(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6036744
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】竪型炉の羽口部構造及び竪型炉並びに乾留生成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
F27B 1/16 20060101AFI20161121BHJP
C10B 3/00 20060101ALI20161121BHJP
F27D 1/00 20060101ALN20161121BHJP
【FI】
F27B1/16
C10B3/00
!F27D1/00 D
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-84213(P2014-84213)
(22)【出願日】2014年4月16日
(65)【公開番号】特開2015-203546(P2015-203546A)
(43)【公開日】2015年11月16日
【審査請求日】2015年11月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126701
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】安藤 誠
【審査官】
光本 美奈子
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭54−062204(JP,A)
【文献】
特開2009−079289(JP,A)
【文献】
実開昭61−034337(JP,U)
【文献】
実開昭61−050754(JP,U)
【文献】
特開平04−359088(JP,A)
【文献】
特開平03−296597(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 1/16
C10B 3/00
F27D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
竪型炉の羽口部構造であって、
前記竪型炉の炉壁を貫通する羽口と、
羽口部から前記竪型炉の内周面に沿って水平方向に延在するように、前記竪型炉の内壁に取り付けられる熱伝導材と、を有し、
前記熱伝導材は、850[℃]で20[W/(m・K)]以上の熱伝導率を有することを特徴とする竪型炉の羽口部構造。
【請求項2】
請求項1に記載の竪型炉の羽口部構造を有する竪型炉。
【請求項3】
請求項2に記載の竪型炉を用いて乾留生成物を製造する方法であって、
竪型炉に成型物を充填し、
最も高い温度の熱媒ガスが吹き込まれる羽口での水平断面における成型物の温度が660〜850[℃]となるように、前記熱媒ガスを前記竪型炉内に吹き込んで、乾留ゾーンを形成し、該乾留ゾーンで前記成型物を乾留することを特徴とする乾留生成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、竪型炉に装入された成型物を乾留する竪型炉の羽口部構造、及び、この羽口部構造を有する竪型炉、並びに、該竪型炉を用いて成型物を乾留して乾留生成物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉操業に用いられるコークスには、還元材としての役割、熱源としての役割や、高炉内の通気性をよくするためのスペーサーとしての役割、があり、スペーサーの役割を効果的に果たすように、高炉操業には塊状コークスが多く用いられる。近年、塊状コークスとなり易い粘結性が高い石炭が高価になってきており、この石炭の代わりに、粘結性が低い安価な石炭から成型コークスを製造し、該成型コークスを高炉操業に用いる技術がある。また、コークスの反応性を向上させるという観点から、石炭に鉄鉱石を混合し、所定の大きさに成型した成型物を乾留して得られるフェロコークスを高炉に用いる技術も知られている。
【0003】
成型コークスを製造する場合には、竪型炉を用いて成型炭(成型物)の乾留を行う。フェロコークスを製造する場合でも、成型コークスの場合と同様に、竪型炉を用いて成型物の乾留を行う。成型物を乾留する場合、製造手順や生産性の観点から、室炉式コークス炉ではなく竪型炉を用いている。この竪型炉として、例えば、特許文献1や特許文献2には、シャモット煉瓦で構成される竪型シャフト炉(竪型炉に相当)を用いて、石炭を冷間で所定の大きさに成型後、竪型シャフト炉に装入し、循環熱媒ガスを用いて加熱することにより成型炭を乾留し、成型コークスを製造することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−57970号公報
