(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記技術では、増幅器の出力(電流検出用抵抗の両端間の電圧)から、ローパスフィルタにより、センサ電流に相当する直流成分を抽出し、その抽出した直流成分からセンサ電流(延いては空燃比)を検出することとなる。この構成では、増幅器の出力をローパスフィルタでDC化(直流化)しており、空燃比の変化に伴うセンサ電流の変化に対して、ローパスフィルタの出力変化は緩やかになるため、センサ電流の検出応答性(延いては空燃比の検出応答性)が低くなってしまう。
【0006】
また、上記技術では、ハイパスフィルタにより、空燃比センサのインピーダンスに応じた振幅の交流成分を抽出しており、空燃比センサのセンサ電流とインピーダンスとを検出するために、ローパスフィルタとハイパスフィルタとをそれぞれ設けることから、装置の大型化を招く。
【0007】
そこで、本発明は、空燃比検出装置において、空燃比センサのセンサ電流の検出応答性を高めると共に、装置の小型化を実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明の空燃比検出装置は、空燃比センサに直列に接続された電流検出用の抵抗と、空燃比センサと前記抵抗とにより構成される直列回路の一方の端部に、直流電圧を印加する第1電圧印加手段と、前記直列回路の他方の端部に、前記直流電圧とは異なる2種類の第1電圧と第2電圧とを、所定の周期で交互に切り換えて印加する第2電圧印加手段と、前記抵抗の両端間の電圧を増幅して出力する増幅手段と、を備える。
【0009】
更に、この空燃比検出装置は、前記増幅手段の出力電圧を入力電圧とし、該入力電圧をA/D変換(アナログ/デジタル変換)するA/D変換手段と、前記A/D変換手段によるA/D変換結果から、前記空燃比センサにより検出された空燃比に応じたセンサ電流と、前記空燃比センサのインピーダンスとを算出する演算手段と、を備える。
【0010】
特に、A/D変換手段は、第2電圧印加手段が前記直列回路の他方の端部に印加する電圧を切り換える前毎に、前記入力電圧のA/D変換を実施する。そして、演算手段は、A/D変換手段による連続した2つのA/D変換結果を用いて、センサ電流とインピーダンスとを算出する。
【0011】
この構成によれば、増幅手段の出力電圧をローパスフィルタでDC化することなく、センサ電流を検出するため、センサ電流の検出応答性が高くなる。つまり、空燃比の変化に伴ってセンサ電流が変化した場合に、その変化した後のセンサ電流を素早く検出することができる。また、増幅手段の出力電圧をDC化するためのローパスフィルタを設ける必要がない上に、空燃比センサのインピーダンスを検出するためにハイパスフィルタを設ける必要もないため、装置の小型化を実現することができる。
【0012】
なお、特許請求の範囲に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明が適用された実施形態の空燃比検出装置について説明する。
図1に示すように、本実施形態の空燃比検出装置1には、空燃比を検出するための空燃比センサ(以下単に、センサともいう)3が接続される。
【0015】
センサ3は、限界電流式の空燃比センサ(いわゆる1セル限界電流式積層空燃比センサ)であり、車両のエンジンの排気通路に配置される。そして、センサ3は、電圧が印加された状態で、排気ガス中の空燃比に応じた限界電流を発生する。その限界電流が、当該センサ3により検出された空燃比に応じたセンサ電流となる。
【0016】
空燃比検出装置1は、センサ3に直列に接続された電流検出用の抵抗5と、センサ3と抵抗5とにより構成される直列回路6の一方の端部に直流電圧Vpを印加する第1電圧制御部7及びバッファ回路9と、直列回路6の他方の端部に第1電圧VHと第2電圧VLとの2種類の電圧を所定の周期Tsで交互に切り換えて印加する第2電圧制御部11及びバッファ回路13と、を備える。
【0017】
バッファ回路9,13は、オペアンプ(演算増幅器)によって構成されており、入力される電圧と同じ電圧を出力端子から出力する。バッファ回路9には、第1電圧制御部7の出力電圧Vo1が入力され、バッファ回路13には、第2電圧制御部11の出力電圧Vo2が入力される。
【0018】
この例では、センサ3のマイナス側端子3mに抵抗5の一端が接続されている。
そして、センサ3のプラス側端子3pにバッファ回路9の出力端子が接続されており、第1電圧制御部7は、
図2の1段目に示すように、バッファ回路9へ直流の電圧Vpを出力する。このため、その直流電圧Vpが、バッファ回路9からセンサ3のプラス側端子3pに印加される。この例では、センサ3のプラス側端子3pが、直列回路6の一方の端部に該当する。尚、直流電圧Vpは、固定値であっても良いし、センサ電流に応じて変化させても良い。
