(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記捕捉手段は、複数の捕捉処理部を備え、当該複数の捕捉処理部により並列に複数の測位衛星からの信号を探索し、捕捉された信号を捕捉対象から外すとともに、残りの捕捉対象の信号数に応じて当該捕捉対象の信号の探索に用いる前記捕捉処理部の数を調節することを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の電波時計。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態の電子時計1の機能構成を示すブロック図である。
この電子時計1は、測位衛星からの電波を受信して利用可能な電波時計である。
【0013】
第1実施形態の電子時計1は、CPU41(Central Processing Unit)と、ROM42(Read Only Memory)と、RAM43(Random Access Memory)と、発振回路44と、分周回路45と、計時回路46と、操作部47と、標準電波受信部48及びそのアンテナ49と、GPS受信処理部50及びそのアンテナ51と、駆動回路52と、電源部53と、秒針61と、分針62と、時針63と、日車64と、機能指針65と、輪列機構71〜74と、ステッピングモータ81〜84などを備える。以降、秒針61、分針62、時針63、日車64及び機能指針65の一部又は全部をまとめて指針61〜65などとも記す。
【0014】
CPU41は、各種演算処理を行い、また、電子時計1の全体動作を統括制御する。CPU41は、日時の表示に係る指針動作を制御すると共に、標準電波受信部48を動作させて受信データを取得して日時を算出する。また、CPU41は、得られた日時データに基づいて、計時回路46の計数する日時を修正する。
【0015】
ROM42は、CPU41により実行される各種制御用のプログラム421や設定データを格納する。プログラム421には、例えば、各種機能モードの動作制御に係るプログラムが含まれている。
【0016】
RAM43は、CPU41に作業用のメモリ空間を提供し、一時データを記憶する。
【0017】
発振回路44は、所定の周波数信号を生成して出力する。発振回路44は、例えば、水晶発振器を備える。
分周回路45は、発振回路44から出力された周波数信号をCPU41や計時回路46により利用される周波数の信号に分周して出力する。出力される周波数は、CPU41からの制御信号により変更可能に設定されていても良い。
【0018】
計時回路46は、所定の日時を示す初期値に分周回路45から入力される分周信号を計数して加算していくことにより現在の日時を計数する。この計時回路46の計数する日時は、CPU41からの制御信号により修正されることが可能となっている。
【0019】
操作部47は、ユーザからの入力操作を受け付ける。操作部47には、押しボタンスイッチや回転スイッチが含まれる。押しボタンスイッチの何れかが押下若しくは押下状態が解放され、又は回転スイッチが引き出され、回転され、若しくは押し戻された場合には、それぞれの動作を示す電気信号が割込信号としてCPU41に出力される。
【0020】
標準電波受信部48は、アンテナ49を用いて長波長帯の電波(標準電波)を受信して、振幅変調された標準電波の時刻信号出力(TCO)を復調し、CPU41に出力する。標準電波受信部48による長波長帯の同調周波数は、CPU41の制御により受信対象の標準電波送信局からの送信周波数に応じて変更される。また、標準電波受信部48は、受信感度を向上させるための各種処理を行い、アナログ信号を所定のサンプリング周波数でデジタル化してCPU41に出力する。
【0021】
GPS受信処理部50は、アンテナ51を用いて測位衛星から送信されているL1帯(1.57542GHz)の電波を受信し、当該測位衛星からの信号(航法メッセージ)を復調、復号して日時情報や位置情報を取得する。取得された情報は、例えば、NMEA−0182(National Marine Electronics Associations)の規格などに基づいて設定されたフォーマットでCPU41に出力される。GPS受信処理部50は、当該取得対象の情報や出力のフォーマットに係る設定などをCPU41から受信して記憶する。また、GPS受信処理部50は、測位衛星から取得された当該測位衛星の予測軌道情報を記憶し、受信の際に必要に応じて読み出して利用することが出来る。また、GPS受信処理部50には、指定された位置に応じたタイムゾーンや夏時間情報を取得するためのタイムゾーン対応テーブル502dが記憶されている。
【0022】
駆動回路52は、CPU41から制御信号が入力されて、当該制御信号に応じたステッピングモータ81〜84に適切なタイミングで駆動信号を出力して当該ステッピングモータ81〜84を回転駆動する。駆動回路52では、CPU41から入力される設定に基づいて駆動信号のパルス幅や駆動電圧を適宜調整可能となっている。また、一度に大きな負荷をかけないために複数のステッピングモータが同時に駆動される制御信号が入力された場合、駆動回路52は、これらの駆動タイミングを互いに重ならない微小間隔でずらして順番にこれらのステッピングモータを回転駆動させることが出来る。
【0023】
電源部53は、各部の動作に係る電力を所定電圧で供給する。電源部53は、バッテリを備え、このバッテリとしては、例えば、交換可能なボタン型の乾電池が用いられる。或いは、バッテリとして、ソーラパネルと二次電池とが用いられても良い。また、電源部53から複数の異なる電圧が出力される場合には、例えば、スイッチング電源などを用いて所望の電圧に変換して出力可能な構成とすることが出来る。
【0024】
ステッピングモータ81は、複数の歯車の配列である輪列機構71を介して秒針61を回転動作させる。ステッピングモータ81が一回駆動されると、秒針61は、1ステップで6度回転し、ステッピングモータ81の60回の動作により文字盤上で一周する。
ステッピングモータ82は、輪列機構72を介して分針62及び時針63を回転動作させる。輪列機構72は、時針63を分針62に連動して回転させる構成であり、分針62を1度ずつ回転移動させると共に時針63を1/12度ずつ回転移動させる。
【0025】
