(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態に係るスクロール圧縮機を、図面を参照しながら説明する。なお、下記の実施形態は、実施例に過ぎず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0021】
(1)全体構成
本実施形態に係るスクロール圧縮機10について説明する。スクロール圧縮機10は、例えば、空気調和装置の室外機に搭載され、空気調和装置の冷媒回路の一部を構成する。
【0022】
図1は、一実施形態に係るスクロール圧縮機10の概略縦断面図である。
【0023】
スクロール圧縮機10は、
図1に示されるように、ケーシング20、圧縮機構30、駆動モータ60、クランク軸70、および下部軸受75を主に有する。圧縮機構30は、固定スクロール40および可動スクロール50を含む(
図1参照)。
【0024】
(2)詳細構成
スクロール圧縮機10のケーシング20、圧縮機構30、駆動モータ60、クランク軸70、および下部軸受75について以下に詳述する。
【0025】
なお、以下の説明では、方向や配置を説明するために、「上」、「下」等の表現を用いる場合があるが、特に断りの無い場合、
図1中の矢印Uの方向を上とする。また、以下の説明では、平行や直交等の表現を用いる場合があるが、これには実質的に平行や直交の場合、つまり略平行や略直交の場合を含む。
【0026】
(2−1)ケーシング
スクロール圧縮機10は、縦長円筒状のケーシング20を有する。ケーシング20は、上下が開口した円筒状の円筒部材21と、円筒部材21の上端および下端にそれぞれ設けられた上蓋22aおよび下蓋22bと、を有する。円筒部材21と、上蓋22aおよび下蓋22bとは、気密を保つように溶接により固定される。
【0027】
ケーシング20には、圧縮機構30、駆動モータ60、クランク軸70および下部軸受75を含むスクロール圧縮機10の構成機器が収容される。
【0028】
ケーシング20の下部には、油溜空間25が形成される。油溜空間25には、圧縮機構30等を潤滑するための冷凍機油Oが溜められる。
【0029】
ケーシング20の上部には、圧縮機構30の圧縮対象である冷媒を吸入する吸入管23が、上蓋22aを貫通して設けられる(
図1参照)。吸入管23の下端は、後述する圧縮機構30の固定スクロール40に接続される。吸入管23は、後述する圧縮機構30の圧縮室Scと連通する。吸入管23には、圧縮前の低圧の冷媒(冷凍サイクルにおける低圧の冷媒)が流れる。
【0030】
ケーシング20の円筒部材21の中間部には、ケーシング20外に吐出される冷媒が通過する吐出管24が設けられる(
図1参照)。吐出管24は、吐出管24のケーシング20内側の端部が、後述する圧縮機構30のハウジング31の下方に突出するように配置される。吐出管24には、圧縮機構30により圧縮された高圧の冷媒(冷凍サイクルにおける高圧の冷媒)が流れる。
【0031】
(2−2)圧縮機構
圧縮機構30は、
図1に示されるように、主に、ハウジング31と、ハウジング31の上方に配置される固定スクロール40と、固定スクロール40と組み合わされて圧縮室Scを形成する可動スクロール50と、を有する。圧縮機構30は、非対称渦巻き構造(非対称ラップ型)のスクロール圧縮機である。
【0032】
(2−2−1)固定スクロール
固定スクロール40は、円板状の固定側鏡板41と、固定側鏡板41の前面41a(下面)から下方に延びる渦巻状(インボリュート形状)の固定側ラップ42と、固定側ラップ42を囲む周縁部43とを有する。
【0033】
固定側鏡板41の略中心には、後述する圧縮室Scに連通する非円形形状の吐出ポート41cが、固定側鏡板41を厚さ方向(上下方向)に貫通して形成される。言い換えれば、吐出ポート41cは、前面41aから背面41b(上面)まで、固定側鏡板41を貫通して延びる。吐出ポートの開口面積A1は、スクロール圧縮機10の駆動モータ60が後述する最高回転数N1で運転され、冷媒量が増加した場合にも通路抵抗の上昇を抑制可能な値に設計されている。
【0034】
固定側鏡板41の上面には、下方に凹むように拡大凹部41d(
図1参照)が形成されている。拡大凹部41dは、平面視において略円形状に形成された凹部である(
図3参照)拡大凹部41dは、吐出ポート41cと連通する(
図1参照)。固定スクロール40の上面には、拡大凹部41dを塞ぐように蓋体44がボルト44aにより固定されている(
図1参照)。拡大凹部41dと蓋体44との間には、チャンバ室45が形成される(
図1参照)。なお、蓋体44と固定側鏡板41との間には、ガスケット46(
図3参照)が配置され、蓋体44と固定側鏡板41との間はシールされている。チャンバ室45は、冷媒の通過音を低減するマフラー空間として機能する。なお、チャンバ室45は、固定スクロール40およびハウジング31にわたって形成された、冷媒通路32と連通している(
