特許第6036666号(P6036666)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6036666
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】検査チップ
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/08 20060101AFI20161121BHJP
   G01N 35/00 20060101ALI20161121BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20161121BHJP
   B81B 1/00 20060101ALN20161121BHJP
【FI】
   G01N35/08 A
   G01N35/00 D
   G01N37/00 101
   !B81B1/00
【請求項の数】8
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2013-248679(P2013-248679)
(22)【出願日】2013年11月29日
(65)【公開番号】特開2015-105893(P2015-105893A)
(43)【公開日】2015年6月8日
【審査請求日】2015年3月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(72)【発明者】
【氏名】大鹿 由美子
(72)【発明者】
【氏名】吉村 千里
【審査官】 後藤 大思
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−109467(JP,A)
【文献】 特開2012−196599(JP,A)
【文献】 特開2008−126177(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00−37/00
G01N 33/48
G01N 21/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板材の第一板面に形成され、第一試薬が定量される凹状の第一試薬定量部と、
前記板材における前記第一板面の反対側の第二板面に形成され、第二試薬が定量される第二試薬定量部と、
前記第一試薬定量部において定量された前記第一試薬と前記第二試薬定量部において定量された前記第二試薬とが混合される混合部と、
前記第一板面に形成され、前記第一試薬定量部と前記混合部とを接続する第一接続流路と、
前記第二板面に形成され、前記第二試薬定量部から前記混合部側に延びる第二接続流路と、
前記第一接続流路に前記第二接続流路を合流させる孔部と
を備え、
前記第一接続流路は、凹状の前記第一試薬定量部のうち前記混合部側の面と対向して前記混合部側に延びる第一壁面と、前記第一壁面に対向する第二壁面とによって形成され、
前記孔部における前記第二壁面側の一端部は、前記第二壁面に沿って形成されていることを特徴とする検査チップ。
【請求項2】
前記第一試薬定量部に前記第一試薬を案内する試薬案内部と、
前記第一試薬定量部に接続され、前記孔部より前記第一試薬定量部側に位置し、前記第一試薬定量部における混合部側の端部と前記第一試薬定量部における前記混合部側とは反対側の端部とを結んだ試薬定量面を、前記試薬定量面と平行に前記混合部側に延ばした試薬仮想面より前記第一試薬案内部側に傾いた試薬流路壁面を備え、
前記試薬流路壁面における前記混合部側の端部から前記試薬流路壁面に垂直な方向に引いた仮想線は、前記第一壁面と交差することを特徴とする請求項1に記載の検査チップ。
【請求項3】
前記孔部において前記一端部に対向する端部は、前記第一壁面に沿うことを特徴とする請求項1又は2に記載の検査チップ。
【請求項4】
前記第二接続流路において前記孔部に接続され、前記第二試薬定量部において定量された前記第二試薬を受ける試薬受け部と、
前記第二接続流路において前記試薬受け部に対向し、前記混合部に向かうほど、前記試薬受け部側に傾斜した第三壁面と
を備え、
前記孔部において前記一端部に対向する端部は、前記第三壁面に沿うことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の検査チップ。
【請求項5】
前記第二接続流路において前記第二試薬が前記試薬受け部に流入する流入口を形成し、前記試薬受け部に対向する流入壁部を備え、
前記第三壁面は、前記流入壁部における前記流入口の反対側の端部に接続されていることを特徴とする請求項4に記載の検査チップ。
【請求項6】
前記第一壁面は、
前記孔部より前記混合部側に配置され、前記混合部側の端部を含む第四壁面を有し、
前記第二壁面は、
前記孔部より前記混合部側に配置され、前記混合部側の端部を含む第五壁面を有し、
前記第一接続流路は、
前記第四壁面及び前記第五壁面の夫々の中央部の間に位置する第一領域と、
前記第四壁面及び前記第五壁面の夫々の前記混合部側の端部の間に位置し、前記第一試薬及び前記第二試薬が前記混合部に流入する試薬流入口を形成する第二領域と
を備え、
前記第一領域における前記第四壁面と前記第五壁面との間の幅は、前記第二領域における前記第四壁面と前記第五壁面との間の幅よりも大きいことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の検査チップ。
【請求項7】
前記第一壁面は、
前記孔部より前記混合部側に配置され、前記混合部側の端部を含む第四壁面を有し、
前記第二壁面は、
前記孔部より前記混合部側に配置され、前記混合部側の端部を含む第五壁面と前記第五壁面に対して前記孔部側に接続する第六壁面とを有し、
前記第一接続流路は、
前記第四壁面の前記孔部側の端部と前記第六壁面との間に位置する第三領域と、
前記第四壁面及び前記第五壁面の夫々の中央部の間に位置する第四領域と
を備え、
前記第四領域における前記第四壁面と前記第五壁面との間の幅は、前記第三領域における前記第四壁面と前記第六壁面との間の幅よりも大きいことを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の検査チップ。
【請求項8】
前記孔部又は前記孔部より前記混合部側に設けられ、前記混合部に向かうほど、前記第一接続流路が延びる方向に直交する深さ方向の流路の幅を狭める傾斜面を備え、
前記第一接続流路のうち、前記傾斜面より前記混合部側の前記深さ方向の幅は、前記孔部より前記第一試薬定量部側の前記第一接続流路の前記深さ方向の幅よりも大きいことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の検査チップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面と裏面とに流路が形成され、表面の流路と裏面の流路とを接続する孔部を備えた検査チップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、表面と裏面とに流路が形成され、表面の流路と裏面の流路とを接続する孔部を備えた検査チップが知られている。例えば、特許文献1に記載のマイクロチップは、表面と裏面とに形成された流路、及び、表面の流路と裏面の流路とを繋ぐ貫通穴を備えている。マイクロチップを用いた検査では、計量部において計量された液体試薬と、検体計量部において計量された血漿成分とが、一の混合部において混合される。混合された混合液は、貫通穴を通過して他の混合部に移動する。また、液体試薬保持部に保持されていた液体試薬も、混合液が通過した貫通穴と同じ貫通穴を通って他の混合部に移動し、混合液と混合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−109467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、表面の流路を移動する一の試薬と、裏面の流路を移動する他の試薬とが貫通穴を介して合流する場合、一の試薬が通った経路を、他の試薬が通る可能性がある。この場合、経路上に残った一の試薬と、他の試薬とが反応を起こし、測定結果に影響する可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、混合部に流入する前に2つの試薬が反応を起こして測定結果に影響を及ぼす可能性を低減する検査チップを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る検査チップは、板材の第一板面に形成され、第一試薬が定量される凹状の第一試薬定量部と、前記板材における前記第一板面の反対側の第二板面に形成され、第二試薬が定量される第二試薬定量部と、前記第一試薬定量部において定量された前記第一試薬と前記第二試薬定量部において定量された前記第二試薬とが混合される混合部と、前記第一板面に形成され、前記第一試薬定量部と前記混合部とを接続する第一接続流路と、前記第二板面に形成され、前記第二試薬定量部から前記混合部側に延びる第二接続流路と、前記第一接続流路に前記第二接続流路を合流させる孔部とを備え、前記第一接続流路は、凹状の前記第一試薬定量部のうち前記混合部側の面と対向して前記混合部側に延びる第一壁面と、前記第一壁面に対向する第二壁面とによって形成され、前記孔部における前記第二壁面側の一端部は、前記第二壁面に沿って形成されていることを特徴とする。
