(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の単セルが積層されて構成される積層電池に電流を印加し、電流が印加された前記積層電池の所定部分の電位および印加された電流に基づいて、前記積層電池の内部抵抗を測定する積層電池の内部抵抗測定回路であって、
前記積層電池に交流電流を印加するソース回路と、
交流電流が印加された前記積層電池の所定部分の電位を測定するセンス回路と、
前記ソース回路を配置する第1の基板と、
前記第1の基板に対して所定の間隔を置いて配置され、前記センス回路を配置する第2の基板と、を備え、
前記ソース回路が前記積層電池に交流電流を印加した際に2つの電流ループが構成されるように電流線が設けられており、前記2つの電流ループによってそれぞれ生じる磁力線の少なくとも一部が前記センス回路側で相殺されるように、前記ソース回路および前記センス回路を配置し、
前記ソース回路は、前記第1の基板の一方の面に設けられ、
前記センス回路は、前記ソース回路が設けられる面とは反対側の前記第2の基板の面に設けられる、
積層電池の内部抵抗測定回路。
【発明を実施するための形態】
【0007】
−第1の実施形態−
図1A及び
図1Bは、第1の実施形態における積層電池の内部抵抗測定回路を適用する積層電池の一例としての燃料電池を説明する図であり、
図1Aは外観斜視図、
図1Bは発電セルの構造を示す分解図である。なお、後述するように、燃料電池スタック1の上面には、各発電セルの電圧を検出するための電圧検出線を取り出す電圧検出タブ60が設けられているが、
図1Aでは省略している。
【0008】
図1Aに示されるように、燃料電池スタック1は、積層された複数の発電セル10と、集電プレート20と、絶縁プレート30と、エンドプレート40と、4本のテンションロッド50とを備える。
【0009】
発電セル10は、燃料電池の単位セルである。各発電セル10は、1ボルト(V)程度の起電圧を生じる。各発電セル10の構成の詳細については後述する。
【0010】
集電プレート20は、積層された複数の発電セル10の外側にそれぞれ配置される。集電プレート20は、ガス不透過性の導電性部材、たとえば緻密質カーボンで形成される。集電プレート20は、正極端子211及び負極端子212を備える。また正極端子211及び負極端子212の間には、中途端子213が設けられる。燃料電池スタック1は、正極端子211及び負極端子212によって、各発電セル10で生じた電子e
−が取り出されて出力する。
【0011】
絶縁プレート30は、集電プレート20の外側にそれぞれ配置される。絶縁プレート30は、絶縁性の部材、たとえばゴムなどで形成される。
【0012】
エンドプレート40は、絶縁プレート30の外側にそれぞれ配置される。エンドプレート40は、剛性のある金属材料、たとえば鋼などで形成される。
【0013】
一方のエンドプレート40(
図1Aでは、左手前のエンドプレート40)には、アノード供給口41aと、アノード排出口41bと、カソード供給口42aと、カソード排出口42bと、冷却水供給口43aと、冷却水排出口43bとが設けられている。本実施形態では、アノード排出口41b、冷却水排出口43b及びカソード供給口42aは図中右側に設けられている。またカソード排出口42b、冷却水供給口43a及びアノード供給口41aは図中左側に設けられている。
【0014】
テンションロッド50は、エンドプレート40の四隅付近にそれぞれ配置される。燃料電池スタック1は内部に貫通した孔(不図示)が形成されている。この貫通孔にテンションロッド50が挿通される。テンションロッド50は、剛性のある金属材料、たとえば鋼などで形成される。テンションロッド50は、発電セル10同士の電気短絡を防止するため、表面には絶縁処理されている。このテンションロッド50にナット(奥にあるため図示されない)が螺合する。テンションロッド50とナットとが燃料電池スタック1を積層方向に締め付ける。
【0015】
アノード供給口41aにアノードガスとしての水素を供給する方法としては、例えば水素ガスを水素貯蔵装置から直接供給する方法、又は水素を含有する燃料を改質して改質した水素含有ガスを供給する方法などがある。なお、水素貯蔵装置としては、高圧ガスタンク、液化水素タンク、水素吸蔵合金タンクなどがある。水素を含有する燃料としては、天然ガス、メタノール、ガソリンなどがある。また、カソード供給口42aに供給するカソードガスとしては、一般的に空気が利用される。
【0016】
