【実施例】
【0023】
第1の実施例
図1〜
図5に半導体の搬送を例に第1の実施例を示すが、ローダによるワークの搬送、保守台車による糸パッケージの搬送等でも同様である。各図において、2は半導体の製造装置、検査装置等で、ここではこれらを製造装置4と呼ぶ。製造装置4は1個ないし複数個のステーションSTを備え、天井走行車8との間でFOUP(Front-Opening Unified Pod)等の物品9を受け渡しする。なお天井走行車8はレール状の走行ルート6に沿って天井スペースを走行するが、地上走行の無人搬送車等を搬送装置としても良い。
【0024】
製造装置4は、ステーションST毎に設けられているE84通信端末11を介して、ステーションSTと天井走行車8との物品の受け渡し前に、天井走行車8と光通信する。また走行ルート6に沿って数百台規模の天井走行車8が走行し、システムコントローラ24が、LAN20とアクセスポイント22を介して、個々の天井走行車8と通信し、天井走行車8を制御する。なお天井走行車8は一方向に走行し、逆方向に走行することは禁止されている。コントローラ24は、ステーションの状態を管理する管理部26を備え、これは実施例により始めて実現される機能である。なお管理部26は物理的には、システムコントローラ24から独立していても良い。
【0025】
16はアダプタ、18はデバイスサーバ等の通信デバイスで、これらにより実施例の通信機器を構成する。アダプタ16は製造装置4とE84通信端末11との間に挿入され、通信デバイス18は例えば複数台のアダプタ16と有線、あるいはWi-Fi(Wireless Fidelity)等により通信すると共に、無線LANあるいはWi-Fi等を介してアクセスポイント22と通信する。14は障害物検出部で、人感センサ、あるいはスイッチ等からなり、ステーションSTの付近に人等の障害物が存在することを検出し、通信デバイス18へWi-Fi等により送信する。
図1の天井走行車8〜管理部26により、実施例の通信システムを構成する。
【0026】
図2にアダプタ16と通信デバイス18の構成を示す。12はステーション端末でステーションST側の通信端末である。28はE84通信端末11とステーション端末12との間の有線のパラレル通信線で、実際よりも本数を少なく表示してある。アダプタ16は、E84通信端末11とステーションST側のステーション端末12との通信線28の接続を、スイッチ30によりON/OFFし、接続がOFFである状態をアダプタコントロールモード、ONである状態をアダプタパスモードと呼ぶ。なお31,32は通信線28との接続用のコネクタである。また29は通信線28から分岐する第2の通信線である。なお、スイッチ30は
図2では、便宜上機械式接点を有するスイッチとして描かれているが、半導体スイッチを適用するのが好ましい。
【0027】
通信デバイス18は、主回路基板40とアダプタ16に接続するIOポート毎のアダプタ基板42とから成り、アダプタ基板42を例えば5個備えているが、その内1個のみを図示する。34は有線の通信線、35〜37はコネクタである。モード制御回路43はスイッチ30を制御し、制御回路44は、アダプタコントロールモードで、ステーション端末12へ信号を送出する。監視回路45,46は通信線28を経由する信号を監視し、47〜50は個別ポートである。なお個別ポート47〜50毎にポート番号が割り当てられているが、ポート番号はどのアダプタ16のポートであるかを一意に特定する番号であれば良い。通信デバイス18は、アダプタパスモードで搬送装置からの信号をE84通信端末11を経由して監視し、アダプタパスモードでもアダプタコントロールモードでも、ステーション端末12からの信号とを監視する。これらは例えばE84プロトコルに基づく、物品の受け渡しに関する信号である。
【0028】
図5に、アダプタパスモード(IOポートP1)とアダプタコントロールモード(IOポートP2)での通信線28の信号を示し、OUTは通信デバイス18もしくはE84通信端末11からの信号を、INはステーション端末12からの信号を示す。これらの信号はLANを介して管理部26に転送されて記憶される。このため管理部26には、全てのステーションに対し、
図5に相当するデータが蓄積されている。
【0029】
CPU54は通信デバイス18の全体を制御し、LANユニット52は
