(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記基準印字パターンと前記補正印字パターンとを比較して、前記基準印字パターンに対する該補正印字パターンが、所定閾値以上の誤差が発生する警告箇所、又は、前記パルスレーザにより前記加工対象物に組織変化を生じさせる熱影響が発生する警告箇所を有しているか否かを判定する補正印字パターン判定手段を備え、
前記表示制御手段は、前記補正印字パターン判定手段を介して前記補正印字パターンが前記警告箇所を有していると判定された場合には、前記表示部に前記補正印字パターンと、前記警告箇所を知らせる警告情報とを表示させることを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
パルスレーザを出射するレーザ発振器と、前記レーザ発振器から出射された前記パルスレーザを、ガルバノスキャナにより偏向して走査するレーザ走査部と、前記レーザ走査部で走査されたパルスレーザを集光して、加工対象物に向けて出射させる集光部と、制御部と、操作部と、表示部とを備えたレーザ加工装置で実行されるレーザ加工方法であって、
前記制御部が実行する、
前記パルスレーザにより前記加工対象物に加工する形状パターンを示す加工情報を前記操作部を介して取得する加工情報取得工程と、
前記加工対象物の材質と、前記加工対象物に加工する前記パルスレーザを偏向する前記ガルバノスキャナの駆動条件とを含む加工条件を前記操作部を介して取得する加工条件取得工程と、
前記加工情報取得工程で取得した前記加工情報に示される形状パターンから、前記加工対象物に加工する前記パルスレーザの走査軌跡を示す基準印字パターンを作成する基準印字パターン作成工程と、
前記基準印字パターン作成工程で作成した前記基準印字パターンに示される前記パルスレーザの走査軌跡を、前記加工対象物の材質と前記ガルバノスキャナの駆動条件とを含む前記加工条件に基づいて補正して、補正印字パターンを作成する補正工程と、
前記補正工程で作成された前記補正印字パターンを前記表示部に表示させる表示制御工程と、
を備え、
前記補正工程では、前記補正印字パターンを、前記パルスレーザによって前記加工対象物に加工される1パルス毎、又は、所定時間毎の加工痕に対応するドットパターンで作成することを特徴とするレーザ加工方法。
パルスレーザを出射するレーザ発振器と、前記レーザ発振器から出射された前記パルスレーザを走査するレーザ走査部と、前記レーザ走査部で走査されたパルスレーザを集光して、加工対象物に向けて出射させる集光部と、操作部と、表示部とを備えたコンピュータに、
前記パルスレーザにより前記加工対象物に加工する形状パターンを示す加工情報を前記操作部を介して取得する加工情報取得工程と、
前記加工対象物の材質と、前記加工対象物に加工する前記パルスレーザを偏向する前記ガルバノスキャナの駆動条件とを含む加工条件を前記操作部を介して取得する加工条件取得工程と、
前記加工情報取得工程で取得した前記加工情報に示される形状パターンから、前記加工対象物に加工する前記パルスレーザの走査軌跡を示す基準印字パターンを作成する基準印字パターン作成工程と、
前記基準印字パターン作成工程で作成した前記基準印字パターンに示される前記パルスレーザの走査軌跡を、前記加工対象物の材質と前記ガルバノスキャナの駆動条件とを含む前記加工条件に基づいて補正して、補正印字パターンを作成する補正工程と、
前記補正工程で作成された前記補正印字パターンを前記表示部に表示させる表示制御工程と、
を実行させ、
前記補正工程では、前記補正印字パターンを、前記パルスレーザによって前記加工対象物に加工される1パルス毎、又は、所定時間毎の加工痕に対応するドットパターンで作成するように実行させるためのプログラム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記した特許文献1に記載されたレーザマーキング装置では、レーザ光のビーム幅、ガルバノミラーによるレーザ光の走査速度等が考慮されておらず、レーザ光の加工対象物上における実際の走査状態をシミュレーションできない虞がある。例えば、レーザ光が加工対象物上でV字上に曲がるように2次元走査された場合に、曲がり角でのオーバーシュートや加熱時間の超過等をシミュレーションして提示することが難しく、実際に試し印字を行う必要が生じるという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、パルスレーザの走査速度等を考慮して実際の印字パターンをシミュレーションすることが可能となるレーザ加工装置、レーザ加工方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため請求項1に係るレーザ加工装置は、パルスレーザを出射するレーザ発振器と、前記レーザ発振器から出射された前記パルスレーザを、ガルバノスキャナにより偏向して走査するレーザ走査部と、前記レーザ走査部で走査されたパルスレーザを集光して、加工対象物に向けて出射させる集光部と、を備えたレーザ加工装置において、前記パルスレーザにより前記加工対象物に加工する形状パターンを示す加工情報を取得する加工情報取得手段と、
前記加工対象物の材質と、前記加工対象物に加工する前記パルスレーザを偏向する前記ガルバノスキャナの駆動条件
とを含む加工条件を取得する加工条件取得手段と、前記加工情報に示される形状パターンから、前記加工対象物に加工する前記パルスレーザの走査軌跡を示す基準印字パターンを作成する基準印字パターン作成手段と、前記基準印字パターンに示される前記パルスレーザの走査軌跡を、
前記加工対象物の材質と前記ガルバノスキャナの駆動条件
とを含む前記加工条件に基づいて補正して、補正印字パターンを作成する補正手段と、前記補正印字パターンを、表示部に表示させる表示制御手段と、を備え
、前記補正手段は、前記補正印字パターンを、前記パルスレーザによって前記加工対象物に加工される1パルス毎、又は、所定時間毎の加工痕に対応するドットパターンで作成することを特徴とする。
【0009】
また、請求項2に係るレーザ加工装置は、請求項1に記載のレーザ加工装置において、前記基準印字パターンと前記補正印字パターンとを比較して、前記基準印字パターンに対する該補正印字パターンが、所定閾値以上の誤差が発生する警告箇所、又は、前記パルスレーザにより前記加工対象物に組織変化を生じさせる熱影響が発生する警告箇所を有しているか否かを判定する補正印字パターン判定手段を備え、前記表示制御手段は、前記補正印字パターン判定手段を介して前記補正印字パターンが前記警告箇所を有していると判定された場合には、前記表示部に前記補正印字パターンと、前記警告箇所を知らせる警告情報とを表示させることを特徴とする。
【0011】
また、請求項
3に係るレーザ加工装置は、請求項
2に記載のレーザ加工装置において、前記警告情報は、前記警告箇所を示す警告マークを含み、前記警告マークの選択を受け付ける選択受付手段を備え、前記表示制御手段は、前記選択受付手段を介して、前記警告マークの選択を受け付けたとき、前記警告マークに対応する前記警告箇所のドットパターンを拡大して各ドットを識別可能に表示させることを特徴とする。
【0012】
また、請求項
4に係るレーザ加工装置は、請求項
1乃至請求項
3のいずれかに記載のレーザ加工装置において、前記パルスレーザを偏向する前記ガルバノスキャナの駆動条件は、該ガルバノスキャナの走査速度と走査応答性との少なくともいずれかを含み、前記補正手段は、前記走査速度と前記走査応答性との少なくともいずれかに基づいて前記ドットパターンを補正することを特徴とする。
【0013】
また、請求項
5に係るレーザ加工装置は、請求項2乃至請求項
4のいずれかに記載のレーザ加工装置において、前記警告箇所が前記組織変化を生じさせる熱影響が発生する箇所である場合には、前記警告情報は、前記熱影響が発生する警告箇所を囲む枠表示を含み、前記表示制御手段は、前記警告情報によって前記熱影響を識別可能に表示することを特徴とする。
