(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エンジンのシリンダブロックに設けられ、シリンダの周囲を囲むブロック側ウォータジャケットと、上記エンジンのシリンダヘッドに設けられたヘッド側ウォータジャケットとを備え、ウォータポンプからの冷却液を、冷却液導入路を介して、上記ブロック側ウォータジャケット及びヘッド側ウォータジャケットに供給するように構成された、エンジンの冷却装置であって、
上記シリンダヘッドの一端部に、上記ブロック側ウォータジャケットと上記ヘッド側ウォータジャケットとを連通する第1及び第2の連通孔がブロック側ウォータジャケットの周方向に並ぶように設けられ、
上記ブロック側ウォータジャケットは、その周方向において、上記冷却液導入路からの冷却液を導入して上記シリンダの周囲を略一周するように流した後に上記第1の連通孔を介して上記ヘッド側ウォータジャケットへ導出させるブロック冷却流路と、上記冷却液導入路からの冷却液を、上記ブロック冷却流路をバイパスして上記第2の連通孔を介して上記ヘッド側ウォータジャケットへ導出させるためのバイパス流路とに分割され、
上記ブロック側ウォータジャケット内における上記第1の連通孔と上記第2の連通孔との間に対応する部分には、上記ブロック冷却流路の下流端部と上記バイパス流路とを周方向に仕切る仕切部が設けられ、
上記仕切部に、上記バイパス流路を通る冷却液の一部を上記第1の連通孔へ指向させる冷却液流を形成するための調整孔が設けられ、
上記ブロック側ウォータジャケット内における上記ブロック冷却流路の上流端部と上記バイパス流路との境界には、上記冷却液導入路からの冷却液を、上記ブロック冷却流路と上記バイパス流路とに分流させるための分流壁部が設けられており、
上記ブロック側ウォータジャケットの内部に配設されたウォータジャケットスペーサを更に備え、
上記ウォータジャケットスペーサには、上記調整孔が設けられた上記仕切部と、上記分流壁部とが形成されていることを特徴とするエンジンの冷却装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1のように、冷却液のヘッド側ウォータジャケットへの導出経路として2つの経路を設けた場合、シリンダヘッドにおけるシリンダブロック側の面には、シリンダの周囲を流れた冷却液をブロック側ウォータジャケットからヘッド側ウォータジャケットへ導出させるための第1の連通孔と、ブロック側ウォータジャケットをバイパスしてヘッド側ウォータジャケットに導出させる第2の連通孔とが設けられることになる。そして、エンジンの冷間時には、冷却液が第2の連通孔のみを介してヘッド側ウォータジャケットに流入し、エンジンの温間時には、冷却液が第1及び第2の連通孔を介してヘッド側ウォータジャケットに流入することになる。
【0006】
しかし、エンジンの冷間時には、冷却液がシリンダの周囲を流れないようにしているので、第1の連通孔よりヘッド側ウォータジャケットに流入しようとする冷却液の流れがなく、このため、第2の連通孔を介してヘッド側ウォータジャケットに流入した冷却液が、その流れの勢いによって、第1の連通孔よりブロック側ウォータジャケットへ流出する虞れがある。
【0007】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、冷却液がシリンダの周囲を流れていないときに、第2の連通孔を介してヘッド側ウォータジャケットに流入した冷却液が、シリンダの周囲を流れた冷却液をヘッド側ウォータジャケットに流入させるための第1の連通孔よりブロック側ウォータジャケットへ流出するのを防止しようとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明では、エンジンのシリンダブロックに設けられ、シリンダの周囲を囲むブロック側ウォータジャケットと、上記エンジンのシリンダヘッドに設けられたヘッド側ウォータジャケットとを備え、ウォータポンプからの冷却液を、冷却液導入路を介して、上記ブロック側ウォータジャケット及びヘッド側ウォータジャケットに供給するように構成された、エンジンの冷却装置を対象として、上記シリンダヘッドの一端部に、上記ブロック側ウォータジャケットと上記ヘッド側ウォータジャケットとを連通する第1及び第2の連通孔がブロック側ウォータジャケットの周方向に並ぶように設けられ、上記ブロック側ウォータジャケットは、その