【実施例1】
【0039】
まず、面実装部品のはんだ付け方法について
図1を参照して説明するが、このはんだ付け工程自体は周知の工程であるので、その概略を説明する。
【0040】
図1に示すように、この発明では半導体素子(ICチップ)10のうちダイボンディング面となる電極面12にはNiメッキ層14が形成される(
図1A)。Niメッキ層14は、ダイボンディングされる面の全領域(全電極面)に形成される。Niメッキ層14の表層にはSnメッキ層またはAuメッキ層16がさらに形成される。Auメッキ層16は必要に応じて形成される。
【0041】
これらのSnメッキ層またはAuメッキ層16は、この状態において、ダイボンド用はんだ材料30に位置するはんだ付け面側(最表面)にSnメッキ層またはAuメッキ層16が形成されていれば良いものであって、ICチップ10とNiメッキ層14の間に例えばCu、TiなどNiメッキ層以外の層が介在しても良い。
【0042】
リードフレーム20のアイランド部となるダイパット電極部(ダイボンド接合部)22が回路素子固定部であり、その下面には放熱板38が取り付けられ、その上面22aがダイパット電極面となる(
図1A)。したがって、ダイパット電極面22aは回路素子固定用の電極面として機能する。
【0043】
ICチップ10の電極面12と対向するこのダイパット電極面22aにはNiメッキ層24が施される。Niメッキ層24の表層にAuメッキ層26がさらに形成される。Auメッキ層26は必要に応じて設けられる。
【0044】
そして、このダイパット電極面22aの表層にダイボンド用はんだ材料30が供給される。この例では表層にAuメッキ層26が形成されているので、このAuメッキ層26の上層にダイボンド用はんだ材料30が塗布される(ソルダペースト処理)。ダイボンド用はんだ材料30としては、後述するような高融点はんだ材料が使用される。
【0045】
ここで、リードフレーム20はCuを主成分とするものであるから、この発明ではNiメッキ層24によってリードフレーム20のダイパット電極面22aを被覆する。
【0046】
Niメッキ層24を被覆すれば、ICチップ10のはんだ付け工程中にリードフレーム20が加熱され、Cuが溶出しようとしても、Cuが溶出しにくくなると共に、溶出したとしてもダイボンド用はんだ材料30中には混入しない。
【0047】
ダイボンド用はんだ材料30中に溶出したCuが混入すると、このダイボンド用はんだ材料30そのものの固相線温度(後述するように本例では245℃)を低下させてしまう。実験によると229〜236℃程度まで低下してしまう。Niメッキ層24を用いることでダイボンド用はんだ材料30それ自身の固相線温度を245℃に維持することができる。
【0048】
塗布された高融点のダイボンド用はんだ材料30の面にICチップ10の電極面12が対峙するように載置されて仮固定される(
図1B)。その後、オーブンリフロー炉(図示はしない)内に搬送されて加熱処理される。この加熱処理によってAuメッキ層16と26は溶解する(
図1C)。
【0049】
ダイパット電極面22aにダイボンド用はんだ材料30を用いてはんだ付けすることで
図1Cのような回路素子となる。実際には、この回路素子を構成するリード34のうち内部端子部(内部電極部)34aとICチップ10とが電極ワイヤ40によって結線(ワイヤボンディング)された後、ワイヤボンディングされたICチップ10とリードフレーム20とが樹脂42によってモールド処理されて周知の面実装部品50が得られる(
図1D)。
【0050】
面実装部品50としては、周知のようにSOP(Small Outline Package),QFN(Quad Flat Non-Lead)や、QFP(Quad Flat Package )などが考えられる。
【0051】
面実装部品50は、回路基板として機能するプリント基板60に実装される(
図1E)。そのため、プリント基板60に形成された基板端子部(ランド)62とリード34の外部端子部34bとがPbフリーの実装用はんだ材料70によってはんだ付けされて、実装処理が完成する。
【0052】
なお、リードフレーム20を構成するリード34は予めその全体に亘りSnメッキか、Sn−Biメッキ、Sn−Cuメッキ、Sn−Agメッキなどによるメッキ加工が施されている。
【0053】
上述した実装処理は、オーブンリフロー炉内で行われる。実装用はんだ材料70としては、後述するように従来から使用されている(Sn−Ag−Cu)系はんだ材料よりもその固相線温度および液相線温度が低いものが使用される。
【0054】
