(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態を示す印刷装置1の平面図であり、
図2は、印刷装置1に使用するテープカセット10の斜視図、
図3は、印刷装置1のテープカセット収納部5の斜視図である。
【0018】
この印刷装置1は、ロール状であり裏面に粘着層を有する媒体に対する印刷を行うものであり、媒体に氏名等の情報を印刷したラベル等の作成に使用することができる。
【0019】
この印刷装置1は、
図1に示すように、筐体2の上面に配置されたキーボード入力部3及び表示部4と、筐体2内に設けられたテープカセット収納部5と、を備えている。テープカセット収納部5は、筐体2の上面に開口しており、開閉蓋6により塞がれている。また、図示しないが,筐体2には、電源コード接続端子、外部機器接続端子、記憶媒体挿入口等が設けられている。
【0020】
キーボード入力部3は、文字等の各種データを入力するための入力キー、表示部4にカーソルを移動操作するカーソルキー、各種モードの設定キー、設定されたモードの実行キー等を備えている。キーボード入力部3は、入力手段として機能する。
【0021】
表示部4は、例えば液晶表示パネルからなっている。この表示部4には、印刷装置1の使用者に対する操作手順のメッセージ、キーボード入力部3から入力された各種の入力情報、各種の設定のための選択メニュー、選択された設定情報、印刷イメージ等が表示される。
【0022】
この印刷装置1は、印刷が行われる媒体として、表面が印刷面とされ、裏面が粘着面とされ、この粘着面に剥離テープが貼付けられた被印刷テープを用いるものである。以下、この媒体を被印刷テープと称する。この被印刷テープは、
図2に示したテープカセット10に収められている。
【0023】
図2に示されるように、テープカセット10は、カセットケース11内に、被印刷テープ12が巻装されたテープコア13と、インクリボン14が巻装されたインクリボン供給コア15と、インクリボン巻取りコア16とを収容したものである。
【0024】
図2に示されるように、カセットケース11は、カセットケース11の一側面から凹入した形状の印字ヘッド挿入部17を有しており、インクリボン14は、インクリボン供給コア15から繰り出され、カセットケース11内に配置された図示しないガイド手段により、印字ヘッド挿入部17内のカセットケース11側面近くの位置を通るように導かれて、インクリボン巻取りコア16に巻付けられている。
【0025】
また、被印刷テープ12は、印刷面とは反対面が粘着面とされ、粘着面に剥離テープが貼付けられた紙テープ、樹脂テープまたはマグネットテープ等であり、インクリボン14と同じ幅を有している。この被印刷テープ12は、テープコア13から繰り出され、ガイド手段により、印字ヘッド挿入部17を、印刷面をインクリボン14の外面に対向させて通るように導かれ、カセットケース11に設けられた図示しないテープ出口から突き出している。
【0026】
一方、
図3に示されるように、筐体2のテープカセット収納部5には、テープカセット10を所定の位置に支持するための複数のカセット受け部20が設けられている。
【0027】
さらに、テープカセット収納部5には、印字ヘッド22と、プラテンローラ23と、テープカセット10のテープコア13と係合するテープコア係合軸24と、テープカセット10のインクリボン巻取りコア16と係合するインクリボン巻取り駆動軸25とが設けられている。
【0028】
カセット受け部20は、カセットケース11の複数の角部に形成された係合部18に対応させて設けられており、テープカセット10は、被印刷テープ12とインクリボン14の印字ヘッド挿入部17内に露出している部分とを印字ヘッド22とプラテンローラ23との間に挿入するとともに、テープコア13とインクリボン巻取りコア16とをテープコア係合軸24とインクリボン巻取り駆動軸25とにそれぞれ係合させて、各係合部18をカセット受け部20に係合させて、テープカセット収納部5内の所定の位置にセットされる
【0029】
図3において、印字ヘッド22は、テープカセット10の印字ヘッド挿入部17に入り込む位置に配置されており、印刷開始時に、インクリボン14に押し付けられる。また、プラテンローラ23は、印字ヘッド22の印字面に対向させて配置されており、印字ヘッド22との間に挟み込まれたインクリボン14と被印刷テープ12とを、被印刷テープ12の長手方向に一定ピッチで間欠的に送り駆動する。プラテンローラ23は、後述する
図4に示されるステッピングモータ38により一定ピッチで間欠的に回転駆動され、インクリボン巻取り駆動軸25は、ステッピングモータ38により、プラテンローラ23のテープ送りに同調させて回転駆動される。ここで、印字ヘッド22及びステッピングモータ38は、後述する
図4に示される制御部30で生成された印刷制御データに基づいて、後述する
図4に示される印字ヘッド駆動回路37及びモータ駆動回路39を介してそれぞれ制御される。
【0030】
この実施形態において、インクリボン14は、熱転写型のインクリボンであり、印字ヘッド22は、所定数のドット状発熱素子が、縦方向、つまりインクリボン14及び被印刷テープ12の幅方向に沿って一列に配列したサーマルヘッドである。印字ヘッド22は、印字ヘッド駆動回路37により、間欠送りされるインクリボン14及び被印刷テープ12の停止タイミングに合わせて、発熱素子列のうちの印字ヘッド22に供給された印刷データに対応した発熱素子を駆動され、インクリボン14のインクを被印刷テープ12に転写する。これにより、印字ヘッド22は、制御部30で生成された印刷データに基づいて、印字ヘッド駆動回路37の駆動により、被印刷テープ12(媒体)に1ラインずつ印刷を行うヘッドとして動作する。
【0031】
また、テープカセット収納部5には、印刷の進行に伴ってテープカセット10から送り出されてくる印刷済みの被印刷テープ12を筐体2外に排出するためのテープ排出部26と、被印刷テープ12の印刷済み部分、つまり作成された印刷片(例えばラベル)を被印刷テープ12から切り離すフルカット機構27とハーフカット機構28とを備えている。フルカット機構27とハーフカット機構28とは、テープ排出部26に配置されており、何れか一方を選択され、後述する
