特許第6036700号(P6036700)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6036700
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】車両用動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 6/36 20071001AFI20161128BHJP
   B60K 6/445 20071001ALI20161128BHJP
   F16H 1/28 20060101ALI20161128BHJP
   F16H 57/028 20120101ALI20161128BHJP
【FI】
   B60K6/36
   B60K6/445ZHV
   F16H1/28
   F16H57/028
【請求項の数】5
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-542738(P2013-542738)
(86)(22)【出願日】2011年11月8日
(86)【国際出願番号】JP2011075754
(87)【国際公開番号】WO2013069098
(87)【国際公開日】20130516
【審査請求日】2014年5月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085361
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 治幸
(74)【代理人】
【識別番号】100147669
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 光治郎
(72)【発明者】
【氏名】市川 彰孝
(72)【発明者】
【氏名】横内 由充
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 昌洋
(72)【発明者】
【氏名】茨木 隆次
(72)【発明者】
【氏名】土田 充孝
(72)【発明者】
【氏名】末永 真一郎
(72)【発明者】
【氏名】木村 弘道
【審査官】 田中 将一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−214646(JP,A)
【文献】 特開2009−113743(JP,A)
【文献】 特開2000−085385(JP,A)
【文献】 特開2002−081542(JP,A)
【文献】 特開2005−308094(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20 − 6/547
F16H 1/28 − 1/48
F16H 57/00 − 57/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン及び電動機を有するハイブリッド車両に設けられ、一軸心まわりに配設された外周歯と該外周歯に噛み合う内周歯との一方を有する第1部材と他方を有する第2部材とを備え、前記内周歯と前記外周歯とが互いに噛み合うことで前記第1部材と前記第2部材との前記一軸心まわりの相対回転が制限されており、前記第1部材と前記第2部材との相対回転の制限により前記電動機のトルクが駆動輪へ伝達される車両用動力伝達装置であって、
前記第1部材と前記第2部材とが前記外周歯と前記内周歯との周方向隙間に応じた範囲内で相対的に回動することに伴い、該第1部材と該第2部材との少なくとも一方に対し摩擦抵抗を生じつつ摺動する摺動部材を備え、
該摺動部材は環状の弾性体であり、
前記第2部材の軸端部は前記第1部材の軸端部に嵌め入れられてスプライン嵌合されており、
前記摺動部材は、前記第1部材と第2部材との間で前記一軸心方向に圧縮されるとともに、前記摺動部材の内周穴には前記第2部材の軸端部が圧入されており、前記電動機のトルクの大きさに応じて、前記第1部材に対し摺動する
ことを特徴とする車両用動力伝達装置。
【請求項2】
前記摺動部材は、前記電動機が空転状態であるときに、前記第1部材に対し摺動する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用動力伝達装置。
【請求項3】
前記第部材は駆動歯車を備え、
該駆動歯車と互いに噛み合う従動歯車が、前記エンジンから前記駆動輪への動力伝達経路の一部を構成する伝動軸に設けられ、
前記第部材は、前記電動機のロータに相対回転不能に固定された電動機ロータ軸を含んで構成されており、
前記摺動部材は、前記第1部材と前記第2部材との間で前記一軸心方向に圧縮されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用動力伝達装置。
【請求項4】
前記電動機のロータの前記一軸心まわりの慣性モーメントは前記第部材よりも大きい
ことを特徴とする請求項3に記載の車両用動力伝達装置。
【請求項5】
前記外周歯および前記内周歯は前記エンジンから前記駆動輪への動力伝達経路には含まれておらず、
前記電動機のトルクは、前記第1部材と前記第2部材との相対回転の制限により該動力伝達経路に供給される
ことを特徴とする請求項1からのいずれか1に記載の車両用動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両の駆動系から発生する異音を低減する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車両の駆動系に設けられて互いに噛み合うギヤ歯同士が衝突する歯打ち音を低減することができる車両用動力伝達装置が、従来からよく知られている。例えば、特許文献1および特許文献2のそれぞれの車両用動力伝達装置がそれである。それらの車両用動力伝達装置では、車両用動力伝達装置を制御する制御装置によって前記歯打ち音の低減が図られており、その制御装置は、前記歯打ち音の低減のために、エンジンの運転点を変更する。例えば、前記特許文献1の制御装置は、前記車両用動力伝達装置において前記歯打ち音が発生する条件が検出された場合には、エンジン回転速度を所定値以上に制御する。このようにエンジンが制御されることにより、エンジンがトルク変動の大きな領域で運転されることが回避され、前記歯打ち音が低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−093725号公報