周方向において、上記冷却液導入路からの冷却液を導入して上記シリンダの周囲を略一周するように流した後に上記第1の連通孔を介して上記ヘッド側ウォータジャケットへ導出させるブロック冷却流路と、上記冷却液導入路からの冷却液を、上記ブロック冷却流路をバイパスして上記第2の連通孔を介して上記ヘッド側ウォータジャケットへ導出させるためのバイパス流路とに分割され、上記ブロック側ウォータジャケット内における上記第1の連通孔と上記第2の連通孔との間に対応する部分には、上記ブロック冷却流路の下流端部と上記バイパス流路とを周方向に仕切る仕切部が設けられ、上記仕切部に、上記バイパス流路を通る冷却液の一部を上記第1の連通孔へ指向させる冷却液流を形成するための調整孔が設けられ
、上記ブロック側ウォータジャケット内における上記ブロック冷却流路の上流端部と上記バイパス流路との境界には、上記冷却液導入路からの冷却液を、上記ブロック冷却流路と上記バイパス流路とに分流させるための分流壁部が設けられており、上記ブロック側ウォータジャケットの内部に配設されたウォータジャケットスペーサを更に備え、上記ウォータジャケットスペーサには、上記調整孔が設けられた上記仕切部と、上記分流壁部とが形成されている、という構成とした。
【0009】
上記の構成により、エンジンの冷間時のように冷却液がブロック冷却流路を流れていなくても、バイパス流路を通る冷却液の一部が調整孔を通った後に、第1の連通孔へ指向する冷却液流となって第1の連通孔からヘッド側ウォータジャケットに流入する。この結果、バイパス流路から第2の連通孔を介してヘッド側ウォータジャケットに流入した冷却液が、第1の連通孔よりブロック側ウォータジャケット(ブロック冷却流路)へ流出するのを防止することができる。したがって、エンジンの暖気を効果的に促進することができる。また、エンジンの温間時のように冷却液がブロック冷却流路を流れている場合、上記調整孔及び第1の連通孔を介してヘッド側ウォータジャケットに流入する冷却液の流れが比較的強いので、その流れに吸い込まれるように、ブロック冷却流路を流れてきた冷却液が第1の連通孔よりヘッド側ウォータジャケットに流入し、これにより、ブロック冷却流路からヘッド側ウォータジャケットへの冷却液の流入が促進される。
【0010】
また、分流壁部により、冷却液導入路からブロック冷却流路に流入した冷却液は、バイパス流路に流入することなく、ブロック冷却流路を流れ、冷却液導入路からバイパス流路に流入した冷却液は、ブロック冷却流路に流入することなく、バイパス流路を流れることになる。この結果、エンジンの冷間時に冷却液のブロック冷却流路への流通を確実に停止して、エンジンの暖気を効果的に促進しながら、第2の連通孔を介してヘッド側ウォータジャケットに流入した冷却液が、第1の連通孔からブロック側ウォータジャケットへ流出するのを防止することができる。
【0011】
さらに、ウォータジャケットスペーサにより仕切部及び分流壁部を容易に設けることができる。
【0012】
上記ウォータジャケットスペーサには、上記シリンダと該ウォータジャケットスペーサとの間における少なくともシリンダヘッド側の部分に上記ブロック冷却流路を形成するための冷却流路形成部と、上記冷却液導入路を上記ブロック冷却流路に連通させるための導入開口部とが更に形成されている、ことが好ましい。
【0013】
このことで、冷却流路形成部により、エンジンの温間時に、シリンダの、より高温となるシリンダヘッド側の部分(燃焼室に対応する部分)を、効果的に冷却することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明のエンジンの冷却装置によると、エンジンの冷間時のように冷却液がブロック冷却流路を流れていなくても、バイパス流路を通る冷却液の一部が調整孔を通った後に、その冷却液流によって第1の連通孔からヘッド側ウォータジャケットに流入することで、バイパス流路から第2の連通孔を介してヘッド側ウォータジャケットに流入した冷却液が、第1の連通孔よりブロック側ウォータジャケット(ブロック冷却流路)へ流出するのを防止することができ、エンジンの暖気を効果的に促進することができる。また、エンジンの温間時のように冷却液がブロック冷却流路を流れている場合、上記調整孔及び第1の連通孔を介してヘッド側ウォータジャケットに流入する冷却液の流れに吸い込まれるように、ブロック冷却流路を流れてきた冷却液が第1の連通孔よりヘッド側ウォータジャケットに流入し、これにより、ブロック冷却流路からヘッド側ウォータジャケットへの冷却液の流入を促進することができて、シリンダの冷却を促進することができる。
