(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の上記した作用及び利得は、次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。以下、本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。ただし、本発明はこれら実施形態に限定されるものではない。
【0018】
図1は、1つの実施形態にかかる光学シート10の断面の一部を示し、その層構成を模式的に表した図である。
図1では、見易さのため繰り返しとなる符号は一部省略している(以降に示す各図において同じ。)。
【0019】
光学シート10は、基材層11と、該基材層11上に形成された光学機能層12とを有している。以下に基材層11及び光学機能層12について説明する。
【0020】
基材層11は、後で詳しく説明する光学機能層12を形成するための基材となる層である。基材層11は、ポリエチレンテレフタレート(PET)を主成分とした材料で構成されることが好ましい。基材層11がPETを主成分とする場合、基材層11には、他の樹脂が含まれてもよい。また、各種添加剤を適宜添加してもよい。一般的な添加剤としては、フェノール系等の酸化防止剤、ラクトン系等の安定剤等を挙げることができる。ここで「主成分」とは、基材層を形成する材料全体に対して上記PETが50質量%以上含有されていることを意味する(以下、同様とする。)。
【0021】
ただし、基材層11を構成する材料の主成分は、必ずしもPETであることは必要なく、その他の材料でもよい。これには例えば、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、テレフタル酸−イソフタル酸−エチレングリコール共重合体、テレフタル酸−シクロヘキサンジメタノール−エチレングリコール共重合体などのポリエステル系樹脂、ナイロン6などのポリアミド系樹脂、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体などのスチレン系樹脂、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、イミド系樹脂、ポリカーボネート樹脂等を挙げることができる。また、これら樹脂中には、必要に応じて適宜、紫外線吸収剤、充填剤、可塑剤、帯電防止剤などの添加剤を加えても良い。
なお、本実施形態では、性能に加え、量産性、価格、入手可能性等の観点から、好ましい態様としてPETを主成分とする樹脂によって基材層11を構成した。
【0022】
光学機能層12は、映像光源側からの映像光の光路を制御するとともに、迷光や外光を適切に吸収する機能を有する層である。光学機能層12は、
図1に示した断面を有して紙面奥/手前側に延在する形状を備える。すなわち、
図1に表れる断面において、略台形である光透過部13、13、…と、該光透過部13、13、…の間に形成された断面が略台形の凹部13a(
図2参照)に形成される光吸収部14、14、…とを備えている。
図2には、
図1に示した光学シート10のうち、3つの光吸収部14、14、…とこれに隣接する光透過部13、13、…を拡大して示した。
【0023】
光透過部13、13、…は光を透過させる機能を有する部位であり、
図1、
図2に表れる断面において、略平行である一対の辺のうち、一方側のシート面側に短い辺、他方側(基材層11側)に長い辺を有する略台形の断面を有する要素である。そして、光透過部13、13、…は、シート面に沿った方向に所定の間隔で並列されるとともに、その間には、略台形断面を有する溝状の凹部13aが形成されている。凹部13aは、略平行である一対の辺のうち、光透過部13の短い辺側に長い辺に相当する開口部分を有し、光透過部13の長い辺側に短い辺を有する台形断面を有している。そして、ここに後述する必要な材料が充填されることにより光吸収部14が形成される。
【0024】
光透過部13、13、…は屈折率がNpであり、光透過性を有する。このような光透過部13、13、…は、光透過部構成組成物を硬化させることにより形成することができる。詳しくは後で説明する。屈折率Npの値は特に限定されることはないが、適用する材料の入手性の観点等から1.49〜1.56であることが好ましい。
【0025】
光吸収部14、14、…は、上記した光透過部13、13、…間の凹部13a、13a、…に形成され、全体として光を吸収することができるように構成されている。従って、その断面形状は概ね凹部13a、13a、…と同様に略台形となっている。
【0026】