図3参照)。冷媒通路32は、チャンバ室45とハウジング31の下方の高圧空間とを連通する通路である。
【0035】
固定側鏡板41には、リリーフ穴47が、固定側鏡板41を厚さ方向(上下方向)に貫通して形成されている(
図5参照)。言い換えれば、リリーフ穴47は、前面41aから背面41bまで、固定側鏡板41を貫通して延びる。固定側鏡板41には、4箇所にリリーフ穴47(第1リリーフ穴47a,第2リリーフ穴47b,第3リリーフ穴47c,第4リリーフ穴47d)が形成されている(
図2参照)。4組のリリーフ穴47は、圧縮室Sc、より具体的には後述する第1圧縮室80および第2圧縮室90(
図5、
図7〜
図9参照)に共通である。言い換えれば、4組のリリーフ穴47は、第1圧縮室80および第2圧縮室90に共用される。4組のリリーフ穴47は、第1圧縮室80および第2圧縮室90が、圧縮行程の1サイクル(吸引行程から吐出行程まで)中に、全てのリリーフ穴47と所定期間連通するように配置されている。なお、各リリーフ穴47は、
図2のように、固定側鏡板41を下面側から見た時に、固定側ラップ42から離れた位置、具体的には、隣接する固定側ラップ42の中間位置に配置されている。ここでは、固定側鏡板41に形成されるリリーフ穴47を、固定側ラップ42に沿って、固定側ラップ42の固定側鏡板41の外周側から順に、第1リリーフ穴47a、第2リリーフ穴47b、第3リリーフ穴47c、および第4リリーフ穴47dと呼ぶ。言い換えれば、第1リリーフ穴47aが固定側鏡板41の最外周側に配置されるリリーフ穴47であり、第4リリーフ穴47dが固定側鏡板41の最中心側に配置されるリリーフ穴である。第1圧縮室80および第2圧縮室90は、それぞれ、1サイクル中に、第1リリーフ穴47a、第2リリーフ穴47b、第3リリーフ穴47c、第4リリーフ穴47dの順に、リリーフ穴47と所定期間連通する。
【0036】
リリーフ穴47には、例えば特開2011−149376号公報に開示されているような構成を適用可能である。
【0037】
例えば、各リリーフ穴47は、固定側鏡板41の前面41a側に形成される1対の丸穴147aと、固定側鏡板41の背面41b側に形成され、1対の丸穴147aの両方と連通する座ぐり穴147bと、を含む(
図5参照)。リリーフ穴47は、丸穴147aと座ぐり穴147bとにより、前面41aから背面41bまで、固定側鏡板41を貫通して延びる。
【0038】
各1対の丸穴147aは、後述する可動スクロール50の可動側ラップ52が公転運動をする際に、丸穴147aに対して往復して通過する際の最大重なり位置となる領域(可動スクロール50の可動側ラップ52の軌跡の重なり部分である、略菱型形状の領域48)の内部に配置されている(
図4参照)。
図4中では、往復する可動側ラップ52の、往方向の可動側ラップ52を152a、復方向の可動側ラップ52を152bとして示している。1対の丸穴147aをこのように配置することで、丸穴147aの開口面積が十分確保されやすい。また、第1圧縮室80と第2圧縮室90とが、リリーフ穴47によって連通する不具合が確実に防止されやすい。丸穴147aの位置は、少なくとも各丸穴147aの中心が、領域48の内側に配置されていればよい。丸穴147aは、領域48を菱形とみなした場合の、長い方の対角線に沿って、2個以上配置される(
図4参照)。1対の丸穴147aは、固定側ラップ42に沿って並ぶように配置されている(
図2参照)。なお、それぞれの丸穴147aの直径は、可動スクロール50の可動側ラップ52の面取りされた先端(図示せず)の歯厚より大きく、かつ、可動スクロール50の可動側ラップ52の中央部の歯厚より小さく設定されている。
【0039】
座ぐり穴147b(
図5参照)は、固定側鏡板41の背面41b側に配置され、1対の丸穴147aの両方と連通する。座ぐり穴147bの固定側鏡板41の背面41b側の開口には、リリーフ弁147cが配置されている。リリーフ弁147cは、拡大凹部41dに配置されている。リリーフ弁147cは逆止弁である。リリーフ弁147cには、そのリリーフ弁147cの開く範囲を制限するリリーフ弁押さえ147dが設けられている。
【0040】
固定側ラップ42は、渦巻き状(インボリュート形状)に形成され、固定側鏡板41の前面41aから下方に突出する。固定側ラップ42と、後述する可動スクロール50の可動側ラップ52とが、固定側鏡板41の前面41a(下面)と可動側鏡板51の前面51a(上面)とが対向する状態で組み合わされることで、隣接する固定側ラップ42と可動側ラップ52との間には圧縮室Scが形成される(