図1Bに示されるように、発電セル10は、膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly;MEA)11の両面に、アノードセパレーター(アノードバイポーラープレート)12a及びカソードセパレーター(カソードバイポーラープレート)12bが配置される構造である。
【0017】
MEA11は、イオン交換膜からなる電解質膜111の両面に電極触媒層112が形成される。この電極触媒層112の上にガス拡散層(Gas Diffusion Layer;GDL)113が形成される。
【0018】
電極触媒層112は、たとえば白金が担持されたカーボンブラック粒子で形成される。
【0019】
GDL113は、十分なガス拡散性及び導電性を有する部材、たとえばカーボン繊維で形成される。
【0020】
アノード供給口41aから供給されたアノードガスは、このGDL113aを流れてアノード電極触媒層112(112a)と反応し、アノード排出口41bから排出される。
【0021】
カソード供給口42aから供給されたカソードガスは、このGDL113bを流れてカソード電極触媒層112(112b)と反応し、カソード排出口42bから排出される。
【0022】
アノードセパレーター12aは、GDL113a及びシール14aを介してMEA11の片面(
図1Bの裏面)に重ねられる。カソードセパレーター12bは、GDL113b及びシール14bを介してMEA11の片面(
図1Bの表面)に重ねられる。シール14(14a,14b)は、たとえばシリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム(ethylene propylene diene monomer;EPDM)、フッ素ゴムなどのゴム状弾性材である。アノードセパレーター12a及びカソードセパレーター12bは、たとえばステンレスなどの金属製のセパレーター基体がプレス成型されて、一方の面に反応ガス流路が形成され、その反対面に反応ガス流路と交互に並ぶように冷却水流路が形成される。
図1Bに示すようにアノードセパレーター12a及びカソードセパレーター12bが重ねられて、冷却水流路が形成される。
【0023】
MEA11、アノードセパレーター12a及びカソードセパレーター12bには、それぞれ孔41a,41b,42a,42b,43a,43bが形成されており、これらが重ねられて、アノード供給口(アノード供給マニホールド)41a、アノード排出口(アノード排出マニホールド)41b、カソード供給口(カソード供給マニホールド)42a、カソード排出口(カソード排出マニホールド)42b、冷却水供給口(冷却水供給マニホールド)43a及び冷却水排出口(冷却水排出マニホールド)43bが形成される。
【0024】
図2は、積層電池の内部抵抗測定回路の回路図である。
【0025】
内部抵抗測定装置5は、正極側直流遮断部511と、負極側直流遮断部512と、中途点直流遮断部513と、正極側交流電位差検出部521と、負極側交流電位差検出部522と、正極側電源部531と、負極側電源部532と、交流調整部540と、抵抗演算部550と、を含む。
【0026】
正極側直流遮断部511、負極側直流遮断部512、中途点直流遮断部513、正極側交流電位差検出部521及び負極側交流電位差検出部522の詳細については、
図3を参照して説明する。
【0027】
正極側直流遮断部511は、燃料電池1の正極端子211に接続される。負極側直流遮断部512は、燃料電池1の負極端子212に接続される。中途点直流遮断部513は、燃料電池1の中途端子213に接続される。なお中途点直流遮断部513は、
図2で波線で示したように設けられなくてもよい。これらの直流遮断部は、直流を遮断するが、交流を流す。直流遮断部は、たとえばコンデンサやトランスである。
【0028】
正極側交流電位差検出部521は、燃料電池1の正極端子211の交流電位Vaと中途端子213の交流電位Vcとを入力して交流電位差を出力する。負極側交流電位差検出部522は、燃料電池1の負極端子212の交流電位Vbと中途端子213の交流電位Vcとを入力して交流電位差を出力する。正極側交流電位差検出部521及び負極側交流電位差検出部522は、たとえば差動アンプ(計装アンプ)である。
【0029】
正極側電源部531及び負極側電源部532の詳細については、
図4を参照して説明する。
【0030】
正極側電源部531は、たとえば、
図4に示すようなオペアンプ(OPアンプ)による電圧電流変換回路によって実現できる。この回路によれば、入力電圧Viに比例した電流Ioが出力される。なおIo=Vi/Rsであり、Rsは電流センシング抵抗である。すなわち、この回路は、入力電圧Viで出力電流Ioを調整可能な可変交流電流源である。
