特許第6036810号(P6036810)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6036810疎水性セグメントを含有するマクロ開始剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6036810
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】疎水性セグメントを含有するマクロ開始剤
(51)【国際特許分類】
   C08G 77/54 20060101AFI20161121BHJP
   C08G 77/44 20060101ALI20161121BHJP
   C08G 77/388 20060101ALI20161121BHJP
   C08F 293/00 20060101ALI20161121BHJP
   C08F 20/02 20060101ALI20161121BHJP
   C08F 26/06 20060101ALI20161121BHJP
   C08F 26/02 20060101ALI20161121BHJP
   G02C 13/00 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   C08G77/54
   C08G77/44
   C08G77/388
   C08F293/00
   C08F20/02
   C08F26/06
   C08F26/02
   G02C13/00
【請求項の数】15
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-509328(P2014-509328)
(86)(22)【出願日】2012年4月29日
(65)【公表番号】特表2014-514422(P2014-514422A)
(43)【公表日】2014年6月19日
(86)【国際出願番号】US2012035721
(87)【国際公開番号】WO2012151134
(87)【国際公開日】20121108
【審査請求日】2015年4月24日
(31)【優先権主張番号】61/482,260
(32)【優先日】2011年5月4日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/449,412
(32)【優先日】2012年4月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】特許業務法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田宮 竜太
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】中村 正孝
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−252230(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 77/54
C08F 20/02
C08F 26/02
C08F 26/06
C08F 293/00
C08G 77/388
C08G 77/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に1つ又は2つの疎水性セグメントを含むマクロ開始剤であって、疎水性セグメントの分子量が300〜1800であり、疎水性セグメントが、ポリシロキサンからなるセグメントであり、
式(a0)又は(a1)で表される、マクロ開始剤。
【化1】
((a0)及び(a1)において、Rはアルキル基及びアルコキシ基より選択される1種の基であり、
は(CH及び(CH−O(CHより選択される1種の基であり、
m及びnは互いに独立して1〜16の範囲であり、aは4〜19であり、bは1〜6であり、XはO、NH及びSより選択される1種の基である)
【請求項2】
請求項1記載のマクロ開始剤と、少なくとも1種の親水性モノマーとからなる、ブロックコポリマー。
【請求項3】
重量平均分子量が10000〜3000000である、請求項2に記載のブロックコポリマー。
【請求項4】
0.01〜5重量%の疎水性セグメントと95〜99.9重量%の親水性セグメントとをさらに含む、請求項2または3に記載のブロックコポリマー。
【請求項5】
親水性セグメントが、ポリ−N−ビニル−2−ピロリドン、ポリ−N−ビニル−2−ピペリドン、ポリ−N−ビニル−2−カプロラクタム、ポリ−N−ビニル−3−メチル−2−カプロラクタム、ポリ−N−ビニル−3−メチル−2−ピペリドン、ポリ−N−ビニル−4−メチル−2−ピペリドン、ポリ−N−ビニル−4−メチル−2−カプロラクタム、ポリ−N−ビニル−3−エチル−2−ピロリドン、ポリ−N−ビニル−4,5−ジメチル−2−ピロリドン、ポリビニルイミダゾール、ポリ−N−N−ジメチルアクリルアミド、ポリ−N−ビニル−N−メチルアセトアミド、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸及びポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、並びにそれらの混合物及びコポリマーからなる群より選択される親水性ポリマーからなる、請求項2〜4のいずれか1項に記載のブロックコポリマー。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか1項に記載のブロックコポリマーを含む医療材料。
【請求項7】
請求項2〜5のいずれか1項に記載のブロックコポリマーの製造方法であって、親水性セグメントを形成可能なモノマーを請求項1に記載のマクロ開始剤を用いて重合させる、製造方法。
【請求項8】
請求項2〜5のいずれか1項に記載のブロックコポリマーを含む、コンタクトレンズ湿潤剤。
【請求項9】
請求項8記載の湿潤剤を含む、コンタクトレンズ湿潤剤溶液。
【請求項10】
コンタクトレンズ湿潤剤溶液が、包装溶液又は保存溶液である、請求項9に記載のコンタクトレンズ湿潤剤溶液。
【請求項11】
シリコーンハイドロゲル及び請求項2〜5のいずれか1項に記載のブロックコポリマーからなる医療材料。
【請求項12】
0.1ppm〜30%のブロックコポリマーからなる、請求項11に記載の医療材料。
【請求項13】
シリコーンハイドロゲルに用いる親水性モノマーが、Ν,Ν−ジメチルアクリルアミド(DMA)、2−ヒドロキシエチルアクリレート、グリセロールメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートアミド、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、メタクリル酸、アクリル酸、N−ビニルピロリドン、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、N−ビニル−N−エチルアセトアミド、N−ビニル−N−エチルホルムアミド、N−ビニルホルムアミド、N−2−ヒドロキシエチルビニルカルバメート、N−カルボキシ−β−アラニンN−ビニルエステル、反応性ポリエチレンポリオール、親水性ビニルカーボネート、ビニルカルバメートモノマー、親水性オキサゾロンモノマー、親水性オキサゾリンモノマー及びそれらの組合せからなる群より選択される、請求項11または12に記載の医療材料。