図4に示されるテープカットモータ40により駆動される。ここで、テープカットモータ40は、制御部30で生成された印刷制御データに基づいて、カットモータ駆動回路41を介してそれぞれ制御される。
【0032】
フルカット機構27は、被印刷テープ12を剥離テープとともに切断するフルカットを行う。このフルカット機構27が選択された場合、作成された印刷片は、剥離テープ付きの印刷片として排出される。また、ハーフカット機構28は、被印刷テープ12を、剥離テープを残して切断するハーフカットを行う。このハーフカット機構28が選択された場合、印刷片は、筐体2内のテープカセット10に繋がったままの剥離テープから剥ぎ取って取り出されるか、或いは、適当な時期にフルカット機構27を作動させて剥離テープを切断することにより、剥離テープ付きの印刷片として取り出される。
【0033】
一方、テープカセット10には、被印刷テープ12及びインクリボン14の幅が異なる複数種類のものがあり、作成したい印刷片のサイズに応じて、そのサイズに合ったテープ幅のテープカセットがテープカセット収納部5にセットされる。
【0034】
そのため、この実施形態では、印字ヘッド22として、各種のテープ幅のうちの最も広いテープ幅に対応した印刷幅(発熱素子の配列長)のものを用い、テープカセット収納部5にセットされたテープカセット10のテープ幅に応じて、印字ヘッド22の発熱素子列のうちの、被印刷テープ12の幅に対応した有効範囲の各発熱素子を駆動するようにしている。
【0035】
さらに、この実施形態ではカセットケース11に設けられた係合部18のカセット受け部20と係合する面に、テープカセット10の種類毎に異なる識別用の凹凸部(図示せず)を形成し、テープカセット収納部5のカセット受け部20に、係合部18の凹凸部の形状を検知するテープ幅検出スイッチ29を設けることにより、テープカセット10の種類、つまり被印刷テープ12のテープ幅を自動的に判別し、印字ヘッド22の有効範囲を設定できるようにしている。
【0036】
図4は、印刷装置1のブロック図であり、この印刷装置1は、印字ヘッド22(
図3参照)と、印字ヘッド22を駆動する印字ヘッド駆動回路37と、ステッピングモータ38と、ステッピングモータ38を駆動するモータ駆動回路39と、テープカットモータ40と、テープカットモータ40を駆動するカットモータ駆動回路41と、テープ幅検出スイッチ29を備える。また、印刷装置1は、表示部4(
図1参照)と、表示部4を駆動する表示部駆動回路35と、キーボード入力部3(
図1参照)を備える。さらに、印刷装置1は、制御部30、ROM32、およびRAM33を備える。
【0037】
表示部駆動回路35は、制御部30で生成される表示制御データに基づく指示により、キーボード入力部3からの入力に関する情報や、各種の設定のための選択メニュー、各種の処理に関するメッセージ等を表示部4に表示させる。
【0038】
ステッピングモータ38は、
図3の説明で前述したプラテンローラ23とインクリボン巻取り駆動軸25を回転駆動させる。ステッピングモータ38は、印刷データの被印刷テープ12(媒体)への印刷に伴って一の向きに回転することによって、被印刷テープ12を一定の向きに沿って搬送する駆動モータとして動作する。また、後述するように、ステッピングモータ38は、必要に応じて、印刷データの被印刷テープ12への印刷の中断中に、中断前の回転の向きである一の向きとは逆の向きに回転する動作も行うことができる。また、ステッピングモータ38は、制御部30で生成される印刷制御データに基づく指示により、モータ駆動回路39を介して制御される。
【0039】
テープカットモータ40は、
図3の説明で前述したフルカット機構27とハーフカット機構28とを駆動する共用モータであり、フルカット機構27,ハーフカット機構28のうちの一方に対して係合及び他方に対して切り離し可能に設けられ、これらのフルカット機構27,ハーフカット機構28のうちの選択されたカット機構を駆動する。また、テープカットモータ40は、制御部30で生成される印刷制御データに基づく指示により、カットモータ駆動回路41を介して制御される。
【0040】
ROM32には、システムプログラム、JISコードで定められた各種の文字等のパターンデータ、入力データの処理プログラム、表示プログラム、印刷プログラム等が予め登録されている。なお、これらのプログラムは、印刷装置1の図示しない記憶媒体挿入口に挿入されたメモリカード等の記憶媒体、または外部機器接続端子に接続されたパーソナルコンピュータ等の外部機器から読み込まれて記憶されてよい。
【0041】
制御部30は、例えばマイクロプロセッサであり、キーボード入力部3からのユーザによるキー入力に応じて、ROM33に記憶されているシステムプログラム等を起動させ、RAM32をワークメモリとして、キーボード入力部3へのユーザによるキー入力とテープ幅検出スイッチ29によるテープ幅検出信号を受け付ける。そして、制御部30は、被印刷テープ12(媒体)に印刷する印刷データを生成する印刷データ生成部として動作する。また、制御部30は、印字ヘッド駆動回路37、モータ駆動回路39、およびカットモータ駆動回路41をそれぞれ介して、印字ヘッド22、ステッピングモータ38、およびテープカットモータ40を制御するための印刷制御データを生成する印刷制御データ生成部として動作する。さらに、制御部30は、表示部駆動回路35を介して、表示部4を制御する表示制御部として動作する。またさらに、制御部30は、モータ駆動回路39を介して、ステッピングモータ38を制御するための逆回転制御部として動作する。
【0042】
RAM32は、キーボード入力部3及びタッチパネル7からの入力データ、表示データ、印刷データ、印刷制御データ、制御部30によりROM32から読み込まれた文字等のパターンデータ、表示データ、印刷データ等を一時的に記憶する。
【0043】
次に、印刷装置1の印刷処理について説明する。
【0044】
印刷装置1において、印刷途中で所定の処理を行なうために印刷を中断する場合がある。例えば、