【0007】
この場合、第一試薬定量部において定量された第一試薬は、第一試薬定量部に対向する第一壁面に沿って移動し、混合部に流入する。また、孔部の一端部は、第二壁面側に沿って形成されているので、第二試薬が第二接続流路から孔部を介して第一接続流路に合流する場合、第二壁面に沿って移動し、混合部に流入する。このため、孔部を介して第一接続流路に合流した直後の第二試薬が流れる経路が、第一試薬が流れる経路と重なる場合に比べて、第一試薬が流れる経路と第二試薬が流れる経路とが重なる領域を短くすることができる。よって、混合部に流入する前に第一試薬と第二試薬とが反応し得る領域を短くすることができ、第一試薬と第二試薬とが反応した後の液体が混合部に流れ、検査結果に影響を及ぼす可能性を低減できる。
【0008】
前記検査チップは、前記第一試薬定量部に前記第一試薬を案内する試薬案内部と、前記第一試薬定量部に接続され、前記孔部より前記第一試薬定量部側に位置し、前記第一試薬定量部における混合部側の端部と前記第一試薬定量部における前記混合部側とは反対側の端部とを結んだ試薬定量面を、前記試薬定量面と平行に前記混合部側に延ばした試薬仮想面より前記第一試薬案内部側に傾いた試薬流路壁面を備え、前記試薬流路壁面における前記混合部側の端部から前記試薬流路壁面に垂直な方向に引いた仮想線は、前記第一壁面と交差してもよい。
【0009】
前記検査チップの前記孔部において前記一端部に対向する端部は、前記第一壁面に沿ってもよい。
【0010】
前記検査チップは、前記第二接続流路において前記孔部に接続され、前記第二試薬定量部において定量された前記第二試薬を受ける試薬受け部と、前記第二接続流路において前記試薬受け部に対向し、前記混合部に向かうほど、前記試薬受け部側に傾斜した第三壁面とを備え、前記孔部において前記一端部に対向する端部は、前記第三壁面に沿ってもよい。
【0011】
前記検査チップは、前記第二接続流路において前記第二試薬が前記試薬受け部に流入する流入口を形成し、前記試薬受け部に対向する流入壁部を備え、前記第三壁面は、前記流入壁部における前記流入口の反対側の端部に接続されてもよい。
【0012】
前記検査チップにおいて、前記第一壁面は、前記孔部より前記混合部側に配置され、前記混合部側の端部を含む第四壁面を有し、前記第二壁面は、前記孔部より前記混合部側に配置され、前記混合部側の端部を含む第五壁面を有し、前記第一接続流路は、前記第四壁面及び前記第五壁面の夫々の中央部の間に位置する第一領域と、前記第四壁面及び前記第五壁面の夫々の前記混合部側の端部の間に位置し、前記第一試薬及び前記第二試薬が前記混合部に流入する試薬流入口を形成する第二領域とを備え、前記第一領域における前記第四壁面と前記第五壁面との間の幅は、前記第二領域における前記第四壁面と前記第五壁面との間の幅よりも大きくてもよい。
【0013】
前記検査チップにおいて、前記第一壁面は、前記孔部より前記混合部側に配置され、前記混合部側の端部を含む第四壁面を有し、前記第二壁面は、前記孔部より前記混合部側に配置され、前記混合部側の端部を含む第五壁面と前記第五壁面に対して前記孔部側に接続する第六壁面とを有し、前記第一接続流路は、前記第四壁面の前記孔部側の端部と前記第六壁面との間に位置する第三領域と、前記第四壁面及び前記第五壁面の夫々の中央部の間に位置する第四領域とを備え、前記第四領域における前記第四壁面と前記第五壁面との間の幅は、前記第三領域における前記第四壁面と前記第六壁面との間の幅よりも大きくてもよい。

【0014】
前記検査チップは、前記孔部又は前記孔部より前記混合部側に設けられ、前記混合部に向かうほど、前記第一接続流路が延びる方向に直交する深さ方向の流路の幅を狭める傾斜面を備え、前記第一接続流路のうち、前記傾斜面より前記混合部側の前記深さ方向の幅は、前記孔部より前記第一試薬定量部側の前記第一接続流路の前記深さ方向の幅よりも大きくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】検査装置1及び制御装置90を含む検査システム3の構成を示す図である。
図2】検査チップ2の正面図である。
図3】検査チップ2の背面図である。
図4図2のI−I線矢視方向断面図である。
図5】遠心処理のフローチャートである。
図6】遠心処理における検査チップ2の状態遷移図である。
図7図6の続きの検査チップ2の状態遷移図である。
図8図7の続きの検査チップ2の状態遷移図である。
図9】第一試薬18が試薬定量部134Aから混合部80に流れる状態を示す検査チップ2の正面図である。
図10】第二試薬19が混合部80に流れる状態を示す検査チップ2の正面図である。
図11】第一試薬18と第二試薬19とが混合部80に流入する経路を示した検査チップ2の正面図である。
図12】検査チップ200の正面図である。
図13】検査チップ200の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を具体化した実施形態について、図面を参照して説明する。尚、図1は、検査システム3を構成する検査装置1の平面及び制御装置90の内部の機能ブロックを示している。
【0017】
<1.検査システム3の概略構造>
図1を参照して、検査システム3の概略構造について説明する。本実施形態の検査システム3は、液体である検体及び試薬を収容可能な検査チップ2と、検査チップ2を用いて検査を行う検査装置1とを含む。検査装置1が検査チップ2から離間した垂直軸線A1を中心として検査チップ2を回転させると、遠心力が検査チップ2に作用する。検査装置1が水平軸線A2を中心に検査チップ2を回転させると、検査チップ2に作用する遠心力の方向である遠心方向が切り替えられる。尚、本実施形態の検査システム3及び検査装置1は、特開2012−78107号公報に記載されているように周知の構造であるので、以下の説明では、検査装置1の構造の概略について説明する。
【0018】
<2.検査装置1の構造>
図1を参照して、検査装置1の構造について説明する。以下の説明では、図1の上方、下方、右方、左方、紙面手前側、及び紙面奥側を、夫々、検査装置1の前方、後方、右方、左方、上方、及び下方とする。本実施形態では、垂直軸線A1の方向は検査装置1の上下方向であり、水平軸線A2の方向は、検査チップ2が垂直軸線A1を中心として回転される際の速度の方向である。なお、図1は検査装置1の上部筐体30の天板が取り除かれた状態を示す。
【0019】
図1に示すように、検査装置1は、上部筐体30、下部筐体31、上板32、ターンテーブル33、角度変更機構34、及び制御装置90を備える。ターンテーブル33は、後述する上板32の上側に回転可能に設けられた円盤である。検査チップ2は、ターンテーブル33の上方に保持される。角度変更機構34は、ターンテーブル33に設けられた駆動機構である。この角度変更機構34は、水平軸線A2を中心に検査チップ2を各々回転させる。上部筐体30は、後述する上板32に固定されており、検査チップ2に対して光学測定を行う測定部7が内部に設けられている。制御装置90は、検査装置1の各種処理を制御するコントローラである。
【0020】
下部筐体31の概略構造を説明する。下部筐体31は、枠部材を組み合わせた箱状のフレーム構造を有する。下部筐体31の上面には、長方形の板材である上板32が設けられている。下部筐体31の内部には、垂直軸線A1を中心にターンテーブル33を回転させる駆動機構が、次のように設けられている。
【0021】
