(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
(A:構成)
図1は、本発明の一実施形態である解析システムの構成を示すブロック図である。このシステムは、利用者Y−k(k=1,2…)の身体に装着される生体情報測定装置1−k(k=1,2…)と、利用者Y−k(k=1,2…)に携帯される携帯電話機4−k(k=1,2…)と、医療機関における医師D−m(m=1,2…)の利用に供される端末装置6−m(m=1,2…)と、システムを運営する事業者らの管理の下に稼働するサーバ装置7とを有する。ここで、各利用者Y−kは、運営事業者から固有のID
Y−kの発行を受けている。医師D−mは、運営事業者から固有のID
D−mの発行を受けている。また、
図1では、簡便のため、生体情報測定装置1−k(k=1,2…)、携帯電話機4−k(k=1,2…)、及び端末装置6−m(m=1,2…)の図示数を各々1つずつとしている。
【0019】
図2は、生体情報測定装置1−kの外観を示す図である。
図3は、生体情報測定装置1−kの構成を示すブロック図である。
図2に示すように、生体情報測定装置1−kは、脈波センサー30と、装置本体10と、これらを接続するケーブル20とを有する。脈波センサー30は、利用者Y−kの左手人差指を測定部位とし、この部位の血管への血液の流入によって生じる血管の容積変化を生体情報として検出する検出手段としての役割を果たす。脈波センサー30は、左手人差指の幅よりも小さな寸法を持った扁平な板状をなしている。脈波センサー30は、発光素子32aと受光素子32bを併有している。発光素子32aは、血液に吸収され易い波長の発光色(例えば、青色とする)を持ったLED(Light Emitting Diode)である。受光素子32bは、フォドダイオードである。脈波センサー30には、センサ固定用バンド34が取り付けられている。
【0020】
脈波センサー30は、測定部位に発光素子32a及び受光素子32bを向けるようにして測定部位の周りにセンサ固定用バンド34を巻きつけることにより、利用者Y−kの身体に装着される。この装着状態において、脈波センサー30の発光素子32aは、装置本体10からケーブル20を介して当該発光素子32aに供給される電流に応じた強度の光を測定部位に向けて照射する。発光素子32aから照射された光は、測定部位の表皮を透過してその奥の真皮の毛細血管に到達する。血管に到達した光の一部は血管内を流れる血液により吸収される。また、血管に到達した光のうち血管内の血液により吸収されなかった光は、一部は測定部位を透過し、残りは生体組織における散乱等を経た後に反射光として受光素子32bに到達する。受光素子32bには、この反射光の受光強度に応じた大きさの電流が流れる。ここで、測定部位における血管は、心拍と同じ周期で膨張と収縮を繰り返している。そして、血管の膨張と収縮の周期と同じ周期で光の吸収量が増減し、これに合わせて反射光の強度も変化する。このため、受光素子32bに流れる電流は、測定部位における血管の容積変化を示す成分をもったものとなる。
【0021】
装置本体10は、腕時計を模した形状を有している。装置本体10の表面には、長方形状の表示面を持った表示部14が設けられている。表示部14には、当該生体情報測定装置1−kによる計測結果である脈間隔、脈拍数、その他の各種情報が表示される。装置本体10の筐体の外周部にはボタンスイッチ16が設けられている。ボタンスイッチ16は、脈波の計測開始や計測終了、計測結果のリセットなどの各種指示の入力に用いられる。装置本体10の外周部における表示部14を挟んで対向する部分には、リストバンド12の一端と他端が取り付けられている。装置本体10は、リストバンド12を利用者Y−kの手首に巻きつけることにより、利用者Y−kの身体に装着される。
【0022】