図1のアクセスポイント22と通信する。LANユニット52は、通信デバイス18毎のネットワークアドレス(IPアドレス)と、アダプタ16を特定するためのポート番号を記憶し、原則として1個の通信デバイス18が複数個のアダプタ16を管理する。LANユニット52とシステムコントローラ24との通信では、通信デバイス18のネットワーアドレスにポート番号を付加し、どのステーションSTに関する信号であるかを特定する。
【0030】
図3に、通信デバイス18とシステムコントローラ24での処理を示す。アダプタ16は常時はアダプタコントロールモードに置かれ、E84通信端末11とステーション端末12との通信は不可、通信デバイス18とステーション端末12との通信は可で、通信デバイス18はステーション端末12の信号からステーションSTの状態を監視する(ステップ11)。そして通信デバイス18はステーションSTの状態をシステムコントローラ24へ報告し(ステップ12)、システムコントローラ24はステーションSTの状態を管理部26に記憶する。またシステムコントローラ24は、ステーションSTの状態に応じて搬送指令を修正する(ステップ21)。
【0031】
システムコントローラ24は天井走行車8の位置と状態等をリアルタイムに管理しているので、物品の受け渡しのためステーションSTに天井走行車8が接近すると、アダプタ16のモードの切替を指令し(ステップ22)、通信デバイス18はアダプタ16の状態をアダプタコントロールモードからアダプタパスモードへ変更する(ステップ13)。なおスイッチ30よりもE84通信端末11寄りで、天井走行車8からの通信要求を監視し、通信要求があると、アダプタコントロールモードからアダプタパスモードへ変更しても良い。このようにすると、システムコントローラ24でのスケジュール外の天井走行車8が到着した場合でも、物品の受け渡しを実行できる。
【0032】
アダプタパスモードでは、E84通信端末11とステーション端末12との通信は可、通信デバイス18とステーション端末12との通信は原則として不可で、通信デバイス18は通信線28の信号から、ステーションSTの状態と物品の受け渡しの状況を監視する(ステップ14)。天井走行車8は光通信等によりE84通信端末11と通信し、この信号はステーション端末12へ転送され、物品の受け渡しのためのE84プロトコルを実行する。また天井走行車8ステーション端末12間の信号は、通信デバイス18からシステムコントローラ24へ転送され、システムコントローラ24は受け渡しの実行状況を管理できる(ステップ23)。天井走行車とE84通信端末11との通信が終了すると(ステップ16)、例えばシステムコントローラ24からの指令により、アダプタ16のモードをアダプタコントロールモードに戻す(ステップ17,24)。なおシステムコントローラ24の制御ではなく、天井走行車とE84通信端末11との受け渡し終了の確認信号を通信デバイス18が受信することにより、アダプタ16のモードをアダプタコントロールモードに戻しても良い。アダプタパスモードでは、天井走行車8とステーション端末12とは従来通りの通信を実行でき、アダプタ16は通信を傍受する。
【0033】
天井走行車8もLAN20を介する通信部を備えている。そして天井走行車8は、管理部26のデータにより、ステーションの状態を知ることができる。天井走行車8は、荷下ろし先あるいは荷積み先のステーションへの到着前から、LAN20を介してアダプタコントロールモードで、ステーションとの間の物品の受け渡し手順を開始する。また物品の受け渡し後に、天井走行車8は走行を開始しながら、アダプタコントロールモードでステーションとの物品の受け渡しの完了手順を実行する。これにより受け渡しの完了手順の実行前に、天井走行車8は走行を開始できる。
【0034】