図3の説明で前述したように、フルカット機構27により被印刷テープ12を剥離テープとともに切断する場合、ハーフカット機構28により被印刷テープ12のみを切断し剥離テープは切断しない場合である。あるいは、印刷途中でサーマルヘッドの温度が上昇し過ぎてしまい適切な印刷制御を行なうためにはサーマルヘッドの冷却が必要な場合、あるいは印刷中に印刷データの展開処理を行なう場合等である。なお、所定の処理はこれらの例に限らず、当該所定の処理を行うために、印刷を中断する必要がある処理であれば、他の処理であっても良い。印刷を中断する場合には、所定の処理の間に被印刷テープ12にズレが生じるのを防ぐため、
図4において、制御部30は、プラテンローラ23
(
図3参照)を印刷位置に保持した状態で、印字ヘッド駆動回路37による印字ヘッド22の駆動およびステッピングモータ38によるプラテンローラ23の回転駆動を停止する。そして、上記所定の処理が終了すれば、制御部30は、印字ヘッド駆動回路37およびモータ駆動回路39を制御して、印刷が再開させる。
【0045】
ここで、印刷を中断した際に、例えば
図5(a)に示されるように、印刷抜けが生じてしまうおそれがある。そこで、以下に説明する各実施形態では、印刷の中断制御時に、印刷データに基づいて被印刷テープ12の逆転処理を実行することにより、例えば
図5(b)に示されるように、印刷抜けを生じない印字を可能とするものである。なお、印刷抜けが生じてしまう理由の一つとして、上記印刷の中断制御時に被印刷テープ12が送られてしまうことが考えられるが、その他にも様々な要因が絡み合って印刷抜けが生じると考えられる。
【0046】
図6は、
図4の制御部30が実行する印刷処理の第1の実施形態を例示するフローチャートである。この処理は、制御部30が、ROM32に記憶された印刷処理プログラムを実行する動作である。以下の説明では、適宜
図1から
図4を参照するものとする。
【0047】
まず、ユーザがキーボード入力部3を操作することにより、印刷すべきデータが入力されるとともに、文字サイズや余白の長さ等の書式が設定され、印刷キーが操作される。この結果、キーボード入力部3から入力された文字データに対応するパターンデータがROM32からから読み出されてRAM33の印刷データ領域に展開される。ここで、本明細書において、文字データとは純粋な文字のデータを含むが、それに限らず、文字以外の数字や記号、各種図案等、本発明の印刷装置を用いて媒体に印刷可能な様々な種類のデータを含み得る。なお、この展開される印刷データのデータ量が多いときには、印刷が指定された全てのデータが一度にRAM33に展開できないことがある。そのときには、制御部30は、適宜印刷を中断させながら、複数回に分けて印刷データが展開され印刷される。
【0048】
続いて、制御部30は、モータ駆動回路39を介してステッピングモータ38を正転駆動させる。これにより、プラテンローラ23が印字ヘッド22に圧接する印刷位置に移動される。
【0049】
その後、制御部30は、
図6のフローチャートで例示される印刷処理の実行を開始する。
【0050】
まず、制御部30は、RAM33の印刷データ領域から、1ライン分の印刷データを読み込む(ステップS601)。当該1ライン分の印刷データは、印字ヘッド22の所定数のドット状発熱素子のうちのどの発熱素子に印刷のための通電を行うかを指定するものである。
【0051】
次に、制御部30は、ステップS601で読み出した1ライン分の印刷データに基づいて、印字ヘッド駆動回路37を介して印字ヘッド22の所定数のドット状発熱素子のうちの当該1ライン分の印刷データによって定められた1個以上の発熱素子に通電を行い、当該1ライン分の印刷を実行する(ステップS602)。
【0052】
次に、制御部30は、前述した所定の処理により、印刷動作を停止させるか否かを判定する(ステップS603)。
【0053】
制御部30は、印刷動作を停止させない(ステップS603の判定がNo)と判定したならば、モータ駆動回路39を介してステッピングモータ38に対して、正転駆動のモータパルス信号を出力することにより、被印刷テープ12を正転方法に搬送させる(ステップS604)。
【0054】
その後、制御部30は、次ラインを指定する(ステップS605)。
【0055】
制御部30は、ステップS605の次ラインの指定の結果、印刷の終了位置に達したか否かを判定する(ステップS606)。
【0056】
制御部30は、印刷の終了位置に達していない(ステップS606の判定がNo)と判定したならば、ステップS601の処理に戻り、次ラインの印刷処理を実行する。
【0057】
制御部30は、印刷動作を停止させる(ステップS603の判定がYes)と判定したならば、まず、印刷データまたは印刷制御データに基づいて、ステッピングモータ38の逆転駆動を実施するか否かを判定する(ステップ
S607)。
【0058】
制御部30は、ステップS607での判定の結果
が、逆転駆動を実施しないと
の判定
であった場合(ステップS608の判定がNoの場合)には、
後述するステップS
610の処理に移行する。
【0059】
一方、制御部30は、ステップS607での判定の結果
が、逆転駆動を実施すると
の判定
であった場合(ステップS608の判定がYesの場合)には、モータ駆動回路39を介してステッピングモータ38を、印刷制御データに基づいて一律のステップ数X1だけ逆転駆動させる
(ステップS609)。
【0060】
続いて、制御部30は、カットモータ駆動回路41を介してテープカットモータ40を印刷制御データに基づいて駆動させることにより、フルカット機構27またはハーフカット機構28(
図3参照)を動作させて、
図3の説明で前述したフルカットまたはハーフカットによる被印刷テープ12の切断処理を実行する(ステップS610)。
【0061】
その後、制御部30は、ステップS601の処理に戻り、1ラインの印刷処理を実行する。
【0062】
制御部30は、印刷の終了位置に達した(ステップS606の判定がYes)と判定したならば、
図6のフローチャートを終了して印刷処理を終了する。