ステッピングモータ83は、輪列機構73を介して日車64を回転動作させる。日車64は、特には限られないが、電子時計1の指針表示用文字盤下方(裏側)に指針表示用文字盤に平行に回転自在に設けられている。文字盤には開口部が設けられている一方、日車64の当該開口部と対向する円周上に1〜31日の各日を示す標識が設けられて、日車64の回転動作に伴って何れか一つの標識が開口部から露出される。ステッピングモータ83が一回駆動されると、日車64は、1ステップ分の角度回転移動し、150ステップの回転移動により360/31度の回転が生じて、文字盤の開口部から露出される日付標識が1日分変化する。そして、日車64が31日分回転移動すると、再び最初の日付を示す日付標識が開口部から露出されることになる。
【0026】
ステッピングモータ84は、輪列機構74を介して機能指針65を回転動作させる。機能指針65は、特には制限されないが、例えば、秒針61、分針62、時針63及び日車64とは異なる回転軸の周りを回転し、日時表示以外の内容又はその種別の表示に用いられる。輪列機構74は、例えば、ステッピングモータ84の一回の回転に対して機能指針65を6度回転させる。
【0027】
次に、GPS受信処理部50による測位衛星からの電波受信について説明する。
図2は、GPS受信処理部50の内部構成を示すブロック図である。
【0028】
GPS受信処理部50は、アンテナ51に接続されたRF部501(Radio Frequency)と、RF部501に接続されたベースバンド部502などを備える。
【0029】
RF部501は、アンテナ51で受信された電波から信号を増幅し、また、信号周波数(ベースバンド)に変換する。RF部501は、例えば、LNA(Low Noise Amplifier)と、BPF(Band Pass Filter)と、局部発振器と、ミキサと、IF増幅部(Intermediate Frequency)などを備え、スーパーヘテロダイン方式で中間周波数を挟んでベースバンド信号に変換する。
【0030】
ベースバンド部502は、ベースバンド信号に変換された信号から各測位衛星の信号を探索して捕捉し、当該捕捉された信号を復調、復号して所望の情報を取得する。ベースバンド部502は、捕捉部502a(捕捉手段)と、追尾部502b(衛星データ取得手段)と、制御部502c(情報取得手段、受信制御手段、判別手段)などを備える。捕捉部502aは、ベースバンド信号に対して捕捉対象の測位衛星に対して各々設定された擬似雑音信号(C/Aコード)を順次適用して逆スペクトラム拡散を行い、相関値を算出することで当該C/Aコードに係る測位衛星からの信号を探索して捕捉する。追尾部502bは、捕捉部502aで捕捉された測位衛星のC/Aコードを同定された位相で順次適用して当該測位衛星の航法メッセージを復調、復号し、現在位置(取得対象情報)の取得に必要なデータ、即ち、サブフレーム1〜3に含まれる日時に関する情報(補正情報を含む)や予測軌道情報(エフェメリス)を取得する。
【0031】
制御部502cは、ベースバンド部502の動作を制御する。制御部502cは、CPU(モジュールCPU)と、RAMと、記憶部などを備える。モジュールCPUは、捕捉部502a及び追尾部502bの動作のオンオフや受信対象とする測位衛星の選択制御などの動作を行い、また、CPU41とのデータ送受信に係る設定や制御を行う。また、モジュールCPUは、追尾部502bで取得された日時情報や予測軌道情報を用いて現在位置を算出(取得)する。RAMは、モジュールCPUに作業用のメモリ空間を提供する揮発性メモリである。記憶部には、測位衛星から取得された予測軌道データ(エフェメリスやアルマナック)、過去の受信履歴及び受信対象情報に係る設定が記憶され、必要に応じて読み出されて利用される。捕捉部502aは、複数のチャンネルch1〜chnのサーチエンジン(捕捉処理部、nは、例えば、16)で並列に信号の探索を行わせることが出来る。また、追尾部502bは、複数のチャンネルch1〜chm(mは、例えば、8)で並列に信号の復調、復号に係る動作を行わせることが出来る。32衛星の信号を並列で探索する場合には、16衛星ずつ交互に探索が行われれば良い。
【0032】
制御部502cは、捕捉部502a及び追尾部502bの動作を各々独立にオンオフさせることが出来る。また、制御部502cは、捕捉部502aで捕捉させる対象の信号に係る測位衛星を設定することが出来る。例えば、制御部502cは、捕捉部502aで既に捕捉され、追尾部502bで追尾中の測位衛星を捕捉対象から除外することが出来る。また、制御部502cは、GPSとGLONASSに係る測位衛星を併用するか、或いは、一方の測位システムに係る測位衛星のみを利用するかの設定に基づいて、捕捉対象の測位衛星を両システム、更には、Galileoに広げたり、何れかに絞ったりする設定を行うことが出来る。
【0033】
また、制御部502cは、測位時に予測軌道情報を保持している場合や、受信中に予測軌道情報が取得された場合には、当該予測軌道情報に基づいて、例えば、既に捕捉されている信号と地表面で同時には受信し得ない信号に係る測位衛星に関し、適宜捕捉対象から外すことも可能である。更に、予め概略位置情報が保持されている場合には、当該位置情報と現在日時とに応じて受信不可能な位置にある測位衛星からの信号を捕捉対象から除外しても良い。
【0034】
次に、電子時計1における測位動作について説明する。
測位衛星からの信号は、各測位衛星に固有のC/Aコードでスペクトラム拡散されて電波送信されている。従って、捕捉部502aにおいて各C/Aコードについて相関値を算出し、相関値の高いC/Aコードとその位相を同定することで当該C/Aコードに係る測位衛星からの信号を捕捉する。捕捉された信号は、当該捕捉に用いられたC/Aコード及びその位相で追尾部502bにおいて復調及び復号に係る処理が継続される。
【0035】
GPSに係る測位衛星(GPS衛星)からの信号を受信する場合、復調される信号は、6秒単位のサブフレーム5つで構成される30秒間のフレームデータが25回(ページ)繰り返されてなる。このうち、任意のページにおける1番目のサブフレームデータ(サブフレーム1)から3番目のサブフレームデータ(サブフレーム3)までが取得されることで、測位に必要な日時情報及び衛星軌道情報に係るデータが取得される。三次元測位には、4衛星分の衛星軌道情報(衛星位置)及び日時情報(タイミング)が必要であるが、高さ方向の情報が必要ない場合には、地表面上での測位を仮定することで、3衛星(所得対象情報の取得に必要な数)分の衛星軌道情報及び日時情報でも測位が可能である。