【特許文献2】特開2011−226766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
成型コークスやフェロコークスなどの、竪型炉で成形物を乾留して得られる乾留生成物の品質、特に、乾留生成物の乾留率や強度を向上させるために、全ての成型物を少なくとも660℃以上の温度に到達させた上で,850℃以下で乾留を行うことが望ましい。550〜650℃で乾留すると、そうでない場合に比べ、乾留生成物内部の熱応力が高まり、乾留生成物が割れてしまうおそれがある。一方、850℃を超えると、乾留の過剰進行が発生し、乾留生成物が脆弱化する。
【0006】
しかしながら、従来の羽口部構造を有する竪型シャフト炉では、熱媒ガスの温度を850℃を超えない温度に高めずに、成型物が上記660℃に到達するように雰囲気温度を上昇させることが容易ではない。竪型炉の操業において、炉壁に設けられた羽口から高温の熱媒ガスを吹き込み、竪型炉内に乾留ゾーンを形成するとともに、炉頂部から成型物を装入し、竪型炉内に成型物を充填する。成型物は竪型炉内を降下するとともに、前記乾留ゾーンにて成型物の乾留が行われ、竪型炉の下部から乾留生成物たる成型コークスやフェロコークスが排出される。竪型炉の構造上、羽口の近傍において、熱媒ガスから雰囲気への伝熱量が最大となり雰囲気温度が最も高くなるが、羽口から遠くなるにつれて、伝熱量も小さくなってしまい雰囲気温度は低くなり、乾留ゾーンの水平断面において温度分布が生じる。成型物は乾留ゾーンを降下し、水平方向には移動せず、竪型炉の水平断面における成型物の位置で、乾留時の雰囲気温度が決まり、乾留中の成型物の温度も決まる。羽口の近傍の位置を通過する成型物は、竪型炉を通過している間の温度変動のうち、乾留ゾーンを通過する際の温度が高くなる傾向があり、水平断面において羽口から遠い位置を通過する成型物の場合は、前記温度変動のうち、乾留ゾーンを通過する際の温度が低くなる傾向がある。
【0007】
乾留中に成型物が660℃以上の温度に到達すれば、そうでない場合よりも、乾留生成物の乾留率を高めつつ乾留生成物の強度を向上させることが可能であり、乾留中の成型物の温度を上昇させるべく、水平断面において羽口から遠い部分の温度を上げるために、羽口から吹き込む熱媒ガスの温度を上昇させることが考えられる。しかしながら、過度に温度を上げてしまうと、熱媒ガスの加熱に操業コストが掛かってしまう上に,乾留生成物の乾留が過剰に進行してしまう。通常、過剰乾留を防ぐ理由から、乾留ゾーンの高温部を形成するための熱媒ガスの温度は、最高で850℃程度とし、その温度の熱媒ガスを羽口に吹き込んでも、従来の竪型炉の羽口部の構造では、羽口から最も遠い部分の雰囲気温度を常に高くして、成型物を660℃以上の温度に到達させることは容易ではない。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、竪型炉に吹き込む熱媒ガスの温度を過度に高めずに、竪型炉内で、水平断面において羽口から遠い部分の温度を向上させて、乾留中に、成型物を660℃以上の温度に容易に到達させることを可能とする竪型炉の羽口部構造、及び、該羽口部構造を有する竪型炉を用いて乾留生成物を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明の要旨は以下の通りである。
(1)竪型炉の羽口部構造であって、前記竪型炉の炉壁を貫通する羽口と、羽口部から前記竪型炉の内周面に沿って水平方向に延在するように、前記竪型炉の内壁に取り付けられる熱伝導材と、を有し、前記熱伝導材は、850[℃]で20[W/(m・K)]以上の熱伝導率を有することを特徴とする竪型炉の羽口部構造。
(2)上記(1)に記載の竪型炉の羽口部構造を有する竪型炉。