【0063】
以上説明した第1の実施形態における印刷処理において、印刷の停止時に、印刷データに基づいてステッピングモータ38の逆転駆動が行われる。この場合、逆転駆動の動作を印刷停止時に常に一律の量だけ行うと、印刷抜けが生じるおそれがあった。具体的には、例えば
図5(a)に示されるように、印刷停止直前のラインであるラインL1における文字データ部分のドット数aが多く、且つ、ラインL1の次のラインであり印刷再開直後のラインであるラインL2における文字データ部分のドット数bが少ないような場合(以下、簡便のため第1条件と言う)に、ドット数aがある程度少ないか、またはドット数bがある程度多いような場合(以下、簡便のため第2条件と言う)と同じ量だけ逆転駆動の動作を行うと、かえって印刷抜けが発生してしまうおそれがあった。逆に、上記の第2条件を満たす場合には、一律の量だけ逆転駆動の動作を行ったほうが、印刷抜けを抑制できることがわかった。即ち、印刷を中断する前後の印刷データが上記の第1条件を満たしている場合には、ステッピングモータの逆転動作を行わず、且つ、上記の第1条件を満たしていない場合(即ち、上記の第2条件を満たしている場合)には、ステッピングモータを一律の量だけ逆転動作させることによって、上記の第1条件及び第2条件のいずれを満たす場合にも、印刷抜けの発生を抑制することができる。なお、ヘッドが有する複数の発熱素子のうちの、各ラインL1,L2の印刷データによって指定されたドットに対応する発熱素子に通電させるため、印刷データのドット数とその印刷データに基づいて通電させる発熱素子の数は等しい。このように、制御部30は、ステッピングモータ38を、ステッピングモータ38の動作が中断される前とは逆の向きに、ステッピングモータ38の動作が中断中に回転させるかどうかを、印刷データの状態に基づいて決定する逆回転制御部として動作する。上述の例では、印刷を中断する前後の印刷データに基づいてステッピングモータの逆転動作を制御したが、印刷の中断時間やサーマルヘッドである印字ヘッド22の温度などに基づいて、ステッピングモータの逆転駆動を制御してもよい。例えば、前述したように、中断中にヘッドの温度変化が十分小さい場合、即ち、印刷の中断時間が比較的短いため印刷の中断中にヘッド温度が一定の範囲内に保持される場合や、印刷の中断中に適宜通電を行うことによって印刷の中断中にヘッド温度が一定の範囲内に保持される場合には、印字ヘッド22とインクリボン14(
図2、
図3参照)との凝着現象が起こりにくく、一律の量だけ逆転駆動の動作を行うことによって、印刷抜けを抑制できる。即ち、このときの印刷の中断時間や印刷の中断中の通電制御を行うための印刷制御データに基づいて、印刷の中断中にヘッド温度が一定の範囲内に保持されると制御部が判断した場合には、一律の量だけ逆転駆動の動作を行うが、逆に、印刷の中断時間や通電制御等の印刷制御データに基づいて、印刷の中断中にヘッド温度が一定の範囲内に保持されないと制御部が判断した場合には、逆転駆動の動作を行わない。このように、制御部30は、ステッピングモータ38を、ステッピングモータ38の動作が中断される前とは逆の向きに、ステッピングモータ38の動作が中断中に回転させるかどうかを、印刷制御データの状態に基づいて決定する逆回転制御部として動作する。これによって、印刷抜けの発生を効果的に抑制することが可能となる。そこで、本実施形態では、制御部30が、以上の印刷データまたは印刷制御データに基づく判定処理をステップS607
、S608で実行し、
その判定結果に応じて、ステップ
S609で逆転駆動を
実施するものである。
【0064】
このようにして、第1の実施形態では、印刷の停止時に、印刷データ、又は印刷制御データの状況に応じて逆転駆動を行うかどうかを決定し、逆転駆動が必要な場合には予め定めた定数である上記の一律の量X1 の分だけ逆転駆動を行い、不要な場合にはこの逆転駆動を行わないようにすることにより、印刷データ、又は印刷制御データの状況によらず印字抜けが生じることを抑制することが可能となる。
【0065】
図7は、
図4の制御部30が実行する印刷処理の第2の実施形態を例示するフローチャートである。この処理は、第1の実施形態に係る
図6の場合と同様に、制御部30が、ROM32に記憶された印刷処理プログラムを実行する動作である。
【0066】
図7のフローチャートが
図6のフローチャートと異なる点は、次の通りである。第1の実施形態に係る
図6のフローチャートでは、印刷停止時(ステップS603の判定がYesのとき)に、ステップS607およびS608の判定処理の後にステッピングモータ38の逆転駆動処理(ステップS609)が実行され、その後に、被印刷テープ12の切断処理(ステップS610)が実行される。これに対して、第2の実施形態に係る
図7のフローチャートでは、印刷停止時(ステップS603の判定がYesのとき)の
ステップS607の判定処理の後に、被印刷テープ12の切断処理(ステップS610)が実行され、その後に、
ステップS607、S608の判定結果に応じて、ステッピングモータ38の逆転駆動処理(ステップS609)が実行される。
図7におけるその他の処理は、
図6の場合と同様である。
【0067】
以上の第2の実施形態の印刷処理によっても、第1の実施形態の場合と同様にして、印刷の停止時に、印刷データ、又は印刷制御データの状況に応じて逆転駆動を行うかどうかを決定し、逆転駆動が必要な場合には予め定めた定数である上記の一律の量X1 の分だけ逆転駆動を行い、不要な場合にはこの逆転駆動を行わないようにすることにより、印刷データ、又は印刷制御データの状況によらず印字抜けが生じることを抑制することが可能となる。
【0068】
図8は、
図4の制御部30が実行する印刷処理の第3の実施形態を例示するフローチャートである。この処理は、第1の実施形態に係る
図6の場合と同様に、制御部30が、ROM32に記憶された印刷処理プログラムを実行する動作である。
【0069】
図8のフローチャートが
図6のフローチャートと異なる点は、印刷停止時(ステップS603の判定がYesのとき)に実行される
図6のフローチャートにおける