図1参照)。なお、圧縮室Scには、可動スクロール50の可動側ラップ52の外周面52aと、固定スクロール40の固定側ラップ42の内周面42bと、によって囲まれて形成されるA室と、可動スクロール50の可動側ラップ52の内周面52bと、固定スクロール40の固定側ラップ42の外周面42aと、によって囲まれて形成されるB室と、を含む(
図5参照)。ここでは、A室を第1圧縮室80と呼び、B室を第2圧縮室90と呼ぶ。
【0041】
周縁部43は、厚肉のリング状に形成され、固定側ラップ42を取り囲むように配置される(
図2参照)。
【0042】
(2−2−2)可動スクロール
可動スクロール50は、略円板状の可動側鏡板51と、可動側鏡板51の前面51a(上面)から上方に延びる渦巻状(インボリュート形状)の可動側ラップ52と、可動側鏡板51の背面51b(下面)から下方に突出する、円筒状に形成されたボス部53と、を有する(
図1参照)。
【0043】
可動側鏡板51の前面51aの中心付近には、凹み部56が形成されている(
図5、
図6参照)。凹み部56は、固定側ラップ42の先端42c(固定側ラップ42の歯先)が摺接する面に対し、下方に凹むように形成されている(
図5参照)。凹み部56が固定側ラップ42の先端42cの下方を通過する際には、可動側鏡板51と固定側ラップ42との間はシールされない(
図5参照)。
【0044】
凹み部56は、第2圧縮室90(B室)と、吐出ポート41cとを連通させるために形成されている。特に、凹み部56は、圧縮後段(圧縮行程の後半)の第2圧縮室90と吐出ポート41cとが、固定側ラップ42と可動側ラップ52との側面隙間を介して連通する前に、固定側ラップ42の先端42cと凹み部56との隙間を介して連通するように形成されている。また、凹み部56は、圧縮後段(圧縮行程の後半)の第2圧縮室90が、固定側鏡板41の最中心側のリリーフ穴47(つまり、第4リリーフ穴47d)と連通する前に、固定側ラップ42の先端42cと凹み部56との隙間を介して吐出ポート41cと連通するように形成されている。
【0045】
凹み部56は、段差56aを有する(
図5、
図6参照)。凹み部56は、段差56aにより、先行開口凹み部54と、先行開口凹み部54より凹みの深さが深い(先行開口凹み部54よりも下方に凹む)吐出座ぐり部55と、に区画されている。先行開口凹み部54は、第1凹み部の一例である。吐出座ぐり部55は、第2凹み部の一例である。
【0046】
先行開口凹み部54は、固定側ラップ42の形状に合わせた形状に形成されている。そのため、先行開口凹み部54と、固定側ラップ42との配置とは以下のように変化する。
【0047】
平面視において、圧縮機構30の1サイクル中のあるタイミングで、
図8のように、先行開口凹み部54の一端(
図8では左端)の全体と、固定側ラップ42の外周面42aの一部とが重なり合う。先行開口凹み部54と固定側ラップ42とがこのような配置になった時点で、先行開口凹み部54と固定側ラップ42の先端42cとの隙間を介して、第2圧縮室90と吐出ポート41cとが連通し始める。なお、この時点では、第2圧縮室90と吐出ポート41cとは、固定側ラップ42と可動側ラップ52との側面隙間を介して連通していない。つまり、圧縮後段の第2圧縮室90と吐出ポート41cとは、固定側ラップ42と可動側ラップ52との側面隙間を介して連通する前に、固定側ラップ42の先端42cと先行開口凹み部54との隙間を介して連通する。
【0048】
図8の状態から、更にクランク軸70が回転すると、あるタイミングで、
図9のように、先行開口凹み部54の他端(
図9では右端)の全体と、固定側ラップ42の外周面42aの一部とが重なり合う。言い換えれば、あるタイミングで、吐出座ぐり部55の一端(
図9では左端)の全体と、固定側ラップ42の外周面42aの一部とが、
図9のように重なり合う。その結果、この時点から、吐出座ぐり部55と固定側ラップ42の先端42cとの隙間を介して、第2圧縮室90と吐出ポート41cとが連通し始める。
【0049】
ここで示したように、圧縮後段の第2圧縮室90と吐出ポート41cとは、固定側ラップ42の先端42cと先行開口凹み部54との隙間を介して連通し、その後、所定期間が経過した後に、(固定側ラップ42の先端42cが先行開口凹み部54と対向しない状態で)固定側ラップ42の先端42cと吐出座ぐり部55との隙間を介して連通する。言い換えれば、第2圧縮室90の圧縮後段において、固定側ラップ42の先端42cの、固定側ラップ42の外周面42a側の縁部は、先行開口凹み部54と対向した後、吐出座ぐり部55と対向する。つまり、第2圧縮室90の圧縮後段において、固定側ラップ42の先端42cの外周面42a側の縁部の下方を、先行開口凹み部54が通過した後、吐出座ぐり部55が通過する。このように、圧縮後段の第2圧縮室90と吐出ポート41cとは、初めは高さの低い開口(固定側ラップ42の先端42cと先行開口凹み部54との隙間)を介して連通し、所定期間経過後に、(高さの低い開口は通過せずに)高さの高い開口(固定側ラップ42の先端42cと吐出座ぐり部55との隙間)を介して連通する。そのため、凹み部56を設けても、高速運転/高圧力比条件において、通路抵抗を比較的大きく保つことが可能で、圧縮不足による逆流損失の増大を抑制することができる。