【特許文献2】特開2008−201351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1および特許文献2では、前述したように、制御装置が実行する制御によって前記歯打ち音の低減が図られている。また、ハイブリッド車両では、走行用の電動機のトルク(電動機トルク)が零または略零であるときに前記歯打ち音が生じ易くなることから、その歯打ち音の低減を図るために、電動機トルクが変化しその正負が反転する過程では、電動機トルクの零付近におけるその電動機トルクの変化率を高くする制御が実行される。このように従来技術では、前記エンジン又は前記電動機の制御によって前記歯打ち音の低減が図られれているが、その歯打ち音の低減を優先して前記エンジン又は前記電動機が制御されるため、歯打ち音が低減されることと引き換えに、燃費またはドライバビリティの悪化につながる可能性があった。なお、このような課題は未公知のことである。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、車両の燃費またはドライバビリティの悪化につながらないように、駆動系での歯打ち音を低減することができる車両用動力伝達装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するための第1発明の要旨とするところは、(a)エンジン及び電動機を有するハイブリッド車両に設けられ、一軸心まわりに配設された外周歯とその外周歯に噛み合う内周歯との一方を有する第1部材と他方を有する第2部材とを備え、前記内周歯と前記外周歯とが互いに噛み合うことで前記第1部材と前記第2部材との前記一軸心まわりの相対回転が制限されており、前記第1部材と前記第2部材との相対回転の制限により前記電動機のトルクが駆動輪へ伝達される車両用動力伝達装置であって、(b)前記第1部材と前記第2部材とが前記外周歯と前記内周歯との周方向隙間に応じた範囲内で相対的に回動することに伴い、その第1部材とその第2部材との少なくとも一方に対し摩擦抵抗を生じつつ摺動する摺動部材を備え、(c)その摺動部材は環状の弾性体であり、(d)前記第2部材の軸端部は前記第1部材の軸端部に嵌め入れられてスプライン嵌合されており、(e)前記摺動部材は、前記第1部材と第2部材との間で前記一軸心方向に圧縮されるとともに、前記摺動部材の内周穴には前記第2部材の軸端部が圧入されており、前記電動機のトルクの大きさに応じて、前記第1部材に対し摺動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
前記車両用動力伝達装置において、前記電動機のトルクの大きさによっては前記内周歯と前記外周歯とが互いに周方向に振動し易くなることがあるところ、前記第1発明のようにすれば、その内周歯と外周歯とが互いに周方向に振動することが、前記環状の摺動部材が摺動して発生させる前記摩擦抵抗により抑えられるので、前記内周歯と前記外周歯とが互いに周方向に振動することに起因した歯打ち音を低減することができる。そして、前記エンジンまたは前記電動機のトルクが前記歯打ち音低減のために制御されるわけではなく、前記摺動部材は前記第1部材と前記第2部材との相対的な回動方向が反転するときに前記外周歯と前記内周歯との周方向隙間に応じた微小な摺動ストロークにおいて摺動するだけであるので、その摺動に起因したエネルギ損失は殆ど無く、車両の燃費またはドライバビリティの悪化につながらないように前記歯打ち音の低減を図ることができる。なお、燃費とは、例えば単位燃料消費量当たりの走行距離等であり、燃費の向上とはその単位燃料消費量当たりの走行距離が長くなることであり、或いは、車両全体としての燃料消費率(=燃料消費量/駆動輪出力)が小さくなることである。逆に、燃費の低下(悪化)とはその単位燃料消費量当たりの走行距離が短くなることであり、或いは、車両全体としての燃料消費率が大きくなることである。
【0008】
また、第2発明の要旨とするところは、前記第1発明の車両用動力伝達装置であって、前記摺動部材は、前記電動機が空転状態であるときに、前記第1部材に対し摺動することを特徴とする。このようにすれば、前記歯打ち音は特に前記電動機が空転状態であるときに生じ易いので、効果的に前記歯打ち音の低減を図ることができる。また、前記摺動部材が常時摺動する場合と比較して、その摺動部材の磨耗を抑えることが可能である。
【0009】
また、第3発明の要旨とするところは、前記第1発明または前記第2発明の車両用動力伝達装置であって、(a)前記第部材は駆動歯車を備え、(b)その駆動歯車と互いに噛み合う従動歯車が、前記エンジンから前記駆動輪への動力伝達経路の一部を構成する伝動軸に設けられ、(c)前記第部材は、前記電動機のロータに相対回転不能に固定された電動機ロータ軸を含んで構成されており、(d)前記摺動部材は、前記第1部材と前記第2部材との間で前記一軸心方向に圧縮されていることを特徴とする。このようにすれば、前記電動機のトルクが前記駆動歯車から前記従動歯車に伝達される構造の車両用動力伝達装置において、前記摺動部材の摺動による前記摩擦抵抗を適切な大きさにする構成を、容易に成立させることが可能である。
【0010】
また、第4発明の要旨とするところは、前記第3発明の車両用動力伝達装置であって、前記電動機のロータの前記一軸心まわりの慣性モーメントは前記第部材よりも大きいことを特徴とする。このようにすれば、前記電動機のロータの前記慣性モーメントが例えば前記第部材よりも小さい場合と比較して、前記摺動部材の摺動により前記第部材に大きな慣性モーメントを付与することができる。その結果として、例えば、前記従動歯車と前記駆動歯車との間で生じる歯打ち音が低減され、前記伝動軸が伝達するエンジントルクの脈動が抑えられる。
【0013】
また、第発明の要旨とするところは、前記第1発明から前記第発明の何れか一の車両用動力伝達装置であって、(a)前記外周歯および前記内周歯は前記エンジンから前記駆動輪への動力伝達経路には含まれておらず、(b)前記電動機のトルクは、前記第1部材と前記第2部材との相対回転の制限によりその動力伝達経路に供給されることを特徴とする。このようにすれば、前記電動機のトルクが零または略零のときに前記外周歯と前記内周歯とが歯打ち音を出し易く、そのような構成において適切に前記歯打ち音を低減できる。
【0014】
ここで、好適には、前記摺動部材の表面は粗面で構成されている。
【0015】
また、好適には、前記第1部材と前記第2部材とは、前記外周歯と前記内周歯とが互いに噛み合うことでスプライン嵌合をしている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明が適用された実施例1においてハイブリッド車両の構造を説明するための骨子図である。
図2図1のハイブリッド車両が有するハイブリッド車両用駆動装置の構造を説明するための断面図である。
図3図2の車両用動力伝達装置を軸心と平行な方向から見た図に対応しており、図2において、カウンタ軸、動力伝達軸、デフギヤ、複合ギヤ、第1電動機、および第2電動機の配置位置、および各軸心の配置位置を簡略的に示す図である。
図4図2において第3軸心近傍であるIV部を拡大した拡大断面図である。
図5図4における動力伝達軸と第2ロータ軸とのスプライン嵌合部分の断面図、すなわち、図4においてV−V方向に見た動力伝達軸および第2ロータ軸の断面図である。
図6図5におけるVI部を拡大した図である。
図7】本発明が適用された実施例2においてハイブリッド車両に設けられたハイブリッド車両用駆動装置の構成を説明する骨子図である。
図8図7の車両用動力伝達装置のうちの動力分配用遊星歯車装置、減速用遊星歯車装置、および円筒状出力部材を含む部分を拡大して示す断面図である。
図9図8におけるトランスアクスルケースと第2キャリヤに含まれる第1キャリヤ部材とのスプライン嵌合部分の断面図、すなわち、図8においてIX−IX方向に見たトランスアクスルケースおよび第1キャリヤ部材の断面図である。
図10図9におけるX部を拡大した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
【実施例1】
【0018】