更に、請求項6に係るレーザ加工装置は、パルスレーザを出射するレーザ発振器と、前記レーザ発振器から出射された前記パルスレーザを、ガルバノスキャナにより偏向して走査するレーザ走査部と、前記レーザ走査部で走査されたパルスレーザを集光して、加工対象物に向けて出射させる集光部と、を備えたレーザ加工装置において、前記パルスレーザにより前記加工対象物に加工する形状パターンを示す加工情報を取得する加工情報取得手段と、前記加工対象物に加工する前記パルスレーザを偏向する前記ガルバノスキャナの駆動条件を含む加工条件を取得する加工条件取得手段と、前記加工情報に示される形状パターンから、前記加工対象物に加工する前記パルスレーザの走査軌跡を示す基準印字パターンを作成する基準印字パターン作成手段と、前記基準印字パターンに示される前記パルスレーザの走査軌跡を、前記加工条件の前記ガルバノスキャナの駆動条件に基づいて補正して、補正印字パターンを作成する補正手段と、前記補正印字パターンを、表示部に表示させる表示制御手段と、前記基準印字パターンと前記補正印字パターンとを比較して、前記基準印字パターンに対する該補正印字パターンが、所定閾値以上の誤差が発生する警告箇所、又は、前記パルスレーザにより前記加工対象物に組織変化を生じさせる熱影響が発生する警告箇所を有しているか否かを判定する補正印字パターン判定手段と、を備え、前記表示制御手段は、前記補正印字パターン判定手段を介して前記補正印字パターンが前記警告箇所を有していると判定された場合には、前記表示部に前記補正印字パターンと、前記警告箇所を知らせる警告情報とを表示させ、前記警告箇所が前記組織変化を生じさせる熱影響が発生する箇所である場合には、前記熱影響が発生する警告箇所を囲む枠表示を含む前記警告情報によって前記熱影響を識別可能に表示することを特徴とする。
【0014】
また、請求項7に係るレーザ加工方法は、パルスレーザを出射するレーザ発振器と、前記レーザ発振器から出射された前記パルスレーザを、ガルバノスキャナにより偏向して走査するレーザ走査部と、前記レーザ走査部で走査されたパルスレーザを集光して、加工対象物に向けて出射させる集光部と、制御部と、操作部と、表示部とを備えたレーザ加工装置で実行されるレーザ加工方法であって、前記制御部が実行する、前記パルスレーザにより前記加工対象物に加工する形状パターンを示す加工情報を前記操作部を介して取得する加工情報取得工程と、
前記加工対象物の材質と、前記加工対象物に加工する前記パルスレーザを偏向する前記ガルバノスキャナの駆動条件
とを含む加工条件を前記操作部を介して取得する加工条件取得工程と、前記加工情報取得工程で取得した前記加工情報に示される形状パターンから、前記加工対象物に加工する前記パルスレーザの走査軌跡を示す基準印字パターンを作成する基準印字パターン作成工程と、前記基準印字パターン作成工程で作成した前記基準印字パターンに示される前記パルスレーザの走査軌跡を、
前記加工対象物の材質と前記ガルバノスキャナの駆動条件
とを含む前記加工条件に基づいて補正して、補正印字パターンを作成する補正工程と、前記補正工程で作成された前記補正印字パターンを前記表示部に表示させる表示制御工程と、を備え
、前記補正工程では、前記補正印字パターンを、前記パルスレーザによって前記加工対象物に加工される1パルス毎、又は、所定時間毎の加工痕に対応するドットパターンで作成することを特徴とする。
【0015】
また、請求項8に係るプログラムは、パルスレーザを出射するレーザ発振器と、前記レーザ発振器から出射された前記パルスレーザを走査するレーザ走査部と、前記レーザ走査部で走査されたパルスレーザを集光して、加工対象物に向けて出射させる集光部と、操作部と、表示部とを備えたコンピュータに、前記パルスレーザにより前記加工対象物に加工する形状パターンを示す加工情報を前記操作部を介して取得する加工情報取得工程と、
前記加工対象物の材質と、前記加工対象物に加工する前記パルスレーザを偏向する前記ガルバノスキャナの駆動条件
とを含む加工条件を前記操作部を介して取得する加工条件取得工程と、前記加工情報取得工程で取得した前記加工情報に示される形状パターンから、前記加工対象物に加工する前記パルスレーザの走査軌跡を示す基準印字パターンを作成する基準印字パターン作成工程と、前記基準印字パターン作成工程で作成した前記基準印字パターンに示される前記パルスレーザの走査軌跡を、
前記加工対象物の材質と前記ガルバノスキャナの駆動条件
とを含む前記加工条件に基づいて補正して、補正印字パターンを作成する補正工程と、前記補正工程で作成された前記補正印字パターンを前記表示部に表示させる表示制御工程と、を実行させ
、前記補正工程では、前記補正印字パターンを、前記パルスレーザによって前記加工対象物に加工される1パルス毎、又は、所定時間毎の加工痕に対応するドットパターンで作成するように実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係るレーザ加工装置、請求項7に係るレーザ加工方法及び請求項8に係るプログラムでは、加工対象物に加工する形状パターンを示す加工情報からパルスレーザの走査軌跡を示す基準印字パターンが作成され、その後、基準印字パターンを
加工対象物の材質と、ガルバノスキャナの駆動条件
とを含む加工条件に基づいて補正した補正印字パターンが作成されて、表示部に表示される。
この補正印字パターンは、パルスレーザによって加工対象物に加工される1パルス毎、又は、所定時間毎の加工痕に対応するドットパターンで作成される。
【0017】
これにより、レーザ加工装置は、
加工対象物の材質と、ガルバノスキャナの駆動条件に基づいてパルスレーザの走査速度を考慮して補正した補正印字パターン、つまり、実際の印字パターンをシミュレーションして、表示部に表示することが可能となる。従って、ユーザは、表示部に表示された補正印字パターンを見ることによって、実際の印字品質に更に近づいた状態や加工条件を検討することができ、試し印字を低減することが可能となる。
また、補正印字パターンを、パルスレーザによって加工対象物に加工される1パルス毎、又は、所定時間毎の加工痕に対応するドットパターンで作成して表示部に表示することができる。これにより、ユーザは、表示部に表示された補正印字パターンを見ることによって、実際の印字品質に更に近づいた状態や加工条件を検討することができる。
【0018】
また、請求項2に係るレーザ加工装置では、補正印字パターンが、所定閾値以上の誤差が発生する警告箇所、又は、パルスレーザにより加工対象物に組織変化を生じさせる熱影響が発生する警告箇所を有している場合には、補正印字パターンと、警告箇所を知らせる警告情報とを表示部に表示する。これにより、ユーザは、警告情報を確認することにより、ガルバノスキャナの駆動条件を含む加工条件を修正して、再度、補正印字パターンを表示部に表示することができ、実際の試し印字を避けることが可能となる。
【0020】
また、請求項
3に係るレーザ加工装置では、ユーザは、警告箇所を示す警告マークを、選択受付手段を介して選択することによって、警告マークに対応する警告箇所のドットパターンを拡大して見ることができ、ガルバノスキャナの駆動条件を含む加工条件を更に詳細に検討することが可能となる。
【0021】
また、請求項
4に係るレーザ加工装置では、ガルバノスキャナの走査速度と走査応答性との少なくともいずれかに基づいて、補正印字パターンを構成するドットパターンを補正するため、更に実際に近い印字パターンをシミュレーションして、表示することが可能となる。
【0022】
また、請求項
5に係るレーザ加工装置では、ユーザは、警告箇所を囲む枠表示によって、パルスレーザにより加工対象物に組織変化を生じさせる熱影響が発生する警告箇所を容易に確認することができると共に、熱影響を識別することが可能となる。従って、ユーザは、ガルバノスキャナの駆動条件を含む加工条件を更に詳細に検討することが可能となる。
更に、請求項6に係るレーザ加工装置では、加工対象物に加工する形状パターンを示す加工情報からパルスレーザの走査軌跡を示す基準印字パターンが作成され、その後、基準印字パターンをガルバノスキャナの駆動条件に基づいて補正した補正印字パターンが作成されて、表示部に表示される。また、補正印字パターンが、所定閾値以上の誤差が発生する警告箇所、又は、パルスレーザにより加工対象物に組織変化を生じさせる熱影響が発生する警告箇所を有している場合には、補正印字パターンと、警告箇所を知らせる警告情報とが表示部に表示される。また、警告箇所が組織変化を生じさせる熱影響が発生する箇所である場合には、熱影響が発生する警告箇所を囲む枠表示を含む警告情報によって熱影響が識別可能に表示される。
