(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記粒子配列工程が、水槽内の水の液面に水よりも比重が小さい溶剤中に粒子が分散した分散液を滴下する滴下工程と、前記溶剤を揮発させることにより前記粒子からなる単粒子膜を水の液面上に形成する単粒子膜形成工程と、前記単粒子膜を基板に移し取る移行工程とを有する請求項1に記載の半導体発光素子用基板の製造方法。
前記粒子配列工程が、水槽内の水の液面に水よりも比重が小さい溶剤中に粒子が分散した分散液を滴下する滴下工程と、前記溶剤を揮発させることにより前記粒子からなる単粒子膜を水の液面上に形成する単粒子膜形成工程と、前記単粒子膜を基板に移し取る移行工程とを有する請求項7に記載の半導体発光素子用基板の製造方法。
請求項1〜9のいずれか一項に記載の製造方法により発光素子用基板を得る工程と、得られた発光素子用基板の凹凸構造が形成された面に、少なくとも発光層を含む半導体機能層を積層する工程を備える半導体発光素子の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1実施形態]
<半導体発光素子用基板>
図1、2を用いて、本発明の一実施形態に係る半導体発光素子用基板11について説明する。
図1に示すように、半導体発光素子用基板11は基板の一方の面に凹凸構造を有している。
【0016】
基板表面の凹凸構造は多数の凸部c11〜c1nを有している。また、各凸部の間は平坦面f11〜f1nとなっている。
図1におけるt11〜t1nは各凸部c11〜c1nの中心点である。AFM(原子間力顕微鏡)の測定結果に基づき、基準面と平行に各凸部について20nm毎に複数の等高線を引き、各等高線の重心点(x座標とy座標で決定される点)を求める。これらの各重心点の平均位置(各x座標の平均とy座標の平均で決定される位点)が、前記凸部の中心点である。
図1におけるm11〜m1nは、AFMで求めた隣接する中心点の中点である。また、平坦面f11〜f1nは、AFMの測定結果に基づき、その領域内の中点における表面高さと、その領域内における任意の点の表面高さとを結ぶ直線の、AFMの基準面に対する傾きが±10゜以下である領域である。
【0017】
各平坦面f11〜f1nの周辺は、凹凸構造の最頻ピッチPが1μm以下の場合は、各中点m1〜mnから、2nm〜300nmの距離にあることが好ましく、5nm〜100nmの距離にあることがより好ましい。凹凸構造の最頻ピッチPが1μm超の場合は、各平坦面f11〜f1nの周辺が、各中点m11〜m1nから、100nm〜3000nmの距離にあることが好ましく、200nm〜2000nmの距離にあることがより好ましい。
各平坦面の周辺と各中点との距離が好ましい下限値以上であれば、充分な平坦面の面積が確保され、基板上でに半導体層を安定してエピタキシャル成長させやすい。また、各平坦面の周辺と各中点との距離が好ましい上限値以下であれば、充分な密度で凸部を形成して、光取り出し効率向上の効果を得やすい。
また、各平坦面f11〜f1nは、以下のような配置となるように凸部c11〜c1nを形成する。凸部c11〜c1nの頂点を通り、基板に垂直な断面、即ち
図1に示す断面で見たときの平坦面f11〜f1nの長さが、凸部c11〜c1nのうちの隣り合う二つの凸部の頂点同士を結ぶ直線に対し、5%〜40%、好ましくは15%〜25%となるよう凸部c11〜c1nが形成される。
【0018】
凸部の形状としては、円錐、円錐台、円錐の斜面が外側に膨出したタケノコ状や半球状、円錐台の斜面が外側に膨出した形状(タケノコ状や半球状の頂部を切断した形状)等が挙げられる。
凹凸構造の最頻ピッチPは、100nm〜5μmが好ましく、100nm〜1μmがより好ましく、200nm〜700nmの範囲がさらに好ましく、300nm〜600nmの範囲が特に好ましい。最頻ピッチPが好ましい範囲内であれば、光の全反射を防止しやすい。特に、最頻ピッチPが1μm以下であると、青〜紫外の光取り出し効率をより効果的に高めることが可能である。そのため、GaNやInGaNなどの成膜を行って発光波長が青〜紫外の領域の半導体発光素子に使用する基板の凹凸構造として好適である。
【0019】
最頻ピッチPは、具体的には次のようにして求められる。
まず、凹凸面における無作為に選択された領域で、一辺が最頻ピッチPの30〜40倍の正方形の領域における基板面と平行な面をAFM基準面とし、当前記正方形の領域について、AFMイメージを得る。例えば、最頻ピッチが300nm程度の場合、9μm×9μm〜12μm×12μmの領域のイメージを得る。そして、このイメージをフーリエ変換により波形分離し、FFT像(高速フーリエ変換像)を得る。ついで、FFT像のプロファイルにおける0次ピークから1次ピークまでの距離を求める。こうして求められた距離の逆数がこの領域における最頻ピッチPである。このような処理を無作為に選択された合計25カ所以上の同面積の領域について同様に行い、各領域における最頻ピッチを求める。こうして得られた25カ所以上の領域における最頻ピッチP
1〜P
25の平均値が最頻ピッチPである。なお、この際、各領域同士は、少なくとも1mm離れて選択されることが好ましく、より好ましくは5mm〜1cm離れて選択される。
【0020】
凸部の最頻高さHは、50nm〜5μmの間で調整されることが好ましい。特に最頻ピッチPが1μm以下である場合においては、凸部の最頻高さHが50nm以上1μm以下であることが好ましく、100nm以上700nm以下であることが更に好ましい。
最頻高さHが好ましい範囲内であれば、その後成膜される窒化化合物の成膜欠陥が低減され、更には光の全反射を防止し、光取り出し効率を改善することができる。
凸部の最頻高さHは、具体的には次のようにして求められる。
まず、AFMイメージから、任意の方向と位置における長さ1mmの線に沿った凸部c11〜c1nの頂点を通り、基板に垂直な断面、即ち
図1のような断面を得る。この断面の凸部が30個以上含まれる任意の部分を抽出し、その中に含まれる各凸部について、その頂点の高さと、当前記凸部に隣接する凸部との間の平坦部における最も低い位置の高さとの差を求める。得られた値を有効桁数2桁で丸め各凸部の高さとし、その最頻値を最頻高さHとする。
【0021】
半導体発光素子用基板11は、
図2に示すように複数のエリアC
11〜C
1nを有している。
各エリアC
11〜C
1nは、隣接する7つの凸部の中心点が正六角形の6つの頂点と対角線の交点となる位置関係で連続して整列している領域である。なお、
図2では、各凸部の中心点の位置を、便宜上、その中心点を中心とする円u1で示している。円u1は、
図1に示すように、各凸部だけでなく、その周辺の平坦面を含む領域に相当する。
本実施形態において、隣接する7つの凸部の中心点が正六角形の6つの頂点と対角線の交点となる位置関係とは、具体的には、以下の条件を満たす関係をいう。
まず、1つの中心点t11から、隣接する中心点t12の方向に長さが最頻ピッチPと等しい長さの線分L1を引く。次いで中心点t11から、線分L1に対して、60゜、120゜、180゜、240゜、300゜の各方向に、最頻ピッチPと等しい長さの線分L2〜L6を引く。中心点t11に隣接する6つの中心点が、中心点t11と反対側における各線分L1〜L6の終点から、各々最頻ピッチPの15%以内の範囲にあれば、これら7つの中心点は、正六角形の6つの頂点と対角線の交点となる位置関係にある。
【0022】
各エリアC
11〜C
1nの最頻面積Q(各エリア面積の最頻値)は、以下の範囲であることが好ましい。
最頻ピッチPが500nm未満の時、10mm×10mmのAFMイメージ測定範囲内における最頻面積Qは、0.026μm
2〜6.5mm
2であることが好ましい。
最頻ピッチPが500nm以上1μm未満の時、10mm×10mmのAFMイメージ測定範囲内における最頻面積Qは、0.65μm
2〜26mm
2であることが好ましい。
最頻ピッチPが1μm以上の時、50mm×50mmのAFMイメージ測定範囲内における最頻面積Qは、2.6μm
2〜650mm
2であることが好ましい。
最頻面積Qが好ましい範囲内であれば、光のカラーシフトや面内異方性が高くなる問題を防止しやすい。
【0023】
また、各エリアC
11〜C
1nは、
図2に示すように、面積、形状及び格子方位がランダムである。なお、ここでいうエリアC
11〜C
1nの格子方位とは、基板の上面から見た場合、同一エリア内で近接する凸部の頂点を結んで得られる基本並進ベクトル(三角格子の場合は2つ存在する)の方向のことをいう。
面積のランダム性の度合いは、具体的には、以下の条件を満たすことが好ましい。
まず、ひとつのエリアの境界線が外接する最大面積の楕円を描き、その楕円を下記式(α)で表す。
X
2/a
2+Y
2/b
2=1・・・・・・(α)
最頻ピッチPが500nm未満の時、10mm×10mmのAFMイメージ測定範囲内におけるπabの標準偏差は、0.08μm
2以上であることが好ましい。
最頻ピッチPが500nm以上1μm未満の時、10mm×10mmのAFMイメージ測定範囲内におけるπabの標準偏差は、1.95μm
2以上であることが好ましい。
最頻ピッチPが1μm以上の時、50mm×50mmのAFMイメージ測定範囲内におけるπabの標準偏差は、8.58μm
2以上であることが好ましい。
πabの標準偏差が好ましい範囲内であれば、回折光の平均化の効果が優れる。
【0024】
また、各エリアC
11〜C
1nの形状のランダム性の度合いは、具体的には、前記式(α)におけるaとbの比、a/bの標準偏差が0.1以上であることが好ましい。
また各エリアC
11〜C
1nの格子方位のランダム性は、具体的には、以下の条件を満たすことが好ましい。
まず、任意のエリア(I)における任意の隣接する2つの凸部の中心点を結ぶ直線K0を画く。次に、前記エリア(I)に隣接する1つのエリア(II)を選択し、そのエリア(II)における任意の凸部と、その凸部に隣接する6つの凸部の中心点を結ぶ6本の直線K1〜K6を画く。直線K1〜K6が、直線K0に対して、いずれも3度以上異なる角度である場合、エリア(I)とエリア(II)との格子方位が異なる、と定義する。
エリア(I)に隣接するエリアの内、格子方位がエリア(I)の格子方位と異なるエリアが2以上存在することが好ましく、3以上存在することが好ましく、5以上存在することがさらに好ましい。
【0025】
半導体発光素子用基板11の凹凸構造は、格子方位が各エリアC
11〜C
1nの内では揃っているが、巨視的には揃っていない多結晶構造のような配置となっている。巨視的な格子方位のランダム性は、FFT(高速フーリエ変換)基本波の最大値と最小値の比で評価できる。FFT基本波の最大値と最小値の比は、AFM像を取得し、その2次元フーリエ変換像を求め、基本波の波数だけ原点から離れた円周を作図し、この円周上の最も振幅の大きい点と最も振幅の小さな点を抽出し、その振幅の比として求める。この際のAFM像の取得方法は、最頻ピッチPを求める際のAFM像の取得方法と同じである。
FFT基本波の最大値と最小値の比が大きい凹凸構造は、格子方位が揃っており、凹凸構造を2次元結晶とみなした場合単結晶性が高い構造配置と言える。反対に、FFT基本波の最大値と最小値の比が小さい凹凸構造は、格子方位が揃っておらず、凹凸構造を2次元結晶とみなした場合は多結晶構造のような配置であると言える。
【0026】
半導体発光素子用基板11の凹凸構造が、上記好ましい範囲のFFT基本波の最大値と最小値の比を有する場合、特定の面内方向に回折光が放射されることはなく、均等に回折光が放射される。そのため、半導体発光素子の放射強度が、見る角度によって異なることはない。言い換えれば、面内放射異方性が低い半導体発光素子を得ることができる。
また、半導体発光素子においてカラーシフトが発生することも防止できる。カラーシフトは見る角度によっては色が異なる現象である。たとえば、光が蛍光体により波長変換されたのち素子内で光が再び半導体発光素子用基板11の凹凸構造による回折を行う場合(上面に反射電極を設け3原色蛍光体により紫外光を白色に変換するボトムエミッション型の白色LEDなど)、回折光が元のスペクトルに重なり、特定の波長が強められる結果生じる。
上記好ましい範囲のFFT基本波の最大値と最小値の比を有する凹凸構造であれば、回折光の出射する角度が偏らないようにできるため、カラーシフトを抑制できる。
【0027】
半導体発光素子用基板11は、凹凸構造が適度なランダム性を持つ。そのため、充分な光取り出し効率が得られると共に回折光を平均化することによってカラーシフトや面内異方性が高くなる問題を防止できる。また、凸部と凸部の間が平坦面とされているので、半導体層を安定して成長させることができる。
【0028】
<半導体発光素子用基板の製造方法>
本実施形態の半導体発光素子用基板の製造方法は、基板に複数の粒子を配列させる粒子配列工程と、前記粒子がエッチングされ、前記基板が実質的にエッチングされない条件で、前記配列した複数の粒子をドライエッチングして粒子間に間隙を設ける粒子エッチング工程と、前記粒子エッチング工程後の複数の粒子をエッチングマスクとして前記基板をドライエッチングし、前記基板の一方の面に凹凸構造を形成する基板エッチング工程とを備える。