下部筐体31内の左方寄りに、ターンテーブル33を回転させるための駆動力を供給する主軸モータ35が設置されている。主軸モータ35の軸36は、上方に突出しており、プーリ37が固定されている。下部筐体31の中央部には、下部筐体31の内部から上方に延びる垂直な主軸57が設けられている。主軸57は、上板32を貫通して、下部筐体31の上側に突出している。主軸57の上端部は、ターンテーブル33の中央部に接続されている。
【0022】
主軸57は、上板32の直下に設けられた図示しない支持部材により、回転自在に保持されている。支持部材の下側では、主軸57にプーリ38が固定されている。プーリ37とプーリ38とに亘って、ベルト39が掛け渡されている。主軸モータ35が軸36を回転させると、プーリ37、ベルト39、及びプーリ38を介して駆動力が主軸57に伝達される。このとき、主軸57の回転に連動して、ターンテーブル33が主軸57を中心に回転する。
【0023】
下部筐体31内の右方寄りに、下部筐体31の内部において上下方向に延びる図示しないガイドレールが設けられている。図示しないT型プレートは、ガイドレールに沿って下部筐体31内において上下方向に移動可能である。
【0024】
先述の主軸57は、内部が中空の筒状体である。図示しない内軸は、主軸57の内部において上下方向に移動可能な軸である。内軸の上端部は、主軸57内を貫通してラックギア43に接続されている。T型プレートの左端部には、図示しない軸受が設けられている。軸受の内部では、内軸の下端部が回転自在に保持される。
【0025】
T型プレートの前方には、T型プレートを上下動させるためのステッピングモータ51が固定されている。ステッピングモータ51の軸58は後方、すなわち図1では下方側に向けて突出している。軸58の先端には、図示しない円盤状のカム板が固定されている。カム板の後側の面には、図示しない円柱状の突起が設けられている。突起の先端部は、図示しない溝部に挿入されている。突起は、溝部内を摺動可能である。ステッピングモータ51が軸58を回転させると、カム板の回転に連動して突起が上下動する。このとき、溝部に挿入されている突起に連動して、T型プレートがガイドレールに沿って上下動する。
【0026】
角度変更機構34の詳細構造を説明する。角度変更機構34は、ターンテーブル33の上面に固定された一対のL型プレート60を有する。各L型プレート60は、ターンテーブル33の中心近傍に固定された基部から上方に延び、且つ、その上端部がターンテーブル33の径方向外側に向けて延びている。一対のL型プレート60の間には、内軸に固定された図示しないラックギア43が設けられている。ラックギア43は、上下方向に長い金属製の板状部材であり、両端面にギアが各々刻まれている。
【0027】
各L型プレート60の延設方向の先端側では、ギア45を有する水平な支軸46が回転自在に軸支されている。支軸46は図示外の装着用ホルダを介して検査チップ2に固定されている。このため、ギア45の回転に連動して検査チップ2も支軸46を中心に回転する。ギア45とラックギア43との間には、L型プレート60により図示略の水平軸線を中心に回転自在に支持されたピニオンギア44が介在している。ピニオンギア44は、ギア45及びラックギア43に夫々噛合している。ラックギア43の上下動に連動して、ピニオンギア44、及びギア45が夫々従動回転し、ひいては検査チップ2が支軸46を中心に回転する。
【0028】
本実施形態では、主軸モータ35がターンテーブル33を回転駆動するのに伴って、検査チップ2が垂直軸である主軸57を中心に回転して、検査チップ2に遠心力が作用される。検査チップ2の垂直軸線A1を中心とした回転を、公転と呼ぶ。一方、ステッピングモータ51が内軸を上下動させるのに伴って、検査チップ2が水平軸である支軸46を中心に回転して、検査チップ2に作用する遠心力の方向が相対変化する。検査チップ2の水平軸線A2を中心とした回転を、自転と呼ぶ。
【0029】
T型プレートが可動範囲の最下端まで下降した状態では、ラックギア43も可動範囲の最下端まで下降する。このとき、検査チップ2は、自転角度が0度の定常状態になる。また、T型プレートが可動範囲の最上端まで上昇した状態では、ラックギア43も可動範囲の最上端まで上昇する。このとき、検査チップ2は、定常状態から水平軸線A2を中心に180度回転した状態になる。つまり、本実施形態では検査チップ2が自転可能な角度幅は、自転角度0度〜180度である。
【0030】
上部筐体30の詳細構造を説明する。図1に示すように、上部筐体30は、枠部材を組み合わせた箱状のフレーム構造を有し、上板32の左部上側に設置されている。より詳細には、上部筐体30は、ターンテーブル33の回転中心にある主軸57からみて、検査チップ2が回転される範囲の外側に設けられている。
【0031】
上部筐体30の内部に設けられた測定部7は、測定光を発光する光源71と、光源71から発せられた測定光を検出する光センサ72とを有する。光源71及び光センサ72は、検査チップ2の回転範囲の外側において、ターンテーブル33の前後両側に配置されている。本実施形態では、検査チップ2の公転可能範囲のうちで主軸57の左側位置が、検査チップ2に測定光が照射される測定位置である。検査チップ2が測定位置にある場合、光源71と光センサ72とを結ぶ測定光が、検査チップ2の前面及び後面に対して略垂直に交差する。
【0032】
<3.制御装置90の電気的構成>
図1を参照して、制御装置90の電気的構成について説明する。制御装置90は、検査装置1の主制御を司るCPU91と、各種データを一時的に記憶するRAM92と、制御プログラムを記憶したROM93とを有する。CPU91には、ユーザが制御装置90に対する指示を入力するための操作部94と、各種データ、及びプログラムを記憶するハードディスク装置95と、各種情報を表示するディスプレイ96とが接続されている。制御装置90としては、パーソナルコンピュータを用いてもよいし、専用の制御装置を用いてもよい。
【0033】
さらに、CPU91には、公転コントローラ97、自転コントローラ98、及び測定コントローラ99が接続されている。公転コントローラ97は、主軸モータ35を回転駆動させる制御信号を主軸モータ35に送信することによって、検査チップ2の公転を制御する。自転コントローラ98は、ステッピングモータ51を回転駆動させる制御信号をステッピングモータ51に送信することによって、検査チップ2の自転を制御する。測定コントローラ99は、測定部7を駆動することによって、検査チップ2の光学測定を実行する。詳細には、測定コントローラ99は、光源71の発光、及び光センサ72の光検出を実行させる制御信号を、光源71及び光センサ72に送信する。尚、CPU91が公転コントローラ97、自転コントローラ98及び測定コントローラ99を制御する。
【0034】
<4.検査チップ2の構造>
図2及び図3を参照して、本実施形態に係る検査チップ2の詳細構造を説明する。以下の説明では、図2の上方、下方、左方、右方、紙面手前側、及び紙面奥側を、それぞれ、検査チップ2の上方、下方、左方、右方、前方、及び後方とする。
【0035】
図2及び図3に示すように、検査チップ2は一例として前方から見た場合に正方形状であり、所定の厚みを有する透明な合成樹脂の板材20を主体とする。図2に示すように、板材20の前面201は、透明の合成樹脂の薄板から構成されたシート291によって封止されている。図3に示すように、前面201の反対側の後面202は、透明の合成樹脂の薄板から構成されたシート292によって封止されている。図2及び図3に示すように、板材20とシート291との間、及び、板材20とシート292との間には、検査チップ2に封入された液体が流動可能な液体流路25が形成されている。液体流路25は、板材20の前面201側及び後面202側に所定深さに形成された凹部であり、板材20の厚み方向である前後方向と直交する方向に延びる。シート291,292は、板材20の流路形成面を封止する。シート291,292は、図2及び図3以外では図示を省略している。
【0036】
液体流路25は、検体定量流路11、試薬定量流路13,15、混合部80、及び測定部81等を含む。試薬定量流路13は、第一接続流路301を含む。試薬定量流路15は、第二接続流路331を含む。図2に示すように、混合部80は、前面201における右下部に設けられている。試薬定量流路13は、前面201における左上部から混合部80に向かって延びる。検体定量流路11は、前面201における右上部から混合部80に向かって延びる。図3に示すように、試薬定量流路15は、後面202側における左上部から混合部80に向かって延びる。混合部80は、後述する通路117に接続されて下方に延びる、後述する端部315及び後述する流入口306より右側の流路を含む領域である。測定部81は、混合部80の下部である。