これにより、レーザ加工装置は、ガルバノスキャナの駆動条件に基づいてパルスレーザの走査速度を考慮して補正した補正印字パターン、つまり、実際の印字パターンをシミュレーションして、表示部に表示することが可能となる。従って、ユーザは、表示部に表示された補正印字パターンを見ることによって、実際の印字品質に更に近づいた状態や加工条件を検討することができ、試し印字を低減することが可能となる。また、ユーザは、警告情報を確認することにより、ガルバノスキャナの駆動条件を含む加工条件を修正して、再度、補正印字パターンを表示部に表示することができ、実際の試し印字を避けることが可能となる。更に、ユーザは、警告箇所を囲む枠表示によって、パルスレーザにより加工対象物に組織変化を生じさせる熱影響が発生する警告箇所を容易に確認することができると共に、熱影響を識別することが可能となる。従って、ユーザは、ガルバノスキャナの駆動条件を含む加工条件を更に詳細に検討することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係るレーザ加工装置、レーザ加工方法及びプログラムを具体化した一実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。先ず、本実施形態に係るレーザ加工装置1の概略構成について
図1に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るレーザ加工装置1は、パーソナルコンピュータ等から構成される印字情報作成装置2と、レーザ加工装置本体部3と、レーザコントローラ6とから構成されている。
【0025】
レーザ加工装置本体部3は、レーザ光Lを加工対象物7の加工面7A上を2次元走査してマーキング(印字)加工を行う。レーザコントローラ6はコンピュータで構成され、印字情報作成装置2と双方向通信可能に接続されると共に、レーザ加工装置本体部3と電気的に接続されている。そして、レーザコントローラ6は、印字情報作成装置2から送信された印字情報、制御パラメータ、各種指示情報等に基づいてレーザ加工装置本体部3を駆動制御する。
【0026】
レーザ加工装置本体部3の概略構成について
図1に基づいて説明する。尚、レーザ加工装置本体部3の説明において、
図1の左方向、右方向、上方向、下方向が、それぞれレーザ加工装置本体部3の前方向、後方向、上方向、下方向である。従って、レーザ発振器21のレーザ光L(パルスレーザ)の出射方向が前方向である。本体ベース11及びレーザ光Lに対して垂直な方向が上下方向である。そして、レーザ加工装置本体部3の上下方向及び前後方向に直交する方向が、レーザ加工装置本体部3の左右方向である。
【0027】
図1に示すように、レーザ加工装置本体部3は、本体ベース11と、レーザ光Lを出射するレーザ発振ユニット12と、光シャッター部13と、不図示の光ダンパーと、不図示のハーフミラーと、ガイド光部15と、反射ミラー16と、光センサ17と、ガルバノスキャナ18と、fθレンズ19等から構成され、不図示の略直方体形状の筐体カバーで覆われている。
【0028】
レーザ発振ユニット12は、レーザ発振器21と、ビームエキスパンダ22と、取付台23とから構成されている。レーザ発振器21は、レーザ媒質と受動Qスイッチ等を備えている。レーザ媒質は、不図示の励起用半導体レーザから光ファイバ14を介して出射された励起光によって励起されてレーザ光を発振する。受動Qスイッチは、レーザ媒質によって発振されたレーザ光をパルス状のパルスレーザとして発振するQスイッチとして機能する。従って、レーザ発振器21は、受動Qスイッチを介してパルスレーザを発振し、加工対象物7の加工面7Aにマーキング(印字)加工を行うためのレーザ光L(パルスレーザ)を出力する。
【0029】
ビームエキスパンダ22は、レーザ光Lのビーム径を調整する(例えば、ビーム径を拡大する。)ものであり、レーザ発振器21と同軸に設けられている。取付台23は、レーザ発振器21がレーザ光Lの光軸を調整可能に取り付けられ、各取付ネジ25で本体ベース11の前後方向中央位置よりも後側の上面に固定されている。
【0030】
光シャッター部13は、シャッターモータ26と、平板状のシャッター27とから構成されている。シャッターモータ26は、ステッピングモータ等で構成されている。シャッター27は、シャッターモータ26のモータ軸に取り付けられて同軸に回転する。シャッター27は、ビームエキスパンダ22から出射されたレーザ光Lの光路を遮る位置に回転された際には、レーザ光Lを光シャッター部13に対して右方向に設けられた光ダンパーへ反射する。一方、シャッター27がビームエキスパンダ22から出射されたレーザ光Lの光路上に位置しないように回転された場合には、ビームエキスパンダ22から出射されたレーザ光Lは、光シャッター部13の前側に配置されたハーフミラーに入射する。
【0031】
光ダンパーは、シャッター27で反射されたレーザ光Lを吸収する。尚、光ダンパーは不図示の冷却装置によって冷却される。ハーフミラーは、レーザ光Lの光路に対して斜め左前方向に45度の角度を形成するように配置される。ハーフミラーは、後側から入射されたレーザ光Lのほぼ全部を透過する。また、ハーフミラーは、後側から入射されたレーザ光Lの一部、例えば、レーザ光Lの1%を、反射ミラー16へ45度の反射角で反射する。反射ミラー16は、ハーフミラーのレーザ光Lが入射される後側面の略中央位置に対して左方向に配置される。
【0032】
ガイド光部15は、可視可干渉光である可視レーザ光、例えば、赤色レーザ光を出射する可視半導体レーザ28(
図2参照)と、可視半導体レーザ28から出射された可視レーザ光Mを平行光に収束する不図示のレンズ群とから構成されている。可視レーザ光Mは、レーザ発振器21から出射されるレーザ光Lと異なる波長である。ガイド光部15は、ハーフミラーのレーザ光Lが出射される略中央位置に対して右方向に配置されている。この結果、可視レーザ光Mは、ハーフミラーのレーザ光Lが出射される略中央位置に、ハーフミラーの前側面、つまり、反射面に対して45度の入射角で入射され、45度の反射角でレーザ光Lの光路上に反射される。
【0033】
ここで、ハーフミラーの反射率は、波長依存性を持っている。具体的には、ハーフミラーは、誘電体層と金属層との多層膜構造の表面処理をされており、可視レーザ光Mの波長に対して高い反射率を有し、それ以外の波長の光はほとんど(99%)透過するように構成されている。
【0034】
反射ミラー16は、レーザ光Lの光路に対して平行な前後方向に対して斜め左前方向に45度の角度を形成するように配置され、ハーフミラーの後側面において反射されたレーザ光Lの一部が、反射面の略中央位置に対して45度の入射角で入射される。そして、反射ミラー16は、反射面に対して45度の入射角で入射されたレーザ光Lを45度の反射角で前側方向へ反射する。
【0035】
光センサ17は、レーザ光Lの発光強度を検出するフォトディテクタ等で構成され、反射ミラー16のレーザ光Lが反射される略中央位置に対して、
図1中、前側方向に配置されている。この結果、光センサ17は、反射ミラー16で反射されたレーザ光Lが入射され、この入射されたレーザ光Lの発光強度を検出する。従って、光センサ17を介してレーザ発振器21から出力されるレーザ光Lの発光強度を検出することができる。
【0036】
ガルバノスキャナ18は、本体ベース11の前側端部に形成された貫通孔の上側に取り付けられ、レーザ発振ユニット12から出射されたレーザ光Lと、ハーフミラーで反射された可視レーザ光Mとを下方へ2次元走査するものである。ガルバノスキャナ18は、ガルバノX軸モータ31とガルバノY軸モータ32とが、それぞれのモータ軸が互いに直交するように外側からそれぞれの取付孔に嵌入されて本体部33に取り付けられ、各モータ軸の先端部に取り付けられた走査ミラーが内側で互いに対向している。そして、各モータ31、32の回転をそれぞれ制御して、各走査ミラーを回転させることによって、レーザ光Lと可視レーザ光Mとを下方へ2次元走査する。この2次元走査方向は、前後方向(X方向)と左右方向(Y方向)である。