図3に示すように、生体情報測定装置1−kの装置本体10には、通信インターフェース150、アナログ回路部110、A/D変換回路120、および制御回路部130が内蔵されている。通信インターフェース150は、Bluetooth(登録商標)に準拠した無線通信を行う装置である。装置本体10は、この通信インターフェース150により携帯電話機4−kと接続される。アナログ回路部110は、駆動回路1120、IV変換回路1112、及びアンプ1116を有する。駆動回路1120は、脈波センサー30の発光素子32aを駆動させる回路である。この駆動回路1120は、制御回路部130による制御の下、脈波センサー30の発光素子32aに電流を供給する。これにより、発光素子32aから測定部位に向けて光が照射され、その反射光の受光強度に応じて受光素子32bを流れる電流が変化する。受光素子32bを流れる電流が測定部位における血管の容積変化を示す成分をもったものとなることは、上述した通りである。IV変換回路1112は、受光素子32bに流れる電流に応じた電圧をアンプ1116へ出力する。アンプ1116は、IV変換回路1112の出力電圧を増幅し、増幅した信号を制御回路部130に出力する。
【0023】
A/D変換回路120は、アンプ1116の出力信号をデジタル形式に変換し、変換した信号を制御回路部130に出力する。制御回路部130は、生体情報測定装置1−kの制御中枢としての役割を果たす装置である。制御回路部130は、CPU(Central Processing Unit)1315、RAM(Random Access Memory)1316、ROM(Read Only Memory)1317、及びEEPROM(Electrically Erasable Programable Read-Only Memory)1318を含んでいる。
【0024】
CPU1315は、RAM1316をワークエリアとして利用しつつ、ROM1317に記憶された脈波計測プログラムを実行する。この脈波計測プログラムは、次の2つの機能を有する。
a1.検出機能
これは、A/D変換回路120の出力信号を利用者Y−kの脈波を示す生体情報データWDとして検出する機能である。
b1.通信制御機能
これは、生体情報データWDを携帯電話機4−kを介してサーバ装置7に送信する制御を時間を空けてに繰り返すとともに、利用者Y−kに心疾患についての注意を促すアラートメッセージMS
ALTをサーバ装置7から携帯電話機4−kを介して受信した場合に、そのメッセージMS
ALTの内容を示す報知画面を表示部14に表示させる機能である。
【0025】
図4は、携帯電話機4−kの外観及び構成を示すブロック図である。この携帯電話機4−kは、筐体410及び筐体420とこれらを連結するヒンジ部材430とを有する。筐体410の表面にはスピーカ4213とディスプレイ4113が設けられている。筐体420の表面には操作キー4212とマイクロホン4112が設けられている。
【0026】
筐体420には、通信インターフェース4214と、制御部440と、当該携帯電話機4−kにおける電力の供給源であるバッテリ450とが内蔵されている。通信インターフェース4214は、Bluetoothに準拠した無線通信を行う装置である。携帯電話機4−kは、この通信インターフェース4214により生体情報測定装置1−kと接続される。制御部440は、無線通信部4511、音声処理部4512、表示処理部4513、CPU4514、RAM4515、ROM4516、及びEEPROM4517を有する。無線通信部4511は、CPU4514による制御の下、移動体パケット通信網8における基地局とコネクションを確立し、移動体パケット通信網8やインターネット9に接続されている他の装置との間でデータを送受信する。音声処理部4512は、CPU4514による制御の下、スピーカ4213及びマイクロホン4112とCPU4514との間の音信号の送受信を仲介する。表示処理部4513は、CPU4514による制御の下、ディスプレイ4113に画像を表示させる。EEPROM4517には、利用者Y−kのID
Y−kが記憶されている。CPU4514は、RAM4514をワークエリアとして利用しつつ、ROM4516に記憶された制御プログラムを実行する。この制御プログラムは、アップロード機能を有する。アップロード機能は、生体情報データWDのアップロードを指示する操作が行われた場合に、生体情報測定装置1−kにコマンドCMを送って以後に同装置1−kから伝送されてくる生体情報データWDをEEPROM4517に記憶し、この生体情報データWDをサーバ装置7に送信する機能である。
【0027】