【0037】
試薬定量流路13、15に共通する構成について説明する。図2及び図3に示すように、試薬定量流路13,15は、それぞれ、注入口130、試薬保持部131、供給部132、試薬定量部134、通路137、案内部139、及び余剰部136を含む。試薬保持部131は、検査チップ2の左上部に設けられている。試薬保持部131は、上方に開口する凹部である。注入口130は、試薬保持部131の上部から検査チップ2の上辺部21に向かって板材20を貫通する。注入口130は、第一試薬18又は第二試薬19が試薬保持部131に注入される部位である。試薬定量流路13の試薬保持部131は、試薬定量流路13の注入口130から注入された第一試薬18が貯留される部位である。試薬定量流路15の試薬保持部131は、試薬定量流路15の注入口130から注入された第二試薬19が貯留される部位である。尚、本実施形態の第二試薬19は、第一試薬18と後述する検体17Aとが混合された後に混合される試薬である。以下の説明では、第一試薬18、及び第二試薬19を総称する場合、又はいずれかを特定しない場合、試薬16という。
【0038】
図2及び図3に示すように、供給部132は、試薬保持部131の右上部分から下方向に延びる流路である。供給部132の下端部は、流路が狭く形成された通路である案内部139に繋がっている。案内部139の下方には、試薬定量部134が設けられている。案内部139は、試薬定量部134に試薬16を案内する。試薬定量部134は、試薬16が定量される部位であり、左下方に凹む凹部である。
【0039】
試薬定量部134は、第一接続流路301を介して混合部80と接続されており、通路137を介して余剰部136と接続されている。試薬定量部134の混合部80側の端部を第一端部141という。試薬定量部134の混合部80とは反対側の端部を第二端部142という。すなわち、通路137は第二端部142から余剰部136に向けて延びる。第一端部141と第二端部142とを結ぶ面は、試薬定量面146である。試薬定量面146は、試薬16が試薬定量部134において定量される場合における試薬16の上面の位置となる仮想的な面である。従って、試薬定量面146より下方の液体流路25の容量が試薬定量部134における定量量である。
【0040】
試薬定量部134の上部から、通路137が左斜め下方に延びる。通路137は、試薬定量部134から溢れた試薬16が移動する流路である。試薬定量部134の左下方には、余剰部136が設けられている。余剰部136は、通路137を移動した試薬16が収容される部位であり、通路137の下端部から下方向及び右方向に設けられた凹部である。
【0041】
第一接続流路301について説明する。以下の説明では、試薬定量流路13の試薬定量部134を試薬定量部134Aといい、試薬定量流路15の試薬定量部134を試薬定量部134Bという。第一接続流路301は、前面201に形成され、試薬定量部134Aと混合部80とを接続する流路である。試薬定量部134Aの第一端部141は、試薬定量部134Aと第一接続流路301とが接続する箇所である。第一接続流路301は、試薬定量部134Aの第一端部141から右斜め上方に延び、右端部から下方に延び、下端部からさらに右方に延びる。第一接続流路301は、第一壁面302と第二壁面303とによって形成されている。第一壁面302は、試薬定量部134Aと対向して混合部80側に延びる壁面である。
【0042】
第一壁面302は、案内部139の下端から、後述する流入口306を形成する右端部314まで延びる。より詳細には、第一壁面302は、壁面302A,302B,302C,302D,302E,302Fを含む。壁面302Aは、案内部139の下端から右斜め上方に延びる。壁面302Bは、壁面302Aの右端部から右斜め下方に延びる。壁面302Cは、壁面302Bの右端部から右斜め下方に延びる。壁面302Dは、壁面302Cの下端部から右斜め下方に延びる。壁面302Dは、右斜め下方に延びる壁面302Cより右側に傾いている。壁面302Eは、壁面302Dの下端部から右方に延びる。壁面302Fは、壁面302Dの右端部から屈曲しつつ右斜め上方に延びる。より詳細には、壁面302Fは、壁面302Dの右端部から上方に延び、屈曲部321においてやや右側に折れ曲がって右斜め上方に延び、屈曲部322においてさらに右側に折れ曲がって右斜め上方に延びる。壁面302Fは、後述する壁面303Cと対向している。
【0043】
第二壁面303は、第一接続流路301を形成する壁面のうち、試薬定量部134Aの第一端部141と接続する側の面である。第一壁面302と第二壁面303は、互いに対向する。第二壁面303は、試薬定量部134Aの第一端部141から、後述する流入口306を形成する右端部313まで延びる。
【0044】
第二壁面303のうち、試薬定量部134Aの第一端部141に接続された壁面を試薬流路壁面308という。すなわち、試薬流路壁面308は、第一接続流路301において試薬定量部134Aに接続されており、第一接続流路301の一部を形成する。試薬流路壁面308は、試薬定量流路13の試薬定量面146を、試薬定量面146と平行に混合部80側である右側に延ばした仮想面320より、案内部139側に傾いている。より詳細には、試薬流路壁面308は、第一端部141から右斜め上方に延び、屈曲部309においてやや上方に折れ曲がり、右斜め上方に延びる。試薬流路壁面308における混合部80側の端部310から、試薬流路壁面308に垂直な方向に引いた仮想線311は、第一壁面302の壁面302Cと交差する。
【0045】
第二壁面303は、壁面303A、壁面303B、及び壁面303Cを下部に備えている。壁面303Aは、試薬定量流路13の余剰部136の右方を上下に延びる壁面である。壁面303Bは、壁面303Aの下端部から、右方向に延びる壁面である。壁面303Bの右端部は、混合部80の左下方に位置する。壁面303Cは、壁面303Bの右端部から右斜め上方に延びる壁面である。壁面303Cは、壁面302Fと対向している。
【0046】
流入口306は、壁面303Cの右端部313と、右端部313の上方に位置する第一壁面302の右端部314とによって形成されている。流入口306は、混合部80の左側に位置し、混合部80に試薬16を流入させる部位である。
【0047】
第一接続流路301の下端部の左右方向中央部には、合流孔部351が設けられている。合流孔部351は、板材20を前後方向に貫通し、第一接続流路301に第二接続流路331を合流させる孔部である。合流孔部351の詳細については後述する。
【0048】
第一接続流路301は、合流孔部351より混合部80側に、領域501,502,503を備えている。領域501は、壁面302Eの右端部と、壁面303Bとの間の領域である。領域502は、壁面302Fの中央部と壁面303Cの中央部との間の領域である。領域502は、領域501より混合部80側に位置する。領域502における流路の幅L2は、領域501における流路の幅L1より大きい。
【0049】
領域503は、流入口306を形成する領域である。すなわち、領域503は、壁面303Cの右端部313と、壁面302Fの右端部314との間の領域である。領域503は、領域502より混合部80側に位置する。領域502における流路の幅L2は、領域503における流路の幅L3より大きい。
【0050】
第二接続流路331について説明する。図3に示すように、第二接続流路331は、後面202に形成され、試薬定量部134Bから混合部80側に延び、試薬定量部134Bと混合部80とを接続する流路である。第二接続流路331は、4つの試薬受け部341,342,343,344を備えている。試薬受け部341〜344は、試薬定量部134Bにおいて定量された第二試薬19を受ける部位である。試薬受け部341は、試薬定量部134Bの右方に位置し、左方に開口する凹部である。試薬受け部342は、試薬受け部341の左下方に位置し、上方に開口する凹部である。試薬受け部343は、試薬受け部342の右方に位置し、左方に開口する凹部である。試薬受け部344は、試薬受け部343の下側に位置し、上方に開口する凹部である。
【0051】