光吸収部14、14、…は、光透過部13、13、…の屈折率Npと同じ、又はこれより小さい屈折率Nbを有する所定の材料により構成される。光透過部13、13…の屈折率Npと光吸収部14、14、…の屈折率NbとをNp>Nbとすることにより、スネルの法則に基づいて、光透過部13、13、…に入射した映像光源からの映像光を光吸収部14、14、…と光透過部13、13、…との界面で適切に反射させて観察者に明るい映像を提供することができる。また、スネルの法則に基づいて反射することなく光吸収部に入射した外光や迷光は光吸収部で吸収され、映像の質の向上が図られる。NpとNbとの屈折率の差は特に限定されるものではないが、0以上0.06以下であることが好ましい。
【0027】
本実施形態では、光吸収部14、14、…は、光吸収粒子16、16、…を含有することにより光吸収性能を有するものとされている。すなわち、光吸収粒子16、16、…を分散させたバインダ(光吸収部構成組成物)15、15、…が凹部13a、13a、…に充填されている。光吸収部14、14、…を形成する材料や形成方法などは後で詳しく説明する。
【0028】
なお、光を吸収させるための手段は本実施形態のように光吸収粒子による方法に限定されるものではない。他には例えば、顔料や染料により光吸収部全体を着色することもできる。
【0029】
光学機能層12は、光透過部13、13、…及び光吸収部14、14、…において、さらに次のような特徴を有する。
【0030】
図2にaで示した見込み角aは、15°以上30°以下とする。これにより後述する開口率Rと相まって映像光の明るさを維持しつつも、コントラストを向上させることが可能となる。ここで、見込み角aは、隣り合う光吸収部14、14の対向する線(辺)の端部同士を結ぶ線のうち、光透過部13の対角線に相当する線(a1)が、シート面法線(a2)と成す角度である。さらに好ましくは20°以上30°以下である。20°以上とすることにより視野角も良好とすることが可能である。
【0031】
また、
図2にpで示したピッチと、cで表わした光吸収部14の当該ピッチ方向の大きさのうち最も大きい部位の幅との関係で、(p−c)/pで表される開口率Rは、0.7以上0.85以下とする。
【0032】
かかる見込み角a及び開口率Rのいずれの条件も満たすことにより、映像源からの光を明るく観察者側に透過可能であるとともに、コントラストを向上させることができる。開口率が大きければ、より多くの映像光を観察者に提供することができるが、一方でコントラストが低下する傾向にある。そこで、見込み角aを上記の範囲とすることにより、コントラストを向上させることが可能なる。見込角aは、30°より大きくなれば外光が映像光源パネル内に入り、反射するため、コントラストを上げることができない。すなわち、開口率を大きくしたときのコントラスト低下と相まってさらにコントラストを低下させてしまう。一方、見込み角aを15°未満にすると開口率Rを大きくしても逆に映像光が吸収されすぎて、明るい映像を提供できなくなってしまう。
【0033】
また、
図2にpで示したピッチは30μm以上50μm未満であることが好ましい。これによりモアレマージンを改善することが可能である。モアレマージンとは、映像光源(例えばプラズマディスプレイパネル、PDP)と電磁波を遮断する層における金属のメッシュとの関係に起因するモアレ干渉縞、及び映像光源と光吸収部との関係に起因するモアレ干渉縞が発生しない範囲をいう。すなわち、モアレマージンが大きいとモアレ干渉縞が発生し難く、これが小さいとモアレ干渉縞が発生し易くなる。
また、光吸収部のピッチを小さくすることにより、モアレマージンを大きくすることができる。しかし、ピッチが30μmより小さいと、光吸収部を形成するための金型の製造が困難となる。そしてピッチが50μm以上になるとモアレマージンが小さくなってしまう。
【0034】
図2にcで示した光吸収部の長い辺の幅は5μm以上15μm以下であることが好ましい。これによってもモアレマージンを改善することができる。光吸収部の幅が小さいことによりモアレマージンを大きくすることができる。しかしながら、この幅が5μmより小さいと、溝内に光吸収粒子を分散したバインダーを充填することが困難となる。そしてこの幅が15μmより大きくなるとモアレマージンが小さくなってしまう。
【0035】
また、
図2にdで示した光吸収部の短い辺の幅については、3μm以上であるとともに、
図2にcで示した光吸収部幅以下であることが好ましい。短い辺の幅が3μmより小さくなると、金型ロールを作製するに際し切削が困難となり、金型ロール及びこれにより製造した光学シートにおいて外観不良が発生しやすくなる。ただし、これに限定されるものではなく、3μm未満であってもよい。dが0であるときには、光吸収部の断面が三角形となる。
【0036】
図2にeで示した光吸収部の傾斜角度は、0°以上8°以下が好ましい。さらに好ましくは1°以上6°以下である。1°より小さくなると光吸収部のバインダーに分散された光吸収粒子の充填がしにくくなる。また、6°より大きいと透過率を高くする設計がし難くなる。また傾斜角度を0°とした時には、光透過部及び光吸収部が矩形断面を有するものとなる。
【0037】
