軸部3の先端における六角溝31の回転位置とが合わないときには、組付ボルト75、回転軸部3、ラチェット機構4等の調整を行って、これらの回転位置を合わせることができる。
【0029】
次いで、
図7に示すごとく、作業者は、エンジン7のシリンダケース71に形成された締付窓711に、連結プレート82のいずれかのネジ穴821の回転位置と、ドライブプレート73のいずれかの挿通穴731の回転位置とを合わせる。次いで、作業者は、
図8に示すごとく、1箇所目の締結部位Aにおいて、ドライブプレート73の挿通穴731に締付窓711を介してボルト62を挿入し、締付窓711に挿入したボックスレンチ61のソケット部611における係合溝612を、1箇所目のボルト62の頭部に係合させる。そして、作業者は、ボックスレンチ61のソケット部611を回転させることにより、1箇所目のボルト62をネジ穴821に締め付ける。これにより、ドライブプレート73と連結プレート82とが1箇所目のボルト62によって締結される。
【0030】
そして、1箇所目の締結部位Aにおけるボルト62の締付が行われた後は、ラチェット機構4における回転盤41の被掛止歯411が掛止爪42に係合する。そして、回転軸部3の正方向C1への回転量が逐次規制され、かつ回転軸部3の逆方向C2への回転が阻止される状態で、ハンドル部5によって回転軸部3を所定角度θだけ正方向C1へ回転操作する。これにより、
図4に示すごとく、ハンドル部5の回転操作によって、ドライブプレート73の残りの挿通穴731の回転位置及び連結プレート82の残りのネジ穴821の回転位置を、締付窓711に逐次合わせることができる。
【0031】
そして、作業者は、
図8に示すごとく、締付窓711に挿入したボックスレンチ61のソケット部611における係合溝612を、2箇所目以降の締結部位Aにおけるボルト62の頭部に係合させ、ボックスレンチ61のソケット部611を回転させて、2箇所目以降のボルト62をネジ穴821に締め付ける。
このとき、2箇所目以降の締結部位Aにおけるボルト62の締付を行う際に、作業者による締結の力を受けてドライブプレート73及び連結プレート82が回転しようとする力を、ラチェット機構4によって受けることができる。具体的には、ラチェット機構4における回転盤41の被掛止歯411が掛止爪42によって掛止されることにより、上記ドライブプレート73及び連結プレート82が回転しようとする力を受けることができる。これにより、作業者による2箇所目以降の締結部位Aにおけるボルト62の締付作業を容易にすることができる。
【0032】
また、
図4に示すごとく、複数のハンドル部5は、ドライブプレート73及び連結プレート82の複数の締結部位Aが周方向Cに並ぶ所定角度θと同じ角度で、回転軸部3の外周に設けられている。そのため、作業者は、ハンドル部5を目視し、いずれかのハンドル部5があった回転位置に、このハンドル部5に隣接するハンドル部5が来るように、ハンドル部5及び回転軸部3を正方向C1に回転操作することにより、2箇所目以降のボルト62を締め付ける締結部位Aの回転位置を、締付窓711に逐次合わせることができる。また、作業者は、締付窓711を目視することなく、ハンドル部5を目視することによって、2箇所目以降のボルト62を締め付ける締結部位Aの回転位置を、締付窓711に逐次合わせることができる。
そして、回転軸部3を正方向C1に回転させるときには、回転盤41の被掛止歯411が掛止爪42によって掛止されることにより、ハンドル部5を逆方向C2に回転させることができなくなる。これにより、挿通穴731及びネジ穴821の締結部位Aを、締付窓711に容易に合わせることができる。
【0033】
また、ハンドル部5によって回転軸部3を正方向C1に回転させるときには、クランクシャフト72及びドライブプレート73に生じる反力を、ラチェット機構4によって受けることもできる。より具体的には、この反力は、ラチェット機構4における回転盤41の被掛止歯411が掛止爪42によって掛止されて、回転軸部3が逆方向C2に回転しないことによって受けることができる。そのため、作業者による、締付窓711への各締結部位Aの位置合わせを良好にすることができる。
なお、全ての締結部位Aにおけるボルト62の締付が終わった後には、作業者は、固定ベース21からストッパー211を取り外して、クランクプーリ74及び固定ベース21からラチェット機構付レンチ22を取り外す。
【0034】
また、組付用回転治具1は、極めて簡単な機械的構成によって実現することができ、モータ等の駆動源を用いずに、作業者による締結部位Aの締結作業を容易にすることができる。そして、モータ等の駆動源を用いずに手作業用の組付用治具1を構成することができ、装置の小型化を図ることができる。
それ故、本例の組付用回転治具1によれば、モータ等の電気制御を行う装置を用いることなく、ドライブプレート73及び連結プレート82の各締結部位Aを締付窓711に逐次合わせる作業、及び各締結部位Aの締結作業を容易にすることができる。
なお、治具本体部2が配設される架台6は、エンジン7が配設される架台であってもよく、エンジン7が配設される架台とは別に設けた架台であってもよい。