第二接続流路331は、試薬定量部134Bから右斜め上方に延びて試薬受け部341に繋がり、試薬受け部341から左斜め下方に延びて試薬受け部342に繋がる。第二接続流路331は、試薬受け部342から右斜め上方に延びて試薬受け部343に繋がり、試薬受け部343から左斜め下方に延びて試薬受け部344に繋がる。試薬受け部344の右端部は、合流孔部351に接続されており、前面201側の第一接続流路301に繋がる。
【0052】
試薬受け部343の下端部は、左斜め下方に延びる壁部345によって形成されている。壁部345は、試薬受け部344に対向する。壁部345の左端部346は、第二試薬19が試薬受け部343から試薬受け部344に流入する流入口347を形成する。
【0053】
壁部345の下面における流入口347の反対側の端部348に、壁面349が接続されている。壁面349は、試薬受け部344に対向する。壁面349は、混合部80側である右側に向かうほど、試薬受け部344側である下側に傾斜している。壁面349は、図2に示す壁面302Dに沿っている。
【0054】
合流孔部351と合流孔部351の周辺構造とについて説明する。図2に示すように、合流孔部351における第二壁面303側である下端部352は、第二壁面303の壁面303Bに沿って左右方向に延びる。下端部352に対向する上端部353は、第一壁面302の壁面302Dに沿って右斜め下方に延びる。また、図3に示すように、上端部353は、第二接続流路331の壁面349に沿っている。
【0055】
図2に示すように、合流孔部351の左端部354は、壁面302Dの左部から下方に延びる。図4に示すように、左端部354は、第一接続流路301と第二接続流路331とを隔てる隔壁361の右側の端部によって形成されている。図2に示すように、合流孔部351の右端部355は、壁面302Dの右端部から下方に延びる。図4に示すように、右端部355は、後述する傾斜面505の左側の端部によって形成されている。
【0056】
合流孔部351の混合部80側には、傾斜面505が設けられている。図4に示すように、傾斜面505は、検査チップ2の後端から、右側に向かうほど前方に傾くように形成されている。このため、傾斜面505は、混合部80側に向かうほど、第一接続流路301が延びる方向に直交する深さ方向の流路の幅を狭める。第一接続流路301のうち、傾斜面505より混合部80側である右側の深さ方向の幅L4は、合流孔部351より試薬定量部134A側である左側の深さ方向の幅L5より大きい。
【0057】
検体定量流路11について説明する。図2に示すように、検体定量流路11は、注入口110、検体保持部111、第一供給部112、第一案内部113、分離部124、通路125、通路127、第一余剰部126、第二供給部123、検体定量部114、通路115、通路117、及び第二余剰部116を含む。検体保持部111は、試薬定量流路13の供給部132の右側に設けられている。検体保持部111は、上方に開口する凹部である。注入口110は、検体保持部111の上部から検査チップ2の上辺部21に向かって板材20を貫通する。注入口110は、検体17が検体保持部111に注入される部位である。検体保持部111は、注入口110から注入された検体17が貯留される部位である。本実施形態の検体17は、例えば、血液、血漿、血球、骨髄、尿、膣組織、上皮組織、腫瘍、精液、唾液、又は食料品などの成分を含む液体である。第一供給部112は、検体保持部111の右上部分から下方に延びる流路である。第一供給部112の下端部は、流路が狭く形成された通路である第一案内部113に繋がっている。
【0058】
第一案内部113の下方には、分離部124が設けられている。第一案内部113は、分離部124に検体17を案内する。分離部124は検体17に含まれる成分が分離される部位である。分離部124は、上方に開口し、右斜め下方に傾く凹部である。分離部124は、遠心力の作用によって、検体17を比重の小さい成分と比重の大きい成分とに遠心分離する。以下の説明では、図6(C)に示すように分離部124において分離された検体17の比重の小さい成分を検体17Aといい、比重の大きい成分を検体17Bという。
【0059】
分離部124の右側面における上下方向中央部から連結流路120が右斜め上方に延設され、連結流路120の上端部は成分保持部121の上端部に接続されている。成分保持部121は分離部124において分離された検体17Aと検体17Bの一部とを保持する貯溜部である。また、連結流路120の流路の幅は、後述する通路127の流路の幅より狭い。このため、検体17Aは、連結流路120に流入するよりも先に通路127に流れ出す。故に、検体17Aが通路127より先に成分保持部121に流入してしまう可能性を低減できる。
【0060】
分離部124の上部から、通路125が左斜め下方に延び、通路127が右斜め上方に延びている。通路125は、分離部124の左下方に設けられた第一余剰部126まで延びている。第一余剰部126は、分離部124から溢れ出た検体17が貯留される部位であり、通路125の下端部から右方向及び下方向に設けられた凹部である。
【0061】
通路127は、第二供給部123に繋がっている。第二供給部123は、通路127の右上部分から下方に延びる流路である。第二供給部123の下端は、流路が狭く形成された通路である第二案内部128に繋がっている。第二案内部128の下方には、検体定量部114が設けられている。第二案内部128は、検体定量部114に検体17Aを案内する。検体定量部114は、検体17Aを定量する部位であり、上側に開口する凹部である。
【0062】
検体定量部114は、通路117を介して混合部80と接続されており、通路115を介して第二余剰部116に接続されている。検体定量部114の混合部80側の端部を第一検体端部118という。検体定量部114の混合部80とは反対側の端部を第二検体端部119という。すなわち、通路115は第二検体端部119から第二余剰部116に延びる。第一検体端部118と第二検体端部119とを結ぶ面は、検体定量面129である。検体定量面129は、検体17Aが検体定量部114において定量される場合における検体17Aの上面の位置となる仮想的な面である。従って、検体定量面129より下方の液体流路25の容量が検体定量部114における定量量である。
【0063】
検体定量部114の上部から、通路115が左斜め下方に延び、通路117が右斜め上方に延びている。検体定量部114の左下方には、第二余剰部116が設けられている。通路115は、第二余剰部116に繋がっている。第二余剰部116は、検体定量部114から溢れ出た検体17Aが貯留される部位である。第二余剰部116は、通路115の下端部から右方向に設けられた凹部である。通路117は、混合部80に繋がっている。検体定量部114の混合部80側に設けられ、検体定量部114に接続された壁面を検体流路壁面312という。
【0064】
混合部80は、検体定量部114の混合部80側の端部315及び流入口306の右側を、下方に延びる。混合部80は、通路117を介して検体定量部114と繋がっている。混合部80は、第一接続流路301を介して試薬定量部134Aに繋がっている。混合部80は、第二接続流路331を介して、試薬定量部134Bに繋がっている。混合部80においては、検体定量部114において定量された検体17A、試薬定量部134Aにおいて定量された第一試薬18、及び試薬定量部134Bにおいて定量された第二試薬19が混合される。後述する光学測定が行われる際には、混合部80の下部を形成する測定部81に測定光が透過される。
【0065】
<5.検査チップ2のその他構造>
図1に示すように、L型プレート60から延びる支軸46は、図示外の装着用ホルダを介して板材20の後面中央に垂直に連結される。支軸46の回転に伴って、検査チップ2が支軸46を中心に自転する。検査チップ2は図2及び図3に示す定常状態である場合、上辺部21及び下辺部24が重力Gの方向と直交し、右辺部22及び左辺部23が重力Gの方向と平行、且つ、左辺部23が右辺部22よりも主軸57側に配置される。定常状態の検査チップ2が測定位置に配置されている状態において、光源71と光センサ72とを結ぶ測定光を測定部81に通過させることで、検査装置1は光学測定による検査を行う。
【0066】
<6.検査方法の一例>