以下、本実施形態の半導体発光素子用基板の製造方法に用いる基板(加工前基板)について説明した後、各工程を
図3A〜
図3Dに添って順次説明する。なお、
図3A〜
図3Dでは、説明の便宜上、粒子Mと基板Sに形成される凹凸を極端に拡大している。
【0029】
[基板]
基板の材質としては、サファイア、SiC、Si、MgAl
2 O
4 、LiTaO
3 、LiNbO
3 、ZrB
2 、GaAs、GaP、GaN、AlN 、AlGaN、InP、InSn、InAlGaN、又はCrB
2 等の材料から成る板材を用いることができる。中でも、機械的安定性、熱安定性、光学安定性、化学的安定性、また光透過性を有する点で、サファイアが好ましい。
【0030】
本実施形態の半導体発光素子用基板の製造方法には、平坦性の高い基板だけでなく、平坦性の低い基板にも、所望の凹凸構造を精度良く形成することが可能である。本実施形態で用いる単粒子膜は、基板にある程度の凹凸があっても追従して製膜されるため、平坦性の低い基板でも精度良く単層で均一な単粒子膜マスクを製膜することが可能だからである。
具体的には、ASTM F657で規定される最大厚み及び最小厚みの間の絶対差(TTV)が5μm〜30μm、ASTM F1390規定される基準面からのズレの最大値と最小値の差(WARP)が10μm〜50μm、ASTM F534.3.1.2で規定される基板の中心部での基準面からの隔たりの絶対値(|BOW|)が10μm〜50μmである基板を使用しても、下式(3)を満たす半導体発光素子用基板を得ることができる。
【0031】
H’=(2.5±0.5)P^(−0.4±0.1)±1.5・・・(3)
ここで、H’は凹凸構造の高さの変動係数、Pは本実施形態により基板に形成される凹凸構造の最頻ピッチ(μm)である。
変動係数H’は一般的に次のようにして求められる。まず、最頻高さHを前述のように求め、次に平均値μ=ΣH/n(ΣH:データ数の総和、n=データ数)、ならびに標準偏差σ=((Σ(H−μ)^2)/n)^(1/2)を求めた後に、変動係数H’=σ/μ×100が求められる。また、最頻ピッチPの求め方は、前述の通りである。本実施形態については、各ピッチにつき変動係数を求めた後に、縦軸に変動係数、横軸にピッチをとることで、経験式(3)を得た。
半導体発光素子用基板の凹凸構造が式(3)を満たせば、その後成膜される窒化化合物の成膜欠陥が低減され、さらには光の全反射を防止し、光取り出し効率を改善することが可能となる。成膜欠陥が低減される条件としては、変動係数H’が10%以下の条件であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、3%以下であることがさらに好ましい。本実施形態では、TTVが5μm〜30μm、WARPが10μm〜50μm、|BOW|が10μm〜50μmの範囲内における平坦性の低い基板を使用しても、式(3)が基板全面について、常に成り立つことを見出している。一方、従来法であるフォトリソグラフィー法による半導体発光素子基板によれば、マスクとして用いるフォトレジストの厚さにもよるが、基板全面において、上記TTV、WARP、|BOW|の範囲において、変動係数H’を10%以下にすることは困難である。
【0032】
[粒子配列工程]
粒子配列工程では、
図3Aに示すように、基板S
1の一方の面である平坦面Xに複数の粒子M
1を単一層で配列させる。すなわち、粒子M
1の単粒子膜を形成する。
粒子M
1は無機粒子であることが好ましいが、条件によっては有機高分子材料なども使用できる。無機粒子であれば、粒子エッチング工程において基板Mが実質的にエッチングされない条件で容易にエッチングできる。
無機粒子としては、例えば、酸化物、窒化物、炭化物、硼化物、硫化物、セレン化物及び金属等の化合物からなる粒子および金属粒子等を使用することができる。有機粒子としては、ポリスチレン、PMMA等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂等が使用可能である。
【0033】
酸化物として用いることができるものとしては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、セリア、酸化亜鉛、酸化スズ及びイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)等が挙げられ、さらに、これらの構成元素を他元素で部分置換したものも使用できる。
窒化物として用いることができるものとしては、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化硼素等が挙げられ、さらに、これらの構成元素を他元素で部分置換したものも使用できる。
例えば、シリコンとアルミニウムと酸素と窒素からなるサイアロン等の化合物も用いることができる。
炭化物として用いることができるものとしては、SiC、炭化硼素、ダイヤモンド、グラファイト、フラーレン類等が挙げられ、さらに、これらの構成元素を他元素で部分置換したものも用いることができる。
【0034】
硼化物として用いることができるものとしては、ZrB
2、CrB
2等が挙げられ、さらに、これらの構成元素を他元素で部分置換したものも用いることができる。
硫化物として用いることができるものとしては、硫化亜鉛、硫化カルシウム、硫化カドミウム、硫化ストロンチウム等が挙げられ、さらに、これらの構成元素を他元素で部分置換したものも用いることができる。
セレン化物として用いることができるのもとしては、セレン化亜鉛、セレン化カドミウム、等が挙げられ、さらに、これらの構成元素を他元素で部分置換したものも用いることができる。
金属として用いることができるものとしては、Si、Ni、W、Ta、Cr、Ti、Mg、Ca、Al、Au、AgおよびZnからなる群より選ばれる1種類以上の金属からなる粒子を用いることができる。
【0035】
上記の無機粒子は、それぞれ単独で粒子M
1として用いることができる他、これらの無機粒子を混合したものを粒子Mとして用いることもできる。また、窒化物からなる無機粒子を酸化物で被覆したような被覆粒子も粒子M
1として用いることができる。さらに、上記無機粒子中にセリウムやユーロピウムなどの付活剤を導入した蛍光体粒子を粒子M
1として用いることができる。
また、粒子M
1は、互いに異なる材料からなる2種類以上の粒子の混合物であってもよい。また、粒子M
1は、互いに異なる材料からなる積層体であってもよく、例えば、無機窒化物からなる無機粒子が、無機酸化物によって被覆された粒子であってもよい。
上記無機粒子を構成する化合物の中でも、形状安定性の点で酸化物が好ましく、その中でもシリカがより好ましい。
【0036】
粒子配列工程では、下記式(1)で定義される配列のずれD(%)が15%以下となるように、基板S
1に複数の粒子M
1を単一層で配列させる。
D[%]=|B−A|×100/A・・・(1)
但し、式(1)中、Aは粒子M
1の平均粒径、Bは粒子M
1間の最頻ピッチである。また、|B−A|はAとBとの差の絶対値を示す。
ずれDは、0.5%以上15%以下であることが好ましく、1.0%以上10%以下であることがより好ましく、1.0%〜3.0%であることが更に好ましい。
【0037】
ここで粒子M
1の平均粒径Aとは、単粒子膜を構成している粒子M
1の平均一次粒径のことであって、粒子動的光散乱法により求めた粒度分布をガウス曲線にフィッティングさせて得られるピークから常法により求めることができる。
一方、粒子M間のピッチとは、シート面方向における隣り合う2つの粒子M
1の頂点と頂点の距離であり、粒子M
1間の最頻ピッチBとはこれらの最頻値である。なお、粒子M
1が球形で隙間なく接していれば、隣り合う粒子M
1の頂点と頂点との距離は、隣り合う粒子M
1の中心と中心の距離と等しい。
本実施形態の半導体発光素子用基板の凹凸構造のピッチは粒子M
1間のピッチを反映したものとなるので、好ましい粒子M
1間の最頻ピッチBは、本実施形態の半導体発光素子用基板の凹凸構造における好ましい最頻ピッチPと同じである。すなわち、粒子M
1間の最頻ピッチBは、100nm〜5μmが好ましく、100nm〜1μmがより好ましく、200nm〜700nmの範囲がさらに好ましく、300nm〜600nmの範囲が特に好ましい。
【0038】
粒子M
1間の最頻ピッチBは、具体的には次のようにして求められる。
まず、単粒子膜における無作為に選択された領域で、一辺が粒子M
1間の最頻ピッチBの30倍〜40倍のシート面と平行な正方形の領域について、AFMイメージを得る。例えば粒径300nmの粒子M
1を用いた単粒子膜の場合、9μm×9μm〜12μm×12μmの領域のイメージを得る。そして、このイメージをフーリエ変換により波形分離し、FFT像(高速フーリエ変換像)を得る。ついで、FFT像のプロファイルにおける0次ピークから1次ピークまでの距離を求める。こうして求められた距離の逆数がこの領域における最頻ピッチB
1である。このような処理を無作為に選択された合計25カ所以上の同面積の領域について同様に行い、各領域における最頻ピッチB
1〜B
25を求める。こうして得られた25カ所以上の領域における最頻ピッチB
1〜B
25の平均値が式(1)における最頻ピッチBである。なお、この際、各領域同士は、少なくとも1mm離れて選択されることが好ましく、より好ましくは5mm〜1cm離れて選択される。
また、この際、FFT像のプロファイルにおける1次ピークの面積から、各イメージについて、その中の粒子M間のピッチのばらつきを評価することもできる。
【0039】
この配列のずれDは、粒子M
1の最密充填の度合いを示す指標である。すなわち、粒子の配列のずれDが小さいことは、最密充填の度合いが高く、粒子の間隔が制御されており、その配列の精度が高いことを意味する。
配列のずれD(%)を15%以下とするため、粒子M
1の粒径の変動係数(標準偏差を平均値で除した値)は、20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、5%以下であることがさらに好ましい。
後述のように、本実施形態によって基板S
1に設けられる凹凸構造のピッチ(凸部の中心点のピッチ)は、粒子M
1間の最頻ピッチBと同等となる。配列のずれD(%)が小さければ、凹凸構造のピッチは、粒子M
1の平均粒径Aとほぼ同等となるので、粒子M
1の平均粒径Aを適切に選択することにより、所望のピッチの凹凸構造を精度良く形成することができる。
【0040】
また、凸部c11〜c1nの底面の最頻寸法Rに対する最頻高さHをアスペクト比とした場合、凸部c11〜c1nのアスペクト比は、0.5〜1.0である。凸部c11〜c1nの底面とは、平坦面f1nと凸部c1nとの境界に囲まれる面である。凸部c11〜c1nの底面の寸法R11〜R1nは、中心点t1nを通る直線において、平坦面f1nと凸部c1nとの境界と交差する二つの点の距離である。最頻寸法Rは、以下のように算出することができる。
まず、AFMイメージから、凸部c1nが30個以上含められる任意の部分を抽出し、その中に含まれる各c1nについて上記方法で凸部の底面の寸法を求め、得られた値を有効桁数2桁で丸め、各凸部c1nの底面直径R11〜R1nとし、その最頻値を最頻寸法Rとする。
【0041】
凸部c11〜c1nのアスペクト比を0.5〜1.0とすることにより、凸部c11〜c1n間に光が閉じ込められ難くなり、光取り出し効率が向上する。
【0042】
[LB法による粒子配列工程]
粒子配列工程は、いわゆるLB法(ラングミュア−ブロジェット法)の考え方を利用した方法により行うことが好ましい。
具体的には、水槽内の水の液面に水よりも比重が小さい溶剤中に粒子が分散した分散液を滴下する滴下工程と、溶剤を揮発させることにより粒子からなる単粒子膜を形成する単粒子膜形成工程と、単粒子膜を基板に移し取る移行工程とを有する方法により粒子配列工程を行うことが好ましい。
この方法は、単層化の精度、操作の簡便性、大面積化への対応、再現性などを兼ね備える。例えばNature, Vol.361, 7 January, 26(1993)などに記載されている液体薄膜法や特開昭58−120255号公報などに記載されているいわゆる粒子吸着法に比べて非常に優れ、工業生産レベルにも対応できる。
LB法による粒子配列工程について、以下に具体的に説明する。
【0043】
(滴下工程および単粒子膜形成工程)
まず、水よりも比重が小さい溶剤中に、粒子M
1を加えて分散液を調製する。一方、水槽(トラフ)を用意し、これに、その液面上で粒子M
1を展開させるための水(以下、下層水という場合もある。)を入れる。
粒子M
1は、表面が疎水性であることが好ましい。また、溶剤としても疎水性のものを選択することが好ましい。疎水性の粒子M
1及び溶剤と下層水とを組み合わせることによって、後述するように、粒子M
1の自己組織化が進行し、2次元的に最密充填した単粒子膜が形成される。
溶剤は、また、高い揮発性を有することも重要である。揮発性が高く疎水性である溶剤としては、クロロホルム、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、エチルエチルケトン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの1種以上からなる揮発性有機溶剤が挙げられる。