【0036】
しかしながら、測位に用いられる測位衛星の配置(配位)によっては(例えば、測位に用いられる測位衛星が一の直線上にある場合など)、3次元空間内又は地表面上における2次元面内で精度良く位置が特定されない場合があり得る。このような配位に応じて測位精度を表すパラメータとして、DOP(Dilution of Precision、4衛星以上の場合にはP(Position)DOP、3衛星による2次元測位の場合にはH(Horizontal)DOP)が算出される。許容される精度は、製品や用途によって適宜定められる。
【0037】
本実施形態の電子時計1では、GPS受信処理部50において、最低で3機の測位衛星からサブフレーム1〜3のデータを取得して測位を行い、当該測位に係るDOPの値が所定の条件を満たす(所定の基準値以下)ことで、当該測位結果を正しい結果であると判定する。
【0038】
図3は、本実施形態の電子時計1のGPS受信処理部50により実行される地方時取得処理の制御部502cによる制御手順を示すフローチャートである。
【0039】
この地方時取得処理は、例えば、ユーザによる操作部47への所定の入力操作の検出に応じて開始される。又は、所定の動作条件が満たされた場合に自動で開始されても良い。
【0040】
地方時取得処理が開始されると、制御部502c(モジュールCPU)は、RF部501及び捕捉部502aの動作を開始させて、L1帯の電波の受信と測位衛星からの信号の捕捉に係る動作を開始させる(ステップS101)。このとき、制御部502cは、捕捉開始後の経過時間(捕捉経過時間)の計数を開始する。
【0041】
制御部502cは、捕捉経過時間が設定された捕捉タイムアウト時間(上限時間)を超えたか否かを判別する(ステップS102)。捕捉タイムアウト時間を超えていないと判別された場合には(ステップS102で“NO”)、制御部502cは、新たに測位衛星からの信号が捕捉されたか否かを判別する(ステップS103)。捕捉されたと判別された場合には(ステップS103で“YES”)、制御部502cは、当該捕捉された測位衛星に係る航法メッセージの復調、復号動作を追尾部502bに開始させ、また、同信号の捕捉を捕捉部502aに終了させる(ステップS104)。
【0042】
制御部502cは、捕捉された信号の数(捕捉数)が予め定められた設定数(所定数)以上であるか否かを判別する(ステップS106)。この設定数は、測位に必要な最低衛星数(3機)以上であって、捕捉後に航法メッセージの取得に失敗する場合や、配位の好ましくない測位衛星の信号が先に捕捉される可能性などを考慮した値であり、通常、4〜8機、例えば、5機に設定される。設定数以上捕捉されていると判別された場合には(ステップS106で“YES”)、制御部502cは、捕捉部502aによる捕捉動作を終了させ、捕捉部502aを停止させる(ステップS121)。このとき、制御部502cは、捕捉を終了させたタイミングからの追尾経過時間の計数を開始する。設定数以上の信号が捕捉されていないと判別された場合には(ステップS106で“NO”)、制御部502cの処理は、ステップS112に移行する。
【0043】
制御部502cは、追尾経過時間が設定された追尾タイムアウト時間を超えたか否かを判別する(ステップS122)。追尾タイムアウト時間を超えたと判別された場合には(ステップS122で“YES”)、制御部502cの処理は、処理をステップS133に移行させて受信動作を終了し、地方時取得処理を終了する。追尾タイムアウト時間を超えていないと判別された場合には(ステップS122で“NO”)、制御部502cは、追尾部502bにおいて、捕捉された測位衛星のうち3機以上の測位衛星以上から航法メッセージ中のサブフレーム1〜3のデータが取得されたか否かを判別する(ステップS123)。
【0044】
3機以上の測位衛星からサブフレーム1〜3のデータが取得されていないと判別された場合には(ステップS123で“NO”)、制御部502cの処理は、ステップS122に戻る。取得されたと判別された場合には(ステップS123で“YES”)、次に、制御部502cは、取得された測位結果が所定の精度条件を満たすか否かを判別する(ステップS127)。制御部502cは、DOPの値が所定の基準値以下であるか否かを判別し、基準値以下である、即ち、測位結果が所定の精度以上である(所定の基準を満たしている)と判別された場合には(ステップS127で“YES”)、制御部502cは、追尾部502bによる追尾動作を終了させて追尾部502bを停止させる(ステップS128)。制御部502cは、タイムゾーン対応テーブル502dを参照し、取得された位置情報に基づいてタイムゾーンを同定する(ステップS129)。このとき、制御部502cは、正しい日時及びタイムゾーン情報を適切なタイミングでCPU41に出力して、計時回路46の日時及び表示させる地方時を修正させることが出来る。そして、制御部502cは、地方時取得処理を終了する。
【0045】
ステップS127の判別処理で、測位結果が精度条件を満たさないと判別された場合には(ステップS127で“NO”)、制御部502cは、捕捉された全ての測位衛星からサブフレーム1〜3のデータが取得されているか否かを判別する(ステップS131)。取得されていない、即ち、捕捉されている測位衛星のうち、サブフレーム1〜3のデータが取得されていないものがあると判別された場合には(ステップS131で“NO”)、制御部502cの処理は、ステップS122に移行する。捕捉された全ての測位衛星からサブフレーム1〜3のデータが取得されていると判別された場合には(ステップS131で“YES”)、制御部502cは、全ての測位衛星に係る受信処理を終了し(ステップS133)、地方時取得処理を終了する。
【0046】
ステップS103の処理で、捕捉部502aによる捕捉動作中に新たな信号が捕捉されていないと判別された場合には(ステップS103で“NO”)、制御部502cは、現在捕捉されている測位衛星の数(捕捉数)が「0」であるか否かを判別する(ステップS111)。捕捉数が「0」であると判別された場合には(ステップS111で“YES”)、制御部502cの処理は、ステップS102に移行する。捕捉数が「0」ではないと判別された場合には(ステップS111で“NO”)、制御部502cの処理は、ステップS112に移行する。