【0019】
また、抵抗5のセンサ3側とは反対側の端部(以下、抵抗5の他端という)にバッファ回路13の出力端子が接続されている。そして、第2電圧制御部11は、
図2の2段目に示すように、第1電圧制御部7が出力する直流電圧Vpとは異なる第1電圧VHと第2電圧VLとを、所定の周期Tsで交互に切り換えて出力する。第2電圧制御部11の出力電圧Vo2は、周期Tsのうちの半分が第1電圧VHとなり、他の半分が第2電圧VLとなる。このように切り換えられる第1電圧VHと第2電圧VLとが、バッファ回路13から抵抗5の他端に印加される。本実施形態では、「Vp>VH>VL」の大小関係になっている。また、抵抗5の他端が、直列回路6の他方の端部に該当する。
【0020】
例えば、直流電圧VPが2.9Vで、第1電圧VHが2.7Vで、第2電圧VLが2.3Vであるとすると、センサ3への印加電圧の平均値は0.4V(=2.9V−(2.7V+2.3V)/2)になる。また、第1電圧VHと第2電圧VLとの差分ΔVは、0.4V(=2.7V−2.3V)となり、その差分ΔVは、センサ3への印加電圧を交流的に変化させる変化幅となる。センサ3への印加電圧を差分ΔVだけ交流的に変化させるのは、センサ3のインピーダンス(交流抵抗)Zを検出するためである。
【0021】
更に
図1に示すように、空燃比検出装置1は、抵抗5の両端間の電圧Vr(
図2参照)を増幅して出力する増幅回路15と、増幅回路15の出力電圧VoAを入力電圧Vinとし、その入力電圧VinをA/D変換するA/D変換器(ADC)17と、A/D変換器17によるA/D変換結果から、センサ3により検出された空燃比に応じたセンサ電流Isと、センサ3のインピーダンスZとを算出する演算器19と、を備える。
【0022】
A/D変換器17は、
図2の2段目及び4段目に示すように、第2電圧制御部11が出力電圧Vo2(換言すれば、直列回路6の端部に印加する電圧)を第1電圧VHと第2電圧VLとのうちの一方から他方に切り換える直前毎に、増幅回路15からの入力電圧VinをA/D変換する。
【0023】
尚、
図2において、上向きの点線矢印は、A/D変換器17が入力信号VinのA/D変換を実施するタイミング(A/D変換タイミング)を示している。そして、
図2及び以下の説明において、「ADH」は、第2電圧制御部11の出力電圧Vo2が第1電圧VHになっているときのA/D変換結果であって、詳しくは、出力電圧Vo2が第1電圧VHから第2電圧VLに切り換わる直前のA/D変換結果である。また、
図2及び以下の説明において、「ADL」は、第2電圧制御部11の出力電圧Vo2が第2電圧VLになっているときのA/D変換結果であって、詳しくは、出力電圧Vo2が第2電圧VLから第1電圧VHに切り換わる直前のA/D変換結果である。一方、
図2における3段目及び4段目の「Vr」と「Vin(VoA)」は、抵抗5に流れる電流の方向のうち、センサ3側からバッファ回路13側へ方向を正としており、その正の方向の電流が大きいほど、値が大きくなるものとしている。また、
図2において、出力電圧Vo2の変化に対して、「Vr」と「Vin(VoA)」の変化が緩やかになっているのは、第2電圧制御部11からバッファ回路13に出力電圧Vo2を伝達する信号ラインや増幅回路15への入力ラインに容量成分が存在することと、センサ3自体にも容量成分があるためである。
【0024】
具体的には、A/D変換器17は、第2電圧制御部11と同期して動作するようになっており、第2電圧制御部11が出力電圧Vo2を切り換えるタイミングを基準にして、そのタイミングの所定時間Taだけ前のタイミング毎に、入力電圧VinのA/D変換を実施する。その所定時間Taは、周期Tsの半分よりも十分に短い時間である。
【0025】
演算器19は、例えばマイコンによって構成される。
演算器19は、A/D変換器17による連続した2つのA/D変換結果(即ち、A/D変換タイミングが連続するADHとADL)を用いて、センサ3のセンサ電流IsとインピーダンスZとを算出する。
【0026】
具体的には、演算器19は、下記の式1によってセンサ電流Isを算出する。尚、式において、「G」は、増幅回路15のゲイン(増幅度)であり、「Rs」は、抵抗5の抵抗値である。
【0027】
Is=(ADH+ADL)/2/G/Rs…式1