【0050】
先行開口凹み部54は、過圧縮を防止し、低速・低圧力比条件の効率を向上させることを目的としている。そのため、固定側ラップ42の先端42cと先行開口凹み部54との隙間に形成される開口面積A2と、吐出ポート41cとの開口面積A1との比が、後述するスクロール圧縮機10の最低回転数N2と最高回転数N1との比に等しくなるように設計されている(A1:A2=N1:N2)。そのため、低速・低圧力比条件では過圧縮損失を抑制しつつ、高速・高圧力比条件では、固定側ラップ42の先端42cと先行開口凹み部54との隙間の通路抵抗を比較的大きく保ち、圧縮不足による逆流損失の増大を抑制することができる。
【0051】
なお、固定側ラップ42の先端42cと先行開口凹み部54との隙間との開口面積A2は、固定側ラップの先端42cと先行開口凹み部54の上下方向の高さH(
図5参照)と、平面視において、固定側ラップ42の外周面42aと先行開口凹み部54とが重なる部分の長さ(例えば、
図8であれば矢印で示した長さL)
と、の積で
表わされる。つまり、上記のA1:A2=N1:N2という関係式は、A1:(H×L)=N1:N2と表すことができる。なお、実際には、固定側ラップ42の外周面42aと先行開口凹み部54とが重なる部分の長さは、
図8から
図9の状態へと変化する間に若干変化する。そのため、ここでは、開口面積A1と、高さHおよび
図8から
図9の状態へと変化する間の固定側ラップ42の外周面42aと先行開口凹み部54とが重なる部分の長さの平均値の積との比が、スクロール圧縮機10の最高回転数N1と最低回転数N2との比に等しくなるように設計されている。
【0052】
可動側鏡板51の周縁の背面51bには、キー溝51cが形成されている(
図6参照)。各キー溝51cには、オルダム継手33(
図1参照)が嵌め込まれる。オルダム継手33は、可動スクロール50の自転運動を防止するための部材である。オルダム継手33は、ハウジング31に形成されるオルダム溝(図示せず)にも嵌め込まれている。可動スクロール50は、オルダム継手33を介してハウジング31に支持されている。
【0053】
ボス部53は、可動側鏡板51の背面51bから下方に延びる円筒状の部分である(
図1参照)。ボス部53は、上端の塞がれた円筒状部分である。ボス部53に後述するクランク軸70の偏心部71が挿入されることで、ボス部53と偏心部71とが連結される。ボス部53と偏心部71で接続されたクランク軸70が回転すると、オルダム継手33の働きにより可動スクロール50は固定スクロール40に対して自転することなく公転し、圧縮室Sc(第1圧縮室80および第2圧縮室90)内の冷媒が圧縮される。より具体的には、圧縮室Scは、可動スクロール50の公転により、固定側鏡板41および可動側鏡板51の中心方向に移動するに連れ容積が減少し、それと共に圧縮室Sc内の圧力が上昇する。つまり、周縁側の圧縮室Scよりも、中央側の圧縮室Scの圧力は高圧になる。なお、圧縮室Scで圧縮された冷媒は、固定スクロール40の上部に形成された吐出ポート41cから上方のチャンバ室45に吐出され、固定スクロール40およびハウジング31に形成された冷媒通路32を通過して、ハウジング31の下方の空間へと流入する。
【0054】
(2−2−3)ハウジング
ハウジング31は、可動スクロール50の可動側鏡板51の下方に配置される部材である(
図1参照)。ハウジング31は、ケーシング20の円筒部材21に圧入され、ハウジング31の外周面の全周が、円筒部材21の内周面に固定されている。ハウジング31の上方には、ハウジング31の上端面と、固定スクロール40の周縁部43の下面とが密着するように、固定スクロール40が配置されている(
図1参照)。ハウジング31と固定スクロール40とは、図示しないボルト等により固定されている。
【0055】
ハウジング31には、
図1のように、中央上部に第1凹部31aが形成されている。第1凹部31aは、平面視において円形状に形成されている。第1凹部31aの内側には、クランク軸70の偏心部71が連結された、可動スクロール50のボス部53が収容される。
【0056】
ハウジング31の下部(第1凹部31aの下方)には、クランク軸70を軸支する上部軸受35が設けられる(
図1参照)。上部軸受35は、ハウジング31と一体に形成された軸受ハウジング35aと、軸受ハウジング35a内に収容された軸受メタル35bとを含む(
図1参照)。上部軸受35は、クランク軸70の主軸72を回転自在に軸支する。
【0057】
ハウジング31の上面には、平面視において、第1凹部31aを取り囲むように、第2凹部31bが形成される。第2凹部31bには、オルダム継手33が配置される。
