(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1センサは、前記第1薄膜に光を照射する発光素子、及び、前記第1薄膜に反射した光を受光する受光素子を備えたレーザ式センサであることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の線材供給装置。
前記第1センサは、前記第1芯材の軸方向の一方の端部に設けられた前記第1薄膜のうち、前記第1芯材に巻き回された前記第1線材の外径よりも外側に張り出した個所に光を照射することを特徴とする請求項6に記載の線材供給装置。
前記第1線材又は前記第2線材に押圧されて前記ノズルが前記第1パック側から前記第2パック側に移動するとき、及び、前記ノズルが前記第2パック側から前記第1パック側に移動するときに信号を出力する第3センサ(63)を備え、
前記判定手段は、前記第3センサが出力した信号に基づき、前記繋ぎ目が取り出されたことを判定することを特徴とする請求項9に記載の線材供給装置。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明による複数の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1に示すように、本発明の第1実施形態による線材供給装置1は、コイルなどの製品2を製造する巻線加工機3に対し、線材パック10,20から取り出した線材を供給するものである。
線材供給装置1は、稼働中に使用している線材パック10に巻き回された線材12の終端と、次に使用する線材パック20に巻き回された線材22の先端とを繋いで巻線加工機3に線材を供給する。この線材供給装置1は、その線材の繋ぎ目8が巻線加工機3に供給されたことを検出可能である。巻線加工機3によって製造された製品2のうち、線材の繋ぎ目8が使用されたものは破棄される。
【0008】
以下の説明において、
図1の左側に記載した線材パックを第1パック10と称し、右側に記載した線材パックを第2パック20と称する。第1パック10と第2パック20は実質的に同一の構成である。
第1パック10と第2パック20は、いずれも芯材の外周に線材が巻き回されたものである。第1パック10の有する芯材及び線材をそれぞれ第1芯材11及び第1線材12と称し、第2パック20の有する芯材及び線材をそれぞれ第2芯材21及び第2線材22と称する。
第1芯材11は、円錐状又は円柱状の軸部13と、その軸部13の一端及び他端に設けられた円盤状の鍔部14と、その鍔部14の一方に設けられたキャップ16を有する。鍔部14とキャップとの間に第1薄膜40が固定される。
第1線材12は、銅線等からなる電気伝導体の外側に絶縁体の被覆が設けられた電線である。第1線材12は、鍔部14の外径と同程度まで、軸部13の外周に巻き回される。
第2パック20は、第1パック10と同一の構成であるので説明を省略する。
第1線材12の終端と第2線材22の先端は、両方とも線材の被覆が剥がされ、電気伝導体同士が圧着されることにより繋ぎ目8が形成されている。
【0009】
第1パック10及び第2パック20の軸方向の一方にレール30が設けられる。レール30は、第1パック10と第2パック20とが並ぶ方向に延びている。そのレール30に往復移動自在にノズル31が設けられる。
第1線材12は、ノズル31の内側を挿通している。そのため、巻線加工機3のローラ4,5が回転すると、第1線材12は第1パック10の軸方向の一方に取り出される。
【0010】
第1芯材11の軸方向の一方の端部に第1薄膜40が設けられ、第2芯材21の軸方向の一方の端部に第2薄膜50が設けられる。
第1薄膜40が設けられる位置は、第1パック10から第1線材12が取り出される際に第1線材12が通過する軌道上である。第2薄膜50が設けられる位置は、第2パック20から第2線材22が取り出される際に第2線材22が通過する軌道上である。
【0011】
図2及び
図3に示すように、第1薄膜40は、複数の髭部材41と保護シート42とを有し、第1芯材11に巻き回された第1線材12の外径又は鍔部14の外径よりも外側に張り出している。
複数の髭部材41は、例えば樹脂などから形成され、第1芯材11から径外方向に放射状に延びている。
保護シート42は、例えば布など、線材の被覆を傷つけない材料から環状に形成され、髭部材41の第1線材側に貼り付けられる。保護シート42は、周方向に複数個所の切り込み43を有する。これにより、第1薄膜40は、第1パック10から取り出される第1線材12に径内方向及び上方向へ押圧されると、その方向へ容易に変位可能である。