【請求項14】
シリコーンハイドロゲルに用いるシリコーンモノマーがヒドロキシル基を有する、請求項11〜13のいずれか1項に記載の医療材料。
【請求項15】
シリコーンハイドロゲルに用いるシリコーンモノマーに由来する成分の量が5〜95重量%である、請求項14に記載の医療材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、ともに「疎水性セグメントを含有するマクロ開始剤」と題する、2011年5月4日出願の米国仮特許出願第61/482,260号及び2012年4月18日出願の米国特許出願第13/449,412号の優先権を主張し、その内容は参照により組み込まれるものとする。
【0002】
本発明は、ブロックコポリマーの形成に有用なマクロ開始剤に関する。本発明はさらに、ブロックコポリマー、湿潤剤及び高分子材料、並びに、本発明のブロックコポリマーを有する高分子材料を組み込んだ医療装置に関する。
【背景技術】
【0003】
予備成形シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの処理に好適であるとして、種々の化合物、例えば、表面活性セグメント化ブロックコポリマー、実質的に水溶性であるシリコーン含有界面活性剤、ポリジメチルシロキサン−PVPブロックコポリマーと(メタ)アクリレート化ポリビニルピロリドン等の官能化ハイブリッドPDMS/極性両親媒性コポリマーブロック系が開示されている。国際公開第2006/039467号には、シロキサン単位の分子量が5000〜10000のシロキサン含有高分子アゾ開始剤であるVPS−0501やVPS−1001等の疎水性高分子アゾ開始剤を用いて親水性モノマーを重合させることにより得られるブロックコポリマーが開示されている。国際公開第2006/039467号には、該明細書中に開示されているブロックコポリマーを反応混合物中に組み入れて反応混合物と重合させることにより、湿潤性等の特性が改善された医療装置を形成できることが開示されている。
【0004】
同様に、国際公開第2008/112874号には、疎水性高分子アゾ開始剤を用いて親水性モノマーを重合させることにより得られるブロックコポリマーが、コンタクトレンズ用のレンズケア成分として使用できることが開示されている。ただし、高分子アゾ開始剤の大きさやその製造方法に関しては、詳細は何ら述べられていない。また溶液に関しては、特性は何ら述べられていない。
【0005】
しかしながら、大きなポリシロキサンセグメントは、コンタクトレンズの包装溶液、洗浄溶液、ケア溶液等の水溶液中に溶けにくい場合がある。その結果、濁った溶液となってしまい、処理される物品に対して目的である湿潤性の改善が付与されない場合がある。したがって、コンタクトレンズ、特にシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの特性を改善する方法が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、分子内に少なくとも1つの疎水性セグメントを含むマクロ開始剤であって、疎水性セグメントの分子量が300〜1800であるマクロ開始剤に関する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書で用いる「非反応性」とは、有意な共有結合を形成できないことと意味する。有意な共有結合が無いということは、共有結合がわずかに存在することはあるが、それはポリマー物品中のブロックコポリマーの保持にとっては偶発的なものであるということを意味する。偶発的な共有結合は、たとえどのようなものが存在したとしても、それ自体ではポリマーマトリックスとの、又はポリマーマトリックス中の非反応性ブロックコポリマーの会合を保持するには十分ではない。その代わりに、ブロックコポリマーをポリマー物品に会合させ続ける圧倒的に優勢な作用は、疎水性セグメントの少なくとも一部を捕捉することである。疎水性セグメントは、本明細書によれば、ポリマーマトリックス内に物理的に保持されるか又はポリマーマトリックスに固着した場合に「捕捉」されたとされる。この捕捉は、疎水性セグメントのポリマーマトリックス内での絡合、ファンデルワールス力、双極子相互作用、静電引力、水素結合及びこれらの作用の組合せによって行われる。一実施形態においては、非反応性成分にはフリーラジカル反応性基が存在しない。
【0008】
本明細書で用いる「セグメント」とは、繰り返し単位を含む構造を有する残基を意味する。
【0009】
本発明は、少なくとも1種の親水性モノマーと分子量約300〜約1800の疎水性セグメントを有するマクロ開始剤との反応によって形成されるブロックコポリマーを提供する。疎水性セグメントの分子量に分布がある場合、分子量は重量平均分子量とする。
【0010】
マクロ開始剤は、アゾ系開始剤と望ましい疎水性セグメントを有する化合物とを反応させることによって得られる。
【0011】
アゾ系開始剤は当技術分野において公知であり、以下の化合物、例えば4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)及びその誘導体、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]水和物、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−カルボキシブチル)]プロピオンアミド}並びに、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−カルボキシエチル)プロピオンアミド]等の1つ又は複数を含む脂肪族アゾ含有開始剤が挙げられる。一実施形態においては、アゾ系開始剤は4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)である。
【0012】