【0031】
この回路を使用すれば、出力電流Ioを実測しなくても、出力電流Ioを入力電圧Vi÷比例定数Rsで求めることができる。また、出力が電流なので、電流経路にコンデンサのような位相角が生じる素子が介在しても、積層セル群を流れる交流電流と電流源の出力とは同位相になる。さらには入力電圧Viとも同位相になる。したがって次段の抵抗算出において位相差を考慮する必要がなく回路が簡素である。さらに、電流経路中のコンデンサのインピーダンスがばらついても、位相変化の影響を受けない。このようなことから、正極側電源部531として
図4に示すような回路を用いることが好適である。負極側電源部532も同様である。
【0032】
交流調整部540の詳細については、
図5を参照して説明する。
【0033】
交流調整部540は、たとえば、
図5に示すようなPI制御回路によって実現できる。交流調整部540は、正極側検波回路5411と、正極側減算器5421と、正極側積分回路5431と、正極側乗算器5451と、負極側検波回路5412と、負極側減算器5422と、負極側積分回路5432と、負極側乗算器5452と、基準電圧544と、交流信号源546と、を含む。
【0034】
正極側検波回路5411は、積層電池1の正極端子211に接続された正極側電源部531の配線上の交流電位Vaから不要信号を除去するとともに、直流信号に変換する。
【0035】
正極側減算器5421は、その直流信号と基準電圧544との差を検出する。正極側積分回路5431は、正極側減算器5421から出力された信号を平均化又は感度調節する。
【0036】
正極側乗算器5451は、交流信号源546の振幅を正極側積分回路5431の出力で変調する。
【0037】
交流調整部540は、このようにして、正極側電源部531への指令信号を生成する。また同様に交流調整部540は、負極側電源部532への指令信号を生成する。このように生成された指令信号に応じて正極側電源部531及び負極側電源部532の出力が増減されることで、交流電位Va及びVbが共に所定のレベルに制御される。これにより交流電位Va及びVbは等電位になる。
【0038】
なおこの例ではアナログ演算ICを例に回路構成を示しているが、交流電位Va(Vb)をAD変換器でデジタル変換した後、デジタル制御回路で構成してもよい。
【0039】
抵抗演算部550の詳細については、
図6を参照して説明する。
【0040】
抵抗演算部550は、AD変換器(ADC)551と、マイコンチップ(CPU)552とを含む。
【0041】
AD変換器551は、アナログ信号である交流電流(I1,I2)及び交流電圧(V1,V2)をデジタル数値信号に変換し、マイコンチップ552に転送する。
【0042】
マイコンチップ552は、各発電セル10の内部抵抗Rn及び積層電池全体の内部抵抗Rを算出するプログラムを予め記憶している。マイコンチップ552は、所定の微小時間間隔で順次演算し、又はコントローラ6の要求に応じて、演算結果を出力する。なお内部抵抗Rn及び積層電池全体の内部抵抗Rは、次式で演算される。
【0044】
抵抗演算部550は、アナログ演算ICを用いたアナログ演算回路で実現してもよい。アナログ演算回路によれば、時間的に連続した抵抗値変化を出力することができる。
【0045】
上述した積層電池の内部抵抗測定回路は、積層電池である燃料電池スタック1の内部抵抗Rを測定するために、燃料電池スタック1に交流電流を流すソース回路と、燃料電池スタック1に交流電流が流されることによって、燃料電池1の正極端子211の交流電位Vaと中途端子213の交流電位Vcとの交流電位差、および、負極端子212の交流電位Vbと中途端子213の交流電位Vcとの交流電位差を検出するセンス回路とに大別することができる。ソース回路には、少なくとも正極側電源部531および負極側電源部532が含まれる。また、センス回路には、少なくとも正極側交流電位差検出部521、負極側交流電位差検出部522、交流調整部540、および、抵抗演算部550が含まれる。
【0046】
このソース回路とセンス回路とを1つの基板上に近接して実装した場合、ソース回路に流れる電流によって生じる磁界(磁力線)がセンス回路に作用し、センス回路で検出される交流電位差に誤差が生じる。すなわち、燃料電池スタック1の内部抵抗を正確に測定することができなくなる。
【0047】
従って、本実施形態では、ソース回路に流れる電流によって生じる磁界がセンス回路の検出電圧に影響しないように、ソース回路およびセンス回路の実装位置を定める。