つまり、演算器19は、A/D変換タイミングが連続するADHとADLを平均化し、その平均化した値からセンサ電流Isを算出する。センサ電流Isは、空燃比に応じた値になるため、演算器19は、センサ電流Isを、センサ3によって検出された空燃比として算出しているとも言える。実際の処理としては、演算器19は、算出したセンサ電流Isを、所定の式やデータマップに当てはめることにより、空燃比に変換する。また、センサ電流Isを空燃比に変換する処理は、演算器19とは別のマイコン等が実施しても良い。
【0028】
また、演算器19は、下記の式2によってセンサ3のインピーダンスZを算出する。
Z={G×ΔV−(ADL−ADH)}×Rs/(ADL−ADH)…式2
つまり、演算器19は、A/D変換タイミングが連続するADHとADLの差分から、インピーダンスZを算出する。
【0029】
尚、式2における「ΔV」は、「VH−VL」である。そして、式2は、下記の式3と式4から導出される。また、式2〜式4では、
図2における3段目及び4段目と同様に、抵抗5に流れる電流の方向のうち、センサ3側からバッファ回路13側へ方向を正としており、その正の方向の電流が大きいほど、増幅回路15の出力電圧VoAが大きくなるものとしている。
【0030】
ADH=G×(Vp−VH)×Rs/(Rs+Z)…式3
ADL=G×(Vp−VL)×Rs/(Rs+Z)…式4
センサ3のインピーダンスZは、センサ3の温度と相関があるため、演算器19は、算出したインピーダンスZに基づいて、センサ3が活性状態であるか否かを判定したり、センサ3を加熱するためのヒータ(図示省略)を制御したりする。
【0031】
以上のような空燃比検出装置1によれば、増幅回路15の出力電圧VoAをローパスフィルタでDC化することなく、センサ電流Isを検出するため、センサ電流Isの検出応答性が高くなる。つまり、空燃比の変化に伴ってセンサ電流Isが変化した場合に、その変化した後のセンサ電流Isを素早く検出することができる。また、増幅回路15の出力電圧VoAをDC化するためのローパスフィルタを設ける必要がない上に、センサ3のインピーダンスZを検出するためにハイパスフィルタを設ける必要もないため、装置の部品点数を削減して小型化を実現することができる。
【0032】
また、演算器19は、連続したADHとADLを平均化し、その平均化した値からセンサ電流Isを算出するため、簡単な計算でセンサ電流Isを算出することができる。更に、1周期Tsあたり2回の頻度で、センサ電流Isの算出値を更新することができる。具体的には、周期Tsの半分の時間毎にセンサ電流Isの算出値を更新することができる。
【0033】
また、演算器19は、連続するADHとADLの差分(ADL−ADH、または、ADH−ADL)から、インピーダンスZを算出するため、インピーダンスZを精度良く算出することができる。その上、センサ電流Isと同様に、1周期Tsあたり2回の頻度で、インピーダンスZの算出値を更新することができる。
【0034】
また、A/D変換器17は、第2電圧制御部11が直列回路6の端部に印加する電圧を切り換えるタイミングを基準にして、そのタイミングの所定時間Taだけ前のタイミング毎に、A/D変換を実施するため、センサ電流IsとインピーダンスZを算出するのに適したタイミングでA/D変換を実施することができる。
【0035】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得る。また、前述の数値も一例であり他の値でも良い。
例えば、周期Tsにおける第1電圧VHと第2電圧VLとの時間比率は「1:1」以外の比率でも良い。また、バッファ回路13からは直流電圧を出力し、バッファ回路9から出力する電圧の方を、第1電圧と第2電圧とに交互に切り換えるように構成しても良い。また、電流検出用の抵抗5は、センサ3のプラス側端子3pとバッファ回路9との間の電流経路に設けてもよい。
【0036】
また、上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合させたりしてもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、同様の機能を有する公知の構成に置き換えてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を、課題を解決できる限りにおいて省略してもよい。なお、特許請求の範囲に記載した文言によって特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本発明の実施形態である。
【0037】
また、上述した空燃比検出装置の他、当該空燃比検出装置を構成要素とするシステム、当該空燃比検出装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した媒体、空燃比センサの制御方法など、種々の形態で本発明を実現することもできる。