本発明の疎水性セグメントとは、25℃で2000ppmの水と混合した際に透明な単相を生じることのないものである。この測定を行う際には、疎水性セグメントの各末端は、それぞれ独立して水素原子又は開始剤残基で置換されていてもよい。好適な疎水性セグメントとしては、例えば、ポリシロキサン;炭素数8〜50のアルキレン基又は(ポリ)アリーレン基;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート及びナフチル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜20のアルキル(メタ)アクリレートモノマー又は炭素数6〜20のアリール(メタ)アクリレートモノマーからなる群より選択されるモノマーから形成される疎水性ポリマー;3−(メタ)アクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、ペンタメチルジシロキサニルメチル(メタ)アクリレート、メチルジ(トリメチルシロキシ)(メタ)アクリロキシメチルシラン、モノ(メタ)アクリロキシプロピル末端モノ−n−ブチル末端ポリジメチルシロキサン、(2−メチル−)2−プロペン酸、2−ヒドロキシ−3−[3−[1,3,3,3−テトラメチル−1−[トリメチルシリル)オキシ]ジシロキサニル]プロポキシ]プロピルエステル及び9−n−ブチル−1−[3−(3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)プロピル]−1,1,3,3,5,5,7,7,9,9−デカメチルペンタシロキサン等のシリコーン(メタ)アクリレートモノマー;3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルアリルカルバメート、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルビニルカルバメート、トリメチルシリルエチルビニルカーボネート及びトリメチルシリルメチルビニルカーボネート等のビニル又はアリルシリコーンモノマー;スチレン及びビニルピリジン等の芳香族ビニルモノマー;並びに、それらの組合せが挙げられる。一実施形態においては、ブロックコポリマーの疎水性セグメントはポリシロキサンセグメントである。ポリシロキサンセグメントは、炭素数1〜4のポリアルキル置換及びポリアリール置換シロキサン繰り返し単位を含んでいてもよい。好適なポリシロキサン繰り返し単位としては、例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン及びそれらのコポリマーが挙げられる。一実施形態においては、ポリシロキサンセグメントは一方の末端にアルキル基を持ち、別の実施形態においては炭素数1〜4のアルキル基を持ち、さらに別の実施形態においてはメチル基又はn−ブチル基を持つ。
【0013】
本発明のブロックコポリマーの疎水性セグメントは、疎水性成分から形成されるポリマー物品に対して親和性を有する。ポリマー物品としては、限定するものではないがシリコーン含有物品、例えば一実施形態においては、シリコーンエラストマーレンズ及びシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズが挙げられる。
【0014】
本発明はさらに、少なくとも部分的に疎水性であるポリマーを含む、シリコーンエラストマー、シリコーンハイドロゲル及びPMMAコンタクトレンズ等のポリマー物品用の湿潤剤に関する。本発明のマクロ開始剤から形成されるブロックコポリマーは、一実施形態においては、包装溶液、保存溶液及び本発明により形成されるブロックコポリマーを含有する多目的溶液に組み入れられてもよい。これらの溶液を用いることにより、表面処理を行うことなくポリマー物品の湿潤性を高めることができる。
【0015】
一実施形態においては、疎水性セグメント含有マクロ開始剤は1つ又は2つの疎水性セグメントを含み、疎水性セグメントはそれぞれ約300〜約1800の分子量を有する。別の実施形態においては、疎水性セグメント含有マクロ開始剤は、2つの疎水性セグメントを含む。これは、ブロックコポリマーのみの場合はマクロ開始剤から得られるが、ブロックコポリマーと親水性ポリマーとの混合物の場合は1つの疎水性セグメントを含むマクロ開始剤から得られるからである。疎水性セグメントは、ポリマー物品の疎水性ネットワークの少なくとも一部に「類は友を呼ぶ」的に("like prefers like" basis)会合するモノマーから形成されてもよい。例えば、物品がPMMAコンタクトレンズ、シロキサンエラストマーコンタクトレンズ、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ、又はシリコーンエラストマー涙点プラグ等の眼用装置である一実施形態においては、疎水性セグメントはポリシロキサンを含むセグメントである。
【0016】
疎水性含有マクロ開始剤は、少なくとも片方の末端にヒドロキシル基、アミノ基、チオール基等の官能基を有する反応性直鎖状ポリシロキサンと、カルボキシ基を有するアゾ系開始剤とを反応させることにより形成できる。
【0017】
反応性直鎖状ポリシロキサンは、下記式の化合物より選択してもよい。
【0018】
【化1】
【0019】
式中、R11は、置換及び非置換の炭素数1〜24のアルキル、いくつかの実施形態においては置換及び非置換の炭素数1〜10のアルキル、他の実施形態においては非置換の炭素数1〜4のアルキル、また他の実施形態においてはメチル又はn−ブチルより選択され、
【0020】
12〜R15は、炭素数1〜4のアルキル及び炭素数6〜10のアリールより独立して選択され、
rは、5〜60、6〜50、6〜20、6〜15、いくつかの実施形態においては6〜12であり、R17、R18及びR19は、H、非置換の炭素数1〜4のアルキル、ヒドロキシルやアミノ等で置換された炭素数1〜4のアルキル及びそれらの組合せより独立して選択されるが、R17、R18及びR19の少なくとも1つは、水素原子であるか、あるいはヒドロキシル基、アミノ基又はチオール基を含む。
【0021】
反応性直鎖状ポリシロキサンの分子量は、約300〜約1800であり、いくつかの実施形態においては、約400〜約1500、約500〜約1500、約800〜約1200である。
【0022】
反応性直鎖状ポリシロキサンの具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0023】
【化2】
【0024】
式中、mは0〜3であり、nはr+1であり、rは前記定義と同様である。
【0025】
反応性直鎖状ポリシロキサンを、カルボキシ基又はビニル基を有するアゾ系開始剤と反応させる。好適なアゾ系開始剤としては、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)及びその誘導体、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]水和物、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−カルボキシブチル)]プロピオンアミド}並びに、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−カルボキシエチル)プロピオンアミド]等が挙げられる。一実施形態においては、アゾ系開始剤は4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)である。
【0026】