図5は、端末装置6−mの構成を示すブロック図である。端末装置6−mは、制御部610、ハードディスク620、NIC630、ディスプレイ640、キーボード650、及びマウス660を有する。制御部610は、CPU611、RAM612、及びROM613を有する。CPU611は、RAM612をワークエリアとして利用しつつ、ROM613やハードディスク620に記憶された各種プログラムを実行する。ハードディスク620には、制御プログラムが記憶されている。制御プログラムは、報知内容閲覧支援機能を有する。報知内容閲覧支援機能は、サーバ装置7から利用者Y−kの脈波計測装置1−kに宛てて送信されたものと同じアラートメッセージMS
ALTを同装置7から受信し、アラートメッセージMS
ALTの内容を表す報知画面をディスプレイ640に表示させる機能である。
【0028】
図6は、サーバ装置7の構成を示すブロック図である。サーバ装置7は、制御部710、ハードディスク720、及びNIC730を有する。制御部710は、CPU711、RAM712、及びROM713を有する。CPU711は、RAM712をワークエリアとして利用しつつ、ROM713やハードディスク720に記憶された各種プログラムを実行する。ハードディスク720には、次の2種類のデータベースが記憶されている。
【0029】
a4.生体情報データベースWDB
図7は、生体情報データベースWDBのデータ構造を示す図である。生体情報データベースWDBは、利用者Y−kの携帯電話機4−kからサーバ装置7にアップロードされた生体情報データWDと対応するレコードの集合体である。
図7に示すように、生体情報データベースWDBにおける各レコードは、「利用者ID」、「時刻」、「脈波ID」の3つのフィールドを有する。「利用者ID」のフィールドは、サーバ装置7への生体情報データWDのアップロードを行った利用者Y−kのID
Y−kを示す。また、「時刻」のフィールドは、生体情報測定装置1−kにおける生体情報データWDの記録開始時刻tssを示し、「脈波ID」のフィールドは、その生体情報データWDに固有のID
W(より具体的には、ハードディスク720内における当該生体情報データWDの格納アドレスと生体情報データWDのファイル名を結合した文字列)を示す。
【0030】
b4.解析結果データベースRDB−k
図8は、解析結果データベースRDB−kのデータ構造を示す図である。ここで、ハードディスク720には、利用者Y−k(k=1,2…)毎の個別の解析結果データベースRDB−k(k=1,2…)が記憶されている。1人の利用者Y−kの解析結果データベースRDB−kは、その利用者Y−kの携帯電話機4−kからサーバ装置7にアップロードされた生体情報データWDのうち、2種類の波形パターンPAまたはPBのいずれかと一致する波形部分を含んでいるものと対応するレコードの集合体である。ここで、波形パターンPAまたはPBのうち波形パターンPAは、不整脈の一種である期外収縮が発生している場合の脈波の特徴を表したものである。波形パターンPBは、不整脈の一種である心房細動が発生している場合の脈波の特徴を表したものである。本実施形態では、生体情報データWDを解析して生体情報データWDが波形パターンPAまたはPBのいずれかと一致する波形部分を含んでいるかを判定し、生体情報データWDが波形パターンPAまたはPBのいずれかと一致する波形部分を含んでいる場合に、その解析結果に関わる情報を管理するためのレコードをこのデータベースRDB−k内に形成する。生体情報データWDの解析に関わる処理の詳細については、後述する。
【0031】
図8に示すように、解析結果データベースRDB−kにおける各レコードは、「利用者ID」、「時刻」、「波形タイプ」の3つのフィールドを有する。「利用者ID」のフィールドは、利用者のID
Y−kを示す。「時刻」のフィールドは、生体情報データWDの記録開始時刻tssを示す。また、「波形タイプ」は、波形パターンPAの種類を示す識別子ID
PA、または、波形パターンPBの種類を示す識別子ID
PBを示す。
【0032】
また、ハードディスク720には、制御プログラムが記憶されている。この制御プログラムは、次の2つの機能を有する。
a5.解析機能
これは、利用者Y−kの生体情報測定装置1−kから生体情報データWDが受信される都度、生体情報データWDが示す脈波に不整脈とみなし得る脈波の特徴を持った波形部分が含まれているか解析する機能である。