【0044】
粒子M
1が無機粒子である場合、通常その表面は親水性のため、疎水化剤で疎水化して使用することが好ましい。疎水化剤としては、例えば界面活性剤、金属アルコキシシランなどが使用できる。
粒子M
1の疎水化は、特開2009−162831号公報に記載された疎水化剤と同様の界面活性剤、金属アルコキシシランなどを用い、同様の方法で行うことができる。
【0045】
また、形成する単粒子膜の精度をより高めるためには、液面に滴下する前の分散液をメンブランフィルターなどで精密ろ過して、分散液中に存在する凝集粒子(複数の1次粒子からなる2次粒子)を除去することが好ましい。このようにあらかじめ精密ろ過を行っておくと部分的に2層以上となった箇所や、粒子が存在しない欠陥箇所が生じにくく、精度の高い単粒子膜が得られやすい。
詳しくは後述する移行工程において、単粒子膜の表面圧を計測する表面圧力センサーと、単粒子膜を液面方向に圧縮する可動バリアとを備えたLBトラフ装置を使用すると、形成された単粒子膜の欠陥箇所を表面圧の差に基づきある程度検知することが可能である。
しかし、数μm〜数十μm程度の大きさの欠陥箇所は、表面圧の差として検知されにくい。あらかじめ精密ろ過を行っておくと、数μm〜数十μm程度の大きさの欠陥が発生にくくなり、高精度な単粒子膜を得やすくなる。
【0046】
以上説明した分散液を、下層水の液面に滴下する(滴下工程)。すると、分散媒である溶剤が揮発するとともに、粒子M
1が下層水の液面上に単層で展開し、2次元的に最密充填した単粒子膜を形成することができる(単粒子膜形成工程)。
下層水に滴下する分散液の粒子濃度は1質量%〜10質量%とすることが好ましい。また、滴下速度を0.001ml/秒〜0.01ml/秒とすることが好ましい。分散液中の粒子M
1の濃度や滴下量がこのような範囲であると、粒子が部分的にクラスター状に凝集して2層以上となる、粒子が存在しない欠陥箇所が生じる、粒子間のピッチが広がるなどの傾向が抑制される。そのため、各粒子が高精度で2次元に最密充填した単粒子膜がより得られやすい。
【0047】
単粒子膜形成工程では、粒子M
1の自己組織化によって単粒子膜が形成される。その原理は、粒子が集結すると、その粒子間に存在する分散媒に起因して表面張力が作用し、その結果、粒子M
1同士はランダムに存在するのではなく、2次元的最密充填構造を自動的に形成するというものである。このような表面張力による最密充填は、別の表現をすると横方向の毛細管力による配列化ともいえる。
特に、例えばコロイダルシリカのように、球形であって粒径の均一性も高い粒子M
1が、水面上に浮いた状態で3つ集まり接触すると、粒子群の喫水線の合計長を最小にするように表面張力が作用する。その結果、
図4に示すように、3つの粒子M
1は図中T
1で示す正三角形を基本とする配置で安定化する。
【0048】
単粒子膜形成工程は、超音波照射条件下で実施することが好ましい。下層水から水面に向けて超音波を照射しながら分散液の溶剤を揮発させると、粒子Mの最密充填が促進され、各粒子M
1がより高精度で2次元に最密充填した単粒子膜が得られる。この際、超音波の出力は1W〜1200Wが好ましく、50W〜600Wがより好ましい。
また、超音波の周波数には特に制限はないが、例えば28kHz〜5MHzが好ましく、より好ましくは700kHz〜2MHzである。振動数が高すぎると、水分子のエネルギー吸収が始まり、水面から水蒸気または水滴が立ち上る現象が起きるため好ましくない。一方、振動数が低すぎると、下層水中のキャビテーション半径が大きくなり、水中に泡が発生して水面に向かって浮上してくる。このような泡が単粒子膜の下に集積すると、水面の平坦性が失われるため不都合である。
超音波照射によって水面に定常波が発生する。いずれの周波数でも出力が高すぎたり、超音波振動子と発信機のチューニング条件によって水面の波高が高くなりすぎたりすると、単粒子膜が水面波で破壊されるため注意が必要である。
【0049】
以上のことに留意して超音波の周波数及び出力を適切に設定すると、形成されつつある単粒子膜を破壊することなく、効果的に粒子の最密充填を促進することができる。効果的な超音波照射を行うためには、粒子の粒径から計算される固有振動数を目安にするのが良い。しかし、粒径が例えば100nm以下など小さな粒子になると固有振動数は非常に高くなってしまうため、計算結果のとおりの超音波振動を与えるのは困難になる。このような場合は、粒子2量体から20量体程度までの質量に対応する固有振動を与えると仮定して計算を行うと、必要な振動数を現実的な範囲まで低減させることが出来る。粒子の会合体の固有振動数に対応する超音波振動を与えた場合でも、粒子の充填率向上効果は発現する。超音波の照射時間は、粒子の再配列が完了するのに十分であればよく、粒径、超音波の周波数、水温などによって所要時間が変化する。しかし通常の作成条件では10秒間〜60分間で行うのが好ましく、より好ましくは3分間〜30分間である。
超音波照射によって得られる利点は粒子の最密充填化(ランダム配列を6方最密化する)の他に、ナノ粒子の分散液調製時に発生しやすい粒子の軟凝集体を破壊する効果、一度発生した点欠陥、線欠陥、または結晶転移などもある程度修復する効果がある。
【0050】
(移行工程)
単粒子膜形成工程により液面上に形成された単粒子膜を、ついで、単層状態のまま基板S
1に移し取る(移行工程)。
単粒子膜を基板S
1に移し取る具体的な方法には特に制限はなく、例えば、疎水性の基板S
1を単粒子膜に対して略平行な状態に保ちつつ、上方から降下させて単粒子膜に接触させ、ともに疎水性である単粒子膜と基板との親和力により、単粒子膜を基板S
1に移行させ、移し取る方法;単粒子膜を形成する前にあらかじめ水槽の下層水内に基板S
1を略水平方向に配置しておき、単粒子膜を液面上に形成した後に液面を徐々に降下させることにより、基板S
1に単粒子膜を移し取る方法などがある。
上記各方法によっても、特別な装置を使用せずに単粒子膜を基板S
1に移し取ることができるが、より大面積の単粒子膜であっても、その2次的な最密充填状態を維持したまま基板S
1に移し取りやすい点で、以降工程においては、いわゆるLBトラフ法を採用することが好ましい(Journal of Materials and Chemistry, Vol.11, 3333 (2001)、Journal ofMaterials and Chemistry, Vol.12, 3268 (2002)など参照。)
【0051】
図5A及び
図5Bは、LBトラフ法の概略を模式的に示すものである。なお、
図5A及び
図5Bでは、説明の便宜上、粒子Mを極端に拡大している。
この方法では、水槽V
1内の下層水W
1に基板S
1をあらかじめ略鉛直方向に浸漬しておき、その状態で上述の滴下工程と単粒子膜形成工程とを行い、単粒子膜F
1を形成する(
図5A)。そして、単粒子膜形成工程後に、基板S
1を略鉛直方向を保ったまま上方に引き上げることによって、単粒子膜Fを基板S
1に移し取ることができる(
図5B)。
なお、この図では、基板S
1の両面に単粒子膜F
1を移し取る状態を示しているが、凹凸構造は、基板S
1の一方の面のみに形成すればよいので、単粒子膜F
1は基板S
1の平坦面X
1のみに移し取ればよい。基板S
1の平坦面X
1と反対側の面(裏面)を厚板で遮蔽することによって、平坦面X
1側から裏面への粒子M
1の回り込みを防止した状態で平坦面X
1のみに単粒子膜F
1を移し取れば、より精密に単粒子膜F
1を移し取れるので好ましい。しかし、両面に移し取っても何ら差し支えない。
【0052】
ここで単粒子膜F
1は、単粒子膜形成工程により液面上ですでに単層の状態に形成されているため、移行工程の温度条件(下層水の温度)や基板S
1の引き上げ速度などが多少変動しても、移行工程において単粒子膜F
1が崩壊して多層化するなどのおそれはない。なお、下層水の温度は、通常、季節や天気により変動する環境温度に依存し、ほぼ10℃〜30℃程度である。
【0053】
また、この際、水槽V
1として、単粒子膜F
1の表面圧を計測する図示略のウィルヘルミープレート等を原理とする表面圧力センサーと、単粒子膜F
1を液面に沿う方向に圧縮する図示略の可動バリアとを具備するLBトラフ装置を使用することが好ましい。このような装置によれば、より大面積の単粒子膜F
1をより安定に基板S
1に移し取ることができる。
すなわちこのような装置によれば、単粒子膜F
1の表面圧を計測しながら、単粒子膜F
1を好ましい拡散圧(密度)に圧縮でき、また、基板S
1の方に向けて一定の速度で移動させることができる。そのため、単粒子膜F
1の液面から基板S
1への移行が円滑に進行し、小面積の単粒子膜F
1しか基板S
1に移行できないなどのトラブルが生じにくい。好ましい拡散圧は、5mNm
−1〜80mNm
−1であり、より好ましくは10mNm
−1〜40mNm
−1である。このような拡散圧であると、各粒子がより高精度で2次元に最密充填した単粒子膜F
1が得られやすい。また、基板S
1を引き上げる速度は、0.5mNm
−1〜20mm/分が好ましい。下層水の温度は、先述したように、通常10℃〜30℃である。なお、LBトラフ装置は、市販品として入手することができる。
【0054】
このように、各粒子が、できるだけ高精度で2次元に最密充填した単粒子膜F
1の状態で基板S
1に移し取ることが好ましいが、どのように慎重に作業を行っても100%完全な最密充填とはならず、基板S
1に移し取られた粒子は、多結晶状態となる。これにより、後述の各工程を経て、最終的には、隣接する7つの凸部の中心点が正六角形の6つの頂点と対角線の交点となる位置関係で連続して整列しているエリアを複数備える凹凸構造を基板S
1上に形成することが可能となる。
【0055】
(固定工程)
移行工程により、基板S
1に粒子M
1の単粒子膜F
1を移行させることができるが、移行工程の後には、移行した単粒子膜F
1を基板S
1に固定するための固定工程を行ってもよい。移行工程だけでは、後述の粒子エッチング工程及び基板エッチング工程中に粒子M
1が基板S
1上を移動してしまう可能性がある。特に、各粒子M
1の直径が徐々に小さくなる基板エッチング工程の最終段階になると、このような可能性が大きくなる。
単粒子膜を基板S
1に固定する固定工程を行うことによって、粒子M
1が基板S
1上を移動してしまう可能性が抑えられ、より安定かつ高精度にエッチングすることができる。
【0056】
固定工程の方法としては、バインダーを使用する方法や焼結法がある。
バインダーを使用する方法では、単粒子膜が形成された基板S
1の平坦面X側にバインダー溶液を供給して単粒子膜を構成する粒子M
1と基板S
1との間にこれを浸透させる。
バインダーの使用量は、単粒子膜の質量の0.001倍〜0.02倍が好ましい。このような範囲であれば、バインダーが多すぎて粒子M
1間にバインダーが詰まってしまい、単粒子膜の精度に悪影響を与えるという問題を生じることなく、十分に粒子を固定することができる。バインダー溶液を多く供給してしまった場合には、バインダー溶液が浸透した後に、スピンコーターを使用したり、基板S
1を傾けたりして、バインダー溶液の余剰分を除去すればよい。
バインダーとしては、先に疎水化剤として例示した金属アルコキシシランや一般の有機バインダー、無機バインダーなどを使用でき、バインダー溶液が浸透した後には、バインダーの種類に応じて、適宜加熱処理を行えばよい。金属アルコキシシランをバインダーとして使用する場合には、40℃〜80℃で3分間〜60分間の条件で加熱処理することが好ましい。
【0057】
焼結法を採用する場合には、単粒子膜が形成された基板S
1を加熱して、単粒子膜を構成している各粒子M
1を基板S
1に融着させればよい。加熱温度は粒子M
1の材質と基板S
1の材質に応じて決定すればよいが、粒径が1μmφ以下の粒子M
1はその物質本来の融点よりも低い温度で界面反応を開始するため、比較的低温側で焼結は完了する。加熱温度が高すぎると、粒子の融着面積が大きくなり、その結果、単粒子膜の形状が変化するなど、精度に影響を与える可能性がある。
また、加熱を空気中で行うと、基板S
1や各粒子M
1が酸化する可能性があるため、焼結法を採用する場合には、このような酸化の可能性を考慮して、条件を設定することが必要となる。例えば、基板S
1としてシリコン基板を用い、これを1100℃で焼結すると、この基板S
1の表面には約200nmの厚さで熱酸化層が形成されてしまう。N
2ガスやアルゴンガス中で加熱すると、酸化を避けやすい。
【0058】
[その他の方法による粒子配列工程]
粒子配列工程は、配列のずれD(%)を1.0%以上15%以下にできれば特に限定はなく、LB法による他、以下の方法を採用することができる。
1)基板をコロイド粒子の懸濁液中に浸漬し、その後、基板と静電気的に結合した第1層目の粒子層のみを残し第2層目以上の粒子層を除去する(粒子吸着法)ことで、単粒子膜からなるエッチングマスクを基板上に設ける方法(特開昭58−120255号公報参照)。