一般的には、反応の際の反応性直鎖状ポリシロキサンとアゾ系開始剤の比を調整することが望ましい。シロキサン/開始剤のモル比が高過ぎると反応後にシロキサン原料が残ってしまい精製が困難になり、比が低過ぎる(開始剤が多過ぎる)と収率が低下してしまう。したがって、1〜2.4、1.3〜2.0、またいくつかの実施形態においては1.4〜1.9の比が望ましい。
【0027】
アゾ系開始剤と反応性直鎖状ポリシロキサンとは、アゾ系開始剤によってラジカルが発生しない十分に低い温度で、縮合反応又はヒドロシリル化反応によって反応させる。反応温度が高過ぎるとアゾ系開始剤からラジカルが発生してしまい、温度が低過ぎると反応が完了するまでに長時間かかってしまう。したがって反応温度は、−20℃〜50℃が好ましく、0℃〜40℃がより好ましく、10℃〜35℃が最も好ましい。
【0028】
また、縮合剤が含まれていてもよい。縮合剤としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIPC)及びN−エチル−N’−3−ジメチルアミノプロピルカルボジイミド(EDC=WSCI)、並びに、塩酸塩(WSCI・HCl)が挙げられる。DCC又はWSCIと、N−ヒドロキシスクシンイミド(HONSu)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)又は3−ヒドロキシ−4−オキソ−3,4−ジヒドロ−1,2,3−ベンゾトリアジン(HOBt)等との組合せを用いることもできる。使用量が少な過ぎると原料が残って精製が困難になり、量が多過ぎると縮合剤が残って精製が困難になる。したがって添加モル比は、カルボキシル基を有するアゾ系開始剤の量の1.8〜4.0倍が好ましく、2.0〜3.0倍がより好ましく、2.1〜2.7倍が最も好ましい。
【0029】
反応性を高めるために、本発明のマクロ開始剤合成反応の際に触媒を加えてもよい。好適な触媒としては、4−ジメチルアミノピリジン等の求核触媒が挙げられる。使用量が少な過ぎると反応に多くの時間がかかってしまい、量が多過ぎると反応後の触媒除去が困難になる。したがって触媒と開始剤のモル比は、約0.01〜約4.0、約0.05〜約3.0が望ましい。いくつかの実施形態においては、原料が残るのを防ぐために、触媒と開始剤のモル比は約1.0〜約2.7が好ましい。
【0030】
一実施形態においては、本発明の疎水性セグメント含有マクロ開始剤は、以下の式を有する。
【0031】
【化3】

【0032】
(a0)及び(a1)において、Rはアルキル基及びアルコキシ基より選択される1種の基であり、
は(CH及び(CH−O(CHより選択される1種の基であり、
m及びnは互いに独立して1〜16、より好ましくは2〜10、最も好ましくは2〜5の範囲であり、
aは4〜19、より好ましくは6〜17、最も好ましくは8〜15であり、
bは1〜6、より好ましくは2〜4であり、
XはO、NH及びSより選択される1種の基であり、反応性が高い点でO及びNHがより好ましく、副生成物がより少ない点でOが最も好ましい。
【0033】
本発明の疎水性セグメント含有マクロ開始剤は、少なくとも1種の親水性モノマーと反応して本発明のブロックコポリマーを形成する。一実施形態においては、親水性セグメントは公知の親水性モノマーから形成できる。親水性モノマーとは、10重量%の濃度で25℃の水と混合した際に透明な単相を生じるものである。親水性モノマーとしては、ビニルアミド、ビニルイミド、ビニルラクタム、親水性(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、スチレン系化合物、ビニルエーテル、ビニルカーボネート、ビニルカルバメート、ビニル尿素及びそれらの混合物が挙げられる。
【0034】
好適な親水性モノマーとしては、N−ビニルピロリドン、N−ビニル−2−ピペリドン、N−ビニル−2−カプロラクタム、N−ビニル−3−メチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−3−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−4−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−4−メチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−3−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−4,5−ジメチル−2−ピロリドン、ビニルイミダゾール、N−N−ジメチルアクリルアミド、アクリルアミド、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、アクリロニトリル、N−イソプロピルアクリルアミド、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−エチルオキサゾリン、N−(2−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、3−(ジメチル(4−ビニルベンジル)アンモニオ)プロパン−1−スルホネート(DMVBAPS)、3−((3−アクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン−1−スルホネート(AMPDAPS)、3−((3−メタクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン−1−スルホネート(MAMPDAPS)、3−((3−(アクリロイルオキシ)プロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン−1−スルホネート(APDAPS)、3−((3−メタクリロイルオキシ)プロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン−1−スルホネート(MAPDAPS)、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルプロピオンアミド、N−ビニル−N−メチル−2−メチルプロピオンアミド、N−ビニル−2−メチルプロピオンアミド、N−ビニル−Ν,Ν’−ジメチル尿素等、及びそれらの混合物が挙げられる。一実施形態においては、親水性モノマーは、N−ビニルピロリドン、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、(メタ)アクリル酸、N,Nジメチルアクリルアミド等、及びそれらの混合物を含む。いくつかの実施形態においては、親水性セグメントは荷電モノマーを含んでいてもよく、荷電モノマーとしては、限定するものではないが、メタクリル酸、アクリル酸、3−アクリルアミドプロピオン酸、4−アクリルアミドブタン酸、5−アクリルアミドペンタン酸、3−アクリルアミド−3−メチルブタン酸(AMBA)、N−ビニルオキシカルボニル−α−アラニン、N−ビニルオキシカルボニル−β−アラニン(VINAL)、2−ビニル−4,4−ジメチル−2−オキサゾリン−5−オン(VDMO)、反応性スルホン酸塩(例えば、ナトリウム−2−(アクリルアミド)−2−メチルプロパンスルホネート(AMPS)、3−スルホプロピル(メタ)アクリレートカリウム塩、3−スルホプロピル(メタ)アクリレートナトリウム塩、ビス3−スルホプロピルイタコネート二ナトリウム、ビス3−スルホプロピルイタコネート二カリウム、ビニルスルホネートナトリウム塩、ビニルスルホネート塩、スチレンスルホネート、スルホエチルメタクリレート)、それらの組合せ等が挙げられる。親水性セグメントが少なくとも1種の荷電親水性モノマーを含む実施形態においては、コモノマーとして非荷電親水性モノマーを含むことが望ましいと思われる。