【0033】
b5.アラート通知機能
これは、解析機能による解析の結果、利用者Y−kの生体情報測定装置1−kから受信された生体情報データWDに不整脈とみなし得る脈波の特徴を持った波形部分が含まれていた場合に、アラートメッセージMS
ALTをその利用者Y−kの生体情報測定装置1−kとその利用者Y−kの掛り付けの医師D−mの端末装置6−mに宛てて送信する機能である。
【0034】
(B:動作)
次に、本実施形態の動作を説明する。本実施形態では、脈波記録処理、データ伝送処理、アップロード処理、解析処理、及びアラート通知処理が行われる。以下、各処理について詳細に説明する。
【0035】
図9は、脈波記録処理を示すフローチャートである。この処理は、生体情報測定装置1−kにより実行される処理である。生体情報測定装置1−kは、測定モードと通信モードの2つのモードを有している。この処理は、生体情報測定装置1−kを測定モードにした状態において、生体情報測定装置1−kのボタンスイッチ16によって脈波の記録を指示する操作が行われると開始される。
【0036】
脈波記録処理において、CPU1315は、脈波の記録を指示する操作が行われると、この操作が行われてから時間T1(例えば、T1=10分間とする)が経過する度にその経過時点の時刻を記録開始時刻tssとしてRAM1316に記憶するとともに(S1001)、各記録開始時刻tssから時間T2(例えば、T2=1分間とする)が経過するまでの間のA/D変換回路120の出力信号を生体情報データWDとしてRAM1316に記憶させる(S1002)。従って、時間T1が経過するとT1/T2個の生体情報データWDがRAM1316に一時的に記憶される。CPU1315は、T1/T2個の生体情報データWDが生成される度に、生体情報データWDと記録開始時刻tssとを含む生体情報データファイルWDFを生成し、この生体情報データファイルWDFをEEPROM1318に記憶する(S1003)。
図10は、生体情報データファイルWDFのデータフォーマットを示す図である。即ち、時間T1ごとに、T1/T2個の生体情報データWDをまとめ、これに記録開始時刻tssを付加して1個の生体情報データファイルWDFを生成している。このように、時間T1といった単位で記録開始時刻tssを記録した生体情報データファイルWDFを生成するが、サーバ装置7においては、記録開始時刻tssからのサンプル数に基づいて生体情報データWDの波形のうち特徴点の発生時刻を特定する。例えば、記録開始時刻tssが「10:00」であり、その32000サンプル目のデータ付近に特徴点があり、サンプリング周期が1/32秒(1秒間に32個のサンプルがある)であったとする。この場合、特徴点は開始から1000秒後(=32000/32)であり、10:16’40が発生時刻であると特定できる。
【0037】
図11は、データ伝送処理を示すフローチャートである。この処理は、生体情報測定装置1−kと携帯電話機4−kにより実行される処理である。この処理は、生体情報測定装置1−kを通信モードにした状態において、携帯電話機4−kの操作キー4212によってデータ伝送を指示する操作が行われると開始される。
【0038】
データ伝送処理において、携帯電話機4−kのCPU4514は、データ伝送を指示する操作が行われた以降、時間T1(T1=10分)が経過する度に、コマンドCMを生体情報測定装置1−kに伝送する(S1011)。生体情報測定装置1−kのCPU1315は、前回のコマンドCMの受領時から今回のコマンドCMの受領時までの間にEEPROM1318に記憶された生体情報データファイルWDFをEEPROM1318から読み出し、無線区間を介して携帯電話機4−kに伝送する(S1012)。この伝送は、XMODEMなどのバイナリ転送プロトコルに従って行う。携帯電話機4−kのCPU4514は、生体情報測定装置1−kから伝送されてくる生体情報データファイルWDFをEEPROM4517に記憶する(S1013)。
【0039】
図12は、アップロード処理を示すフローチャートである。この処理は、携帯電話機4−kとサーバ装置7とにより実行される処理である。この処理は、携帯電話機4−kのブラウザアプリケーションを起動させた状態において、サーバ装置7のアップロードサービスページへのアクセスを指示する操作が行われると開始される。