以上のようにすると、システムコントローラ24がステーションSTの状態を管理できる。例えば天井走行車8の走行先のステーションSTが、物品を受け渡しできる状態にない場合、事前に、天井走行車8が目的のステーションSTを通過して周回走行する、あるいは他のステーションで物品を受け渡しするように指令できる。すると、天井走行車が無駄に停止もしくは減速して渋滞を引き起こすことがない。図示しない生産管理コントローラから搬送を要求され、従来例では生産管理コントローラからの搬送要求が有るまで、システムコントローラ24はステーションSTの状態を知ることができない。実施例では、生産管理コントローラから要求されるよりも前に、ステーションSTに搬出物品が生じた等のことを、システムコントローラ24が認識できることがある。するとシステムコントローラ24は、そのステーションSTの属するイントラベイルート(ベイ単位の周回ルート)へ向けて、空の天井走行車8を配車する等のことができる。またステーションSTへ次ぎに搬入すべき物品が、システムコントローラ24側で既知の場合、生産管理コントローラから要求されるよりも前に、ステーションSTへの物品の搬送を開始することができる。
【0035】
天井走行車8はステーションSTの直上へ昇降台を下降させて物品を受け渡しするので、昇降台あるいは物品がステーションSTの付近の人等と干渉することが有る。このため天井走行車8に障害物センサ等を搭載し、ステーションSTの付近の障害物を検出することが行われている。しかしながら天井付近からステーションSTの付近の人を確実に検出することは難しい。これに対して、ステーションSTに設けたスイッチを押して天井走行車との受け渡しを禁止する、あるいはステーションSTに設けた人感センサにより人を検出することは容易である。そこで障害物検出部14の信号により、アダプタ16の状態をアダプタコントロールモードに維持し、天井走行車8とステーション端末12との通信を禁止すること、あるいはアダプタパスモードでも、天井走行車8へ受け渡しの禁止を割り込んで通知すること等により、人と天井走行車との干渉を確実に防止できる。なお障害物検出部14は例えば有線によりあるいはLAN20を介して、通信デバイス18と通信する。
【0036】
ステーションSTを複数備え、1バッチで複数のFOUPの半導体を処理する製造装置4では、どのステーションSTに物品を受け渡しするかは重要ではないことがある。このような状況を
図4に示し、製造装置4は例えば4個のステーションST4a〜4dを備え、天井走行車は図の矢印方向に走行する。システムコントローラ24は、通信デバイス18からの通信により、どのステーションST4a〜4dに搬送物品が生じたかをリアルタイムに管理しているので、搬送物品があるステーション中の最も下流側のステーションから物品が先に搬出され、最も上流側のステーションから最後に物品が搬出されるように、天井走行車への搬送指令を変更する。下流側のステーションから先に物品を搬出すると、ステーションST4a〜4dでの天井走行車の渋滞を防止できる。同様にステーションST4a〜4dへ物品を荷下ろしする際に、空のステーション中で最も下流側のステーションを優先して、物品を荷下ろしするように搬送指令を変更すると、天井走行車の渋滞を防止できる。
【0037】
実施例では、天井走行車システムへの応用を示したが、繊維機械ユニットへの保守台車、多軸の工作機械へのローダ等でも、同様に実施例を適用できる。またアダプタコントロールモードとアダプタパスモードとの切替を、例えば10m秒〜100m秒程度の周期で規則的に行い、搬送装置は通信不可の場合に、この周期以上待機するようにしても良い。
【0038】
第2の実施例
図6〜
図13に通信システム2と通信デバイス18との第2の実施例を示し、
図1〜
図5の第1の実施例と同じ符号は同じものを表し、記載の無い点は第1の実施例と同様である。
図6において、4は製造装置で、半導体の処理装置、繊維の加工装置、工作機械等であり、1個〜複数個のステーションST1〜ST3を備えて、搬送装置の例としての天井走行車8との間で、物品9を移載する。天井走行車8に代えて、地上走行の無人搬送車、工作機械のローダ、繊維機械の保守台車等でも良い。なお天井走行車8は走行ルート6に沿って一方向に走行する。ステーションST1〜ST3はステーション端末12を備え、天井走行車8はE84通信端末10を備え、ステーション端末12にはアダプタ16を介してE84通信端末11が接続され、E84通信端末11は走行ルート6に支持されている。18はデバイスサーバ等の通信デバイスで、複数のIOポートを備え、IOポートのモードは
・ コントロールモード(アダプタ16を使用しないモード)と、
・ アダプタコントロールモード(アダプタ16を経由して、通信デバイス18とステーション端末12とが通信するモード)、
・ アダプタパスモード(アダプタ16、E84通信端末10及びE84端末11を経由し、天井走行車8がステーション端末12と通信するモード)、