S607、S608の判定処理と、ステッピングモータ38の逆転駆動処理(ステップS609)が、
図8のフローチャートでは、逆転数xが変数であり、逆転数xを具体的に算出する処理(ステップS801)と、その逆転数xだけステッピングモータ38を逆転駆動する処理(ステップS802)として実行される点である。
図8のその他の処理は、
図6の場合と同様である。
【0070】
図9は、
図8のステップS801の逆転数xの算出処理の詳細例を示すフローチャートである。
【0071】
図9のフローチャートにおいて、制御部30はまず、
図8のステップS601で読み込んだ1ライン分の印刷データ上で、印刷停止時の位置に対応する現在ラインL1のドット数a(
図5(a)参照)をカウントする(ステップS901)。ここで、当該1ライン分の印刷データは、印字ヘッド22の複数の発熱素子のうち、当該1ライン分の印刷データに対応する1ラインの印刷を行うためにどの発熱素子に通電を行うかを指定するデータであるが、ドット数とは、この印刷データにおいて、当該1ライン分の印刷データに対応する1ラインの印刷を行うために通電を行うように指定された発熱素子の個数のことである。
【0072】
次に、制御部30は、
図8のステップS601で読み込んだ1ライン分の印刷データの次のライン分の印刷データを読み込み、そのライン分の印刷データ上で、印刷停止時の位置の現在のラインL1の次のラインL2のドット数b(
図5(a)参照)をカウントする
(ステップS902)。
【0073】
そして、制御部30は、ステップS901で算出したドットaが規定数A(第1の数)よりも大きく、かつ、ステップS902で算出したドットbが規定数Aよりも小さい規定数B(第2の数)よりも小さいか否かを判定する(ステップS903)。これらのステップS901、S902、S903に述べたように、制御部30は、ステッピングモータ38を、ステッピングモータ38の動作が中断される前とは逆の向きに、当該ステッピングモータ38の動作が中断中に第1の量だけ回転させるか、又は当該ステッピングモータ38の動作が中断中に第1の量よりも小さい第2の量だけ回転させるかを、印刷データの状態に基づいて決定する逆回転制御部として動作する。
【0074】
ステップS903の判定がNoの場合、制御部30は、ステッピングモータ38を逆転駆動させるステップ数xを、規定のステップ数X1 に設定する(ステップS904)。
【0075】
ステップS903の判定がNoの場合、制御部30は、ステッピングモータ38を逆転駆動させるステップ数xを、規定のステップ数X1 から他の規定ステップ数X2 を減算して得られる数「X1 −X2 」に設定する(ステップS905)。ここで、X2 は、X1 以下の適切な数に設定される。例えば、X2 =X1 と設定が行われた場合には、ステップS905で設定される逆転駆動ステップ数xは0(ゼロ)になる。すなわち、この場合には、逆転駆動は行われないことになる。もちろん、X2 は、0でないX1 以下の適切な数であってもよい。この場合には、逆転駆動ステップ数xが、印刷データのパターンに応じて制御されることになる。
【0076】
制御部30は、ステップS904またはS905の処理の後、
図8のステップS801の逆転数xの算出処理を終了する。
【0077】
図8のフローチャートの説明に戻り、制御部30は、ステップS801の処理の後、モータ駆動回路39を制御して、ステッピングモータ38を、ステップS801で算出された逆転駆動ステップ数xだけ、逆転駆動させる(ステップS802)。
【0078】
そして、制御部30は、
図6の場合と同様のテープ切断処理を実行し(ステップS610)、その後、ステップS601の処理に戻る。
【0079】
以上説明した第3の実施形態における印刷処理において、印刷の停止時に、
図9のステップS903で、印刷停止時のラインL1の印字ドット数aと印刷再開時のラインL2(ラインL1の次のライン)の印字ドット数bとの差が規定値「A−B」以下の場合には、規定値X1 だけステッピングモータ38が逆転駆動させられ、規定値「A−B」よりも大きい場合には、逆転駆動のステップ数xが、規定値X1 よりも小さいな値「X1 −X2 」、例えば0(逆転駆動しない)に設定される。
【0080】
このようにして、第3の実施形態では、印刷の停止時に、印刷データの状況に応じて逆転駆動を行うかどうかを決定し、逆転駆動が必要な場合には具体的に算出される変数である量xの分だけ逆転駆動を行い、不要な場合にはこの逆転駆動を行わないようにすることにより、印刷データの状況によらず印字抜けが生じることを効果的に抑制することが可能となる。
【0081】
上記の第3の実施形態では、印刷データの状況に応じて逆転駆動する量xを変更するものとしたが、これに限らず、上述の第1の実施形態及び第2の実施形態と同様に、印刷制御データの状況に応じて逆転駆動する量xを変更するものとしてもよい。
図10は、印刷データおよび印刷制御データを総合的に判断して逆転駆動する量xを変更する処理の詳細例を示すフローチャートである。
【0082】
まず、制御部30は、印刷データまたは印刷制御データに基づいて、ステッピングモータ38の逆転駆動を実施するか否かを判定する(ステップS1001、S1002)。
【0083】
この結果、制御部30は、ステップS1001において、例えば印刷の中断時間や印刷の中断中の通電制御を行うための印刷制御データに基づいて、印刷の中断中にヘッド温度が一定の範囲内に保持されると判断し、ステップS1002において逆転駆動を実施すると判断した場合には、一律の量だけ逆転駆動の動作を行う、すなわちx=X1 とする(ステップS905)。
【0084】
逆に、制御部30は、ステップS1001において、例えば印刷の中断時間や通電制御等の印刷制御データに基づいて、印刷の中断中にヘッド温度が一定の範囲内に保持されないと判断し、ステップS1002において逆転駆動を実施しないと判断した場合には、逆転駆動の動作を行わない、すなわちx=0とする(ステップS904)。
【0085】