【0040】
アップロード処理において、携帯電話機4−kのCPU4514は、アップロードサービスページへのアクセスを指示する操作が行われると、同ページの閲覧を求めるメッセージMS
SVC1をサーバ装置7に宛てて送信する(S1021)。このメッセージMS
SVC1は、移動体パケット通信網8及びインターネット9を介してサーバ装置7に送られる。サーバ装置7のCPU711は、メッセージMS
SVC1を受信すると、アップロードサービスページの表示制御データDD
SVC1を携帯電話機4−kに宛てて送信する(S1022)。表示制御データDD
SVC1は、インターネット9及び移動体パケット通信網8を介して携帯電話機4−kに送られる。
【0041】
携帯電話機4−kは、表示制御データDD
SVC1が示す画面をディスプレイ4113に表示させる(S1023)。この画面には、IDの入力を促す内容の文字列とID入力欄とが表示されている。利用者Y−kは、携帯電話機4−kの操作キー4212を操作し、ID入力欄に自身のID
Y−kを入力する。携帯電話機4−kのCPU4514は、操作キー4212によって入力されたID
Y−kを含むメッセージMS
UP1をサーバ装置7に送信する(S1024)。メッセージMS
UP1は、移動体パケット通信網8及びインターネット9を介してサーバ装置7に送られる。サーバ装置7のCPU611は、このメッセージMS
UP1からID
Y−kを取り出し、このID
Y−kを用いた所定の認証処理を行った後、アップロード用画面の表示制御データDD
UP1を携帯電話機4−kに宛てて送信する(S1025)。表示制御データDD
UP1は、インターネット9及び移動体パケット通信網8を介して携帯電話機4−kに送られる。
【0042】
携帯電話機4−kは、サーバ装置7から表示制御データDD
UP1を受信すると、その表示制御データDD
UP1が示す画面をディスプレイ4113に表示させる(S1026)。この画面には、生体情報データWDのアップロードを促す内容の文字列が表示されている。利用者Y−kは、携帯電話機4−kの操作キー4212を操作し、生体情報データWDのアップロードを指示する。携帯電話機4−kのCPU4514は、生体情報データWDのアップロードが指示されると、EEPROM4517に記憶されている生体情報データファイルWDFに利用者Y−kのID
Y−kを埋め込んだ生体情報データファイルWDF’を生成し、この生体情報データファイルWDF’をサーバ装置7に送信する(S1027)。
図13は、生体情報データファイルWDF’のデータ構造を示す図である。生体情報データファイルWDF’は、移動体パケット通信網8及びインターネット9を介してサーバ装置7に送られる。なお、上述した生体情報データファイルWDF’は、ある時点(例えば、一日一回)実行されるものであるが、S1021〜S1027の処理を一度、実行すれば、所定の周期(例えば、10分に1回)で自動的にサーバ装置7に生体情報データファイルWDF’を送信するようにしてもよい。例えば、1個の生体情報データファイルWDFが10分間のデータをまとめたものであり、記録開始時刻tssが互いに異なる12個の生体情報データファイルWDFがEEPROM4517に記憶されている場合を想定する。この場合、12個の生体情報データファイルWDFのううち、記録開始時刻tssの最も早いものにID
Y−kを埋め込んで生体情報データファイルWDF’を生成して送信する。そして、残り11個の生体情報データファイルWDFについても、同じID
Y−kを各々埋め込んで11個の生体情報データファイルWDF’を生成し、これを順次送信すればよい。
【0043】
サーバ装置7のCPU711は、生体情報データファイルWDF’を受信すると、その生体情報データファイルWDF’内における生体情報データWDをハードディスク720の空き領域に記憶する(S1028)。また、CPU711は、生体情報データファイルWDF’内における利用者Y−kのID
Y−k、記録開始時刻tss、及び生体情報データWDの固有のID
W(ハードディスク720内における当該生体情報データWDの格納アドレスと生体情報データWDのファイル名を結合した文字列)を含むレコードを生体情報データベースWDBに登録する(S1029)。