続いて、この発明において使用したダイボンド用はんだ材料30と実装用はんだ材料70について説明する。
【0055】
この発明においては、ダイボンド用はんだ材料30としては、固相線温度を低下させる成分をできるだけ含まない、含んだとしても既定値以下となるようなはんだ材料を使用すると共に、はんだ材料接合工程中に固相線温度を低下させる成分が溶出しないようにしたものである。
【0056】
また、ダイボンド用はんだ材料30と実装用はんだ材料70との固相線温度差が大きくなるようなダイボンド用はんだ材料30と実装用はんだ材料70を使用して面実装部品をはんだ付けするようにしたものである。(表1)以下を参照して説明する。
【0057】
1.(表1)について
【表1】
【0058】
(表1)は、この発明と比較するための不適切な例を示す。実装用はんだ材料70としては従来から用いられているM705規格の合金はんだ材料(Sn−3Ag−0.5Cu)を例示する。その固相線温度は217℃であり、液相線温度は220℃である。
【0059】
これに対してダイボンド用はんだ材料30としては(表1)に示すようにSnを主成分とする(Sn−Sb)系はんだ材料である。
(表1)には、(Sn−Sb)系はんだ材料として、Cuを含有するものと、そうでない2種類のはんだ材料を示す。(Sn−10Sb)系はんだ材料は、0.1質量%以下の不純物を含む。また、(Sn−10Sb)系はんだ材料それ自身の固相線温度は245℃であり、液相線温度は268℃である。
【0060】
(表1)にはダイボンド用はんだ材料30の組成比、その組成比での固相線温度、液相線温度およびダイボンド用はんだ材料30そのものの245℃以下での溶融率を示す。また、接合部であるダイパット電極部22における固相線温度、液相線温度およびそこでの245℃以下での溶融率は、ダイパット電極部22における無メッキの場合と、メッキ加工を施した場合を分けて実験した値を示す。
【0061】
そして、リフロー炉の加熱温度を変えたときに、ダイパット電極部22における溶融状態がどのように変化するかを合否(適否)で示した。ここに、ダイパット電極部22におけるダイボンド用はんだ材料30の溶融による合否は、1質量%でも溶融した場合には不合格とした。
【0062】
リフロー炉の最小加熱温度(リフロー可能最小温度)は、実装用はんだ材料70の液相線温度を基準に、これよりも10℃程度高めの温度を設定し、このリフロー可能最小温度を基準にして20℃および25℃高めの加熱温度での合否も実験により確認した。
【0063】
(表1)のように、(Sn−10Sb)系はんだ材料の場合には、ダイボンド用はんだ材料30それ自体の245℃以下での溶融率は12%となった。また、Sbが10質量%以下では、(表1)に示すようにダイパット電極部22における固相線温度は245℃以下に低下する。この値は、ダイパット電極部22におけるメッキ層によって相違するも、ダイボンド用はんだ材料30そのものの固相線温度よりも低い。
【0064】
結論としては、ダイボンド用はんだ材料30に含有するCuの含有量を加減調整してもダイパット電極部22における溶融が起きることが確認できた。したがって、(表1)に示すはんだ材料は、適切な組み合わせとは言えない。
【0065】
2.(表2)について
【表2】
【0066】
(表2)は、この発明の説明に供する実験例を示す。
(表2)では、ダイボンド用はんだ材料30として(Sn−10Sb)系のはんだ材料を使用し、実装用はんだ材料70として(Sn−Ag−Cu−Bi)系のはんだ材料を使用した場合である。
【0067】
ダイボンド用はんだ材料30にあって、Sbが10質量%以下では、固相線温度として245℃を満足することができず、245℃以下となってしまう。これに対して、Sbが13質量%以上であると今度ははんだ材料が硬くなってクラックが入りやすくなり、はんだ材料固形後の機械的信頼性が低下してしまう。したがって、Sbは10〜13質量%が好ましく、クラックの発生を抑止し、機械的信頼性を確保するには、10〜11質量%のSnがより好ましい。
【0068】
また、はんだ材料の主成分であるSnの純度は、99.9質量%以上であるのが好ましく、そのうちでも0.1質量%以下の不純物中に含有するCuの含有量は、0.01質量%以下が好ましく、0.005質量%以下がさらに好ましい。Cuの含有率が高くなると、それだけ本来の固相線温度(245℃)を低下させることになるからである。
【0069】
実装用はんだ材料として使用される(Sn−Ag−Cu−Bi)系はんだ材料としては、Agが3〜3.4質量%、Cuが0.5〜1.1質量%、Biが3〜7質量%、残余がSnからなるはんだ材料を示す。Agの添加量が多くなると固相線温度が高くなる嫌いがある。したがって好ましくは3.0質量%程度がよい。