さらに、分流壁部により、エンジンの冷間時に冷却液のブロック冷却流路への流通を確実に停止して、エンジンの暖気を効果的に促進しながら、第2の連通孔を介してヘッド側ウォータジャケットに流入した冷却液が、第1の連通孔からブロック側ウォータジャケットへ流出するのを防止することができる。さらにまた、ウォータジャケットスペーサにより仕切部及び分流壁部を容易に設けることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係るエンジンの冷却装置1の構成を模式的に示す。本実施形態では、このエンジン2は、直列4気筒エンジンであって、車両の前部に、気筒列方向が車幅方向となるように横置き状態で搭載される。このエンジン2(エンジン本体部)は、4つの気筒を構成する4つのシリンダ7を有するシリンダブロック3と、このシリンダブロック3の上側に配置されたシリンダヘッド4とを備えている。
【0018】
シリンダブロック3及びシリンダヘッド4には、冷却液が流通するブロック側及びヘッド側ウォータジャケット8,9がそれぞれ設けられている。ブロック側ウォータジャケット8は、4つのシリンダ7(詳しくは、4つのシリンダボア壁7a)の周囲を囲むように設けられている。ブロック側ウォータジャケット8は、その周方向において、ブロック冷却流路11とバイパス流路12とに分割され、これらブロック冷却流路11とバイパス流路12とが、後述の如く仕切られている。ブロック冷却流路11は、4つのシリンダ7(4つのシリンダボア壁7a)の周囲を囲んで略一周する流路になっている。バイパス流路12は、ブロック側ウォータジャケット8の周方向の一部、つまり気筒列方向の一側(本実施形態では、車両右側)の端部に位置する部分に設けられている。ヘッド側ウォータジャケット9は、各気筒の吸排気ポートやプラグホールを包み込むようにしてシリンダヘッド4の気筒列方向に延びている。
【0019】
上記冷却装置1は、上記ブロック側ウォータジャケット
8と、シリンダブロック3に設けられ、エンジン2のクランク軸に連動して駆動されるウォータポンプ21からの冷却液を、該ブロック側ウォータジャケット
8(詳細には、ブロック冷却流路11)に導入させるための冷却液導入路3aと、該冷却液導入路3aに設けられ、感温部41に接触する冷却液の温度に応じて開閉する第1サーモスタット弁40とを備えている。
【0020】
上記ウォータポンプ21は、シリンダブロック3の車両後側の面における気筒列方向の上記一側の端部に固定されている。このウォータポンプ21からの冷却液は、シリンダブロック3の冷却液導入路3aを介してブロック側ウォータジャケット8(詳しくは、ブロック冷却流路11)に導入される。この冷却液導入路3aは、シリンダブロック3において4つのシリンダ7のうち最も上記一側(車両右側)に位置するシリンダ7の車両後側の部分に位置する。
【0021】
上記第1サーモスタット弁40は、ワックス・ペレット型サーモスタット弁であって、熱膨張体であるワックスが充填された上記感温部41に接触する冷却液の温度が第1所定温度よりも低いときには閉弁する一方、該冷却液の温度が上記第1所定温度以上であるときには開弁するように構成されている。第1サーモスタット弁40が開弁状態にあるときに、ウォータポンプ21からの冷却液が、冷却液導入路3aを介してブロック冷却流路11に導入される。
【0022】
シリンダヘッド4の下面(詳細には、ガスケットで構成される)における気筒列方向の上記一側の端部には、ブロック冷却流路11から冷却液をヘッド側ウォータジャケット9へ導出させる(ヘッド側ウォータジャケット9に流入させる)ための第1流入口4aと、バイパス流路12から冷却液をヘッド側ウォータジャケット9へ導出させる(ヘッド側ウォータジャケット9に流入させる)ための第2流入口4bとが形成されている。これら第1流入口4a及び第2流入口4bは、シリンダヘッド4の下面において、ブロック側ウォータジャケット8の周方向に並ぶように設けられている。これら第1流入口4a及び第2流入口4bは、ブロック側ウォータジャケット8とヘッド側ウォータジャケット9とを連通する、本発明の第1及び第2の連通孔にそれぞれ相当する。また、シリンダヘッド4の気筒列方向の他側の端壁部(本実施形態では、車両左側の端壁部)には、ヘッド側ウォータジャケット9から冷却液が流出する流出口4cが形成されている。