図1は、本発明が適用されたハイブリッド車両6(以下、車両6という)の構造を説明するための骨子図である。図2は、その車両6が有するハイブリッド車両用駆動装置7(以下、駆動装置7という)の構造を説明するための断面図である。その駆動装置7は、走行用駆動力源として機能し公知のガソリンエンジンやディーゼルエンジン等であるエンジン8と、エンジン8の動力を駆動輪9に伝達する車両用動力伝達装置10(以下、動力伝達装置10という)とを含んでいる。図2に示すように、動力伝達装置10は、その動力伝達装置10の筺体であるケーシング12内に互いに平行な4つの回転軸心(C1〜C4)を備えて構成されている。第1軸心C1はエンジン8の回転軸心に一致しており、第1軸心C1上には、入力軸14、動力分配機構28、および第1電動機MG1の第1ロータ軸16が回転可能に支持されている。第2軸心C2上には、カウンタ軸18が回転可能に配置されている。第3軸心C3上には、動力伝達軸20および第2電動機MG2の第2ロータ軸22が回転可能に支持されている。また、第4軸心C4上には、差動歯車装置すなわちデフギヤ24が回転可能に支持されている。なお、第2電動機MG2は本発明の電動機に対応し、第3軸心C3は本発明の一軸心に対応する。また、動力伝達軸20は本発明の第部材に対応し、第2ロータ軸22は本発明の第部材および電動機ロータ軸に対応し、カウンタ軸18は本発明の伝動軸に対応する。
【0019】
ケーシング12は、ハウジング12a、ケース12bおよびカバー12cの3つのケース部材から構成された非回転部材であり、各ケース部材の軸方向の端面(合わせ面)がボルトによって締結されることで1つのケーシング12として構成される。また、ケース12bには、各回転軸心と略垂直な隔壁13が形成されている。
【0020】
入力軸14は、針状ころ軸受15およびスラスト軸受17を介してケーシング12を構成するハウジング12aに相対回転可能に支持されている。
【0021】
入力軸14の外周側には、ダンパ装置26、遊星歯車装置から成る動力分配機構28が配置されている。ダンパ装置26は、エンジン8から伝達されるトルク変動を吸収するものであり、そのエンジン8と入力軸14との間に動力伝達可能に介挿されている。ダンパ装置26の外周部は、エンジン8のクランク軸32に連結されている円盤状のフライホイール34にボルト36によって締結され、内周部が入力軸14の軸方向の一端にスプライン嵌合されている。
【0022】
動力分配機構28は、第1軸心C1まわり回転可能なサンギヤSおよびリングギヤRとそれらと噛み合うピニオンギヤを自転および公転可能に支持するキャリヤCAとから主に構成されている。サンギヤSはスプライン嵌合によって第1ロータ軸16に相対回転不能に連結され、キャリヤCAは入力軸14から径方向に伸びる鍔部14aに相対回転不能に接続されている。また、リングギヤRは後述するカウンタドライブギヤ38が形成されている複合ギヤ軸40の内周部に形成されている。
【0023】
複合ギヤ軸40は、第1軸受42および第2軸受46を介してケーシング12に相対回転可能に支持されている。具体的には、複合ギヤ軸40の軸方向においてダンパ装置26側の内周端部に第1軸受42が配置されており、その第1軸受42を介して複合ギヤ軸40がハウジング12aに相対回転可能に支持されている。また、複合ギヤ軸40の軸方向において第1電動機MG1側の内周端部に第2軸受46が配置されており、その第2軸受46を介して複合ギヤ軸40がケース12bの隔壁13に相対回転可能に支持されている。
【0024】
第1ロータ軸16は、第3軸受48および第4軸受50を介してケーシング12に相対回転可能に支持されている。具体的には、第1ロータ軸16の軸方向において中間部近傍の外周部に第3軸受48が配置されており、第3軸受48を介して第1ロータ軸16がケース12bの隔壁13に相対回転可能に支持されている。また、第1ロータ軸16の軸方向においてカバー12c側の外周端部に第4軸受50が配置されており、第4軸受50を介して第1ロータ軸16が、カバー12cにボルト52で固定されているカバー部材54に相対回転可能に支持されている。なお、第3軸受48は、その外輪がケース12bの隔壁13に圧入(外輪圧入)されている。
【0025】
第1ロータ軸16の外周側には、第1電動機MG1が配置されている。第1電動機MG1は、ステータ56、ロータ58およびコイルエンド59を主に備えて構成されている。第1電動機MG1はモータ機能と発電機能とを有する所謂モータジェネレータである。その第1電動機MG1のステータ56は、ボルト60によってケーシング12(ケース12b)に回転不能に固定されている。また、ロータ58の内周部は、第1ロータ軸16に相対回転不能に固定されている。従って、第1電動機MG1の回転が第1ロータ軸16に伝達される。また、第1ロータ軸16の回転速度すなわち第1電動機MG1の回転速度を検出するためのレゾルバ62がカバー12cに固定されている。
【0026】
第2軸心C2上に配置されているカウンタ軸18は、第5軸受64および第6軸受66を介してケーシング12に相対回転可能に支持されている。具体的には、カウンタ軸18の軸方向においてハウジング12a側の外周端部に第5軸受64が配置されており、その第5軸受64を介してカウンタ軸18がハウジング12aに相対回転可能に支持されている。また、カウンタ軸18の軸方向においてケース12b側の外周端部に第6軸受66が配置されており、その第6軸受66を介してカウンタ軸18がケース12bの隔壁13に相対回転可能に支持されている。なお、第6軸受66は、その外輪がケース12bの隔壁13に圧入(外輪圧入)されている。
【0027】
カウンタ軸18の軸方向においてハウジング12a側には、複合ギヤ軸40に形成されているカウンタドライブギヤ38と、後述するリダクションギヤ70との各々と噛み合うカウンタドリブンギヤ72が形成されている。また、カウンタ軸18の軸方向においてケース12b側には、後述するデフリングギヤ74と噛み合うデフドライブギヤ76が形成されている。なお、カウンタドライブギヤ38、リダクションギヤ70、こららと噛み合うカウンタドリブンギヤ72、デフリングギヤ74、これと噛み合うデフドライブギヤ76は、いずれも斜歯に形成されている。すなわち、これらにギヤ38,70,72,74,76は何れも斜歯歯車である。なお、リダクションギヤ70は本発明の駆動歯車に対応し、カウンタドリブンギヤ72は本発明の従動歯車に対応する。
【0028】
第3軸心C3上に配置されている動力伝達軸20は、第7軸受78および第8軸受80を介してケーシング12に相対回転可能に支持されている。具体的には、動力伝達軸20の軸方向においてハウジング12a側の外周端部に第7軸受78が配置されており、その第7軸受78を介して動力伝達軸20がハウジング12aに相対回転可能に支持されている。また、動力伝達軸20の軸方向においてケース12b側の外周端部に第8軸受80が配置されており、その第8軸受80を介して動力伝達軸20がケース12bの隔壁13に相対回転可能に支持されている。
【0029】
動力伝達軸20には、カウンタドリブンギヤ72と噛み合うリダクションギヤ70が形成されている。また、動力伝達軸20の軸方向において第8軸受80側の端部が第2ロータ軸22に相対回転不能にスプライン嵌合されている。第2ロータ軸22は、第9軸受82および第10軸受84を介してケーシング12に相対回転可能に支持されている。具体的には、第2ロータ軸22の軸方向において動力伝達軸20側の外周端部に第9軸受82が配置されており、その第9軸受82を介して第2ロータ軸22がケース12bの隔壁13に相対回転可能に支持されている。また、第2ロータ軸22の軸方向においてカバー12c側の外周端部に第10軸受84が配置されており、その第10軸受84を介して第2ロータ軸22がカバー12cに相対回転可能に支持されている。ここで、第9軸受82の外輪は、ケース12bの隔壁13に圧入(外輪圧入)されている。
【0030】