【0037】
fθレンズ19は、ガルバノスキャナ18によって2次元走査されたレーザ光Lと可視レーザ光Mとを下方に配置された加工対象物7の加工面7Aに集光する。従って、各モータ31、32の回転を制御することによって、レーザ光Lと可視レーザ光Mが、加工対象物7の加工面7A上において、所望の印字パターンで前後方向(X方向)と左右方向(Y方向)に2次元走査される。
【0038】
次に、レーザ加工装置1を構成する印字情報作成装置2、レーザ加工装置本体部3及びレーザコントローラ6の回路構成について
図2に基づいて説明する。先ず、レーザ加工装置本体部3及びレーザコントローラ6の回路構成について
図2に基づいて説明する。
【0039】
図2に示すように、レーザ加工装置本体部3は、ガルバノコントローラ35、ガルバノドライバ36、レーザドライバ37、半導体レーザドライバ38等から構成されている。レーザコントローラ6には、ガルバノコントローラ35、レーザドライバ37、半導体レーザドライバ38、光センサ17、シャッターモータ26等が電気的に接続されている。また、レーザコントローラ6には、印字情報作成装置2が双方向通信可能に接続され、印字情報作成装置2から送信された印字情報、レーザ加工装置本体部3の制御パラメータ、ユーザからの各種指示情報等を受信可能に構成されている。
【0040】
レーザコントローラ6は、レーザ加工装置本体部3の全体の制御を行う演算装置及び制御装置としてのCPU41、RAM42、ROM43、時間を計測するタイマ44等を備えている。また、CPU41、RAM42、ROM43、タイマ44は、不図示のバス線により相互に接続されて、相互にデータのやり取りが行われる。
【0041】
RAM42は、CPU41により演算された各種の演算結果や印字パターンのXY座標データ等を一時的に記憶させておくためのものである。ROM43は、各種のプログラムを記憶させておくものであり、印字情報作成装置2から送信された印字情報に基づいて印字パターンのXY座標データを算出してRAM42に記憶する等の各種プログラムが記憶されている。ROM43には、フォントの種類別に、直線と楕円弧とで構成された各文字のフォントの始点、終点、焦点、曲率等のデータが記憶されている。
【0042】
また、ROM43には、印字情報作成装置2から受信した印字情報に対応する印字パターンの太さ、深さ及び本数、レーザ発振器21のレーザ出力、レーザ光Lのレーザパルス幅、ガルバノスキャナ10によるレーザ光Lを走査する速度を表すガルバノ走査速度情報等の各種制御パラメータをRAM42に格納するプログラムが記憶されている。
【0043】
そして、CPU41は、かかるROM43に記憶されている各種のプログラムに基づいて各種の演算及び制御を行なうものである。例えば、CPU41は、印字情報作成装置2から入力された印字情報に基づいて算出した印字パターンのXY座標データ、ガルバノ走査速度情報等をガルバノコントローラ35に出力する。また、CPU41は、印字情報作成装置2から入力された印字情報に基づいて設定したレーザ発振器21のレーザ出力、レーザ光Lのレーザパルス幅等のレーザ駆動情報をレーザドライバ37に出力する。CPU41は、光センサ17から入力されたレーザ光Lの発光強度に基づいて、レーザ発振器21のレーザ出力制御信号をレーザドライバ37に出力する。
【0044】
CPU41は、可視半導体レーザ28の点灯開始を指示するオン信号又は消灯を指示するオフ信号を半導体レーザドライバ38に出力する。CPU41は、シャッターモータ26に対して、シャッター27をレーザ光Lの光路を遮る位置に回転させるように指示する遮光指示信号、又は、シャッター27をレーザ光Lの光路を遮らない位置に回転させるように指示する開放指示信号を出力する。
【0045】
ガルバノコントローラ35は、レーザコントローラ6から入力された印字パターンのXY座標データ、ガルバノ走査速度情報等に基づいて、ガルバノX軸モータ31とガルバノY軸モータ32の駆動角度、回転速度等を算出して、駆動角度、回転速度を表すモータ駆動情報をガルバノドライバ36へ出力する。ガルバノドライバ36は、ガルバノコントローラ35から入力された駆動角度、回転速度を表すモータ駆動情報に基づいて、ガルバノX軸モータ31とガルバノY軸モータ32を駆動制御して、レーザ光Lと可視レーザ光Mを2次元走査する。
【0046】
レーザドライバ37は、レーザコントローラ6から入力されたレーザ発振器21のレーザ出力、レーザ光Lのレーザパルス幅等のレーザ駆動情報と、レーザ発振器21のレーザ出力制御信号等に基づいて、レーザ発振器21を駆動する。また、半導体レーザドライバ38は、レーザコントローラ6から入力されたオン信号又はオフ信号に基づいて、可視半導体レーザ28を点灯駆動又は、消灯する。
【0047】
次に、印字情報作成装置2の回路構成について
図2に基づいて説明する。
図2に示すように、印字情報作成装置2は、印字情報作成装置2の全体を制御する制御部51、
図1に示すマウス52とキーボード53等から構成される入力操作部55、液晶ディスプレイ(LCD)56、CD−ROM57に各種データ、プログラム等を書き込み及び読み込むためのCD−R/W58等から構成されている。制御部51には、不図示の入出力インターフェースを介して入力操作部55、液晶ディスプレイ56、CD−R/W58等が接続されている。
【0048】
CD−R/W58は、
図7に示す「補正印字パターン表示処理」等のプログラム、
図8に示すマーキング(印字)情報入力画面を液晶ディスプレイ56に表示するプログラム、
図9及び
図10に示す補正印字パターンの表示画面を液晶ディスプレイ56に表示するプログラム等の各種アプリケーションソフトウェア等をCD−ROM57から読み込む、又は、CD−ROM57に対して書き込む。
【0049】
制御部51は、印字情報作成装置2の全体の制御を行う演算装置及び制御装置としてのCPU61、RAM62、ROM63、時間を計測するタイマ65、ハードディスクドライブ(以下、「HDD」という。)66等を備えている。また、CPU61、RAM62、ROM63、タイマ65は、不図示のバス線により相互に接続されて、相互にデータのやり取りが行われる。また、CPU61とHDD66は、不図示の入出力インターフェースを介して接続され、相互にデータのやり取りが行われる。
【0050】
RAM62は、CPU61により演算された各種の演算結果等を一時的に記憶させておくためのものである。ROM63は、各種のプログラムを記憶させておくものであり、
図7に示す「補正印字パターン表示処理」のプログラム等を記憶している。尚、
図7に示す「補正印字パターン表示処理」のプログラムは、HDD66に記憶されていてもよいし、CD−ROM57等の記憶媒体から読み込まれてもよいし、図示しないインターネットなどのネットワークからダウンロードされてもよい。
【0051】
また、HDD66は、各種アプリケーションソフトウェアのプログラム、各種データファイルを記憶するものであり、
図3に示す制御パラメータデータファイル71を記憶する制御パラメータ記憶領域、
図4乃至
図6に示す各閾値テーブル81、82、83等を記憶する閾値情報記憶領域等が設けられている。
【0052】
ここで、HDD66の制御パラメータ記憶領域に記憶される制御パラメータデータファイル71の一例について
図3に基づいて説明する。
図3に示すように、制御パラメータデータファイル71は、レーザ光Lでマーキング(印字)加工される加工対象物7のアルミ、ステンレス、鉄等の各材質毎に、レーザ加工装置本体部3を駆動制御する制御パラメータ76を記憶する複数の制御パラメータテーブル75A、75B、75C、・・・から構成されている。
【0053】