【0023】
シリンダブロック3において、冷却液導入路3aにおける第1サーモスタット弁40上流側の部分(ウォータポンプ21と第1サーモスタット弁40との間の部分)から、分岐路3bが分岐している。この分岐路3bは、バイパス流路12に連通していて、バイパス流路12と共に、ウォータポンプ21からの冷却液を、ブロック冷却流路11をバイパスしてヘッド側ウォータジャケット9へ導出させるためのものである。冷却液導入路3a及び分岐路3bは、本発明の冷却液導入路と見做すことができ、ウォータポンプ21からの冷却液が、該冷却液導入路を介して、ブロック側ウォータジャケット8及びヘッド側ウォータジャケット9に供給されることになる。
【0024】
第1サーモスタット弁40が開弁状態にあるときには、ウォータポンプ21からの冷却液が、冷却液導入路3aを介してブロック冷却流路11に導入され、その導入された冷却液は、ブロック冷却流路11内を略一周するように流れた後、上記第1流入口4aよりヘッド側ウォータジャケット9に流入する。尚、ブロック冷却流路11に導入された冷却液の一部は、シリンダヘッド4の下面における相隣接するシリンダ7間に設けた流入孔(図示せず)からもヘッド側ウォータジャケット9に流入する。
【0025】
また、第1サーモスタット弁40が開弁状態にあるときには、ウォータポンプ21からの冷却液は、分岐路3b及びバイパス流路12を通って、上記第2流入口4bよりヘッド側ウォータジャケット9に流入する。
【0026】
一方、第1サーモスタット弁40が閉弁状態にあるときには、ウォータポンプ21からの冷却液は、分岐路3b及びバイパス流路12を通って、上記第2流入口4bよりヘッド側ウォータジャケット9に流入するが、ブロック冷却流路11には導入されない。このため、ブロック冷却流路11から冷却液が第1流入口4aを介してヘッド側ウォータジャケット9に流入することもない。
【0027】
ヘッド側ウォータジャケット9に流入した冷却液は、シリンダヘッド4の気筒列方向の上記一側から上記他側へと流れ、上記流出口4cよりシリンダヘッド4の外部に流出する。この流出口4cには、該流出口4cより流出した冷却液を、車両の前端部に配置されたラジエータ22を経由してウォータポンプ21に流入させる(戻す)ためのラジエータ経路23と、該冷却液を、該ラジエータ22をバイパスして該ウォータポンプ21に流入させる(戻す)ためのラジエータバイパス経路24とが接続されている。
【0028】
上記ラジエータバイパス経路24には、ラジエータ22以外の熱交換器が配設されている。本実施形態では、ラジエータ22以外の熱交換器は、上記車両の車室内におけるインストルメントパネル内に配置された空調装置のヒータコア31、及び、エンジン2のクランク軸に連結された自動変速機の潤滑オイルを温めるATFウォーマー32であり、ラジエータバイパス経路24は、互いに分岐したヒータコア配設路25及びATFウォーマー配設路26と、これらヒータコア配設路25及びATFウォーマー配設路26が接続されるとともに、上記ウォータポンプ21に接続されるリターン路27とで構成されている。
【0029】
上記ラジエータ経路23も上記リターン路27に接続されており、ラジエータ22で外気と熱交換された冷却液がリターン路27を通ってウォータポンプ21に戻される。尚、リターン路27は、ラジエータ経路23の一部と見做すこともできる(ラジエータ経路23とラジエータバイパス経路24とを兼用する)。
【0030】
上記ラジエータ経路23における上記流出口4cの近傍には、感温部51に接触する冷却液の温度に応じて開閉する第2サーモスタット弁50が設けられている。この第2サーモスタット弁50は、上記感温部51に接触する冷却液の温度(つまり、流出口4cから流出した直後の冷却液の温度)が第2所定温度よりも低いときには閉弁する一方、該冷却液の温度が上記第2所定温度以上であるときには開弁するように構成されている。上記第2所定温度は、エンジン2が温間状態になって、流出口4cから流出した冷却液を冷却するためにラジエータ22に流す必要がある最低温度(例えば約80℃)である。上記第1所定温度は、上記第2所定温度よりも低い温度(例えば約60℃)であって、感温部41に接触する冷却液の温度が上記第1所定温度よりも低い温度から上記第1所定温度に達したとき(第1サーモスタット弁40が丁度開弁したとき)、感温部51に接触する冷却液の温度(流出口4cから流出した直後の冷却液の温度)が上記第2所定温度には達しないような温度である。