(3)上記(2)に記載の竪型炉を用いて乾留生成物を製造する方法であって、竪型炉に成型物を充填し、最も高い温度の熱媒ガスが吹き込まれる羽口での水平断面における成型物の温度が660〜850[℃]となるように、前記熱媒ガスを前記竪型炉内に吹き込んで、乾留ゾーンを形成し、該乾留ゾーンで前記成型物を乾留することを特徴とする乾留生成物の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、竪型炉内で、羽口の熱を羽口から離れた炉壁及び炉内雰囲気に伝導する熱伝導材が、羽口部から竪型炉の内周面に沿って水平方向に延在するように内壁に取り付けられているので、過度に温度を高めた熱媒ガスを羽口に吹き込まない状態であっても、羽口の熱を水平方向において羽口から遠い部分に効果的に伝えることで、該部分の温度を向上させて、乾留中の全ての成型物が660℃以上の温度に容易に到達させることができる。これにより、乾留生成物の乾留率及び還元率を向上させる。また、羽口部の水平断面における温度につき、最低温度を上昇させることが可能となり、羽口部の水平断面における温度分布の最高温度と最低温度と差を小さくすることもできる。これにより、乾留中の成型物の温度の最高温度と最低温度との差が小さくなるので、乾留生成物の乾留率及び強度のばらつきも抑え得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】
図1に示すII−II線に沿った水平断面図である。
【
図3】羽口を含む竪型炉の内部の一部を示す概略斜視図
【
図4】
図1に示すIV−IV線に沿った水平断面における成型物の温度分布を示すコンター図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
添付図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
図1は、竪型炉を示す概略斜視図である。竪型炉1には炉頂部に装入口11が設けられ、底面部に排出口(図示せず)が設けられている。本実施形態では、装入口11から成型物2を竪型炉1に装入して竪型炉1内に充填するとともに、竪型炉1には高温の熱媒ガスが吹き込まれ、高温の乾留ゾーン3が形成され、該乾留ゾーン3で成型物2を乾留して、乾留生成物13を生成する。乾留後、高温となった乾留生成物13を冷却して排出口から排出する。成型物2としては、鉄源の有無に拘らず成型された石炭がある。なお、竪型炉1内での成型物2の充填層の上面を充填層最高レベル22と呼ぶ。
【0013】
竪型炉1は、鉛直下方向Aに延長し、内部が空洞の直方体形状をしており、相対する2つの炉壁(側壁)1aに、炉内ガス排出口21、高温ガス吹き込み羽口23、冷却ガス吹き込み羽口24が、炉頂部からこの順番で設けられている。炉内ガス排出口21及び各羽口23及び24には、それぞれに配管25が接続し、炉内ガス排出口21から竪型炉1外へ炉内ガスを排出し、高温ガス吹き込み羽口23と冷却ガス吹き込み羽口24とから、竪型炉1内に熱媒ガスを供給する。炉内ガス排出口21は、相対する炉壁にある必要はなく
炉の上部にあってもよいし、装入口11と同一でもよい。また、熱媒ガスとしては、一般的には、炉内ガス排出口21から得られる炉内ガスの一部を用いるが、成型物2の乾留に用いるN
2などの不活性ガスを用いることもできる。炉内ガスは、成型炭を乾留する際に発生するメタンなどを含有するコークス炉ガスである。図示は省略しているが、配管25は、加熱装置、冷却装置、集塵機やデカンターなどの分離装置、に繋がっており、炉内ガス排出口21からの炉内ガスから、タールや、燃料ガス成分の余剰分を回収し、残部を熱媒ガスとして用い、該熱媒ガスを適宜加熱冷却して、各羽口23,24に供給する。
【0014】
竪型炉1内における、充填層最高レベル22から高温ガス吹き込み羽口23までの間を高温乾留ゾーン3、高温ガス吹き込み羽口23から冷却ガス吹き込み羽口24までの間を冷却ゾーン4とし、高温乾留ゾーン3、冷却ゾーン4の各ゾーンに応じた温度の熱媒ガスを竪型炉1内に供給する。高温ガス吹き込み羽口23に供給する熱媒ガスの温度は、700〜850℃とし、冷却ガス吹き込み羽口24に供給する熱媒ガスの温度は、10〜50℃とする。これら温度により、各ゾーンに応じた機能を果たしている。特に、高温ガス吹き込み羽口23に供給する熱媒ガスの温度によって、乾留ゾーン3を通過する成型物2が到達する最高温度が決まる。
【0015】
図2は、
図1に示すII−II線に沿った水平断面図であり、該水平断面は正方形状となっている。竪型炉1は内部が高温となるため、炉壁1aの内面には耐火物34が取り付けられている。耐火物34で囲まれる内部は空洞となっており、