【0070】
Cuも、固相線温度を高めることになるから、(0.55〜0.85)質量%の範囲内で添加するのが好ましい。BiもCuと同じく固相線温度を高めることになったり、機械的強度が落ちることになるので、好ましくは(3〜5)質量%の範囲内で添加する。この例では、(Sn−3Ag−0.8Cu−3Bi)系はんだ材料を使用した。
【0071】
Biを添加した(Sn−Ag−Cu−Bi)系の実装用はんだ材料70を使用すると、その固相線温度は205℃となり、液相線温度は215℃となるため、M705規格のはんだ材料よりも固相線温度、液相線温度とも低くすることができる。
【0072】
一方(表2)のように、Cuを含有することによっては、ダイボンド用はんだ材料30それ自身の固相線温度と液相線温度はそれぞれ変化せず、またダイパット電極部22におけるメッキ材料がNi材であるときには、ダイパット電極部22における245℃以下での溶融率は12〜15%程度となるが、リフロー炉温度が220〜240℃の範囲内であるときには、ダイパット電極部22における245℃以下での溶融率は0%となる。
【0073】
ここで、最小のリフロー炉温度を220℃に設定したのは、上述した組成比の実装用はんだ材料70を使用したときの液相線温度が、215℃と低いためである。なお、リフロー炉温度を245℃まで昇温すると、ダイパット電極部22における245℃以下での溶融率は、12〜15%となる。
【0074】
その結果、ダイパット電極面22aにNiメッキ層が施されたリードフレーム20を使用すると共に、実装用はんだ材料70として(Sn−Ag−Cu−Bi)系のはんだ材料を使用し、ダイボンド用はんだ材料30として(Sn−10Sb)系のはんだ材料であって、0.1質量%以下の不純物に含まれるCuの含有量が0.01質量%以下に抑えたはんだ材料を使用した場合には、リフロー炉の加熱温度が240℃までであるときには良好な結果が得られることがわかる。
【0075】
ここに、ダイパット電極部22におけるダイボンド用はんだ材料30は、1%でも溶融した場合には不合格として判定していることは、(表1)の場合と同じである。
【0076】
なお、念のため、(表2)には従来から使用されている(Sn−10Cu)系はんだ材料も例示してある。またCuが0.02質量%以上含む場合の組み合わせについても比較例として列挙してある。
【0077】
3.(表3)について
【表3】
【0078】
(表3)は、この発明の好適な一例を示す。
(表3)の例は、ダイボンド用はんだ材料30として(Sn−10Sb)系のはんだ材料を使用し、実装用はんだ材料70としてInを添加した(Sn−Ag−Cu−Bi−In)系のはんだ材料を使用した場合である。
【0079】
Biが(2〜5)質量%であるとき、Inは(3〜5)質量%添加される。好ましい添加量はBiが3質量%のとき、Inは3〜4質量%であり、Biが4質量%であるときには、Inは3質量%が好適である。Inは液相線温度を下げる働きがある。この例では、(Sn−3Ag−0.8Cu−2Bi−5In)系はんだ材料を使用した。
【0080】
実装用はんだ材料70としてInをさらに添加した(Sn−3Ag−0.5Cu−3Bi−3In)のはんだ材料を使用すると、その固相線温度は189℃で、液相線温度は210℃となって、Biを添加した場合よりもさらに低くすることができる。もちろん、M705規格のはんだ材料よりもその固相線温度、液相線温度を共に低くすることができる。
【0081】
ダイボンド用はんだ材料30としては(表2)と同じく(Sn−10Sb)系のはんだ材料であって、0.1質量%以下の不純物に含まれるCuの含有量が0.01質量%以下に抑えたはんだ材料である。念のため、(表2)と同じく、0.02質量%以上Cuを含有するダイボンド用はんだ材料30についてもそのデータを列挙してある。
【0082】
Cuを含有することによっては、(表2)の場合と同じくダイボンド用はんだ材料30それ自身の固相線温度と液相線温度は変化せず、245℃と268℃である。
【0083】
またCu材より構成されるダイパット電極部22のメッキ材料はNi材が最も好ましく、Cuの含有量が0.01質量%以下におけるダイパット電極部22での固相線温度は239〜245℃とダイボンド用はんだ材料30そのものの固相線温度(245℃)と同じか、極めて近い値となった。ダイパット電極部22における液相線温度は変化せず268℃のままである。
【0084】