【0035】
別の実施形態においては、親水性セグメントは、ポリ−N−ビニル−2−ピロリドン、ポリ−N−ビニル−2−ピペリドン、ポリ−N−ビニル−2−カプロラクタム、ポリ−N−ビニル−3−メチル−2−カプロラクタム、ポリ−N−ビニル−3−メチル−2−ピペリドン、ポリ−N−ビニル−4−メチル−2−ピペリドン、ポリ−N−ビニル−4−メチル−2−カプロラクタム、ポリ−N−ビニル−3−エチル−2−ピロリドン、ポリ−N−ビニル−4,5−ジメチル−2−ピロリドン、ポリビニルイミダゾール、ポリ−N−N−ジメチルアクリルアミド、ポリ−N−ビニル−N−メチルアセトアミド、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸及びポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、2−ヒドロキシエチルメタクリレートアミド、それらの混合物及びコポリマーからなる群より選択される親水性ポリマーからなる。別の実施形態においては、親水性セグメントは、ポリ−N−ビニル−2−ピロリドン、ポリ−N−N−ジメチルアクリルアミド、ポリ−N−ビニル−N−メチルアセトアミド、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸及びポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、並びに、それらを含むコポリマーからなる群より選択される親水性ポリマーを含む。
【0036】
親水性モノマーは、目的の親水性セグメントの重合度を達成するのに十分な濃度で存在すべきである。親水性モノマーの濃度が高過ぎると重合の際に高粘度になってしまい、混合が困難に、場合によっては不可能となる。したがって、重量パーセントとしては10〜60重量%が好ましく、15〜50重量%が最も好ましい。
【0037】
モノマー/開始剤の比が低過ぎると重合の際にゲル化が起きやすくなり、比が高過ぎると重合が開始しない。したがって、比は、500〜10000が好ましく、800〜7000がより好ましく、1500〜5000が最も好ましい。
【0038】
重合は、希釈せずに行っても溶媒を用いて行ってもよい。好適な溶媒としては、エーテル類、エステル類、アミド類、芳香族及び脂肪族炭化水素類、アルコール類、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、スルホキシド系溶媒、アミド系溶媒及びグリコール系溶媒、並びに、ハロゲン化炭化水素類が挙げられる。これらのうち、ラジカル重合を阻害しにくい点から、より好ましいのは水及びアルコール系溶媒であり、最も好ましいのは水及び第三級アルコール系溶媒である。例としては、t−アミルアルコール、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ヘキサン、塩化メチレン、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド、水、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、tert−ブタノール、3−メチル−3−ペンタノール、3,7−ジメチル−3−オクタノール、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、石油エーテル、ケロシン、リグロイン、パラフィン、アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、フタル酸ジオクチル、二酢酸エチレングリコール、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルスルホキシド、Ν,Ν−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、エチレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、トリエチレングリコールジアルキルエーテル、テトラエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールブロックコポリマー及びポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールランダムコポリマー、並びに、それらの混合物等が挙げられる。これらのうち、ラジカル重合を阻害しにくい点から、より好ましいのは水、tert−ブタノール、tert−アミルアルコール、3−メチル−3−ペンタノール及び3,7−ジメチル−3−オクタノールである。溶媒を用いる場合、約40〜約90%の量で、いくつかの実施形態においては約50〜約85%の量で存在する。
【0039】
温度は、選択した開始剤が活性であり、かつ反応成分(溶媒を使用する場合は溶媒も含む)の凝固点と沸点の間であれば特に限定されない。温度が高過ぎると、ポリマー溶液も過熱してしまい制御が困難となるか又は危険になる恐れがある。温度範囲は、重合開始剤の10時間半減期温度(以下、Tと呼ぶ)〜T+50℃、いくつかの実施形態においてはT〜T+30℃が好適である。
【0040】
好適な反応時間としては約72時間以下が挙げられ、いくつかの実施形態においては約1〜約24時間、他の実施形態においては約2〜約10時間が挙げられる。
【0041】
得られたブロックコポリマーは、蒸留、カラムクロマトグラフィー、沈殿、ブロックコポリマーが不溶な溶媒による不純物の洗浄、GPCによる分留、又は他のいずれかの従来のポリマー単離手段を用いて精製してもよい。
【0042】
ブロックコポリマーは、式(b1)又は(b2)で表わすことができる。
【0043】
【化4】
【0044】
((b1)及び(b2)において、Rはアルキル基及びアルコキシ基より選択される1種の基であり、
は(CH及び(CH−O(CHより選択される1種の基であり、
m及びnは互いに独立して1〜16、より好ましくは2〜10、最も好ましくは2〜5の範囲であり、
aは4〜19、より好ましくは6〜17、最も好ましくは8〜15であり、
bは1〜6、より好ましくは2〜4であり、cは1〜10000、より好ましくは100〜8000、最も好ましくは1000〜6000であり、
XはO、NH及びSより選択される1種の基であり、反応性が高い点でO及びNHがより好ましく、副生成物がより少ない点でOが最も好ましく、