【0058】
(2−3)駆動モータ
駆動モータ60は、可動スクロール50を駆動する駆動部である。駆動モータ60は、円筒部材21の内壁面に固定された環状のステータ61と、ステータ61の内側に僅かな隙間(エアギャップ)を空けて回転自在に収容されたロータ62とを有する(
図1参照)。
【0059】
ロータ62は、円筒状の部材で、内部にクランク軸70が挿通されている。ロータ62は、クランク軸70を介して可動スクロール50と連結されている。ロータ62が回転することで、可動スクロール50が駆動される。
【0060】
駆動モータ60は、所定の最高回転数N1以下、かつ、所定の最低回転数N2以上の範囲の回転数で運転される。
【0061】
(2−4)クランク軸
クランク軸70は、駆動モータ60の駆動力を可動スクロール50に伝達する。クランク軸70は、円筒部材21の軸心に沿って上下方向に延びるように配置され、駆動モータ60のロータ62と、圧縮機構30の可動スクロール50とを連結する。
【0062】
クランク軸70は、円筒部材21の軸心と中心軸が一致する主軸72と、円筒部材21の軸心(主軸72の中心軸)に対して偏心した偏心部71とを有する(
図1参照)。クランク軸70の内部には、油流路73が形成されている(
図1参照)。
【0063】
偏心部71は、主軸72の上端に配置され、可動スクロール50のボス部53に連結される。
【0064】
主軸72は、ハウジング31に設けられた上部軸受35、および、後述する下部軸受75により、回転自在に軸支される。また、主軸72は、上部軸受35と下部軸受75との間で、駆動モータ60のロータ62と連結される。主軸72は、上下方向に延びる鉛直軸周りに回転する。
【0065】
油流路73は、スクロール圧縮機10の摺動部分に、潤滑のための冷凍機油Oを供給するための冷凍機油Oの流路である。油流路73は、クランク軸70の軸方向に、クランク軸70の下端から上端まで延び、クランク軸70の上下の端部で開口する。クランク軸70の下端は、油溜空間25内に配置されている。油溜空間25の冷凍機油Oは、油流路73の下端側の開口から、上端側の開口まで運ばれる。油流路73を流れる冷凍機油Oは、油流路73と連通する図示しない油通路を流れて、スクロール圧縮機10の各摺動部分に供給される。各摺動部分を潤滑した冷凍機油Oは、油溜空間25に戻される。
【0066】
(2−5)下部軸受
下部軸受75(
図1参照)は、駆動モータ60の下方に配置され、クランク軸70の主軸72の下部側を回転自在に軸支する。下部軸受75は、下部ハウジング76に収容された軸受メタル75aを含む(
図1参照)。下部ハウジング76は、円筒部材21と固定されている。
【0067】
(3)スクロール圧縮機の動作
スクロール圧縮機10の動作について説明する。
【0068】
(3−1)圧縮動作
駆動モータ60が駆動されると、ロータ62が回転し、ロータ62と連結されたクランク軸70も回転する。クランク軸70が回転すると、オルダム継手33の働きにより、可動スクロール50は自転せずに、固定スクロール40に対して公転する。そして、低圧の(吸入圧の)冷媒が、吸入管23を通ってケーシング20内に吸引される。より具体的には、低圧の冷媒が、吸入管23から圧縮室Sc(第1圧縮室80および第2圧縮室90)へ、圧縮室Scの周縁側から吸引される。可動スクロール50が公転するのに従い、吸入管23と圧縮室Scとは連通しなくなり、圧縮室Scの容積が減少するのに伴って、圧縮室Scの圧力が上昇する。冷媒は、周縁側の圧縮室Scから、中央側の圧縮室Scへ移動するにつれ圧力が上昇し、最終的に高圧(吐出圧)となる。圧縮機構30によって圧縮された高圧の冷媒は、固定側鏡板41の中央付近に位置する吐出ポート41cから吐出される。また、圧縮室Sc内部で過圧縮ガスが生じる場合(圧縮室Scの圧力がリリーフ弁147cの閉弁圧以上の場合)には、過圧縮ガスは、リリーフ穴47を通ってチャンバ室45へ吐出される。チャンバ室45の高圧の冷媒は、固定スクロール40およびハウジング31に形成された冷媒通路32を通過して、ハウジング31の下方の空間へ流入する。
【0069】
(3−2)第1圧縮室および第2圧縮室とチャンバ室との連通について
以下に、第1圧縮室80および第2圧縮室90と、チャンバ室45と、の連通に関して説明する。なお、ここでは、特に、スクロール圧縮機10が低速・低圧力比条件で運転される場合に関し(例えば、スクロール圧縮機10が最低回転数N2付近で運転される場合に関し)、第1圧縮室80および第2圧縮室90と、チャンバ室45との連通を、図を用いて説明する。
【0070】