図1に、光学シート10に入射した外光の光路例を概略的に示した。この説明に際しては
図1の紙面右を観察者側とする。すなわち、
図1に示すように、所定の角度をもって光学シート10に入射した外光L1は、光学シート10を透過中に、光吸収部14の光吸収粒子16によって吸収される。これによりこの外光L1は映像光に影響を与えなくなり、コントラストを向上させることができる。
一方、映像光は光透過部13、13、…を透過して観察者側に提供される。このとき、光吸収部14、14、…に触れることなく光透過部13、13、…を透過する光や、光透過部13、13、…と光吸収部14、14、…との界面で反射して観察者側に透過する光もある。
【0038】
光学シート10では、上記したように見込み角aと開口率Rとの関係があるので、映像光を透過することができる量を大きく維持しつつ、外光を効率良く吸収することができる。従って、確実に、明るい映像光を提供しつつもコントラストも向上させることが可能となる。
【0039】
また、ピッチpや光吸収部幅cを上記したような大きさにすれば、モアレマージンを大きくすることが可能となる。
【0040】
次に、光学シート10を製造する方法を説明する。
図3に概要図を示した。はじめに基材11上に光透過部13、13、…を形成する。すなわち、
図3からわかるように金型ロール20とこれに対向するように配置されたニップロール41との間に、基材層11となる基材11’を挿入する。このとき、基材11’と金型ロール20との間に光透過部構成組成物13’を供給しながら
図3に矢印で示したように金型ロール20及びニップロール41を回転させる。これにより金型ロール20の表面に形成された光透過部に対応する溝(光透過部を反転した形状)に光透過部構成組成物13’が充填され、該光透過部構成組成物13’が金型ロール20の表面形状に沿ったものとなる。
【0041】
ここで、光透過部構成組成物13’としては、例えば、光硬化型プレポリマー(P1)に、反応性希釈モノマー(M1)及び光重合開始剤(S1)を配合した光硬化型樹脂組成物が好ましく用いられる。
【0042】
上記光硬化型プレポリマー(P1)としては、例えば、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ポリエステルアクリレート系、ポリチオール系等のプレポリマーを挙げることができる。
【0043】
また、上記反応性希釈モノマー(M1)としては、例えば、ビニルピロリドン、2−エチルヘキシルアクリレート、β−ヒドロキシアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート等を挙げることができる。
【0044】
また、上記光重合開始剤(S1)としては、例えば、ヒドロキシベンゾイル化合物(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインアルキルエーテル等)、ベンゾイルホルメート化合物(メチルベンゾイルホルメート等)、チオキサントン化合物(イソプロピルチオキサントン等)、ベンゾフェノン(ベンゾフェノン等)、アシルホスフィンオキシド化合物(2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド等)、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。これらの中から、光硬化型樹脂組成物を硬化させるための照射装置及び光硬化型樹脂組成物の硬化性から任意に選択することができる。なお、光透過部13、13、…の着色防止の観点から好ましいのは、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン及びビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイドである。
【0045】
光硬化型樹脂組成物に含まれる光重合開始剤(S1)の量は、光硬化型樹脂組成物の硬化性及びコストの観点から、光透過部構成組成物全量を基準(100質量%)として、0.5質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。一般に、光重合開始剤は少なくとも部分的に可溶性(例えば、樹脂の処理温度で)であり、重合された後、実質的に無色である。光重合開始剤が着色(例えば、黄色に着色)されていてもよいが、光透過部構成組成物を硬化させて光透過部を形成したときに実質的に無色になることを条件とする。
【0046】
これらの光硬化型プレポリマー(P1)、反応性希釈モノマー(M1)及び光重合開始剤(S1)は、それぞれ、1種類で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