の3種類である。通信デバイス18は、通信システム2内に複数設けられている。またコントロールモードでは、ステーション端末12は直接通信デバイス18に接続され,E84通信端末11には接続されていない。
【0039】
20はLANで、天井走行車8はアクセスポイント22を介してLAN20と接続され、LAN20にはシステムコントローラ24等が接続されている。通信デバイス18は、Wi−Fi等によりアクセスポイント22を介してLAN20に接続され、あるいは有線で直接LAN20に接続されている。システムコントローラ24には管理部26が設けられ、複数の通信デバイス18からのデータ(ステーションの状態に関するデータ)の現在値を記憶すると共に、通信デバイス18からの過去のデータを保存する。さらに管理部26は複数の通信デバイス18からのデータを検索及び編集できる。管理部26のデータから、ステーション毎の移載回数、ステーションへ製造装置から物品が搬出されてから移載までの待時間の分布、ステーションへの物品の移載をシステムコントローラへ要求してから移載までの待時間の分布、等を求めることができる。
【0040】
端末58はシステムコントローラ24に接続されて、天井走行車8への搬送指令の変更、ステーションの状態の解析、通信システム2の運用ルールの変更等を行う。また固定もしくは携帯の端末60からも同様に、搬送指令の変更、ステーションの状態の解析、通信システム2の運用ルールの変更等を行うことができる。
【0041】
図7に通信デバイス18とアダプタ16を示し、通信デバイス18は複数のIOポートP1〜P6を備え、IOポートP1〜P6は例えば17本、24本等の通信線からなる通信ケーブル62を備えて、アダプタ16あるいはステーション端末12に接続される。通信ケーブル62の通信線は例えば、ステーション端末12への通信に8本、ステーション端末12からの通信に8本、アダプタ16のスイッチ30の切り替えに1本の計17本である。スイッチ30がオンのモードがアダプタパスモード、オフのモードがアダプタコントロールモード、アダプタ16が接続されていないモードがコントロールモードである。
【0042】
CPU(中央制御装置)54は、IOポートP1〜P6と、LANユニット52及び管理テーブル56等を制御する。LANユニット52は、無線によりアクセスポイント22を介して、あるいは有線により直接に、LAN20に接続され、天井走行車8,システムコントローラ24,端末60等と通信する。管理テーブル56には、IOポート毎にそのモード及び通信データが一時記憶されている。通信デバイス18はIPアドレス、MACアドレス等のネットワークアドレスにより特定され、各IOポートは通信デバイス18のネットワークアドレスにポート番号を付加することにより特定される。またIOポートは、ステーション端末12等の通信システムでの周辺機器に対応し、管理テーブル56には通信デバイスのネットワークアドレス、ポート番号と、IOポートが対応する周辺機器を特定するデータ、モード、及びポートでの通信データが記憶されている。ポートのデータの意味は、例えばポートのモードによって定まり、このデータの解釈ルールをシステムコントローラ24の管理部26と天井走行車8とが記憶している。
【0043】
図8に管理テーブル56のデータの例を示し、MACアドレスとIPアドレスとが、通信デバイス18を特定するデータとして記憶され、IOポート番号と対応するステーションの番号、及びIOポートのモードが記憶されている。さらにIOポートを経由する通信データ、ここではE84通信によるIN/OUT各8ビットのデータが記憶されている。またアダプタ16に接続されるIOポートでは、スイッチ30のON/OFFのデータも記憶され、コントロールモードではスイッチ30のデータは存在しない。なおスイッチ30のON/OFFのデータはモードのデータと重複するので、少なくともいずれかを記憶する。
【0044】
図9〜
図11に、IOポートの3種類のモードを示す。