なお、高速・高圧力比条件(例えば、スクロール圧縮機10が最高回転数N1付近で運転される条件)では、リリーフ弁147cは基本的に開かず、リリーフ穴47を介して、第1圧縮室80または第2圧縮室90と、チャンバ室45とが連通しない。また、先行開口凹み部54と固定側ラップ42の先端42cとの開口面積A2は、高速・高圧力比条件において逆流損失の上昇ができるだけ抑制されるように予め決定されている。
【0071】
図10のタイミングチャートの下段は、第1圧縮室80とチャンバ室45とが、リリーフ穴47、および、固定側ラップ42と可動側ラップ52との側面隙間を介して連通するタイミングを示している。また、
図10のタイミングチャートの上段は、第2圧縮室90とチャンバ室45とが、リリーフ穴47、固定側ラップ42の先端42cと先行開口凹み部54との隙間、および、固定側ラップ42と可動側ラップ52との側面隙間を介して連通するタイミングを示している。なお、
図10の横軸は、第1圧縮室80の閉じきり位置を基準とした(第1圧縮室80の閉じ切り位置の回転角を0度(deg)とした)クランク軸70の回転角を示している。
【0072】
初めに、
図10の下段の第1圧縮室80とチャンバ室45との連通に関するタイミングチャートを見ると、第1圧縮室80とチャンバ室45とは、第1リリーフ穴47a、第2リリーフ穴47b、第3リリーフ穴47c、第4リリーフ穴47d、および固定側ラップ42と可動側ラップ52との側面隙間、を介して、順に連通することが分かる。
図7および
図10から分かるように、第1圧縮室80が、固定側ラップ42と可動側ラップ52との側面隙間と、吐出ポート41cとを介して、チャンバ室45と連通する前に、第1圧縮室80は第4リリーフ穴47dを介して連通しており、低速・低圧力比条件下でも、第1圧縮室80の過圧縮が防止されやすい。
【0073】
次に、
図10の上段の第2圧縮室90とチャンバ室45との連通に関するタイミングチャートを見ると、第2圧縮室90とチャンバ室45とは、固定側ラップ42と可動側ラップ52との側面隙間および吐出ポート41cを介して、第2圧縮室90とチャンバ室45とが連通する前に、第1リリーフ穴47a、第2リリーフ穴47b、第3リリーフ穴47c、を介して、順に連通していることが分かる。しかし、第2圧縮室90とチャンバ室45とが第4リリーフ穴47dを介して連通するタイミングは、固定側ラップ42と可動側ラップ52との側面隙間および吐出ポート41cを介して第2圧縮室90とチャンバ室45とが連通した後である。固定側ラップ42と可動側ラップ52との側面隙間および吐出ポート41cを介して第2圧縮室90とチャンバ室45とが連通する直前を描画した
図9からも、第2圧縮室90は、第4リリーフ穴47dを介してチャンバ室45と連通していないことが分かる。そのため、第4リリーフ穴47dは、固定側ラップ42と可動側ラップ52との側面隙間を介して第2圧縮室90とチャンバ室45とが連通した後に、冷媒がチャンバ室45に移送されることを補助する(冷媒の抜けをよくする)役割は果たすものの、過圧縮の防止には十分に寄与しない可能性がある。しかし、ここでは、固定側ラップ42と可動側ラップ52との側面隙間を介して第2圧縮室90とチャンバ室45とが連通する前に、先行開口凹み部54と固定側ラップ42の先端42cとの隙間および吐出ポート41cを介して、第2圧縮室90とチャンバ室45とが連通する。そのため、第2圧縮室90において過圧縮が十分に抑制されやすい。さらに、ここでは、第2圧縮室90が第4リリーフ穴47dを介してチャンバ室45と連通する前に、吐出座ぐり部55と固定側ラップ42の先端42cとの隙間および吐出ポート41cを介して、第2圧縮室90とチャンバ室45とが連通するため、第2圧縮室90において過圧縮が抑制されやすい。
【0074】
図11は、第1圧縮室80および第2圧縮室90とチャンバ室45とを連通する通路の開口面積(リリーフ弁147cは全て開いていると仮定している)の、クランク軸70の回転角に対する変化を示したグラフである。なお、
図11では、第1圧縮室80とチャンバ室45とを連通する通路の開口面積のグラフについては、第1圧縮室80の閉じ切り時を回転角の基準としている(第1圧縮室80の閉じ切り時の回転角を0度(deg)としている)。また、
図11では、第2圧縮室90とチャンバ室45とを連通する通路の開口面積のグラフについては、第2圧縮室90の閉じ切り時を回転角の基準としている(第2圧縮室90の閉じ切り時の回転角を0度(deg)としている)。
【0075】
ここでは、可動側鏡板51に先行開口凹み部54が形成されているために、固定側ラップ42と可動側ラップ52との側面隙間を介して第2圧縮室90とチャンバ室45とが連通する前に、開口面積が増大し、十分な開口面積が確保されやすいことが分かる(
図11参照)。そのため、第2圧縮室90においても、過圧縮が十分に抑制することができる。
【0076】
(4)特徴
(4−1)