検査装置1及び検査チップ2を用いた検査方法について説明する。図2に示すように、注入口110から検体17が注入され、検体保持部111に配置される。試薬定量流路13の注入口130から第一試薬18が注入され、試薬定量流路13の試薬保持部131に配置される。図3に示すように、試薬定量流路15の注入口130から第二試薬19が注入され、試薬定量流路15の試薬保持部131に配置される。第一試薬18、第二試薬19、及び検体17の配置方法は限定されない。例えば、シート291,292における検体保持部111及び試薬保持部131に対応する位置に穴が開いており、ユーザが穴から、検体17、第一試薬18、及び第二試薬19を注入し、さらにシールをして封止してもよい。また、予め、第一試薬18と第二試薬19とが、試薬定量流路13,15のそれぞれの試薬保持部131に配置されて、シート291,292によって封止されていてもよい。この場合、シート291における検体定量流路11の検体保持部111に対応する位置に穴が開いており、ユーザが穴から検体17を注入し、さらにシールをして封止してもよい。
【0067】
ユーザは検査チップ2を図示外の装着用ホルダに取り付けて、操作部94から処理開始のコマンドを入力する。これによって、CPU91は、ROM93に記憶されている制御プログラムに基づいて、図5に示す遠心処理を実行する。尚、検査装置1は二つの検査チップ2を同時に検査可能であるが、以下では説明の便宜のため、一つの検査チップ2を検査する手順を説明する。以下の説明では、図2及び図3に示す検査チップ2の定常状態を自転角度0度といい、定常状態から90度反時計回りに回転した状態を自転角度90度という。尚、以下の説明においてCPU91が検査チップ2を自転角度0度から90度に回転させる場合、検査チップ2は、前方から見て反時計回りに回転する。また、CPU91が検査チップ2を自転角度90度から0度に回転させる場合、検査チップ2は、前方から見て時計回りに回転する。
【0068】
図5に示すように、CPU91は、HDD95に予め記憶されているモータの駆動情報を読み込み、公転コントローラ97に主軸モータ35の駆動情報をセットし、自転コントローラ98にステッピングモータ51の駆動情報をセットする(S1)。このとき、検査チップ2は図2及び図3に示すように、定常状態であり自転角度0度である。次いで、図1に示すCPU91が公転コントローラ97を制御し、主軸モータ35の駆動を開始する(S2)。この結果、自転角度が0度の検査チップ2が公転する。主軸モータ35は、公転コントローラ97の指示に基づき、ターンテーブル33の回転速度を速度Vに上げる。速度Vは、例えば3000rpmである。この速度Vでターンテーブル33が回転されると、検査チップ2に、数百Gほどの遠心力Xが作用する。CPU91は主軸モータ35の回転速度を速度Vに保持する(S3)。図6(A)に示すように、左辺部23から右辺部22に向けて、検査チップ2に遠心力Xが作用する。遠心力Xの作用によって試薬16は、試薬保持部131から供給部132に移動する。また、検体17は、検体保持部111から第一供給部112に移動する。尚、以下の説明では、ターンテーブル33の回転速度は速度Vで一定であるとするが、速度Vの値が遠心処理の途中で変更されてもよい。
【0069】
次いで、CPU91は自転コントローラ98を制御してステッピングモータ51を駆動制御し、図6(B)に示すように、自転角度90度まで検査チップ2を回転させる(S4)。この結果、上辺部21から下辺部24に向けて、検査チップ2に遠心力Xが作用する。遠心力Xの作用によって、試薬16は、供給部132から、案内部139を介して試薬定量部134に流れる。試薬定量部134において余った試薬16は、通路137を介して余剰部136に流れる。遠心力Xは試薬定量面146に垂直な方向に作用する。これによって、試薬定量部134の容量分の試薬16が定量される。また、検体17は、第一供給部112から、第一案内部113を介して分離部124に流れる。分離部124において余った検体17は、通路125を介して第一余剰部126に流れる。このため、分離部124の容量分の検体17が分離部124に残る。分離部124の容量は、図2に示す分離部124における通路125側の端部147から、右方向に延びる仮想面148より下方の液体流路25の容量である。
【0070】
CPU91は、所定時間の間、主軸モータ35の回転速度を速度Vに保持する(S5)。これによって、所定時間の間、上辺部21から下辺部24に向けて、検査チップ2に遠心力Xが作用する。これによって、図6(C)に示すように、分離部124においては、検体17の成分が検体17Aと検体17Bとに分離される。例えば、検体17が血液の場合、比重の大きい血球が遠心力Xの作用方向側に溜まり、比重の小さい血漿が遠心力Xの作用方向の反対側に溜まる。すなわち、血液中の血球である検体17Bと血漿である検体17Aとが分離される。
【0071】
次いで、CPU91は、自転コントローラ98を制御してステッピングモータ51を駆動制御し、図7(D)に示すように、自転角度0度まで検査チップ2を回転させる(S6)。この結果、左辺部23から右辺部22に向けて検査チップ2に遠心力Xが作用する。
【0072】
図6(C)に示す状態から図7(D)に示す状態に検査チップ2の姿勢が変化する過程における第一試薬18の流れについて説明する。図9は、試薬流路壁面308のうち、屈曲部309より右側の部位に垂直な方向に遠心力Xが作用された時の第一試薬18の流れを示している。このとき、第一試薬18は、遠心力Xの作用によって、仮想線311に沿って第一壁面302の壁面302C側に流れる。第一試薬18は、第一壁面302の壁面302C、壁面302D、及び壁面302Eに沿って流れる。第一試薬18は、壁面302Eの右端部から壁面303Cに流れ、流入口306を介して混合部80に流入する。
【0073】
図7(D)に示す状態に検査チップ2の姿勢が変化すると、第一試薬18は混合部80に移動し、試薬定量部134Bにおいて定量された第二試薬19は試薬受け部341に移動した状態となる。また、検体17Aは通路127を通って第二供給部123に移動する。尚、分離部124に残った検体17Aと、検体17Bの一部とは、連結流路120を介して成分保持部121に移動する。
【0074】
次いで、CPU91は、自転コントローラ98を制御してステッピングモータ51を駆動制御し、図7(E)に示すように、自転角度90度まで検査チップ2を回転させる(S7)。この結果、上辺部21から下辺部24に向けて遠心力Xが作用する。遠心力Xの作用によって、検体17Aは、第二供給部123から、第二案内部128を介して検体定量部114に流れる。検体定量部114において余った検体17Aは、通路115を介して第二余剰部116に流れる。これによって、検体定量部114の容量分の検体17Aが定量される。また、試薬受け部341に保持されていた第二試薬19は、試薬受け部342に移動する。
【0075】
次いで、CPU91は、自転コントローラ98を制御してステッピングモータ51を駆動制御し、図7(F)に示すように、自転角度0度まで検査チップ2を回転させる(S8)。この結果、左辺部23から右辺部22に向けて検査チップ2に遠心力Xが作用する。遠心力Xの作用によって、検体定量部114において定量された検体17Aが通路117を介して混合部80に流入する。また、遠心力Xの作用によって、第一試薬18と検体17Aとが混合され、第一混合液261が生成される。また、第二試薬19は、試薬受け部342から試薬受け部343に移動する。
【0076】
次いで、CPU91は、自転コントローラ98を制御してステッピングモータ51を駆動制御し、図8(G)に示すように、自転角度90度まで検査チップ2を回転させる(S9)。この結果、上辺部21から下辺部24に向けて検査チップ2に遠心力Xが作用する。図8(G)に示す状態に検査チップ2の姿勢が変化する過程において、壁部345に垂直な方向に遠心力Xが作用した場合、第二試薬19は、図8(G)の経路831に示すように試薬受け部343から流入口347を介して試薬受け部344に移動する。試薬受け部344に移動した第二試薬19は、合流孔部351を介して前面201に形成された第一接続流路301に流入する。図2に示すように、合流孔部351の下端部352が第二壁面303の壁面303Bに沿っているので、第二試薬19は、壁面303Bに沿って第一接続流路301に流入する。なお、図8(G)では図示しないが、合流孔部351を介して第一接続流路301に流入した第二試薬19が、遠心力Xの作用によって、壁面303Bに全体に広がってもよい。
【0077】