第2ロータ軸22の外周側には、第2電動機MG2が配置されている。第2電動機MG2は、ステータ88、ロータ90およびコイルエンド91を主に備えて構成されている。第2電動機MG2は、第1電動機MG1と同様に、モータ機能と発電機能とを有する所謂モータジェネレータである。その第2電動機MG2のステータ88は、ボルト92によってケーシング12(ケース12b)に回転不能に固定されている。また、ロータ90の内周部は、第2ロータ軸22に相対回転不能に固定されている。従って、第2電動機MG2の回転が第2ロータ軸22に伝達される。また、第2ロータ軸22は動力伝達軸20にスプライン嵌合されていることから、第2ロータ軸22の回転がリダクションギヤ70に伝達される。また、第2ロータ軸22の回転速度すなわち第2電動機MG2の回転速度を検出するためのレゾルバ94がカバー12cに固定されている。第2電動機MG2では、ロータ90は第2ロータ軸22の径方向外側に配設されており、そのロータ90の重量は、動力伝達軸20と比較して極めて大きい。従って、そのロータ90の第3軸心C3まわりの慣性モーメントは動力伝達軸20よりも極めて大きい。当然、一体回転するロータ90および第2ロータ軸22の両方を併せた第3軸心C3まわりの慣性モーメントは動力伝達軸20よりも極めて大きい。例えば第2電動機MG2が空転状態であれば、ロータ90および第2ロータ軸22はフライホイールとして機能する。
【0031】
第4軸心C4上に配置されている差動機構として機能するデフギヤ24は、第11軸受96および第12軸受98を介してケーシング12に相対回転可能に支持されている。具体的には、デフギヤ24を構成するデフケース100の軸方向の外周一端が、第11軸受96を介してハウジング12aに相対回転可能に支持されており、デフケース100の軸方向の外周他端が、第12軸受98を介してケース12bに相対回転可能に支持されている。このデフケース100の外周に、デフドライブギヤ76と噛み合うデフリングギヤ74がボルト102によって固定されている。なお、デフギヤ24の具体的な構成及び作動は公知であるため、その説明を省略する。
【0032】
ここで、デフドライブギヤ76と噛み合うデフギヤ24が別体で示す図として記載されているのは、第1軸心C1〜第4軸心C4が、実際には一平面上に配置されていないためである。具体的には、図3に示すように各軸心C1〜C4が配置されている。図3は、カウンタ軸18、動力伝達軸20、デフギヤ24、複合ギヤ40、第1電動機MG1、および第2電動機MG2の配置位置、および各軸心C1〜C4の配置位置を簡略的に示す図であって、図2の動力伝達装置10を軸心と平行な方向から見た図に対応している。なお、図3において上側が車両6の鉛直上方である。図3において、図2に示すハウジング12aと図示しないエンジンケースとの合わせ面104は、実線で囲まれて表されている。また、図2に示すハウジング12aとケース12bとの合わせ面106は、破線で囲まれて表されている。また、ケース12bとカバー12cとの合わせ面108は、一点鎖線で囲まれて表されている。
【0033】
図3に示すように、第2電動機MG2および動力伝達軸20の回転軸心である第3軸心C3が最も鉛直上方に位置し、デフギヤ24の回転軸心である第4軸心C4が最も鉛直下方に位置している。またカウンタ軸18の回転軸心である第2軸心C2が第1軸心C1、第3軸心C3、および第4軸心C4で囲まれる領域内に位置している。そして、カウンタドライブギヤ38とリダクションギヤ70との各々がカウンタドリブンギヤ72に噛み合わされ、デフドライブギヤ76とデフリングギヤ74とが互いに噛み合わされている。
【0034】
このように構成された動力伝達装置10では、エンジン8の動力は、ダンパ装置26を介して入力軸14に入力され、その入力軸14から、動力分配機構28、カウンタ軸18、デフギヤ24、および一対の車軸等を順次介して一対の駆動輪9へ伝達される。すなわち、その入力軸14と動力分配機構28とカウンタ軸18とデフギヤ24とは、エンジン8から駆動輪9への動力伝達経路であるエンジン動力伝達経路を構成している。また、動力分配機構28は、サンギヤSに連結された第1電動機MG1により差動状態が制御され、それにより電気的な無段変速機として機能する。また、第2電動機MG2のトルクすなわち第2電動機MG2の動力は、互いに噛み合うリダクションギヤ70とカウンタドリブンギヤ72とを介して前記エンジン動力伝達経路の一部を構成するカウンタ軸18に供給される。すなわち、第2電動機MG2の動力は、第2ロータ軸22から、動力伝達軸20、カウンタ軸18、デフギヤ24、および一対の車軸等を順次介して一対の駆動輪9へ伝達される。
【0035】
図4は、図2において第3軸心C3近傍であるIV部を拡大した拡大断面図である。図5は、動力伝達軸20と第2ロータ軸22とのスプライン嵌合部分の断面図、すなわち、図4においてV−V方向に見た動力伝達軸20および第2ロータ軸22の断面図である。図6は、図5におけるVI部を拡大した図である。図2の説明において動力伝達軸20と第2ロータ軸22とは互いにスプライン嵌合していることを説明したが、そのスプライン嵌合について図4等を用いて詳述する。図5に示すように、動力伝達軸20は、第3軸心C3まわりに配設された複数の外周歯20aを備えており、第2ロータ軸22は、第3軸心C3まわりに配設された複数の内周歯22aを備えている。そして、その外周歯20aと内周歯22aとは互いに噛み合っており、この外周歯20aと内周歯22aとの噛合いにより、前記スプライン嵌合が構成されている。この動力伝達軸20と第2ロータ軸22とのスプライン嵌合は隙間嵌であり、図6に示すように、外周歯20aと内周歯22aとの間には第3軸心C3まわりの周方向に微小な隙間GP1(以下、周方向隙間GP1という)が存在する。従って、図2の説明において動力伝達軸20は第2ロータ軸22に相対回転不能にスプライン嵌合されていると前述されているが、厳密に言えば、動力伝達軸20と第2ロータ軸22とは、上記周方向隙間GP1に応じた範囲内で第3軸心C3まわりに互いに回動可能である。すなわち、動力伝達軸20と第2ロータ軸22とのスプライン嵌合では、正確に表現すれば、動力伝達軸20と第2ロータ軸22との第3軸心C3まわりの相対回転が、外周歯20aと内周歯22aとが互いに噛み合うことで制限されている。そして、その動力伝達軸20と第2ロータ軸22との相対回転の制限により、要するに、動力伝達軸20と第2ロータ軸22とのスプライン嵌合により、第2電動機MG2のトルクが駆動輪9へ伝達される。
【0036】
図4に示すように、動力伝達装置10は、第2ロータ軸22のリダクションギヤ70側の端面22bと第8軸受80との間で且つ動力伝達軸20の外周上に、円環状の摺動部材120を備えている。その摺動部材120は、例えば長方形断面をしており、耐摩耗性の高いゴムなどの弾性体で構成されている。また、摺動時の摩擦抵抗を大きくするため、摺動部材120の表面は粗面で構成されている。摺動部材120は動力伝達軸20と同一の軸心上に配設され、摺動部材120の内周穴には動力伝達軸20が圧入されており、それにより摺動部材120は動力伝達軸20と一体的に回動または回転する。また、摺動部材120は、摺動時の摩擦抵抗を得るために、第3軸心C3に平行な方向に摺動部材120が圧縮されるように、動力伝達軸20と第2ロータ軸22とによって押圧されている。図4には、動力伝達軸20に対しては摺動部材120が第8軸受80の内輪を介して押圧されていることが示されている。
【0037】