第2薄膜50の構成は、第1薄膜40の構成と実質的に同一の構成であるので、説明を省略する。
【0012】
第1センサ61は、その内部に図示しない発光素子及び受光素子を備えたレーザ式センサである。
第1センサ61は、発光素子により、第1薄膜40のうち、第1芯材11に巻き回された第1線材12の外径又は鍔部14の外径よりも外側に張り出した個所に光を照射する。
図2では、第1センサ61が照射する光を一点鎖線Lで示している。
第1センサ61は、受光素子により、第1薄膜40の保護シート42に反射した光を受光し、第1薄膜40の変位に応じた信号を出力する。
【0013】
図2及び
図3に示すように、第1線材12が軸方向に取り出されて鍔部14の周囲を周回し、第1センサ61が光を照射する位置の第1薄膜40が捲れ上がると、第1センサ61が照射した光は保護シート42に反射することなく、第1パック10の外側を通過する。
図3では、第1線材12が巻き取られるときに第1線材12が鍔部14の周囲を周回する方向を矢印Rで示している。
第1線材12が鍔部14の周囲を周回し、第1センサ61が光を照射する位置から第1線材12が周方向に遠ざかると、捲れ上がった第1薄膜40は髭部材41の弾性力により元の位置に戻る。このとき、第1センサ61が照射した光は保護シート42に反射し、第1センサ61の受光素子に入光する。これにより、第1パック10から第1線材12が取り出されるとき、第1センサ61は第1薄膜40の変位に応じたオン、オフ信号を継続して出力する。
図1に示す第2センサ62は、第1センサ61と同一の構成である。そのため、第2パック20から第2線材22が取り出されるとき、第2センサ62は、第2薄膜50の変位に応じたオン、オフ信号を継続して出力する。
【0014】
第3センサ63は、例えば接触式変位センサであり、センサ本体64及びレバー65を有する。
図1の破線311に示すように、ノズル31が第1パック側から第2パック側に移動すると、レバー65がノズル31に押圧されて実線の位置から破線651の位置に移動し、第3センサ63はオン信号を出力する。一方、ノズル31が第2パック側から第1パック側に移動すると、レバー65は再び実線の位置に戻り、第3センサ63はオフ信号を出力する。
なお、第3センサ63は、第1パック側でノズル31に当接可能な位置に設けてもよく、或いは、第1パック10と第2パック20の中間位置に設けてもよい。
【0015】
上述した第1センサ61、第2センサ62及び第3センサ63が出力する信号は、制御装置7に伝送される。
制御装置7は、例えばプログラマブルロジックコントローラ(PLC)であり、巻線加工機3に取り付けられる。本実施形態の制御装置7は、特許請求の範囲に記載の「判定手段」の一例に相当する。
制御装置7は、第1センサ61がオン、オフ信号を出力する状態からその信号を出力しない状態に変わり、第2センサ62がオン、オフ信号を出力しない状態からその信号を出力する状態に変わるとき、第1線材12と第2線材22との繋ぎ目8が取り出され、巻線加工機3に供給されたことを判定する。
さらに、制御装置7は、冗長設計として、第3センサ63から入力される信号がオフとオンとで切り替わると、第1線材12と第2線材22との繋ぎ目8が取り出され、巻線加工機3に供給されたことを判定する。
なお、制御装置7は、第1センサ61、第2センサ62又は第3センサ63のいずれか1つの信号のみに基づき、或いは任意の2つの信号に基づいて繋ぎ目8が取り出されたことを判定することも可能である。
【0016】
上述した線材供給装置1の動作について
図1及び
図4−
図6を参照して説明する。
まず、
図1に示すように、線材供給装置1に第1パック10と第2パック20を設置し、第1線材12の終端と第2線材22の先端を圧着して繋ぎ目8を形成する。なお、第1パック10の第1線材12はノズル31の内側を通り、巻線加工機3の内部に通されているものとする。
この状態で巻線加工機3のローラ4,5が回転すると、第1線材12は第1パック10の軸方向の一方に取り出される。このとき、第1センサ61は、オン、オフ信号を継続して制御装置7に出力する。
【0017】
次に、
図4に示すように、第1パック10の第1線材12が全て取り出されると、続いて第2パック20の第2線材22が取り出される。このとき、第1センサ61は、オン信号のみを継続して制御装置7に出力する。一方、第2センサ62は、オン、オフ信号を継続して制御装置7に出力する。第1センサ61と第2センサ62の信号の変化に基づき、制御装置7は、第1線材12と第2線材22との繋ぎ目8が取り出されたことを判定する。
【0018】