図9のコントロールモードでは、IOポートはステーション端末12と通信して、E84通信端末11とは通信せず、通信データ(ここではE84通信の16ビットデータ)を管理テーブル56に一時記憶する。システムコントローラ24は通信デバイス18と通信し、管理部26にIOポート毎のデータを保存する。天井走行車8等の搬送装置は、システムコントローラ24と通信し、あるいは通信デバイス18と通信することにより、ステーションの状態(移載準備が整っているかどうか)を、ステーションから離れたところで知ることができる。そしてステーションに到着するとあるいは到着前に、E84通信での移載前の手順を完了し、物品を移載すると出発する。そして例えば出発後に、移載完了後にE84通信での移載完了後の手順を実行する。
【0045】
通信システム2での主要な周辺機器はステーションであるが、これ以外に防火扉、天井走行車8への充電装置、天井走行車8をメンテナンスエリアへ昇降させるリフター等の周辺機器が有る。これらの周辺機器はシステムコントローラ24と独立し、通信機能を持たないものが多い。そこでこれらの周辺機器を通信デバイス18に接続し、その状態をシステムコントローラ24の管理部26が記憶すると共に管理し、システムコントローラ24等からの指令を送信する。またステーションでは人と天井走行車8からの物品9とが干渉することがある。例えば人がステーションへ物品の受け渡し等を行おうとしている場合に、天井走行車8が物品を下降させると、干渉の危険性がある。そこで
図6に示すように、人体検出センサ、スイッチ等からなる障害物検出部14を設けて、ステーションへ人がアクセスしていることを検出する。障害物検出部14を通信デバイス18のIOポートに接続する、あるいはステーション端末12からの通信線と共に、障害物検出部14からの通信線を、同じIOポートへ接続することにより、通信デバイス18側で障害物の有無を検出できる。このデータに天井走行車8がアクセスすると、天井走行車8と人との間の干渉を確実に防止できる。
【0046】
ステーションの状態にシステムコントローラ24、天井走行車8,及び端末58,60等でアクセスできると、搬送指令を変更することができる。例えば走行ルートに沿って上流側から下流側へ配置された複数のステーションに対し、下流側のステーションを優先して移載すると、移載のために停止中の天井走行車が、上流側の天井走行車の移載を妨げることが無い。そこで複数のステーションのいずれと移載しても良い場合、移載準備が整っている範囲で、下流側のステーションを優先するように、搬送指令を変更する。また特急品のように搬送を急ぐ物品が存在する場合、ステーション側の準備ができると、直ちに天井走行車をそのステーションへ走行させるように、搬送指令を変更できる。
【0047】
図10にアダプタコントロールモードでの処理を示す。アダプタコントロールモードでは、天井走行車8は、通信デバイス18からアダプタ16を介してステーション端末12と通信する。特に停止前に移載前のE84通信を完了し、出発と同時あるいは出発後に移載後のE84通信を完了する点は、コントロールモードと同様である。これらの通信データは通信デバイス18が傍聴し、管理テーブル56と管理部26とに記憶される。他の点では、コントロールモードと同様である。
【0048】
図11にアダプタパスモードでの処理を示す。アダプタパスモードでは、天井走行車8がステーションに到着し、従来のE84通信端末11を介して物品の移載を行う。アダプタパスモードでは、天井走行車8はアダプタ16を介してステーション端末12と通信し、通信データは通信デバイス18が傍聴して、管理テーブル56に一時記憶されると共に、管理部26へ転送される。ステーション端末12との通信以外の点では、コントロールモードと同様である。
【0049】
また、LANユニットを介して例えばコントローラから指示を受け付け、スイッチ30を切替えることにより、アダプタパスモードとアダプタコントロールモードとを動的に変更する事が出来る。例えば、天井走行車にLAN経由の通信デバイスとの通信機能が備わっていない場合等は、システムコントローラは対象の天井走行車が移載を実行できるように、通信デバイスに指示を行い、所定のステーションをアダプタパスモードへ変更する事が出来る。
【0050】
さらに、搬送が頻繁に発生しておりLAN上の通信が過剰に発生する可能性があることを、コントローラが検出すると、幾つかのステーションに対応するIOポートをアダプタパスモードに変更し、各天井走行車もアダプタパスモードのステーションでは従来型の通信を行うように、通信デバイスと天井走行車とに指令する。これによって、ネットワーク上の通信負荷を軽減できる。あるいは、通信デバイスが、通信部に異常が生じていることを検出すると、通信デバイスのアダプタコントロールモードに設定されたIOポートをアダプタパスモードに変更する。これによって、搬送に障害がきたすのを防ぐ事が出来る。