このようにして摺動部材120が第3軸心C3上に取り付けられているので、摺動部材120は、動力伝達軸20と第2ロータ軸22とが周方向隙間GP1(図6参照)に応じた範囲内で相対的に第3軸心C3まわりに回動することに伴い、第2ロータ軸22に対し摩擦抵抗を生じつつ僅かに摺動する。詳細には、第2ロータ軸22の摺動部材120側の端面22bとその端面22bに対向する摺動部材120の側面120aとが互いに第3軸心C3まわりの周方向に摺動する。但し、第2電動機MG2の駆動時または回生作動時に動力伝達軸20と第2ロータ軸22との間でトルク伝達が行われている場合には、外周歯20aと内周歯22aとが周方向の一方に互いに押圧され続けるので、摺動部材120は第2ロータ軸22に対して摺動しない。従って、摺動部材120は、第2電動機MG2のトルクの大きさに応じて、第2ロータ軸22に対し摺動する。具体的には、摺動部材120は、第2電動機MG2が空転状態であるときに、第2ロータ軸22に対し摺動する。
【0038】
上述した本実施例の動力伝達装置10においては、次のような効果(A1)乃至(A6)がある。(A1)本実施例によれば、動力伝達軸20と第2ロータ軸22とは、その動力伝達軸20の外周歯20aとその第2ロータ軸22の内周歯22aとが互いに噛み合うことにより、隙間嵌のスプライン嵌合をしている。そして、外周歯20aと内周歯22aとが互いに噛み合うことで、要するに、上記スプライン嵌合がなされていることで、動力伝達軸20と第2ロータ軸22との第3軸心C3まわりの相対回転(相対回動)が制限されている。動力伝達装置10では、この動力伝達軸20と第2ロータ軸22との相対回転の制限により、すなわち上記スプライン嵌合により、第2電動機MG2のトルクが駆動輪9へ伝達される。更に、動力伝達装置10が備える摺動部材120は、動力伝達軸20と第2ロータ軸22とが外周歯20aと内周歯22aとの周方向隙間GP1(図6参照)に応じた範囲内で相対的に回動することに伴い、第2ロータ軸22に対し摩擦抵抗を生じつつ摺動する。具体的にその摺動部材120は、第2電動機MG2のトルクの大きさに応じて、第2ロータ軸22に対し摺動する。従って、動力伝達装置10では、第2電動機MG2のトルクの大きさによってはエンジン8のトルク脈動などに起因して外周歯20aと内周歯22aとが互いに周方向に振動し易くなることがあるが、そのように外周歯20aと内周歯22aとが互いに周方向に振動することが、摺動部材120が摺動して発生させる摩擦抵抗により抑えられるので、外周歯20aと内周歯22aとが互いに周方向に振動することに起因した歯打ち音を低減することができる。そして、従来技術のようにエンジン8または第2電動機MG2の動作点が歯打ち音低減のために制御されるわけではなく、摺動部材120は動力伝達軸20と第2ロータ軸22との相対的な回動方向が反転するときに前記周方向隙間GP1に応じた微小な摺動ストロークにおいて摺動するだけであるので、その摺動部材120の摺動に起因したエネルギ損失は殆ど無く、車両6の燃費またはドライバビリティの悪化につながらないように歯打ち音の低減を図ることができる。また、ダンパ装置26により、或いは、動力伝達系の慣性力増大により、上記歯打ち音等の低減を図ることも考え得るが、本実施例のように摺動部材120を設けて上記歯打ち音等の低減を図ることの方が、コスト上昇を抑えることができ且つ車両重量の増加を抑えることができる。
【0039】
(A2)また、本実施例によれば、摺動部材120は、第2電動機MG2が無負荷状態すなわち空転状態であるときに、第2ロータ軸22に対し摺動する。従って、動力伝達軸20および第2ロータ軸22からの歯打ち音は特に第2電動機MG2が空転状態であるときに生じ易いので、効果的にその歯打ち音の低減を図ることができる。また、摺動部材120が常時摺動する場合と比較して、その摺動部材120の磨耗を抑えることが可能である。
【0040】
(A3)また、本実施例によれば、摺動部材120は、動力伝達軸20と第2ロータ軸22とによって押圧された状態で、第3軸心C3上に設けられている。従って、動力伝達装置10において、摺動部材120の摺動による前記摩擦抵抗を適切な大きさにする構成を、容易に成立させることが可能である。
【0041】
(A4)また、本実施例によれば、動力伝達軸20はリダクションギヤ70を備え、そのリダクションギヤ70と互いに噛み合うカウンタドリブンギヤ72が、エンジン8から駆動輪9への動力伝達経路(エンジン動力伝達経路)の一部を構成するカウンタ軸18に設けられている。そして、第2電動機MG2のロータ90の第3軸心C3まわりの慣性モーメントは、動力伝達軸20よりも大きい。従って、第2電動機MG2のロータ90の前記慣性モーメントが例えば動力伝達軸20よりも小さい場合と比較して、動力伝達軸20が第3軸心C3まわりに回動する振動を生じる場合に、摺動部材120の摺動により動力伝達軸20に大きな慣性モーメントを付与することができる。その結果として、例えば、リダクションギヤ70とカウンタドリブンギヤ72との間で生じる歯打ち音が低減され、カウンタ軸18が伝達するエンジントルクの脈動が抑えられる。このエンジントルクの脈動すなわちエンジン回転速度の脈動は、デフギヤ24および車軸等を介して駆動輪9に伝達されることで車体を構成する鋼板(例えば外装鋼板など)を振動させ、所謂こもり音を発生させる原因となる。従って、そのこもり音も低減することができる。
【0042】
(A5)また、本実施例によれば、摺動部材120は弾性体である。そのため、摺動部材120を複雑な構造にする必要がなく、摺動部材120の前記摩擦抵抗を、前記歯打ち音や前記こもり音等の低減を図るために適した大きさにすることが容易であるという利点がある。
【0043】
(A6)また、本実施例によれば、外周歯20aおよび内周歯22aはエンジン8から駆動輪9への前記エンジン動力伝達経路には含まれていない。要するに、動力伝達軸20および第2ロータ軸22はそのエンジン動力伝達経路には含まれていない。そして、第2電動機MG2のトルクは、動力伝達軸20と第2ロータ軸22との相対回転の制限により、すなわち動力伝達軸20と第2ロータ軸22とのスプライン嵌合により、動力伝達軸20から第2ロータ軸22へと伝達されて前記エンジン動力伝達経路に供給される。詳細には、そのエンジン動力伝達経路の一部を構成するカウンタ軸18に供給される。そのため、第2電動機MG2のトルクが零または略零のときに外周歯20aと内周歯22aとが歯打ち音を出し易く、そのような構成において適切に前記歯打ち音を低減できる。
【0044】
また、第2電動機MG2のトルクが零または略零である場合には、前記エンジン8のトルク脈動などに起因してリダクションギヤ70とカウンタドリブンギヤ72との間に歯打ち音が発生すること、或いは、リダクションギヤ70およびカウンタドリブンギヤ72が斜歯歯車であるために動力伝達軸20が軸方向に振動して第7軸受78とハウジング12aとの間で振動音が発生することも想定される。しかし、動力伝達装置10では、ロータ90および第2ロータ軸22がフライホイールとして機能すると共に摺動部材120が第2ロータ軸22に対し摺動するので、それらの歯打ち音および振動音を低減することができる。なお、摺動部材120が第2ロータ軸22に対し摺動する際の摩擦抵抗の大きさは、上記歯打ち音および振動音などが乗員に違和感を与えない程度にまで低減されるように予め実験的に決定される。このとき、上記摩擦抵抗が大き過ぎると、微小な振動では摺動部材120の摺動が生じないので上記歯打ち音等を十分に低減できず、且つ摺動部材120の磨耗が大きくなり、逆に、上記摩擦抵抗が小さ過ぎると、摺動部材120を設けないことと同等になることを考慮する。