【0047】
ステップS111又はステップS106の処理からステップS112の処理に移行すると、制御部502cは、これまでに捕捉されている測位衛星のうち3機以上の測位衛星によりサブフレーム1〜3のデータが取得されたか否かを判別する(ステップS112)。取得されていない、即ち、捕捉数が3衛星未満又はサブフレーム1〜3のデータが未だ取得されていないと判別された場合には(ステップS112で“NO”)、制御部502cの処理は、ステップS102に移行する。
【0048】
ステップS112の判別処理で、3機以上の測位衛星によりサブフレーム1〜3のデータが取得されたと判別された場合には(ステップS112で“YES”)、制御部502cの処理は、ステップS127に移行する。このとき制御部502cは、捕捉部502aによる捕捉動作を終了させる。
【0049】
ステップS102の判別処理で、捕捉数が設定数以上とならないまま捕捉経過時間が捕捉タイムアウト時間を超えたと判別された場合には(ステップS102で“YES”)、制御部502cは、3機以上の測位衛星が捕捉されているか否かを判別する(ステップS109)。3機以上捕捉されていると判別された場合には(ステップS109で“YES”)、制御部502cの処理は、ステップS121に移行する。3機以上捕捉されていない(2機以下である)と判別された場合には(ステップS109で“NO”)、制御部502cの処理は、ステップS133に移行して、受信(捕捉及び追尾)を終了し、地方時取得処理を終了する。
【0050】
[変形例1]
次に、本実施形態の電子時計1における地方時取得処理の変形例1について説明する。
図4は、変形例1の地方時取得処理の制御部502cによる制御手順を示すフローチャートである。
【0051】
この地方時取得処理は、上記実施形態の地方時取得処理におけるステップS123の処理がステップS123a、S123bに分割され、また、ステップS112の処理がステップS112a、S112bに分割され、更に、ステップS124〜S126、S113、S114の処理が追加されたものである。これら以外の処理については同一であり、同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
【0052】
ステップS111の判別処理で、測位衛星の捕捉数が「0」ではないと判別された場合に(ステップS111で“NO”)、制御部502cは、捕捉されている測位衛星のそれぞれによりサブフレーム1〜3のデータが取得されたタイミングか否かを判別する(ステップS112a)。即ち、ここでは、制御部502cは、各測位衛星において航法メッセージ中の位置が同定された後(または、前回このステップS112aの処理で“YES”に分岐した後)に、サブフレーム1〜3の受信期間が全て経過したか否かを判別する。この受信期間の順番は、サブフレーム1、2、3の順に限られず、例えば、サブフレーム3が受信された後に、次のフレームにおけるサブフレーム1、2が受信されても良い。即ち、信号の捕捉タイミング(データの取得開始タイミング)に応じて、1フレーム分(1周期分)のデータは、サブフレーム1から開始されなくても良い。
【0053】
捕捉されている何れの衛星においてもサブフレーム1〜3のデータが取得されたタイミングではないと判別された場合には(ステップS112aで“NO”)、制御部502cの処理は、ステップS102に戻る。何れかの衛星においてサブフレーム1〜3のデータ受信期間が全て経過したタイミングであると判別された場合には(ステップS112aで“YES”)、制御部502cは、当該タイミングである測位衛星のうち、サブフレーム1〜3のデータの取得に失敗した測位衛星について、当該測位衛星の受信回数(失敗履歴)に「1」を加算(初期値は「0」である)する(ステップS113)。また、制御部502cは、この受信回数が所定回数(所定の上限回数)、例えば、2回以上となった(受信状態が基準レベル以下となった)測位衛星についての追尾動作を中止させる(ステップS114)。
【0054】
制御部502cは、サブフレーム1〜3のデータ取得が、3機以上の測位衛星に係る信号からなされたか否か(取得対象情報の取得に必要な数以上か否か)を判別する(ステップS112b)。3機以上で取得されたと判別された場合には(ステップS112bで“YES”)、制御部502cの処理は、ステップS127に移行する。3機以上で取得されていない、即ち、測位に必要な数未満であると判別された場合には(ステップS112bで“NO”)、制御部502cの処理は、ステップS102に戻る。
【0055】
また、ステップS122の判別処理で、追尾経過時間が追尾タイムアウト時間を超えたていない判別された場合に(ステップS122で“NO”)、制御部502cは、捕捉されている測位衛星のそれぞれによりサブフレーム1〜3のデータが取得されたタイミングか否かを判別する(ステップS123a)。制御部502cは、各測位衛星からの信号において航法メッセージ中の位置が同定された後に、サブフレーム1〜3の受信期間が全て経過したか否かを判別する。
【0056】
捕捉されている何れの衛星においてもサブフレーム1〜3のデータが取得されたタイミングではないと判別された場合には(ステップS123aで“NO”)、制御部502cの処理は、ステップS122に戻る。何れかの衛星においてサブフレーム1〜3のデータが取得されたタイミングであると判別された場合には(ステップS123aで“YES”)、制御部502cは、当該タイミングである測位衛星のうち、サブフレーム1〜3のデータの取得に失敗した測位衛星について、当該測位衛星の受信回数に「1」を加算(初期値は「0」である)する(ステップS124)。また、制御部502cは、この受信回数が所定回数、例えば、2回以上となった測位衛星についての追尾動作を中止させる(ステップS125)。
なお、以降では、ステップS131の判別処理において、「全捕捉衛星」には、ステップS114、S125の処理で追尾が中止された測位衛星を含まない(初めから捕捉されなかったと見なす)こととする。
【0057】