【0031】
ここで、上記第1サーモスタット弁40及びその周辺の構成について、
図2により詳細に説明する。尚、第2サーモスタット弁50は、第1サーモスタット弁40と同様の構成であるので、その詳細な説明は省略する。
【0032】
ウォータポンプ21(
図2では、内部の構成(インペラ等)は省略している)の吸込み口21aには、リターン路27を構成する配管28が接続され、ウォータポンプ21の吐出口21bには、シリンダブロック3に設けられた冷却液導入路3aの上流端が接続されている。冷却液導入路3aの下流端は、ブロック側ウォータジャケット8に接続されている。冷却液導入路3aの下流側部分に、第1サーモスタット弁40が配設されている。冷却液導入路3aの上流端近傍からは、シリンダブロック3に設けられた分岐路3bが分岐している。
【0033】
第1サーモスタット弁40は、中央部に開口部43aが形成された弁座部材43を有し、この弁座部材43は、シリンダブロック3に固定された固定プレート39の開口部39aの内周面に形成した段差面39bに固定されている。この固定プレート39は、冷却液導入路3aを形成するための導入路形成部材38によって覆われている。この導入路形成部材38は、固定プレート39と共に、シリンダブロック3の車両後側の面に、複数のボルト35(
図2では、1つしか見えていない)により共締めされている。
【0034】
上記感温部41は、ブロック側ウォータジャケット8内(詳細には、ブロック冷却流路11内)におけるシリンダ7(シリンダボア壁7a)の近傍に位置している。感温部41は、後述の圧縮コイルスプリング47の径方向外側に配置された複数の連結部材(図示せず)を介して上記弁座部材43に支持されている。
【0035】
上記弁座部材43に対して上流側から弁体44が着座して上記開口部43aが閉塞される。こうしてサーモスタット弁40が閉弁状態になる。弁体44は、感温部41から開口部43aを貫通して延びる連結軸45の先端部に固定されている。この連結軸45は、上記ワックスの膨張及び収縮に連動して、連結軸45の軸方向に移動可能になっている。上記ワックスの膨張時には、連結軸45が上流側に移動し、これにより、弁体44が弁座部材43から離れるように上流側に移動して開弁する(
図2では、サーモスタット弁40の開弁状態を示す)。
【0036】
一方、上記ワックスの収縮時には、連結軸45が下流側に移動し、これにより、弁体44が弁座部材43に着座して閉弁する。連結軸45には、スプリング支持部材46が固定されており、スプリング支持部材46と弁座部材43との間に圧縮コイルスプリング47が支持されている。この圧縮コイルスプリング47により、弁体44が弁座部材43に押し付けられるため、閉弁状態が確実に維持される。
【0037】
上記ブロック側ウォータジャケット8の内部には、
図2及び
図3に示すように、シリンダヘッド4側から見てブロック側ウォータジャケット8と同様の形状を有する樹脂製のウォータジャケットスペーサ61が配設されている。このウォータジャケットスペーサ61により、ブロック側ウォータジャケット8がその周方向においてブロック冷却流路11とバイパス流路12とに仕切られることになる。すなわち、ウォータジャケットスペーサ61(つまりブロック側ウォータジャケット8内)には、ブロック冷却流路11とバイパス流路12とを仕切る2つの仕切部62が設けられている。この各仕切部62のシリンダ7側及び反シリンダ7側には、不図示のシール部材がそれぞれ設けられており、該各仕切部62を挟む周方向両側(ブロック冷却流路11側及びバイパス流路12側)の部分は、互いに非連通となっており、該両側の部分間の冷却液の流通が規制されることになる。以下、上記両仕切部62を互いに区別する場合には、ブロック冷却流路11の上流端部とバイパス流路12とを仕切る仕切部62を、上流側仕切部62aといい、ブロック冷却流路11の下流端部とバイパス流路12とを仕切る仕切部62を、下流側仕切部62bという。尚、
図1には、ブロック側ウォータジャケット8において上流側仕切部62a及び下流側仕切部62bのみを概略的に示す(
図7〜
図9も同様)。
【0038】
上記下流側仕切部62bは、ブロック側ウォータジャケット8内における第1流入口4aと第2流入口4bとの間に対応する部分に設けられていて、本発明の仕切部に相当する。