本実施形態のスクロール圧縮機10は、固定スクロール40と、可動スクロール50と、を備える。固定スクロール40は、固定側鏡板41と、固定側鏡板41の前面41aから延びる固定側ラップ42と、を有する。可動スクロール50は、可動側鏡板51と、可動側鏡板51の前面51aから延びる可動側ラップ52と、を有する。固定側ラップ42と可動側ラップ52とは、固定側鏡板41の前面41aと可動側鏡板51の前面51aとが対向する状態で組み合わされ、可動側ラップ52の外周面52aおよび固定側ラップ42の内周面42bによって囲まれる第1圧縮室80(A室)と、可動側ラップ52の内周面52bおよび固定側ラップ42の外周面42aによって囲まれる第2圧縮室90(B室)と、を圧縮室Scとして形成する。固定側鏡板41には、それぞれ前面41aから背面41bまで貫通する、吐出ポート41cおよびリリーフ穴47が形成される。リリーフ穴47は、第1圧縮室80および第2圧縮室90と、それぞれ所定期間連通する。リリーフ穴47は、第1圧縮室80および第2圧縮室90に共通である。可動側鏡板51の前面51aには、第2圧縮室90と吐出ポート41cとを連通させる凹み部56が形成される。圧縮後段の第2圧縮室90と、吐出ポート41cとは、固定側ラップ42と可動側ラップ52との側面隙間を介して連通する前に、固定側ラップ42の先端42cと凹み部56との隙間を介して連通する。
【0077】
スクロール圧縮機に、第1圧縮室80および第2圧縮室90に共通のリリーフ穴47(特に第4リリーフ穴47d)を設ける場合、低速・低圧力比条件において、その第4リリーフ穴47dだけを用いて第1圧縮室80および第2圧縮室90の過圧縮損失を共に十分に抑制することは困難である。具体的には、第2圧縮室90の過圧縮損失の十分に抑制するため、圧縮後段の第2圧縮室90と吐出ポート41cとが、固定側ラップ42と可動側ラップ52との側面隙間を介して連通する前に、第2圧縮室90と第4リリーフ穴47dとを連通させようとすると、第4リリーフ穴47dの位置を前段側へずらす必要があり、このように第4リリーフ穴47dを配置すると、逆に第1圧縮室80の過圧縮損失を十分に抑制できなくなる。
【0078】
これに対し、ここでは、可動側鏡板51に凹み部56が形成され、第2圧縮室90と吐出ポート41cとが、固定側ラップ42と可動側ラップ52との側面隙間を介して連通する前に、固定側ラップ42の先端42cと可動側鏡板51の凹み部56との隙間を介して連通する。そのため、第4リリーフ穴47dが、上記実施形態のように、第2圧縮室90とチャンバ室45とが固定側ラップ42および可動側ラップ52の側面隙間を介して連通した後に、第2圧縮室90とチャンバ室45とを連通させるものであっても、凹み部56を介して第2圧縮室90からチャンバ室45へ冷媒が流れるため、第2圧縮室90の過圧縮損失を十分に抑制することができる。つまり、ここでは、第1圧縮室80の過圧縮損失を第4リリーフ穴47dによって最大限抑制しつつ、第2圧縮室90の過圧縮損失を凹み部56および第4リリーフ穴47dを用いて抑制することができ、第1圧縮室80および第2圧縮室90の両圧縮室の過圧縮損失を効果的に抑制可能である。
【0079】
また、ここでは、第1圧縮室80と第2圧縮室90とに個別のリリーフ穴を設ける場合に比べ、圧縮室Scの死容積の増大を抑制することができる。
【0080】
(4−2)
本実施形態のスクロール圧縮機10では、凹み部56は、段差56aを有する。凹み部56は、段差56aにより、第1凹み部としての先行開口凹み部54と、先行開口凹み部54より凹みの深さが深い第2凹み部としての吐出座ぐり部55と、に区画される。第2圧縮室90の圧縮後段(圧縮行程の後半)において、固定側ラップ42の先端42cの、固定側ラップ42の外周面42a側の縁部が、先行開口凹み部54と対向した後、吐出座ぐり部55と対向する。
【0081】
ここでは、凹み部56が段差56aを有し、固定側ラップ42の先端42cとの隙間が比較的小さく抑制することが可能な先行開口凹み部54が形成される。そして、固定側ラップ42の先端42cの外周面42a側の縁部は、凹みの深さが深い吐出座ぐり部55と対向する前に、先行開口凹み部54と対向する。そのため、凹み部56を介した第2圧縮室90と吐出ポート41cとの連通開始時に、凹み部56(先行開口凹み部54)と固定側ラップ42の先端42cとの隙間は比較的小さく保たれ、冷媒循環量の多い高速・高圧力比運転時には通路抵抗を比較的大きく保つことができる。そのため、高速・高圧力比運転時に、圧縮不足による逆流損失の増大を抑制することができる。
【0082】
(4−3)
本実施形態のスクロール圧縮機10では、第2圧縮室90の圧縮後段において、固定側ラップ42の先端42cの、固定側ラップ42の外周面42a側の縁部が、吐出座ぐり部55と対向した後に、第2圧縮室90と第4リリーフ穴47dとが連通する。
【0083】