制御部502cは、現在追尾している測位衛星の数が3未満であるか否かを判別する(ステップS126)。3未満であると判別された場合には(ステップS126で“YES”)、制御部502cの処理は、ステップS133に移行し、受信動作を終了して(ステップS133)、地方時取得処理を終了する。
【0058】
3未満ではない(3機以上である)と判別された場合には(ステップS126で“NO”)、制御部502cは、サブフレーム1〜3のデータ取得が、3機以上の測位衛星でなされたか否かを判別する(ステップS123b)。3機以上で取得されたと判別された場合には(ステップS123bで“YES”)、制御部502cの処理は、ステップS127に移行する。3機以上で取得されていないと判別された場合には(ステップS123bで“NO”)、制御部502cの処理は、ステップS122に戻る。
【0059】
[変形例2]
図5は、地方時取得処理の変形例2の制御部502cによる制御手順を示すフローチャートである。
この地方時取得処理の変形例2では、上記変形例1の地方時取得処理に対し、更に、ステップS106、S115の処理が追加されている。その他の処理内容及び処理手順は、同一であり、同一の処理については同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
【0060】
ステップS104の処理で、新たに捕捉された信号の追尾動作を追尾部502bに開始させると、制御部502cは、捕捉部502aで当該追尾対象の測位衛星に係る信号が捕捉対象から外されることで減少する捕捉対象衛星数に応じて、動作させるサーチエンジン数を調節する(ステップS105)。例えば、16のサーチエンジンを備える捕捉部502aにおいて32機のGPS衛星が捕捉対象の場合に、捕捉部502aでは、16機ずつ交代で当該32機のGPS衛星の信号を探索する処理が行われるが、2機のGPS衛星が捕捉され場合に、制御部502cは、1のサーチエンジンを停止させて15のサーチエンジンにより15機ずつ交代で残り30機のGPS衛星の信号を探索させる設定に変更させることが出来る。それから、制御部502cの処理は、ステップS106に移行する。
【0061】
また、ステップS114の処理で、受信回数が所定回数以上の測位衛星の信号からのデータ取得を中止すると、制御部502cは、当該測位衛星を捕捉部502aによる捕捉対象から外す(ステップS115)。即ち、一度捕捉された測位衛星の信号は、サブフレーム1〜3のデータ取得に失敗して追尾動作が中止された後、再度の探索は行われない。それから、制御部502cの処理は、ステップS112bに移行する。
【0062】
以上のように、第1実施形態の電子時計1は、受信電波に含まれる測位衛星からの信号を探索して捕捉する捕捉部502aと、捕捉された信号を復調、復号して、測位衛星からの送信データのうち測位に必要なサブフレーム1〜3を取得する追尾部502bと、制御部502cと、を備え、制御部502cは、追尾部502bにより取得されたサブフレーム1〜3のデータを用いて現在位置を取得する(情報取得手段)。制御部502cは、サブフレーム1〜3のデータの取得に係る失敗履歴を捕捉された信号ごとに保持し、この失敗履歴に基づいて判断される受信状態が所定の基準レベル以下となった信号からのサブフレーム1〜3のデータの取得を追尾部502bに中止させ、捕捉部502aにおいて所定の条件で信号の探索を終了させた後に上述の中止などによりサブフレーム1〜3データの取得を行う信号の数が測位に必要な3機を下回った場合にはGPS受信処理部50による受信動作を終了させる(受信制御手段)。
即ち、単に追尾部502bによる動作に追尾タイムアウト時間を設けただけでは、捕捉タイミングのばらつきなどによらず、当該追尾タイムアウト時間が経過するまで動作が継続されるのに対して、この電子時計1では、サブフレーム1〜3の受信が難しいか否かが測位衛星ごとに定められるので、当該捕捉タイミングのずれに応じて各測位衛星の信号に対して公平に、追尾タイムアウト時間内でサブフレーム1〜3の取得が十分に見込めるか否か、ひいては、追尾タイムアウト時間内に測位が可能か否かを予め判断することが可能になる。一方で、捕捉が可能な信号については、受信された信号強度やS/N比などにより一律に測位への利用可否に係る制限を設けず、一度サブフレーム1〜3のデータ取得を試みてから上述の取得見込みについて判断するので、例えば、信号強度としては厳しいものであってもバーストノイズの混入タイミングやフェージングによる受信強度の減衰タイミングなどに応じて短時間でサブフレーム1〜3のデータが取得出来た場合などには、その取得データを有効に利用することが出来る。このような判断により、測位が困難な場合には、より迅速に受信動作を終了させ、受信を継続する場合には、より受信成功の可能性を上げることが出来る。
従って、従来よりも効率良く測位衛星からの情報を取得することが出来る。
【0063】
また、制御部502cにおいて、取得された現在位置の精度が所定の条件を満たしていない場合に、この測位に用いられたサブフレーム1〜3のデータに係る信号以外の信号が捕捉されているか否かを判別し、捕捉動作が終了していないか、又は測位に用いられた信号以外の信号が捕捉されていると判別された場合には、追尾部502bによる当該捕捉された信号に係るデータの取得を継続させ、捕捉動作が終了しており、且つ捕捉された全ての信号から取得されたサブフレーム1〜3のデータが測位に用いられたと判別された場合には、GPS受信処理部50による測位衛星からの電波受信動作を中止させる。
即ち、他の信号よりも遅れて捕捉された信号や、ノイズなどにより一時的に他の信号と略同時にサブフレーム1〜3のデータ取得出来なかった信号がある場合には、当該信号に係る測位衛星が加わることで測位衛星の配位が変化して位置情報の精度の改善が見込める一方で、捕捉されている信号から得られたサブフレーム1〜3のデータを全て用いても必要な精度が得られない場合には、捕捉されている信号に係る測位衛星の移動に伴う配位の変化を短時間で望むことは出来ない。また、一回のみの測位動作では、動作中の移動に伴う受信失敗の可能性の方が高いことから、通常、動作中の移動が奨励されていないことにより、受信地点の移動により短時間で新たな測位衛星からの信号が捕捉される可能性も低いので、測位動作を繰り返しても精度が向上することを期待しづらい。従って、所望の精度以上で測位がなされる可能性の低い動作を速やかに終了させることで、無駄に電力と時間を消費する可能性を低減させることが出来る。