【0044】
図14は、解析処理を示すフローチャートである。この処理は、サーバ装置7により実行される処理である。この処理は、生体情報データベースWDBに新たなレコードが登録される都度、実行される。
【0045】
解析処理において、サーバ装置7のCPU711は、利用者Y−kの生体情報データベースWDBに新たなレコードが登録されると、そのレコードを生体情報データベースWDBから読み出してRAM712に記憶するとともに、そのレコードにおけるID
Wと対応する生体情報データWDをハードディスク720における該当の記憶領域から読み出してRAM712に記憶する(S1031)。
【0046】
CPU711は、RAM712内における生体情報データWDを解析し、当該生体情報データWDが示す脈波に波形パターンPAまたはPBと一致する波形部分が含まれているか判定する(S1032)。このステップS1032における解析の具体的な手順は次の通りである。
【0047】
a6.波形パターンPAと一致する波形部分を含むか否かについての解析
期外収縮は、心臓が本来の周期を外れて収縮することにより発生する不整脈である。
図15に示すように、期外収縮を発症している者の脈波は、本来の周期の通りに発生するピークとその周期よりも早く発生するピークとが混在したものなる。そこで、CPU711は、生体情報データWDが示す脈波における相前後するピーク間の時間間隔を求める。そして、ピーク間の時間間隔が所定値より短くなっている波形部分がある場合、その波形部分が波形パターンPAと一致しているとみなす。
【0048】
b6.波形パターンPBと一致する波形部分を含むか否かについての解析
心房細動は、心房が不規則に興奮収縮することにより発生する不整脈である。
図16に示すように、心房細動を発症している者の脈波は、ピークの時刻と振幅がともに不均一なものとなる。そこで、CPU711は、生体情報データWDが示す脈波における相前後するピーク間の時間間隔及び振幅変化量を求める。そして、ピーク間の時間間隔及び振幅変化量がともに所定の範疇から外れている波形部分がある場合、その波形部分が波形パターンPBと一致しているとみなす。
【0049】
CPU711は、ステップS1032において、生体情報データWDが示す脈波に波形パターンPAまたはPBと一致する波形部分が現れた場合には、当該生体情報データWDが示す脈波における波形パターンPA(またはPB)と一致する波形部分を異常部分とみなし、利用者Y−kのID
Y−k、当該生体情報データWDの記録開始時刻tss、及び該当する波形パターンPA(またはPB)の識別子ID
PA(またはID
PB)を含むレコードを利用者Y−kの解析結果データベースRDB−kに追加する(S1033)。
【0050】
図17は、アラート通知処理を示すフローチャートである。この処理は、サーバ装置7、携帯電話機4−k、生体情報測定装置1−k、及び端末装置6−mにより実行される処理である。この処理は、利用者Y−kの解析結果データベースRDB−kに新たなレコードが追加される都度、そのデータベースRDB−kについて実行される。
【0051】
アラート通知処理において、サーバ装置7のCPU711は、利用者Y−kの解析結果データベースRDB−kに新たなレコードが追加されると、そのデータベースRDB−k内における識別子ID
PAの記憶総数を利用者Y−kの脈波における波形パターンPAの出現総数NumAとして集計する(S1041)。CPU711は、解析結果データベースRDB−k内における識別子ID
PBの記憶総数NumBを利用者Y−kの脈波における波形パターンPBの出現総数NumBとして集計する(S1042)。
【0052】
CPU711は、解析結果データベースRDB−k内における識別子ID
PAを含むレコード(ID
Y−k、記録開始時刻tss、識別子ID
PAのセット)を時系列順に参照し、利用者Y−kの脈波に10秒あたりK(例えば、K=3とする)個以上の波形パターンPAが現れた回数NumA’と、利用者Y−kの脈波に1分あたりL(例えば、L=10とする)個以上の波形パターンPAが現れた回数NumA”とを集計する(S1043)。また、CPU711は、解析結果データベースRDB−k内における識別子ID