また必要に応じて、光透過部構成組成物中に、塗膜の改質や塗布適性、金型ロールからの離型性を改善させるため、種々の添加剤としてシリコーン系添加剤、レオロジーコントロール剤、脱泡剤、離型剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、等を添加することも可能である。
【0048】
金型ロール20と基材11’との間に挟まれ、ここに充填された光透過部構成組成物13’に対し、基材11’側から光照射装置42により硬化させるための光を照射する。これにより、光透過部構成組成物13’を硬化させ、その形状を固定させることができる。そして、離型ロール43により金型ロール20から基材層11及び成形された光透過部13、13、…を離型する。
【0049】
次に、光吸収部14、14、…を形成する。光吸収部14、14、…を形成するには、まず、凹部13a、13a、…に光吸収部構成組成物を充填する。その後、余剰分の光吸収部構成組成物をドクターブレード等で掻き落とす。そして、凹部13a、13a、…に残った光吸収部構成組成物に光透過部側から紫外線を照射することによって、光吸収部構成組成物に含まれるバインダを硬化させ、光吸収部14、14、…を形成することができる。
【0050】
バインダとして用いられるものは特に限定されないが、これには例えば、光硬化型プレポリマー(P2)に、反応性希釈モノマー(M2)及び光重合開始剤(S2)を配合した光硬化型樹脂組成物が好ましく用いられる。
【0051】
光硬化型プレポリマー(P2)としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、及びブタジエン(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0052】
また、反応性希釈モノマー(M2)としては、例えば、単官能モノマーとして、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクトン、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、スチレン等のビニルモノマー、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、ベンジルメタクリレ−ト、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン等の(メタ)アクリル酸エステルモノマー、(メタ)アクリルアミド誘導体が挙げられる。また、多官能モノマーとして、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリプロポキシジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレ−ト、グリセリルトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化グリセリルトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレ−ト、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレ−ト、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレ−ト、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレ−ト等が挙げられる。
【0053】
また、光重合開始剤(S2)としては、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0054】
なお、光硬化型樹脂組成物に含まれる光重合開始剤(S2)の量は、光硬化型樹脂組成物の硬化性及びコストの観点から、光硬化型樹脂組成物全量を基準(100質量%)として、0.5質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。
【0055】
これらの光硬化型プレポリマー(P2)、反応性希釈モノマー(M2)及び光重合開始剤(S2)は、それぞれ、1種類で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0056】
具体的には、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート及びメトキシトリエチレングリコールアクリレートからなる光重合性成分(詳しくは、光硬化型プレポリマー(P2)及び反応性希釈モノマー(M2))の屈折率、粘度、あるいは光学機能層12の性能への影響等を考慮して任意に配合して用いる。
【0057】
また必要に応じて、添加剤として、シリコーン、消泡剤、レベリング剤及び溶剤等を光吸収部構成組成物に添加してもよい。
【0058】