ダイボンド用はんだ材料30そのものの245℃以下での溶融率は、0.01質量%以下のCu含有量であるときには12〜27.5%程度の範囲である。因みに、従来ダイボンド用はんだ材料30(Cuが0.02質量%以上含有する場合を含む)を使用した場合には、50%以上の溶融率となる。
【0085】
一方、実装用はんだ材料70として(Sn−Ag−Cu−Bi−In)系のはんだ材料の場合には、上述したようにその液相線温度が210℃と低くなるため、リフロー炉における最小温度(最小加熱温度)も低くなるから、215℃程度にリフロー可能最小温度を設定できる。したがってリフロー炉温度が230〜235℃まで昇温(加熱)したとしても、(表3)に示すように何れもダイパット電極部22におけるダイボンド用はんだ材料30は溶融しないことが実験により確認された。
【0086】
続いて、実装用はんだ材料70の組成比を変えたときの実施例(実験例)を(表4)および(表5)に示す。ダイボンド用はんだ材料30は(Sn−10Sb)系はんだ材料を使用した場合である。
【0087】
4.(表4)について
【表4】
【0088】
(表4)は(Sn−Ag−Cu−Bi)系はんだ材料を使用したときの実施例である。実施例1〜実施例6までは、(Sn−Ag−Cu−Bi)系はんだ材料で、実施例7〜実施例9までは、さらに特定の金属(Ni,Fe,Co)のうち一種)を添加したときの実施例である。また、実施例10〜11はCuを含まないはんだ材料を使用したときの実施例であり、実施例12〜16はさらに特定の金属(Ni,Coのいずれか又は双方)を添加したときの実施例である。
【0089】
比較例1は、M705規格のはんだ材料を使用したときのデータである。これを基準データとして用いている。
【0090】
(表4)は、はんだ材料の組成比、融点として固相線温度、液相線温度の他に最大吸熱反応点における融点を示す。また、この他に機械的接合強度と、はんだ材料表面状態の良否を示す。リフロー炉の加熱温度としては、実施例1〜実施例9では220℃、比較例1では230℃、そして比較例2〜比較例6では220℃をそれぞれ例示する。
【0091】
はんだ材料表面状態は、
図2に示すようなはんだ材料粒子(はんだ材料粒)を使用した。
図2は加熱処理される前の図であって、チップ部品(試料番号「000」)を例示した。
図3のようにその一部を拡大することによって、はんだ材料の粒子が電極全面に亘って混在しているのが判る。所定量のはんだ材料粒子を盛り上げた状態でリフロー炉の温度で加熱する。
【0092】
そうした場合、リフロー炉の加熱温度でもまだ充分にはんだ材料粒子が溶解していない状態が
図4(試料番号は「103」)であり、その一部拡大図が
図5である。はんだ材料の一部の粒子がまだ充分に溶けていないのが判る。
【0093】
はんだ材料の粒子が完全に溶解した状態が
図6であり、その拡大図が
図7である。
図4のように表面にはんだ材料粒子が残るような溶解状態は好ましくない。
図6及び
図7の状態が求めようとする理想的な溶解状態である。
【0094】
接合強度は、ヒートサイクル試験によって行う。この例では、チップ抵抗部品を例示する。プリント基板のはんだ付けパターン(1.6×1.2mm)に(Sn−Ag−Cu−Bi)系はんだ材料のソルダペーストを150μmの厚さで印刷塗布する。その後、(3.2×1.6×0.6mm)のチップ抵抗部品を載せて、加熱温度が220℃のリフロー炉ではんだ付けした後チップ抵抗部品が実装されたプリント基板を−55℃〜+125℃にそれぞれ30分ずつ保持する操作を1サイクルとして、1000サイクル行ったときの接合強度(N)を示す。
【0095】
接合強度は、平均値が高く、最小値が20℃以上が好ましく、そのうちでもその絶対値が小さいものがさらに好ましい。
【0096】
実施例1〜実施例9から明らかなように、固相線温度は210℃以下である。液相線温度も概ね215℃以下である。はんだ材料表面状態は何れも良好(
図6の完全溶解状態)であるから、接合強度も満足する値となっている。一部、液相線温度が220℃を超えている実施例もあるが、はんだ材料表面状態および接合強度は十分満足した値を示している。
【0097】
比較例2〜比較例6までは、比較例1を超える内容のものもあるが、実施例1〜実施例9のようにはんだ材料表面状態(一部不溶解状態)と接合強度の点で劣る。したがって、(Sn−Ag−Cu−Bi)系はんだ材料としては、上述したような範囲内に収まる組成比が好ましいと言える。
【0098】
5.(表5)について
【表5】
【0099】
(表5)は(Sn−Ag−Cu−Bi−In)系はんだ材料を使用したときの実験例(実施例)である。比較例1は、M705規格のはんだ材料を使用したときのデータで、これを基準データとして用いている。