PBを含むレコード(ID
Y−k、記録開始時刻tss、識別子ID
PBのセット)を時系列順に参照し、利用者Y−kの脈波に10秒あたりM(例えば、M=3とする)個以上の波形パターンPBが現れた回数NumB’と、利用者Y−kの脈波に1分あたりN(例えば、N=10とする)個以上の波形パターンPBが現れた回数NumB”とを集計する(S1044)。
【0053】
そして、CPU711は、集計結果である回数NumA,NumB,NumA’,NumA”,NumB’,NumB”を各々について定められた閾値THA,THB,THA',THA”,THB’,THB”と比較し(S1045)、閾値THA,THB,THA',THA”,THB’,THB”を上回ったものがあった場合(S1046:Yes)、心疾患についての注意が必要であるとみなし、利用者Y−kの携帯電話機4−kと利用者Y−kの掛り付けの医師D−mの端末装置6−mに宛ててメッセージMS
ALTを送信する(S1047)。
【0054】
ここで、回数NumA,NumB,NumA’,NumA”,NumB’,NumB”と閾値THA,THB,THA',THA”,THB’,THB”との比較は、診断テーブルを利用して行う。
図18は、診断テーブルの一例を示す図である。この例の診断テーブルにおける1番目のレコードには、「Sato001」のID
Y−kが割り当てられた利用者Y−kについての閾値が収録されている。このレコードでは、「閾値THA=1」、「閾値THB=0」、「閾値THA'=なし」、「閾値THB’=3」、「閾値THA”=なし」、「閾値THB”=10」となっている。よって、この利用者Y−kの場合、回数NumAが1を超えた場合、回数NumB’が3を超えた場合、または、回数NumB”が10を超えた場合にメッセージMS
ALTが送信される。
【0055】
サーバ装置7から送信されたメッセージMS
ALTは、インターネット9及び移動体パケット通信網8を介して携帯電話機4−kと端末装置6−mに送られる。携帯電話機4−kのCPU4514は、メッセージMS
ALTを受信すると、受信したメッセージMS
ALTをEEPROM4517に記憶する(S1048)。そして、携帯電話機4−kのCPU4514は、EEPROM4517からメッセージMS
ALTを読み出し、生体情報測定装置1−kに無線区間を介して伝送する(S1049)。生体情報測定装置1−kは、携帯電話機4−kからメッセージMS
ALTが伝送された場合、報知画面を表示部14に表示させる(S1050)。利用者Y−kは、この報知画面を参照することにより、自身の心臓の状態が医療機関での診断を要する程度にまで悪くなっていることを知ることができる。
【0056】
また、端末装置6−mのCPU611は、メッセージMS
ALTを受信すると、報知画面をディスプレイ640に表示させる(S1051)。医師D−mは、この報知画面を参照することにより、自らの患者である利用者Y−kの心臓の状態が悪くなっていることを知ることができる。
【0057】
以上説明した本実施形態によると、次のような効果が得られる。
第1に、本実施形態では、サーバ装置7−mは、生体情報データWDに所定の特徴を持った情報が含まれているかの解析を行い、そのような情報が含まれている場合に、利用者に注意を促がすアラートメッセージMS
ALTを利用者Y−kの生体情報測定装置1−kに宛てて送信する。よって、生体情報測定装置1−kを装着して脈波をモニタリングする利用者Y−kに対し、そのまま放置しておくと重度の心疾患に至るような脈波の異常を確実に知らせることができる。
【0058】
第2に、本実施形態では、期外収縮や心房細動といったような心疾患に繋がる不整脈が発症している場合の脈波の特徴を示す波形パターンPA及びPBを準備しておき、各々との一致の有無の解析を行う。これにより、心疾患に繋がるような脈波の異常を早期に発見することができる。
【0059】
第3に、本実施形態では、サーバ装置7は、各波形パターンの種類を示す識別子とそれらの波形パターン毎に設定された閾値とを対応付けて記憶したテーブルを具備している。そして、各波形パターンの識別子と対応付けてテーブルに記憶された閾値を取得し、取得した閾値を当該波形パターンの所定時間あたりの出現回数と比較し、出現回数が閾値を超えた場合にアラートメッセージMS