各制御パラメータテーブル75A、75B、75C、・・・に記憶される制御パラメータ76は、レーザ光Lによる印字パターンを決定する印字パラメータ77と、レーザ加工装置本体部3を駆動する駆動パラメータ78とから構成されている。更に、印字パラメータ77は、「パターン太さ」、「パターン深さ」、「印字パターン本数」の各パラメータから構成され、駆動パラメータ78は、「レーザ出力」、「レーザパルス幅」、「ガルバノ走査速度」の各パラメータから構成されている。「パターン太さ」には、印字パターンの太さ、例えば、文字幅が記憶されている。「パターン深さ」には、印字品質、例えば、普通、綺麗、速い、ハイコントラスト等に対応する印字パターンの深さが記憶されている。尚、駆動パラメータ78のうち、「レーザパルス幅」、「ガルバノ走査速度」とにより、後述する「基準印字用ドットパターン(基準印字パターン)」のドット間隔が決定される。
【0054】
「印字パターン本数」には、印字パターンをトレースする際のレーザ光Lの本数、つまり、印字パターン上を平行にトレースするトレース回数が記憶されている。例えば、「パターン太さ」が「0.1mm〜0.3mm」で、「印字パターン本数」が「2本」の場合には、ビーム径「0.1mm〜0.3mm」のレーザ光Lで、印字パターン上を平行に2回トレースする。従って、マーキングされる文字幅は、「0.2mm〜0.6mm」となり、「印字パターン本数」が「1本」の場合に対して2倍の文字幅でマーキング(印字)される。
【0055】
「レーザ出力」には、加工対象物7にマーキングする際のレーザ発振器21の出力が記憶されている。「レーザパルス幅」には、加工対象物7にマーキングする際のレーザ発振器21から出力するレーザ光L(パルスレーザ)のパルス幅が記憶されている。「ガルバノ走査速度」には、加工対象物7にマーキングする際のガルバノスキャナ18のレーザ光Lを2次元走査する走査速度情報が記憶されている。尚、各「ガルバノ走査速度」におけるガルバノスキャナ18の各モータ31、32の走査応答性、つまり、ガルバノミラーの走査応答性を記憶するようにしてもよい。
【0056】
次に、HDD66の閾値情報記憶領域に記憶される各閾値テーブル81、82、83等の一例について
図4乃至
図6に基づいて説明する。尚、各閾値テーブル81、82、83等は、レーザ光Lでマーキング(印字)加工される加工対象物7のアルミ、ステンレス、鉄等の各材質毎に作成されて、閾値情報記憶領域に記憶されている。また、
図4乃至
図6に示す各閾値テーブル81、82、83は、材質がアルミの加工対象物7に対応するものである。
【0057】
図4に示すように、停止時間閾値テーブル81は、「時間」と「折れ線角度」から構成されている。「時間」には、レーザ光Lでマーキング(印字)加工する際の印字パターンの曲がり角において、レーザ光Lの移動が停止して連続照射する停止時間がパラメータとして記憶されている。「折れ線角度」には、レーザ光Lでマーキング(印字)加工する際の各停止時間に対する印字パターンの曲がり角の各角度「10度」、「40度」、「90度」、「180度」における印字品質への熱影響の状態が記憶されている。
【0058】
加工対象物7は、材質によって、レーザ光Lの照射光に対する耐性が異なる。加工対象物7が、レーザ光Lの耐性が弱い場合、レーザ光Lの照射により材質に酸化などの組織変化が生じる。レーザ光Lでマーキング(印字)加工されることにより、加工対象物7に組織変化が生じた場合、加工対象物7のマーキング(印字)加工された位置が変色する。この、加工対象物7のマーキング(印字)加工された位置が組織変化する現象を、本実施形態では「熱影響」として説明する。
【0059】
「○」印は、印字パターンの曲がり角には、印字品質への熱影響が小さい又はほぼ無い旨を表している。「警告」印は、印字パターンの曲がり角には、印字品質への熱影響が大きいという警告を行う必要がある旨を表している。例えば、印字パターンの曲がり角でのレーザ光Lの移動の停止時間が、「0.5ミリ秒」よりも長く、且つ、「1ミリ秒」以下の場合には、印字パターンの曲がり角に対して印字品質への熱影響が大きいという警告を行う必要がある角度閾値は、「90度」である。つまり、印字パターンの曲がり角の角度が「90度」以上の場合には、印字パターンの曲がり角におけるレーザ光Lの停止時間が、「0.5ミリ秒」より長いときには、印字品質への熱影響が大きいという警告を行う必要がある旨を表している。
【0060】
図5に示すように、オーバーシュート閾値テーブル82は、「走査速度」と「折れ線角度」から構成されている。「走査速度」には、加工対象物7にマーキングする際のガルバノスキャナ18のレーザ光Lを2次元走査する走査速度がパラメータとして記憶されている。「折れ線角度」には、レーザ光Lでマーキング(印字)加工する際の各走査速度に対する印字パターンの曲がり角の各角度「10度」、「40度」、「90度」、「180度」におけるレーザ光Lのオーバーシュートの状態が記憶されている。
【0061】
レーザ光Lのオーバーシュートの状態とは、各印字パターンのXY座標に対して、レーザ光Lがマーキング(印字)加工する位置にずれが生じる状態である。印字パターンのXY座標に対して、レーザ光Lのマーキング(印字)加工する位置のずれ量が所定の閾値より大きい場合、レーザ光Lのオーバーシュートが大きいとされる。印字パターンのXY座標に対して、レーザ光Lのマーキング(印字)加工する位置のずれ量が所定の閾値より小さい場合、レーザ光Lのオーバーシュートが小さい又はほぼ無いとされる。印字パターンのXY座標に対して、レーザ光Lのマーキング(印字)加工する位置のずれ量が、本発明の誤差の一例である。
【0062】
「○」印は、印字パターンの曲がり角には、レーザ光Lのオーバーシュートが小さい又はほぼ無い旨を表している。「警告」印は、印字パターンの曲がり角には、レーザ光Lのオーバーシュートが大きい旨の警告を行う必要がある旨を表している。例えば、ガルバノスキャナ18の走査速度が、「10m/sec」より速く、且つ、「15m/sec」以下の場合には、印字パターンの曲がり角に対してレーザ光Lのオーバーシュートが大きい旨の警告を行う必要がある角度閾値は、「90度」である。つまり、印字パターンの曲がり角の角度が「90度」以上の場合には、ガルバノスキャナ18の走査速度が、「10m/sec」より速いときには、レーザ光Lのオーバーシュートが大きい旨の警告を行う必要がある旨を表している。
【0063】
図6に示すように、熱影響閾値テーブル83は、「走査速度」と「材料厚み(mm)」から構成されている。「走査速度」には、加工対象物7にマーキングする際のガルバノスキャナ18のレーザ光Lを2次元走査する走査速度がパラメータとして記憶されている。「材料厚み(mm)」には、レーザ光Lでマーキング(印字)加工する際の各走査速度に対する加工対象物7の各厚さ「0.1mm」、「0.5mm」、「1mm」、「5mm」における加工対象物7への熱影響の状態が記憶されている。
【0064】
「○」印は、加工対象物7への熱影響が小さい又はほぼ無い旨を表している。「警告」印は、加工対象物7への熱影響が大きいという警告を行う必要がある旨を表している。例えば、ガルバノスキャナ18の走査速度が、「5m/sec」より速く、且つ、「10m/sec」以下の場合には、加工対象物7への熱影響が大きいという警告を行う必要がある厚さ閾値は、「0.5mm」である。つまり、加工対象物7の厚さが、「0.5mm」以下の場合には、ガルバノスキャナ18の走査速度が、「10m/sec」以下のときには、加工対象物7への熱影響が大きいという警告を行う必要がある旨を表している。
【0065】
[補正印字パターン表示処理]
次に、上記のように構成されたレーザ加工装置1の印字情報作成装置2のCPU61が実行する処理であって、入力された印字情報と加工条件とに基づいて印字パターンを補正した補正印字パターンを作成して液晶ディスプレイ56に表示する「補正印字パターン表示処理」について
図7乃至
図13に基づいて説明する。補正印字パターンとは、入力された印字情報と加工条件とに従って、加工対象物7にマーキング(印字)加工される加工後の加工痕を推定した推定加工痕パターンを示す図である。尚、
図7にフローチャートで示されるプログラムは、ユーザから入力操作部55を介して印字パターンの設定開始を指示する設定開始指示が入力された場合に、CPU61によって実行される。
【0066】
図7に示すように、先ず、ステップ(以下、Sと略記する)11において、CPU61は、