【0064】
また、制御部502cは、追尾部502bにおいて、捕捉された信号ごとにサブフレーム1〜3のデータの取得に失敗した回数を計数し、失敗の回数が予め設定された所定回数以上となった信号からサブフレーム1〜3のデータ取得を中止させる。即ち、受信状況が厳しい測位衛星の信号の受信に時間をかけずに速やかに見切りをつけ、サブフレーム1〜3のデータ取得が可能であると見込まれる測位衛星からの信号のみにより測位を行うことが出来る。特に、受信される信号強度の割にノイズやフェージングなどで一時的に受信が困難になりやすい信号を的確に識別して利用又は排除することで、迅速且つ確実に測位を行うことが出来る。
【0065】
また、制御部502cは、サブフレーム1〜3のデータ取得を中止させた信号を捕捉部502aにより再度探索させない。上述のように、短時間では、サブフレーム1〜3の取得が難しい状況に変化は生じないと想定されるので、このような信号の捕捉と追尾を何度も繰り返して無駄な時間や電力が消費されることを防ぐことが出来る。
【0066】
捕捉部502aにより測位に必要な数以上の設定数の信号が捕捉された場合には、信号の探索を終了させ、制御部502cは、当該設定数の信号が捕捉される前に3機以上の測位衛星からのサブフレーム1〜3が取得された場合には、当該サブフレーム1〜3のデータを用いて測位を行わせる。
即ち、従来は、測位に必要な衛星数より多くの十分な数の測位衛星からの信号を捕捉してデータを取得し、確実に高い精度で測位を行わせるように構成されているのに対し、当該十分な数の測位衛星からの信号が捕捉されない場合でも、測位が可能である場合には一度測位を行った上で、精度により当該測位に係る現在位置データが使用可能か判断する。これにより、測位に成功する可能性が有る場合には取りあえず測位を行わせるので、通常、測位に用いられる設定数の測位衛星の捕捉及びサブフレーム1〜3のデータ取得を待たずに必要な精度で現在位置が取得な場合に、速やかに現在位置を取得しつつ受信処理を終了させることが出来る。
【0067】
また、捕捉部502aによる測位衛星からの信号の探索が開始されてから捕捉タイムアウト時間が経過した場合には、探索を終了させ、この探索終了のタイミングまでに測位に必要な3機以上の測位衛星からの信号が捕捉されている場合には、追尾部502bにより、当該捕捉されている信号からサブフレーム1〜3のデータを取得させる。
従って、通常測位を行うときに望ましく用いられる設定数の測位衛星が取得されなくても、測位に必要な最低限である3機分以上の信号が捕捉された場合には、測位を行うことで、位置データの取得成功率を上昇させることが出来る。
【0068】
また、捕捉部502aは、複数チャンネルを備え、当該複数チャンネルにより並列に複数の測位衛星からの信号を探索し、捕捉された信号を捕捉対象から外すとともに、残りの捕捉対象の信号数に応じて当該捕捉対象の信号の探索に用いるチャンネル数を調節する。
従って、探索する信号の数が減っているのに不要に全てのチャンネルをオンして電力を浪費せずに、効率良く信号の捕捉動作を行うことが出来る。
【0069】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態の電子時計について説明する。
図6は、第2実施形態の電子時計1aの機能構成を示すブロック図である。
【0070】
この電子時計1aは、第1実施形態の電子時計1とは計測部54(計測手段)が追加された点のみが異なる。これ以外の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0071】
計測部54は、電子時計1aの姿勢や運動状態などを計測するためのものである。計測部54は、加速度センサ541と、方位センサ542などを備える。
【0072】
加速度センサ541は、電子時計1aの運動状態を計測するための3軸センサであり、例えば、電子時計1aの表示面(指針61〜65の回転面)での2軸方向と、当該表示面に垂直方向の加速度を計測する。加速度センサ541には、例えば、圧電抵抗を用いたセンサが用いられる。
【0073】
方位センサ542は、電子時計1aの姿勢(向き)を計測するためのセンサであり、磁北の方角を計測する。方位センサ542には、例えば、磁気抵抗素子(MR素子)を用いたものが用いられる。
【0074】
ROM42には、電子時計1aの運動状態を判定するための判定プログラムが格納され、CPU41(移動量算出手段)は、当該判定プログラムを実行することで、電子時計1aの運動状態を判定することが出来る。例えば、加速度センサ541により計測される重力加速度により地面に垂直な方向(鉛直方向)が同定されるので、鉛直方向の加速度変化と、水平面内での加速度変化及び方位センサ542により計測される当該水平面内での移動方向などにより、ユーザの運動状態や移動状態が判定される。また、自転車や車両などによる主に水平方向への移動を伴う運動の場合には、当該水平加速度の変化に基づいて水平方向への速度と、移動量(位置の変化量)を算出(概算であっても良い)することが出来る。一方、歩行などによる鉛直方向への周期的な加速度変動及び腕振りによる主に時計の表示面内での周期的な加速度変動を伴う運動の場合には、例えば、当該加速度変動の周期に応じた電子時計1aの装着者の移動歩数を計数し、平均的な歩幅量と、方位センサ542により計測される移動方向とに基づいて移動量を算出することが出来る。歩行状態の判別に係る鉛直方向及び腕振り面内での加速度変化パターンとしては、従来周知のものを利用することが出来る。
【0075】
次に、本実施形態の電子時計1aにおける測位動作について説明する。
本実施形態の電子時計1aでは、測位動作中に上述の計測部54の計測に基づいて移動量を計測し、捕捉動作の終了後に測位に成功しなかった場合でも、電子時計1aの装着者が移動した、即ち、測位地点が変化したと判断される場合には再度測位を行う。
【0076】
図7は、本実施形態の電子時計1aのGPS受信処理部50により実行される地方時取得処理のCPU41による制御手順を示すフローチャートである。
【0077】