光吸収粒子16、16、…としては、カーボンブラック等の光吸収性の着色粒子が好ましく用いられるが、これらに限定されるものではなく、映像光の特性に合わせて特定の波長を選択的に吸収する着色粒子を使用してもよい。具体的には、カーボンブラック、グラファイト、黒色酸化鉄等の金属塩、染料、顔料等で着色した有機微粒子や着色したガラスビーズ等を挙げることができる。特に、着色した有機微粒子が、コスト面、品質面、入手の容易さ等の観点から好ましく用いられる。より具体的には、カーボンブラックを含有したアクリル架橋微粒子や、カーボンブラックを含有したウレタン架橋微粒子等が好ましく用いられる。こうした着色粒子は、通常、上記の光吸収部構成組成物中に3質量%以上30質量%以下の範囲で含まれる。着色粒子の平均粒子径は1.0μm以上20μm以下であることが好ましい。上記のように、光吸収部14、14、…を形成する際には、着色粒子を含有する光吸収部構成組成物を光透過部13、13、…間の凹部13a、13a、…に充填した後にドクターブレードを用いて余剰分の光吸収部構成組成物を掻き落とす工程が含まれる。このとき、平均粒子径が1.0μm以上の着色粒子を用いることによって、着色粒子がドクターブレードと光透過部13、13、…の上部との間の隙間を抜け難くなり、光透過部13、13、…の上部に着色粒子が残留することを防止できる。
【0059】
以上により、基材層11上に光透過部13、13、…及び光吸収部14、14、…を形成することによって光学シート10を得ることができる。
【0060】
光学シート10には、さらに必要に応じて他の機能を有する層が積層されて光学フィルターを形成することができる。具体的には、例えば電磁波シールド層、波長フィルタ層、防眩層、反射防止層、ハードコート層、調色層等を、粘着層、調色機能を有する粘着層を用いて光学シート10に貼合することで構成することができる。これらの層の積層順、及び積層数は、光学フィルターの用途等に応じて適宜決定される。以下に各層について説明する。
【0061】
電磁波シールド層は、電磁波を遮断する機能を有する層である。当該機能を有する層であれば、電磁波を遮断する手段は特に限定されるものではない。これには、例えばエッチング方式、印刷方式、蒸着方式、スパッタ方式等によりで形成される金属メッシュを挙げることができ、遮断すべき電磁波により適宜設計される。
【0062】
波長フィルタ層は、所定の波長の光をフィルタリングする機能を有する層である。フィルタリングされるべき波長は必要に応じて適宜選択することができるが、映像光源がプラズマディスプレイパネル(PDP)であるときには、ここから出射されるネオン線をカットしたり、赤外線、近赤外線や紫外線をカットしたりする層を挙げることができる。
【0063】
防眩層は、いわゆるぎらつきを抑制する機能を有する層であり、アンチグレア層、AG層と呼ばれることもある。このような防眩層としては市販のものを用いることができる。
【0064】
反射防止層は外光の反射を防止する機能を有する層である。これによれば、外光が反射して観察者側へ戻ることによる映り込みを抑制することができる。このような反射防止層は、市販の反射防止フィルムを用いる等して構成することが可能である。
【0065】
ハードコート層は、HC層と呼ばれることもある。これは、画像表示面に傷がつくことを抑えるために耐擦傷性を付与する機能を有するフィルムが配置された層である。
【0066】
調色層は、Tint層と呼ばれることもあり、映像光源からの映像光の色を補正する層である。従って目的とする色補正が行えるように染料や顔料が含有されている。また、この層に上記した波長フィルタ層の機能を合わせて持たせてもよい。
【0067】
粘着層は、粘着剤が配置される層である。該粘着剤としてアクリル系粘着剤を挙げることができる。ただし、必要な光透過性、粘着性、耐候性を得ることができれば粘着剤はこれに限定されるものではない。また、層構成によっては、色素の劣化を防止するために、紫外線を吸収する効果のあるUV吸収剤(ベンゾトリアゾール系など)を粘着剤に含めることが望ましい。また、接着層にはUV吸収剤、近赤外吸収剤、Neカット吸収剤(ネオン線を吸収するもの)、及び調色色素などを粘着剤に含める場合もある。
【0068】
次に光学シート10が備えられる映像表示装置の一例であるプラズマテレビ1について説明する。
図4は1つの実施形態にかかる映像表示装置であるプラズマテレビ1を模式的に示した分解斜視図である。
図4では紙面右上が観察者側、紙面左下が背面側を示している。
図4からわかるように、プラズマテレビ1は、前面側筐体2と背面側筐体3とにより形成される筐体の内側に、映像源ユニットであるプラズマディスプレイパネルユニット4(PDPユニット4)を備えている。
【0069】
プラズマテレビ1にはその筐体内にPDPユニット4の他にもプラズマテレビに備えられる通常の各装置が具備される。これには例えば、各種電気回路や冷却手段等を挙げることができる。
【0070】