図2では、説明のため成型物の図示を省略してあるが、実際は、この内部に成型物2が充填される。なお、炉壁1aとしては、鉄皮を採用することができる。耐火物34としては、珪石レンガ、シャモットレンガや、キャスタブルなどを採用することができるが、成型物2が、フェロコークスの原料のように、鉄鉱石を含む場合には、鉄鉱石が珪石レンガの主成分であるシリカと反応してしまうおそれがあるため、珪石レンガではなく、シャモットレンガを採用する。
【0016】
充填された成型物2は、水平方向B及び水平方向Cに移動し難い一方で、成型物2は竪型炉1内を重力に従って鉛直下方向Aに移動(降下)していき、最も高温となる高温ガス吹き込み羽口23の近傍を含む高温乾留ゾーン3に入る。本実施形態においては、竪型炉1の水平断面は
図2に示すように正方形状となっているが、水平方向Bに竪型炉1を伸長させて、この水平断面を長方形状とすることもできる。これにより、内部に充填する成型物2を増量させることができるので、竪型炉1による乾留生成物13の生産性を向上させることができる。その場合、相対する2つの側面の伸長分に応じて、少なくとも羽口23,24を増設する必要がある。
【0017】
温度が最も高くなる高温ガス吹き込み羽口23を羽口32とし、この羽口32の羽口部構造について説明する。
図3は、羽口を含む竪型炉の内部の一部を示す概略斜視図であり、
図4は、
図1に示すIV−IV線に沿った水平断面における成型物の温度分布を示すコンター図である。
図4でも説明のために、充填された成型物2の図示を省略している。
図3に示すように、羽口部構造31は、炉壁1aを貫通する羽口32と、該羽口32の周りでは、耐火物34に代えて、竪型炉1の内壁に取り付けられる熱伝導材33と、を有する。前述の通り、最高で850℃の熱媒ガスが羽口32には吹き込まれる。
図4に示すように羽口32から放射状に熱が伝わり、羽口32の周りの内壁部分は、時間があまり経過しなくとも羽口32とほぼ程度の温度となる。この羽口32とほぼ同程度となるように昇温する内壁部分を羽口部32aとする。例えば、羽口32の温度が熱媒ガスと同じであるとすると、その温度から10℃低い温度に昇温する内壁の部分を羽口部32aとすればよい。
図3では、羽口32から熱伝導材33上の円形状の部分を羽口部32aと示してあるが、これに限らず、羽口32から熱媒ガスの熱が伝わり、羽口部32aとされる内壁部分に耐火物34があってもよく、その場合には、羽口部構造31は、耐火物34を有することになる。
【0018】
図4に示すように、水平断面において、羽口32から放射状に成型物の高温領域41が、羽口32の近傍に形成される一方で、その高温領域41から離れるに従い成型物の温度は低下し、羽口32から最も遠い部分には、成型物の低温領域42が形成される。このように、羽口部32aの水平断面において温度分布が生じてしまう。本発明者は、羽口32から、成型物の温度が低くなってしまう領域に羽口32の熱を効率的に伝える構成を鋭意検討し、本発明の完成に至った。竪型炉1の羽口32の水平断面では、850℃で20[W/(m・K)]以上となる高い熱伝導率を有する熱伝導材33が、羽口部32aから炉内周面に沿って水平方向B及び水平方向Cに延在するように内壁に取り付けられており、高温領域41から離れた領域に面している。熱伝導材33は、水平方向B及び水平方向Cに沿って連続(内壁を一周)し、相対する羽口32の左右両端を繋げている。この構成により、高温領域41から最も離れた低温領域42の成型物にまで羽口32の熱を伝えることができる。
【0019】
熱伝導材33は、850℃程度の雰囲気においても、前述の熱伝導率となるように熱伝導機能を発揮し得る耐熱性を有し、かつ、成型物及び/または熱媒ガスに反応することがなく、成型物の接触による摩耗に強い材料から構成される。熱伝導材33の材料としては、例えば、SUSがある。熱伝導材33が、850℃で20[W/(m・K)]以上となる高い熱伝導率を有すれば、850℃程度の熱媒ガスを供給した場合に、竪型炉1の寸法によっても変わるが、実際に操業する竪型炉の寸法を有すれば、低温領域42を含む、高温領域41以外の他の領域は全て昇温して、該他の領域での成型物は660℃以上に到達する。これにより、乾留生成物13を十分に乾留させ強度を保つことが可能となる。
【0020】