【0045】
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において実施例相互に共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【実施例2】
【0046】
図7は、本発明が適用された実施例2のハイブリッド車両306(以下、車両306という)に設けられたハイブリッド車両用駆動装置310(以下、駆動装置310という)の構成を説明する骨子図である。図7において、駆動装置310は、例えばFF(フロントエンジン・フロントドライブ)形式のハイブリッド車両に設けられる。この駆動装置310は、駆動輪9を回転駆動するためのものであり、エンジン8と車両用動力伝達装置311(以下、動力伝達装置311という)とを備えている。その動力伝達装置311は、エンジン8の出力軸(クランク軸)32に連結され、そのエンジン8からのトルク変動等による脈動を吸収するダンパ装置318と、そのダンパ装置318を介してエンジン8に連結された動力伝達軸320と、動力伝達装置311の筺体であるトランスアクスルケース316とを備えている。更に、動力伝達装置311は、ダンパ装置318側から順に第1電動機MG1、第1遊星歯車装置としての動力分配用遊星歯車装置322、第2遊星歯車装置としての減速用遊星歯車装置324、および、本発明の電動機に対応する第2電動機MG2を、動力伝達軸320の外周側においてダンパ装置318および動力伝達軸320とそれぞれ同心上で且つトランスアクスルケース316内に収容して備えている。上記ダンパ装置318、動力伝達軸320、第1電動機MG1、動力分配用遊星歯車装置322、減速用遊星歯車装置324、および第2電動機MG2は、共通の軸中心線C上に配置されている。この軸中心線Cが本発明の一軸心に対応する。なお、トランスアクスルケース316は本発明の第2部材に対応する。
【0047】
動力分配用遊星歯車装置322は、第1電動機MG1に連結された第1サンギヤS1と、動力分配用遊星歯車装置322および減速用遊星歯車装置324の外周側に配置された円筒状出力部材326の動力分配用遊星歯車装置322側の端部に一体に設けられた第1リングギヤR1と、第1サンギヤS1の外周側および第1リングギヤR1の内周側においてそれら第1サンギヤS1および第1リングギヤR1にそれぞれ噛み合わされた複数の第1ピニオンP1と、動力伝達軸320に連結され、複数の第1ピニオンP1をそれぞれ回転可能且つ軸中心線Cまわりの公転可能に支持する第1キャリヤCA1とを有するシングルピニオン型の遊星歯車装置である。この動力分配用遊星歯車装置322は、エンジン8からの動力を第1電動機MG1と円筒状出力部材326とに機械的に分配する動力分配機構として機能するものであり、円筒状出力部材326の内周側において減速用遊星歯車装置324のダンパ装置318側に隣接して設けられている。動力分配用遊星歯車装置322により第1電動機MG1に分配されたエンジン8の動力は、その第1電動機MG1を発電機として駆動するために用いられる。また、動力分配用遊星歯車装置322により円筒状出力部材326に分配されたエンジン8の動力は、駆動輪9を回転駆動するために用いられる。上記円筒状出力部材326の軸中心線C方向の中間部には、その軸中心線C方向において動力分配用遊星歯車装置322の第1リングギヤR1と減速用遊星歯車装置324の第2リングギヤR2との間に位置する外周歯から成る第1ドライブギヤ328が一体に設けられている。
【0048】
第1モータジェネレータである第1電動機MG1は、エンジン8により動力分配用遊星歯車装置322を介して駆動されることで発電機として機能させられ、発電により発生した電気エネルギーを例えばバッテリ等の蓄電装置に充電する。また、第1電動機MG1は、例えばエンジン始動時には動力分配用遊星歯車装置322を介してエンジン8を駆動することでエンジン始動用電動機(エンジンスターター)として機能させられる。
【0049】
上記動力分配用遊星歯車装置322の差動状態は、第1電動機MG1の運転状態が制御されることにより連続的に変化させられる。そのため、動力分配用遊星歯車装置322および第1電動機MG1は、その第1電動機MG1の運転状態を制御して動力分配用遊星歯車装置322の差動状態を連続的に変化させることにより円筒状出力部材326の回転速度を無段階に変化させる電気式変速部を構成している。円筒状出力部材326に形成された第1ドライブギヤ328は、その電気式変速部の出力歯車すなわち出力回転部材として機能させられるものである。
【0050】
減速用遊星歯車装置324は、第2電動機MG2に連結された第2サンギヤS2と、円筒状出力部材326の減速用遊星歯車装置324側の端部に一体に設けられた第2リングギヤR2と、第2サンギヤS2の外周側および第2リングギヤR2の内周側においてそれら第2サンギヤS2および第2リングギヤR2にそれぞれ噛み合わされた複数の第2ピニオンP2と、複数の第2ピニオンP2をそれぞれ回転可能且つ軸中心線Cまわりの公転可能に支持する第2キャリヤCA2とを有するシングルピニオン型の遊星歯車装置である。そして、減速用遊星歯車装置324は、第2サンギヤS2に入力された第2電動機MG2の動力を第2リングギヤR2から駆動輪9に向けて出力する。第2キャリヤCA2は、非回転部材であるトランスアクスルケース316に対し相対回転不能にスプライン嵌合されている。そのため、この減速用遊星歯車装置324は、第2電動機MG2の減速機として機能するものである。なお、減速用遊星歯車装置324は本発明における遊星歯車装置に対応し、第2サンギヤS2は本発明におけるサンギヤに対応し、第2リングギヤR2は本発明におけるリングギヤに対応し、第2キャリヤCA2は本発明におけるキャリヤおよび第1部材に対応するものである。
【0051】
第2モータジェネレータである第2電動機MG2は、単独で或いはエンジン8と共に駆動輪9を回転駆動する原動機として機能させられる。また、第2電動機MG2は、例えば車両の減速時等には駆動輪9により駆動されることで発電機として機能させられ、発電により発生した電気エネルギーを例えばバッテリ等の蓄電装置に充電する。
【0052】
さらに、動力伝達装置311は、円筒状出力部材326の回転速度を減速して出力する減速歯車装置330と、その減速歯車装置330から伝達された動力を、左右一対の車軸332にそれらの回転差を許容しつつ分配する良く知られた差動歯車装置334とを備えている。減速歯車装置330は、動力伝達軸320に平行に設けられたカウンタ軸336と、そのカウンタ軸336に一体に設けられて第1ドライブギヤ328に噛み合わされた第1ドリブンギヤ338と、カウンタ軸336に一体に設けられた第2ドライブギヤ340とを有して構成されている。差動歯車装置334は、デフケース342と、そのデフケース342の外周側に固定されて第2ドライブギヤ340に噛み合わされた第2ドリブンギヤ344とを有して構成されている。
【0053】