この地方時取得処理は、上述の第1実施形態の電子時計1における変形例2の地方時取得処理におけるステップS121の処理がステップS121aの処理に置き換えられ、また、ステップS130、S132の処理が追加された点が異なる。同一の処理については同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
【0078】
ステップS106又はステップS109の判別処理で“YES”に分岐すると、制御部502cは、測位衛星からの信号の捕捉動作を終了させると共に、CPU41に制御信号を送り、計測部54による計測データに基づいて、当該タイミングからの移動量の算出を行わせる(ステップS121a)。
【0079】
ステップS126の判別処理で、現在追尾中の測位衛星数が3機未満であると判別された場合(ステップS126で“YES”)、制御部502cは、ステップS121で捕捉動作が終了されてから電子時計1aの位置が移動しているか否かを判別する(ステップS130)。具体的には、制御部502cは、計測部54により計測されてCPU41により算出された、捕捉動作終了時の位置からの相対移動距離を取得し、当該相対移動距離が予め設定された所定距離(基準距離)以上であるか否かを判別する。所定距離以上であると判別された場合には(ステップS130で“YES”)、制御部502cの処理は、ステップS101に戻り、捕捉処理を再度開始させる。所定距離以上ではないと判別された場合には(ステップS130で“NO”)、制御部502cの処理は、ステップS133に移行し、制御部502cは、受信動作を終了させる(ステップS133)。
【0080】
また、ステップS131の処理で“YES”に分岐すると、制御部502cは、ステップS121aの処理後に電子時計1aの位置が移動しているか否かを判別する(ステップS132)。移動していると判別された場合には(ステップS132で“YES”)、制御部502cの処理は、ステップS101に移行し、移動していないと判別された場合には(ステップS132で“NO”)、制御部502cの処理は、ステップS133に移行する。
【0081】
以上のように、第2実施形態の電子時計1aは、運動状態を計測する計測部54を備え、CPU41は、計測部54の計測データに基づいて位置の変化量を算出し(移動量算出手段)、所定の条件で捕捉部502aによる信号の探索を中止させた後、当該探索を中止させた位置から、現在位置の取得に失敗した位置までの位置変化量が所定の基準距離以上である場合には、捕捉部502aによる信号の探索を再開させる。
このように、単純に信号の探索やデータの取得時間を長引かせるのではなく、一度受信に失敗しても、その間に電波の受信位置が移動して異なる受信環境にある可能性がある場合にのみ再度検索、捕捉を行わせて受信動作を続けることで、効率良く現在位置の取得可能性を上げることが出来る。
【0082】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、上記実施の形態では、地方時取得処理において3機の測位衛星からの信号の受信でも測位を行うこととしたが、通常の測位処理では、高度情報も必要となるので、4機以上の測位衛星の信号が受信された場合にのみ現在位置情報を算出、出力することとしても良い。
【0083】
また、上記実施の形態では、GPS衛星からサブフレーム1〜3のデータを受信する場合について説明したが、他の測位衛星からのデータを受信する場合には、当該測位衛星の航法メッセージのフォーマットに応じて必要なデータ範囲を取得する必要がある。また、当該フォーマットに応じた捕捉や追尾に係るタイムアウト時間が設定されても良い。
【0084】
また、上記実施の形態では、単純に、GPS測位に必要なデータであるサブフレーム1〜3のデータの受信失敗回数を計数して、失敗回数が所定回数を超えた場合に当該信号からのデータ取得(追尾)を中止させることとしたが、先に捕捉された信号と遅く捕捉された信号との間でサブフレーム1〜3データの受信回数に大きな違いが生じる場合には、単純な失敗回数ではなく、2回目以降の受信時において、失敗頻度、例えば、受信の失敗が50%を越えた場合に追尾を中止することとしても良い。
【0085】
また、上記実施の形態では、取得される1周期分のデータ開始をサブフレーム1には限らないこととしたが、全部サブフレーム1からに揃えて、各測位衛星からの距離に基づく伝播遅延の範囲内で略同時に受信された場合にのみ現在位置の算出を行うこととしても良い。
【0086】
一方で、一の測位処理(地方時取得処理)内で、測位衛星ごとに異なるフレームのデータを用いて現在位置の算出を行っても良い。この場合、サブフレーム1〜3の受信失敗回数が設定回数に到達した場合でも、当該到達時までに必要なサブフレーム1〜3のデータが異なるフレームから全て取得された場合には、これらサブフレーム1〜3のデータを用いて測位に利用することが出来る。更に、その後、精度不足で再度現在位置の算出が行われる場合には、既に追尾が中止された信号から取得されていたサブフレーム1〜3のデータは、利用されないこととして良い。
【0087】
また、上記実施の形態では、サブフレーム1〜3のデータの受信期間が過ぎてから、当該サブフレーム1〜3の受信データ中に取得に失敗した部分があったか否かをまとめて判別し、受信回数に「1」を加算して次の周期の受信を継続して行うこととしたが、リアルタイムで失敗の判別を行い、一周期内で複数回失敗があった場合には2回目以降に受信回数の加算を行わない処理であっても良い。或いは、受信回数が所定回より1回少ない状況になった時点でこの信号に関してリアルタイムの判別に移行し、サブフレーム1〜3におけるデータ取得の失敗が検出された時点で当該信号の追尾を即座に中止させることとしても良い。
【0088】
また、上記実施の形態では、測位を行って現在位置情報を取得するためにエフェメリスを取得する場合について説明したが、測位の位置精度が粗くても良い場合には、アルマナックを用いても概算位置を算出することが出来るので、何れかの測位衛星により捕捉中の測位衛星のアルマナックデータが受信可能な場合には、当該アルマナックデータを用いても良い。
【0089】
また、上記実施の形態では、DOPを精度の指標として用いることとしたが、精度の指標は、これに限られず、例えば、算出された速度や高度の値に上限や下限の基準値を設けて基準値で示される範囲から外れる場合には、精度不足と判断しても良い。