図5は、PDPユニット4の層構成を模式的に表わした図である。PDPユニット4は、映像光源としてのプラズマディスプレイパネル5(PDP5)と、PDP5より観察者側に配置された光学フィルター20とを備えている。光学フィルター20を構成する層は、PDP5側から、粘着剤層21、電磁波シールド層22、粘着剤層23、光学シート10、粘着剤層24、調色層25、及び反射防止層26である。各層については上記説明した通りである。このとき、光学シート10の基材層11は観察者側に配置されている。
【0071】
このような映像表示装置によっても効果的に映像光の明るさを維持しつつもコントラストを向上させることができる。
【実施例】
【0072】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。ただし本発明は実施例に限定されるものではない。
【0073】
(実施例1)
実施例1では、見込み角及び開口率を変更した場合の光学シートの性能について調べた。見込み角及び開口率を変更した具体的形状を表1に示した。表1において「高さ」は
図2にhで示したように、光吸収部のシート厚さ方向大きさである。「光吸収部幅」は
図2のc、「光吸収部傾斜角」は
図2のeに相当する。また
図2にpで表したピッチは45μm、dで表した光吸収部の短い辺の幅は3μmとした。
【0074】
光学シートは、概ね次のように製造した。すなわち、硬化後の屈折率が1.55のウレタン系紫外線硬化型樹脂を用いて基材層(東洋紡製PET、A4300、膜厚100μm)上に光透過部と該光透過部間に並列される凹部を形成した。光透過部及び凹部は、ロール金型表面に形成された形状を転写することで行った。その後、凹部が形成された側の面に光吸収粒子として平均粒径4μmの黒色ビーズを分散させたバインダー(紫外線硬化型バインダー100質量部に対し、20質量部の光吸収粒子を分散させたもの。バインダーの硬化後の屈折率は1.547)を供給して凹部に該バインダーを充填した。余剰分は金属製のドクターブレードで掻き落とし、紫外線を照射して凹部に充填されたバインダーを硬化させた。
【0075】
光学シートの評価は、「コントラスト」、「視野角」、「明るさ」でおこなった。製造した光学シートを42インチのパナソニックプラズマテレビ(TH−P42G2)に実装して評価した。いずれも明室で目視評価を行い、良好なものが○、不良であるものを×とした。結果を表1に示した。
【0076】
【表1】
【0077】
表1からわかるように、コントラスト及び明るさが良好であるのは見込み角が15°以上30°以下であるとともに、開口率が0.70以上0.85以下のときであった。さらに、見込み角が20°以上30°以下であるとともに、開口率が0.70以上0.85以下であるときには、視野角も良好であった。
【0078】
(実施例2)
実施例2では、見込み角を30°とし、表2に表した形状で実施例1と同様に光学シートを製作し、モアレ干渉縞に関する評価をおこなった。表2に形状及び結果を示した。表2において、「ピッチ」は
図2にpで表した大きさである。評価は、42インチのパナソニックプラズマテレビ(TH−P42G2)に光学シートを実装し、モアレ干渉縞が発生しないバイアス角の角度範囲が2°以上あるものを「○」、1°以下を「△」、モアレ干渉縞が消える角度がない場合を「×」とした。ここでバイアス角とは、垂直にされた画面において光吸収部が延びる長手方向が水平方向となす角である。表中の「モアレ評価」の欄に記載した角度はモアレ干渉縞が発生しなかった角度範囲を具体的に示した。例えば表2のNo.26では、3°のバイアス角を中心に±2°、すなわちバイアス角が1°以上5°以下の範囲でモアレ干渉縞が発生しなかったことを意味する。バイアス角はできるだけ小さくすることが好ましく、かつモアレが発生しない範囲が大きいことがよい。
【0079】
【表2】
【0080】
表2からわかるように、ピッチが30μmと45μmの場合には、他の場合に比べてモアレ干渉縞の出ない角度が小さく、その範囲も広くなっていた。
【0081】
(実施例3)
実施例3では、見込み角を30°、光吸収部底面幅を4μm、ピッチを45μmで一定とし、
図2にcで示した光吸収部幅を変更したときのモアレ干渉縞の発生について評価した。また、製造時における光吸収部を構成する光吸収粒子が分散されたバインダーの充填に関する評価もおこなった。表3に形状、及び結果を示す。ここで、モアレ干渉縞の評価は実施例2と同様である。光吸収部充填の評価は、光吸収部内部にエア(空気)が多数混入しているものを×、光吸収部内部又は光吸収部上面が未充填状態となっているが、実用上問題ないレベルを△、十分にバインダーが充填されている状態を○とした。
【0082】
【表3】
【0083】
表3からわかるように、モアレ干渉縞の発生回避とバインダー充填を良好にする観点からは光吸収部幅は5μm以上15μm以下であることが良いことがわかった。また、No.33〜No.35の例ではモアレ評価、及び光吸収部充填の評価がいずれも良好であった。