2)基板上にバインダー層を形成し、その上に粒子の分散液を塗布し、その後バインダー層を加熱により軟化させることで、第1層目の粒子層のみをバインダー層中に包埋させ、余分な粒子を洗い落とす方法(特開2005−279807号公報参照)。
【0059】
[粒子エッチング工程]
粒子エッチング工程では、基板S
1が実質的にエッチングされない条件で配列された複数の粒子M
1をドライエッチングする。これにより、
図3Bに示すように、実質的に粒子M
1のみがエッチングされて粒径の小さい粒子M
11となり、粒子M
11間に間隙が設けられる。一方、粒子エッチング工程後の基板S
11は、実質的に基板S
1と同じで、基板S
11の一方の表面である平坦面X
11に実質的な凹凸は形成されず、平坦面X
11と平坦面X
1は同等である。
【0060】
基板S
1が実質的にエッチングされない条件としては、下式(2)のドライエッチング選択比が25%以下の条件であることが好ましく、15%以下の条件であることが好ましく、10%以下の条件であることが、さらに好ましい。
ドライエッチング選択比[%]=基板S
1のドライエッチング速度/粒子M
1のドライエッチング速度×100・・・(2)
【0061】
このようなドライエッチング条件とするためには、エッチングガスを適切に選択すればよい。例えば、基板Sがサファイアであり、粒子M
1がシリカである場合、CF
4、SF
6、CHF
3、C
2F
6、C
3F
8、CH
2F
2、O
2、およびNF
3から選択される1以上のガスを用いてドライエッチングすれば、基板S
1に殆ど影響を与えずに、粒子M
1をエッチングできる。或いは、基板Sがサファイアであり、粒子M
1がチタニア(TiO
2)である場合、CF
4、SF
6、CHF
3、C
2F
6、C
3F
8、CH
2F
2、O
2、およびNF
3から選択される1以上のガスを用いてドライエッチングすれば上記同様の効果を得られる。または、基板Sがサファイアであり、粒子M
1がポリスチレンである場合、CF
4、SF
6、CHF
3、C
2F
6、C
3F
8、CH
2F
2、O
2、およびNF
3から選択される1以上のガスを用いてドライエッチングすれば上記同様の効果を得られる。または、基板Sがシリコンであり、粒子M
1がポリスチレンである場合、O
2ガスを用いてドライエッチングすれば上記同様の効果を得られる。
【0062】
粒子エッチング工程後の粒子M
11は、次の基板エッチング工程においてエッチングマスクとして使用するため、基板S
1の厚み方向(垂直方向)の径(以下「高さ」という。)を充分に残しておく必要がある。また、粒子M
11同士の間が充分に離間しているエッチングマスクとするため、粒子M
11の基板S
1の面方向(水平方向)の大きさ(以下「面積」という。)は充分に小さくなっている必要がある。そのため、粒子エッチング工程は、高さの減少を抑制しつつ、面積が縮小する条件で行うことが好ましい。
上記条件とするためには、バイアスパワーを低めに設定したり、圧力を低圧にしたりすればよい。
【0063】
[基板エッチング工程]
基板エッチング工程では、粒子エッチング工程後の粒子M
11をエッチングマスクとして粒子エッチング工程後の基板S
11をドライエッチングする。基板S
11は、まず、粒子M
11同士の空隙においてエッチングガスに晒されるので、その部分が先行して、平坦性を保ったままエッチングされる。そして、粒子M
11も徐々にエッチングされて小さくなるため、各粒子M
11の周辺の下側部分から中心の下側部分に向かい、徐々に、基板S
11のエッチングが進行する。その結果、
図3Cに示すように、粒子M
11はさらに粒径の小さい粒子M
12となる。また、この時点での基板S
12には、各粒子M
12の下側を頂面とする円錐台状の凸部Y
12が複数形成される。凸部Y
12同士の空隙(凹部の底面)は粒子M
11同士の空隙とほぼ対応し、その部分は平坦面X
12となる。
【0064】
基板エッチング工程をさらに進めると、最終的には各粒子M
12はエッチングにより消失する。その結果、
図3Dに示すように、基板エッチング工程終了後の基板S
13には、各粒子M
12の中心部分の下側を頂点とする円錐状の凸部Y
13が複数形成される。凸部Y
13同士の空隙(凹部の底面)は平坦面X
13となる。平坦面X
13は粒子M
11同士の空隙および平坦面X
12とほぼ対応し、平坦面X
12より、さらに深い凹部の底面となる。
【0065】
基板エッチング工程は基板S
12(基板S
1)のドライエッチング速度が粒子M
12(粒子M
1)のエッチング速度を上回る必要があり、前記式(2)のドライエッチング選択比が100%より大きいことを要する。基板エッチング工程の前記式(2)のドライエッチング選択比は、200%以上であることが好ましく、300%以上であることがより好ましい。
このようなドライエッチング条件とするためには、エッチングガスを適切に選択すればよい。例えば、基板S
1がサファイアであり、粒子M
1がシリカである場合、Cl
2、Br
2、BCl
3、SiCl
4、HBr、HI、HCl、およびArから選択される1以上のガスを用いてドライエッチングすればよい。
【0066】
使用可能なエッチング装置としては、反応性イオンエッチング装置、イオンビームエッチング装置などの異方性エッチングが可能なものであって、最小で20W程度のバイアス電場を発生できるものであれば、プラズマ発生の方式、電極の構造、チャンバーの構造、高周波電源の周波数等の仕様には特に制限ない。
基板エッチング工程では、チャンバー内の温度を60℃〜200℃に保持して行うことが好ましく、80℃〜150℃に保持して行うことがより好ましい。
チャンバー内の温度を上記温度に保つことによって、基板のエッチング速度を高め且つ、ハンドリングがしやすいため、製造効率を高めることができる。
前記基板がサファイア基板である場合、特に上記温度で基板エッチング工程を行うことが好ましい。
【0067】
凸部Y
13の形状は、バイアスパワー、真空チャンバー内の圧力、エッチングガスの種類によって調整することができる。例えば、圧力を低くすれば、傾斜角の緩やかな形状となる。
なお、
図3Cの段階で基板エッチング工程を終了させ、円錐台状の凸部としてもよい。その場合、残留する粒子M
12は、粒子M
12に対してエッチング性があり、基板S
12に対して耐エッチング性があるエッチングガスを用いる化学的除去方法や、ブラシロール洗浄機などによる物理的除去方法により除去できる。
【0068】
本実施形態で基板S
1に設けられる凹凸構造のピッチは、前記した粒子M
1間の最頻ピッチBと同等となる。
図3Aにおける粒子M
1の配列は、細密充填の度合いが高いため、粒子M
1の平均粒径Aを適切に選択することにより、所望のピッチの凹凸構造を精度良く形成することができる。
また、基板エッチング工程の前に粒子エッング工程を行うため、凸部と凸部の間、すなわち凹部の底面を平坦面とすることができる。そのため、半導体層を平坦面上に安定して成長させることができる。したがって、半導体層の結晶欠陥を発生させにくい半導体発光素子用の基板とすることができる。
【0069】
本実施形態の製造方法によれば、ピッチが数μmの比較的大きな凹凸構造を作製するコストと時間より、むしろ、ピッチが1μm以下の(サブミクロンピッチの)比較的小さな凹凸構造を作製するコストと時間の方が、少なくて済む。これは、エッチングマスクとなる粒子の製造コストが、粒径が小さいほど低くなるという点と、ドライエッチング工程に要するプロセス時間が、粒径が小さいほど短くなるという点によるものである。なお、ピッチが1μm以下の比較的小さな凹凸構造を製造する装置と、ピッチが数μmの比較的大きな凹凸構造を作製すると装置のコストは同等である。
また、本実施形態の製造方法によれば、巨視的な格子方位がランダムである(即ち、FFT基本波の最大値と最小値の比が小さい)多結晶構造のような配置であるの凹凸構造を基板S
1に設けることができる。
【0070】
<半導体発光素子>
本実施形態の半導体発光素子は、本実施形態の半導体発光素子用基板と、その凹凸構造が形成された面に積層された半導体機能層と、p型電極と、n型電極を備える。半導体機能層は少なくとも発光層を含む。
半導体機能層は、V族元素が窒素であるIII-V族窒化物半導体で構成されていることが好ましい。例えば、GaN、InGaN、AlGaN、InAlGaN、GaAs、AlGaAs、InGaAsP、InAlGaAsP、InP、InGaAs、InAlAs、ZnO、ZnSe、ZnS等が挙げられる。III-V族窒化物半導体は、サファイア等の基板上に形成する必要があるからである。
代表的なIII-V族窒化物半導体は、窒化ガリウム、窒化インジウムである。窒化アルミニウムは厳密には絶縁体であるが、本実施形態においては、半導体発光素子分野の慣習に従い、III-V族窒化物半導体に前記当するものとして扱う。
【0071】
半導体機能層の層構成は、少なくともn型の導電性を有する層、p型の導電性を有する層、これらの間に挟まれた発光層を有するIII-V族窒化物半導体の層からなる構成のものが好ましい。発光層としては、In
x Ga
y Al
z N(ただし、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、x+y+z=1)で表されるIII-V族窒化物半導体からなる発光層が好ましい。
【0072】
III-V族窒化物半導体機能層には、n型の導電性を有する層、p型の導電性を有する層、これらの間に挟まれた発光層に加えて、これらの層を高品質の結晶にするために必要な単層あるいは多層の層(厚膜層、超格子薄膜層である場合を含む)をも含む場合がある。
たとえば、バッファ層を含む場合もある。
また、上記各層も、それぞれ、複数の層から構成されることがある。
具体的な半導体機能層としては、GaN、AlN等からなるバッファ層、n−GaN、n−AlGaN等からなるn型の導電性を有する層(クラッド層)、InGaN、GaN等からなる発光層、アンドープGaN、p−GaN等からなるp型の導電性を有する層(クラッド層)、MgドープAlGaN、MgドープGaNからなるキャップ層が順次積層されてなる多層膜が挙げられる(例えば、特開平6−260682号公報、特開平7−15041号公報、特開平9−64419号公報、特開平9−36430号公報を参照)。
なお、発光層に電流を供給するためのn型電極及びp型電極としては、Ni、Au、Pt、Pd、Rh、Ti、Al等の金属からなる電極を用いることができる。
【0073】
半導体機能層の有する機能は、n型の導電性と、p型の導電性と、キャリアを再結合させる活性とを含むことが好ましい。半導体機能層における積層構造は、n型半導体層とp型半導体層との間に活性層が挟まれたダブルヘテロ構造であってもよいし、複数の量子井戸構造が重ねられた多重量子井戸構造であってもよい。
【0074】
本実施形態の半導体発光素子は、発光波長を調整するために、前記半導体機能層の光取出し側に発光層から出射される発光を、その発光の波長より長波長側に波長変換する波長変換層を積層することもできる。例えば、トップエミッション型素子の場合、発光層にて発光した光がp型電極側から取り出されるので、発光層とp型電極との間に波長変換層を配置することができる。または、p型電極より外側(素子の外側)に波長変換層を配置しても良い(この場合は、LED素子を包埋する樹脂に蛍光体を含有する)。或いは、ボトムエミッション型素子の場合、発光層にて発光した光が基板を介して取り出されるので、発光層と基板との間に波長変換層を配置することができる。また、発光層にて発光した光が基板を介して取り出される場合は、基板の半導体発光素子が設けられる面とは反対の面に波長変換層を配置することができる。この場合、LED素子を包埋する樹脂に蛍光体を含有する方法で波長変換層を配置しても良い。
例えば、発光層の発光波長が紫外線領域の発光エネルギーを多く含む場合は、前記波長変換層にピーク波長410nm〜483nmの蛍光を発する青色蛍光体、ピーク波長490nm〜556nmの蛍光を発する緑色蛍光体、およびピーク波長585nm〜770nmの蛍光を発する赤色蛍光体を含有させることによって、照明用に適した白色の取出し光を得ることができる。また、発光層の発光波長が青色領域の発光エネルギーを多く含む場合は、前記波長変換層にピーク波長570nm〜578nmの蛍光を発する黄色蛍光体を含有させることによって、照明用に適した白色の取出し光を得ることができる。
【0075】
<半導体発光素子の製造方法>
本実施形態の半導体発光素子の製造方法は、本実施形態の発光素子用基板の製造方法により発光素子用基板を得る工程と、得られた発光素子用基板の凹凸構造が形成された面に、少なくとも発光層を含む半導体機能層を積層する工程を備える。
【0076】
[半導体機能層積層工程]
半導体発光素子用基板に半導体機能層を積層する方法は、MOVPE法(有機金属気相成長法)、MBE法(分子線エピタキシ法)、HVPE法(ハイドライド気相成長法)などの公知のエピタキシャル成長方法を用いることができる。エピタキシャル成長法は、気相エピタキシャル成長法、液相エピタキシャル成長法、分子線エピタキシャル成長法などである。反応性スパッタ法は、化合物半導体層の構成元素からなるターゲットをスパッタし、ターゲットからスパッタされた粒子と気相中の不純物元素との反応によって半導体層の形成材料を生成する。n型半導体層を形成する方法は、n型不純物の添加されるエピタキシャル成長法や反応性スパッタ法であればよい。p型半導体層を形成する方法は、p型不純物の添加されるエピタキシャル成長法や反応性スパッタ法であればよい。