【0039】
一方、上記上流側仕切部62aは、ブロック側ウォータジャケット8内におけるブロック冷却流路11の上流端部とバイパス流路12との境界(冷却液導入路3aの下流端の接続部と分岐路3bの下流端の接続部との間)に設けられていて、冷却液導入路3a及び分岐路3b(本発明の冷却液導入路)からの冷却液を、ブロック冷却流路11とバイパス流路12とに分流させるための分流壁部としての役割を有している。これにより、冷却液導入路3aからブロック冷却流路11に流入した冷却液は、バイパス流路12に流入することなく、ブロック冷却流路11を流れ、冷却液導入路3aから分岐路3bを介してバイパス流路12に流入した冷却液は、ブロック冷却流路11に流入することなく、バイパス流路12を流れることになる。
【0040】
ウォータジャケットスペーサ61のブロック冷却流路11に対応する部分の内側面におけるシリンダ7軸方向の中間部には、段差面63が形成されており、ウォータジャケットスペーサ61の段差面63から上側(シリンダヘッド4側)に延びる部分である上側延設部64とシリンダ7(シリンダボア壁7a)との間に空間が形成され、この空間が上記ブロック冷却流路11とされる。つまり、ウォータジャケットスペーサ61の段差面63及び上側延設部64が、ブロック冷却流路11を形成するための冷却流路形成部65とされている。ブロック側ウォータジャケット8における段差面63よりも下側(反シリンダヘッド4側)の部分には、基本的に冷却液が流れないようになっている。このように冷却流路形成部65は、シリンダ7とウォータジャケットスペーサ61との間における少なくともシリンダヘッド4側の部分にブロック冷却流路11を形成する。このようなブロック冷却流路11によって、サーモスタット弁40の開弁後に、シリンダ7(シリンダボア壁7a)の、より高温となるシリンダヘッド4側の部分(燃焼室に対応する部分)を、効果的に冷却することができるようになる。
【0041】
また、ウォータジャケットスペーサ61における上流側仕切部62aの近傍には、冷却液導入路3aをブロック冷却流路11に連通させるための導入開口部66が形成されている。すなわち、冷却液導入路3aは、ブロック冷却流路11において上流側仕切部62aの近傍に接続されることになる。
【0042】
上記導入開口部66は、ウォータジャケットスペーサ61の下側の部分に設けられ、導入開口部66の下側には、上記段差面63が形成されていないが、この段差面63は、ブロック冷却流路11の上流端部の近傍(導入開口部66の直ぐ下流側の部分)からブロック冷却流路11の下流端部(後述の凹状部68)の近傍まで形成されている。そして、段差面63は、下流側ほど上側(シリンダヘッド4側)に位置するように下流側に向かって上側に傾斜している。このため、
図4及び
図5に示すように、同じシリンダ7の車両前側と後側とでは、段差面63の上下方向(シリンダ7軸方向)の高さ位置が異なっており、下流側に相当する車両前側の段差面63の方が、上流側に相当する車両後側の段差面63よりも高い位置にある。
【0043】
図2に示すように、サーモスタット弁40の感温部41は、導入開口部66を通ってブロック冷却流路11内に臨んでいて、こうしてブロック冷却流路11内におけるシリンダ7(シリンダボア壁7a)の近傍に位置する。
【0044】
また、サーモスタット弁40の感温部41は、ブロック冷却流路11内における上流側仕切部62aの近傍に位置することになる。この上流側仕切部62aにより、サーモスタット弁40の閉弁時において、車両の加減速やエンジン2の振動が生じても、ブロック冷却流路11内における感温部41近傍の冷却液の流動ないし対流が抑制される。したがって、上流側仕切部62aは、サーモスタット弁40の閉弁時にブロック側ウォータジャケット8内(ブロック冷却流路11内)における感温部41近傍の冷却液の流動を抑制する流動抑制部としての役割も有する。
【0045】
ウォータジャケットスペーサ61におけるバイパス流路12に対応する部分には、ブロック冷却流路11に対応する部分の形状を維持するべくウォータジャケットスペーサ61を環状の形状にするために、両仕切部62の下側部分を互いに連結する連結部67が設けられている。この連結部67は、特にバイパス流路12を形成するものではない。バイパス流路12は、ブロック側ウォータジャケット8の壁部、シリンダボア壁7a、及び上記両仕切部62によって形成されている。上記分岐路3bは、バイパス流路12の下側部分に接続され、バイパス流路12の上側に上記第2流入口4bが設けられている。したがって、分岐路3bから流れてきた冷却液は、バイパス流路12を下側から上側に流れて、第2流入口4bよりヘッド側ウォータジャケット9に流入することになる。