ここでは、第4リリーフ穴47dが第2圧縮室90と連通する前に、固定側ラップ42の先端42cと先行開口凹み部54および吐出座ぐり部55との隙間を介して第2圧縮室90と吐出ポート41cとが連通し、これらの隙間を通って第2圧縮室90から吐出ポート41cに冷媒が流れる。そのため、低速・低圧力比条件でスクロール圧縮機10が運転される際に、第2圧縮室90の過圧縮損失を抑制することが容易である。
【0084】
(4−4)
本実施形態のスクロール圧縮機10では、固定側ラップ42の先端42cと先行開口凹み部54との隙間に形成される開口面積A2と、吐出ポート41cの開口面積A1との比が、スクロール圧縮機10の最低回転数N2と最高回転数N1との比に等しい。
【0085】
ここでは、固定側ラップ42の先端42cと先行開口凹み部54との隙間の開口面積A2と、スクロール圧縮機10が最高回転数N1で運転される場合にも通路抵抗を抑制可能な吐出ポート41cの開口面積A1との比が、スクロール圧縮機10の最低回転数N2と最高回転数N1との比と等しい。そのため、低速・低圧力比条件で過圧縮損失を抑制しつつ、高速・高圧力比条件で固定側ラップ42の先端42cと先行開口凹み部54との隙間の通路抵抗を比較的大きく保ち、圧縮不足による逆流損失の増大を抑制することができる。
【0086】
(5)変形例
以下に本実施形態の変形例を示す。なお、複数の変形例が適宜組み合わせてもよい。
【0087】
(5−1)変形例A
上記実施形態のスクロール圧縮機10では、各リリーフ穴47は一対の丸穴147aを有するが、これに限定されるものではない。例えば、各リリーフ穴47は、1個または3個以上の丸穴147aを有してもよい。また、リリーフ穴47に含まれる固定側鏡板41の前面41aに形成された穴の形状は、丸穴に限定されるものではなく、各種形状の穴を採用可能である。
【0088】
(5−2)変形例B
上記実施形態のスクロール圧縮機10では、可動側鏡板51に形成される凹み部56は段差56aを有し、凹みの深さが異なる、先行開口凹み部54および吐出座ぐり55に区画されているが、これに限定されるものではない。例えば、可動側鏡板は、段差のない、凹みの深さが一様な凹み部を有するものであってもよい。ただし、凹み部に段差を設けて深さが異なる先行開口凹み部54および吐出座ぐり55に区画することで、低速・低圧力比条件における過圧縮損失と、高速・高圧力比条件における逆流損失との両立が容易に実現されやすい。
【0089】
(5−3)変形例C
上記実施形態のスクロール圧縮機10では、可動側鏡板51に形成される凹み部56は段差56aを1箇所有するが、これに限定されるものではない。凹み部56は、2個以上の段差を有し、3つ以上の深さの異なる領域に区画されていてもよい。
【0090】
(5−4)変形例D
上記実施形態では、可動側鏡板51に第2圧縮室90と吐出ポート41cとを連通させる凹み部56が形成されているが、これに加え、固定側鏡板41に第1圧縮室80と吐出ポート41cとを連通させる凹み部が更に形成されてもよい。
【0091】
(5−5)変形例E
上記実施形態では、リリーフ穴47は、4箇所に形成されているが、これに限定されるものではなく、リリーフ穴47は、1〜3箇所であってもよく、5箇所以上であってもよい。例えば、固定側鏡板41には、第4リリーフ穴47dだけがリリーフ穴47として形成されてもよい。
【0092】
(5−6)変形例F
上記実施形態に係る
図10のタイミングチャートは一例であって、これに限定されるものではない。
【0093】
例えば、スクロール圧縮機10では、第2圧縮室90の圧縮後段において、固定側ラップ42の先端42cの、固定側ラップ42の外周面42a側の縁部が、先行開口凹み部54と対向した後であって、吐出座ぐり部55と対向する前に、第2圧縮室90と第4リリーフ穴47dとが連通してもよい。
【0094】
この場合にも、第4リリーフ穴47dが第2圧縮室90と連通する前に、固定側ラップ42の先端42cと先行開口凹み部54との隙間を介して第2圧縮室90と吐出ポート41cとが連通し、この隙間を通って第2圧縮室90から吐出ポート41cに冷媒が流れる。そのため、低速・低圧力比条件でスクロール圧縮機10が運転される際に、第2圧縮室90の過圧縮損失を抑制することが容易である。
【0095】
(5−7)変形例G
上記実施形態では、固定側ラップ42の先端42cと先行開口凹み部54との隙間に形成される開口面積が、連通中(
図8の状態から
図9の状態になるまでの間)概ね一定になるように設計されているが、これに限定されるものではない。固定側ラップ42の先端42cと、先行開口凹み部54との隙間に形成される開口面積は、例えば、連通開始から次第に大きくなるように設計されてもよい。
【0096】
(5−8)変形例H
上記実施形態のスクロール圧縮機10では、可動側鏡板51に形成される凹み部56は段差56aを有するが、これに限定されるものではない。凹み部56は、深さが連続的に変化する勾配を有するものであってもよい。