図8に示すマーキング(印字)情報入力画面93を液晶ディスプレイ56に表示する。そして、CPU61は、入力操作部55を介して入力された、文字、記号、図形等の印字データ、フォントサイズ、フォント、文字幅、印字品質、加工対象物7の材質、厚さ、表面粗さ等の印字情報(加工情報)を取得してRAM62に記憶する。
【0067】
ここで、マーキング(印字)情報入力画面93の一例について
図8に基づいて説明する。
図8に示すように、マーキング(印字)情報入力画面93には、印字データ入力欄93A、フォントサイズ入力欄93B、フォント入力欄93C、文字幅入力欄93D、文字太さ表示欄93E、書体入力欄93F、印字品質指定カーソル93G、材質入力欄93H、厚さ入力欄93I、表面粗さ指定カーソル93L、設定ボタン93J、キャンセルボタン93K等が表示される。
【0068】
印字データ入力欄93Aには、キーボード53等から入力された文字、記号、図形等の印字データが表示される。フォントサイズ入力欄93Bには、キーボード53等から入力されたフォントサイズが表示される。フォント入力欄93Cには、キーボード53等から入力され、又はマウス52によってプルダウンメニューから選択されたフォントが表示される。文字幅入力欄93Dには、キーボード53等から入力され、又はマウス52によってプルダウンメニューから選択された文字幅が表示される。尚、印字データ入力欄93Aにより、キーボード53等から文字、記号、図形等が入力され、印字データが表示される処理が、本発明の加工情報取得手段の一例である。
【0069】
文字太さ表示欄93Eには、文字幅に対応する細字、中字、太字のいずれかが選択されて表示される。書体入力欄93Fには、キーボード53等から入力され、又はマウス52によって選択された立体、斜体等の書体が表示される。印字品質指定カーソル93Gは、マウス52によってクリックされて左右に移動表示され、「はやい」〜「きれい」の5段階の印字品質うち、停止位置に対応する印字品質を指定する。材質入力欄93Hには、キーボード53等から入力され、又はマウス52によってプルダウンメニューから選択された加工対象物7の材質が表示される。
【0070】
厚さ入力欄93Iには、キーボード53等から入力され、又はマウス52によってプルダウンメニューから選択された加工対象物7の厚さ寸法が表示される。表面粗さ指定カーソル93Lは、マウス52によってクリックされて左右に移動表示され、「荒仕上げ」、「並仕上げ」、「上仕上げ」の3段階の三角記号で表される表面粗さのうち、停止位置に対応する表面粗さを指定する。
【0071】
そして、マウス52によって設定ボタン93Jがクリックされた場合には、CPU61は、各欄93A〜93Iに表示された内容、及び各指定カーソル93G、93Lによって指定された内容を印字情報としてRAM62に記憶する。一方、キャンセルボタン93Kがマウス52によってクリックされた場合には、CPU61は、各欄93A〜93Iの表示をクリアして、印字情報の再入力を待つ。
【0072】
図7に示すように、S12において、CPU61は、S11で取得した印字情報に基づいて、制御パラメータデータファイル71から加工対象物7にマーキングする制御パラメータ76(加工条件)を取得する。S12における制御パラメータ76(加工条件)を取得する処理が、本発明の加工条件取得手段の一例である。
【0073】
例えば、S11で取得した印字情報に含まれる「加工対象物7の材質」が「アルミ」の場合には、CPU61は、
図3に示す制御パラメータデータファイル71から、材質が「アルミ」に対応する各制御パラメータテーブル75A、75B、75C、・・・を選択する。そして、CPU61は、S11で取得した印字情報に含まれる「文字幅」が「0.3mm」の場合には、制御パラメータ76の「パターン太さ」を「0.3mm」とする。また、印字情報に含まれる「印字品質」が「速い」の場合には、制御パラメータ76の「パターン深さ」を「5μm」とする。
【0074】
例えば、印字品質が「はやい」は、パターン深さ「5μm」に対応する。また、印字品質が「2」は、パターン深さ「7.5μm」に対応する。また、印字品質が「3」は、パターン深さ「10μm」に対応する。また、印字品質が「4」は、パターン深さ「15μm」に対応する。また、印字品質が「きれい」は、パターン深さ「20μm」に対応する。
【0075】
そして、CPU61は、各制御パラメータテーブル75A、75B、75C、・・・から、「パターン太さ」が「0.3mm」、及び、「パターン深さ」が「5μm」に合致する制御パラメータ76を読み出し、加工対象物7の材質「アルミ」と制御パラメータ76をマーキング用制御パラメータとしてRAM62に記憶する。
【0076】
例えば、CPU61は、
図3に示す制御パラメータデータファイル71から、加工対象物7の材質を表す「印字素材」が「アルミ」で、「パターン太さ」が「0.3mm」、「パターン深さ」が「5μm」、「印字パターン本数」が「1本」の印字パラメータ77と、「レーザ出力」が「8kW」、「レーザパルス幅」が「100ns」、「ガルバノ走査速度」が「12m/s」の駆動パラメータ78とから構成される制御パラメータ76を、マーキング用制御パラメータとしてRAM62に記憶する。
【0077】
続いて、
図7に示すように、S13において、CPU61は、印字データ、フォントサイズ、フォントをRAM62から読み出すと共に、マーキング用制御パラメータから「パターン太さ」をRAM62から読み出す。そして、CPU61は、「パターン太さ」を直径とするドットにより、印字データをフォントサイズのフォントで印字する「基準印字用ドットパターン(基準印字パターン)」を作成してRAM62に記憶する。従って、基準印字用ドットパターンの各ドットは、レーザ光L(パルスレーザ)の走査軌跡の走査基準を示し、レーザ光Lによって加工対象物7に加工される1パルス毎、又は、所定時間毎、例えば、20μ秒毎の加工痕に対応している。S13において、「基準印字用ドットパターン(基準印字パターン)」を作成する処理が、本発明の基準印字パターン作成手段の一例である。
【0078】
そして、CPU61は、マーキング用制御パラメータとしてRAM62に記憶した制御パラメータ76から「ガルバノ走査速度」を読み出す。尚、ガルバノスキャナ18の各モータ31、32の走査応答性を取得するようにしてもよい。その後、CPU61は、「基準印字用ドットパターン」のドットパターンを順番に読み出し、当該「ガルバノ走査速度」でガルバノスキャナ18の各モータ31、32を駆動した場合に、各ドット毎にレーザ光L(パルスレーザ)により印字されるドットパターンを作成して、「補正印字ドットパターン(補正印字パターン)」としてRAM62に記憶する。従って、「補正印字ドットパターン」では、印字データの折れ線角部にドットのオーバーシュート等が発生する場合がある。ドットパターンは、ガルバノスキャナ18の各モータ31、32が遅延なく駆動された場合に、所定のパルス幅でレーザ駆動されるレーザ光Lが等間隔で照射される位置を示す走査軌跡である。
【0079】
そして、S14において、CPU61は、RAM62から「補正印字ドットパターン」を読み出し、液晶ディスプレイ56に印字イメージとして表示する。
例えば、
図9に示すように、CPU61は、「ABC」の補正印字ドットパターン95を液晶ディスプレイ56の画面中央部に印字イメージとして表示する。
【0080】
また、CPU61は、液晶ディスプレイ56の画面下端縁部に、基準印字用ドットパターンのレーザ光Lによるマーキング(印字)開始を指示する印字ボタン96と、S11で設定したマーキング(印字)情報入力画面93を再度、表示するように指示する再設定ボタン97とを表示する。また、CPU61は、マウス52やキーボード53によって移動操作されるカーソル98を液晶ディスプレイ56の画面に表示する。
【0081】
続いて、S15において、CPU61は、印字情報(加工情報)としてRAM62に記憶した加工対象物7の「材質」を読み出す。そして、CPU61は、この「材質」に対応する閾値情報記憶領域に記憶される各閾値テーブルを順番に読み出す。そして、CPU61は、各閾値テーブルについて、「補正印字ドットパターン」のドットパターンにおいて、「警告」印に対応する警告箇所の座標位置を抽出する。その後、CPU61は、「警告」印に対応する警告箇所あるか否か、つまり、「警告」印に対応する警告箇所の座標位置が抽出されて、RAM62に記憶されているか否かを判定する判定処理を実行する。