【0046】
図3〜
図6に示すように、ウォータジャケットスペーサ61における下流側仕切部62bの上部は、バイパス流路12側に突出しており、その突出部分の内側に、ブロック冷却流路11の下流端部とされた凹状部68が形成され、この凹状部68の上側に第1流入口4aが位置している。また、下流側仕切部62bにおける上記突出部分の下端部には、ウォータジャケットスペーサ61の外側と内側とを連通させる貫通孔69が上下方向に延びるように形成され、この貫通孔69によりバイパス流路12と凹状部68とが連通している。
【0047】
分岐路3bから流れてきた冷却液の大部分は、上記のように、バイパス流路12を通って第2流入口4bよりヘッド側ウォータジャケット9に流入するが、バイパス流路12を通る冷却液の一部は、バイパス流路12から貫通孔69を通って凹状部68に入る。その冷却液は、貫通孔69を通ることで、第1流入口4aへ指向する流れとなり、これにより、第1流入口4aを指向するように上側へと流れ、こうして第1流入口4aよりヘッド側ウォータジャケット9に流入する。この冷却液の流れが比較的強いので、その流れに吸い込まれるように、ブロック冷却流路11を流れてきた冷却液が、凹状部68及び第1流入口4aよりヘッド側ウォータジャケット9に流入し、これにより、ブロック冷却流路11からヘッド側ウォータジャケット9への冷却液の流入が促進される。このように貫通孔69は、バイパス流路12を通る冷却液の一部を第1流入口4aへ指向させる冷却液流を形成するための、本発明の調整孔に相当する。
【0048】
ここで、仮に上記貫通孔69が無ければ、第1サーモスタット弁40が閉弁状態にあるときに、冷却液がブロック冷却流路11を流れず、第1流入口4aよりヘッド側ウォータジャケット9に流入しようとする冷却液の流れがないために、バイパス流路12から第2流入口4bを介してヘッド側ウォータジャケット9に流入した冷却液が、その流れの勢いによって、第1流入口4aよりブロック冷却流路11へ流出する虞れがある。しかし、本実施形態では、冷却液がブロック冷却流路11を流れていなくても、バイパス流路12を通る冷却液の一部が貫通孔69、凹状部68及び第1流入口4aを介してヘッド側ウォータジャケット9に流入するので、バイパス流路12から第2流入口4bを介してヘッド側ウォータジャケット9に流入した冷却液が、第1流入口4aよりブロック冷却流路11へ流出するようなことはない。
【0049】
次に、上記冷却装置1の動作を説明する。
【0050】
エンジン2の始動直後の冷間時(暖機運転時)のように、感温部41に接触する冷却液の温度が上記第1所定温度よりも低いときには、第1サーモスタット弁40が閉弁している。このとき、感温部51に接触する冷却液の温度は上記第2所定温度よりも低く、第2サーモスタット弁50も閉弁している。
【0051】
この結果、
図7に示すように、ウォータポンプ21からの冷却液は、ブロック冷却流路11には導入されず、分岐路3b及びバイパス流路12を通って、第2流入口4bよりヘッド側ウォータジャケット9に流入する。また、バイパス流路12を通る冷却液の一部が貫通孔69、凹状部68及び第1流入口4aを介してヘッド側ウォータジャケット9に流入する。これにより、上記のように、バイパス流路12から第2流入口4bを介してヘッド側ウォータジャケット9に流入した冷却液が、第1流入口4aからブロック冷却流路11へ流出するのを防止することができる。
【0052】
このようにエンジン2の冷間時には、ブロック冷却流路11に冷却液を流さないようにすることで、エンジン2の暖気を促進することができる。
【0053】
第1流入口4a及び第2流入口4bよりヘッド側ウォータジャケット9に流入した冷却液は、シリンダヘッド4の気筒列方向の上記一側から上記他側へと流れ、上記流出口4cよりシリンダヘッド4の外部に流出する。
【0054】
第2サーモスタット弁50が閉弁状態にあることにより、上記流出口4cより流出した冷却液は、ラジエータ経路23には流れず、ラジエータバイパス経路24を介してウォータポンプ21に戻される。
【0055】