図3に示す形態では、羽口32の周りでは、耐火物34の代わりに熱伝導材33を設けて、炉壁1aと熱伝導材33との2層構造としてあるが、羽口32の周りに耐火物34を取り付け、該耐火物34の上に熱伝導材33を重ねて、炉壁1aと耐火物34と熱伝導材33との3層構造としてもよい。熱伝導材33が、羽口32近傍の内壁となっていれば、熱伝導材33によって、熱媒ガスの熱を、羽口32から離れた領域に熱を伝えることができる。また、
図3に示す形態では、熱伝導材33は、水平方向B及び水平方向Cに沿って内壁を一周しているが、羽口32から離れた低温領域に面していれば、一部が欠けていてもよい。
【0021】
以上の羽口部構造を有する竪型炉の羽口では、該羽口の熱を水平方向において羽口から遠い部分に伝え、該部分の温度を向上させることができる。よって、850℃程度の熱媒ガスを供給した場合であっても、乾留中の全ての成型物が660℃以上の温度に容易に到達させることができる。これにより、乾留生成物の乾留率及び還元率を向上させる。また、羽口部の水平方向における温度につき、最低温度を上昇させることが可能となり、羽口部の水平断面における温度分布の最高温度と最低温度と差を小さくすることもできる。これにより、乾留中の成型物の温度の最高温度と最低温度との差が小さくなるので、乾留生成物の乾留率及び還元率のばらつきも抑え得る。
【実施例】
【0022】
図1に示す竪型炉1の操業を模擬したシミュレーションを実施し、本発明の効果を確認した。竪型炉1の実際の操業では、成型物2の温度や羽口23の水平断面における温度分布を適時測定することは現実的に難しいので、操業を模擬したシミュレーションを実施例とする。該シミュレーションでは、
図3に示す羽口部構造を、高温ガス吹き込み羽口23に適用することにした。
【0023】
シミュレーションでは、竪型炉1にて、装入口11から成型物2を装入し、乾留ゾーン3で成型物2を乾留し、乾留生成物13を生成し、冷却ゾーン4で冷却して、排出口から乾留生成物13を排出する構成とした。
図2に示す、竪型炉1における、成型物2が通過する内部の、水平方向B及び水平方向Cにおける長さをそれぞれ1mとし、
図1に示す高さを10mと設定した。
【0024】
また、シミュレーションでは、成型物2は、フェロコークスの原料とし、フェロコークスとなる乾留生成物13を製造した。熱伝導材33をSUS304からなるものとした。この熱伝導材33は、850℃で、30[W/(m・K)]とした。耐火物34は熱伝導率が0.33[W/(m・K)]であるシャモット煉瓦とした。また、高温ガス吹き込み羽口23から1500[Nm
3/時]で850℃の熱媒ガスを吹き込み、冷却ガス吹き込み羽口24から1000[Nm
3/時]で、50℃の熱媒ガスを吹き込むこととした。装入口11から、780kg/時で、成型物を竪型炉1内に装入することとした。
【0025】
以上のシミュレーションを本発明例とし、本発明例と比較するために、羽口部構造を従来のものとした以外は本発明例と同様の条件のシミュレーションを行った(比較例)。すなわち、比較例のシミュレーションでは、羽口23の周りには熱伝導材33を設けず、耐火物34を設けてある。
【0026】
本発明例及び比較例において、
図4のようなコンター図を作成し、高温ガス吹き込み羽口23における水平断面における成型物の温度分布を得た。本発明例及び比較例における、高温領域と低温領域との温度を、表1に示す。
【0027】
【表1】
【0028】
[本発明例と比較例との評価]
比較例では低温領域の温度が650℃台である(660℃より低い)のに、本発明例では、熱伝導材33によって低温領域の温度が660℃以上となっており、本発明によって、850℃の熱媒ガスを供給した場合であっても、羽口の熱を水平方向において羽口から遠い部分に伝え、該部分の温度を向上させて、乾留中の全ての成型物が660℃以上の温度に容易に到達させることができることが確認した。乾留生成物の乾留率と還元率を向上し得ることが期待できるし、乾留中の成型物の温度の最高温度と最低温度との差が小さくなるので、乾留生成物の乾留率及び還元率のばらつきも抑えることが期待される。
【符号の説明】
【0029】
1 竪型炉
1a 炉壁(側壁)
2 成型物
3 乾留ゾーン
3a 低温乾留ゾーン
3b 高温乾留ゾーン
4 冷却ゾーン
11 装入口
13 乾留生成物
21 炉内ガス排出口
22 充填層最高レベル
23 高温ガス吹き込み羽口
24 冷却ガス吹き込み羽口
25 配管
31 羽口部構造
32 羽口
32a 羽口部
33 熱伝導材
34 耐火物
41 (成型物の)高温領域
42 (成型物の)低温領域