及びRは一般式(n)で表される親水性を有するモノマーからなる基を表す。)
【0045】
【化5】
【0046】
本発明のブロックコポリマーの平均分子量は、約10000〜約3000000、より好ましくは約50000〜約1000000、最も好ましくは約100000〜約600000である。平均分子量が低過ぎると、十分な湿潤性が得られない。一方平均分子量が高過ぎると、ブロックコポリマー溶液の粘度が高くなり過ぎる。別の実施形態においては、本発明のブロックコポリマーは、約0.01〜約5重量%の少なくとも1つの疎水性セグメント及び約95〜約99.99重量%の親水性セグメント、より好ましくは約0.05〜約3重量%の疎水性セグメント及び約97〜約99.95重量%の親水性セグメント、最も好ましくは約0.1〜約1重量%の疎水性セグメント及び約99〜約99.9重量%の親水性セグメントをさらに含む。
【0047】
いくつかの実施形態においては、ブロックコポリマーは、約0.01〜約5重量%の疎水性セグメントと約95〜約99.9重量%の親水性セグメントとを含有する。
【0048】
ブロックコポリマー中のシリコーン(PDMS)ブロックが大きすぎると、親水性モノマーの重合度によってブロックコポリマー全体が親水性であったとしても、ブロックコポリマーの全体的な溶解度は不十分となる。一方、シリコーンセグメントが小さ過ぎると、ブロックコポリマーはポリマー物品に持続的に会合することはなく、物品の有効寿命全体にわたって望ましい利益をもたらすことはない。
【0049】
本発明のブロックコポリマーは、非反応性である。本発明はさらに、高分子材料に関し、またいくつかの実施形態においては、本発明のブロックコポリマーが会合した高分子材料から形成される医療装置に関する。
【0050】
好適な医療装置としては、眼用レンズ、内視鏡、カテーテル、輸液チューブ、気体輸送チューブ、ステント、シース、カフ、チューブコネクター、アクセスポート、排液バッグ、血液回路、創傷被覆材、インプラント及び各種薬剤担体が挙げられるが、コンタクトレンズ、眼用レンズ、涙点プラグ及び人工角膜等の眼用装置に特に好適である。
【0051】
医療装置が眼用装置である場合、コンタクトレンズ、角膜インプラント、涙点プラグ等であってもよい。好適なシリコーンハイドロゲル材料が公知であり使用できる。例えば限定するものではないが、セノフィルコン、ガリフィルコン、ロトラフィルコンA及びロトラフィルコンB、バラフィルコン、コムフィルコン等が挙げられる。ほぼ全てのシリコーンハイドロゲルポリマーが、本発明の親水性ポリマーを用いて処理することができる。例えば限定するものではないが、米国特許第6,637,929号、国際公開第03/022321号、国際公開第03/022322号、米国特許第5,260,000号、米国特許第5,034,461号、米国特許第6,867,245号、国際公開第2008/061992号、米国特許第5,760,100号号、米国特許第7,553,880号に開示されているもの等が挙げられる。
【0052】
本発明はさらに、本発明の少なくとも1つのブロックコポリマーを、接触角、脂質の取り込み又はタンパク質の取り込みの少なくとも1つを減少させるのに十分な量で含む、光学的に透明な水溶液に関する。好適な量としては、約5000ppm以下、約50〜約3000ppm、約100〜約2000ppmが挙げられる。ブロックコポリマーは前記ポリマー物品中に組み入れられてもよく、その量は約0.1ppm〜約30%、より好ましくは約1000ppm〜約25%、最も好ましくは約1%〜約20%である。
【0053】
本発明の親水性ポリマーは、ポリシロキサン、シリコーンハイドロゲル、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン及びそれらの混合物等の各種ポリマーに非共有結合的に会合していてもよい。本実施形態においては、末端ポリシロキサンは疎水性ポリマー成分を含む基体に会合すると考えられる。本実施形態においては、ブロックコポリマーは溶媒に溶解しており、この溶媒はまた基体を膨張させる。ポリマー基体は、ブロックコポリマーを含む溶液と接触する。基体がコンタクトレンズ等のシリコーンハイドロゲル物品の場合、好適な溶媒としては、包装溶液、保存溶液及び洗浄溶液が挙げられる。本実施形態を例とした場合、シリコーンハイドロゲルレンズをブロックコポリマーを含む包装溶液に入れると、親水性ポリマーは、溶液中の全成分に対して、約0.001〜約10%、いくつかの実施形態においては約0.005〜約2%、他の実施形態においては約0.01〜約0.5重量%の量で溶液中に存在する。
【0054】
本発明の包装溶液は、コンタクトレンズの保存に用いられるいずれの水性溶液であってもよい。代表的な溶液としては、限定するものではないが、食塩水、他の緩衝液及び脱イオン水が挙げられる。好ましい水溶液は塩を含有する食塩水であり、塩としては、限定するものではないが、塩化ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、また同塩のカリウム塩が挙げられる。通常これらの成分は混合すると酸とその共役塩基とを含む緩衝液となるため、酸や塩基を加えてもpHには比較的小さな変化しか起きない。緩衝液は、2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、水酸化ナトリウム、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−2,2’,2’’−ニトリロトリエタノール、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸、酢酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸等、及びそれらの組合せをさらに含んでいてもよい。好ましくは、溶液は、ホウ酸緩衝生理食塩水又はリン酸緩衝生理食塩水溶液である。また溶液は、粘度調整剤、抗菌剤、高分子電解質、安定剤、キレート剤、酸化防止剤、それらの組合せ等の公知の追加成分を含んでいてもよい。
【0055】
基体は、潤滑有効量かつ表面湿潤有効量のブロックコポリマーを組み入れるのに十分な条件下でブロックコポリマーと接触する。本明細書で用いる潤滑有効量とは、装置を使用する際に(例えば指の間で装置をこすることによって)手で感じることができるあるレベルの潤滑性を付与するのに必要な量である。さらに本明細書で用いる表面湿潤有効量とは、レンズにあるレベルの高い湿潤性を付与するのに必要な量であり、これは公知の接触角測定法(すなわち液滴法、キャプティブバブル法又は動的接触角測定法)で求められる。装置がソフトコンタクトレンズである一実施形態においては、わずか50ppmの量の親水性ポリマーで、レンズの「感触」が改善され、かつ液滴法により測定される表面接触角が小さくなることがわかっている。約50ppmを超える量、より好ましくは約100ppmを超える量のブロックコポリマー(2mlのDMF:脱イオン水(1:1)溶液中72時間の抽出により測定)であると、感触の改善がより顕著なものとなる。したがって本実施形態においては、ブロックコポリマーは、約5000ppm以下、いくつかの実施形態においては約10〜3000ppm、いくつかの実施形態においては約10〜約2000ppmの濃度で溶液中に含まれていてもよい。包装されたレンズを加熱処理して、レンズ内に浸透して絡合する親水性ポリマーの量を増加させてもよい。好適な加熱処理としては、限定するものではないが、約120℃約20分間で行われオートクレーブで行うことができる従来の加熱殺菌サイクルが挙げられる。加熱殺菌を使用しない場合、包装されたレンズを個別に加熱処理してもよい。個別の加熱処理の好適な温度としては、約40℃以上が挙げられ、約50℃から溶液の沸点の間が好ましい。好適な加熱処理時間としては、約10分以上が挙げられる。温度が高いほど必要となる処理時間は短くなる。