この第3の実施形態の変形例においては、印刷制御データの状況に応じて逆転駆動を行うかどうかを決定し、逆転駆動が必要な場合には具体的に算出される変数である量xの分だけ逆転駆動を行い、不要な場合にはこの逆転駆動を行わないようにすることにより、印刷制御データの状況によらず印字抜けが生じることを効果的に抑制することが可能となる。このように、第3の実施形態の変形例において、制御部30は、ステッピングモータ38を、ステッピングモータ38の動作が中断される前とは逆の向きに、当該ステッピングモータ38の動作が中断中に第1の量だけ回転させるか、又は当該ステッピングモータ38の動作が中断中に第1の量よりも小さい第2の量だけ回転させるかを、印刷制御データの状態に基づいて決定する逆回転制御部として動作する。
【0086】
図11は、
図4の制御部30が実行する印刷処理の第4の実施形態を例示するフローチャートである。この処理は、第3の実施形態に係る
図8の場合と同様に、制御部30が、ROM32に記憶された印刷処理プログラムを実行する動作である。
【0087】
図11のフローチャートが
図8のフローチャートと異なる点は、次の通りである。第3の実施形態に係る
図8のフローチャートでは、印刷停止時(ステップS603の判定がYesのとき)に、逆転数xの算出処理(ステップS801)が実行された後、ステッピングモータ38の逆転駆動処理(ステップS802)が実行され、さらに被印刷テープ12の切断処理(ステップS610)が実行される。これに対して、第4の実施形態に係る
図11のフローチャートでは、印刷停止時(ステップS603の判定がYesのとき)に、ステップS801の後、被印刷テープ12の切断処理(ステップS610)が実行されてから、ステッピングモータ38の逆転駆動処理(ステップS802)が実行される。
図11におけるその他の処理は、
図8の場合と同様である。
【0088】
以上の第4の実施形態の印刷処理によっても、第3の実施形態の場合と同様にして、
図11のステップS801において、
図10に例示した逆転数x算出処理の変形例によって、印刷の停止時に、印刷データの状況に応じて逆転駆動を行うかどうかを決定し、逆転駆動が必要な場合には具体的に算出される変数である量xの分だけ逆転駆動を行い、不要な場合にはこの逆転駆動を行わないようにすることにより、印刷データの状況によらず印字抜けが生じることを効果的に抑制することが可能となる。
【0089】
上記の第4の実施形態では、印刷データの状況に応じて逆転駆動する量xを変更するものとしたが、これに限らず、上述の第1の実施形態、第2の実施形態、及び、第3の実施形態の変形例と同様に、印刷制御データの状況に応じて逆転駆動する量xを変更するものとしてもよい。この第4の実施形態の変形例においても、印刷制御データの状況に応じて逆転駆動を行うかどうかを決定し、逆転駆動が必要な場合には具体的に算出される変数である量xの分だけ逆転駆動を行い、不要な場合にはこの逆転駆動を行わないようにすることにより、印刷制御データの状況によらず印字抜けが生じることを効果的に抑制することが可能となる。
【0090】
上述の各実施形態において、被印刷テープ12は、印刷面とは反対面が粘着面とされ、粘着面に剥離テープが貼付けられている各種テープであるとしたが、これに限らず、被印刷テープ12として、粘着面に剥離テープが貼付けられず、且つ、粘着面が露出した各種テープを用いた場合であっても、各実施形態と同様に、印刷データのパターンによらず印字抜けが生じることを効果的に抑制することが可能である。
【実施例】
【0091】
以上に説明した実施形態に従って比較実験を行い、本発明の効果を確認した。その内容及び結果について、以下に説明する。なお、いずれの実施例、比較例においても、各ラベルの印刷を開始してから終了するまでの間に、テープをフルカットするために印刷を一旦中断する処理が少なくとも1回割り込むような印刷制御データに基づいて、印刷を行った。
【0092】
(実施例1)
テーププリンタの試験機を用いて、46mm幅のテープに、上述の第1条件を満たす印刷データを印刷した。各ラベルの印刷開始から終了までの間に、印刷を中断する処理が1回だけ割り込むような印刷制御データとした。また、印刷の中断中に、ステッピングモータを停止させた状態を保持し、その後、印刷を再開させた。
【0093】
(実施例2)
テーププリンタの試験機を用いて、46mm幅のテープに、上述の第2条件を満たす印刷データを印刷した。各ラベルの印刷開始から終了までの間に、印刷を中断する処理が1回だけ割り込むような印刷制御データとした。また、印刷の中断中に、中断前とは逆の向きにステッピングモータを回転させ、その後、印刷を再開させた。
【0094】
(実施例3及び実施例4)
テーププリンタの試験機を用いて、実施例3として12mm幅のテープ、実施例4として9mm幅のテープに、上述の第2条件を満たす印刷データを印刷した。各ラベルの印刷開始から終了までの間に、印刷を中断する処理が2回割り込むような印刷制御データとした。また、印刷の中断中に、中断前とは逆の向きにステッピングモータを回転させ、その後、印刷を再開させた。
【0095】
(比較例1)
テーププリンタの試験機を用いて、46mm幅のテープに、上述の第1条件を満たす印刷データを印刷した。各ラベルの印刷開始から終了までの間に、印刷を中断する処理が1回だけ割り込むような印刷制御データとした。また、印刷の中断中に、中断前とは逆の向きにステッピングモータを回転させ、その後、印刷を再開させた。
【0096】
(比較例2)
テーププリンタの試験機を用いて、46mm幅のテープに、上述の第2条件を満たす印刷データを印刷した。各ラベルの印刷開始から終了までの間に、印刷を中断する処理が1回だけ割り込むような印刷制御データとした。また、ステッピングモータを停止させた状態を保持し、その後、印刷を再開させた。
【0097】
(比較例3及び比較例4)
テーププリンタの試験機を用いて、比較例3として12mm幅のテープ、比較例4として9mm幅のテープに、上述の第2条件を満たす印刷データを印刷した。各ラベルの印刷開始から終了までの間に、印刷を中断する処理が2回割り込むような印刷制御データとした。また、印刷の中断中に、ステッピングモータを停止させた状態を保持し、その後、印刷を再開させた。
【0098】