【0082】
具体的には、例えば、加工対象物7の「材質」が「アルミ」で、停止時間閾値テーブル81を読み出した場合には、CPU61は、先ず、マーキング用制御パラメータとしてRAM62に記憶した「ガルバノ走査速度」を読み出す。そして、CPU61は、各角度「10度」、「40度」、「90度」、「180度」の曲がり角において、レーザ光Lの移動が停止して連続照射する実際の「実停止時間」を算出して、RAM62に記憶する。
【0083】
そして、CPU61は、各角度「10度」、「40度」、「90度」、「180度」の曲がり角に対する「実停止時間」を、停止時間閾値テーブル81の各角度「10度」、「40度」、「90度」、「180度」の「時間」として、「警告」印に該当するものがあるか否かを判定する判定処理を実行する。
【0084】
CPU61は、「警告」印に該当するものがあると判定した場合には、「補正印字ドットパターン」のドットパターンから、「警告」印に対応する各角度で曲がる曲がり角のドットの座標位置を抽出し、「停止時間大」の「警告箇所」の座標位置としてRAM62に記憶する。例えば、「実停止時間」が「0.5ミリ秒」より長く、且つ、「1ミリ秒」以下の場合には、CPU61は、「90度」以上の角度で曲がる曲がり角のドットの座標位置を抽出し、「停止時間大」の「警告箇所」の座標位置としてRAM62に記憶する。
【0085】
続いて、例えば、オーバーシュート閾値テーブル82を読み出した場合には、CPU61は、先ず、マーキング用制御パラメータとしてRAM62に記憶した「ガルバノ走査速度」を読み出す。そして、CPU61は、この「ガルバノ走査速度」をオーバーシュート閾値テーブル82の「走査速度」として、各角度「10度」、「40度」、「90度」、「180度」のうち、「警告」印に該当するものがあるか否かを判定する判定処理を実行する。
【0086】
CPU61は、「警告」印に該当するものがあると判定した場合には、「補正印字ドットパターン」のドットパターンから、「警告」印に対応する各角度で曲がる曲がり角のドットの座標位置を抽出し、「オーバーシュート大」の「警告箇所」の座標位置としてRAM62に記憶する。例えば、「ガルバノ走査速度」が「10m/s」より速く、且つ、「15m/s」以下の場合には、CPU61は、「90度」以上の角度で曲がる曲がり角のドットの座標位置を抽出し、「オーバーシュート大」の「警告箇所」の座標位置としてRAM62に記憶する。
【0087】
その後、例えば、熱影響閾値テーブル83を読み出した場合には、CPU61は、先ず、印字情報(加工情報)としてRAM62に記憶した加工対象物7の「厚さ」を読み出す。また、CPU61は、マーキング用制御パラメータとしてRAM62に記憶した制御パラメータ76から「ガルバノ走査速度」を読み出す。そして、CPU61は、この「厚さ」を熱影響閾値テーブル83の「材料厚み」とし、この「ガルバノ走査速度」を熱影響閾値テーブル83の「走査速度」として、「警告」印に該当するか否かを判定する判定処理を実行する。
【0088】
CPU61は、「警告」印に該当すると判定した場合には、「補正印字ドットパターン」のドットパターンの全座標位置を抽出し、「熱影響大」の「警告箇所」の座標位置としてRAM62に記憶する。例えば、「ガルバノ走査速度」が「10m/s」より速く、且つ、「15m/s」以下の場合には、CPU61は、アルミにより形成された加工対象物7の厚さが「0.5mm」以下のときに、「補正印字ドットパターン」のドットパターンの全座標位置を抽出し、「熱影響大」の「警告箇所」の座標位置としてRAM62に記憶する。
【0089】
そして、S15で「補正印字ドットパターン」のドットパターンにおいて、「警告」印に対応する警告箇所が無い、つまり、警告箇所の座標位置をRAM62に記憶していないと判定した場合には(S15:NO)、CPU61は、後述のS19の処理に移行する。
一方、「補正印字ドットパターン」のドットパターンにおいて、「警告」印に対応する警告箇所が
ある、つまり、警告箇所の座標位置をRAM62に記憶していると判定した場合には(S15:YES)、CPU61は、S16の処理に移行する。
【0090】
S16において、CPU61は、各警告箇所の座標位置をRAM62から読み出し、警告の内容を表す警告情報、例えば、警告の内容を表す矢印状の警告マークを該当する警告箇所に表示する。例えば、
図9に示すように、「補正印字ドットパターン」の「ABC」のドットパターンにおいて、「A」の頂点部の座標位置が、「停止時間大」の「警告箇所」の座標位置としてRAM62に記憶されている(S15:YES)。この場合には、CPU61は、レーザ光Lによる「停止時間大」の警告箇所を示す直線の矢印状の警告マーク99Aを「A」の頂点部を指すように液晶ディスプレイ56の画面に表示する。
【0091】
また、例えば、
図9に示すように、「補正印字ドットパターン」の「ABC」のドットパターンにおいて、「A」の頂点部を超えた座標位置が、「オーバーシュート大」の「警告箇所」の座標位置としてRAM62に記憶されている(S15:YES)。この場合には、CPU61は、レーザ光Lによる「オーバーシュート大」の警告箇所を示す破線の矢印状の警告マーク99Bを「A」の頂点部を超えた部分を指すように液晶ディスプレイ56の画面に表示する。
【0092】
また、例えば、
図9に示すように、「補正印字ドットパターン」の「ABC」のドットパターンにおいて、アルミで形成された加工対象物7の「厚さ」が「0.5mm」で、「ガルバノ走査速度」が「20m/s」、つまり、印字品質が「はやい」の場合には、「熱影響大」の「警告箇所」の座標位置がRAM62に記憶されていない(S15:NO)。従って、「ABC」の全体を指して、「熱影響大」の警告箇所を示す波線の矢印状の警告マーク99Cは、液晶ディスプレイ56の画面に表示されていない。
【0093】
続いて、S17において、CPU61は、液晶ディスプレイ56の画面に表示された警告箇所のいずれかが所定時間内に、例えば、20秒以内に選択されたか否かを判定する判定処理を実行する。例えば、
図10に示すように、CPU61は、液晶ディスプレイ56の画面に表示された警告箇所を示す各矢印状の警告マーク99A、99Bのいずれかの上側に、キーボード53又はマウス52を介してカーソル98が移動されて、キーボード53の不図示のリターンキーの押下、又はマウス52のクリック操作によって所定時間内に選択されたか否かを判定する判定処理を実行する。
【0094】
そして、液晶ディスプレイ56の画面に表示された警告箇所のいずれかが所定時間内に選択された、つまり、警告箇所を示す警告情報、例えば、矢印状の警告マークのいずれかが所定時間内に選択されたと判定した場合には(S17:YES)、CPU61は、S18の処理に移行する。
【0095】
S18において、CPU61は、表示画面56の略中央位置から上側の部分に拡大表示ウインドウ101(
図10参照)を表示する。そして、CPU61は、「補正印字ドットパターン」のドットパターンから、選択された警告箇所を含む部分のドットパターンをRAM62から読み出して、拡大表示ウインドウ101に所定倍率、例えば、50倍の倍率で拡大表示する。また、CPU61は、当該警告箇所の警告内容を拡大表示ウインドウ101に識別可能に表示した後、再度、S17以降の処理を実行する。
【0096】
例えば、
図10に示すように、「停止時間大」の警告箇所を示す警告マーク99Aの上側にカーソル98が移動されて、マウス52がクリック操作された場合には(S17:YES)、CPU61は、拡大表示ウインドウ101を表示する。そして、CPU61は、「停止時間大」の警告箇所を含む「A」の頂点部分のドットパターン102を50倍の倍率で拡大表示ウインドウ101に拡大表示する。
【0097】