【0056】
一実施形態においては、ポリマー物品は、ヒドロキシル基を含むシリコーンモノマーを含む反応混合物から形成される。
【0057】
ブロックコポリマーによるポリマー物品の処理は、ポリマー全体に対して実施してもよく、表面又は表面の一部のみといった、ポリマーの一部のみに対して実施してもよい。
【実施例】
【0058】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
分析方法
【0059】
(1)GPC測定
GPC測定は、以下の条件にて行った。
機器:東ソー株式会社
カラム:TSKgel SUPER HM H、2カラム(粒径;5μm、6.0mmID×15cm)
移動相:N−メチルピロリドン(10mM LiBr)
カラム温度:40℃
測定時間:40分
注入量:10μL
検出器:RI検出器
流速:0.2mL/分
試料濃度:0.4重量%
標準試料:ポリスチレン(分子量500〜109万)
【0060】
(2)透過率測定
2000ppmのブロックコポリマーを溶解させた包装溶液を石英セルに入れ、スガ試験機株式会社製カラーコンピュータ(SM7−CH型)にて透過率を測定した。
【0061】
(3)接触角測定
レンズの湿潤性は、室温でKRUSS DSA−100 TM機器を用い、プローブ溶液として脱イオン水を用いて測定し、液滴法により求めた。試験するレンズ(3〜5/試料)を脱イオン水中ですすいで包装溶液の残渣を除去した。各試験用レンズを、「くぼみ側を下」にしてレンズホルダーの凸面に設置し、シリンジが正確に中央になるように位置を揃え、シリンジが指定の液体に対応していることを確認した。吸取紙(ガラス板上の乾燥ワットマン#1濾紙)を、20秒間下方への圧力を加えずにレンズに静かに置く。DSA 100−Drop Shape Analysisソフトウェアを用いて、3〜4マイクロリットルの脱イオン水の液滴を、確実にレンズから離れて垂れているようにシリンジの先端に形成させた。針を下に動かして液滴をレンズ表面に滑らかに放った。針は、液滴を分注した後直ちに回収した。液滴をレンズ上で5〜10秒間平衡に保ち、測定した液滴像とレンズ表面との接触角を基に接触角を算出した。
【0062】
(4)脂質の取り込み
調査対象の各レンズタイプについて標準曲線を設定した。タグ付きコレステロール(NBD([7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール−4−イル]で標識化されたコレステロール、CH−NBD;アヴァンティ社(Avanti)、アラバマ州アラバスター))を、35℃の脂質/メタノール(1mg/mL)の原液中で可溶化した。この原液からアリコートを取り出して、pH7.4、濃度範囲0〜100micg/mLのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中における標準曲線を作成した。
【0063】
各濃度の1ミリリットルの標準を24ウェル細胞培養プレートのウェルに入れた。各タイプのレンズを10個、別の24ウェルプレートに入れ、1mLの濃度20micg/mlのCH−NBD中の標準曲線試料と並べて浸漬した。レンズ自体が発するあらゆる自己蛍光を補正するため、別のレンズのセット(レンズ5個)を脂質の入っていないPBSに浸漬した。全ての濃度に関して、pH7.4のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中にて実施した。標準曲線、試験プレート(CH−NBDに浸漬したレンズを含む)及び対照プレート(PBSに浸漬したレンズを含む)を全てアルミ箔に包んで暗黒を維持し、35℃で撹拌しながら24時間インキュベートした。24時間後、標準曲線、試験プレート及び対照プレートをインキュベーターから取り出した。標準曲線プレートは、マイクロプレート蛍光リーダー(シナジーHT(Synergy HT))で直ちに読み取った。
【0064】
試験プレート及び対照プレートから取り出した各レンズを、それぞれ別々に3〜5回、約100mlのPBSを含む3つの連続したバイアルに浸してすすぎ、脂質のキャリーオーバーがなく結合した脂質のみで測定できるようにした。
【0065】
次いで各レンズを、各ウェルに1mLのPBSを含む未使用の24ウェルプレートに入れ、蛍光リーダーで読み取った。試験試料を読み取った後、PBSを除去し、1mLの未使用のCH−NBD溶液を、前述と同じ濃度にて各レンズ上に置き、35℃のインキュベーターに戻し、振動させながら次の段階まで置いた。この操作を、レンズ上で脂質が完全に飽和するまで15日間繰り返した。飽和状態で得られた脂質量のみを報告した。
【0066】
実施例1
4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)1.68g(6mmol)、4−ジメチルアミノピリジン1.83g(15mmol)、Ν,Ν−ジシクロヘキシルカルボジイミド3.0g(15mmol)及びアセトン40mLを、塩化カルシウム管を備えた200mL三つ口フラスコに、窒素ガスを通じながら加えた。一方の末端にヒドロキシル基を有し下記式(a2)で表されるポリジメチルシロキサン(チッソ株式会社製FM−0411、Mw:1000)8.58g(9mmol)をこの溶液に滴加し、室温で6時間撹拌した。
【0067】
【化6】
【0068】
沈殿した固体を濾別し、得られた濾液にヘキサンを加えた後、濾液を0.5N HClで2回、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で2回、さらに飽和塩化ナトリウム水溶液で1回洗浄した。硫酸ナトリウムで有機相を乾燥させて濾過した後、濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラム(シリカゲル180g、ヘキサン/酢酸エチル=100/0→10/1(v/v)、各400mL)を用いて精製し、5.18gの標的シリコーンマクロ開始剤を得た。
【0069】
実施例2