(実験結果)
図12(a)は実施例1(テープ幅:46mm)の印刷結果、
図12(b)は実施例2(テープ幅:46mm)の印刷結果、
図12(c)は実施例3(テープ幅:12mm)の印刷結果、
図12(d)は実施例4(テープ幅:9mm)の印刷結果、
図13(a)は比較例1(テープ幅:46mm)の印刷結果、
図13(b)は比較例2(テープ幅:46mm)の印刷結果、
図13(c)は比較例3(テープ幅:12mm)の印刷結果、
図13(d)は比較例4(テープ幅:9mm)の印刷結果を、それぞれ示す図である。
【0099】
まず、46mm幅のテープに第1条件を満たす印刷データを印刷した場合、実施例1では、
図12(a)に示したように一部印字抜けが確認出来たが、次に説明する比較例1に比べて、その頻度は少なく、大きさも小さかった。一方、ステッピングモータを停止させた状態を保持した方が、逆の向きにステッピングモータを比較例1では、
図13(a)に示したように、実施例1に比べて、大きな印字抜けが高い頻度で発生することが分かった。従って、46mm幅のテープに第1条件を満たす印刷データを印刷する場合は、印刷の中断中に、ステッピングモータを停止させた状態を保持した方が、逆の向きにステッピングモータを回転させるよりも、印字抜けの状態が改善されたと言える。
【0100】
46mm幅のテープに第2条件を満たす印刷データを印刷した場合、実施例2及び比較例2では、
図12(b)及び
図13(b)にそれぞれ示したように、いずれの場合も概ね良好に印刷できた。従って、46mm幅のテープに第2条件を満たす印刷データを印刷する場合は、印刷の中断中に、逆の向きにステッピングモータを回転させるか否かに関わらず、印刷結果は概ね良好であったと言える。
【0101】
上述の実施例1、実施例2、比較例1及び比較例2の結果をまとめると、印刷する印刷データが第1条件を満たす場合、印刷の中断中に、ステッピングモータを停止させた状態を保持すると、逆の向きにステッピングモータを回転させるよりも印字抜けの状態が改善されるとともに、印刷する印刷データが第2条件を満たす場合、逆の向きにステッピングモータを回転させた場合と同様、印刷結果が概ね良好となることがわかった。従って、少なくとも印刷する印刷データが第1条件を満たす場合、印刷の中断中に、ステッピングモータを停止させた状態を保持することによって、逆の向きにステッピングモータを回転させた場合に比べて、良好な印刷結果が得られたと言える。
【0102】
次に、46mm幅、12mm幅、9mm幅の各テープに第2条件を満たす印刷データを印刷した場合、実施例2、実施例3、実施例4では、
図12(b)、(c)、(d)にそれぞれ示したように、印刷結果はそれぞれ概ね良好であった。一方、比較例2、比較例3、比較例4では、
図13(b)、(c)、(d)にそれぞれ示したような印刷結果であった。即ち、比較例2では印刷結果は概ね良好であったが、比較例3、比較例4では印字抜けがそれぞれ発生した。具体的には、比較例3である12mmの場合は「う」(ハーフカット時)と2枚目以降の「い」(フルカット時)、比較例4である9mmの場合は「え」と「お」の間と2枚目以降の「い」と「う」の間に印字抜けが発生していた。
【0103】
従って、印刷する印刷データが第2条件を満たす場合、テープ幅によらず、印刷の中断中に、ステッピングモータを停止させた状態を保持することによって、逆の向きにステッピングモータを回転させた場合に比べて、印刷結果が不良になることを避けることができることがわかった。少なくとも複数の異なるテープ幅の各テープへの印刷において、第2条件を満たす印刷データを印刷する場合、印刷の中断中に、逆の向きにステッピングモータを回転させると、ステッピングモータを停止させた状態を保持するよりも印字抜けの状態が改善されたと言える。
【0104】
以上の実験結果から、少なくとも印刷する印刷データが第1条件を満たす場合、印刷の中断中に、ステッピングモータを停止させた状態を保持した方が、逆の向きにステッピングモータを回転させるよりも、印字抜けの状態は改善することが分った。また、印刷する印刷データが第2条件を満たす場合、印刷の中断中に、逆の向きにステッピングモータを回転させた方が、ステッピングモータを停止させた状態を保持するよりも、印字抜けの状態が改善される場合があることが分った。
【0105】
以上の実施形態に関して、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
媒体に印刷する印刷データを生成する印刷データ生成部と、
前記印刷データに基づいて前記媒体にライン毎に印刷を行うヘッドと、
前記印刷データの前記媒体への印刷に伴って前記媒体を搬送する駆動モータと、
前記ヘッド及び前記駆動モータを制御する印刷制御データを生成する印刷制御データ生成部と、
前記駆動モータを、当該駆動モータの動作が中断される前とは逆の向きに、当該駆動モータの動作が中断中に回転させるかどうかを、前記印刷データ又は前記印刷制御データの状態に基づいて決定する逆回転制御部と、
を備えることを特徴とする印刷装置。
(付記2)
前記ヘッドは、ライン状に配列された複数の発熱素子を有し、
前記逆回転制御部は、
前記駆動モータの動作を中断させる直前に行った第1の印刷において第1のラインの印刷データに基づいて通電させた前記発熱素子の個数が規定の第1の数よりも大きく、かつ、前記印刷の再開後に行う第2の印刷において前記第1のラインの次のラインである第2のラインの印刷データに基づいて通電させる前記発熱素子の個数が前記規定の第1の数よりも小さい規定の第2の数よりも小さい場合、前記駆動モータを前記逆の向きに、当該駆動モータの動作が中断中に回転させない、
ことを特徴とする付記1に記載の印刷装置。
(付記3)
前記逆回転制御部は、
前記第1のラインの印刷データに基づいて通電させた前記発熱素子の個数が前記規定の第1の数以下であるか、又は前記第2のラインの印刷データに基づいて通電させた前記発熱素子の個数が前記規定の第2の数以上である場合、前記駆動モータを前記逆の向きに、当該駆動モータの動作が中断中に回転させる、
ことを特徴とする付記2に記載の印刷装置。
(付記4)