このように、線材供給装置1から巻線加工機3に供給される線材が第1線材12から第2線材22に切り替わると、その線材の動きに倣い、ノズル31がレール30に沿って第2パック側へ移動する。そのため、第3センサ63はレバー65がノズル31に押圧され、オン信号を出力する。制御装置7は、オン信号が第3センサ63から入力されると、第1線材12と第2線材22との繋ぎ目8が取り出されたことを判定する。
そして、制御装置7は例えばアラーム又はランプなどにより、作業者にそのことを知らせる。これにより、作業者は、巻線加工機3で製造された製品2の中から、線材の繋ぎ目8が使用された製品2を破棄することが可能である。
【0019】
続いて
図5に示すように、作業者は、第1パック10を線材12が巻かれた新たなものに交換する。そして、第2線材22の終端と第1線材12の先端を圧着し、新たな繋ぎ目8を形成する。
次に
図6に示すように、第2パック20の第2線材22が全て取り出されると、続いて新たな第1パック10の第1線材12が取り出される。このとき、第2センサ62は、オン信号のみを継続して制御装置7に出力する。一方、第1センサ61は、オン、オフ信号を継続して制御装置7に出力する。第1センサ61と第2センサ62の信号に基づき、制御装置7は、第1線材12と第2線材22との繋ぎ目8が取り出されたことを判定する。
【0020】
また、線材供給装置1から巻線加工機3に供給される線材が第2線材22から第1線材12に切り替わると、その線材の動きに倣い、ノズル31がレール30に沿って第1パック側へ移動する。これにより、第3センサ63はレバー65の押圧が解除され、オン信号からオフ信号に切り替わる。制御装置7は、第3センサ63の信号の切り替わりによっても、第1線材12と第2線材22との繋ぎ目8が取り出されたことを判定する。
そして、制御装置7は再びアラーム又はランプなどにより、作業者にそのことを知らせる。これにより、作業者は、巻線加工機3で製造された製品2の中から、線材の繋ぎ目8が使用された製品2を破棄することが可能である。
【0021】
第1実施形態の線材供給装置1は、次の作用効果を奏する。
(1)第1実施形態では、第1パック10から取り出される第1線材12が通過する軌道上に設けた第1薄膜40が変位する状態から変位しない状態になると、制御装置7は第1センサ61等の信号から第1線材12と第2線材22との繋ぎ目8が取り出されたことを判定する。
また、制御装置7は、第1薄膜40が変位しない状態から変位する状態になると、第1センサ61等の信号から第1線材12と第2線材22との繋ぎ目8が取り出されたことを判定する。
これにより、線材供給装置1が線材を供給する巻線加工機3に線材の繋ぎ目8が供給されたことが分かるので、その巻線加工機3で製造された製品2のうち、線材の繋ぎ目8が使用された製品2を判別し破棄することができる。
また、この線材供給装置1は、第1薄膜40または第2薄膜50から線材に作用する応力が極めて小さいので、線材の被覆を傷つけることなく、線材を巻線加工機3に供給することができる。
【0022】
(2)第1実施形態では、第1芯材11の軸方向の一方の端部に設けられた第1薄膜40は、第1芯材11に巻き回された第1線材12の外径又は鍔部14の外径よりも外側に張り出す。
これにより、第1パック10から軸方向に第1線材12が取り出される際、第1薄膜40を確実に変位させることができる。
(3)第1実施形態では、第1薄膜40は、複数の髭部材41と、その髭部材41の第1線材側に貼り付けられた保護シート42を有する。
これにより、第1薄膜40と第1線材12との接触により第1線材12の被覆に傷がつくことを、保護シート42によって防ぐことができる。
(4)第1実施形態では、第1薄膜40は環状である。
これにより、第1パック10を回転方向に任意に設置することが可能である。
【0023】
(5)第1実施形態では、第1センサ61は、レーザ式センサである。
これにより、第1薄膜40の変位を簡素な構成で検出することができる。
(6)第1実施形態では、第1センサ61は、第1薄膜40のうち、第1芯材11に巻き回された第1線材12の外径又は鍔部14の外径よりも外側に張り出した個所に光を照射する。
これにより、第1パック10から第1線材12が取り出されている際の第1センサ61の信号がオン、オフ信号になる。そのため、制御装置7は、第1薄膜40が変位している状態であることを明確に判別することが可能になる。
【0024】
なお、上記(2)、(3)、(4)に関し、第2薄膜50についても同様の作用効果を奏する。また、上記(5)、(6)に関し、第2センサ62についても同様の作用効果を奏する。
【0025】