4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)1.40g(5mmol)、一方の末端にアミノ基を有し下記式(a3)で表されるポリジメチルシロキサン(チッソ株式会社製、FM0311、Mw:1000)9.1g(9.1mmol)、4−ジメチルアミノピリジン0.67g(5.5mmol)及びアセトン50mLを、塩化カルシウム管を備えた200mL三つ口フラスコに窒素ガスを通じながら加えた。
【0070】
【化7】
【0071】
Ν,Ν−ジイソプロピルカルボジイミド1.70mL(11mmol)をこの混合溶液に滴加した。周囲温度で6時間撹拌後、沈殿した固体を濾別し、得られた濾液にヘキサンを加えた後、濾液を0.5N HClで2回、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で2回、さらに飽和塩化ナトリウム水溶液で1回洗浄した。硫酸ナトリウムで有機相を乾燥させ、濾過し、濃縮した後、粗生成物をシリカゲルカラム(シリカゲル180g、ヘキサン/酢酸エチル=10/1→3/1→2/1、各300mL)を用いて精製し、1.89gの標的シリコーンマクロ開始剤を得た。
【0072】
比較例1
一方の末端にヒドロキシル基を含むポリジメチルシロキサン(a2)に代えて、同じ構造であるが分子量がより大きいポリジメチルシロキサン(チッソ株式会社製、FM−0421、Mw:5000)を用いた以外は、実施例1と同様の方法を用いてシリコーン部分の分子量が5000のシリコーンマクロ開始剤を得た。得られたシリコーンマクロ開始剤を、実施例1に記載のように精製した。
【0073】
比較例2
一方の末端にヒドロキシル基を含むポリジメチルシロキサン(a2)に代えて、同じ構造であるが分子量がより大きいポリジメチルシロキサン(チッソ株式会社製、FM−0425、Mw:10000)を用いた以外は、実施例1と同様の方法を用いてシリコーン部分の分子量が10000のシリコーンマクロ開始剤を得、次いで精製した。
【0074】
実施例3
N−ビニルピロリドン(NVP、29.56g、0.266mol)、実施例1により得られた下記式(a4)で表されるシリコーンマクロ開始剤(シリコーン部分のMwが1000、0.19g、0.0866mmol)及びt−アミルアルコール(TAA、69.42g)を200mL三つ口フラスコに加えた後、三方コック、温度計及び機械式撹拌機を装着した。
【0075】
【化8】
【0076】
三つ口フラスコの内部を真空ポンプで真空にした後、アルゴンで置換、を3回行い、その後70℃に昇温した。温度が安定し、発熱が起きていないことを確認した後、75℃に昇温し、試料を6時間撹拌した。
【0077】
重合完了後、温度を室温に冷却し、次いで試料をn−ヘキサン/エタノール=500mL/40mLに流し込み、静置した。上澄み液をデカントすることにより取り除いた後、n−ヘキサン/エタノール=500mL/20mLで洗浄を2回行った。得られた固体留分を真空乾燥機中で40℃で16時間乾燥させた後、液体窒素を加え、試料をスパチュラで押しつぶし、次いでジッパー付きの袋に移した。真空乾燥機を用いて40℃で3時間乾燥を行い、ブロックコポリマーを得た。得られたブロックコポリマーの分子量は、表1に示す通りである。
【0078】
実施例4〜10
実施例3の手順に従うが、表1に示す量の成分を用いてさらにブロックコポリマーを形成した。得られたブロックコポリマーの分子量は、表1に示す通りである。
【0079】
実施例11
N−ビニルピロリドン(NVP、31.12g、0.28mol)、実施例1により得られた下記式(a5)で表されるシリコーンマクロ開始剤(シリコーン部分のMwが1000、0.15g、0.07mmol)及びt−アミルアルコール(TAA、72.96g)を200mL三つ口フラスコに加えた後、三方コック、温度計及び機械式撹拌機を装着した。
【0080】
【化9】
【0081】
三つ口フラスコの内部を真空ポンプで真空にした後、アルゴンで置換、を3回行い、その後70℃に昇温した。温度が安定し、発熱が起きていないことを確認した後、75℃に昇温し、試料を6時間撹拌した。
【0082】
重合完了後、温度を室温に冷却し、次いで試料をn−ヘキサン/エタノール=600mL/20mLに流し込み、静置した。上澄み液をデカントすることにより取り除いた後、n−ヘキサン/エタノール=500mL/20mLで洗浄を2回行った。得られた固体留分を真空乾燥機中で40℃で16時間乾燥させた後、液体窒素を加え、試料をスパチュラで押しつぶし、次いでジッパー付きの袋に移した。真空乾燥機を用いて40℃で3時間乾燥を行い、ブロックコポリマーを得た。得られたブロックコポリマーの分子量は、表1に示す通りである。
【0083】
実施例12〜13
実施例11の手順に従うが、表1に示す量の成分を用いてさらにブロックコポリマーを形成した。得られたブロックコポリマーの分子量は、表1に示す通りである。
【0084】
比較例3
重合開始剤を比較例1のシリコーンマクロ開始剤(シリコーン部分の分子量(Mw):5000)に代え、用いた成分の量が表1に示す通りであること以外は、実施例3と同様の方法で重合を行った。得られたブロックコポリマーの分子量は、表1に示す通りである。
【0085】
比較例4及び5
重合開始剤を比較例2のシリコーンマクロ開始剤(シリコーン部分の分子量(Mw):10000)に代え、用いた成分の量が表1に示す通りであること以外は、実施例3と同様の方法で重合を行った。得られたブロックコポリマーの分子量は、表1に示す通りである。
【0086】
【表1】
【0087】
実施例14
NVPをΝ,Ν−ジメチルアクリルアミド(DMA)に代え、用いた成分の量が表2に示す通りであること以外は、実施例3と同様の方法で重合を行った。得られたブロックコポリマーの分子量は、表2に示す通りである。
【0088】
実施例15〜16
実施例14の手順に従うが、表2に示す量の成分を用いてさらにブロックコポリマーを形成した。得られたブロックコポリマーの分子量は、表2に示す通りである。
【0089】
【表2】
【0090】
実施例17
実施例3〜8及び11〜14、並びに、比較例3〜5で得られたブロックコポリマーを、包装溶液中に濃度2000ppmで溶解させた。得られた溶液の透過率を測定し、表3に示した。
【0091】
【表3】
【0092】
表3に示す通り、2000ppmであっても、実施例3〜8及び11〜14のコポリマーは全て透明な溶液を形成した。シロキサンセグメントの分子量が約5000を上回った場合(比較例3〜5)、2000ppm溶液の透過率は低下し、透明な溶液を得ることができなかった。
【0093】
実施例18
ハイドラクリアプラステクノロジーを採用したアキュビューオアシスコンタクトレンズ(セノフィルコンA)を、実施例3、9及び10で得られた2000ppmのブロックコポリマーを溶解させた包装溶液に浸漬した後、ブロックコポリマーを含まない包装溶液に24時間浸漬した。試料を取り出し、接触角を測定した。結果を表4に示す。脂質の取り込み試験も行った。結果を表4に示す。全てのレンズにおいて、ブロックコポリマーに浸漬しないレンズに比べて脂質の取り込みが減っていることがわかった。
【0094】
【表4】