次いで、CPU91は、自転コントローラ98を制御してステッピングモータ51を駆動制御し、図8(H)に示すように、自転角度0度まで検査チップ2を回転させる(S10)。この結果、左辺部23から右辺部22に向けて検査チップ2に遠心力Xが作用する。図8(H)に示す状態に検査チップ2の姿勢が変化する過程において、図10に示すように壁面303Cに垂直な方向に遠心力Xが作用した場合、第二試薬19は、壁面303Cから流入口306を介して混合部80に移動し、第一混合液261と合流する。図8(H)に示すように、遠心力Xの作用によって、第一試薬18、第二試薬19、及び検体17Aが混合された第二混合液262が生成される。
【0078】
次いで、CPU91は、自転コントローラ98を制御してステッピングモータ51を駆動制御し、図8(I)に示すように、自転角度90度まで検査チップ2を回転させる(S11)。この結果、上辺部21から下辺部24に向けて検査チップ2に遠心力Xが作用する。遠心力Xの作用によって、第二混合液262は、測定部81に移動する。
【0079】
図8には図示しないが、S11が実行された後、CPU91は自転コントローラ98を制御し、ステッピングモータ51を駆動する。CPU91は、自転角度0度まで検査チップ2を回転させる(S12)。また、CPU91は公転コントローラ97を制御し、主軸モータ35の回転を停止する(S12)。故に、検査チップ2の公転が終了する。遠心処理は終了される。
【0080】
遠心処理の実行後、CPU91は公転コントローラ97を制御し、検査チップ2を測定位置の角度まで回転移動させる。図1に示す測定コントローラ99が光源71を発光させると、測定光が測定部81に貯溜された第二混合液262を通る。CPU91は光センサ72が受光した測定光の変化量に基づいて、第二混合液262の光学測定を行い、測定データを取得する。CPU91は、取得された測定データに基づいて、第二混合液262の測定結果を算出する。測定結果に基づく第二混合液262の検査結果が、図1に示すディスプレイ96に表示される。尚、第二混合液262の測定方法は、光学測定に限られず、他の方法でもよい。
【0081】
<7.本実施形態の主たる作用・効果>
以上のように本実施形態における測定が実行される。図11は、試薬定量部134Aにおいて定量された第一試薬18が混合部80に移動する経路841と、合流孔部351を介して第一接続流路301に流入した第二試薬19が混合部80に移動する経路842とを太線で示している。本実施形態においては、図9図11の経路841とに示すように、試薬定量部134Aにおいて定量された第一試薬18は、試薬定量部134Aに対向する第一壁面302に沿って移動し、混合部80に流入する。また、合流孔部351の下端部352は、第二壁面303の壁面303Bに沿って形成されている。このため、図8(G)と図9図11の経路842とに示すように、第二試薬19が第二接続流路331から合流孔部351を介して第一接続流路301に流入する場合、第二壁面303の壁面303Bに沿って移動し、混合部80に流入する。このため、図11に示すように、第一試薬18が流れる経路841と第二試薬19が流れる経路842とが重なる領域は、壁面303Cの一部の領域843に限られる。よって、合流孔部351を介して第一接続流路301に流入した直後の第二試薬19が流れる経路が、第一試薬18が流れる経路と重なる場合に比べて、第一試薬18の経路と第二試薬19の経路が重なる領域を短くすることができる。合流孔部351を介して第一接続流路301に流入した直後の第二試薬19が流れる経路が、第一試薬18が流れる経路と重なる場合とは、例えば、合流孔部351の下端部352が、第二壁面303の壁面303Bに沿って形成されていない場合である。故に、第一試薬18が流れた経路に残った第一試薬18と、第一試薬18の後から混合部80に流れる第二試薬19とが反応し得る領域を短くすることができる。よって、第一試薬18が流れた後に第一試薬18の経路に残った第一試薬18と反応した第二試薬19が混合部80に流れ、検査結果に影響を及ぼす可能性を低減できる。
【0082】
また、図9に示すように、試薬定量部134Aにおいて定量された第一試薬18は、試薬流路壁面に垂直な方向に遠心力が付与された場合に、仮想線311に沿って流れる。仮想線311は、第一壁面302と交差するので、第一試薬18は第一壁面302に当たる。よって、検査チップ2は、仮想線311が第一壁面302と交差しない場合に比べて、より確実に、第一試薬18を第一壁面302に沿って流すことができる。故に、より確実に、第一試薬18が流れた経路に残った第一試薬18と、第二試薬19とが反応し得る領域を短くすることができる。よって、第一試薬18が流れた後に第一試薬18の経路に残った第一試薬18と反応した第二試薬19が混合部80に流れ、検査結果に影響を及ぼす可能性を低減できる。
【0083】
また、仮に、合流孔部351の上端部353が第一壁面302に沿っていない場合、第一壁面302に沿って移動する第一試薬18が上端部353を伝って移動し、第二壁面303側に近づいたり、第二壁面303に接触したりする可能性がある。故に、第二壁面303に沿って移動する第二試薬19と第一試薬18とが反応する可能性がある。本実施形態においては、上端部353が第一壁面302に沿っているので、第一壁面302に沿って移動する第一試薬18が上端部353を伝った場合でも、第一試薬18が第一壁面302に沿って移動する。よって、上端部353が第一壁面302に沿っていない場合に比べて、第一試薬18が第二壁面303に接触する可能性を低減できる。故に、第一試薬18と反応した後の第二試薬19が混合部80に流れ、検査結果に影響を及ぼす可能性をさらに低減できる。
【0084】
また、仮に、図12及び図13に示す検査チップ200のように、図2及び図3に示す検査チップ2の合流孔部351と異なる位置に合流孔部800が設けられ、第一接続流路301と第二接続流路331とが接続されているとする。図12に示すように、合流孔部800の下端部801は、第二壁面303の壁面303Bに沿っている。図13に示すように、合流孔部800の上端部802は、左斜め下方に延びる壁部345の下側の面に沿っている。故に、上端部802は、左斜め下方に傾いている。
【0085】
この場合、図12及び図13に示す経路851のように、第一壁面302に沿って移動する第一試薬18が上端部802を伝い、第二接続流路331側に移動し、壁部345に沿って、第二接続流路331を逆流する場合がある。この結果、第一試薬18が第二接続流路331において試薬受け部344に落下する可能性がある。特に、例えば、第一混合液261が生成された後、第二試薬19が混合される前に公転が停止され、第一混合液261に対して光学測定が行われるいわゆる盲検測定が行われる場合、遠心力Xが検査チップ2に作用しなくなり、重力Gのみが作用する。上端部802と壁部345は、左斜め下方に傾いている。盲検測定が行われる場合には、重力Gが検査チップ2の下方向に作用するので、第一壁面302に残った第一試薬18が経路851に沿って移動し易い。盲検測定が行われる場合だけでなく、例えば、混合部80において第一試薬18と検体17Aとが混合される場合に、公転と公転の停止とが切り替えられて撹拌される場合に、重力Gのみが作用する場合がある。この場合においても、第一壁面302に残った第一試薬18が経路851に沿って移動し易い。経路851に沿って移動した第一試薬18は重力Gの作用によって、壁部345の右部から試薬受け部344に落下し易い。このため、例えば、第二接続流路331において、試薬受け部344に保持された第二試薬19と落下した第一試薬18とが反応する可能性がある。
【0086】
また、図9に示すように、第一試薬18は第一壁面302を伝って混合部80に流入する。仮に、壁面302Cの傾きが図2に示す状態より上下方向に近づく場合、第一壁面302を伝って混合部80に案内する壁面302Cに第一試薬18が残り易くなる。図7(D)に示すように第一試薬18が混合部80に流入した後、図7(E)に示すように検査チップ2が自転角度90に回転され、遠心力Xが上辺部21から下辺部24に作用する。このとき、遠心力Xの作用によって、壁面302Cに残った第一試薬18が、図12及び図13に示す経路851に沿って移動し、さらには試薬受け部344に落下して、第二試薬19と反応する可能性がある。
【0087】