【0048】
図7Aは、本実施形態における内部抵抗測定回路および燃料電池スタック1の斜視図である。
図7Aでは、ソース回路とセンス回路とのそれぞれを、前述の正極端子211、負極端子212及び中途端子213に接続するために、各端子に接続されている発電セルの電圧検出タブ60に結線した例が示されている。
【0049】
図7Aには、燃料電池スタック1と、内部抵抗R1及びR2と、基板51と、正極側電源部531及び負極側電源部532と、基板52と、正極側交流電位差検出部521及び負極側交流電位差検出部522とが、示されている。
【0050】
図7Bは、
図7Aで示した内部抵抗回路および燃料電池スタック1を横から見たときの側面図である。
【0051】
図7Bに示すように、燃料電池スタック1の電圧検出タブ60が並んでいる方向の両端に不図示の支柱が設けられており、その支柱によって基板51及び基板52は、燃料電池スタック1の上面から所定の間隔をおいて設けられている。なお、基板51及び基板52は、燃料電池スタック1の上面に直接設けてもよい。
【0052】
図7A及び
図7Bに示すように、燃料電池スタック1の面のうち上面には、各発電セルの電圧を検出するための電圧検出線を取り出す電圧検出タブ60が燃料電池スタック1の中程に一列に設けられている。なお、
図7Aには、分かり易くするために本実施形態の説明に必要な3個所のみ電圧検出タブ60が示されており、その他の発電セルの電圧検出タブについては省略している。
【0053】
このように、電圧検出タブ60を挟んだ両側に、ソース回路を実装した基板51と、センス回路を実装した基板52とを所定間隔おいて配置する。基板51及び基板52を互いに燃料電池スタック1の同一面に設けることにより、電圧検出タブ60から引き回される電圧検出線の長さの増加を抑えることができる。
【0054】
図7Aには、ソース回路に流れる電流の電流ループ61、62、およびセンス回路に流れる電流の電流ループ63、64が示されている。
【0055】
電流ループ61は、正極側電源部531から出力される電流によるものであり、電流ループ62は、負極側電源部532から出力される電流によるものである。また、電流ループ63は、燃料電池1の正極端子211、中途端子213、および、正極側交流電位差検出部521を流れる電流のループであり、電流ループ64は、燃料電池1の負極端子212、中途端子213、および、負極側交流電位差検出部522を流れる電流のループである。
【0056】
ソース回路上の電流ループ61、62は、センス回路上の電流ループ63、64とは交差しない。これにより、ソース回路上の電流ループがセンス回路上の電流ループと交差する回路構成と比べて、ソース回路上の電流ループ61、62によって生じる磁界がセンス回路上の電流ループ63、64を貫く量を低減することができるので、正極側交流電位差検出部521および負極側交流電位差検出部522で検出される交流電位差の検出精度が向上する。
【0057】
なお、ソース回路上の電流ループ61、62は、電圧検出タブ60に近い位置にできるように、ソース回路の各回路素子は配置されている。またセンス回路上の電流ループ63、64は、電圧検出タブ60に近い位置にできるよう、センス回路の各回路素子は配置されている。これにより、ソース回路およびセンス回路を小型化することができる。
【0058】
ここで、ソース回路上の2つの電流ループ61、62によってそれぞれ生じる磁界(磁力線)がソース回路よりもセンス回路側で相殺されるように、電流ループ線の配置を設定することがより好ましい。
【0059】
図7Aでは、電流ループ61に流れる電流の向きを反時計回りとし、電流ループ62に流れる電流の向きを時計回りとしているので、センス回路側で両電流ループ61、62から等しく離れた位置の磁界(磁力線)は相殺される。これにより、センス回路側において、ソース回路上の電流ループによって生じる磁束の影響をさらに小さくすることができる。
【0060】
図7Bに示すように、基板51は、電流ループ61、62によって生じる磁界が最も強くなる部分(例えば、電流ループ61、62の中心)まで横に広げて形成される。このため、電流ループ61、62によって燃料電池スタック1側に生じる磁界が基板51で遮断される。すなわち、基板51は、センス回路への磁束を遮蔽する遮蔽部材としての役割を果たす。
【0061】