【0090】
また、上記実施の形態では、精度条件を一律に定めたが、捕捉処理中に取得された位置や、捕捉された全ての信号を用いずに取得された位置に対する精度条件を、捕捉終了後に取得された位置や、捕捉された全ての信号を用いて取得された位置に対する精度条件よりも厳しく設定しても良い。
この場合、ステップS112、S112bの判別処理で3衛星以上のサブフレーム1〜3のデータが取得されてステップS127の処理に移行した後、精度条件を満たさないと判別された場合には、処理をステップS131に移行させず、ステップS102の処理に戻す手順とすることが出来る。
【0091】
また、第2実施形態では、加速度センサ541及び方位センサ542を用いて運動状態の判定及び移動距離の計測を行ったが、他のセンサ、例えば、電子時計1
aの表示面の水平センサなどが用いられても良い。
【0092】
また、第2実施形態において、捕捉終了時からの相対移動距離を用いて探索の再開可否を判断することとしたが、移動方向を正確に見積もって移動ベクトル量を累積するのが困難な場合には、単純に移動量(スカラー)の累積値のみを判断の基準(基準距離)としても良い。この場合、一連の移動の結果、同一地点に戻る場合などで相対移動距離が小さい場合もあり得るが、衛星電波を減衰させる要素、例えば、室内において雨戸や特殊な窓などを開けて戻った場合などには、受信環境が改善され得る。
【0093】
また、上記変形例1〜3及び第2実施形態では、第1実施形態の構成及び処理手順に対し、順次構成及び処理を追加して説明したが、これらの追加された構成や処理が各々単独で又は可能な範囲において適宜組み合わされて用いられても良い。例えば、変形例1の地方時取得処理において、ステップS131の処理を設けずに、ステップS127の判別処理で“NO”に分岐した場合には、そのままステップS122の処理に戻す手順とすることが出来る。
その他、上記実施の形態で示した具体的な構成、処理内容やその手順は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0094】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
【0095】
[付記]
<請求項1>
受信電波に含まれる測位衛星からの信号を探索して捕捉する捕捉手段と、
前記捕捉された信号を復調、復号して、前記測位衛星からの送信データのうち取得対象情報に応じたデータを取得する衛星データ取得手段と、
前記取得されたデータを用いて前記取得対象情報を取得する情報取得手段と、
前記データの取得に係る失敗履歴を前記捕捉された信号ごとに保持し、当該失敗履歴に基づいて判断される受信状態が所定の基準レベル以下となった信号からの前記データの取得を前記衛星データ取得手段に中止させ、所定の条件で前記信号の探索を終了させた後に前記データの取得を行う信号の数が前記取得対象情報の取得に必要な数を下回った場合には、前記衛星データ取得手段に前記データの取得を終了させる受信制御手段と、
を備えることを特徴とする電波時計。
<請求項2>
取得された前記取得対象情報の精度が所定の基準を満たしていない場合に、当該取得対象情報の取得に用いられた前記データに係る信号以外の信号が捕捉されているか否かを判別する判別手段を備え、
前記受信制御手段は、
前記信号の探索が終了していないか、又は前記取得対象情報の取得に用いられた信号以外の信号が捕捉されていると判別された場合には、前記データの取得を継続させ、前記信号の探索が終了し、且つ、捕捉された全ての信号から取得された前記データが前記取得対象情報の取得に用いられたと判別された場合には、前記データの取得を終了させる
ことを特徴とする請求項1記載の電波時計。
<請求項3>
前記受信制御手段は、前記失敗履歴として前記データの取得に失敗した回数を計数し、当該失敗の回数が予め設定された所定の上限回数以上となった前記信号からの前記データの取得を中止させる
ことを特徴とする請求項1又は2記載の電波時計。
<請求項4>
前記受信制御手段は、前記データの取得を中止させた信号を前記捕捉手段により再度探索させないことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の電波時計。
<請求項5>
前記受信制御手段は、
前記捕捉手段により前記取得対象情報の取得に必要な数以上の所定数の信号が捕捉された場合には、前記信号の探索を終了させ、
前記情報取得手段は、前記所定数の信号が捕捉される前に前記取得対象情報の取得に必要な数以上の信号から前記データが取得された場合には、当該データを用いて前記取得対象情報を取得する
ことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の電波時計。
<請求項6>
前記受信制御手段は、
前記捕捉手段による前記信号の探索が開始されてから所定の上限時間が経過した場合には、当該探索を終了させ、
当該終了のタイミングまでに前記取得対象情報の取得に必要な数以上の信号が捕捉されている場合には、前記衛星データ取得手段により、当該捕捉されている信号から前記データを取得させる
ことを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の電波時計。
<請求項7>
前記捕捉手段は、複数の捕捉処理部を備え、当該複数の捕捉処理部により並列に複数の測位衛星からの信号を探索し、捕捉された信号を捕捉対象から外すとともに、残りの捕捉対象の信号数に応じて当該捕捉対象の信号の探索に用いる前記捕捉処理部の数を調節することを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の電波時計。
<請求項8>
運動状態を計測する計測手段と、
前記計測手段の計測データに基づいて位置の変化量を算出する移動量算出手段と、
を備え、
前記受信制御手段は、
前記所定の条件で前記信号の探索を中止させた後、当該探索を中止させた位置から、前記取得対象情報の取得に失敗した位置までの前記変化量が所定の基準距離以上である場合には、前記捕捉手段による前記探索を再開させる
ことを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載の電波時計。