【0077】
液相エピタキシャル成長法では、化合物半導体層の形成材料を含む過飽和溶液が、固相と液相との平衡状態を保ちながら、化合物半導体層の形成材料を半導体発光素子用基板の発光構造体形成面上に結晶として成長させる。気相エピタキシャル成長法では、原料ガスの流れる雰囲気が、化合物半導体層の形成材料を生成して、化合物半導体層の形成材料を発光構造体形成面上に結晶として成長させる。分子線エピタキシャル成長法では、化合物半導体層の構成元素からなる分子または原子のビームが、発光構造体形成面上を照射して、化合物半導体層の形成材料を発光構造体形成面上に結晶として成長させる。なかでも、V族原料としてAsH
3やPH
3のような水素化物を用いるハライド気相成長法は、成長する化合物半導体層の厚さが大きい点にて好ましい。
【0078】
III族原料としては、例えばトリメチルガリウム[(CH
3 )
3 Ga、以下TMGと記すことがある]、トリエチルガリウム[(C
2 H
5 )
3 Ga、以下TEGと記すことがある]等の一般式R
1 R
2 R
3 Ga(ここで、R
1 、R
2 、R
3 は、低級アルキル基を示す)で表されるトリアルキルガリウム、トリメチルアルミニウム[(CH
3 )
3 Al、以下TMAと記すことがある]、トリエチルアルミニウム[(C
2 H
5 )
3 Al、以下TEAと記すことがある]、トリイソブチルアルミニウム[(i−C
4 H
9 )
3 Al]等の一般式R
1 R
2 R
3 Al(ここで、R
1 、R
2 、R
3 は、低級アルキル基を示す。)で表されるトリアルキルアルミニウム、トリメチルアミンアラン[(CH
3 )
3 N:AlH
3 ]、トリメチルインジウム[(CH
3 )
3 In、以下TMIと記すことがある]、トリエチルインジウム[(C
2 H
5 )
3 In]等の一般式R
1 R
2 R
3 In(ここで、R
1 、R
2 、R
3 は、低級アルキル基を示す)で表されるトリアルキルインジウム、ジエチルインジウムクロライド[(C
2 H
5 )
2 InCl]などのトリアルキルインジウムから1ないし2つのアルキル基をハロゲン原子に置換したもの、インジウムクロライド[InCl
3 ]など一般式InX
3 (Xはハロゲン原子)で表されるハロゲン化インジウム等が挙げられる。これらは、単独で用いても混合して用いてもよい。
【0079】
V族原料としては、例えばアンモニア、ヒドラジン、メチルヒドラジン、1,1−ジメチルヒドラジン、1,2−ジメチルヒドラジン、t−ブチルアミン、エチレンジアミンなどが挙げられる。これらは単独でまたは任意の組み合わせで混合して用いることができる。これらの原料のうち、アンモニアとヒドラジンは、分子中に炭素原子を含まないため、半導体中への炭素の汚染が少なく好適である。
【0080】
MOVPE法においては、成長時雰囲気ガス及び有機金属原料のキャリアガスとしては、窒素、水素、アルゴン、ヘリウムなどの気体を単独あるいは混合して用いることができ、水素、ヘリウムが好ましい。
【0081】
本実施形態によれば、基板の凹凸構造が適度なランダム性を持つ。そのため、充分な光取り出し効率が得られると共にカラーシフトや面内異方性が高くなる問題が防止された半導体発光素子を得ることができる。また、凸部と凸部の間が平坦面とされた基板上に半導体を積層するので、半導体層を平坦面上に安定して成長させることができる。したがって、半導体層の結晶欠陥を発生しくい。
【0082】
[第2実施形態]
図6から
図13を参照して、本実施形態における半導体発光素子用基板、半導体発光素子、半導体発光素子用基板の製造方法、および、半導体発光素子の製造方法の一実施の形態を説明する。
【0083】
[半導体発光素子用基板]
図6に示されるように、半導体発光素子用基板(以下、素子用基板211Bと示す)は、1つの側面である発光構造体形成面211Sを有している。半導体発光素子の製造工程にて、発光構造体形成面211Sには、発光構造体が形成される。
【0084】
素子用基板211Bを形成する材料は、第1実施形態に記載されている基板の材料を用いることができる。発光構造体形成面211Sは、発光構造体に結晶性を与えることに適した結晶性を自身に有している。
【0085】
発光構造体形成面211Sは、多数の微細な凹凸から構成される凹凸構造を有している。微細な凹凸は、発光構造体形成面211Sの広がる方向に沿って繰り返されている。発光構造体形成面211Sが有する凹凸構造は、多数の凸部212、多数のブリッジ部213、および、多数の平坦部214から構成されている。
【0086】
多数の平坦部214の各々は、1つの結晶面に沿って広がる平面であり、1つの平面上に配置されている。素子用基板211Bの結晶系が六方晶系であるとき、平坦部214は、例えば、c面、m面、a面、r面からなる群から選択される1つの面が連続する平面である。素子用基板211Bの結晶系が立方晶系であるとき、平坦部214は、例えば、(001)面、(111面)、(110)面からなる群から選択される1つの面が連なる平面である。なお、平坦部214が有する結晶面は、上記指数面よりも高指数面であってもよく、発光構造体に結晶性を与えることに適した1つの結晶面であればよい。複数の平坦部214の各々が有する結晶面は、発光構造体形成面211Sの上で、半導体層が結晶性を有することを促す。
【0087】
[突起12]
多数の凸部212の各々は、その凸部212に接続する平坦部214から突き出しており、かつ、平坦部214に接続する基端から先端に向かって細くなっている形状を有している。複数の凸部212の各々は、半球形状を有している。
【0088】
なお、凸部212の有する形状は、半球形状に限らず、円錐形状であってもよいし、角錐形状であってもよい。また、凸部212の頂点を通り、かつ、発光構造体形成面211Sと垂直な平面によって凸部212が切断された際に、その断面に現れる母線は、曲線であってもよい。凸部212の有する形状は、基端から先端に向かって細くなる多段形状であってもよし、さらには、先端から基端に向かう途中で一旦太くなる形状であってもよい。多数の凸部212の各々の有する形状は、互いに異なっていてもよい。
【0089】
互いに隣り合う凸部212の間の間隔は、凸部212のピッチである。凸部212のピッチについては、第1実施形態と同様であってもよい。一側面として、ピッチの最頻値は、100nm以上5μm以下であることが好ましい。凸部212のピッチが100nm以上5μm以下であれば、発光構造体形成面211Sでの光の全反射が抑えられる程度に、発光構造体形成面211Sには、それに必要な配置および密度で凸部212が形成される。この際、凸部212と平坦部214のバランスは適宜設計される。また、凸部212のピッチの最頻値が5μm以下であれば、多数の凸部212が視認されることが十分に抑えられ、また、素子用基板211Bの厚さが不要に大きくなることが抑えられる。
【0090】
こうしたピッチの最頻値は、第1実施形態に記載される最頻ピッチPを求める方法により求めることができる。例えば、以下に示されるように、AFMイメージに基づく画像処理によって求められる。まず、発光構造体形成面211Sにて任意に選択された矩形領域に対して、AFMイメージが得られる。この際に、AFMイメージの得られる矩形領域にて、矩形領域の一辺の長さは、ピッチの最頻値の30倍〜40倍である。次に、フーリエ変換を用いたAFMイメージの波形分離によって、AFMイメージに基づく高速フーリエ変換像が得られる。次いで、高速フーリエ変換像における0次ピークと1次ピークとの間の距離が求められ、その距離の逆数が、1つの矩形領域における凸部212のピッチとして取り扱われる。そして、互いに異なる25カ所以上の矩形領域についてピッチが計測され、こうして得られた計測値の平均値が、凸部212のピッチの最頻値である。なお、矩形領域同士は、少なくとも1mm離れていることが好ましく、5mm〜1cm離れていることが、より好ましい。
【0091】
多数の凸部212の各々における平坦部214からの高さは、第1実施形態と同様であってもよい。一側面として、多数の凸部212の各々における平坦部214からの高さは、50nm以上300nm以下であることが好ましい。複数の凸部212の高さが50nm以上300nm以下であれば、発光構造体形成面211Sでの光の全反射が抑えられやすい。凸部212の高さが50nm以上300nm以下であれば、発光構造体形成面211Sに形成される半導体層では、凸部212の形成に起因する成膜欠陥の発生が抑えられる。
【0092】
こうした凸部212の高さの最頻値は、例えば、以下に示されるように、AFMイメージに基づく画像処理によって求められる。まず、発光構造体形成面211Sにて任意に選択される矩形領域に対して、AFMイメージが得られ、そのAFMイメージから、凹凸構造の断面形状が得られる。次に、断面形状にて連続する5個以上の凸部212に対して、凸部212における頂点の高さと、その凸部212に接続する平坦部214の高さとの差が計測される。次いで、互いに異なる5カ所以上の矩形領域についても同様に凸部212の高さが計測され、合計で25以上の凸部212の高さが計測される。なお、矩形領域同士は、少なくとも1mm離れていることが好ましく、5mm〜1cm離れていることが、より好ましい。そして、二次元のフーリエ変換像を用いた赤道方向プロファイルが作成され、その一次ピークの逆数から、凸部212における高さの最頻値は求められる。
【0093】
[ブリッジ部213]
本実施形態においては、ブリッジ部を互いに隣り合う凸部212間を連結する形で構成できる。ブリッジ部を設けることにより後述する光学的効果や機械強度の効果を得ることができるが、ブリッジ部を設けない場合でも、マスク粒子の粒径縮小によって平坦部214の範囲が広がることで、後のLED成膜工程におけるエピタキシャル成長を効果的に行うことが可能となる。
多数のブリッジ部213の各々は、ブリッジ部213に接続する平坦部214から突き出しており、かつ、互いに隣り合う凸部212の間を連結している。多数のブリッジ部213の各々の高さは、凸部212の高さよりも低く、かつ、半球形状を有する凸部212の中心同士を結ぶ突条形状を有している。なお、ブリッジ部213の有する形状は、直線形状に限らず、曲線形状であってもよいし、折線形状であってもよい。多数のブリッジ部213の各々の有する形状は、互いに異なっていてもよい。ブリッジ部213は、頂面213Tを含む。頂面213Tは平面を含んでいる。
【0094】
ブリッジ部213の長手方向に沿った長さは、50nm以上300nm以下であることが好ましい。ブリッジ部213の長手方向に沿った長さが50nm以上300nm以下であれば、発光構造体形成面211Sでの光の全反射が抑えられやすい。ブリッジ部213の短手方向に沿った長さは、10nm以上100nm以下であることが好ましい。ブリッジ部213の短手方向に沿った長さが10nm以上100nm以下であれば、発光構造体形成面211Sでの光の全反射が抑えられやすい。また、発光構造体が有する膜ストレスに対して十分に耐えられる程度に、ブリッジ部213の機械的な強度が確保される。
【0095】
図7に示されるように、発光構造体形成面211Sの平面視にて、複数の凸部212は、複数の凸部対TP2を有している。1つの凸部対TP2は、互いに隣り合う2つの凸部212から構成され、1つの凸部対TP2に含まれる2つの凸部212は、1つのブリッジ部213によって連結されている。発光構造体形成面211Sにて、1つの平坦部214は、3つの凸部対TP2によって囲まれている。
【0096】
複数の凸部212は、複数の凸部群TG2を有している。1つの凸部群TG2は、6つの凸部対TP2から構成されている。1つの凸部群TG2では、6つの凸部対TP2における一方の凸部212が、互いに共通している。1つの凸部群TG2を構成する7つの凸部212は、六方充填構造を有している。凸部群TG2では、6つの凸部212が、六角形の有する6つの頂点に配置され、かつ、6つの凸部212によって囲まれる部分に、1つの凸部212が配置されている。すなわち、複数の凸部群TG2の各々では、中心となる1つの凸部212の周囲に、6つの凸部212が等配されている。そして、中心となる1つの凸部212から他の凸部212に向かって、6本のブリッジ部213が、放射状に延びている。1つの凸部群TG2において、6本のブリッジ部213の各々の高さは、ブリッジ部213によって連結されている凸部212の間の間隔が大きいほど、低くなる傾向がある。
【0097】
発光構造体形成面211Sが、複数の凸部群TG2を有する構成であれば、凸部212による全反射の抑制効果が高められる。また、発光構造体形成面211Sに形成される発光構造体の膜ストレスが、1つの凸部212に集中することも抑えられる。そして、凸部212に必要とされる機械的な強度も抑えられる。
【0098】