【0051】
図12に実施例の特徴を示す。
1) ステーションの状態を遠隔から認識できるので、移載準備の整っていないステーションとの移載のために、天井走行車が減速あるいは停止することがない。
2) ステーション、充電装置、リフター、防火扉等の周辺機器の状態データを、システムコントローラ24に付属の管理部26のデータを介して、あるいは通信デバイス18を介して、通信システム2の全体で共有できる。
3) ステーションの状態に応じて搬送指令を修正し、運用効率を最適化できる。
4) システムコントローラ24、天井走行車8,端末58,60等での判断により、運用ルールと搬送指令とを変更できる。また管理部26のデータによりステーションに関するデータを解析できる。
【0052】
図13に、複数のステーションST4〜ST6のいずれとも、天井走行車8が物品9を移載できる状況を示し、下流側から上流側への順にステーションST4〜ST6が並んでいる。例えばシステムコントローラ24は、物品を移載しても良い一群のステーションをグループとして指定し、グループ内でどのステーションと移載するかは天井走行車8の判断に委ねる。そして移載したステーションを、天井走行車8からシステムコントローラ24へ報告させる。
図13の状況で、天井走行車8は通信デバイス18を介してステーションST4〜ST6の状態を確認し、移載可能な範囲で最下流のステーション、例えばステーションST4と移載し、移載後にステーションST4と移載したことをシステムコントローラ24へ報告する。なおシステムコントローラ24がグループを指定する代わりに、走行ルートのマップにグループを記載し、天井走行車8が自律的に移載するステーションを選択しても良い。
【0053】
最適実施例
図14,
図15に最適実施例を示し、
図1〜
図13と同じ符号は同じものを表し、記載の無い点は
図1〜
図13の各実施例と同様である。製造装置4は1個〜複数個のステーションST1〜ST4を備え、ステーションST1〜ST4にはステーション端末12が設けられ、有線あるいは無線で通信デバイス18と通信し、ステーション端末12からの受信データと、ステーション端末12へ送出するデータとが、通信デバイス18のIOポートに記憶される。またステーションST3には障害物検出部14が設けられ、通信デバイス18のステーションST3用のIOポートへ障害物検出部14からの信号が入力される。天井走行車8,システムコントローラ24,端末58,60は、LAN20を介して、通信デバイス18と通信し、IOポートのON/OFF信号を読みとると共に、排他制御ではIOポートのON/OFF信号を変更できる。またIOポートのON/OFF信号は管理部26に記憶されて、天井走行車8,端末58,60,及びシステムコントローラ24等が参照できる。
【0054】
図15は通信デバイスでの処理を示し、ステップ1でLAN経由でのIOポートへのアクセスの有無を監視し、アクセスされた場合、アクセスした機器のIPアドレスと、天井走行車8、システムコントローラ24,端末58等の機器の種別と、指定されたIOポートのポート番号、及び排他制御を必要とするか否かのアクセスの種類を受信する(ステップ2)。
【0055】
排他制御の要否をステップ3で判別し、不要な場合、機器からの情報を記憶し(ステップ5)、IOポートの状態(IOポートからのON/OFF信号)を送信し(ステップ6)、次の要求がなければ通信を終了する(ステップ8)。排他制御が必要だが、他の機器が排他制御を実行中の場合、通信を拒否する(ステップ4)。他の機器との間で排他制御を実行していない場合、排他制御を認め、ステップ5,6,8を実行すると共に、ステップ7で、IOポートのON/OFF信号を変更する。IOポートのON/OFF信号はステーション端末12にとっては搬送システムからの信号で、ON/OFF信号の変更は例えばステーションへの物品の受け渡しを開始することの要求、受け渡しが終了したことの確認、受け渡し中の異常の発生等の信号を送出することである。そして排他制御を行いながら、天井走行車8はステーションへの物品の受け渡し等を行う。