本実施形態では、図3に示すように、第二接続流路331の壁面349は、混合部80に向かうほど、試薬受け部344側に傾斜しており、合流孔部351の上端部353は、壁面349に沿っている。このため、第一試薬18が、合流孔部351の上端部353を伝った場合でも、混合部80側に移動しやすいので、第二接続流路331を逆流し難い。故に、第一試薬18が、図13の経路851に示すように第二接続流路331に逆流し、第二接続流路331側で第二試薬19と接触する可能性を低減できる。故に、第一試薬18と反応した後の第二試薬19が混合部80に流れ、検査結果に影響を及ぼす可能性をさらに低減できる。
【0088】
また、図3に示すように、壁面349は、壁部345の下面における流入口347の反対側の端部348に接続されており、壁面349側に合流孔部351が形成されている。このため、壁部345と壁面349との間に他の面が存在し、壁面349と合流孔部351とが図3に示す位置より混合部80側である左側にある場合に比べて、合流孔部351の位置が流入口347に近くなる。よって、図8(G)の経路831に沿って流入口347から試薬受け部344に流入する第二試薬19がより早く合流孔部351から流出する。よって、試薬受け部344に流入する第二試薬19の液面をより早く下げることができる。故に、試薬受け部344に流入した第二試薬19が流入口347を介して逆流する可能性を低減できる。よって、第二試薬19が逆流することで混合部80に流入する第二試薬19の量が減り、検査結果に影響を及ぼす可能性を低減できる。
【0089】
また、図2に示すように、第一接続流路301において、領域502における流路の幅L2は、領域503における流路の幅L3より大きい。このため、一旦混合部80に流入した試薬16又は検体17が、領域502に向かって逆流しようとした場合に、領域503において表面張力が発生し、試薬16又は検体17が移動し難くなる。故に、混合部80に流入した試薬16又は検体17が領域502に逆流する可能性を低減でき、混合部80の第二混合液262が減って測定結果に影響を及ぼす可能性を低減できる。
【0090】
また、領域502における流路の幅L2は、領域501における流路の幅L1よりも大きい。このため、例えば、図8(G)に示す第二試薬19より多量の第二試薬19が、合流孔部351を介して第一接続流路301に流入し、領域502に向かって移動しようとした場合に、領域501において表面張力が発生し、第二試薬19が移動し難くなる。故に、合流孔部351を介して第一接続流路301に流入した第二試薬19が、合流孔部351から流入した勢いによって混合部80側に流れる可能性を低減できる。故に、例えば、検体17と第一試薬18が混合部80において均一に混合される前に第二試薬19が混合部80に流入する場合など、誤って第二試薬19が混合部80に流入する可能性を低減でき、測定結果に影響を及ぼす可能性を低減できる。
【0091】
また、図4に示すように、第一接続流路301のうち、傾斜面505より混合部80側の深さ方向の幅L4は、合流孔部351より試薬定量部134A側の深さ方向の幅L5より大きい。このため、幅L4が幅L5以下である場合に比べて、第一接続流路301を流れた第一試薬18が傾斜面505に当たり難い。よって、第一試薬18が傾斜面505に当たって広がる可能性を低減できる。よって、第二試薬19が傾斜面505に沿って混合部80に向かう場合に、傾斜面505に残った第一試薬18と反応する可能性を低減できる。故に、傾斜面505に残った第一試薬18と反応した第二試薬19が混合部80に流れ、検査結果に影響を及ぼす可能性をさらに低減できる。
【0092】
上記実施形態において、前面201は本発明の「第一板面」の一例である。後面202は本発明の「第二板面」の一例である。試薬定量部134Aは本発明の「第一試薬定量部」の一例である。試薬定量部134Bは本発明の「第二試薬定量部」の一例である。合流孔部351は本発明の「孔部」の一例である。下端部352は本発明の「一端部」の一例である。上端部353は本発明の「一端部に対向する端部」の一例である。試薬定量流路13の案内部139は本発明の「試薬案内部」の一例である。試薬受け部344は本発明の「試薬受け部」の一例である。壁面349は本発明の「第三壁面」の一例である。壁部345は本発明の「流入壁部」の一例である。流入口347は本発明の「流入口」の一例である。流入口306は本発明の「試薬流入口」の一例である。領域501は本発明の「第三領域」の一例である。領域502は本発明の「第一領域」及び「第四領域」の一例である。領域503は本発明の「第二領域」の一例である。
【0093】
尚、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。例えば、第二試薬19が、第一試薬18より後に混合部80に流入していたが、これに限定されない。検査チップ2が第一試薬18と第二試薬19とが同じタイミングで混合部80に流入するように形成されてもよい。例えば、試薬定量部134Aより上流側の経路に第一試薬18を受ける試薬受け部を複数形成し、試薬定量部134Aに第一試薬18が流入するタイミングを遅らせることで、第一試薬18と第二試薬19とが同じタイミングで混合部80に流入するようにしてもよい。この場合でも、第一試薬18が流れる経路841と第二試薬19が流れる経路842とが重なる領域は、壁面303Cの一部の領域843に限られるので、第一試薬18と第二試薬19とが反応しきる前に混合部80に第一試薬18と第二試薬19とが流入する。故に、第一試薬18と第二試薬19とが反応した後の試薬が混合部80に流れ、検査結果に影響を及ぼす可能性を低減できる。
【0094】
また、合流孔部351は、第一接続流路301と第二接続流路331とを合流させるために第一接続流路301と第二接続流路331との間の壁部を貫通していればよく、板材20を前後方向に貫通しなくてもよい。この場合、混合部80側に向かうほど、深さ方向の流路の幅を狭める傾斜面が合流孔部351の位置、より詳細には、傾斜面が合流孔部351の後側に設けられてもよい。この場合、合流孔部351の後部が傾斜面で形成されるので、合流孔部は板材20を前後方向に貫通しない。
【0095】
また、傾斜面505は、設けられていなくてもよい。例えば、合流孔部351の右端部355は、傾斜面505の左端によって形成されるのではなく、前後方向の壁部によって形成されてもよい。また、図4に示す第一接続流路301の幅L4は、幅L5以下でもよい。また、図3に示す領域502における流路の幅L2は、領域501における流路の幅L1以下でもよい。また、領域502における流路の幅L2は、領域503における流路の幅L3以下でもよい。また、測定部81は、混合部80の下部であったが、混合部80とは別に設けられていてもよい。
【0096】
また、図3に示す壁部345と壁面349との間に他の面が存在し、壁面349と合流孔部351とが図3に示す位置より混合部80側である左側にあってもよい。また、図9に示す第一試薬18が第一接続流路301から混合部80に流入する過程において第一試薬18が壁面303Bに接触しなければ、上端部353は、第一壁面302から下方に離間した状態又は第一壁面302と平行でない状態で第一壁面302に沿っていてもよい。また、合流孔部351の上端部353が、第一壁面302に沿っていなくてもよい。また、合流孔部351の下端部352が第二壁面303に沿っていればよく、例えば、図12及び図13に示す合流孔部800が本発明の「孔部」であってもよい。また、図8(G)及び図8(H)に示す第二試薬19が第一接続流路301及び混合部80に流入する過程において第二試薬19が第一壁面302に接触しなければ、下端部352は、第二壁面303から上方に離間した状態又は第二壁面303と平行でない状態で第二壁面303に沿っていてもよい。
【符号の説明】
【0097】
2,200 検査チップ
17,17A,17B 検体
18 第一試薬
19 第二試薬
20 板材
80 混合部
134,134A,134B 試薬定量部
139 案内部
146 試薬定量面
201 前面
202 後面
301 第一接続流路
302 第一壁面
303 第二壁面
306,347 流入口
308 試薬流路壁面
311 仮想線
320 仮想面
331 第二接続流路
341,342,343,344 試薬受け部
345 壁部
351,800 合流孔部
352,801 下端部
353,802 上端部
501,502,503 領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13