複数の凸部212は、複数の凸部団TL2を有している。複数の凸部団TL2の各々は、2以上の凸部群TG2から構成されている。複数の凸部団TL2の各々では、互いに異なる2つの凸部群TG2が、2つ以上の凸部212を互いに共有している。複数の凸部団TL2の各々では、凸部群TG2の並ぶ方向、1つの凸部団TL2の占める面積、1つの凸部団TL2の形状のいずれか1つ、好ましくはいずれか2つ、更に好ましくは全てが互いに異なっている。すなわち、発光構造体形成面211Sでは、複数の凸部団TL2の各々が、その大きさ、および、形状を含めてランダムに配置されている。1つの凸部団TL2において、複数のブリッジ部213の各々の高さは、ブリッジ部213によって連結されている凸部212の間の間隔が大きいほど、低いことが好ましい。
【0099】
発光構造体形成面211Sが、複数の凸部団TL2を有する構成であれば、発光構造体形成面211Sに入る光の屈折が、発光構造体形成面211S内にて平均化される程度に、微細な凹凸構造は、適度なランダム性を有している。そのため、全反射の抑制効果が、発光構造体形成面211Sにて平均化される。これに加えて、1つの凸部対TP2ごとに、1つのブリッジ部213が形成されているため、全反射の抑制効果は、さらに高められる。また、こうした多数のブリッジ部213が形成される一方で、1つの平坦部214は、3つのブリッジ部213によって囲まれている。それゆえに、ブリッジ部213が1カ所に偏ることが抑えられ、平坦部214が1カ所で極端に少なくなることも抑えられる。結果として、発光構造体の結晶性が1カ所で極端に劣ることが抑えられ、かつ、発光構造体形成面211Sでの全反射が抑えられる。
【0100】
なお、発光構造体形成面211Sは、複数の凸部団TL2の他に、孤立した凸部群TG2を有してもよいし、孤立した凸部212を有してもよい。また、複数の凸部団TL2の各々は、互いに同じ大きさを有していてもよいし、互いに同じ形状を有していてもよい。また、複数の凸部団TL2の各々は、凸部群TG2の並ぶ方向を互いに等しくしてもよく、互いに離れている構成であればよい。
【0101】
図8に示されるように、平坦部214に対する凸部212の頂点の高さは、凸部高さHT
2である。また、平坦部214に対するブリッジ部213の頂面213Tの高さは、ブリッジ高さHB
2である。ブリッジ部を積極的に設ける場合は、ブリッジ高さHB
2は、凸部高さHT
2よりも低く、凸部高さHT
2の半分よりも低いことが好ましい。具体的には、HB
2/HT
2=0.01〜0.40の範囲が好ましく、0.05〜0.20の範囲が更に好ましい。ブリッジ高さHB
2は、ブリッジ部213の延びる方向に沿って、ブリッジ部213の略全体にわたり一定であることが好ましい。
【0102】
図9に示されるように、ブリッジ高さHB
2は、ブリッジ部213の延びる方向と交差する方向に沿って一定でもある。ブリッジ部213の頂面213Tは、平面を含む。平面は、ブリッジ部213の延びる方向に沿って延び、かつ、ブリッジ部213の延びる方向と交差する方向に沿っても連続している。ブリッジ部213の頂面213Tは、平坦部214と同じく、1つの結晶面に沿って延びる平面を含む。
【0103】
素子用基板211Bの結晶系が六方晶系であるとき、ブリッジ部213の頂面213Tは、平坦部214と同じく、例えば、c面、m面、a面、r面からなる群から選択される1つの面が連続する平面である。素子用基板211Bの結晶系が立方晶系であるとき、ブリッジ部213の頂面213Tは、これもまた、平坦部214と同じく、例えば、001面、111面、110面からなる群から選択される1つの面が連なる平面である。
【0104】
ブリッジ部213の頂面213Tが、上述の結晶面を有する構成であれば、平坦部214に加えて、ブリッジ部213の頂面213Tにおいても、半導体層が結晶性を有することが促される。それゆえに、平坦部214の一部が、ブリッジ部213として利用される構成であっても、これに起因して半導体層の結晶性が低下することが抑えられる。
【0105】
[素子用基板211Bの製造方法]
半導体発光素子用基板の製造方法は、基板に複数の粒子を配列させる粒子配列工程と、前記粒子がエッチングされ、前記基板が実質的にエッチングされない条件で、前記配列した複数の粒子をドライエッチングして粒子間に間隙を設ける粒子エッチング工程(単粒子膜F
1のエッチング工程)と、前記粒子エッチング工程後の複数の粒子をエッチングマスクとして前記基板をドライエッチングし、前記基板の一方の面に凹凸構造を形成する基板エッチング工程(発光構造体形成面11Sのエッチング工程)とを備える。以下、半導体発光素子用基板の製造方法に含まれる各工程を、処理の順に説明するが、粒子配列工程については、第1実施形態と同様の方法で行うことができるため、説明を省略する。
【0106】
[単粒子膜F
1のエッチング工程]
単粒子膜F
1のエッチング工程は、基本的に第1実施形態と同様の方法で行うことができる。
一側面として、
図10に示されるように、単層の粒子M
1から構成される単粒子膜F
1は、発光構造体形成面211Sに形成される。単粒子膜F
1は、直径R21を有する粒子M
1の六方充填構造を有している。1つの六方充填構造は、7つの粒子M
1から構成されている。六方充填構造では、6つの粒子M
1が、六角形の有する6つの頂点に配置され、かつ、6つの粒子M
1によって囲まれる部分に、1つの粒子M
1が充填されている。すなわち、1つの六方充填構造では、中心となる1つの粒子M
1の周囲に、6つの粒子M
1が等配されている。
【0107】
六方充填構造は、三角形の有する3つの頂点に配置された3つの粒子M
1を含んでいる。基板の法線方向から見た場合の3つの粒子M
1によって囲まれる領域は、単粒子膜F
1にて最小の隙間である。基板の法線方向から見た場合、発光構造体形成面211Sは、こうした最小の隙間を通して、外部に露出する第1の露出部S21を有している。
【0108】
図11に示されるように、単粒子膜エッチング工程では、素子用基板211Bが実質的にエッチングされないエッチング条件で、単粒子膜F
1を構成する粒子M
1がエッチングされる。この際に、単粒子膜F
1を構成する粒子M
1の粒径は、選択的なエッチングによって直径R22に縮小する。粒子M
1が縮小したことにより、互いに隣り合う粒子M
1の間には、新たな間隙が形成される。発光構造体形成面211Sは、こうした新たな隙間を通して、外部に露出する第2の露出部S22を有している。即ち、第1の露出面S21周辺に、新たに第2の露出面S22が形成されることにより、第1の露出面S21は連続した一つの露出面となる。なお、発光構造体形成面211Sは、実質的にエッチングされず、粒子M
1の縮径前と同じ状態を保つ。
【0109】
発光構造体形成面211Sが実質的にエッチングされないエッチング条件では、粒子M
1のエッチング速度に対する発光構造体形成面211Sのエッチング速度の割合が、25%以下であることが好ましい。粒子M
1のエッチング速度に対する発光構造体形成面211Sのエッチング速度の割合は、15%以下であることがより好ましく、特に10%以下であることが好ましい。なお、このようなエッチング条件は、反応性エッチングに用いられるエッチングガスを適切に選択すればよい。例えば、素子用基板211Bがサファイアであり、粒子M
1がシリカである場合には、CF
4、SF
6、CHF
3、C
2F
6、C
3F
8、CH
2F
2、O
2、NF
3からなる群から選択される1種類以上のガスをエッチングガスとして用いればよい。
【0110】
[発光構造体形成面211Sのエッチング工程]
図12に示されるように、エッチング工程では、縮径された粒子M
1をマスクとして発光構造体形成面211Sがエッチングされる。この際に、発光構造体形成面211Sにて、第1の露出部S21は、互いに隣り合う3つの粒子M
1に囲まれた隙間を通じて、エッチングガスのプラズマに曝される。発光構造体形成面211Sにて、第2の露出部S22は、互いに隣り合う2つの粒子M
1の間の隙間を通じて、エッチングガスのプラズマに曝される。そして、単粒子膜を構成する粒子M
1もまた、エッチングガスのプラズマに曝される。
【0111】
ここで、第1の露出部S21と、この第1の露出部S21周辺に位置する第2の露出部S22を合わせた第1の領域214は、互いに隣り合う2つの粒子M
1の間の隙間である第2の露出部S22を足し合わせた第2の領域213よりも面積が大きい。よって、第1の領域214のエッチング速度は、第2の領域213のエッチング速度よりも大きい。それゆえに、発光構造体形成面211Sでは、第1の領域214のエッチングが、第2の領域213のエッチングよりも早く進行する。また、発光構造体形成面211Sでは、第2の領域213のエッチングが、粒子M
1に覆われた部分のエッチングよりも早く進行する。そして、複数の第1の領域214のなかでは、第1の領域214の大きさが大きいほど、第1の領域214でのエッチング速度は大きくなる。また、複数の第2の領域213のなかでは、第2の領域213の大きさが大きいほど、第2の領域213でのエッチング速度は大きくなる。
結果として、発光構造体形成面211Sには、深く窪んだ部分として、第1の領域214に平坦部214が形成される。また、平坦部214よりも浅く窪んだ部分として、第2の領域213にブリッジ部213が形成される。そして、平坦部214、および、ブリッジ部213以外の部分として、半球形状を有する凸部212が形成される。複数のブリッジ部213のなかでは、ブリッジ部213によって連結される凸部212の間の間隔が大きいほど、ブリッジ部213の高さが低くなる。ブリッジ部を積極的に作製する場合、例えばシリカ粒子マスクとサファイア基板の組み合わせの場合、最頻ピッチが3.0μmのとき、凸部212間の間隔が300nm〜700nmとなり、その場合ブリッジの高さは10〜300nmであり、また、最頻ピッチが400nmのとき、凸部212間の間隔が10nm〜100nmとなり、その場合ブリッジの高さは5nm〜100nmである。その他、粒子マスクの材質と基材の材質の組み合わせ、およびガスの選択を含むドライエッチング条件によって凸部212間の間隔およびブリッジの高さは変わるため、上記数値は条件によって変動する。
なお、上述した単粒子膜F
1のエッチング工程にて、第2の露出部S22の大きさが変わると、それに続く発光構造体形成面211Sのエッチング工程では、最終的に形成されるブリッジ部213の高さが変わる。こうしたブリッジ部213の高さの変更方法には、単粒子膜F
1のエッチング工程以外にも、発光構造体形成面211Sのエッチングで使用されるエッチングガスの変更が挙げられる。
例えば、単粒子膜F
1のエッチング速度を上げ、かつ、素子用基板211Bのエッチング速度を下げるガスが、発光構造体形成面211Sのエッチング工程に用いられる。このとき、粒子M
1のエッチング速度は、発光構造体形成面211Sに対してさらに遅くなり、第2の露出部S22の広がる速度も、さらに遅くなる。結局は、第1の露出部S221におけるエッチングの進行度合いと、第2の露出部S22におけるエッチングの進行度合いとの間に大きな差が生じ、結果として、ブリッジ部213の高さは高くなる。
これに対して、単粒子膜F
1のエッチング速度を下げ、かつ、素子用基板211Bのエッチング速度を上げるガスが、発光構造体形成面211Sのエッチングガスに用いられる。このとき、粒子M
1のエッチング速度は、発光構造体形成面211Sに対して近くなり、第2の露出部S22の広がる速度は、さらに速くなる。結局は、第1の露出部S221におけるエッチングの進行度合いと、第2の露出部S22におけるエッチングの進行度合いとの間の差は小さくなり、結果として、ブリッジ部213の高さは低くなる。なお、この際に用いるガスは1種類のガスから構成されてもよいし、2種類以上のガスから構成されてもよい。
さらに、上述した単粒子膜F
1のエッチング工程にて、ブリッジ部213の高さの変更と、上述したエッチングガスの変更によるブリッジ部213の高さの変更とが組み合わされてもよい。
なお、ブリッジ部を積極的に作製しなくても(ブリッジ部の高さが実質ゼロに相当する場合でも)、前述のようにマスク粒径縮小によって凸部212間の間隔が広がる効果で、LED成膜工程に必要な平坦部の面積をより多く確保することができ、より効率的で結晶欠陥の少ないエピタキシャル結晶成長が可能となるため、結果としてこのような基板上に半導体層を成膜して作製した半導体発光素子の発光効率が向上するという恩恵が得られる。
【0112】
凸部212のピッチは、互いに隣り合う粒子M
1の間の間隔と同等であり、凸部212の配置もまた、粒子M
1の配置と同様である。また、ブリッジ部213の配置は、互いに隣り合う粒子M
1同士の中心を結ぶ線上であり、ブリッジ部213の形状は、互いに隣り合う粒子M
1同士の中心を結ぶ線状である。そして、発光構造体形成面211Sのうち、単粒子膜の膜要素が積み重ねられた部分には、凸部団TL2が形成され、粒子M
1の六方充填構造が積み重ねられた部分には、凸部群TG2が形成される。
【0113】
エッチング工程では、発光構造体形成面211Sのエッチング速度が、粒子M
1のエッチング速度よりも高いことが好ましい。粒子M