ALTを送信する。よって、本実施形態によると、波形パターンPAについては出現回数が3回を超えたらアラートメッセージMS
ALTを送信し、波形パターンPBについては出現回数が10回を超えたらアラートメッセージMS
ALTを送信する、というように、波形パターンの種類に応じてアラートメッセージMS
ALTの送信の条件の設定を変えることができる。
【0060】
(C:変形)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、この実施形態に以下に述べる変形を加えても勿論良い。
(1)上記実施形態では、アラートメッセージMS
ALTの内容を報知画面によって利用者Y−kに知らせた。しかし、アラートメッセージMS
ALTの内容を音やバイブレーションなどによって知らせてもよい。
【0061】
(2)上記実施形態では、生体情報測定装置1−kが、アラートメッセージMS
ALTの内容を利用者Y−kに報知する報知手段としての役割を果たした。しかし、携帯電話機4−kがこの役割を果たしてもよい。この場合、携帯電話機4−kは、サーバ装置7からアラートメッセージMS
ALTを受信した場合に、そのメッセージMS
ALTを生体情報測定装置1−kに伝送することなく、ディスプレイ4113にその内容を表す報知画面を表示させるとよい。また、アラートメッセージMS
ALTの内容を表す音声をスピーカ4213から放音させてもよい。
【0062】
(3)上記実施形態では、生体情報測定装置1−kは、利用者Y−kの脈波を生体情報データWDとして検出した。しかし、利用者Y−kの血圧や心拍などを生体情報データWDとして検出してもよい。
【0063】
(4)上記実施形態では、サーバ装置7は、利用者Y−kから検出された生体情報データWDに所定の特徴を持った情報が含まれているかの解析を行い、そのような情報が含まれている場合に、利用者Y−kの生体情報測定装置1−kと利用者Y−kの掛り付け医師D−mの端末装置6−mにアラートメッセージMS
ALTを送信した。しかし、利用者Y−kの生体情報測定装置1−kにだけアラートメッセージMS
ALTを送信してもよい。また、利用者Y−kから検出された生体情報データWDに所定の特徴を持った情報が含まれているかの解析を行った結果、その情報が第1の閾値を超える頻度で含まれている場合に、生体情報測定装置1−kにアラートメッセージMS
ALTを送信し、その情報が第1の閾値よりも大きな第2の閾値を超える頻度で含まれている場合に、生体情報測定装置1−kと端末装置6−mにアラートメッセージMS
ALTを送信するようにしてもよい。この実施形態によると、利用者Y−kが重度の疾患に陥ったときに、医師D−mへの通知がなされるようにすることができる。
【0064】
(5)また、上述した実施形態では、脈波センサー30はセンサー固定用バンド34により被験者の人指し指の根元から第2指関節までの間の部分に巻きつけられているが、脈波脈波センサー30をカフ(腕帯)により被験者の上腕部または前腕部に巻き付ける構造にしても良い。
さらに、上述した実施形態では、生体情報測定装置1−kは、手首に装着される装置本体10と、人指し指の根元から第2指関節までの間の部分に装着される脈波センサー30とを備え、これらはケーブル20を介して接続される構造を有しているが、脈波センサー30と装置本体10とが一体として構成され、共にリストバンド12により被験者の手首に装着する構造にしても良い。この場合、ケーブル20が不要となり、装置本体10と脈波センサー30とが一体となった腕時計構造を有するため、生体情報測定装置1−kの使い勝手の向上が可能となる。
また、上述した実施形態では、装置本体10を腕時計構造とし、リストバンド12により被験者の手首に巻き付ける構造を有しているが、装置本体10を携帯電話等の外部の機器上に設け、装置本体10が設けられた携帯電話等と脈波センサー30との間で無線通信を実行してもよい。この場合、脈波センサー30は、手首、上腕部あるいは前腕部に巻きつけるカフ(腕帯)としてもよい。あるいは、耳朶に装着する構成としてもよい。装置本体10は、携帯電話の有する表示機能、入力機能、及びCPUを利用できるため、生体情報測定装置1−kの低コスト化が可能となる。