また、基板52は、ソース回路上の電流ループ61、62によって生じる磁界がセンス回路上の電流ループ63、64を貫く量を低減するように形成される。このため、基板52は、センス回路へ作用する磁束を遮蔽する遮蔽部材としての役割を果たす。このように、基板51及び基板52によって、センス回路に作用する磁界の強さを抑制することができる。
【0062】
ソース回路の2つの電流ループ61、62によってそれぞれ生じる磁界(磁力線)がセンス回路側で相殺される配線として、電流ループ線を2回以上の偶数巻きとし、かつ、巻き回数の中点で巻き方向を逆転させる方法もある。
【0063】
図8は、電流ループ線を2回以上の偶数巻きとし、かつ、巻き回数の中点で巻き方向を逆転させる巻き方の一例を示す図である。
図8には、ソース回路の2つの電流ループ61及び62の一部が示されており、電圧検出タブ60が省略されている。
【0064】
このような方法でも、
図7Aに示す回路図と同様に、センス回路側で両電流ループ61、62から等しく離れた位置の磁界(磁力線)を相殺することができる。
【0065】
センス回路を実装した基板52には、各発電セルの電圧を検出するための電圧検出回路も実装されている。この電圧検出回路のセル電圧検出線の一部と、センス回路の正極側交流電位差検出部521および負極側交流電位差検出部522の電圧検出線の一部とは兼用されている。
【0066】
図9は、電圧検出回路のセル電圧検出線の一部と、センス回路の正極側交流電位差検出部521および負極側交流電位差検出部522の電圧検出線の一部とを兼用する部分を説明するための図である。
【0067】
図9に示すように、各発電セルには、セル電圧を検出するためのセル電圧検出線L0〜Lnが接続されている。また、セル電圧検出線の途中に、センス回路の正極側交流電位差検出部521および負極側交流電位差検出部522で交流電位差を検出するための電圧検出線L11、L12、L13が接続されている。具体的には、セル電圧検出線Lnの途中に電圧検出線L13が接続されており、セル電圧検出線L0の途中に電圧検出線L11が接続されている。また、中途端子213と電位が同じであるセル電圧検出線の途中に電圧検出線L12が接続されている。
【0068】
図9において、一点鎖線で囲まれた部分の線が電圧検出線を兼用している部分である。電圧検出線の一部を兼用することにより、配線数を減らすことができる。
【0069】
また、セル電圧検出線L0〜Lnは、センス回路と同一の基板52であるが、センス回路が実装されている面と反対側の面に接続されている。すなわち、セル電圧検出回路は、センス回路が実装された基板の裏側に設けられている。
【0070】
図9では、電圧検出タブ60から取り出されたセル電圧検出線L0〜Lnがセンス回路を実装した基板52の裏側に接続されていることを示している。これにより、センス回路を構成する回路素子と複数のセル電圧検出線L0〜Lnとが接触してセル電圧検出線L0〜Lnが傷つくのを防ぐことができる。
【0071】
また、抵抗演算部550のマイコンチップ(CPU)552は、ソース回路上の電流ループ61、62およびセンス回路上の電流ループ63、64の外側の位置に配置する。これにより、マイコンチップ552が発生する電磁波によって、ソース回路の電流およびセンス回路の電流に影響が及ぶのを防ぐことができる。
【0072】
以上、第1の実施形態における積層電池の内部抵抗測定回路は、複数の単セルが積層されて構成される積層電池に電流を印加し、電流が印加された積層電池の所定部分の電位および印加された電流に基づいて、積層電池の内部抵抗を測定する積層電池の内部抵抗測定回路であって、積層電池に電流を印加するソース回路と、電流が印加された積層電池の所定部分の電位を測定するセンス回路とを備え、ソース回路およびセンス回路を、単セルの状態を検出するための状態検出線(セル電圧検出線)を挟んだ反対側にそれぞれ配置した。これにより、ソース回路とセンス回路とを離した位置に設けることができ、ソース回路上の電流によって生じる磁束がセンス回路を貫く量を減らすことができるので、センス回路で検出される電位の測定精度を向上させることができる。従って、積層電池の内部抵抗を精度良く測定することができる。
【0073】
また、ソース回路およびセンス回路の間に、ソース回路からセンス回路に作用する磁束を遮蔽するための遮蔽部として、例えばソース回路を実装する基板と、センス回路を実装する基板とが広げて形成される。このため、これらの基板によってソース回路からセンス回路に作用する磁束の一部が遮断される。これにより、センス回路で検出される電位の測定精度を向上させることができるので、積層電池の内部抵抗を精度良く測定することができる。
【0074】
−第2の実施形態−