1のエッチング速度に対する発光構造体形成面211Sのエッチング速度の割合は、200%以上であることが好ましく、300%以下であることがより好ましい。なお、このようなエッチング条件は、反応性エッチングに用いられるエッチングガスを適切に選択すればよい。例えば、素子用基板211Bがサファイアであり、粒子M
1がシリカである場合、Cl
2、BCl
3、SiCl
4、HBr、HI、HClからなる群から選択される1種類以上のガスをエッチングガスとして用いればよい。
【0114】
[半導体発光素子]
図13に示されるように、半導体発光素子200は、素子用基板211Bを基材として有している。半導体発光素子200は、素子用基板211Bの発光構造体形成面211Sに、発光構造体形成面211Sの凹凸構造を覆う発光構造体221を有している。発光構造体221は、複数の半導体層から構成される積層体を有し、電流の供給によってキャリアを再結合させて発光する。複数の半導体層の各々は、発光構造体形成面211Sから順に積み重ねられる。
半導体発光素子200は、第1実施形態に記載の半導体発光素子と同様の構成を採用することが出来る。また、半導体発光素子200は、第1実施形態に記載の方法で形成することができる。
本実施形態によれば、以下の効果が得られる。
【0115】
(1)発光構造体形成面211Sによる全反射は、ブリッジ部213での幾何光学的効果(反射・屈折)によって抑えられる。それゆえに、発光構造体221が生成する光の取り出される効率が高められる。
(2)1つの凸部212に複数のブリッジ部213が連結しているため、1つの凸部212に1つのブリッジ部213が連結している構成と比べて、上記(1)に準じた効果がさらに高められる。
【0116】
(3)凸部群TG2が六方充填構造を有し、六方充填構造を構成する凸部212の各々にブリッジ部213が連結しているため、上記(1)に準じた効果がさらに高められる。
(4)凸部212の配置がランダム性を有するため、発光構造体形成面211Sの面内において、上記(1)に準じた効果の均一性が高められる。
(5)ブリッジ部213の頂面213Tが結晶面であるため、凸部212の形成に起因して半導体層の成長が不足することが抑えられる。
【0117】
(6)互いに隣り合う粒子M
1の間の隙間が広げられるエッチングによって、ブリッジ部213を形成するための第2の露出部S22が形成される。それゆえに、1つの単粒子膜F
1は、凸部212、および、平坦部214を形成するためのマスクと、ブリッジ部213を形成するためのマスクとして機能する。結果として、凸部212を形成するためのマスクと、ブリッジ部213を形成するためのマスクとが各別に必要とされる方法に比べて、素子用基板211Bの製造に必要とされる工程数が少なくなる。
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することもできる。
【0118】
単粒子膜F
1は、発光構造体形成面211Sに移し取られる前に、第1の露出部S221を区画するための隙間と、第2の露出部S22を形成するための隙間とを予め有していてもよい。このような構成であれば、単粒子膜F
1を選択的にエッチングする工程が省かれる。
図14の左側に示されるように、ブリッジ部213の頂面213Tは、ブリッジ部213の連結する方向と交差する方向から見て、平坦部214に向けて窪んだ凹曲面であってもよい。要は、ブリッジ部213は、凸部212の高さよりも低い高さを有して、互いに隣り合う凸部212の一部同士を連結する部分であればよい。
【0119】
図15の左側に示されるように、ブリッジ部213の頂面213Tは、ブリッジ部213の連結する方向と交差する方向から見て、平坦部214に向けて窪んだ凹曲面であって、かつ、
図15の右側に示されるように、ブリッジ部213の連続する方向から見て、平坦部214から突き出た凸曲面であってもよい。要するに、ブリッジ部213の頂面213Tは、結晶面でなくともよい。
平坦部214は、4つ以上の凸部対TP2によって囲まれてもよい。さらに、平坦部214は、凸部対TP2によって囲まれていなくともよい。例えば、ブリッジ部213の連結する方向と交差する方向にて、2つの平坦部214が、1つのブリッジ部213を挟む構造であってもよい。
互いに隣り合う凸部212の間の間隔が、互いに異なる凸部対TP2において、ブリッジ部213の高さは、互いに等しくてもよい。
【0120】
本実施形態の半導体発光素子用基板は、半導体層を含む発光構造体が形成される発光構造体形成面を有し、前記発光構造体形成面は、1つの結晶面に沿って広がっている平坦部と、前記平坦部から突き出した2つの凸部と、前記平坦部から突き出した1つのブリッジ部と、を備え、前記平坦部から突き出している量は、前記凸部よりも前記ブリッジ部にて小さく、前記2つの凸部は、前記1つのブリッジ部によって連結されており、前記凸部の最頻ピッチが100nm以上5μm以下であり、前記多数の凸部のアスペクト比が0.5〜1.0であってもよい。
本実施形態の半導体発光素子用基板は、半導体層を含む発光構造体が形成される発光構造体形成面を有し、前記発光構造体形成面は、1つの結晶面に沿って広がっている平坦部と、前記平坦部から突き出した2つの凸部と、前記平坦部から突き出した1つのブリッジ部と、を備え、前記平坦部から突き出している量は、前記凸部よりも前記ブリッジ部にて小さく、前記2つの凸部は、前記1つのブリッジ部によって連結されており、前記凸部の最頻ピッチが100nm以上1μm以下であり、前記多数の凸部のアスペクト比が0.5〜1.0あってもよい。
本実施形態の半導体発光素子用基板は、半導体層を含む発光構造体が形成される発光構造体形成面を有し、前記発光構造体形成面は、1つの結晶面に沿って広がっている平坦部と、前記平坦部から突き出した2つの凸部と、前記平坦部から突き出した1つのブリッジ部と、を備え、前記平坦部から突き出している量は、前記凸部よりも前記ブリッジ部にて小さく、前記2つの凸部は、前記1つのブリッジ部によって連結されており、前記凸部の最頻ピッチが200nm〜700nmであり、前記多数の凸部のアスペクト比が0.5〜1.0あってもよい。
【0121】
本実施形態の半導体発光素子用基板は、半導体層を含む発光構造体が形成される発光構造体形成面を有し、前記発光構造体形成面は、1つの結晶面に沿って広がっている平坦部と、前記平坦部から突き出した2つの凸部と、前記平坦部から突き出した1つのブリッジ部と、を備え、前記平坦部から突き出している量は、前記凸部よりも前記ブリッジ部にて小さく、前記2つの凸部は、前記1つのブリッジ部によって連結されており、前記凸部の最頻ピッチが100nm以上5μm以下であり、前記多数の凸部のアスペクト比が0.5〜1.0であり、ブリッジ部の長手方向に沿った長さは、50nm以上300nm以下であってもよい。
本実施形態の半導体発光素子用基板は、半導体層を含む発光構造体が形成される発光構造体形成面を有し、前記発光構造体形成面は、1つの結晶面に沿って広がっている平坦部と、前記平坦部から突き出した2つの凸部と、前記平坦部から突き出した1つのブリッジ部と、を備え、前記平坦部から突き出している量は、前記凸部よりも前記ブリッジ部にて小さく、前記2つの凸部は、前記1つのブリッジ部によって連結されており、前記凸部の最頻ピッチが100nm以上5μm以下であり、前記多数の凸部のアスペクト比が0.5〜1.0であり、ブリッジ部の短手方向に沿った長さが10nm以上100nm以下であってもよい。
【0122】
本実施形態の半導体発光素子用基板は、半導体層を含む発光構造体が形成される発光構造体形成面を有し、前記発光構造体形成面は、1つの結晶面に沿って広がっている平坦部と、前記平坦部から突き出した2つの凸部と、前記平坦部から突き出した1つのブリッジ部と、を備え、前記平坦部から突き出している量は、前記凸部よりも前記ブリッジ部にて小さく、前記2つの凸部は、前記1つのブリッジ部によって連結されており、前記凸部の最頻ピッチが100nm以上5μm以下であり、前記多数の凸部のアスペクト比が0.5〜1.0であり、ブリッジ部高さは、凸部の高さの半分より低くてもよい。また、ブリッジ部高さは実質ゼロであってもよく、この場合は粒径縮小によって前記2つの凸部間距離が広くなるように調整し、エピタキシャル成長の起点となりうるサファイア結晶c面の露出部を増やすことで、LED成膜工程において結晶転位密度の低い良質な成膜を行い、高効率のLED発光素子を得ることに寄与する。
【0123】
本実施形態の半導体発光素子用基板は、基板の一方の面に凹凸構造を有する半導体発光素子用基板であって、前記凹凸構造は、多数の凸部と各凸部の間の平坦面とを有し、かつ、隣接する7つの凸部の中心点が正六角形の6つの頂点と対角線の交点となる位置関係で連続して整列しているエリアを複数備え、前記複数のエリアの面積、形状及び格子方位がランダムであり、前記多数の凸部のアスペクト比が0.5〜1.0であり、凸部の頂点を通り、前記基板に垂直な断面で見たときの平坦面f11〜f1nの長さが、凸部c11〜c1nのうちの隣り合う二つの凸部の頂点同士を結ぶ直線に対し、5%〜40%であってもよい。
本実施形態の半導体発光素子用基板は、基板の一方の面に凹凸構造を有する半導体発光素子用基板であって、前記凹凸構造は、多数の凸部と各凸部の間の平坦面とを有し、かつ、隣接する7つの凸部の中心点が正六角形の6つの頂点と対角線の交点となる位置関係で連続して整列しているエリアを複数備え、前記複数のエリアの面積、形状及び格子方位がランダムであり、前記多数の凸部のアスペクト比が0.5〜1.0であり、凸部の頂点を通り、前記基板に垂直な断面で見たときの平坦面f11〜f1nの長さが、凸部c11〜c1nのうちの隣り合う二つの凸部の頂点同士を結ぶ直線に対し、15%〜25%となってもよい。
【実施例】
【0124】
[実施例1]
<半導体発光素子の作成>
直径2インチ、厚さ0.42mmのサファイア基板上に、φ3μmのSiO
2コロイダルシリカ粒子を特願2008−522506に開示される単層コーティング法によって単層コートした。
具体的には、平均粒径が3.02μmのSiO
2コロイダルシリカ粒子(粒径の変動係数=0.85%)の球形コロイダルシリカの3.0質量%水分散体(分散液)を用意した。
ついで、この分散液に濃度50質量%の臭素化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(界面活性剤)を2.5mmol/Lとなるように加え、30分攪拌して、コロイダルシリカ粒子の表面に臭素化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムを吸着させた。この際、臭素化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムの質量がコロイダルシリカ粒子の質量の0.04倍となるように分散液と臭素化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムとを混合した。
ついで、この分散液に、この分散液の体積と同体積のクロロホルムを加え十分に攪拌して、疎水化されたコロイダルシリカを油相抽出した。
【0125】
こうして得られた濃度1.5質量%の疎水化コロイダルシリカ分散液を、単粒子膜の表面圧を計測する表面圧力センサーと、単粒子膜を液面に沿う方向に圧縮する可動バリアとを備えた水槽(LBトラフ装置)中の液面(下層水として水を使用、水温25℃)に滴下速度0.01ml/秒で滴下した。なお、水槽の下層水には、あらかじめ上記サファイア基板を浸漬しておいた。
滴下中より、超音波(出力120W、周波数1.5MHz)を下層水中から水面に向けて照射して粒子が2次元的に最密充填するのを促しつつ、分散液の溶剤であるクロロホルムを揮発させ、単粒子膜を形成させた。
ついで、この単粒子膜を可動バリアにより拡散圧が18mNm
−1になるまで圧縮し、サファイアウェハを5mm/分の速度で引き上げ、単粒子膜を基板の片面上に移し取り、コロイダルシリカからなる単粒子膜エッチングマスク付きのサファイアウェハを得た。
【0126】
こうして得られたサファイアウェハ上のコロイダルシリカからなる単粒子膜エッチングマスクの粒径を縮小するドライエッチングを行った。具体的には、アンテナパワー1500W、バイアス80W、圧力5Paの条件で、CF4ガスにて初期値の平均粒径が3.02μmのSiO
2粒子を、処理後の平均粒径が2.80μmになるように縮小した。
続いて基材であるサファイアウェハを加工するドライエッチングを行った。具体的には、アンテナパワー1500W、バイアス300W、圧力1Pa、エッチングチャンバー内の温度80〜110℃の条件で、Cl
2ガスにてSiO
2マスク/サファイア基板をドライエッチング加工し、表1に示す最頻ピッチ3μm、構造高さ1.5μm、平坦部距離0.4μm、ブリッジ部に相当する部分の長さ0.4μm、ブリッジ部に相当する部分の高さ3nm以下(実質ブリッジ部は高さを持たないため、ブリッジ部は平坦である)で構成される凹凸構造を備える半導体発光素子用サファイア基板を得た。