そして、CPU61は、「A」の頂点のドット102Aを各ドットよりも少し大きい黒丸ドットで表示して、当該ドット102Aに対応する位置が熱影響により黒色に変色する旨を警告する。その後、CPU61は、再度、S17以降の処理を実行する。これにより、ユーザは、「基準印字用ドットパターン」のドットパターンをS11で設定した条件でマーキング(印字)した場合の、曲がり角における熱影響を容易に認識することができる。
【0098】
また、例えば、
図11に示すように、「オーバーシュート大」の警告箇所を示す警告マーク99Bの上側にカーソル98が移動されて、マウス52がクリック操作された場合には(S17:YES)、CPU61は、拡大表示ウインドウ101を表示する。そして、CPU61は、「オーバーシュート大」の警告箇所を含む「A」の頂点部を超えた部分を含むドットパターン103を50倍の倍率で拡大表示ウインドウ101に拡大表示する。
【0099】
その結果、オーバーシュートしたドット103Aは、他のドットよりも走査方向に対して垂直方向外側にオーバーシュートした状態で表示される。その後、CPU61は、再度、S17以降の処理を実行する。これにより、ユーザは、「基準印字用ドットパターン」のドットパターンをS11で設定した条件でマーキング(印字)した場合の、オーバーシュートの発生を容易に認識することができる。
【0100】
尚、例えば、
図12に示すように、補正印字ドットパターン105の全体を指して、「熱影響大」の警告箇所を示す波線の矢印状の警告マークの上側にカーソルが移動されて、マウス52がクリック操作された場合には(S17:YES)、CPU61は、拡大表示ウインドウ101を表示する。そして、CPU61は、補正印字ドットパターン105をマーキング(印字)するレーザ光Lによって、熱影響の発生する部分の外周を囲む枠106を表示して、加工対象物7の加工面7Aにおける熱影響のある部分の広さを示す。
【0101】
また、CPU61は、補正印字ドットパターン105をマーキング(印字)するレーザ光Lによって、両端部が枠106に接続されて、ドットパターンの間に配置された2本の太線107の太さの違いにより、熱影響の発生する深さを示す。これにより、ユーザは、加工対象物7の加工面7Aにおける熱影響の広さ及び熱影響の深さを容易に認識することができる。
【0102】
更に、例えば、
図13に示すように、不図示の「走査速度大」の警告箇所を示す警告マークの上側にカーソルが移動されて、マウス52がクリック操作された場合には(S17:YES)、CPU61は、拡大表示ウインドウ101を表示する。そして、CPU61は、「走査速度大」の警告箇所を含む部分のドットパターン108を50倍の倍率で拡大表示ウインドウ101に拡大表示する。これにより、ユーザは、走査速度が速いため、ドット間の走査方向における隙間が大きくなることを容易に認識することができる。尚、S15において、CPU61は、ドットパターン間の走査方向における隙間がドットの直径寸法よりも大きくなった場合に、当該部分を「走査速度大」の警告箇所として抽出して、各ドットの座標位置をRAM62に記憶する。
【0103】
一方、
図7に示すように、S17で液晶ディスプレイ56の画面に表示された警告箇所のいずれも所定時間内に、例えば、20秒以内に選択されなかった、つまり、警告箇所を示す警告情報、例えば、矢印状の警告マークのいずれも所定時間内に選択されなかったと判定した場合には(S17:NO)、CPU61は、S19の処理に移行する。S19において、CPU61は、マーキング(印字)開始を指示する印字指示が所定時間内に、例えば、30秒以内に入力されたか否かを判定する判定処理を実行する。例えば、
図9に示す印字ボタン96が所定時間内にマウス52によってクリックされたか否かを判定する判定処理を実行する。
【0104】
そして、マーキング(印字)開始を指示する印字指示が所定時間内に入力されたと判定した場合、例えば、
図9に示す印字ボタン96が所定時間内にマウス52によってクリックされたと判定した場合には(S19:YES)、CPU61は、S20の処理に移行する。S20において、CPU61は、S11で取得した「基準印字用ドットパターン(基準印字パターン)」と、S12で取得した制御パラメータ76をRAM62から読み出し、マーキング(印字)を行うように指示する加工指示情報としてレーザコントローラ6へ送信した後、当該処理を終了する。
【0105】
一方、マーキング(印字)開始を指示する印字指示が所定時間内に入力されていないと判定した場合、例えば、
図9に示す印字ボタン96がマウス52によって所定時間内にクリックされていないと判定した場合には(S19:NO)、CPU61は、S21の処理に移行する。S21において、CPU61は、印字情報の再設定を指示する再設定指示が所定時間内に、例えば、30秒以内に入力されたか否かを判定する判定処理を実行する。例えば、
図9に示す再設定ボタン97が所定時間内にマウス52によってクリックされたか否かを判定する判定処理を実行する。
【0106】
そして、印字情報の再設定を指示する再設定指示が所定時間内に入力されたと判定した場合、例えば、
図9に示す再設定ボタン97が所定時間内にマウス52によってクリックされたと判定した場合には(S21:YES)、CPU61は、再度S11以降の処理を実行する。一方、印字情報の再設定を指示する再設定指示が所定時間内に入力されていないと判定した場合、例えば、
図9に示す再設定ボタン97がマウス52によって所定時間内にクリックされていないと判定した場合には(S21:NO)、CPU61は、再度S17以降の処理を実行する。
【0107】
ここで、ガルバノスキャナ18は、レーザ走査部の一例として機能する。fθレンズ19は、集光部の一例として機能する。印字情報作成装置2は、加工情報取得手段、加工条件取得手段、基準印字パターン作成手段、補正手段、制御手段、補正印字パターン判定手段、及び、選択受付手段の一例として機能する。
【0108】
以上詳細に説明した通り、本実施形態に係るレーザ加工装置1では、CPU61は、ガルバノスキャナ18、レーザ発振器21等の駆動条件に基づいてレーザ光L(パルスレーザ)の走査速度を考慮して補正した「補正印字ドットパターン」、つまり、実際の印字パターンをシミュレーションして、液晶ディスプレイ56に表示することが可能となる。従って、ユーザは、液晶ディスプレイ56に表示された「補正印字ドットパターン」を見ることによって、実際の印字品質に更に近づいた状態や加工条件を検討することができ、試し印字を低減することが可能となる。
【0109】
また、CPU61は、閾値情報記憶領域に記憶される各閾値テーブルに基づいて、「補正印字ドットパターン」のドットパターンにおいて、「警告」印に対応する警告箇所がある場合には、液晶ディスプレイ56に表示した「補正印字ドットパターン」の警告箇所を示す警告情報、例えば、矢印状の警告マークを表示する。そして、警告箇所を示す警告情報、例えば、矢印状の警告マークのいずれかが所定時間内に選択された場合には、CPU61は、表示画面56の略中央位置から上側の部分に拡大表示ウインドウ101(
図10参照)を表示する。
【0110】
そして、CPU61は、「補正印字ドットパターン」のドットパターンから、選択された警告箇所を含む部分のドットパターンをRAM62から読み出して、拡大表示ウインドウ101に所定倍率で拡大表示する。これにより、ユーザは、警告箇所をマウス52等によって選択することによって、警告箇所を拡大表示して確認することが可能となり、ガルバノスキャナ18の走査速度等の制御パラメータを修正して、再度、補正印字ドットパターンを液晶ディスプレイ56に表示することができ、実際の試し印字を避けることが可能となる。
【0111】
尚、本発明は前記実施形態に限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
【0112】
例えば、制御パラメータデータファイル71を、ネットワークを介してサーバーなどの外部記憶媒体から取得してもよいし、持ち運び可能な外部記憶媒体(USBメモリなど)から読み込んでもよい。また、印字情報作成装置2は有線または無線で接続されたタブレット型端末や携帯電話端末でもよい。
また、例えば、駆動パラメータ78と印字パラメータ77の両方を変える場合に、パターン太さを細くして、印字パターン本数を1本ではなく複数に設定するようにしてもよい。