このように構成された駆動装置310では、エンジン8の動力は、ダンパ装置318を介して動力伝達軸320に入力され、その動力伝達軸320から、動力分配用遊星歯車装置322、減速歯車装置330、差動歯車装置334、および一対の車軸332等を順次介して一対の駆動輪9へ伝達される。すなわち、動力伝達装置311において、動力伝達軸320と動力分配用遊星歯車装置322と減速歯車装置330と差動歯車装置334とは、エンジン8から駆動輪9への動力伝達経路である前記エンジン動力伝達経路を構成している。また、第2電動機MG2のトルクすなわち第2電動機MG2の動力は、減速用遊星歯車装置324を介して前記エンジン動力伝達経路の一部を構成する第1ドライブギヤ328に供給される。すなわち、第2電動機MG2の動力は、第2ロータシャフト370から、減速用遊星歯車装置324、第1ドライブギヤ328、減速歯車装置330、差動歯車装置334、および一対の車軸332等を順次介して一対の駆動輪9へ伝達される。
【0054】
また、駆動装置310は、例えばエンジン始動時には第1電動機MG1を用いてエンジン8を始動する。また、車両306の発進時には第2電動機MG2を用いて駆動輪9を駆動する。また、車両306の定常走行時には、エンジン8の動力を動力分配用遊星歯車装置322により円筒状出力部材326と第1電動機MG1とに分配し、円筒状出力部材326に分配された動力の一部により駆動輪9を駆動する共に、第1電動機MG1に分配された動力の他部によりその第1電動機MG1を発電させ、その発電により得られた電力により第2電動機MG2を駆動することでエンジン8の動力を補助する。また、車両306の減速時および制動時には、駆動輪9から伝わる動力により第2電動機MG2を回転させて発電を行うことで、運動エネルギーを電気エネルギーに変換して蓄電装置に回収する。
【0055】
図8は、図7の動力伝達装置311のうちの動力分配用遊星歯車装置322、減速用遊星歯車装置324、および円筒状出力部材326を含む部分を拡大して示す断面図である。以下、図7および図8を参照して第2キャリヤCA2の支持構造を詳細に説明する。
【0056】
円筒状出力部材326は、軸中心線C上において相互に隣接して設けられた動力分配用遊星歯車装置322および減速用遊星歯車装置324の外周側に配設された円筒状部材であり、その円筒状出力部材326の軸中心線C方向の両端部の外周側にそれぞれ配置された一対の第1ラジアル玉軸受346および第2ラジアル玉軸受348を介してトランスアクスルケース316により軸中心線Cまわりに回転可能に支持されている。その円筒状出力部材326の軸中心線C方向の両端部の内周側には、第1リングギヤR1および第2リングギヤR2がそれぞれ一体に設けられており、また、円筒状出力部材326の軸中心線C方向の中間部の外周側には、第1ドライブギヤ328およびパーキングロックギヤ350がそれぞれ一体に設けられている。要するに、円筒状出力部材326は、第1リングギヤR1、第2リングギヤR2、第1ドライブギヤ328、およびパーキングロックギヤ350が一体に設けられた複合ギヤ部材である。
【0057】
動力伝達軸320は、スプライン嵌合により相対回転不能に軸中心線C上で互いに直列に連結された大径部320aと小径部320bとから構成されている。その動力伝達軸320の大径部320aは、その両端部がダンパ装置318と第1キャリヤCA1とにそれぞれ連結され、第1針状ころ軸受352(図7参照)および第2針状ころ軸受354を介して第1電動機MG1の第1ロータシャフト356により支持されている。動力伝達軸320の小径部320bは、オイルポンプ358(図7参照)のポンプ駆動軸として機能するものであり、小径部320bの一端部が大径部320aの第1キャリヤCA1側の端部の内周面にスプライン嵌合により一体的に固定されると共に、他端部が機械式のオイルポンプ358に連結されている。
【0058】
上記第1ロータシャフト356は、軸中心線C方向に離隔した第3ラジアル玉軸受360(図7参照)および第4ラジアル玉軸受362を介してトランスアクスルケース316により支持されている。そして、第1電動機MG1のロータ(第1ロータ)58は、図7に示すように第3ラジアル玉軸受360と第4ラジアル玉軸受362との間において第1ロータシャフト356に固設されている。
【0059】
第2ロータシャフト370は、動力伝達軸320の小径部320bの外周側において、軸中心線C方向に離隔した第5ラジアル玉軸受366および第6ラジアル玉軸受368(図7参照)によって回転可能に両端部が支持されている。そして、第2電動機MG2のロータ(第2ロータ)90は、図7に示すように第5ラジアル玉軸受366と第6ラジアル玉軸受368との間において第2ロータシャフト370に固設されている。なお、第5ラジアル玉軸受366は、第2電動機MG2の減速用遊星歯車装置324側に配置されたトランスアクスルケース316の壁部316aの円筒状内周面に嵌めつけられた軸受である。
【0060】
上記第2ロータシャフト370は、その第2ロータシャフト370の両端部のうちの壁部316a側の端部370aからその壁部316aを通して延び出す片持状のサンギヤ嵌合部370bを有している。
【0061】
減速用遊星歯車装置324の第2サンギヤS2は、第2ロータシャフト370のサンギヤ嵌合部370bにスプライン嵌合により一体的に固定されている。図8に示すように、第2ロータシャフト370のサンギヤ嵌合部370bには、第2ロータシャフト370の端部370a側からサンギヤ嵌合部370bの先端に向けて順に、第5ラジアル玉軸受366と第2サンギヤS2とがそれぞれ嵌めつけられている。第5ラジアル玉軸受366の内輪は、第2ロータシャフト370の段付部端面と当接させられており、第5ラジアル玉軸受366と第2サンギヤS2とは、軸中心線C方向において相互に当接させられている。
【0062】
減速用遊星歯車装置324の第2キャリヤCA2は、軸中心線C方向の第2電動機MG2側の一端部を構成する第1キャリヤ部材378と、他端部を構成する第2キャリヤ部材380と、第2ピニオンP2を回転可能に支持するキャリヤピン382とを含んで構成されている。その第1キャリヤ部材378はトランスアクスルケース316の壁部316aにより支持されており、第2キャリヤ部材380は動力伝達軸20の大径部20aにより第7ラジアル玉軸受374を介して支持されている。上記第1キャリヤ部材378は、キャリヤピン382の第2電動機MG2側の端部を支持する円板状部材である。そして、第1キャリヤ部材378は、第2電動機MG2側へ突設されてトランスアクスルケース316の壁部316aの円筒状内周面384に嵌合された第1円筒状突部378aを有して構成されている。
【0063】
また、上記第2キャリヤ部材380は、キャリヤピン382の動力分配用遊星歯車装置322側の端部を支持する円板状部材である。そして、第2キャリヤ部材380は、動力分配用遊星歯車装置322側へ突設されて第7ラジアル玉軸受374を介して動力伝達軸20の大径部20aに支持された第2円筒状突部380aを有して構成されている。
【0064】