第1の実施形態における積層電池の内部抵抗測定回路では、ソース回路とセンス回路とを同一面内に配置した。第2の実施形態における積層電池の内部抵抗測定回路では、ソース回路およびセンス回路のうちのいずれか一方を表面に配置し、他方を裏面に配置する。
【0075】
例えば、基板51の表面には、正極側電源部531及び負極側電源部532が設けられ、基板52の裏面、すなわち燃料電池スタック1側の面には、正極側交流電位差検出部521及び負極側交流電位差検出部522が設けられる。すなわち、センス回路を実装する基板52の表面及び裏面のうち、ソース回路が配置された面とは反対側の面に対してセンス回路を配置する。
【0076】
これにより、基板51上のソース回路よって生じる磁界(磁力線)が基板52によって遮断される。すなわち、基板52は、ソース回路からセンス回路への磁束を遮蔽する遮蔽部材として機能する。さらに、燃料電池スタック1の筺体が磁性体で形成される場合には、燃料電池スタック1側に生じる磁束を低減することができる。
【0077】
あるいは、基板51の裏面に、正極側電源部531及び負極側電源部532を設け、基板52の表面に、正極側交流電位差検出部521及び負極側交流電位差検出部522を設けるようにしてもよい。この場合には、基板51及び基板52の他に燃料電池スタック1も遮断部材として機能する。
【0078】
このように、基板51の一方の面にソース回路を設け、ソース回路が設けられる面とは反対側の基板52の面にセンス回路を設けることにより、ソース回路から生じる磁界(磁力線)を基板52によって遮断することができる。
【0079】
また、表面と裏面の間には、ソース回路を流れる電流によって生じる磁界がセンス回路に影響が及ぶのを防ぐために、磁気シールド層が設けられている。磁気シールド層は、例えば、銅箔であり、また、鋼材などの磁性体である。
【0080】
以上、第2の実施形態における積層電池の内部抵抗測定回路によれば、ソース回路およびセンス回路のうち、一方の回路を基板の表面に配置し、他方の回路を基板の裏面に配置し、基板の表面と裏面との間に磁気シールド層を設けた。これにより、ソース回路上の電流によって生じる磁束がセンス回路を貫くのを防いで、センス回路で検出される電位の測定精度を向上させることができ、結果として、積層電池の内部抵抗を精度良く測定することができる。
【0081】
本発明は、上述した実施形態に限定されることはない。例えば、積層電池の一例として、燃料電池スタックを挙げたが、一次電池や二次電池など、他の種類の電池でもよい。
【0082】
また、内部抵抗を測定するための具体的な回路構成によって本発明が限定されることはない。
【0083】
電圧検出タブ60は、燃料電池スタック1の上面に設けられているものとして説明したが、側面に設けられていてもよい。
【0084】
図10は、電圧検出タブ60が燃料電池スタック1の側面に設けられている場合のソース回路およびセンス回路の配置方法の一例を示す図である。
【0085】
図10に示すように、ソース回路を実装した基板51を燃料電池スタック1の上面に配置し、センス回路を実装した基板52を燃料電池スタック1の下面に配置している。この場合も、ソース回路およびセンス回路は、セル電圧検出線L0〜Lnを挟んだ反対側にそれぞれ配置された構成となっている。
【0086】
また、センス回路は、燃料電池スタック1を挟んでソース回路とは反対側に設けられているので、ソース回路上の電流ループによって生じる磁束がセンス回路に影響を及ぼすことはない。すなわち、ソース回路及びセンス回路の基盤である燃料電池スタック1が、ソース回路からセンス回路への磁束を遮蔽するための遮蔽部として機能する。これにより、センス回路で検出される電位の測定精度を向上させることができ、積層電池の内部抵抗を精度良く測定することができる。
【0087】
ソース回路を実装する基板51とセンス回路を実装する基板52とは、別々に設けられるものとして説明したが、1つの基板にソース回路とセンス回路とを所定間隔おいて配置するようにしてもよい。これにより、センス回路からソース回路への磁束の一部を遮断することができる。
【0088】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。例えば、基板51及び基板52の他に、ソース回路とセンス回路との間に遮断部材を設けるようにしてもよい。
【0089】
本願は、2012年9月18日に日本国特許庁に出願された特願2012−204626に基づく優先権を主張し、この出願の全ての内容は参照により本明細書に組み込まれる。