(7)第1実施形態では、制御装置7は、第1センサ61がオン、オフ信号を出力する状態からその信号を出力しない状態に変わり、第2センサ62がオン、オフ信号を出力しない状態からその信号を出力する状態に変わるとき、繋ぎ目8が取り出されたことを判定する。
また、制御装置7は、第1センサ61がオン、オフ信号を出力しない状態からその信号を出力する状態に変わり、第2センサ62がオン、オフ信号を出力する状態からその信号を出力しない状態に変わるとき、繋ぎ目8が取り出されたことを判定する。
これにより、線材供給装置1は、2個のセンサ61,62を使用する冗長設計により、仮に一方のセンサが故障したときでも、他方のセンサにより繋ぎ目8を判定することが可能である。
【0026】
(8)第1実施形態では、制御装置7は、さらに第3センサ63が出力した信号に基づき、第1線材12と第2線材22との繋ぎ目8が取り出されたことを判定する。
これにより、線材供給装置1は、3個のセンサ61,62,63を使用する冗長設計により、仮に第1センサ61と第2センサ62の両方が故障したときでも、第3センサ63により繋ぎ目8を判定することが可能である。その結果、線材供給装置1は、巻線加工機3によって製造される製品2に線材の繋ぎ目8が紛れ込むことを確実に防ぐことができる。
【0027】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態を
図7に示す。第2実施形態において、上述した第1実施形態と実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
第2実施形態の線材供給装置1は、第1実施形態で説明したレール、ノズル及び第3センサを備えていない。そのため、第1パック10の第1線材12と、第2パック20の第2線材22は、いずれも巻線加工機側へ取り出される。そのため、第1線材12又は第2線材22が取り出される際、第1薄膜40と第2薄膜50は、巻線加工機3と反対側が捲れ上がる。したがって、第1センサ61と第2センサ62はそれぞれ、第1薄膜40と第2薄膜50が捲れ上がる個所に光を照射可能な位置に設けられる。
【0028】
第2実施形態においても、制御装置7は、第1センサ61がオン、オフ信号を出力する状態からその信号を出力しない状態に変わり、第2センサ62がオン、オフ信号を出力しない状態からその信号を出力する状態に変わるとき、繋ぎ目8が取り出されたことを判定する。
また、制御装置7は、第1センサ61がオン、オフ信号を出力しない状態からその信号を出力する状態に変わり、第2センサ62がオン、オフ信号を出力する状態からその信号を出力しない状態に変わるとき、繋ぎ目8が取り出されたことを判定する。したがって、第2実施形態においても、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0029】
(他の実施形態)
(1)上述した実施形態では、第1センサは、第1薄膜のうち、鍔部よりも外側に張り出した個所に光を照射した。これに対し、他の実施形態では、第1薄膜のうち、鍔部よりも内側の箇所に光を照射してもよい。この場合、第1センサは、オン、オフ信号に代えて、第1薄膜の上下方向の変位による信号を出力するものとする。
【0030】
(2)上述した実施形態では、第1センサ及び第2センサの一例としてレーザ式センサを示し、第3センサの一例としてとして接触式変位センサを示した。これに対し、他の実施形態では、第1センサ、第2センサ及び第3センサは、例えばカメラなど、種々の非接触式センサを適用することが可能である。
【0031】
(3)上述した実施形態では、第1芯材の軸方向の一方の端部に第1薄膜を設けた。これに対し、他の実施形態では、第1薄膜は、第1パックから第1線材が取り出される際に第1線材が通過する軌道上に設けることが可能である。第2薄膜についても同様である。
【0032】
(4)上述した実施形態では、第1薄膜の保護シートを環状に形成した。これに対し、他の実施形態では、第1薄膜の保護シートは、第1センサの光が照射される位置のみに設ければよい。第2薄膜の保護シートについても同様である。
【0033】
(5)上述した実施形態では、第1薄膜を髭部材と保護シートにより構成した。これに対し、他の実施形態では、第1薄膜は、単一又は複数枚の薄膜により構成してもよい。第2薄膜についても同様である。
【0034】
(6)上述した実施形態では、2個の線材パックを備える線材供給装置について説明した。これに対し、他の実施形態では、線材供給装置は、3個以上の線材パックを備えるものとしてもよい。
このように、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。