エンジン2の温度が上昇して、感温部41に接触する冷却液の温度が上記第1所定温度に達すると、第1サーモスタット弁40が開弁する。サーモスタット弁40の感温部41が、ブロック冷却流路11内におけるシリンダ7の近傍かつ上流側仕切部62aの近傍に位置しているので、車両の加減速やエンジン2の振動が生じても、その感温部41がシリンダ7近傍の冷却液の温度を感知することができ、この結果、エンジン2の温度に応じたサーモスタット弁40の適切な開閉が行える。
【0056】
第1サーモスタット弁40の開弁により、
図8に示すように、ウォータポンプ21からの冷却液は、分岐路3b及びバイパス流路12に加えて、ブロック冷却流路11にも流れる。これにより、ヘッド側ウォータジャケット9には、ブロック冷却流路11から冷却液が凹状部68及び第1流入口4aを介して流入するとともに、バイパス流路12から第2流入口4bを介して冷却液が流入する。上記の如く、バイパス流路12を通る冷却液の一部は、バイパス流路12から貫通孔69及び凹状部68を通って第1流入口4aよりヘッド側ウォータジャケット9に流入するので、その流れに吸い込まれるように、ブロック冷却流路11を流れてきた冷却液が、凹状部68及び第1流入口4aよりヘッド側ウォータジャケット9に流入し、これにより、ブロック冷却流路11からヘッド側ウォータジャケット9への冷却液の流入が促進される。
【0057】
第1サーモスタット弁40が閉弁状態から丁度開弁したとき、感温部51に接触する冷却液の温度は未だ上記第2所定温度には達せず、第2サーモスタット弁50は閉弁したままとなっている。このため、流出口4cより流出した冷却液は、ラジエータ経路23には流れず、ラジエータバイパス経路24を介してウォータポンプ21に戻される。
【0058】
エンジン2の温度が更に上昇してエンジン2が温間状態になると、感温部51に接触する冷却液の温度が上記第2所定温度に達して、第2サーモスタット弁50も開弁する。これにより、
図9に示すように、流出口4cより流出した冷却液は、ラジエータ経路23及びラジエータバイパス経路24に流れ、ラジエータバイパス経路24に流れた冷却液は、ラジエータ22で外気と熱交換された後にリターン路27を通ってウォータポンプ21に戻される。また、ウォータポンプ21からの冷却液がブロック冷却流路11内を流れる際、冷却流路形成部65により、シリンダ7の、より高温となるシリンダヘッド4側の部分(燃焼室に対応する部分)を、効果的に冷却する。
【0059】
したがって、本実施形態では、下流側仕切部62bに、バイパス流路12を通る冷却液の一部を第1流入口4aへ指向させる冷却液流を形成するための調整孔としての貫通孔
69が設けられているので、エンジン
2の冷間時に冷却液がブロック冷却流路
11を流れていなくても、バイパス流路12を通る冷却液の一部が、貫通孔69を通って第1流入口4aからヘッド側ウォータジャケット9に流入する。この結果、バイパス流路12から第2流入口4bを介してヘッド側ウォータジャケット9に流入した冷却液が、第1流入口4aよりブロック側ウォータジャケット8(ブロック冷却流路11)へ流出するのを防止することができる。したがって、エンジンの暖気を効果的に促進することができる。また、エンジンの温間時には、貫通孔69及び第1流入口4aを介してヘッド側ウォータジャケット9に流入する冷却液の流れが比較的強いので、その流れに吸い込まれるように、ブロック冷却流路11を流れてきた冷却液が第1流入口4aよりヘッド側ウォータジャケット9に流入し、これにより、ブロック冷却流路11からヘッド側ウォータジャケット9への冷却液の流入を促進することができる。したがって、シリンダ7の冷却を促進することができる。
【0060】
本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
【0061】
例えば、上記実施形態では、ブロック側ウォータジャケット8の内部にウォータジャケットスペーサ61を配設したが、ウォータジャケットスペーサ61は必ずしも必要なものではない。ウォータジャケットスペーサ61が無い場合には、仕切部や分流壁部を、専用の部材又はシリンダブロック3自体で構成してもよい。
【0062】
上述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本発明の範囲を限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。