こうして得た得られた半導体発光素子用サファイア基板の凹凸構造面に、n型半導体層、活性層、p型半導体層を順次積層し、続いてp電極およびn電極を形成して、半導体発光素子を完成した。各GaN系の半導体層は、一般に広く利用されるMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法によって形成した。MOCVD法において、アンモニアガスとIII族元素のトリメチルガリウム、トリメチルアンモニウム、トリメチルインジウムなどのアルキル化合物ガスを、700℃〜1000℃の温度環境でサファイア基板上に供給して熱分解反応させ、基板上で目的の結晶をエピタキシャル成長により成膜する。
【0127】
n型半導体層の構成としては、低温成長バッファ層としてAl
0.9Ga
0.1 Nを15nm、アンドープGaNを4.5μm、nクラッド層としてSiドープGaNを3μm、アンドープGaNを250nmを順次積層した。
活性層は再結合の確率を高くするためバンドギャップの狭い層を数層挟んで内部量子効率の向上を行う多重量子井戸を形成した。その構成としては、アンドープIn
0.15Ga
0.85N(量子井戸層)を4nm、SiドープGaN(バリア層)10nmの膜厚で交互に成膜し、アンドープIn
0.15Ga
0.85Nが9層、SiドープGaNが10層となるように積層した。
p型半導体層としては、MgドープAlGaNを15nm、アンドープGaNを200nm、MgドープGaNを15nm積層した。
n電極を形成する領域において、最表層であるp型半導体層のMgドープGaNからn型半導体層のアンドープGaNまでをエッチング除去し、SiドープのGaN層を露出させた。この露出面にAlとWからなるn電極を形成し、n電極上にPtとAuからなるnパッド電極を形成した。
p型半導体層の表面全面にNiとAuからなるp電極を形成し、p電極上にAuからなるpパッド電極を形成した。
以上の操作でベアチップの状態の半導体素子(一つの素子のサイズが300μm×350μm)を形成した。
【0128】
[比較例1]
直径2インチ、厚さ0.42mmのサファイア基板上にフォトレジストを厚さ750nmでスピンコートし、レーザーリソグラフィー法によりピッチ3μmのマスクを描画したのち、ドライエッチングによる微細加工を行って、表1に示す最頻ピッチ3μm、構造高さ1.5μm、平坦部距離0.4μmで構成される凹凸構造を備える半導体発光素子用サファイア基板を得た。
こうして得た得られた半導体発光素子用サファイア基板の凹凸構造面に、実施例1と同じ構成のn型半導体層、活性層、p型半導体層を順次積層し、続いてp電極およびn電極を形成して、半導体発光素子(一つの素子のサイズが300μm×350μm)を完成した。
【0129】
[実施例2]
平均粒径が305nmのSiO
2コロイダルシリカ粒子(粒径の変動係数=3.4%)を用い、n型半導体層のアンドープGaNを2.5μmとする以外は、実施例1と同じ方法で粒子マスク法による微細加工を行い、表1に示す最頻ピッチ300nm、構造高さ150nm、平坦部距離40nm、ブリッジ部に相当する部分の長さ30nm、ブリッジ部に相当する部分の高さ3nm以下(実質ブリッジ部は高さを持たないため、ブリッジ部は平坦である)で構成される凹凸構造を備える半導体発光素子用サファイア基板を得た。
こうして得られた半導体発光素子用サファイア基板の凹凸構造面に、実施例1と同じ構成のn型半導体層、活性層、p型半導体層を順次積層し、続いてp電極およびn電極を形成して、半導体発光素子(一つの素子のサイズが300μm×350μm)を完成した。
【0130】
[比較例2]
直径2インチ、厚さ0.42mmのサファイア基板上にフォトレジストを厚さ100nmでスピンコートし、電子線リソグラフィー法によりピッチ300nmのマスクを描画したのち、ドライエッチングによる微細加工を行って、表1に示す最頻ピッチ300nm、構造高さ150nm、平坦部距離40nmで構成される凹凸構造を備える半導体発光素子用サファイア基板を得た。
こうして得た得られた半導体発光素子用サファイア基板の凹凸構造面に、実施例1と同じ構成のn型半導体層、活性層、p型半導体層を順次積層し、続いてp電極およびn電極を形成して、半導体発光素子(一つの素子のサイズが300μm×350μm)を完成した。
【0131】
<評価方法>
各実施例、比較例で得られた半導体発光素子(樹脂包埋前のベアチップ)をベアチップのまま小型プローバー(ESSテック社製sp−0−2Ls)にマウントし、オープンプローブにて駆動電流20−40mAで点灯させ、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0132】
[面内放射異方性]
Newport製PR50CCの回転ステージ上に半導体発光素子を取り付け点灯させた。回転ステージをZ軸を中心として0.5°/secで360度回転させつつ、半導体発光素子の発光面から仰角30度、距離150mmの位置からCCDカメラ(トプコン社製輝度計BM7A)にて輝度を連続測定した。
縦軸を輝度、横軸を回転角度としたグラフに、測定結果をプロットして得た曲線と、0度〜360度の輝度平均値の直線を重ねて書き、以下の式より面内放射異方性を求めた。
面内放射異方性=(曲線と直線で囲まれた面積の総和)/(平均値×360度)
面内放射異方性の数値が大きな半導体発光素子は、面内方向の放射に関して異方性が高く均等性が低い放射特性を示す。反対に、面内放射異方性の数値が小さな半導体発光素子は、面内方向の放射に関して異方性が低く均等性が高い放射特性を示す。
【0133】
[外部量子効率]
光取り出し効率向上効果を確認するため、外部量子効率を、labsphere社製スペクトラフレクト積分球とCDS−600型分光器にて測定した。
【0134】
【表1】
【0135】
表1において、平坦部距離は、隣接する凸部の中心点の間に存在する平坦面の幅の平均値を示す。
表1に示すように、実施例1、実施例2では、低い面内放射異方性が確認された。一方、フォトリソグラフィー法で作製した比較例1、干渉露光法で作製した比較例2では、高い面内放射異方性が確認された。このことから、本発明によれば、従来法よりより簡便な方法で、充分な光取り出し効率と低い面内放射異方性が得られることが分かった。
[実施例3]
【0136】
TTVが6.66μm、WARPが17.06μm、|BOW|が11.98μmのサファイア基板を使用する以外は実施例1と同じ方法で粒子マスク法による微細加工を行い、表2に示す最頻ピッチ3μm、構造高さ1.5μm、平坦部距離0.4μmで構成される凹凸構造を備える半導体発光素子用サファイア基板を得た。また基板中央部、外周部から各20点のサンプリング位置を抽出し、凸部の形状を計測して変動係数H’を求めると、各々1.77、2.12の値が得られた。
こうして得られた半導体発光素子用サファイア基板の凹凸構造面に、実施例1と同じ構成のn型半導体層、活性層、p型半導体層を順次積層し、続いてp電極およびn電極を形成して、半導体発光素子(一つの素子のサイズが300μm×350μm)を完成した。
【0137】
[比較例3]
TTVが5.24μm、WARPが17.31μm、|BOW|が11.07μmのサファイア基板を使用する以外は比較例1と同じ方法で、レーザーリソグラフィー法を使用しピッチ3μmの円形マスク作製後、ドライエッチングによる微細加工を行い、表2に示す最頻ピッチ3μm、構造高さ1.5μm、平坦部距離0.4μmで構成される凹凸構造を備える半導体発光素子用サファイア基板を得た。また基板中央部、外周部の凸部の変動係数H’は、各々4.82、10.45の値が得られた。
こうして得られた半導体発光素子用サファイア基板の凹凸構造面に、実施例1と同じ構成のn型半導体層、活性層、p型半導体層を順次積層し、続いてp電極およびn電極を形成して、半導体発光素子(一つの素子のサイズが300μm×350μm)を完成した。
【0138】
[実施例4]
TTVが5.89μm、WARPが18.78μm、|BOW|が11.02μmのサァイア基板を使用する以外は実施例2と同じ方法で粒子マスク法による微細加工を行い、表1に示す最頻ピッチ300nm、構造高さ150nm、平坦部距離40nmで構成される凹凸構造を備える半導体発光素子用サファイア基板を得た。また基板中央部、外周部の凸部の変動係数H’は、各々2.51、2.68の値が得られた。
こうして得られた半導体発光素子用サファイア基板の凹凸構造面に、実施例1と同じ構成のn型半導体層、活性層、p型半導体層を順次積層し、続いてp電極およびn電極を形成して、半導体発光素子(一つの素子のサイズが300μm×350μm)を完成した。
【0139】
[比較例4]
TTVが5.56μm、WARPが18.57μm、|BOW|が10.85μmのサァイア基板を使用する以外は比較例2と同じ方法で電子線リソグラフィー法によりピッチ300nmの円形マスクを描画したのち、ドライエッチングによる微細加工を行って、表1に示す最頻ピッチ300nm、構造高さ150nm、平坦部距離40nmで構成される凹凸構造を備える半導体発光素子用サファイア基板を得た。また基板中央部、外周部の凸部の変動係数H’は、各々5.09、10.13の値が得られた。
こうして得られた半導体発光素子用サファイア基板の凹凸構造面に、実施例1と同じ構成のn型半導体層、活性層、p型半導体層を順次積層し、続いてp電極およびn電極を形成して、半導体発光素子(一つの素子のサイズが300μm×350μm)を完成した。
【0140】
<評価方法>
各実施例、比較例で得られた半導体発光素子(樹脂包埋前のベアチップ)を基板中央部、外周部から各20点抽出し、ベアチップのまま小型プローバー(ESSテック社製sp−0−2Ls)にマウントし、オープンプローブにて駆動電流20−40mAで点灯させ、以下の評価を行った。結果を表2に示す。
【0141】
[外部量子効率]
光取り出し効率向上効果を確認するため、外部量子効率を、labsphere社製スペクトラフレクト積分球とCDS−600型分光器にて測定した。
【0142】
【表2】
【0143】
表2において、凸部の変動係数H’が大きいほどサファイア基板上の凹凸構造の面内均一性が保たれていないことを示し、また標準偏差は各測定位置における光取り出し効率向上率のバラツキを示している。
表2に示すように、実施例3、実施例4では面内中央部、外周部ともに、変動係数H’、光取り出し効率向上率および光取り出し効率向上率の標準偏差がほぼ同一な値を示すため、サファイア基板上の凹凸構造の面内均一性が高いことが確認された。一方、フォトリソグラフィー法で作製した比較例3、干渉露光法で作製した比較例4では、面内中央部と外周部で上記の数値に大きな差があることが確認された。このことから、実施例3及び4によれば、TTVが5μm〜30μm、WARPが10μm〜50μm、|BOW|が10μm〜50μmである平坦性の比較的低い基板を使用しても精度良く凹凸構造の面内均一性が保たれ、充分な光取り出し効率が得られることが分かった。
【0144】
[実施例5]
平均粒径が1.06μmのSiO
2コロイダルシリカ粒子(粒径の変動係数=3.1%)を用い、n型半導体層のアンドープGaNを4.0μmとする以外は、実施例1と同じ方法で粒子マスク法による微細加工を行い、表1に示す最頻ピッチ1.0μm、構造高さ510nm、ブリッジ部の長さ280nm、ブリッジ部の高さ106nmで構成される凹凸構造を備える半導体発光素子用サファイア基板を得た。
こうして得られた半導体発光素子用サファイア基板の凹凸構造面に、実施例1と同じ構成のn型半導体層、活性層、p型半導体層を順次積層し、続いてp電極およびn電極を形成して、半導体発光素子(一つの素子のサイズが300μm×350μm)を完成した。
【0145】
[比較例5]
直径2インチ、厚さ0.42mmのサファイア基板上にフォトレジストを厚さ300nmでスピンコートし、レーザーリソグラフィー法によりピッチ1μmのマスクを描画したのち、ドライエッチングによる微細加工を行って、表3に示す最頻ピッチ1μm、構造高さ500μm、平坦部距離290nmで構成される凹凸構造を備える半導体発光素子用サファイア基板を得た。
こうして得た得られた半導体発光素子用サファイア基板の凹凸構造面に、実施例1と同じ構成のn型半導体層、活性層、p型半導体層を順次積層し、続いてp電極およびn電極を形成して、半導体発光素子(一つの素子のサイズが300μm×350μm)を完成した。
【0146】
<評価方法>
各実施例、比較例で得られた半導体発光素子(樹脂包埋前のベアチップ)をベアチップのまま小型プローバー(ESSテック社製sp−0−2Ls)にマウントし、オープンプローブにて駆動電流20−40mAで点灯させ、以下の評価を行った。結果を表3に示す。
【0147】
[外部量子効率]
光取り出し効率向上効果を確認するため、外部量子効率を、labsphere社製スペクトラフレクト積分球とCDS−600型分光器にて測定した。
【0148】
【表3】
【0149】
表3に示すように、実施例5はブリッジ部が微細構造体に備わっているため、外部量子効率はブリッジ部のない比較例5に比べて約10%高い。これは、実施例5においては、LED素子内部で導波モードとなって閉じ込められた光がブリッジ部があるため散乱して光取り出し面から取り出されたためと解釈される。一方、ブリッジ部のない比較例5においては、上記の光取り出し効果がないため、外部量子効率が劣る。