図9は、トランスアクスルケース316と第2キャリヤCA2に含まれる第1キャリヤ部材378とのスプライン嵌合部分の断面図、すなわち、図8においてIX−IX方向に見たトランスアクスルケース316および第1キャリヤ部材378の断面図である。図10は、図9におけるX部を拡大した図である。図7の説明においてトランスアクスルケース316と第2キャリヤCA2とは互いにスプライン嵌合していることを説明したが、そのスプライン嵌合について図8図10を用いて詳述する。図9に示すように、第1キャリヤ部材378は、軸中心線Cまわりに配設された複数の外周歯378bを備えており、トランスアクスルケース316は、軸中心線Cまわりに配設された複数の内周歯316bを備えている。そして、その外周歯378bと内周歯316bとは互いに噛み合っており、この外周歯378bと内周歯316bとの噛合いにより、前記スプライン嵌合が構成されている。この第1キャリヤ部材378とトランスアクスルケース316とのスプライン嵌合は隙間嵌であり、図10に示すように、外周歯378bと内周歯316bとの間には軸中心線Cまわりの周方向に微小な隙間GP2(以下、周方向隙間GP2という)が存在する。従って、図7の説明において第2キャリヤCA2はトランスアクスルケース316に相対回転不能にスプライン嵌合されていると前述されているが、厳密に言えば、第2キャリヤCA2の第1キャリヤ部材378とトランスアクスルケース316とは、上記周方向隙間GP2に応じた範囲内で軸中心線Cまわりに互いに回動可能である。すなわち、第2キャリヤCA2の第1キャリヤ部材378とトランスアクスルケース316とのスプライン嵌合では、正確に表現すれば、第1キャリヤ部材378とトランスアクスルケース316との軸中心線Cまわりの相対回転が、外周歯378bと内周歯316bとが互いに噛み合うことで制限されている。そして、その第1キャリヤ部材378とトランスアクスルケース316との相対回転の制限により、要するに、第2キャリヤCA2とトランスアクスルケース316とのスプライン嵌合により、第2電動機MG2のトルクが第2サンギヤS2から第2リングギヤR2へ伝達される。すなわち、第2ロータシャフト370から駆動輪9へ伝達される。
【0065】
図8に示すように、動力伝達装置311は、トランスアクスルケース316の壁部316aの内側側面316cと、その内側側面316cと軸中心線C方向に相対向する第1キャリヤ部材378の側面378cとの間に、軸中心線Cを軸心とする円環状の摺動部材390を備えている。この摺動部材390は、図9のNS部分で外周歯378bと内周歯316bとが互いに周方向に衝突して発生する歯打ち音を低減するために設けられた部材である。その摺動部材390は、実施例1の摺動部材120と形状以外は同様のものであり、例えば長方形断面をしており、耐摩耗性の高いゴムなどの弾性体で構成されている。また、摺動時の摩擦抵抗を大きくするため、摺動部材390の表面は粗面で構成されている。摺動部材390は例えば、トランスアクスルケース316の上記内側側面316c上に固設されている。また、摺動部材390は、摺動時の摩擦抵抗を得るために、軸中心線Cに平行な方向に摺動部材390が圧縮されるように、第1キャリヤ部材378とトランスアクスルケース316とによって挟まれて押圧されている。
【0066】
このようにして摺動部材390が軸中心線C上に取り付けられているので、摺動部材390は、第2キャリヤCA2がトランスアクスルケース316に対し周方向隙間GP2(図10参照)に応じた範囲内で相対的に軸中心線Cまわりに回動することに伴い、第2キャリヤCA2に対し摩擦抵抗を生じつつ僅かに摺動する。詳細には、第1キャリヤ部材378の側面378cに対して軸中心線Cまわりの周方向に摺動する。但し、第2電動機MG2の駆動時または回生作動時に減速用遊星歯車装置324でトルク伝達が行われている場合には、第2キャリヤCA2を一方向に回転させようとするトルクが第2キャリヤCA2に加わり、外周歯378bと内周歯316bとが周方向の一方に互いに押圧され続けるので、摺動部材390は第1キャリヤ部材378に対して摺動しない。従って、摺動部材390は、第2電動機MG2のトルクの大きさに応じて、第2キャリヤCA2すなわち第1キャリヤ部材378に対し摺動する。具体的には、摺動部材390は、第2電動機MG2が空転状態であるときに、第2キャリヤCA2に対し摺動する。
【0067】
上述した本実施例の動力伝達装置311においては、前述の実施例1における効果(A1)乃至(A3)、(A5)、及び(A6)と同様の効果を得ることができる。
【0068】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0069】
例えば、前述の実施例1,2において、摺動部材120,390は、ゴムなどで構成されているが、摺動抵抗を生じればよいので、樹脂、皿バネ、またはブレーキ等でよく用いられる摩擦材などで構成されていても差し支えない。また、摺動部材120,390は、ゴムなどの単一の部材から構成されているが、そのように単一の部材でなく多数の部材から構成された複合部材であっても差し支えない。
【0070】
また、前述の実施例1,2において、摺動部材120,390は、隣接する両側の部材から圧縮されるように押圧されているが、摺動時に摩擦抵抗を生じるのであれば、そのように圧縮されるように押圧されていなくても差し支えない。
【0071】
また、前述の実施例1,2において、摺動部材120,390は、隣接する部材から軸方向に押圧されているが、径方向に押圧されていても差し支えない。
【0072】
また、前述の実施例1,2において、摺動部材120,390は、円環状の部材であるが、外観形状に特に限定はなく、例えば、第3軸心C3または軸中心線Cまわりの全周でなく一部分に設けられるものであっても差し支えない。また、摺動部材120,390の断面形状は長方形であるが、円形でも六角形でもよく、中空の部材であっても差し支えない。
【0073】
また、前述の実施例1,2において、車両6,306は第1電動機MG1を備えているが、第1電動機MG1を備えない車両であっても差し支えない。
【0074】
また、前述の実施例1において、摺動部材120は、第2ロータ軸22と第2電動機MG2のロータ90とから構成される慣性モーメントの非常に大きな回転部材に対して摺動するが、それに加えて、実施例2の摺動部材390のように非回転部材に対し摺動しても差し支えない。
【0075】
また、前述の実施例1において、動力伝達軸20がスプライン嵌合を構成する外周歯20aを備え、第2ロータ軸22がそのスプライン嵌合を構成する内周歯22aを備えているが、逆に、動力伝達軸20が内周歯を備え第2ロータ軸22が外周歯を備えていても差し支えない。
【0076】
また、前述の実施例2において、第1キャリヤ部材378がスプライン嵌合を構成する外周歯378bを備え、トランスアクスルケース316がそのスプライン嵌合を構成する内周歯316bを備えているが、逆に、第1キャリヤ部材378が内周歯を備えトランスアクスルケース316が外周歯を備えていても差し支えない。
【0077】
また、前述の実施例1において、摺動部材120は第2ロータ軸22に対し摺動するが、第2ロータ軸22ではなく動力伝達軸20に対し摺動してもよいし、その動力伝達軸20と第2ロータ軸22との両方に対し摺動しても差し支えない。前述の実施例2の摺動部材390に関しても同様である。
【0078】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0079】
6,306:車両(ハイブリッド車両)
8:エンジン
9:駆動輪
10,311:動力伝達装置(車両用動力伝達装置)
18:カウンタ軸(伝動軸)
20:動力伝達軸(第部材)
20a:外周歯
22:第2ロータ軸(電動機ロータ軸、第部材)
22a:内周歯
70:リダクションギヤ(駆動歯車)
72:カウンタドリブンギヤ(従動歯車)
90:ロータ
120,390:摺動部材
316:トランスアクスルケース(第2部材)
316b:内周歯
324:減速用遊星歯車装置(遊星歯車装置)
378b:外周歯
C3:第3軸心(一軸心)
C:軸中心線(一軸心)
CA2:第2キャリヤ(キャリヤ、第1部材)
R2:第2リングギヤ(リングギヤ)
S2:第2サンギヤ(サンギヤ)
MG2:第2電動機(電動機)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10