前記逆回転制御部は、
前記駆動モータの動作の中断時間が規定の時間よりも短い場合、前記駆動モータを前記逆の向きに、当該駆動モータの動作が中断中に回転させる一方で、前記中断時間が前記規定の時間以上である場合、前記駆動モータを前記逆の向きに、当該駆動モータの動作が中断中に回転させない、
ことを特徴とする付記1に記載の印刷装置。
(付記5)
前記逆回転制御部は、
前記ヘッドの温度が規定の範囲内に収まるように通電を制御する場合、前記駆動モータを前記逆の向きに、当該駆動モータの動作が中断中に回転させる一方で、前記ヘッドの温度が規定の範囲内に収まるように通電を制御しない場合、前記駆動モータを前記逆の向きに、当該駆動モータの動作が中断中に回転させない、
ことを特徴とする付記1に記載の印刷装置。
(付記6)
媒体に印刷する印刷データを生成する印刷データ生成部と、
前記印刷データに基づいて前記媒体にライン毎に印刷を行うヘッドと、
前記印刷データの前記媒体への印刷に伴って前記媒体を搬送する駆動モータと、
前記ヘッド及び前記駆動モータを制御する印刷制御データを生成する印刷制御データ生成部と、
前記駆動モータを、当該駆動モータの動作が中断される前とは逆の向きに、当該駆動モータの動作が中断中に第1の量だけ回転させるか、又は当該駆動モータの動作が中断中に前記第1の量よりも小さい第2の量だけ回転させるかを、前記印刷データ又は前記印刷制御データの状態に基づいて決定する逆回転制御部と、
を備えることを特徴とする印刷装置。
(付記7)
前記ヘッドは、ライン状に配列された複数の発熱素子を有し、
前記逆回転制御部は、
前記駆動モータの動作を中断させる直前に行った第1の印刷において第1のラインの印刷データに基づいて通電させた前記発熱素子の個数が規定の第1の数以下であるか、又は前記駆動モータの動作の再開後に行う第2の印刷において前記第1のラインの次のラインである第2のラインの印刷データに基づいて通電させる前記発熱素子の個数が前記規定の第1の数よりも小さい規定の第2の数以上である場合、前記駆動モータを前記逆の向きに、当該駆動モータの動作が中断中に前記第1の量だけ回転させる一方で、前記第1のラインの印刷データに基づいて通電させた前記発熱素子の個数が前記規定の第1の数よりも大きく、かつ、前記第2のラインの印刷データに基づいて通電させた前記発熱素子の個数が前記第2の数よりも小さい場合、前記駆動モータを前記逆の向きに、当該駆動モータの動作が中断中に前記第2の量だけ回転させる、
ことを特徴とする付記6に記載の印刷装置。
(付記8)
前記逆回転制御部は、
前記駆動モータの動作の中断時間が規定の時間よりも短い場合、前記駆動モータを前記逆の向きに、当該駆動モータの動作が中断中に前記第1の量だけ回転させる一方で、前記印刷中断時間が前記規定の時間以上である場合、前記駆動モータを前記逆の向きに、当該駆動モータの動作が中断中に前記第2の量だけ回転させる、
ことを特徴とする付記6に記載の印刷装置。
(付記9)
前記逆回転制御部は、
前記ヘッドの温度が規定の範囲内に収まるように通電を制御する場合、前記駆動モータを前記逆の向きに、当該駆動モータの動作が中断中に前記第1の量だけ回転させる一方で、前記ヘッドの温度が規定の範囲内に収まるように通電を制御しない場合、前記駆動モータを前記逆の向きに、当該駆動モータの動作が中断中に前記第2の量だけ回転させる、
ことを特徴とする付記6に記載の印刷装置。
(付記10)
媒体に印刷する印刷データを生成する印刷データ生成部と、前記印刷データに基づいて前記媒体にライン毎に印刷を行うヘッドと、前記印刷データの前記媒体への印刷に伴って前記媒体を搬送する駆動モータと、前記ヘッド及び前記駆動モータを制御する印刷制御データを生成する印刷制御データ生成部と、を備える印刷装置の制御方法であって、
前記駆動モータを、当該駆動モータの動作が中断される前とは逆の向きに、当該駆動モータの動作が中断中に回転させるかどうかを、前記印刷データ又は前記印刷制御データの状態に基づいて決定する、
ことを特徴とする印刷装置の制御方法。
(付記11)
媒体に印刷する印刷データを生成する印刷データ生成部と、前記印刷データに基づいて前記媒体にライン毎に印刷を行うヘッドと、前記印刷データの前記媒体への印刷に伴って前記媒体を搬送する駆動モータと、前記ヘッド及び前記駆動モータを制御する印刷制御データを生成する印刷制御データ生成部と、を備える印刷装置の制御方法であって、
前記駆動モータを、当該駆動モータの動作が中断される前とは逆の向きに、当該駆動モータの動作が中断中に第1の量だけ回転させるか、又は当該駆動モータの動作が中断中に前記第1の量よりも小さい第2の量だけ回転させるかを、前記印刷データ又は前記印刷制御データの状態に基づいて決定する、
ことを特徴とする印刷装置の制御方法。
(付記12)
媒体に印刷する印刷データを生成する印刷データ生成部と、前記印刷データに基づいて前記媒体にライン毎に印刷を行うヘッドと、前記印刷データの前記媒体への印刷に伴って前記媒体を搬送する駆動モータと、前記ヘッド及び前記駆動モータを制御する印刷制御データを生成する印刷制御データ生成部と、を備える印刷装置のコンピュータに、
前記駆動モータを、当該駆動モータの動作が中断される前とは逆の向きに、当該駆動モータの動作が中断中に回転させるかどうかを、前記印刷データ又は前記印刷制御データの状態に基づいて決定させるステップ、
を実行させるための印刷装置の制御プログラム。
(付記13)
媒体に印刷する印刷データを生成する印刷データ生成部と、前記印刷データに基づいて前記媒体にライン毎に印刷を行うヘッドと、前記印刷データの前記媒体への印刷に伴って前記媒体を搬送する駆動モータと、前記ヘッド及び前記駆動モータを制御する印刷制御データを生成する印刷制御データ生成部と、を備える印刷装置のコンピュータに、
前記駆動モータを、当該駆動モータの動作が中断される前とは逆の向きに、当該駆動モータの動作が中断中に第1の量だけ回転させるか、又は当該駆動モータの動作が中断中に前記第1の量よりも小さい第2の量だけ回転させるかを、前記印刷データ又は前記印刷制御データの状態に基づいて決定させるステップ、
を実行させるための印刷装置の制御プログラム。