【0100】
(表5)も(表4)と同じように、はんだ材料の組成比、融点として固相線温度、液相線温度の他に最大吸熱反応点における融点を示し、さらに機械的接合強度と、はんだ材料表面状態の良否を示す。はんだ材料表面状態は、
図3〜
図6と同様である。接合強度の試験も(表4)と同じである。ただし、リフロー炉の加熱温度は215℃に変更して実験した。
【0101】
基準となるはんだ材料としては、(表4)の場合と同じくM705規格の合金はんだ材料であって、このはんだ材料の諸特性を基準データとして用いている。
【0102】
実施例17〜実施例24から明らかなように、固相線温度は200℃以下である。液相線温度も概ね215℃である。はんだ材料表面状態は何れも良好(
図6及び
図7の完全溶解状態)であるから、接合強度も満足する値となっている。一部、液相線温度が215℃を超えている実施例もあるが、はんだ材料表面状態および接合強度は十分満足した値を示している。
【0103】
比較例7〜比較例14にあっては比較例1を超える内容のものもあるが、実施例17〜実施例24に比べてはんだ材料表面状態(一部不溶解状態)と接合強度の点で劣ることが判る。したがって、(Sn−Ag−Cu−Bi−In)系はんだ材料としては、上述したような範囲内に収まる組成比が好ましいと言える。
【0104】
したがって(表1)〜(表5)までの実験結果から明らかなように、この発明においては、
(1)実装用はんだ材料70としては、(表4)以下に示す組成比となされた(Sn−Ag−Cu−Bi)系のはんだ材料若しくはこれにInを添加した(表5)以下に示す組成比となされた(Sn−Ag−Cu−Bi−In)系のはんだ材料が好適である。
(2)ダイボンド用はんだ材料30としては、(Sn−10Sb)系のはんだ材料であって、0.1質量%以下の不純物に含まれるCuの含有量が0.01質量%以下に抑えたはんだ材料が好適である。特にCuの含有量が0.005質量%以下、好ましくは0.001質量%以下であることが好ましい。
【0105】
この場合使用するダイパット電極部22におけるメッキ材としてはNi材が好適であり、リフロー炉の加熱温度は245℃以下、好ましくは240℃以下に設定されるのが好ましいことが判明した。
(3)なお、上述した(Sn−Sb)系はんだ材料をダイボンド用はんだ材料30として使用するとき、これにPを添加することもできる。上述した(Sn−Sb)系はんだ材料にさらに、Pを微量に添加すると、濡れ性と共にボイドの改善に繋がる。
(4)上述した(3)の(Sn−Sb)系はんだ材料に、さらに(Ni,Fe,Co)の一種以上の成分を添加することもできる。Pの代わりに(Ni,Fe,Co)の一種以上の成分を添加してもよい。
【0106】
(Ni,Fe,Co)の一種以上の成分を添加するのは、はんだ材料接合工程中で、Niメッキ層14,24が溶解するのを抑制すると共に、はんだ材料接合中に生成されるNiメッキの反応量の成長を抑制するためである。
【0107】
(Ni,Fe,Co)の一種以上の成分は、総量が0.01〜0.1質量%となる範囲内で添加される。単独(一種類)で添加するときは、Niでは0.1質量%、Feでは0.05質量%、Coでは0.05質量%が好ましい。これら成分の組み合わせとしては、(Ni+Co)、(Ni+Fe+Co)が考えられる。
【0108】
その後、本件出願人が鋭意検討を行った結果、本願発明のダイボンド用はんだ材料と実装用はんだ材料との固相線温度差が大きくなるようなダイボンド用はんだ材料と実装用はんだ材料を使用して面実装部品をはんだ付けすることでダイボンド用はんだ材料の溶解を防止できるようにするための課題達成のためには、Cu成分が無くとも、達成できることが判明した。その結果を(表4)の実施例10〜16及び(表5)の実施例25〜27に示す。
【0109】
(表4)の実施例15及び16は外観上問題ないように見えるが、ボイドが多かったので、結果として不合格とした。結果として、(Sn−(4〜5)Bi−3Ag)系はんだ材料または(Sn−(4〜5)Bi−3Ag)系はんだ材料に、(0.02〜0.1)重量%のNiか、(01〜0.1)重量%のCoのいずれかを添加するか、またはNiとCoの双方を添加することによって、実施例1〜9と同等な結果が得られた。
【0110】
また、(表5)の実施例25〜27に示すように、(Sn−(3〜5)In−(2〜4)Bi−3Ag)系はんだ材料の場合でも、実施例10〜16と同等であるという結果が得られた。Agの添加量は、2.8質量%から3.3質量%の範囲内であればよい。